JP6052541B2 - 既存建物の免震化工法 - Google Patents

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Description

本発明は既存建物を免震構造の建物に改修するための免震化工法に関する。
周知のように、建物全体を免震装置により水平方向に(3次元免震構造においては鉛直方向にも)変位可能に免震支持する免震構造では、基礎部に設けた免震ピットの底部に下部基礎を設けるとともに、建物の底部には上部基礎を下部基礎とは絶縁した状態で設けて、それら下部基礎と上部基礎との間に設置した積層ゴム等の免震装置を介して建物全体を免震支持することが基本となる。
最近においては、以前に建設された重要な建物や歴史的な建造物の耐震性能を向上させるべく、既存建物を免震構造の建物に改修する免震化(いわゆる免震レトロフィット)も行われるようになってきている。
既存建物を免震化するための工法としては、たとえば特許文献1に示されるように、既存建物全体を各種のアンダーピニング工法によって支持しつつ既存基礎下の支持地盤を全面的に掘削して免震ピットを形成し、免震ピットの底部に下部基礎を施工するとともに下部基礎上に免震装置を設置して、その免震装置によって既存建物全体を免震支持するという工法が最も一般的である。
その場合、既存建物における既存基礎は免震化後には上部基礎として機能するものとなる必要があるから、既存基礎の強度が不十分であるような場合には予め補強を行う必要がある。
特開2002−242450号公報
しかし、上記のような従来一般的な免震化工法において免震ピットを形成する場合には、既存建物の下部の支持地盤に対して大規模な掘削工事を実施しなければならず、しかもその作業は大型重機を使用できない狭隘な空間での非効率的な作業とならざるを得ないことが通常であるから、そのために多大な改修費用と工期を要することが不可避である。
したがって、既存建物の免震化を広く普及するためには、免震化に際して既存建物の下部の支持地盤に対する掘削工事を可及的に削減することが必要であるとされ、それを可能とする有効適切な免震化工法の開発が望まれているのが実状である。
上記事情に鑑み、本発明は、既存建物を免震構造の建物に改修するための免震化工法であって、改修対象の既存建物における既存基礎の直上階において該既存建物の全体を支持可能な既存柱の周囲に設けた仮設柱と、該仮設柱の全体を連結する仮設梁とからなる仮設フレームを設置して、該仮設フレームに対して前記既存柱を仮接合するとともに該既存柱の柱脚部を切断して撤去することで前記既存基礎から切り離し、前記既存柱の撤去された箇所にジャッキを設置し、前記仮設フレームを前記既存建物とともに前記既存基礎上にジャッキアップするとともに前記仮設柱を継ぎ足して、前記仮設フレームと前記既存基礎との間に免震ピットとなるクリアランスを確保し、前記クリアランスの底部において前記既存基礎を撤去して該クリアランスの底部に下部基礎を新設するとともに、該下部基礎の上方に上部基礎を新設して該上部基礎に対して前記既存柱の柱脚部を接合し、前記下部基礎と前記上部基礎との間に免震装置を設置した後、前記仮設フレームを撤去することを特徴とする。
本発明によれば、従来一般的な免震化工法のように免震ピットを形成するために既存建物の下部の支持地盤全体に対して全面的な掘削を行うのではなく、既存建物を既存基礎を残して仮設フレームにより仮支持したうえでその全体をジャッキアップすることによって免震ピットを確保するので、既存建物の下部に対する掘削は既存基礎の撤去と下部基礎を新設するうえで必要となる最少限の範囲に対してのみ行えば良く、したがって従来工法に比べて掘削工事を大幅に削減することが可能であってそれによる工費削減と工期短縮を実現できる。
また、従来工法においては既存建物の地下部に対する大掛かりな地下工事が主体となるのに対し、本実施形態の工法では実質的に既存建物の内外から地表部に対する作業が中心となるので地下工事を大幅に軽減可能であり、その点においても施工性を大きく改善し得る。
本発明の免震化工法の実施形態を示すもので、免震化対象の既存建物の基礎部を示す概略図である。 同、仮設フレームを設置して既存柱の柱脚部を切断撤去した状態を示す図である。 同、既存建物全体をジャッキアップして免震ピットとなるクリアランスを確保した状態を示す図である。 同、既存基礎を撤去して下部基礎を新設した状態を示す図である。 同、上部基礎を新設した状態を示す図である。 同、完成状態を示す図である。
以下、本発明の免震化工法の実施形態について図1〜図6を参照して説明する。
図1は本発明による改修対象の既存建物1の基礎部の概略構成を示すものである。この既存建物1は地上部の躯体が既存柱2としての鉄骨柱と既存梁3としての鉄骨梁とによる鉄骨造によるものであり、既存基礎4は基礎梁5とフーチング18による直接基礎とされているものである。
本実施形態ではその既存建物1を免震構造の建物に改修する(免震化する)に当たり、まず図2に示すように既存基礎4の直上階(既存建物1の最下階。図示例では地上1階)に対して仮設フレーム6を設置する。
仮設フレーム6は、たとえば図示例のように既存柱2の周囲に設けた仮設柱7と、それら仮設柱7の全体を連結する仮設梁8からなる鉄骨造のものとし、改修工事中において既存建物1の全体を安定に支持するに十分な強度と耐震性能を備えた構造のものとしておく。
そして、その仮設フレーム6に対して既存柱2の柱脚部を仮接合して、既存建物1の全体を仮設フレーム6により仮支持した状態で、既存柱2の柱脚部を切断し撤去することにより、既存建物1全体(既存基礎4を除く上部構造の全体)を既存基礎4から切り離す。
次いで、図3に示すように仮設フレーム6とともに既存建物1の全体をジャッキアップして、仮設フレーム6と既存基礎4との間に最終的に免震ピット12となるクリアランス13を確保する。
すなわち、所要台数のジャッキ10を要所(たとえば既存柱2の直下や仮設柱7の周囲)に設置し、それらジャッキ10を同期させて制御しつつ作動させることにより、仮設フレーム6およびそれにより仮支持している既存建物1の全体を持ち上げて徐々に上昇させていきつつ仮設柱7を順次継ぎ足していく。
このジャッキアップにより確保するクリアランス13の所要高さ(すなわちジャッキアップにより上昇させる距離)は、後施工する下部基礎14(図示は略したが下部基礎梁を含む)の版厚および免震装置17の高さ寸法も考慮して、最終的に所定高さの免震ピット12を確保し得るように適宜設定すれば良いが、通常は2m程度で十分である。
なお、ジャッキ10の反力は従来一般的な各種のアンダーピニング工法等により支障なく確保できるが、必要であれば適宜の仮設基礎を設けたり、ジャッキアップ時の水平変位を拘束するために要所に仮設の水平拘束部材を設置する等して既存建物1の全体を安定に支持しつつジャッキアップすると良い。
以上のようにして免震ピット12となるクリアランス13を確保したうえで、図4に示すようにクリアランス13の底部において既存基礎4を解体撤去し、そこに下部基礎14(下部基礎梁を含む)を新設する。
また、図5に示すように、下部基礎14(下部基礎梁を含む)上に上部基礎15(図示は略したが上部基礎梁を含む)および1階の床スラブ16を新設し、上部基礎15に対して既存柱2の柱脚部を再び接合する。
そして、所望台数の免震装置17を下部基礎14(下部基礎梁を含む)と上部基礎15(上部基礎梁を含む)との間の要所に設置し、それら免震装置17によって上部基礎15(上部基礎梁を含む)を介して既存建物1全体を免震支持する。
しかる後に、図6に示すように仮設フレーム6を撤去するとともに、他に適宜の仮設材を設置しておいた場合にはそれら仮設材も撤去する。
本実施形態の免震化工法によれば、従来一般的な免震化工法のように免震ピット12を形成するために既存建物1の下部の支持地盤9を全面的に掘り下げるのではなく、逆に既存建物1全体をジャッキアップすることによって免震ピット12を形成するので、既存建物1の下部の支持地盤9に対する掘削は既存基礎4の撤去と下部基礎14(下部基礎梁を含む)を新設するうえで必要となる最少限の範囲に対してのみ局所的に行えば良く、したがって従来工法に比べて掘削工事を大幅に削減することが可能であり、それによる工費削減と工期短縮を実現できる。
すなわち、本実施形態の工法により施工する免震ピット12と同等の免震ピットを従来工法により支持地盤を掘削して施工する場合には、既存建物1の直下の支持地盤9を図6に鎖線で示す範囲まで深く掘削する必要があるのに対し、本実施形態では実質的に地表部をわずかに浅く掘削するだけで足り、それに要する工費と工期を従来工法に比べて大幅に軽減することが可能となる。
また、従来工法においては既存建物1の下部に対する大掛かりな地下工事が主体となるのに対し、本実施形態の工法では実質的に既存建物1の内外からの地表部に対する作業が中心となるので、地下工事を軽減できる点においても施工性を大きく改善し得るものである。
勿論、本実施形態の工法による場合には、単に免震化に伴う改修が必要となるばかりでなく、改修後には既存建物1の全体の高さが改修前よりもジャッキアップした分だけ高くなることからそれに伴う改修工事も当然に必要となるが、建物全体がたとえば2m程度高くなったとしても使用勝手はさして変わるものではないし、そのための改修費用も掘削工事の削減により十分に相殺することが可能である。
なお、本実施形態の工法による改修(免震化)により建物高さは高くはなるが面積は変わらないので法的には増築には該当せず、また既存建物の過半に及ぶような大規模な改修工事に該当するものでもないので、通常は確認申請等の煩雑な法的手続きは必要としない。
以上で本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態はあくまで一例に過ぎず、本発明の免震化工法における具体的な工程や、仮設フレームの具体的な構成、改修後の免震ピットや免震装置等の細部の具体的な構成その他については、免震化対象の既存建物の構造や規模、必要とされる免震性能、支持地盤の状況その他の諸条件を考慮して最適設計すれば良い。
たとえば、上記実施形態は既存建物の既存基礎が直接基礎である場合の適用例であるが、既存基礎が杭基礎の場合にも杭頭部への改修が必要とはなるだけで実質的に上記実施形態と同様の工程により適用可能である。
1 既存建物
2 既存柱
3 既存梁
4 既存基礎
5 基礎梁
6 仮設フレーム
7 仮設柱
8 仮設梁
9 支持地盤
10 ジャッキ
12 免震ピット
13 クリアランス
14 下部基礎
15 上部基礎
16 床スラブ
17 免震装置
18 フーチング

Claims (1)

  1. 既存建物を免震構造の建物に改修するための免震化工法であって、
    改修対象の既存建物における既存基礎の直上階において該既存建物の全体を支持可能な既存柱の周囲に設けた仮設柱と、該仮設柱の全体を連結する仮設梁とからなる仮設フレームを設置して、該仮設フレームに対して前記既存柱を仮接合するとともに該既存柱の柱脚部を切断して撤去することで前記既存基礎から切り離し、
    前記既存柱の撤去された箇所にジャッキを設置し、
    前記仮設フレームを前記既存建物とともに前記既存基礎上にジャッキアップするとともに前記仮設柱を継ぎ足して、前記仮設フレームと前記既存基礎との間に免震ピットとなるクリアランスを確保し、
    前記クリアランスの底部において前記既存基礎を撤去して該クリアランスの底部に下部基礎を新設するとともに、該下部基礎の上方に上部基礎を新設して該上部基礎に対して前記既存柱の柱脚部を接合し、
    前記下部基礎と前記上部基礎との間に免震装置を設置した後、前記仮設フレームを撤去することを特徴とする既存建物の免震化工法。
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