JP2016098531A - 仮支持方法 - Google Patents
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この基礎免震レトロフィット工事により、杭のない基礎を有する既存建物を免震化する場合、柱からの荷重がかかっている柱直下の地盤をどのようにして安全に掘削して、作業空間を確保するか、が最大の問題であり、例えば、以下の手順で施工する。
ここで、既存建物の基礎のどの部分を仮支持できるかは、既存建物の基礎部分の構造による。例えば、既存建物がラーメン構造である場合、基礎部分に仮受支柱を架設するための補強をすることなく仮支持できるのは、柱直下近傍にあって建物荷重を地盤や杭に伝えるために基礎が幅広く張り出して既に補強されている基礎の底部分(基礎の底版部とも呼ばれるが、以下、フーチング部分という)である。布基礎の場合は、Tの字を逆さまにした形状の鉄筋コンクリート製の基礎を帯状に設置し、Tの字の頭の部分がフーチング部分であり地盤に接している。独立基礎や杭基礎の場合は、フーチング部分の平面形状は四角形である場合が多い。
例えば、免震装置の設置工事に障害とならなければ、フーチング部分の四隅に仮受支柱を設置して荷重を支持することで、仮受支柱の受け替えが必要なくなり効率がよい。しかし、そのためにはフーチング部分が広く、掘削法面が崩れ難いことが必要である。
ここで、仮受支柱は、鋼製であり、例えば、床面に設置される底板と、この鋼板に立設される支柱と、この底板と支柱とを連結する斜材や補強プレート等と、を備える。
また、フーチング部分の下に荷重を支持できるだけの凍土壁を設けた上で、仮受支柱をできるだけコンパクトにしても、凍土壁を撤去した後でも荷重を支持できるだけの仮受支柱を併存させることができない場合がある。
構造物の柱の直下に設けた仮受支柱は、耐圧盤に打ち込むものではないので、複数回転用できる。
しかし、本発明によれば、補強プレートが不要であり、架台の大きさ(接地面積)を適宜設定することで、仮受支柱を設置する地盤の強度が低い場合であっても対応できる。
また、架台の底面は四角形であり、架台の高さは前記四角形の短辺の長さと概等しいので、仮受支柱における架台の重量と形状のバランスがよく、マットスラブ構築や免震装置設置工事の障害にならずに仮受支柱の転倒を防ぐことができる。
また、鋼製支柱に市販の鋼製山留部材を用いることで、部材加工も必要なくなる。
また、支柱の中間に支柱を上下に伸縮させてプレロードを与える山留用のプレロードジャッキを用いた場合、このジャッキは、プレロードを与えた後、ロックナットを締めて固定できるので、掘削時の沈下を抑えることができる。
また、支柱が架台上面に着脱可能でかつ分割可能な鋼製支柱であるので、搬入や組立てが容易である。したがって、仮受柱をコンパクトに設置でき、耐圧盤の施工が容易となるから、既存建物を効率良く確実に免震化できる。
図1に示すように、既存建物1は、地下躯体2を有しており、この地下躯体2は、基礎3と、この基礎3から上方に延びる複数本の柱4と、を備えている。
各柱4は、フーチング部分10の中心部から上方に延びている。
以上の既存建物1は、図2に示すように、免震装置20により基礎3を下から支持することで免震化される。
柱4の直下でかつマットスラブ22の上面には、鉄筋コンクリート造の下部免震基礎23が設けられ、柱4の直下でかつ基礎3の下面には、鉄筋コンクリート造の上部免震基礎24が設けられている。
免震装置20は、下部免震基礎23に反力をとって、上部免震基礎24を下から支持しつつ、この上部免震基礎24が水平方向に移動可能な状態を保持している。このとき、周囲スペース30は、免震クリアランスとして機能する。
すなわち、図4および図5に示すように、既存建物1の周囲に図示しない山留め壁を構築して、既存建物1と山留め壁との間の地盤5を、マットスラブ22の下端となる深さまで掘削する。この掘削により形成された空間は、周囲スペース30となる。
すなわち、図4および図5に示すように、平面視で、基礎3のフーチング部分10の概半分に掛かるように、柱4の通り芯に沿って、凍土壁40を構築する。
本実施形態の既存建物1は、杭のない基礎を有するラーメン構造であって、一辺約3.5mのフーチング部分10を有する。フーチング部分10の下部は、拘束がなくなると崩壊しやすい軽石凝灰岩の地層M1があり、厚さは約2.5mであり、その下の地層M2は凝灰質シルト岩の層であり、地層M1よりも安定した地盤である。これらの条件から判断して、基礎部分に仮受支柱50A、50Bを架設するための補強をしないで、荷重を支持できるには、凍土壁の安定性も考えて、平面視でフーチング部分の半分以上を覆う凍土壁40が必要と判断された。
また仮に、凍土壁をフーチング部分10の中心部すなわち柱4の直下を通る位置に構築すると、柱芯と凍土壁の芯が一致して荷重を支持するという点では有利である。しかも、図13のようにフーチング部分の四隅に仮受支柱50Bを設置して荷重を支持することで、仮受支柱50Bが、免震装置20の設置工事に障害とならず、凍土壁40を撤去した後でも荷重を支持できるだけの仮受支柱50Bを併存させることができれば、仮受支柱50Bの受け替えが必要なくなり効率がよい。
フーチング部分10の凍土壁の幅を2mとすると、凍土壁以外の部分が平面視75cmずつとなり、フーチング部分10の四隅にH−350×350の仮受支柱を建てるとして、仮受支柱の底板の一辺を100cmとすると、仮受支柱50Bの底板端部と凍土壁との隙間は10cm弱となり、不可能ではなさそうである。しかし、凍土壁の構築において既存建物1の端部から水平にボーリングしながら一辺30m以上の距離を削孔することを考えると、施工誤差が10cm以上発生する場所もありうる。
そこで、本実施形態ではフーチング部分10の下の地盤でかつ柱4の直下の近傍の地盤に、平面視でフーチング部分10の概半分を覆う凍土部を設けた。
これら凍土壁40の高さは、地層M1と地層M2との境界部分から基礎3のフーチング部分10の下面までで約2.5mで、幅は約2mとなっている。
すなわち、図6および図7に示すように、既存建物1の基礎3の下の地盤5のうち、凍土壁40を除いた部分を、マットスラブ22の底面となる深さまで掘削する。これにより、既存建物1の基礎3のフーチング部分10は凍土壁40により仮支持される。また、この掘削により形成された掘削空間25は、設置スペース21の一部となる。
図6および図7に示すように、掘削空間25の底面に捨てコンクリート26を打設する。
仮受支柱50Bは、掘削空間25の底面に載置される鉄筋コンクリート造の架台51と、この架台51の上面から上方に延びて既存建物1の下面を支持する支柱52と、支柱52の中間に設けられてこの支柱52にプレロードを与えるジャッキ53と、を備える。
また、架台51の四つの側面には、それぞれ、凹部(コッタ)514が上下2段に形成されている。
すなわち、支柱52は、架台51の上面に設けられたH形鋼からなる下部支柱521と、ジャッキ53の上に設けられたH形鋼からなる中間部支柱522と、中間部支柱522の上に設けられたH形鋼からなる上部支柱523と、を備える。
また、下部支柱521の途中には、止水板524が設けられている。
ジャッキ53は、下部支柱521と中間部支柱522との間に設けられており、下部支柱521と中間部支柱522とを接近あるいは離間させる。
あるいは、ジャッキ53を駆動することで、プレロードを解除して、基礎3の仮支持を解除できる。
架台51の上面の4箇所には、ボルト515が突出して設けられている(図10および図11参照)。
この架台51のボルト515に吊り治具70を螺合し、この吊り治具70を用いて架台51を吊り上げて、架台51を揚重する。
この方法で水平移動できない場合には、次の方法で移動する。
すなわち、架台51の側面の4箇所には、後述のブラケット60を取り付けるためのボルト516が突出して設けられている。
次に、ブラケット60の下面にローラ62を取り付けて、このローラ62をレール61上に設置する。
まず、図12に示すように、ブラケット60を下から支持するジャッキ66を設置する。具体的には、捨てコンクリート26上に鉄板67を敷設して、この鉄板67上にジャッキ66を設置する。
次に、ジャッキ66を駆動して、ブラケット60を昇降させて、架台51の高さや水平度を調整する。
次に、架台51と捨てコンクリート26との隙間の複数箇所にライナー68を差し込んで、架台51の高さ位置を仮固定し、その後、ジャッキ66および鉄板67を撤去する。
次に、架台51と捨てコンクリート26との隙間に無収縮モルタル69を充填する。
すなわち、図13および図14に示すように、次に、凍結管による凍結を解除し、この凍結管を撤去する。その後、既存建物1の基礎3の下の残りの地盤5を掘削して、凍土壁40を撤去し、掘削空間25を完成させる。
掘削空間25の底面に捨てコンクリート26を打設する。次に、この捨てコンクリート26上で、平面視で柱4の直下の周囲つまりフーチング部分10の残りの隅の角部の直下に、仮受支柱50Bを設置する。そして、これら仮受支柱50Bにより基礎3のフーチング部分10を下から仮支持する。
仮受支柱50Aによる仮支持を解除し、この仮受支柱50Aを撤去する。これにより、既存建物1の基礎3は、フーチング部分10の角部直下に設置した仮受支柱50Bのみにより仮支持される。
図15に示すように、捨てコンクリート26上に配筋する。このとき、仮受支柱50Bの架台51の機械式継手512にねじ鉄筋513を螺合することで、この架台51に打ち込まれた鉄筋511は、マットスラブ22の下側の主筋となる(図9参照)。
次に、コンクリートを打設して、マットスラブ22を新設する。すると、仮受支柱50Bの架台51は、マットスラブ22の一部となり、仮受支柱50Bの支柱52の下部は、コンクリートに打ち込まれることになる。
図15に示すように、マットスラブ22上に下部免震基礎23を構築し、基礎3の下面に上部免震基礎24を構築して、これら免震基礎23、24同士の間に、免震装置20を設置する。そして、この免震装置20により、基礎3の柱4の直下に位置する部分を支持する。
フーチング部分10の角部の直下に設置した仮受支柱50Bによる支持を解除し、次に、これら仮受支柱50Bの支柱52を切断して撤去する。これにより、既存建物1は、免震装置20により支持される。
(1)フーチング部分10の下の地盤5に、平面視でフーチング部分10の概半分を覆う凍土壁40を設けた。地盤耐力が小さく、フーチング部分が広くなく、掘削法面が崩れ易い場合でも、基礎部分に仮受支柱50A、50Bを架設するための補強をすることなく、既存建物1の柱4にかかる鉛直荷重を、フーチング部分10を介して、この凍土壁40で仮支持できるので、基礎梁や耐圧盤11の剛性が低い既存建物1であっても、基礎3にクラックが生じたり沈下したりするのを防いで、確実に仮支持できる。また、地盤5を掘削しても、掘削面の一部を凍土壁40で構成することで、掘削面が崩壊するのを防止できる。また、既存建物1の内部に入る必要がないので、既存建物1をそのまま使用しながら施工できる。
また、仮受支柱50Bの支柱52がマットスラブ22を貫通しないので、従来のように仮受支柱が新設の耐圧盤を貫通する場合に比べて、止水性を向上できる。
また、鋼製の支柱52に市販の鋼製山留部材を用いることで、部材加工も必要なくなる。
また、支柱52の中間に支柱を上下に伸縮させてプレロードを与える山留用のプレロードジャッキを用いた場合、このジャッキは、プレロードを与えた後、ロックナットを締めて固定できるので、掘削時の沈下を抑えることができる。
また、ブラケット60をジャッキ66で仮支持して昇降させることで、架台51の高さ位置を容易に調整できる。
例えば、本実施形態では、凍土壁40の高さを、地層M1と地層M2との境界部分から基礎3の下面までとしたが、これに限らず、凍土壁の高さをマットスラブ22の下端近傍から基礎3の下面までとしてもよい。
また、上述の各実施形態では、本発明を既存建物1に適用したが、これに限らず、擁壁などの構造物にも適用できる。
1…既存建物(構造物)
2…地下躯体
3…基礎
4…柱
5…地盤
10、10A…フーチング部分
11…耐圧盤
20…免震装置(積層ゴム)
21…設置スペース
22…マットスラブ
23…下部免震基礎
24…上部免震基礎
25…掘削空間
26…捨てコンクリート
30…周囲スペース
40…凍土壁(凍土部)
50A…盛り替える仮受支柱
50B…盛り替えない仮受支柱
51…架台
52…支柱
53…ジャッキ
60…ブラケット
61…レール
62…ローラ
63…レバーブロック
64…ワイヤ
65…壁面
66…ジャッキ
67…鉄板
68…ライナー
69…無収縮モルタル
70…吊り治具
511…鉄筋
512…機械式継手
513…鉄筋
514…凹部
515、516…ボルト
521…下部支柱
522…中間部支柱
523…上部支柱
524…止水板
Claims (3)
- 構造物を基礎の下で免震化する際に、当該構造物のフーチング部分を下から支持する仮支持方法であって、
前記構造物のフーチング部分の下の地盤の少なくとも一部の土中の水分を凍結させて、平面視で前記フーチング部分の概半分以上を覆う凍土部を設ける工程と、
当該凍土部で前記フーチング部分を仮支持しながら、前記フーチング部分の下の地盤を掘削する工程と、
前記フーチング部分の二隅の角部直下と当該角部以外の直下とに仮受支柱を設置して、当該仮受支柱で前記フーチング部分を一時仮支持する工程と、
前記凍土部を掘削する工程と、
前記フーチング部分の残りの隅の角部直下に仮受支柱を設置して、前記フーチング部分の四隅の角部直下の仮受支柱で前記フーチング部分を仮支持する工程と、を備えることを特徴とする仮支持方法。 - 前記仮受支柱は、前記構造物の下の地盤を掘削して形成された掘削空間の底面に載置されるプレキャストコンクリート造の架台と、
当該架台の上面に着脱可能に設けられ複数の部材に分割可能な鋼製支柱と、
当該鋼製支柱の中間に設けられて当該鋼製支柱にプレロードを与えるジャッキと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の仮支持方法。 - 前記鋼製支柱は、少なくともマットスラブ上端レベル近傍で分割可能であることを特徴とする請求項2に記載の仮支持方法。
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