以下に、添付図面を参照して、本発明にかかる蛇行制御装置および蛇行制御方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下では、蛇行修正対象の帯状体の一例として鋼帯等の帯板を例示し、帯板のプロセスラインに本発明を適用した場合を説明するが、本実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
(プロセスラインの構成)
まず、本発明の実施の形態にかかる蛇行制御装置の構成と、この蛇行制御装置を適用した帯板のプロセスラインの構成とについて説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる蛇行制御装置を適用した帯板のプロセスラインの一構成例を示す模式図である。図1には、プロセスライン全体のうちの蛇行制御装置に関連するライン部分が図示されている。
図1に示すように、本実施の形態におけるプロセスラインは、帯板6に対してドライプレーティング処理等を行うためのものであり、帯板6を払い出す払出装置1と、帯板6の蛇行を修正する上流側蛇行修正装置2および下流側蛇行修正装置3と、ドライプレーティング処理設備4とを備える。このプロセスラインにおいて、帯板6の搬入端には払出装置1が配置され、この払出装置1から帯板6の搬送経路に沿って帯板6の搬送方向順に、上流側蛇行修正装置2、ドライプレーティング処理設備4、下流側蛇行修正装置3が配置される。すなわち、上流側蛇行修正装置2および下流側蛇行修正装置3は、帯板6の搬送方向の上流側と下流側とに所定の間隔をあけて離間する。ドライプレーティング処理設備4は、このような上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3との間に位置する。一方、このプロセスラインにおける帯板6の搬送経路は、払出装置1のペイオフリール10、上流側蛇行修正装置2の蛇行修正ロール20a,20b、下流側蛇行修正装置3の蛇行修正ロール30a,30b、および搬送ロール(図示せず)等によって形成される。
(払出装置)
払出装置1は、処理対象の帯板6をプロセスライン内へ払い出す装置である。具体的には、図1に示すように、払出装置1は、ペイオフリール10と、リール支持部11と、油圧シリンダ12と、サーボ弁13と、エンコーダ14と、シリンダ位置演算部15と、帯板位置検出部16a,16bと、蛇行量演算部17と、制御部18とを備える。
ペイオフリール10は、その回転によって、コイル7から帯板6をプロセスライン内へ払い出す。コイル7は、帯板6をコイル状に巻いたものであり、図1に示すように、ペイオフリール10に取り付けられている。ペイオフリール10から順次払い出された帯板6は、その搬送方向(図1に示す太線矢印参照)に沿って連続的に進行し、上流側蛇行修正装置2へ搬入される。
なお、帯板6は、帯状の金属材である。この帯板6をなす金属材は、鋼、鋼以外の鉄合金材、銅またはアルミニウム等の鉄合金材以外のいずれであってもよい。また、鋼種等の帯板6の金属種類(例えば強度や組成等)についても、本発明では特に問われない。
リール支持部11、油圧シリンダ12、およびサーボ弁13は、帯板6の払出位置を調整する際にペイオフリール10を摺動させるためのものである。リール支持部11は、ペイオフリール10をリール軸方向に摺動自在に支持する。油圧シリンダ12は、リール支持部11と接続されたピストンを有し、このピストンを油圧によって突没することにより、ペイオフリール10およびリール支持部11を摺動させる。サーボ弁13は、油圧シリンダ12を作動させる油圧を調整し、この油圧調整を通して、油圧シリンダ12のピストン突出量を制御する。
エンコーダ14およびシリンダ位置演算部15は、ペイオフリール10の摺動に応じた油圧シリンダ12のシリンダ位置を取得するためのものである。エンコーダ14は、図1に示すように、油圧シリンダ12に固定配置され、リール支持部11と油圧シリンダ12との間のピストン突出量を測定する。エンコーダ14は、ピストン突出量を測定する都度、得られたピストン突出量をシリンダ位置演算部15に送信する。シリンダ位置演算部15は、エンコーダ14によって測定されたピストン突出量を受信し、このピストン突出量に応じた油圧シリンダ12の位置(以下、シリンダ位置という)を算出する。油圧シリンダ12において、シリンダ位置は、リール支持部11に対する油圧シリンダ12の相対位置に相当する。上述したペイオフリール10の摺動量は、このシリンダ位置の変化に応じて増減する。
帯板位置検出部16a,16bは、例えば投光部および受光部等を用いて構成され、図1に示すようにペイオフリール10の出側に配置される。帯板位置検出部16a,16bは、各々、ペイオフリール10から払い出された直後の帯板6の幅方向端部の位置を光学的に検出し、この検出結果をもとに、ペイオフリール10の出側における帯板6の幅方向中心位置、すなわち帯板位置を検出する。帯板位置検出部16a,16bは、払出直後の帯板6の帯板位置を検出する都度、得られた帯板位置を蛇行量演算部17と、後述する蛇行制御装置5の払出制御演算部54とに送信する。
蛇行量演算部17は、ペイオフリール10の出側における帯板6の帯板位置を帯板位置検出部16a,16bから受信し、この取得した帯板位置をもとに、ペイオフリール10の出側における帯板6の蛇行量(出側蛇行量)を算出する。例えば、蛇行量演算部17は、取得した帯板位置と帯板6の搬送経路のラインセンタとの差を、ペイオフリール10による払出直後の帯板6の出側蛇行量として算出する。蛇行量演算部17は、この帯板6の出側蛇行量を算出する都度、得られた出側蛇行量を制御部18に送信する。
制御部18は、ペイオフリール10による帯板6の払出位置を調整するために必要な制御を行う。具体的には、制御部18は、シリンダ位置演算部15から油圧シリンダ12のシリンダ位置を取得し、蛇行量演算部17からペイオフリール10による払出直後の帯板6の出側蛇行量を取得する。また、制御部18は、払出制御演算部54から払出制御目標値を取得する。なお、払出制御目標値は、ペイオフリール10から払い出される帯板6の目標とする払出位置である。制御部18は、蛇行量演算部17からの出側蛇行量と払出制御演算部54からの払出制御目標値との差を算出する第1の演算処理と、この第1の演算処理の結果とシリンダ位置演算部15からのシリンダ位置との差を算出する第2の演算処理とを行う。これにより、制御部18は、払出制御目標値に応じたシリンダ位置の制御量を取得する。一方、制御部18は、PID(Proportional Integral Derivative)演算部18aを備える。PID演算部18aは、上述した第2の演算処理の結果をもとに、払出制御目標値に応じた油圧シリンダ12の制御目標値をリアルタイムに算出する。PID演算部18aは、この制御目標値を算出する都度、得られた制御目標値をサーボ弁13に送信する。これにより、制御部18は、ペイオフリール10による帯板6の払出位置が払出制御目標値に近づく(望ましくは一致する)ようにサーボ弁13を制御し、このサーボ弁13の制御を通して、油圧シリンダ12のシリンダ位置を制御する。制御部18は、これらの制御によってペイオフリール10の摺動を制御し、これにより、ペイオフリール10による帯板6の払出位置を払出制御目標値に調整する。
(上流側蛇行修正装置)
上流側蛇行修正装置2は、払出装置1から順次搬送される帯板6の蛇行を、ドライプレーティング処理設備4の上流側において修正するものである。具体的には、図1に示すように、上流側蛇行修正装置2は、蛇行修正ロール20a,20bと、回動ベース21と、油圧シリンダ22と、サーボ弁23と、エンコーダ24と、シリンダ位置演算部25と、帯板位置検出部26a,26bと、蛇行量演算部27と、制御部28とを備える。
蛇行修正ロール20a,20bは、ドライプレーティング処理設備4の上流側において、帯板6を搬送しつつ自身の傾動によって帯板6の蛇行を修正可能なロール体である。図2は、本実施の形態における上流側蛇行修正装置のロール部構成を例示する模式図である。なお、図2には、上流側蛇行修正装置2の出側から見た蛇行修正ロール20a,20b、回動ベース21、油圧シリンダ22、およびエンコーダ24が図示されている。図1,2に示すように、蛇行修正ロール20a,20bは、帯板6の搬送経路に沿って互いに前後および上下の位置関係を有する。例えば、一方の蛇行修正ロール20aは、他方の蛇行修正ロール20bよりも帯板6の搬送方向の上流側且つ上方に配置される。蛇行修正ロール20aは、払出装置1から順次搬入された帯板6と巻き掛け等によって接触しながら、自身の円筒形状中心軸を中心に回転する。これにより、蛇行修正ロール20aは、他方の蛇行修正ロール20bとの間において帯板6を張架するとともに、帯板6をその搬送方向に送出する(図2に示す太線矢印参照)。すなわち、帯板6は、一方の蛇行修正ロール20aから他方の蛇行修正ロール20bに進行する。ついで、蛇行修正ロール20bは、上流側の蛇行修正ロール20aから順次送出された帯板6と巻き掛け等によって接触しながら、蛇行修正ロール20aと同様に回転する。これにより、蛇行修正ロール20bは、上述した帯板6の張架状態を維持しつつ、帯板6をその搬送方向に送出する(図1に示す太線矢印参照)。この結果、帯板6は、上流側蛇行修正装置2の出側に順次搬出され、続いて、ドライプレーティング処理設備4に向けて連続的に進行する。
回動ベース21、油圧シリンダ22、およびサーボ弁23は、ドライプレーティング処理設備4の上流側において帯板6の蛇行を修正する際に蛇行修正ロール20a,20bを傾動させるためのものである。回動ベース21は、蛇行修正ロール20a,20bを回転自在に支持する。また、回動ベース21は、図2に示すように、中心軸21aを有し、この中心軸21aを回転中心にして蛇行修正ロール20a,20bとともに傾動可能である。油圧シリンダ22は、図2に示すように、回動ベース21の所定部分と回動自在に接続されたピストンを有し、このピストンを油圧によって突没することにより、蛇行修正ロール20a,20bおよび回動ベース21を傾動させる。この場合、図2に示すように、蛇行修正ロール20a,20bは、回動ベース21の傾動に伴い、帯板6の蛇行修正に必要な傾動角度θ分、水平方向に対して傾斜するように傾動する。この傾動角度θは、例えば、蛇行修正ロール20a,20bの傾動前におけるラインセンタCと、蛇行修正ロール20a,20bの傾動後におけるラインセンタCとのなす角度として定義される。なお、ラインセンタCは、プロセスラインにおける帯板6の搬送経路の幅方向中心位置であり、例えば、蛇行修正ロール20a,20bの幅方向の中心位置に近接または一致する。サーボ弁23は、油圧シリンダ22を作動させる油圧を調整し、この油圧調整を通して、油圧シリンダ22のピストン突出量を制御する。
エンコーダ24およびシリンダ位置演算部25は、蛇行修正ロール20a,20bおよび回動ベース21の傾動に応じた油圧シリンダ22のシリンダ位置を取得するためのものである。図1,2に示すように、エンコーダ24は、油圧シリンダ22に固定配置され、回動ベース21と油圧シリンダ22との間のピストン突出量を測定する。エンコーダ24は、ピストン突出量を測定する都度、得られたピストン突出量をシリンダ位置演算部25に送信する。シリンダ位置演算部25は、エンコーダ24によって測定されたピストン突出量を受信し、このピストン突出量に応じた油圧シリンダ22のシリンダ位置を算出する。油圧シリンダ22において、シリンダ位置は、回動ベース21に対する油圧シリンダ22の相対位置に相当する。上述した蛇行修正ロール20a,20bの傾動角度θは、このシリンダ位置の変化に応じて増減する。
帯板位置検出部26a,26bは、例えば投光部および受光部等を用いて構成され、図1に示すように上流側蛇行修正装置2の出側(具体的には、蛇行修正ロール20bの出側)に配置される。帯板位置検出部26a,26bは、各々、蛇行修正ロール20bから送出された直後の帯板6の幅方向端部の位置を光学的に検出し、この検出結果をもとに、上流側蛇行修正装置2の出側における帯板6の帯板位置を検出する。例えば、上流側蛇行修正装置2が蛇行修正ロール20a,20bの傾動によって帯板6の蛇行を修正していれば、帯板位置検出部26a,26bは、この蛇行修正直後の帯板6の帯板位置を検出する。帯板位置検出部26a,26bは、このような帯板6の帯板位置を検出する都度、得られた帯板位置を蛇行量演算部27と、後述する蛇行制御装置5の蛇行制御演算部52とに送信する。
蛇行量演算部27は、蛇行修正ロール20bの出側における帯板6の帯板位置を帯板位置検出部26a,26bから受信し、この取得した帯板位置をもとに、上流側蛇行修正装置2の出側における帯板6の蛇行量(出側蛇行量)を算出する。例えば、蛇行量演算部27は、取得した帯板位置と帯板6の搬送経路のラインセンタとの差を、上流側蛇行修正装置2による送出直後(蛇行修正直後の場合を含む)の帯板6の出側蛇行量として算出する。蛇行量演算部27は、この帯板6の出側蛇行量を算出する都度、得られた出側蛇行量を制御部28と、後述する蛇行制御装置5の入側蛇行量演算部53とに送信する。
制御部28は、蛇行修正ロール20a,20bが帯板6の蛇行を修正する際に必要な制御を行う。具体的には、制御部28は、シリンダ位置演算部25から油圧シリンダ22のシリンダ位置を取得し、蛇行量演算部27から上流側蛇行修正装置2による送出直後の帯板6の出側蛇行量を取得する。また、制御部28は、蛇行制御演算部52から蛇行制御目標値を取得する。なお、この蛇行制御目標値は、蛇行修正ロール20a,20bにおいて目標とする帯板6の蛇行修正量である。制御部28は、蛇行量演算部27からの出側蛇行量と蛇行制御演算部52からの蛇行制御目標値との差を算出する第3の演算処理と、この第3の演算処理の結果とシリンダ位置演算部25からのシリンダ位置との差を算出する第4の演算処理とを行う。これにより、制御部28は、この蛇行制御目標値に応じたシリンダ位置の制御量を取得する。一方、制御部28は、PID演算部28aを備える。PID演算部28aは、上述した第4の演算処理の結果をもとに、蛇行制御目標値に応じた油圧シリンダ22の制御目標値をリアルタイムに算出する。PID演算部28aは、この制御目標値を算出する都度、得られた制御目標値をサーボ弁23に送信する。これにより、制御部28は、蛇行修正ロール20a,20bによる帯板6の蛇行修正状態(蛇行修正量および蛇行修正方向)が蛇行制御目標値に近づく(望ましくは一致する)ようにサーボ弁23を制御し、このサーボ弁23の制御を通して、油圧シリンダ22のシリンダ位置を制御する。制御部28は、これらの制御によって蛇行修正ロール20a,20bの傾動を制御し、これにより、蛇行制御目標値に応じた帯板6の蛇行修正を蛇行修正ロール20a,20bに行わせる。
(帯板の処理設備)
ドライプレーティング処理設備4は、プロセスラインにおいて連続的に搬送される帯板6に対し所定の処理を行う処理設備の一例である。具体的には、図1に示すように、ドライプレーティング処理設備4は、入側開口部4aおよび出側開口部4bを有する。入側開口部4aは、ドライプレーティング処理設備4の入口をなす開口部であり、出側開口部4bは、ドライプレーティング処理設備4の出口をなす開口部である。ドライプレーティング処理設備4は、上流側蛇行修正装置2の出側と入側開口部4aとが対向し且つ下流側蛇行修正装置3の入側と出側開口部4bとが対向するように、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3との間に配置される。本実施の形態におけるプロセスラインにおいて、ドライプレーティング処理設備4は、上流側蛇行修正装置2から順次搬送される帯板6を、入側開口部4aを通じて連続的に受け入れる。ドライプレーティング処理設備4は、受け入れた帯板6に対してドライプレーティング処理を順次行い、処理後の帯板6を、出側開口部4bから下流側蛇行修正装置3に向けて連続的に送出する。
また、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aおよび出側開口部4bは、ドライプレーティング処理設備4内の真空環境を維持するために狭隘な開口部に設計されている。すなわち、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aおよび出側開口部4bと処理対象の帯板6との各幅方向間隙は、極めて狭い。図3は、本実施の形態におけるドライプレーティング処理設備の開口部と処理対象の帯板との幅方向間隙を示す図である。図3に示すように、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aと帯板6との幅方向間隙dは、例えば15[mm]程度である。この幅方向間隙dは、ドライプレーティング処理設備4に対して帯板6を連続的に搬入することを考慮すれば、極めて狭いものである。なお、特に図3には図示していないが、出側開口部4bと帯板6との幅方向間隙についても、上述した入側開口部4aの場合と同様に極めて狭い。
(下流側蛇行修正装置)
下流側蛇行修正装置3は、プロセスライン内において順次搬送される帯板6の蛇行を、ドライプレーティング処理設備4の下流側において修正するものである。具体的には、図1に示すように、下流側蛇行修正装置3は、蛇行修正ロール30a,30bと、回動ベース31と、油圧シリンダ32と、サーボ弁33と、エンコーダ34と、シリンダ位置演算部35と、帯板位置検出部36a,36bと、蛇行量演算部37と、制御部38とを備える。
蛇行修正ロール30a,30bは、ドライプレーティング処理設備4の下流側において、帯板6を搬送しつつ自身の傾動によって帯板6の蛇行を修正可能なロール体である。蛇行修正ロール30a,30bの構成は、上流側の蛇行修正ロール30aが下流側の蛇行修正ロール30bに比して下方に位置するという配置関係以外、上述した上流側蛇行修正装置2の蛇行修正ロール20a,20bの構成(図2参照)と同様である。例えば、一方の蛇行修正ロール30aは、他方の蛇行修正ロール30bよりも帯板6の搬送方向の上流側且つ下方に配置される。蛇行修正ロール30aは、ドライプレーティング処理設備4から順次搬入された帯板6と巻き掛け等によって接触しながら、自身の円筒形状中心軸を中心に回転する。これにより、蛇行修正ロール30aは、他方の蛇行修正ロール30bとの間において帯板6を張架するとともに、帯板6をその搬送方向に送出する。すなわち、帯板6は、一方の蛇行修正ロール30aから他方の蛇行修正ロール30bに進行する。ついで、蛇行修正ロール30bは、上流側の蛇行修正ロール30aから順次送出された帯板6と巻き掛け等によって接触しながら、蛇行修正ロール30aと同様に回転する。これにより、蛇行修正ロール30bは、上述した帯板6の張架状態を維持しつつ、帯板6をその搬送方向に送出する(図1に示す太線矢印参照)。この結果、帯板6は、下流側蛇行修正装置3の出側に順次搬出される。その後、帯板6は、その搬送経路に沿ってプロセスラインの出側端(図示せず)に向けて順次搬送される。
回動ベース31、油圧シリンダ32、およびサーボ弁33は、ドライプレーティング処理設備4の下流側において帯板6の蛇行を修正する際に蛇行修正ロール30a,30bを傾動させるためのものである。回動ベース31は、蛇行修正ロール30a,30bを回転自在に支持する。この回動ベース31の傾動構造は、上述した上流側蛇行修正装置2の回動ベース21の傾動構造(図2参照)と同様である。すなわち、回動ベース31は、所定の中心軸を回転中心にして蛇行修正ロール30a,30bとともに傾動可能である。油圧シリンダ32は、図2に示した油圧シリンダ22と同様に、回動ベース31の所定部分と回動自在に接続されたピストンを有し、このピストンを油圧によって突没することにより、蛇行修正ロール30a,30bおよび回動ベース31を傾動させる。この油圧シリンダ32の作用により、蛇行修正ロール30a,30bは、回動ベース31の傾動に伴い、帯板6の蛇行修正に必要な傾動角度θ分、水平方向に対して傾斜するように傾動する。サーボ弁33は、油圧シリンダ32を作動させる油圧を調整し、この油圧調整を通して、油圧シリンダ32のピストン突出量を制御する。
エンコーダ34およびシリンダ位置演算部35は、蛇行修正ロール30a,30bおよび回動ベース31の傾動に応じた油圧シリンダ32のシリンダ位置を取得するためのものである。エンコーダ34は、上述した上流側蛇行修正装置2のエンコーダ24(図1,2参照)と同様に、油圧シリンダ32に固定配置され、回動ベース31と油圧シリンダ32との間のピストン突出量を測定する。エンコーダ34は、ピストン突出量を測定する都度、得られたピストン突出量をシリンダ位置演算部35に送信する。シリンダ位置演算部35は、エンコーダ34によって測定されたピストン突出量を受信し、このピストン突出量に応じた油圧シリンダ32のシリンダ位置を算出する。油圧シリンダ32において、シリンダ位置は、回動ベース31に対する油圧シリンダ32の相対位置に相当する。上述した蛇行修正ロール30a,30bの傾動角度θは、このシリンダ位置の変化に応じて増減する。
帯板位置検出部36a,36bは、例えば投光部および受光部等を用いて構成され、図1に示すように下流側蛇行修正装置3の出側(具体的には、蛇行修正ロール30bの出側)に配置される。帯板位置検出部36a,36bは、各々、蛇行修正ロール30bから送出された直後の帯板6の幅方向端部の位置を光学的に検出し、この検出結果をもとに、下流側蛇行修正装置3の出側における帯板6の帯板位置を検出する。例えば、下流側蛇行修正装置3が蛇行修正ロール30a,30bの傾動によって帯板6の蛇行を修正していれば、帯板位置検出部36a,36bは、この蛇行修正直後の帯板6の帯板位置を検出する。帯板位置検出部36a,36bは、このような帯板6の帯板位置を検出する都度、得られた帯板位置を蛇行量演算部37に送信する。
蛇行量演算部37は、蛇行修正ロール30bの出側における帯板6の帯板位置を帯板位置検出部36a,36bから受信し、この取得した帯板位置をもとに、下流側蛇行修正装置3の出側における帯板6の蛇行量(出側蛇行量)を算出する。例えば、蛇行量演算部37は、取得した帯板位置と帯板6の搬送経路のラインセンタとの差を、下流側蛇行修正装置3による送出直後(蛇行修正直後の場合を含む)の帯板6の出側蛇行量として算出する。蛇行量演算部37は、この帯板6の出側蛇行量を算出する都度、得られた出側蛇行量を制御部38と、後述する蛇行制御装置5の入側蛇行量演算部51とに送信する。
制御部38は、蛇行修正ロール30a,30bが帯板6の蛇行を修正する際に必要な制御を行う。具体的には、制御部38は、シリンダ位置演算部35から油圧シリンダ32のシリンダ位置を取得し、蛇行量演算部37から下流側蛇行修正装置3による送出直後の帯板6の出側蛇行量を取得する。また、制御部38は、蛇行制御演算部52から蛇行制御目標値を取得する。なお、この蛇行制御目標値は、蛇行修正ロール30a,30bにおいて目標とする帯板6の蛇行修正量である。制御部38は、蛇行量演算部37からの出側蛇行量と蛇行制御演算部52からの蛇行制御目標値との差を算出する第5の演算処理と、この第5の演算処理の結果とシリンダ位置演算部35からのシリンダ位置との差を算出する第6の演算処理とを行う。これにより、制御部38は、この蛇行制御目標値に応じたシリンダ位置の制御量を取得する。一方、制御部38は、PID演算部38aを備える。PID演算部38aは、上述した第6の演算処理の結果をもとに、蛇行制御目標値に応じた油圧シリンダ32の制御目標値をリアルタイムに算出する。PID演算部38aは、この制御目標値を算出する都度、得られた制御目標値をサーボ弁33に送信する。これにより、制御部38は、蛇行修正ロール30a,30bによる帯板6の蛇行修正状態(蛇行修正量および蛇行修正方向)が蛇行制御目標値に近づく(望ましくは一致する)ようにサーボ弁33を制御し、このサーボ弁33の制御を通して、油圧シリンダ32のシリンダ位置を制御する。制御部38は、これらの制御によって蛇行修正ロール30a,30bの傾動を制御し、これにより、蛇行制御目標値に応じた帯板6の蛇行修正を蛇行修正ロール30a,30bに行わせる。
(蛇行制御装置の構成)
つぎに、本実施の形態にかかる蛇行制御装置の構成について説明する。図1に示すように、本実施の形態にかかる蛇行制御装置5は、下流側蛇行修正装置3に関連する入側蛇行量演算部51と、上流側蛇行修正装置2および下流側蛇行修正装置3による帯板6の蛇行修正を制御する蛇行制御演算部52と、上流側蛇行修正装置2に関連する入側蛇行量演算部53と、払出装置1による帯板6の払出位置の調整を制御する払出制御演算部54とを備える。
入側蛇行量演算部51は、下流側蛇行修正装置3の入側における帯板6の蛇行量(入側蛇行量)を算出するものである。具体的には、入側蛇行量演算部51は、下流側蛇行修正装置3の蛇行量演算部37から帯板6の出側蛇行量を取得する。この出側蛇行量は、下流側蛇行修正装置3の出側における帯板6の蛇行量である。また、入側蛇行量演算部51は、下流側蛇行修正装置3のシリンダ位置演算部35から油圧シリンダ32のシリンダ位置を取得する。入側蛇行量演算部51は、取得した出側蛇行量およびシリンダ位置と、下流側蛇行修正装置3における蛇行修正ロール30a,30b同士の位置関係とをもとに、下流側蛇行修正装置3における帯板6の入側蛇行量を算出する。入側蛇行量演算部51は、このように入側蛇行量を算出する都度、得られた入側蛇行量を蛇行制御演算部52に送信する。
蛇行制御演算部52は、上流側蛇行修正装置2および下流側蛇行修正装置3による帯板6の蛇行制御目標値を算出して、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3との間における帯板6の蛇行修正を制御する。具体的には、蛇行制御演算部52は、入側蛇行量演算部51から下流側蛇行修正装置3における帯板6の入側蛇行量を取得する。また、蛇行制御演算部52は、上流側蛇行修正装置2の帯板位置検出部26a,26bから、上流側蛇行修正装置2の出側における帯板6の帯板位置を取得する。蛇行制御演算部52は、この取得した帯板位置をもとに、上流側蛇行修正装置2における帯板6の出側蛇行量を取得する。例えば、蛇行制御演算部52は、帯板位置検出部26a,26bによって検出された帯板位置と帯板6の搬送経路のラインセンタとの差(幅方向のずれ量)を算出することにより、上流側蛇行修正装置2における帯板6の出側蛇行量を取得する。蛇行制御演算部52は、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3との間の上流側位置P1と下流側位置P2とにおける帯板6の各蛇行量を、上流側蛇行修正装置2に対する上流側位置P1、下流側位置P2、および下流側蛇行修正装置3の相対位置関係と、入側蛇行量演算部51による下流側蛇行修正装置3における帯板6の入側蛇行量と、上流側蛇行修正装置2における帯板6の出側蛇行量とをもとに推定する。蛇行制御演算部52は、この推定した帯板6の各蛇行量の抑制に必要な蛇行制御目標値を設定し、設定した蛇行制御目標値を、上流側蛇行修正装置2の制御部28と下流側蛇行修正装置3の制御部38とに送信する。蛇行制御演算部52は、このように蛇行制御目標値を制御部28,38に与え、この蛇行制御目標値に基づいて、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3とによる帯板6の蛇行修正を制御する。
ここで、上流側位置P1および下流側位置P2は、図1に示すように、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3との間における帯板6の搬送経路上に位置して、帯板6の搬送方向の上流側と下流側とに互いに離間する。本実施の形態において、上流側位置P1は、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3との間に配置されるドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aの位置に対応する。下流側位置P2は、このドライプレーティング処理設備4の出側開口部4bの位置に対応する。
入側蛇行量演算部53は、上述した入側蛇行量演算部51とは別のものであり、上流側蛇行修正装置2の入側における帯板6の蛇行量(入側蛇行量)を算出する。具体的には、入側蛇行量演算部53は、上流側蛇行修正装置2の蛇行量演算部27から帯板6の出側蛇行量を取得する。この出側蛇行量は、上流側蛇行修正装置2の出側における帯板6の蛇行量である。また、入側蛇行量演算部53は、上流側蛇行修正装置2のシリンダ位置演算部25から油圧シリンダ22のシリンダ位置を取得する。入側蛇行量演算部53は、取得した出側蛇行量およびシリンダ位置と、上流側蛇行修正装置2における蛇行修正ロール20a,20b同士の位置関係とをもとに、上流側蛇行修正装置2における帯板6の入側蛇行量を算出する。入側蛇行量演算部53は、このように入側蛇行量を算出する都度、得られた入側蛇行量を払出制御演算部54に送信する。
払出制御演算部54は、払出装置1のペイオフリール10によって順次払い出される帯板6の払出位置の目標値、すなわち、払出制御目標値を算出して、払出装置1による帯板6の払出位置の調整を制御する。具体的には、払出制御演算部54は、払出装置1の帯板位置検出部16a,16bから、ペイオフリール10の出側における帯板6の帯板位置を取得する。また、払出制御演算部54は、入側蛇行量演算部53から上流側蛇行修正装置2における帯板6の入側蛇行量を取得する。払出制御演算部54は、このようなペイオフリール10出側の帯板位置と入側蛇行量演算部53による帯板6の入側蛇行量とをもとに、この入側蛇行量を上流側蛇行修正装置2の蛇行修正能力の限度内に抑制するために必要な払出制御目標値を設定する。払出制御演算部54は、この設定した払出制御目標値を、払出装置1の制御部18に送信し、この払出制御目標値に基づいて、払出装置1のペイオフリール10による帯板6の払出位置の調整を制御する。
(本発明の基本原理)
つぎに、本発明の実施の形態による帯板6の蛇行制御の基本原理について説明する。図4は、上流側蛇行修正装置と下流側蛇行修正装置との間における帯板の蛇行制御の基本原理を説明するための図である。図5は、帯板の出側蛇行量に基づく入側蛇行量の算出処理を説明するための図である。
本発明では、帯板6の蛇行量を零値に抑制すべき目標位置を帯板位置の検出箇所とする従来の蛇行制御と異なり、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3との間において帯板6の搬送方向の上流側と下流側とに離間する上流側位置P1および下流側位置P2に着眼する。これら上流側位置P1および下流側位置P2における帯板6の各蛇行量を推定し、推定した各蛇行量を抑制するように蛇行制御目標値を設定する。この設定した蛇行制御目標値に基づいて、ドライプレーティング処理設備4の入口および出口における帯板6の蛇行量を可能な限り抑制する蛇行制御を行う。
このような蛇行制御の基本原理において、上流側位置P1および下流側位置P2の各蛇行量は、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3との間の帯板6の通り道と、上流側蛇行修正装置2、ドライプレーティング処理設備4、および下流側蛇行修正装置3の各設置位置の相対関係とを考慮することによって求められる。ここで、この帯板6の通り道は、上流側蛇行修正装置2からドライプレーティング処理設備4を通って下流側蛇行修正装置3に至る道筋であり、上流側蛇行修正装置2の出側の帯板位置と下流側蛇行修正装置3の入側の帯板位置とを結ぶ線に沿うものと見做す。このような帯板6の通り道を直線に近似した場合、上流側蛇行修正装置2、ドライプレーティング処理設備4の入口および出口、並びに下流側蛇行修正装置3の各位置が分かれば、上流側位置P1および下流側位置P2における帯板6の各蛇行量の推定に必要な帯板位置を求めることができる。
具体的には、図4に示すように、本実施の形態におけるプロセスラインのうちの上流側蛇行修正装置2とドライプレーティング処理設備4と下流側蛇行修正装置3とが設置された領域に対し、互いに垂直なx軸とy軸とを設定する。x軸は、蛇行が発生していない状態の帯板6の搬送方向(図4の太線矢印参照)に平行な座標軸である。y軸は、プロセスラインにおける帯板6の搬送経路に対して垂直な座標軸である。すなわち、y軸は、蛇行が発生していない状態の帯板6の幅方向に対して平行(搬送方向に対して垂直)である。このy軸については、帯板6の搬送経路のラインセンタCのy座標(=yc)と、x軸方向の各位置における帯板6の帯板位置Sc(幅方向中心位置)のy座標とをとる。
x軸については、図4に示すように、上流側蛇行修正装置2の帯板位置検出部26a,26bの位置を原点(x座標=0)とし、下流側蛇行修正装置3の入側の位置を示すx座標としてxbを設定する。また、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aの位置を示すx座標としてxinを設定し、出側開口部4bの位置を示すx座標としてxoutを設定する。これらのx座標は、プロセスライン内における上流側蛇行修正装置2、ドライプレーティング処理設備4、および下流側蛇行修正装置3の設置によって一意に決定する既知の値である。
上述したようなxb、xin、xoutは、上流側蛇行修正装置2の帯板位置検出部26a,26bの位置に対する下流側蛇行修正装置3の入側、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aおよび出側開口部4bのx軸方向に沿った相対的な各位置を示す。すなわち、xbは、上流側蛇行修正装置2の出側(帯板位置検出部26a,26bの位置)から下流側蛇行修正装置3の入側までの距離を示す。xinは、帯板位置検出部26a,26bの位置からドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aまでの距離を示す。xoutは、帯板位置検出部26a,26bの位置からドライプレーティング処理設備4の出側開口部4bまでの距離を示す。また、本実施の形態において、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3との間の上流側位置P1および下流側位置P2のうち、上流側位置P1は入側開口部4aに対応し、下流側位置P2は出側開口部4bに対応する。この場合、帯板位置検出部26a,26bの位置から上流側位置P1までの距離はxinであり、帯板位置検出部26a,26bの位置から下流側位置P2までの距離はxoutである。
一方、下流側蛇行修正装置3の入側の位置における帯板位置Scのy座標をybとし、下流側蛇行修正装置3の出側の位置(帯板位置検出部36a,36bの位置)における帯板位置Scのy座標をyaとする。なお、上流側蛇行修正装置2および下流側蛇行修正装置3の各出側における帯板位置Scは、いずれも、蛇行修正後の帯板6の幅方向中心位置である。このことから、これら各位置における帯板位置Scのy座標同士は同様と推定する。すなわち、上流側蛇行修正装置2の帯板位置検出部26a,26bの位置における帯板位置Scのy座標はyaと推定する。上述したように各位置における帯板位置Scのy座標を設定し且つラインセンタCのy座標をy軸の原点(yc=0)とした場合、上流側位置P1および下流側位置P2における帯板6の各蛇行量win,woutは、次式(1)、(2)によって与えられる。
win={(yb−yc)−(ya−yc)}・(xin/xb)+(ya−yc)
=(yb−ya)・(xin/xb)+ya ・・・(1)
wout={(yb−yc)−(ya−yc)}・(xout/xb)+(ya−yc)
=(yb−ya)・(xout/xb)+ya ・・・(2)
また、本実施の形態において、上流側位置P1および下流側位置P2は、図4に示すように、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aおよび出側開口部4bに各々対応する。したがって、式(1)に基づく蛇行量winは、入側開口部4aにおける帯板6の蛇行量であり、式(2)に基づく蛇行量woutは、出側開口部4bにおける帯板6の蛇行量である。
ここで、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aおよび出側開口部4bにおける各蛇行量win,woutは、入側開口部4aおよび出側開口部4bと帯板6との意図せぬ接触を回避するために、零値に抑制すべきである。各蛇行量win,woutを零値に抑制した場合(win,wout=0)、帯板位置Scの各y座標ya、ybは、式(1)、(2)に基づき、次式(3)、(4)によって与えられる。
ya={xin/(xin−xb)}・yb ・・・(3)
yb={(xout−xb)/xout}・ya ・・・(4)
上式(3)、(4)によって与えられるy座標ya、ybは、ラインセンタCのy座標をy軸の原点とした場合、ラインセンタCからの帯板位置Scの幅方向(y軸方向)のずれ量、すなわち、帯板6の蛇行量を示す。具体的には、yaは、帯板位置検出部26a,26bおよび帯板位置検出部36a,36bの各位置における帯板6の蛇行量を示す。ybは、下流側蛇行修正装置3の入側の位置における帯板6の蛇行量を示す。
本発明では、上流側蛇行修正装置2における帯板6の出側蛇行量(=ya)と下流側蛇行修正装置3における帯板6の入側蛇行量(=yb)とが式(3)、(4)を満足するように蛇行制御目標値を設定する。この設定した蛇行制御目標値を上流側蛇行修正装置2の制御部28(図1参照)に与えることによって、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aにおける蛇行量winが零値に抑制されるように、上流側蛇行修正装置2に帯板6の蛇行修正を行わせる。また、上記のように設定した蛇行制御目標値を下流側蛇行修正装置3の制御部38(図1参照)に与えることによって、ドライプレーティング処理設備4の出側開口部4bにおける蛇行量woutが零値に抑制されるように、下流側蛇行修正装置3に帯板6の蛇行修正を行わせる。
なお、上流側蛇行修正装置2における帯板6の出側蛇行量を示すy座標(=ya)は、上流側蛇行修正装置2の帯板位置検出部26a,26bによる検出値である。一方、下流側蛇行修正装置3における帯板6の入側蛇行量を示すy座標(=yb)は、図1に示す入側蛇行量演算部51によって算出される値である。以下、図5を参照しつつ、帯板6の入側蛇行量の算出方法について説明する。
帯板6の入側蛇行量wa1は、例えば図5に示すように、蛇行修正ロール20aの入側におけるラインセンタCからの帯板位置Scのずれ量である。このような入側蛇行量wa1は、蛇行修正ロール20a,20bと帯板6との位置関係と、蛇行修正ロール20a,20bの作動位置が入側蛇行量wa1に比例するという知見とに基づき、求められる。
すなわち、蛇行修正ロール20a,20bによる帯板6の蛇行修正量は、蛇行修正ロール20aの入側蛇行量wa1と蛇行修正ロール20bの出側蛇行量wb1との差によって与えられる。この帯板6の蛇行修正量(wa1−wb1)と、蛇行修正ロール20a,20bの傾動角度θと、蛇行修正ロール20a,20bの下端から回転中心(中心軸21a)までのロール高さLとの関係は、次式(5)によって与えられる。
wa1−wb1=L×tanθ ・・・(5)
また、傾動角度θ分の傾動を蛇行修正ロール20a,20bに行わせる際の油圧シリンダ22のシリンダ位置sと、油圧シリンダ22のピストンから蛇行修正ロール20a,2bの回転中心(中心軸21a)までのシリンダ高さHと、傾動角度θとの関係は、次式(6)によって与えられる。
s=H×tanθ ・・・(6)
したがって、上式(5)、(6)に基づき、シリンダ位置sと蛇行修正量(wa1−wb1)との関係は、次式(7)によって与えられる。
s=(H/L)×(wa1−wb1) ・・・(7)
上式(7)に基づき、上流側蛇行修正装置2における帯板6の入側蛇行量wa1は、ロール高さLと、シリンダ高さHと、シリンダ位置sと、上流側蛇行修正装置2における帯板6の出側蛇行量wb1とを用い、次式(8)によって与えられる。
wa1={(L/H)×s}+wb1 ・・・(8)
式(8)において、ロール高さLおよびシリンダ高さHは、上流側蛇行修正装置2における蛇行修正ロール20a,20bの構造が決まれば一意に決定する既知の定数である。このため、入側蛇行量wa1は、シリンダ位置sと出側蛇行量wb1とを取得すれば算出可能である。なお、シリンダ位置sは、エンコーダ24およびシリンダ位置演算部25により取得可能である。出側蛇行量wb1は、帯板位置検出部26a,26bおよび蛇行量演算部27により取得可能である。
また、上式(8)は、下流側蛇行修正装置3における帯板6の入側蛇行量wa2および出側蛇行量wb2においても同様に成立する。すなわち、入側蛇行量wa2は、下流側蛇行修正装置3における蛇行修正ロール30a,30bの構造によって一意に決定するロール高さおよびシリンダ高さと、油圧シリンダ32のシリンダ位置と、出側蛇行量wb2とを取得すれば算出可能である。なお、このシリンダ位置は、エンコーダ34およびシリンダ位置演算部35により取得可能である。出側蛇行量wb2は、帯板位置検出部36a,36bおよび蛇行量演算部37により取得可能である。
一方、本発明では、上述した帯板6の入側蛇行量wa1が上流側蛇行修正装置2による蛇行修正能力の限度を超えないようにするために、払出装置1による帯板6の払出位置の調整を制御する。この制御においては、ペイオフリール10による帯板6の現在の払出位置を監視しつつ、式(8)による入側蛇行量wa1を零値に抑制するために必要な帯板6の払出位置を払出制御目標値として設定する。この設定した払出制御目標値を払出装置1の制御部18に与え、これによって、上述した現在の払出位置を払出制御目標値に調整するように払出装置1を制御する。なお、この現在の払出位置は、帯板位置検出部16a,16bにより取得可能である。入側蛇行量wa1は、入側蛇行量演算部53により取得可能である。
(蛇行制御方法)
つぎに、本発明の実施の形態にかかる蛇行制御方法について説明する。図6は、本発明の実施の形態にかかる蛇行制御方法の一例を示すフローチャートである。本実施の形態にかかる蛇行制御方法において、図1に示した蛇行制御装置5は、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3とを用い、帯板6の蛇行を制御する。以下、図1,6等を参照しつつ、本実施の形態にかかる蛇行制御方法を説明する。
図6に示すように、蛇行制御装置5は、順次搬送される帯板6を処理する処理設備の入口および出口における帯板6の各蛇行量を推定する(ステップS101)。ステップS101において、入側蛇行量演算部51は、シリンダ位置演算部35から取得した油圧シリンダ32のシリンダ位置sと、蛇行量演算部37から取得した下流側蛇行修正装置3の出側蛇行量wb2とを用い、式(8)に基づいて下流側蛇行修正装置3の入側蛇行量wa2を算出する。蛇行制御演算部52は、入側蛇行量演算部51から入側蛇行量wa2を取得し、上流側蛇行修正装置2の帯板位置検出部26a,26bによって検出された帯板位置Scを取得する。この帯板位置Scは、上流側蛇行修正装置2の出側(帯板位置検出部26a,26bの位置)における帯板6の幅方向中心位置である。つぎに、蛇行制御演算部52は、この取得した帯板位置Scのy座標=ya(図4参照)とラインセンタCのy座標=yc(y座標の原点)とをもとに、上流側蛇行修正装置2の出側蛇行量wb1を取得する。蛇行制御演算部52は、上流側蛇行修正装置2に対する上流側位置P1、下流側位置P2、および下流側蛇行修正装置3の相対位置関係と、入側蛇行量演算部51による入側蛇行量wa2と、前述の出側蛇行量wb1とをもとに、上流側位置P1と下流側位置P2とにおける帯板6の各蛇行量win,woutを推定する。
ここで、上流側蛇行修正装置2に対する上流側位置P1、下流側位置P2、および下流側蛇行修正装置3の相対位置関係は、図4に示すように、上流側蛇行修正装置2の帯板位置検出部26a,26bの位置をx軸の原点とした場合の上流側位置P1のx座標(=xin)と、下流側位置P2のx座標(=xout)と、下流側蛇行修正装置3の入側の位置のx座標(=xb)とによって表される。また、本実施の形態において、上流側位置P1はドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aの位置に一致し、下流側位置P2はドライプレーティング処理設備4の出側開口部4bの位置に一致する。したがって、蛇行制御演算部52は、式(1)に基づき、上流側位置P1における帯板6の蛇行量winを、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3との間に配置される処理設備であるドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aにおける帯板6の蛇行量として推定する。また、蛇行制御演算部52は、式(2)に基づき、下流側位置P2における帯板6の蛇行量woutを、このドライプレーティング処理設備4の出側開口部4bにおける帯板6の蛇行量として推定する。
つぎに、蛇行制御装置5は、上述したステップS101において推定した各蛇行量win,woutの抑制に必要な蛇行制御目標値を設定する(ステップS102)。ステップS102において、蛇行制御演算部52は、式(1)、(2)に基づく各蛇行量win,woutを零値に抑制した際の上流側蛇行修正装置2の出側における帯板位置Scと、下流側蛇行修正装置3の入側における帯板位置Scとを推定する。すなわち、蛇行制御演算部52は、これら出側および入側の各帯板位置Scのy座標ya、ybを式(3)、(4)に基づいて推定する。蛇行制御演算部52は、このようなy座標を有する出側および入側の各帯板位置Scを結ぶ直線を、上述した各蛇行量win,woutを零値に抑制した状態における帯板6の通り道として推定する。蛇行制御演算部52は、この推定した通り道に沿って帯板6を進行させるために必要な蛇行制御目標値を設定する。すなわち、蛇行制御演算部52は、上流側蛇行修正装置2における帯板6の出側蛇行量(=ya)と下流側蛇行修正装置3における帯板6の入側蛇行量(=yb)とが式(3)、(4)を満足するように、この蛇行制御目標値を設定する。
続いて、蛇行制御装置5は、上述したステップS102において設定した蛇行制御目標値に基づいて、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3とによる帯板6の蛇行修正を制御する(ステップS103)。ステップS103において、蛇行制御演算部52は、上述したように設定した蛇行制御目標値を上流側蛇行修正装置2の制御部28に与える。これにより、蛇行制御演算部52は、この制御部28を制御し、この制御を通して、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aにおける蛇行量winを零値に抑制するように上流側蛇行修正装置2による帯板6の蛇行修正を制御する。これに並行して、蛇行制御演算部52は、上述したように設定した蛇行制御目標値を下流側蛇行修正装置3の制御部38に与える。これにより、蛇行制御演算部52は、この制御部38を制御し、この制御を通して、ドライプレーティング処理設備4の出側開口部4bにおける蛇行量woutを零値に抑制するように下流側蛇行修正装置3による帯板6の蛇行修正を制御する。
つぎに、蛇行制御装置5は、払出装置1による帯板6の払出位置の調整を制御する(ステップS104)。ステップS104において、入側蛇行量演算部53は、シリンダ位置演算部25から取得した油圧シリンダ22のシリンダ位置sと、蛇行量演算部27から取得した上流側蛇行修正装置2の出側蛇行量wb1とを用い、式(8)に基づいて上流側蛇行修正装置2の入側蛇行量wa1を算出する。払出制御演算部54は、入側蛇行量演算部53から入側蛇行量wa1を取得し、払出装置1の帯板位置検出部16a,16bによって検出された帯板位置Scを取得する。この帯板位置Scは、払出装置1のペイオフリール10の出側(帯板位置検出部16a,16bの位置)における帯板6の幅方向中心位置である。払出制御演算部54は、式(8)に基づく入側蛇行量wa1を零値に抑制するために必要な帯板6の払出位置を払出制御目標値として設定する。払出制御演算部54は、上述したペイオフリール10の出側の帯板位置Scと入側蛇行量演算部53による入側蛇行量wa1とをもとに、ペイオフリール10による帯板6の払出位置の調整を制御する。具体的には、払出制御演算部54は、ペイオフリール10による帯板6の現在の払出位置を監視しつつ、上述したように設定した払出制御目標値を払出装置1の制御部18に与える。これにより、払出制御演算部54は、制御部18を制御し、この制御を通して、ペイオフリール10による帯板6の現在の払出位置を設定の払出制御目標値に近づけるように払出装置1による帯板6の払出位置の調整を制御する。
その後、蛇行制御装置5は、プロセスラインにおける帯板6の搬送が終了していなければ(ステップS105,No)、上述したステップS101に戻り、このステップS101以降の処理ステップを繰り返す。一方、プロセスラインにおける帯板6の搬送が終了した場合(ステップS105,Yes)、蛇行制御装置5は本処理を終了する。
ここで、蛇行修正ロールの傾動によって帯板蛇行を修正する蛇行修正装置において、蛇行修正量は、一般に、蛇行修正ロールの傾動量(傾動角度)に比例する。故に、上流側蛇行修正装置2による帯板6の蛇行修正量は、上流側蛇行修正装置2の油圧シリンダ22をそのピストンに沿って最大限にストロークして蛇行修正ロール20a,20bを最大限に傾動させた際に最大となる。仮に、上流側蛇行修正装置2の入側において、この上流側蛇行修正装置2による最大の蛇行修正量を超える蛇行が帯板6に発生した場合、上流側蛇行修正装置2は、この帯板6の蛇行を修正しきれない。これに起因して、上流側蛇行修正装置2の最大の蛇行修正量を超過する分の帯板6の蛇行を制御することができず、この結果、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3との間における帯板6の蛇行を十分に抑制することができない。このことは、上流側蛇行修正装置2からドライプレーティング処理設備4を通って下流側蛇行修正装置3へ進行する帯板6の幅方向両端部と、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aおよび出側開口部4bの少なくとも一方との接触を引き起こす。この結果、帯板6の破断または変形等の不具合が発生してしまう。
これに対し、本発明の実施の形態では、上述したステップS104において、式(8)に基づく上流側蛇行修正装置2の入側蛇行量wa1を零値に抑制するように払出制御目標値を設定し、ペイオフリール10による帯板6の払出位置を設定の払出制御目標値に近づけるように、帯板6の払出位置を制御している。このため、払出後の帯板6の入側蛇行量wa1が上流側蛇行修正装置2による最大の蛇行修正量を超過する事態を防止できる。これにより、払出後の帯板6の蛇行を上流側蛇行修正装置2によって十分に修正できるようになる。この結果、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3との間における帯板6の蛇行を十分に抑制できることから、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aおよび出側開口部4bの少なくとも一方と帯板6の幅方向量端部との接触を一層確実に防止して、帯板6の不具合防止を促進できる。
また、本発明の実施の形態において、下流側蛇行修正装置3の入側蛇行量wa2は、上述した蛇行制御目標値に基づく帯板6の蛇行修正の制御により、下流側蛇行修正装置3の蛇行修正量の限度内に抑制されている。このため、下流側蛇行修正装置3は、帯板6の蛇行を十分に修正することができる。
(実施例)
つぎに、本発明の実施例について説明する。図7は、帯板の蛇行修正に要したシリンダストローク量のシミュレーション結果を示す図である。図8は、処理設備入口における帯板の蛇行量のシミュレーション結果を示す図である。図9は、処理設備出口における帯板の蛇行量のシミュレーション結果を示す図である。
本実施例では、図1に示したプロセスラインに、片側40[mm]を超える蛇行量をもつ帯板6を通板し、本発明にかかる蛇行制御方法により、この帯板6の蛇行を制御した際にドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aおよび出側開口部4bの各々において発生する帯板6の蛇行量をシミュレーションした。また、本実施例に対する比較例として、同様の蛇行量をもつ帯板6をプロセスラインに通板し、従来の蛇行制御方法により、この帯板6の蛇行を制御した際の入側開口部4aおよび出側開口部4bの各々における帯板6の蛇行量をシミュレーションした。なお、従来の蛇行制御方法は、蛇行修正装置の出側すなわち帯板位置検出箇所において帯板6の蛇行量を零値に修正するように帯板6の蛇行を制御するものである。
また、本実施例および比較例のシミュレーション条件として、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aおよび出側開口部4bと帯板6との幅方向間隙d(図3参照)を15[mm]とした。また、図1に示した油圧シリンダ12,22,32の各ピストンに沿ったストローク量(以下、シリンダストローク量という)の上限を+100[mm]とし、下限を−100[mm]とした。
比較例では、図7に示すように、上流側蛇行修正装置2によって帯板6の蛇行を修正する際の油圧シリンダ22のシリンダストローク量が上下限を超える事態が発生した。これは、上流側蛇行修正装置2の入側において上流側蛇行修正装置2の蛇行修正能力の限度を超える蛇行が帯板6に発生したためと考えられる。また、図8に示すように、シリンダストローク量が上下限を超えたタイミングにおいて、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aに位置する帯板6に、幅方向間隙dを超える蛇行量36.70[mm]の蛇行が発生した。これと同じタイミングにおいて、図9に示すように、ドライプレーティング処理設備4の出側開口部4bに位置する帯板6に、幅方向間隙dを超える蛇行量37.32[mm]の蛇行が発生した。以上の結果から、比較例では、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aおよび出側開口部4bと帯板6の幅方向端部とが接触してしまい、これに起因して、帯板6の破断または変形等の不具合が発生する。さらには、上流側蛇行修正装置2において帯板6のロールアウトを起こす危険性が高い。すなわち、比較例では、帯板6を安定的に連続搬送すること、並びに、処理設備の狭隘な入口および出口と帯板6との接触を防止することは困難であることが確認できた。
これに対し、本実施例では、比較例において油圧シリンダ22の上下限を超えていたシリンダストローク量を上下限内、具体的には50.11[mm]にまで低減することができた。これは、上述した払出制御目標値に基づいて帯板6の払出位置を制御したことが要因と考えられる。また、本実施例では、図8に示すように、比較例において帯板6と入側開口部4aとの幅方向間隙dを超えた蛇行量(=36.70[mm])を幅方向間隙d以下の蛇行量12.84[mm]に低減できた。さらには、図9に示すように、比較例において帯板6と出側開口部4bとの幅方向間隙dを超えた蛇行量(=37.32[mm])を幅方向間隙d以下の蛇行量13.92[mm]に低減できた。以上の結果から、本実施例では、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aおよび出側開口部4bと帯板6の幅方向端部との接触を回避でき、これにより、帯板6の不具合を防止することができる。さらには、上流側蛇行修正装置2の入側における帯板6の蛇行量を上流側蛇行修正装置2の蛇行修正能力の限度内に抑制することができる。すなわち、本実施例では、処理設備の狭隘な入口および出口と帯板6との接触を防止できるとともに、帯板6の連続搬送を一層安定して実現できることが確認できた。
以上、説明したように、本発明の実施の形態では、上流側蛇行修正装置と下流側蛇行修正装置との間に位置して帯板の搬送方向の上流側と下流側とに離間する上流側位置および下流側位置における帯板の各蛇行量を、上流側蛇行修正装置に対する上流側位置、下流側位置、および下流側蛇行修正装置の相対位置関係と、下流側蛇行修正装置における帯板の入側蛇行量と、上流側蛇行修正装置における帯板の出側蛇行量とをもとに推定し、推定した帯板の各蛇行量の抑制に必要な蛇行制御目標値を設定し、設定した蛇行制御目標値に基づいて、上流側蛇行修正装置と下流側蛇行修正装置とによる帯板の蛇行修正を制御している。
このため、上流側蛇行修正装置によって上流側位置における帯板の蛇行量を可能な限り抑制できるとともに、下流側蛇行修正装置によって下流側位置における帯板の蛇行量を可能な限り抑制できる。このような上流側位置と下流側位置とをこの順に通る帯板の通り道を考慮して、上流側蛇行修正装置と下流側蛇行修正装置との間に設置される処理設備の入口および出口の配置を決めることにより、この処理設備の入口および出口における帯板の各蛇行量を、これら入口および出口と帯板との幅方向間隙以下に抑制できる。これにより、たとえ処理設備の入口および出口が狭隘なものであっても、帯板の幅方向端部と処理設備の入口および出口との意図せぬ接触を防止できる。この結果、帯板の破断または変形等の搬送上の不具合を抑制できることから、処理設備に対して帯板を安定的に連続搬送することができる。
また、本発明の実施の形態では、上述した上流側位置および下流側位置のうち、上流側位置と処理設備の入口とを対応させ、この上流側位置における帯板の蛇行量を、この処理設備の入口における帯板の蛇行量として推定している。さらには、下流側位置と処理設備の出口とを対応させ、この下流側位置における帯板の蛇行量を、この処理設備の出口における帯板の蛇行量として推定している。以上の結果、処理設備の入口および出口における帯板の各蛇行量を可能な限り抑制でき、これら入口および出口における各蛇行量を幅方向間隙以下に十分抑制できることから、処理設備に対して帯板を一層安定的に連続搬送することができる。
さらに、本発明の実施の形態では、帯板を順次払い出すペイオフリールの出側における帯板位置と上流側蛇行修正装置の入側における帯板の入側蛇行量とをもとに、ペイオフリールによる帯板の払出位置の調整を制御している。このため、上記帯板の入側蛇行量を抑制するようにペイオフリールからの帯板の払出位置を制御することができる。これにより、払出後の帯板の入側蛇行量を、上流側蛇行修正装置による蛇行修正能力の限度内に抑制できることから、帯板のロールアウトを起こすことなく、上流側蛇行修正装置による帯板の十分な蛇行修正を確保することができる。この結果、上流側蛇行修正装置と下流側蛇行修正装置との間における帯板の蛇行修正を安定して行うことができ、これにより、処理設備の入口および出口における帯板の各蛇行量を幅方向間隙以下に一層安定して抑制することができる。
なお、上述した実施の形態では、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3との間において、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aおよび出側開口部4bを上流側位置P1および下流側位置P2に各々対応させていたが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、上流側位置P1および下流側位置P2は、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3との間に位置して帯板6の搬送方向に互いに離間していればよい。例えば、上流側位置P1および下流側位置P2は、ドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aと出側開口部4bとの間の位置(ドライプレーティング処理設備4の内部位置)であってもよい。また、上流側位置P1は、上流側蛇行修正装置2の帯板位置検出部26a,26bとドライプレーティング処理設備4の入側開口部4aとの間の位置であってもよい。下流側位置P2は、ドライプレーティング処理設備4の出側開口部4bと下流側蛇行修正装置3の入側との間の位置であってもよい。
また、上述した実施の形態では、図6に示すように、帯板6の払出位置の調整を制御するステップS104を、帯板6の蛇行修正を制御するステップS103の後に行っていたが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、上述したステップS104は、帯板6をペイオフリール10から払い出して順次搬送する期間、所望のタイミングに行ってもよい。例えば、帯板6の蛇行修正を制御する前に帯板6の払出位置の調整を制御してもよいし、これら蛇行修正の制御と払出位置の制御とを並行して行ってもよい。
さらに、上述した実施の形態では、帯板位置検出部によって帯板6の幅方向中心位置を検出していたが、これに限らず、帯板位置検出部によって検出される帯板6の位置は、帯板6の幅方向端部の位置であってもよいし、幅方向端部と幅方向中心との間の所定位置であってもよい。
また、上述した実施の形態では、蛇行修正対象の帯状体の一例として帯板6(帯状の金属材)を例示したが、これに限らず、紙またはフィルム等の帯状の非金属材を蛇行修正対象の帯状体としてもよい。すなわち、本発明にかかる蛇行制御装置および蛇行制御方法は、帯状の金属材または帯状の非金属材等の各種帯状体に適用可能である。
さらに、上述した実施の形態では、帯板6に対して所定の処理を行う処理設備の一例としてドライプレーティング処理設備4を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、上流側蛇行修正装置2と下流側蛇行修正装置3との間に設置される処理設備は、熱処理炉、圧延機、酸洗処理設備等の帯状の金属材に対して連続的な処理を行う設備であってもよいし、帯状の非金属材に対して連続的な処理を行う設備であってもよい。
また、上述した実施の形態により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明に含まれる。