以下に、添付図面を参照して、本発明に係る幅圧下装置および幅圧下装置のサイドガイド位置制御方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態では、幅圧下対象の金属材の一例として、熱延鋼板を製造する熱間圧延ラインの被圧延材(スラブ等)を例示するが、本実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
(幅圧下装置)
まず、本発明の実施の形態に係る幅圧下装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る幅圧下装置の一構成例を示す図である。本実施の形態に係る幅圧下装置1は、例えば熱間圧延ラインの搬送経路11に沿って搬送される複数の被圧延材を順次幅圧下する装置であり、図1に示すように、サイドガイド装置2と、幅プレス機5と、キャンバー量測定部8と、演算処理部9と、制御部10とを備える。
サイドガイド装置2は、幅圧下前の被圧延材の幅方向中心位置を決定するものである。図1に示すように、サイドガイド装置2は、一対のサイドガイド3a,3bと、一対のガイド駆動部4a,4bとを備える。サイドガイド装置2は、被圧延材の搬送経路11に沿って幅プレス機5の入側に配置される。
一対のサイドガイド3a,3bは、幅圧下前の被圧延材の幅方向中心位置を決定するための板状のガイド部材である。図1に示すように、一対のサイドガイド3a,3bは、各々、被圧延材の幅方向端部に押し付ける平坦部と、この平坦部に対し搬送経路11の外側に向かって傾斜する傾斜部とを有する。本実施の形態において、一対のサイドガイド3a,3bのうち、一方のサイドガイド3aは、熱間圧延ラインにおける作業側(OP側)のガイド部材であり、他方のサイドガイド3bは、熱間圧延ラインにおける駆動側(DR側)のガイド部材である。これらのサイドガイド3a,3bは、搬送経路11に沿って搬送される被圧延材の幅方向D1に対向するよう配置される。この際、各サイドガイド3a,3bの平坦部同士は、被圧延材の幅方向D1に対向し、且つ、各サイドガイド3a,3bの傾斜部は、これら平坦部同士の対向空間よりも幅広な空間をサイドガイド装置2の入側に形成する。
一対のガイド駆動部4a,4bは、一対のサイドガイド3a,3bを被圧延材の幅方向D1に往復動作(図1の太線両側矢印参照)させるものである。本実施の形態において、一対のガイド駆動部4a,4bの各々は、例えば油圧式の駆動部である。図1に示すように、一対のガイド駆動部4a,4bのうち、一方のガイド駆動部4aは、制御部10による制御に基づいて、OP側のサイドガイド3aを被圧延材の幅方向D1に往復動作させる。他方のガイド駆動部4bは、制御部10による制御に基づいて、DR側のサイドガイド3bを被圧延材の幅方向D1に往復動作させる。
上述した構成を有するサイドガイド装置2は、被圧延材の幅方向D1に対向する一対のサイドガイド3a,3bを用い、一対のガイド駆動部4a,4bによって一対のサイドガイド3a,3bを各々動作させて、幅圧下前の被圧延材の幅方向中心位置を決定する。この際、図1に示すように、サイドガイド装置2は、幅プレス機5による前材15の幅圧下が終了した後、この前材15に後続する当材16を、一対のサイドガイド3a,3bによって幅方向D1に挟んで拘束する。これにより、サイドガイド装置2は、制御部10による制御に基づく修正後のサイドガイド中心位置S1と当材16の幅方向中心位置S4とを一致させるとともに、後述する幅プレス機5の幅プレス中心位置S2に対する当材16の幅方向中心位置S4を決定する。その後、サイドガイド装置2は、一対のサイドガイド3a,3bによる当材16の拘束を解除して、この当材16の搬送経路11に沿った搬送を可能にする。
本実施の形態において、当材16は、熱間圧延ラインの搬送経路11に沿って順次搬送される複数の被圧延材のうち、サイドガイド装置2によって幅方向中心位置が今回決定される被圧延材である。前材15は、当材16に先行してサイドガイド装置2により幅方向中心位置が既に決定され、当材16の前に幅プレス機5によって前回幅圧下された被圧延材である。これらの前材15および当材16として、例えば、熱間圧延ラインの加熱炉(図示せず)による加熱後のスラブ等の鉄鋼材(被圧延材)が挙げられる。
また、本実施の形態において、サイドガイド中心位置S1は、被圧延材の幅方向D1に対向する一対のサイドガイド3a,3bの対向方向中心位置である。具体的には、図1に示すように、サイドガイド中心位置S1は、一対のサイドガイド3a,3b間の対向方向(幅方向D1)の中心位置である。幅方向中心位置S4は、前材15および当材16に例示される被圧延材の幅方向D1の中心位置である。
幅プレス機5は、サイドガイド装置2によって幅方向中心位置が決定された被圧延材を幅圧下するものである。図1に示すように、幅プレス機5は、一対の幅プレス金型6a,6bと、一対の金型駆動部7a,7bとを備える。幅プレス機5は、被圧延材の搬送経路11に沿ってサイドガイド装置2の出側に配置される。
一対の幅プレス金型6a,6bは、サイドガイド装置2による幅方向中心位置の決定後の被圧延材を幅圧下(幅プレス)するための幅圧下用金型である。図1に示すように、一対の幅プレス金型6a,6bは、各々、被圧延材をその幅方向D1の正負両側からプレスする平坦部および傾斜部を有する。本実施の形態において、一対の幅プレス金型6a,6bのうち、一方の幅プレス金型6aは、熱間圧延ラインにおけるOP側の金型であり、他方の幅プレス金型6bは、熱間圧延ラインにおけるDR側の金型である。これらの幅プレス金型6a,6bは、搬送経路11に沿って搬送される被圧延材の幅方向D1に対向するよう配置される。この際、各幅プレス金型6a,6bの平坦部同士は、被圧延材の幅方向D1に対向し、且つ、各幅プレス金型6a,6bの傾斜部は、これら平坦部同士の対向空間よりも幅広な空間を、当該平坦部から幅プレス機5の入側に向けて形成する。
一対の金型駆動部7a,7bは、一対の幅プレス金型6a,6bを被圧延材の幅方向D1に往復動作(図1の太線両側矢印参照)させるものである。本実施の形態において、図1に示すように、一対の金型駆動部7a,7bのうち、一方の金型駆動部7aは、OP側の幅プレス金型6aを被圧延材の幅方向D1に往復動作させ、他方の金型駆動部7bは、DR側の幅プレス金型6bを被圧延材の幅方向D1に往復動作させる。
上述した構成を有する幅プレス機5は、被圧延材の幅方向D1に対向する一対の幅プレス金型6a,6bを用い、一対の金型駆動部7a,7bによって一対の幅プレス金型6a,6bを各々動作させて、幅方向中心位置の決定後の被圧延材を幅圧下する。この際、一対の金型駆動部7a,7bは、図1に示す搬送経路中心位置S3を中心として、一対の幅プレス金型6a,6bを被圧延材の幅方向D1に対称的に往復動作させる。すなわち、一対の幅プレス金型6a,6bは、その幅プレス中心位置S2と搬送経路中心位置S3とが一致するように配置されている。なお、幅プレス機5の幅圧下量は、例えば、熱間圧延ラインの操業を管理するプロセスコンピュータ(図示せず)によって設定される。
本実施の形態において、幅プレス中心位置S2は、被圧延材の幅方向D1に対向する一対の幅プレス金型6a,6bの対向方向中心位置である。具体的には、図1に示すように、幅プレス中心位置S2は、一対の幅プレス金型6a,6b間の対向方向(幅方向D1)の中心位置である。また、搬送経路中心位置S3は、搬送対象の被圧延材の幅方向D1における搬送経路11の中心位置である。
キャンバー量測定部8は、当材16に先行する前材15の幅圧下後のキャンバー量を測定するものである。具体的には、キャンバー量測定部8は、撮像装置等を用いて構成され、図1に示すように、幅プレス機5の出側に配置される。キャンバー量測定部8は、サイドガイド装置2によって当材16の幅方向中心位置S4が決定される前に、幅プレス機5によって幅圧下された前材15のキャンバーの発生方向および発生量を、撮像装置等によって光学的に検出する。キャンバー量測定部8は、この前材15におけるキャンバーの検出結果に対して所定の画像処理等を行い、これにより、前材15のキャンバー量を、前材15の長手方向D2の全域における幅方向D1への曲がり量として測定する。この際、キャンバー量測定部8は、前材15のキャンバーの発生方向を、前材15のキャンバー量(測定値)の正負の符号によって区別する。キャンバー量測定部8は、このように前材15のキャンバー量を測定する都度、測定したキャンバー量を演算処理部9に送信する。
演算処理部9は、当材16の幅圧下時のキャンバー発生を抑制するために必要なサイドガイド装置2のサイドガイド中心位置S1の修正量ΔSを算出するものである。本実施の形態において、演算処理部9は、サイドガイド装置2が当材16の幅方向中心位置S4を決定する際に修正すべきサイドガイド中心位置S1の幅プレス中心位置S2に対する位置ズレの修正量を、目的とするサイドガイド中心位置S1の修正量ΔSとして、前材15のキャンバー量をもとに算出する。
ここで、キャンバー量測定部8によって測定されたキャンバー量のキャンバーが前材15に発生した場合、当材16の幅方向中心位置S4を今回決定しようとするサイドガイド装置2には、この発生したキャンバーに応じたサイドガイド中心位置S1の幅プレス中心位置S2に対する位置ズレが生じている。また、被圧延材の幅圧下後のキャンバー量は、幅圧下前の被圧延材の材幅(幅方向D1の長さ)が小さいほど、また、幅プレス機5による被圧延材の幅圧下量が大きいほど、増大する。
したがって、演算処理部9は、キャンバー量測定部8によって測定された前材15のキャンバー量をもとに、前材15と当材16との幅圧下前の材幅および幅圧下量の違いによるキャンバー量の変化を加味して、目的とするサイドガイド中心位置S1の修正量ΔSを算出する。詳細には、演算処理部9は、キャンバー量測定部8から取得した前材15のキャンバー量(測定値)に対し、前材15と当材16との幅圧下前の材幅の違いによるキャンバー量の補正処理と、前材15と当材16との設定された幅圧下量の違いによるキャンバー量の補正処理とを行う。演算処理部9は、これらの補正処理によって得られる補正後の前材15のキャンバー量を、サイドガイド装置2が当材16の幅方向中心位置S4を決定する際のサイドガイド中心位置S1の修正量ΔSに換算する。これにより、演算処理部9は、目的とするサイドガイド中心位置S1の修正量ΔSを算出する。
具体的には、演算処理部9は、例えば、キャンバー量測定部8によって測定された前材15のキャンバー量Cam0と、前材15の幅圧下前の材幅W0と、前材15の設定の幅圧下量ΔW0と、当材16の幅圧下前の材幅W1と、当材16の設定の幅圧下量ΔW1とを用い、次式(1)に基づいて、目的とするサイドガイド中心位置S1の修正量ΔSを算出する。演算処理部9は、このように修正量ΔSを算出する都度、得られた修正量ΔSを制御部10に送信する。
ただし、式(1)において、チューニング率αは、キャンバー量Cam0を修正量ΔSに換算する係数である。チューニング率αは、例えば、幅圧下対象の被圧延材の材長(長手方向D2の長さ)や幅圧下時の材送り量に応じて設定される値である。チューニング率βおよびチューニング率γは、幅圧下時の被圧延材の材幅および幅圧下量に対するキャンバーの発生し易さを示す指標である。チューニング率βおよびチューニング率γは、例えば、一対のサイドガイド3a,3bの開度や幅プレス機5の幅圧下力および一対の幅プレス金型6a,6bの金型形状に応じて設定される値である。
また、式(1)の右辺において、項(W1/W0)βは、前材15と当材16との幅圧下前の材幅W0,W1の違いによるキャンバー量Cam0の補正項である。項(ΔW1/ΔW0)γは、前材15と当材16との設定された幅圧下量ΔW0,ΔW1の違いによるキャンバー量Cam0の補正項である。
なお、前材15の幅圧下前の材幅W0、前材15の設定の幅圧下量ΔW0、当材16の幅圧下前の材幅W1、および当材16の設定の幅圧下量ΔW1は、例えば、熱間圧延ラインの操業を管理するプロセスコンピュータから演算処理部9に提供される。チューニング率α,β,γは、演算処理部9に予め設定される固定値であってもよいし、幅圧下装置1に設けた入力部(図示せず)によって演算処理部9に可変に入力される可変値であってもよい。
制御部10は、当材16の幅方向中心位置S4を決定する際のサイドガイド装置2のサイドガイド中心位置S1を制御するものである。詳細には、制御部10は、演算処理部9によって算出された修正量ΔSに基づき、一対のガイド駆動部4a,4bを制御して、一対のサイドガイド3a,3bを幅方向D1の正側または負側に動作させる。これにより、制御部10は、前材15の幅方向中心位置を決定した際のサイドガイド装置2のサイドガイド中心位置S1を、例えば図1に示すように、演算処理部9による修正量ΔSだけ修正する。このようにして、制御部10は、当材16の幅方向中心位置S4を決定する際のサイドガイド装置2のサイドガイド中心位置S1を、その目標位置に制御する。
本実施の形態において、目標位置は、幅プレス機5による当材16の幅圧下後のキャンバー量を可能な限り低減し得る(好ましくは零値にし得る)目標のサイドガイド中心位置である。この目標位置は、前材15の幅圧下後のキャンバー量に幅方向D1の温度偏差に起因するキャンバー量が含まれる場合、必ずしも幅プレス中心位置S2と一致するとは限らない。すなわち、幅方向D1の温度偏差に起因する前材15のキャンバー量(以下、「温度偏差起因のキャンバー量」という)がサイドガイド中心位置S1と幅プレス中心位置S2との位置ズレに起因する前材15のキャンバー量(以下、「位置ズレ起因のキャンバー量」という)に比して無視できない程度に大きい場合、上述の目標位置は、位置ズレ起因のキャンバー量を増大させずに温度偏差起因のキャンバー量を低減する方向に幅プレス中心位置S2から若干ズレた位置になる。一方、温度偏差起因のキャンバー量が位置ズレ起因のキャンバー量に比して無視できる程度に小さい場合、上述の目標位置は、幅プレス中心位置S2と一致する。
また、制御部10は、上述したように目標位置に修正したサイドガイド中心位置S1を維持しながら、一対のサイドガイド3a,3bによって当材16の幅方向中心位置S4を決定するように、一対のガイド駆動部4a,4bを制御する。このようにして、制御部10は、幅圧下前の当材16の幅方向中心位置S4と上述の目標位置とを一致させる位置決め動作をサイドガイド装置2に行わせる。
一方、搬送経路11は、熱間圧延ラインにおいて複数の被圧延材を順次搬送するためのものである。この搬送経路11は、複数の搬送ロール(図示せず)を用いて構成される。図1に示すように、搬送経路11には、前材15および当材16等の被圧延材の搬送方向に並ぶようサイドガイド装置2および幅プレス機5が配置されている。特に図1には図示していないが、サイドガイド装置2よりも搬送経路11の上流側には加熱炉が配置され、幅プレス機5よりも搬送経路11の下流側には粗圧延機が配置されている。すなわち、加熱炉から抽出された被圧延材は、搬送経路11に沿って順次搬送され、サイドガイド装置2および幅プレス機5をこの順に通り、その後、粗圧延機等の熱間圧延ラインの各種設備を通る。
なお、本実施の形態において、幅方向D1は、図1に示す前材15および当材16に例示される被圧延材(幅圧下対象の金属材の一例)の幅方向であり、搬送経路11の幅方向、すなわち、搬送経路11を構成する搬送ロールのロール軸方向と同じである。この幅方向D1は、例えば図1に示すように、搬送経路11のOP側を正とし、DR側を負とする。長手方向D2は、被圧延材の長手方向であり、搬送経路11に沿った被圧延材の搬送方向(図1中の太線矢印参照)と同じである。この長手方向D2は、被圧延材の先端側を正とし、尾端側を負とする。これらの幅方向D1および長手方向D2は、被圧延材の厚さ方向に対して垂直な方向である。
(被圧延材のキャンバー量)
つぎに、本発明の実施の形態における被圧延材の幅圧下後のキャンバー量について説明する。以下では、図1に示した前材15の幅圧下後のキャンバー量Cam0を例示して、本実施の形態における被圧延材の幅圧下後のキャンバー量の定義を説明するが、このキャンバー量の定義は、当材16等、前材15以外の被圧延材についても同様である。
図2は、本発明の実施の形態における被圧延材の幅圧下後のキャンバー量を説明する図である。図2に示すように、前材15の幅圧下後のキャンバー量Cam0は、幅圧下後の前材15の長手方向D2に対する幅方向D1の正側または負側(図2では負側)の曲がり量として定義される。
具体的には、本実施の形態において、キャンバー量Cam0は、幅圧下後の前材15の幅方向中心位置S4と前材15の基準位置S5との距離の最大値として定義される。なお、基準位置S5は、図2に示すように、前材15の先端部15aにおける幅方向中心位置Waと尾端部15bにおける幅方向中心位置Wbとを通る直線(基準線)によって表される。図2に示す例では、キャンバー量Cam0は、前材15の長手方向D2の中心位置における幅方向中心位置S4と基準位置S5との距離になる。
また、キャンバー量Cam0の正負の符号(キャンバーの発生方向)は、前材15の基準位置S5に対する幅方向中心位置S4の位置ズレの方向と幅方向D1との関係によって決定される。図2に示す例では、幅方向中心位置S4は、基準位置S5に対して幅方向D1の負側に位置ズレしているため、キャンバー量Cam0は、負の値になる。特に図示しないが、幅方向中心位置S4が基準位置S5に対して幅方向D1の正側に位置ズレしている場合、キャンバー量Cam0は、正の値になる。
(被圧延材のキャンバー発生のしくみ)
つぎに、本発明の実施の形態における被圧延材の幅圧下によるキャンバー発生のしくみについて説明する。図3は、本発明の実施の形態における被圧延材の幅圧下によるキャンバー発生のしくみを説明する図である。
図3に示すように、幅圧下対象の被圧延材17は、幅プレス機5による幅圧下の前に、サイドガイド装置2の一対のサイドガイド3a,3bによって拘束される。これにより、被圧延材17の幅方向中心位置は、サイドガイド中心位置S1と一致するように決定される。その後、被圧延材17は、一対のサイドガイド3a,3bの開動作によってその拘束から解放され、一対のサイドガイド3a,3b間を通過して幅プレス機5の入側に進入する。ここで、サイドガイド装置2が被圧延材17の幅方向中心位置を決定する際のサイドガイド中心位置S1が、幅プレス機5の幅プレス中心位置S2に対してOP側に位置ズレしていた場合、被圧延材17の幅方向中心位置は、幅プレス中心位置S2に対してOP側に位置ズレした状態にある。この場合、被圧延材17は、幅プレス機5の入側に進入した際、一対の幅プレス金型6a,6bのうち、OP側の幅プレス金型6aに先に接触する(状態A1)。
図3の状態A1に例示されるように、被圧延材17がDR側の幅プレス金型6bに比して先にOP側の幅プレス金型6aと接触した場合、被圧延材17は、DR側に傾いた状態で一対の幅プレス金型6a,6b間に進入する(状態A2)。その後、被圧延材17は、このDR側に傾いた状態を維持しながら、一対の幅プレス金型6a,6b間に順次進入する。
幅プレス機5は、幅プレス中心位置S2を中心にして対称的に一対の幅プレス金型6a,6bを往復動作させ、上述したようにDR側に傾いた状態の被圧延材17を、その長手方向全域に亘り、これらの幅プレス金型6a,6bを用いて幅圧下(幅プレス)する。この結果、被圧延材17のうちDR側の部分がOP側の部分に比して長く伸ばされて、DR側に曲がるキャンバーが被圧延材17に発生する(状態A3)。このように幅圧下によって被圧延材17に発生したキャンバーの量および方向は、上述した前材15のキャンバー量Cam0およびその正負の符号によって表される。
図3の状態A1,A2,A3によって例示したように、被圧延材17(前材15および当材16等)の幅方向中心位置が決定される際のサイドガイド中心位置S1が幅プレス中心位置S2に対してOP側に位置ズレしている場合、幅プレス機5による幅圧下後の被圧延材17には、DR側に曲がるキャンバーが発生する。一方、被圧延材17の幅方向中心位置が決定される際のサイドガイド中心位置S1が幅プレス中心位置S2に対してDR側に位置ズレしている場合、特に図示しないが、上述した状態A1,A2,A3とは逆のしくみによって、幅プレス機5による幅圧下後の被圧延材17には、OP側に曲がるキャンバーが発生する。
(幅圧下装置のサイドガイド位置制御方法)
つぎに、本発明の実施の形態に係る幅圧下装置のサイドガイド位置制御方法について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る幅圧下装置のサイドガイド位置制御方法の一例を示すフローチャートである。本発明の実施の形態に係る幅圧下装置のサイドガイド位置制御方法において、幅圧下装置1(図1参照)は、図4に示すステップS101〜S105を順次実行する。
すなわち、図4に示すように、幅圧下装置1は、まず、前材15の幅圧下によるキャンバー量Cam0を測定する(ステップS101)。ステップS101において、キャンバー量測定部8は、サイドガイド装置2によって当材16の幅方向中心位置S4が今回決定される前、例えば、当材16が一対のサイドガイド3a,3b間に進入する前に、幅プレス機5によって前回幅圧下された前材15のキャンバー量Cam0を測定する。
詳細には、キャンバー量測定部8は、幅プレス機5の出側に送出された前材15を撮像する等して、この前材15の幅方向D1への曲がり形状を光学的に検出する。ついで、キャンバー量測定部8は、検出した前材15の画像等の光学的データに対して所定の画像処理等を行い、これにより、前材15の長手方向D2に対する幅方向D1の正側または負側への曲がり量(例えば搬送経路中心位置S3に対する前材15の幅方向中心位置の曲がり量)を得る。キャンバー量測定部8は、このような前材15の曲がり量を、前材15の幅圧下によるキャンバー量Cam0(正または負の値)として測定する。キャンバー量測定部8は、測定したキャンバー量Cam0を演算処理部9に送信する。
ステップS101を実行後、幅圧下装置1は、当材16の幅方向中心位置S4を決定する際に修正すべきサイドガイド中心位置S1の修正量ΔSを算出する(ステップS102)。ステップS102において、演算処理部9は、上述したステップS101によって測定された前材15のキャンバー量Cam0をもとに、前材15と当材16との幅圧下前の材幅および幅圧下量の違いによるキャンバー量の変化を加味して、目的とするサイドガイド中心位置S1の修正量ΔSを算出する。
詳細には、演算処理部9は、キャンバー量測定部8から前材15のキャンバー量Cam0を取得する。また、演算処理部9は、プロセスコンピュータ等から、前材15の幅圧下前の材幅W0と、幅プレス機5によって前材15を幅圧下する際の幅圧下条件として設定された前材15の幅圧下量ΔW0(設定値)と、当材16の幅圧下前の材幅W1と、幅プレス機5によって当材16を幅圧下する際の幅圧下条件として設定された当材16の幅圧下量ΔW1(設定値)とを取得する。演算処理部9は、これらの取得した前材15のキャンバー量Cam0と、前材15の幅圧下前の材幅W0と、前材15の設定の幅圧下量ΔW0と、当材16の幅圧下前の材幅W1と、当材16の設定の幅圧下量ΔW1とを用い、上述した式(1)に基づいて、目的とするサイドガイド中心位置S1の修正量ΔSを算出する。演算処理部9は、算出した修正量ΔSを制御部10に送信する。
ステップS102を実行後、幅圧下装置1は、サイドガイド装置2によって当材16の幅方向中心位置S4を決定する際のサイドガイド中心位置S1を制御する(ステップS103)。ステップS103において、制御部10は、前材15の幅方向中心位置を決定した際のサイドガイド装置2のサイドガイド中心位置S1を、上述したステップS102によって算出された修正量ΔSだけ修正して、当材16の幅方向中心位置S4を決定する際のサイドガイド装置2のサイドガイド中心位置S1を制御する。
詳細には、制御部10は、演算処理部9から、算出された修正量ΔSを取得する。ついで、制御部10は、前材15の幅方向中心位置を決定した後から当材16が一対のサイドガイド3a,3b間に進入する前までの期間において、この一対のサイドガイド3a,3b間のサイドガイド中心位置S1を、上記の修正量ΔSだけ幅方向D1の正側または負側にシフトした位置(すなわち目標位置)に変更する。これにより、制御部10は、当材16の幅方向中心位置S4を決定する際のサイドガイド中心位置S1を、その目標位置に制御する。
ステップS103を実行後、幅圧下装置1は、一対のサイドガイド3a,3bを用いて幅圧下前の当材16の幅方向中心位置を決定する(ステップS104)。ステップS104において、サイドガイド装置2は、一対のサイドガイド3a,3b間に当材16を受け入れる。制御部10は、上述した目標位置に変更後のサイドガイド中心位置S1(以下、単に「変更後のサイドガイド中心位置S1」と略記する)を中心として、一対のサイドガイド3a,3bを幅方向D1に往復動作させるよう、一対のガイド駆動部4a,4bを制御する。
サイドガイド装置2は、この制御部10による制御に基づき、変更後のサイドガイド中心位置S1を中心として、一対のサイドガイド3a,3bの間隔(開度)が当材16の材幅と一致するまで一対のサイドガイド3a,3bを閉める。これにより、サイドガイド装置2は、一対のサイドガイド3a,3b間に当材16を拘束して、この当材16の幅方向中心位置S4を変更後のサイドガイド中心位置S1と一致させる。このようにして、サイドガイド装置2は、幅圧下前の当材16の幅方向中心位置S4を、変更後のサイドガイド中心位置S1(目標位置)に決定する。その後、サイドガイド装置2は、一対のガイド駆動部4a,4bの作用により、一対のサイドガイド3a,3bを、当材16の材幅に比して所定値分(例えば50[mm]程度)大きい間隔をなすよう開ける。これにより、サイドガイド装置2は、一対のサイドガイド3a,3bによる当材16の拘束を解除する。当材16は、その幅方向中心位置S4が目標位置と一致した状態を維持しながら、搬送経路11に沿って幅プレス機5の入側に向けて進行する。
ステップS104を実行後、幅圧下装置1は、上述したステップS104においてサイドガイド装置2により幅方向中心位置S4が決定された当材16を幅プレス機5によって幅圧下し(ステップS105)、本処理を終了する。
ステップS105において、幅プレス機5は、上述のように幅方向中心位置S4が目標位置と一致するよう決定された当材16(以下、「位置決め後の当材16」と略記する)を、一対の幅プレス金型6a,6b間に受け入れる。ついで、幅プレス機5は、一対の金型駆動部7a,7bの作用により、一対の幅プレス金型6a,6bを、幅プレス中心位置S2を中心として対称的に、幅方向D1に往復動作させる。これにより、幅プレス機5は、搬送経路11に沿って順次搬送される位置決め後の当材16を、その長手方向D2の全域に亘って幅圧下する。
幅プレス機5による幅圧下が完了した当材16は、これからサイドガイド装置2によって位置決めされる後続の被圧延材にとっては前材に該当する。このような当材16は、搬送経路11に沿って順次搬送されながら、幅プレス機5の出側においてキャンバー量測定部8によってキャンバー量Cam0を測定され、その後、粗圧延等の熱間圧延ラインにおける必要な処理を施される。幅圧下装置1は、上述したステップS101〜S105の各処理を、被圧延材の幅圧下を完了する都度、繰り返し行う。
ここで、上述したステップS103におけるサイドガイド中心位置S1の制御について具体的に説明する。図5は、幅プレス中心位置に対してOP側に位置ズレしたサイドガイド中心位置の制御を具体的に説明する図である。図6は、幅プレス中心位置に対してDR側に位置ズレしたサイドガイド中心位置の制御を具体的に説明する図である。なお、図5,6において、「S1(前材)」は、前材15の幅方向中心位置を前回決定した際のサイドガイド中心位置S1(以下、「前回のサイドガイド中心位置S1」という)を示す。「S1(当材)」は、当材16の幅方向中心位置を今回決定する際のサイドガイド中心位置S1(以下、「今回のサイドガイド中心位置S1」という)を示す。
図5に示すように、前回のサイドガイド中心位置S1が幅プレス中心位置S2に対してOP側に位置ズレしている場合、幅プレス機5が一対の幅プレス金型6a,6bを用いて幅圧下した前材15には、幅方向D1の負側に曲がるキャンバーが発生する。この場合、上述したステップS103において、制御部10は、演算処理部9が前材15の負のキャンバー量Cam0を用いて算出した修正量ΔSだけ、前回のサイドガイド中心位置S1を幅方向D1の負側へ変更する。
一方、図6に示すように、前回のサイドガイド中心位置S1が幅プレス中心位置S2に対してDR側に位置ズレしている場合、幅プレス機5が一対の幅プレス金型6a,6bを用いて幅圧下した前材15には、幅方向D1の正側に曲がるキャンバーが発生する。この場合、上述したステップS103において、制御部10は、演算処理部9が前材15の正のキャンバー量Cam0を用いて算出した修正量ΔSだけ、前回のサイドガイド中心位置S1を幅方向D1の正側へ変更する。
図5,6に示す何れの場合であっても、制御部10は、前回のサイドガイド中心位置S1を変更した位置を今回のサイドガイド中心位置S1とするよう、一対のサイドガイド3a,3b間のサイドガイド中心位置S1を制御する。これにより、制御部10は、今回のサイドガイド中心位置S1を、その目標位置に制御することができる。
(実施例1)
つぎに、本発明の実施例1について説明する。実施例1では、本発明の効果を検証するために本発明例1を行った。本発明例1の条件として、調査対象の金属材(被圧延材)は、材長が6000〜7000[mm]であり、材厚が250[mm]であり、材幅が1000〜1400[mm]である軟鋼のスラブとした。また、熱間圧延ラインの幅圧下装置は、本発明の実施の形態に係る幅圧下装置1(図1を参照)とし、幅圧下装置1によるスラブの幅圧下量は、100〜200[mm]とした。さらに、幅圧下装置1の演算処理部9に設定する式(1)において、チューニング率αは0.5とし、チューニング率βは0.8とし、チューニング率γは0.4とした。
また、本発明例1において、調査対象のスラブは、熱間圧延ラインの加熱炉によって1200〜1250[℃]まで加熱した。幅圧下装置1は、搬送経路11に沿って順次搬送される加熱後のスラブ毎に、図4に示したステップS101〜S105を繰り返し実行して、スラブの幅圧下によるキャンバー量をもとにサイドガイド中心位置を制御しながらスラブの幅方向中心位置を決定し、幅方向中心位置を決定したスラブを幅圧下した。
一方、実施例1では、上述した本発明例1と比較する比較例1を行った。比較例1では、熱間圧延ラインの幅圧下装置として、スラブの幅圧下によるキャンバー量によらずサイドガイド中心位置を一定に保持してスラブの幅方向中心位置を決定し、幅方向中心位置を決定したスラブを幅圧下する従来の幅圧下装置が用いられた。比較例1の条件として、調査対象のスラブの寸法(材長、材幅、材厚)、鋼種、加熱温度、および幅圧下量は、本発明例1と同じにした。
上述した本発明例1および比較例1の各々において、調査対象のスラブの数は1130本とし、これらのスラブを熱間圧延ラインに順次流した際におけるスラブの幅圧下によるキャンバー量を、幅圧下装置出側に設置したキャンバー計(例えば図1に示したキャンバー量測定部8)が順次測定した。また、幅圧下後のスラブは、搬送経路11に沿って順次搬送し、熱間圧延ラインの各設備(粗圧延機、仕上圧延機等)によって熱延鋼板に加工した後、水冷してコイル状に巻き取った。実施例1では、本発明例1および比較例1の各々について、スラブの幅圧下によるキャンバー量の度数分布と、幅圧下後のスラブを継続して熱間圧延ラインに流した際の通板トラブルの有無とを調査した。
図7は、実施例1における本発明例1の調査結果を示す図である。図7に示すように、本発明例1では、スラブの幅圧下によるキャンバー量の度数分布は、ほぼ−75[mm]以上、75[mm]以下の範囲内に収まった。また、この度数分布の標準偏差σは、35[mm]であった。すなわち、本発明例1では、スラブの幅圧下によるキャンバー量を、スラブの幅方向D1の正負両側についてほぼ75[mm]以下に制御することができた。
ここで、調査に用いた熱間圧延ラインでは、スラブの幅圧下によるキャンバー量が80[mm]を超える場合、幅圧下後のスラブに通板トラブルが発生した。しかし、本発明例1では、スラブの幅圧下によるキャンバー量が幅方向D1の正負両側についてほぼ75[mm]以下に制御できたため、幅圧下後のスラブに通板トラブルは殆ど発生しなかった。
一方、図8は、実施例1における比較例1の調査結果を示す図である。図8に示すように、比較例1では、スラブの幅圧下によるキャンバー量の度数分布は、−75[mm]以上、75[mm]以下の範囲を超えて、ばらついていた。このばらつきを示す標準偏差σは、65[mm]であった。すなわち、比較例1では、スラブの幅圧下によるキャンバー量を、スラブの幅方向D1の正負両側について75[mm]以下に制御することはできなかった。このような比較例1では、幅圧下後のスラブに通板トラブルが頻発した。
図7,8を比較して分かるように、本発明例1では、スラブの幅圧下によるキャンバー量を比較例1よりも低減することができ、さらには、このキャンバー量のばらつきを、比較例1のばらつきの約46[%]程度、低減することができた。この比較結果から、本発明例1では、比較例1よりも、スラブの幅圧下時のキャンバー発生と、キャンバーに起因するスラブの通板トラブルの発生とを大幅に抑制できることが分かった。
(実施例2)
つぎに、本発明の実施例2について説明する。実施例2では、本発明の効果を検証するために本発明例2を行った。本発明例2の条件として、調査対象の金属材(被圧延材)は、材長が7000〜8000[mm]であり、材厚が275[mm]であり、材幅が800〜900[mm]である軟鋼のスラブとした。また、熱間圧延ラインの幅圧下装置は、上述した本発明例1と同様に幅圧下装置1とし、幅圧下装置1によるスラブの幅圧下量は、150〜200[mm]とした。さらに、幅圧下装置1の演算処理部9に設定する式(1)において、チューニング率αは0.4とし、チューニング率βは0.5とし、チューニング率γは0.5とした。なお、本発明例2の他の条件は、上述した本発明例1と同じにした。
一方、実施例2では、上述した本発明例2と比較する比較例2を行った。比較例2では、上述した比較例1と同様の幅圧下装置(従来の幅圧下装置)が用いられた。比較例2の条件として、調査対象のスラブの寸法(材長、材幅、材厚)、鋼種、加熱温度、および幅圧下量は、本発明例2と同じにした。
上述した本発明例2および比較例2の各々において、調査対象のスラブの数は915本とし、これらのスラブを熱間圧延ラインに順次流した際におけるスラブの幅圧下によるキャンバー量を、幅圧下装置出側に設置したキャンバー計が順次測定した。また、幅圧下後のスラブは、搬送経路11に沿って順次搬送し、熱間圧延ラインの各設備(粗圧延機、仕上圧延機等)によって熱延鋼板に加工した後、水冷してコイル状に巻き取った。実施例2では、本発明例2および比較例2の各々について、スラブの幅圧下によるキャンバー量の度数分布と、幅圧下後のスラブを継続して熱間圧延ラインに流した際の通板トラブルの有無とを調査した。
図9は、実施例2における本発明例2の調査結果を示す図である。図9に示すように、本発明例2では、スラブの幅圧下によるキャンバー量の度数分布は、−75[mm]以上、75[mm]以下の範囲内に収まった。また、この度数分布の標準偏差σは、34[mm]であった。すなわち、本発明例2では、スラブの幅圧下によるキャンバー量を、スラブの幅方向D1の正負両側について75[mm]以下に制御することができた。このような本発明例2では、幅圧下後のスラブに通板トラブルは発生しなかった。
一方、図10は、実施例2における比較例2の調査結果を示す図である。図10に示すように、比較例2では、スラブの幅圧下によるキャンバー量の度数分布は、−75[mm]以上、75[mm]以下の範囲を超えて、ばらついていた。このばらつきを示す標準偏差σは、65[mm]であった。すなわち、比較例2では、スラブの幅圧下によるキャンバー量を、スラブの幅方向D1の正負両側について75[mm]以下に制御することはできなかった。このような比較例2では、幅圧下後のスラブに通板トラブルが頻発した。
図9,10を比較して分かるように、本発明例2では、スラブの幅圧下によるキャンバー量を比較例2よりも低減することができ、さらには、このキャンバー量のばらつきを、比較例2のばらつきの約48[%]程度、低減することができた。この比較結果から、本発明例2では、比較例2よりも、スラブの幅圧下時のキャンバー発生と、キャンバーに起因するスラブの通板トラブルの発生とを大幅に抑制できることが分かった。
以上、説明したように、本発明の実施の形態では、サイドガイド装置によって幅方向中心位置が今回決定される被圧延材(当材)の前に幅プレス機によって前回幅圧下された被圧延材(前材)の幅圧下によるキャンバー量を測定し、測定した前材のキャンバー量をもとに、これら前材と当材との幅圧下前の材幅および幅圧下量の違いによるキャンバー量の変化を加味して、サイドガイド装置のサイドガイド中心位置の修正量を算出し、サイドガイド装置が前材の幅方向中心位置を決定した際のサイドガイド中心位置を、この算出した修正量だけ修正して、サイドガイド装置が当材の幅方向中心位置を決定する際のサイドガイド中心位置を制御し、このようにサイドガイド中心位置を制御した一対のサイドガイドを用いて幅圧下前の当材の幅方向中心位置を決定し、この幅方向中心位置を決定後の当材を幅プレス機によって幅圧下している。
このため、前材に幅圧下によるキャンバーが発生した原因となるサイドガイド中心位置の位置ズレを、当材の幅圧下前の材幅および幅圧下量の設定値に合わせて適正に修正することができる。これにより、サイドガイド装置が当材の幅方向中心位置を決定する際のサイドガイド中心位置を、当材について目標とする理想的なサイドガイド中心位置、すなわち、当材の幅圧下によるキャンバー量を可能な限り低減し得る目標位置に、制御することができる。この結果、サイドガイド中心位置と幅プレス中心位置との位置ズレに起因して当材の幅圧下時に発生するキャンバーと、当材の幅方向の温度偏差に起因して当材の幅圧下時に発生するキャンバーとの双方を含む、当材の幅圧下による実質的なキャンバーの発生を抑制することができる。このことから、幅圧下装置の後段に位置する圧延機等の各設備において、幅圧下後の被圧延材の操業トラブルが発生することを可能な限り抑制することができる。
なお、上述した実施の形態では、被圧延材の搬送方向に向かって搬送経路の左側をOP側とし、右側をDR側として、OP側に曲がる被圧延材のキャンバー量を正の値とし、DR側に曲がる被圧延材のキャンバー量を負の値としていたが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明において、キャンバー量の正負の定義(すなわちキャンバーの発生方向の定義)は、上述したものと逆(OP側が負、DR側が正)であってもよい。また、被圧延材の搬送方向に向かって搬送経路の左側をDR側とし、右側をOP側としてもよい。
また、上述した実施の形態では、幅圧下対象の金属材の一例としてスラブ等の被圧延材を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明において、幅圧下対象の金属材は、熱間圧延ライン等の製造ラインにおいて順次搬送されながら幅圧下される金属材であればよく、例えば、スラブや鋼板等の被圧延材であってもよいし、被圧延材以外の鉄鋼材であってもよいし、鉄鋼材(鉄合金材)以外の金属材であってもよい。また、本発明が適用される製造ラインは、幅圧下工程を含む製造ラインであればよく、熱間圧延ラインに限定されない。
さらに、上述した実施の形態では、サイドガイド中心位置の修正量の演算処理に用いるパラメータ、例えば、前材および当材の幅圧下前の材幅や設定の幅圧下量を、プロセスコンピュータから演算処理部に提供(入力)していたが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明において、これらのパラメータは、幅圧下装置に設けた入力部によって演算処理部に入力されてもよい。
また、上述した実施の形態により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。