JP6049032B2 - 磁気多層膜及びトンネル磁気抵抗素子 - Google Patents

磁気多層膜及びトンネル磁気抵抗素子 Download PDF

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Description

本発明は磁気多層膜及びトンネル磁気抵抗素子に関する。
最近、スピントルク型MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory又はMagnetic Random Access Memory)が、微細化に適していることや、高速性かつ低消費電力であることから、不揮発性の混載メモリやDRAM、SRAMの後継として注目されている。
スピントルク型MRAMは、トンネル磁気抵抗素子(TMR素子;Tunnel Magneto-Resistance Element、あるいは磁気トンネル接合素子(MTJ素子)とも呼ばれる)を単位記憶素子として、そこに電流を流すことで強磁性体層の磁化の方向が反転するスピントルク磁化反転と呼ばれる現象を利用した記憶素子である。TMR素子は、簡単に言えば、トンネル障壁層を2つの強磁性体層(2つの強磁性体層の一方を「強磁性下部電極層」、他方を「強磁性上部電極層」と呼ぶこともある)で挟んだ構造を持っている。1つの強磁性体層からトンネル障壁層を介して他の強磁性体層に向かって電流を流した際に、2つの強磁性体層の磁化の方向が平行(パラレル)になったり反平行(アンチパラレル)になったりすることで、TMR素子が低抵抗になったり高抵抗になるトンネル磁気抵抗効果(TMR効果)という現象を、デジタル情報の“1”と“0”に対応させることで、TMR素子が不揮発性の磁気メモリとして利用される。
研究開発の当初は、強磁性層の磁化が膜面内方向に向いた面内磁化であったが、最近ではより高密度化を狙って膜面垂直方向に磁化が向いた垂直磁化を用いたMRAMも開発されつつある。
各種応用に適したTMR素子の構造は、基本的には自由層(フリー層又は記録層)としての強磁性体層/トンネル障壁層/固定層(ピン層)としての強磁性体層の3層構造からなる。この場合、図2(a)のように自由層をトンネル障壁層(4)より上(基板1から遠い側)にするか、あるいは図2(b)のように自由層をトンネル障壁層(4)より下(基板1に近い側)にするかは、それぞれに理由がある。独立行政法人 産業技術総合研究所は、2010年5月13日にスピントルク型MRAMの大容量化を可能にする垂直磁化TMR素子を開発したとプレス発表した。この素子の構造は自由層がトンネル障壁層より下である。他方、特許文献1(特開2007-059927=東芝)の素子は、自由層が上である。
日本国特開2007-059927
2010年5月13日付けの(独立行政法人)産業技術総合研究所プレス発表「スピンRAM(MRAM)の大容量化を可能にする垂直磁化TMR素子」
TMR素子を例えばスピントルク型MRAMの記憶素子や高周波発振素子として用いる場合、自由層としての強磁性体層は、下記の理由1、2から基本的に薄い方が良い。自由層は種々の理由で2層以上の層で構成される多層構造でもよく、この場合も多層構造、特にトンネル障壁層に接する第1の強磁性体層は、同じ理由から薄い方が良い。
(理由1) 素子の用途により、1.スピントルク磁化反転を誘起するのに必要な電流密度、又は2.高周波発振を誘起するのに必要な電流密度は、自由層が薄いほど低くなる。電流密度の低減は消費電力の低減や高密度化につながり、さらに素子の長期信頼性の向上にも有効なので、基本的に電流密度は低いほど良い。
(理由2) 自由層が薄いほど自由層と固定層の間に働く静磁気結合を下げることができる。一般に、この静磁気結合が大きいとMRAMにおいて零磁界付近で2値安定状態を保てなくなるなどの問題が生じるため、素子の動作が不安定になりやすい。さらに、MRAMなどのメモリに利用する場合、多数のTMR素子を1つの基板上にマトリックス上に配置するが、一つの素子の自由層から隣の素子の自由層への漏洩磁界がある。漏洩磁界が大きいと隣の素子の情報書き換えが不安定になるなど、様々な問題が生じる。自由層が薄いほど、この漏洩磁界が小さくなるので応用上好ましい。
トンネル障壁層として最も優れている材料は、(001)結晶面が優先配向した単結晶又は多結晶の酸化マグネシウム(以下、単に“酸化マグネシウム(001)“と略すことがある)であり、既に実用に供されている。酸化マグネシウム以外に、アモルファスの酸化アルミニウムや酸化チタンを含むトンネル障壁層も実用化されているが、これらのアモルファス系材料に比べて、“酸化マグネシウム(001)”は、極めて大きなTMR効果を示すという優れた特徴を持つ。
上述のように、TMR素子の基本構造として、
(i)トンネル障壁層の基板側に固定層(強磁性体層)を配置し、基板と反対側に自由層(強磁性体層)を配置する構造(図2(a)参照)、
(ii)トンネル障壁層の基板側に自由層(強磁性体層)を配置し、基板と反対側に固定層(強磁性体層)を配置する構造(図2(b) 参照)、
の2種類がある。このうち、(i)の構造は、素子加工が容易、固定層の信頼性が上がる、などの利点を有しているため、磁気センサー応用では(i)の構造が用いられることが多い。一方、スピントルク型MRAMや高周波発振素子などの応用においては、(i)の構造は後述のように自由層を薄くできないという欠点を有する。一方、(ii)の構造では自由層を薄くできるが、固定層を薄くできない、固定層の信頼性が低下しやすい、などの欠点がある。
優れたトンネル障壁材料の重要な特性として、トンネル障壁層にピンホールが形成されにくい、という点が挙げられる。一般に、トンネル障壁層の厚さは僅か1〜2nm程度しかないため、非常に微細な穴、つまりピンホールが形成されやすい。しかし、トンネル接合素子の中に1つでもピンホールが存在すると、ピンホール部分に大きな電流が流れてしまうため、素子特性が大幅に劣化してしまう。ピンホールの全くないトンネル障壁層を得るためには、トンネル障壁層の成膜時に、トンネル障壁層がその下部にある強磁性体層(下部電極層)の表面を効率よく覆い尽くす必要がある。この特徴を「濡れ性」といい、トンネル障壁層が強磁性体層(下部電極層)表面を完全に覆い尽くす性質のことを「濡れ性が良い」という。濡れ性が良くなる条件は、トンネル障壁層の表面エネルギーが、強磁性体層(下部電極層)の表面エネルギーよりもずっと小さいことである。一般に、良いトンネル障壁層の材料は表面エネルギーが非常に低いため強磁性体層(下部電極層)に対する濡れ性が良く、その結果、ピンホールが形成されにくい(図3(a)参照)。その反面、トンネル障壁材料の表面エネルギーよりも、その上に積層する強磁性体層(上部電極層)の表面エネルギーの方が高くなってしまうため、トンネル障壁層に対する強磁性体層(上部電極層)の濡れ性は逆に悪くなる。この結果、トンネル障壁層の直上に極めて薄い強磁性体層(上部電極層)を成膜すると、強磁性体層(上部電極層)は島状の組織になりやすく、平らな連続膜にはならない(図3(b)参照)。このため、トンネル障壁層の表面エネルギーが低ければ低いほど、その上に極めて薄い強磁性体層(上部電極層)を平らな連続膜として作製することは一層困難となる。これは、良いトンネル障壁層が有している原理的な問題点である。
“酸化マグネシウム(001)”を含む非磁性体層は表面エネルギーが非常に低い優れたトンネル障壁材料であるため、前記非磁性体層からなるトンネル障壁層は下部の強磁性体層に対して非常に濡れ性が良い。その結果、ピンホールの無い高品質のトンネル障壁層(4)を作製することが可能となる。しかし、前記非磁性体層の表面エネルギーが金属又は合金層(強磁性体層)の表面エネルギーよりも非常に低いが故に、今度は前記非磁性体層の直上に積層する金属又は合金層(強磁性体層)の濡れ性は非常に悪くなる。このため、前記非磁性体層の直上に極めて薄い金属又は合金層からなる上部の強磁性体層(上部電極層)を堆積すると、強磁性体層は島状の組織になりやすく、平らな連続膜にはなりにくい。一般に、前記非磁性体層の表面上に約1〜1.5nmよりも薄い金属又は合金層(上部の強磁性体層)を積層すると、島状の不連続膜になってしまう。これが問題点即ち解決しようとする課題である。
図4は、“酸化マグネシウム(001)”層の表面上に超高真空MBE法により室温で積層した、厚さ0.8nmの極めて薄いFe層(強磁性体層の一例)の反射高速電子線回折(RHEED)像である。このようなスポット状の回折パターンは、Fe層が島状の形状となっていることを示している。Fe層(強磁性体層)が島状の不連続膜になると、その磁気特性は著しく劣化してしまう。
図5は、“酸化マグネシウム(001)”層の表面上にMBE法により室温で積層したFe層(強磁性体層)の室温における磁化曲線を磁気光学Kerr効果により測定したものである。Fe層の厚さが約1.0nm以下のとき、Fe層が島状の不連続膜となり、強磁性ではなく超常磁性的になってしまう。この場合、ヒステリシスを持つ良好な強磁性的磁化曲線を得るには、Fe層の厚さが約1.5nm以上である必要がある。
このように、“酸化マグネシウム(001)”を含む非磁性体層(トンネル障壁層)の上に約1nmよりも薄い高品質の強磁性体層(強磁性上部電極層)を作製することは、これまで非常に困難であった。また、この強磁性体層(強磁性上部電極層)として材料組成や結晶構造が異なる2層以上の層を積層した多層膜を用いることがよくあるが、この場合も、前記非磁性体層に近い側の第1の強磁性体層(強磁性上部電極層の一部)を約1nmよりも薄い平坦な連続膜として作製することは原理的に困難であった。
本発明者らは、偶然にも、そのような濡れ性の悪い“酸化マグネシウム(001)”層(トンネル障壁層)表面の上に、極めて薄い或る種の介在層(3d遷移金属元素を含む酸化物層)を設けておくと、濡れ性が大幅に改善される結果、上記の問題点が解消され、しかも介在層を設けても極めて薄いのでTMR素子の磁気抵抗比(MR比)が余り劣化しないことを見出し、本発明を成すに至った。
本発明は磁気多層膜やTMR素子に関する多数の発明からなる。
本発明の第1の態様の磁気多層膜は、基板側から順に、(001)結晶面が優先配向した単結晶又は多結晶の酸化マグネシウムを含む非磁性体層、極めて薄い3d遷移金属元素を含む酸化物層、及び極めて薄い強磁性体層からなる。
3d遷移金属元素とは、次の10種である。Sc(スカンジウム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)
もちろん、これらの元素は前記酸化物に複数混合されていても良い(例えばCoフェライト)。また、本発明の本質を損なわない限り、第三の元素が単独で又は複数で混合されて前記酸化物となっていても良いし、あるいは前記酸化物に第三物質が混合されていても良い。
本発明の第2の態様の磁気多層膜は、本発明の第1の態様の磁気多層膜において、前記強磁性体層を第1の強磁性体層とし、その上に第1の強磁性体層とは組成あるいは結晶構造の異なる第2の強磁性体層が付加されていることが好ましい。
本発明の第3の態様の磁気多層膜は、本発明の第1又は第2の態様の磁気多層膜において、前記3d遷移金属元素を含む酸化物層の膜厚が0.2〜1.5nmであることが好ましい。
本発明の第4の態様の磁気多層膜は、本発明の第1〜第3のいずれかの態様の磁気多層膜において、前記3d遷移金属元素を含む酸化物層がFe、Co、Niのうち少なくとも1元素を含む酸化物を含むことが好ましい。
本発明の第5の態様の磁気多層膜は、本発明の第1〜第4のいずれかの態様の磁気多層膜において、前記3d遷移金属元素を含む酸化物層がスピネル構造を持つ3d遷移金属元素を含む酸化物を含むことが好ましい。
本発明の第6の態様の磁気多層膜は、本発明の第1〜第5のいずれかの態様の磁気多層膜において、前記3d遷移金属元素を含む酸化物層がスピネルフェライト系の3d遷移金属元素を含む酸化物を含むことが好ましい。
本発明の第7の態様の磁気多層膜は、本発明の第6の態様の磁気多層膜において、前記スピネルフェライト系の3d遷移金属元素を含む酸化物が「スピネルフェライト系の強磁性体またはフェリ磁性体」であることが好ましい。
本発明の第8の態様の磁気多層膜は、本発明の第1〜第3のいずれかの態様の磁気多層膜において、前記3d遷移金属元素を含む酸化物層がマグヘマイト、マグネタイト、Coフェライト又はNiフェライトであることが好ましい。
本発明の第9の態様の磁気多層膜は、本発明の第1〜第8のいずれかの態様の磁気多層膜において、前記強磁性体層又は前記第1の強磁性体層の膜厚が0.2〜0.8nmであることが好ましい。
本発明の第10の態様の磁気多層膜は、本発明の第1〜第9のいずれかの態様の磁気多層膜において、前記強磁性体層又は前記第1の強磁性体層は、「Feを含む強磁性金属又は強磁性合金」を含むことが好ましい。
本発明の第11の態様の磁気多層膜は、本発明の第1〜第10のいずれかの態様の磁気多層膜において、前記強磁性体層又は前記第1の強磁性体層は、「FeもしくはCoを含むBCC構造の強磁性金属又はFeもしくはCoを含むBCC構造の強磁性合金」を含むことが好ましい。
本発明の第12の態様は、基板側から順に強磁性下部電極層、トンネル障壁層及び強磁性上部電極層を含むトンネル磁気抵抗素子に関する。本発明の第12の態様の素子は、その構成要素に本発明の第1〜11のいずれかの態様の磁気多層膜を含み、その場合、前記非磁性体層が前記トンネル障壁層またはその一部に相当し、前記強磁性体層が前記強磁性上部電極層又はその一部に相当し、或いは前記1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との積層物が前記強磁性上部電極層又はその一部に相当することが好ましい。
本発明によれば、介在層(3d遷移金属元素を含む酸化物層)を設けることで、(001)結晶面が優先配向した単結晶又は多結晶の酸化マグネシウムを含む非磁性体層(トンネル障壁層)の上に、極めて薄くて平坦な強磁性体層(上部電極層)を作製することが可能となる。それでいて、TMR素子の場合、MR比が余り劣化しないで済む。
なお、説明の簡単のためにこれ以下「3d遷移金属元素を含む酸化物層」を単に「酸化物層」と略称すことがある。)
図1(a)は、実施例1にかかる磁気多層膜及びTMR素子の断面模式図であり、図1(b)は、実施例2にかかる磁気多層膜及びTMR素子の断面模式図である。 図2は、典型的なTMR素子の断面模式図であり、(a)は固定層の上にトンネル障壁層(4)が作製された例であり、(b)は自由層の上にトンネル障壁層(4)が作製された例である。 図3(a)は、下部電極層(31)の上に良好なトンネル障壁層(34)が作製された断面模式図であり、図3(b)は、良好なトンネル障壁層(34)の上に島状の上部電極層(36)が作製された断面模式図である。 図4は、(001)結晶面が優先配向した単結晶酸化マグネシウム層(非磁性体層、トンネル障壁層)の直上に室温で作製した厚さ0.8nmのFe層(強磁性体層の一例)の反射高速電子線回折パターンである。 図5は、(001)結晶面が優先配向した単結晶の酸化マグネシウム層の直上に室温で作製した厚さ0.8〜1.5nmのFe層(強磁性体層の一例)の磁化曲線を磁気光学Kerr効果で測定したグラフである。 図6は、(001)結晶面が優先配向した単結晶の酸化マグネシウム層(非磁性体層、トンネル障壁層)の直上に形成された、厚さ0.3nmのマグヘマイト層(酸化物層の一例)の反射高速電子線回折パターンである。 図7は、(001)結晶面が優先配向した単結晶の酸化マグネシウム層(非磁性体層、トンネル障壁層)の直上に厚さ0.3nmのマグヘマイト層(酸化物層)を積層し、その直上に室温で作製した厚さ0.8nmのFe層(強磁性体層)の反射高速電子線回折パターンである。 図8は、(001)結晶面が優先配向した単結晶の酸化マグネシウム層(非磁性体層、トンネル障壁層)の直上に厚さ0.3nmのマグヘマイト層(酸化物層)を積層し、その直上に室温で作製した厚さ0.3〜1.5nmのFe層(強磁性体層)の磁化曲線を磁気光学Kerr効果で測定したグラフである。 図9は、(001)結晶面が優先配向した単結晶の酸化マグネシウム層(非磁性体層、トンネル障壁層)の直上に形成された、厚さ0.2nmのCoフェライト層(酸化物層の一例)の反射高速電子線回折パターンである。 図10は、(001)結晶面が優先配向した単結晶の酸化マグネシウム層(非磁性体層、トンネル障壁層)の直上に厚さ0.2nmのCoフェライト層(酸化物層)を積層し、その直上に室温で作製した厚さ0.5nmのFe層(強磁性体層)の反射高速電子線回折パターンである。 図11は、厚さ0.4nmのマグヘマイト層上に形成した厚さ0.8nmのBCC Co層の反射高速電子線回折パターンである。 図12(a)は、酸化マグネシウム層上に直接成長させたBCC Co層の磁気曲線を磁気光学Kerr効果で測定したグラフであり、図12(b)は、酸化マグネシウム層上に形成した厚さ0.4nmのマグヘマイト層の上に成長させたBCC Co層の磁気曲線を磁気光学Kerr効果で測定したグラフである。
本発明の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
<実施例1>
図1の(a)に本実施例1における磁気多層膜及びTMR素子の断面模式図を示す。符号1は基板である。符号2は下地層である。下地層(2)の役目は「シード層/バッファ層」であり、その上に積層する強磁性下部電極層(3)の結晶配向性の制御や平坦性の向上のために用いる。下地層(2)が必要ない場合もあり、実施例1では、強磁性下部電極層(3)が下地層を兼ねている。符号4は、(001)結晶面が優先配向した単結晶酸化マグネシウムを含む非磁性体層である。符号5は極めて薄い酸化物層である。酸化物層(5)は非磁性層(4)の上側つまり基板から遠い側に配置されている。符号6は極めて薄い強磁性体層(上部電極層)である。強磁性体層(6)は酸化物層(5)の上に位置する。
このように本実施例の磁気多層膜は、基板(1)側から順に非磁性体層(4)、酸化物層(5)及び強磁性体層(6)から構成される。
また、非磁性体層(4)の下側、つまり基板側には下部電極層としても作用する強磁性体層(3)を配置する。
この磁気多層膜をトンネル磁気抵抗素子の構成要素として用いる場合、強磁性体層(3)が強磁性下部電極層に相当し、非磁性体層(4)がトンネル障壁層またはその一部に相当し、強磁性体層(6)が強磁性上部電極層又はその一部に相当する。なお、非磁性体層(4)を構成する酸化マグネシウムには、酸素とマグネシウム以外の元素が適宜含まれていてもよい。
この実施例1では、酸化物層(5)の材料としてマグヘマイト(Fe23)を用い、強磁性体層(6)の材料としてFeを用いた。
各層は、分子線エピタキシー法(MBE法)を用いて形成した。MBE法では、最高到達真空度が約2×10-8Paの超高真空MBE成膜装置を用いた。
まず、単結晶の酸化マグネシウム(001)から成る基板(1)の上にBCC(001)構造を持つ材料を含む下地層(2)を兼ねた強磁性体層(強磁性下部電極層3)として厚さ約100nmのFe層を形成し、その上に単結晶の酸化マグネシウム(001)から成る厚さ約2nmの非磁性層(4)を室温で形成した。なお、後述する強磁性上部電極層の磁気光学Kerr効果(図6と図8)を測定するための多層膜では、下部電極層に強磁性材料が含まれていると測定上の邪魔になるため、Fe層(3)を省き、その代わり下地層(2)として非磁性でBCC(001)構造を持つ厚さ約100nmのCr層を形成した。
酸化マグネシウム(001)層をBCC Fe(001)層の上に作製した場合も、BCCCr(001)の上に作製した場合も、ほぼ同一の品質と特性を持つ酸化マグネシウム(001)層が形成される。
単結晶の酸化マグネシウム(001)から成る非磁性層(4)の上に、酸化物層(5)として、厚さ0.2〜1.5nmのマグヘマイト(Fe23)層を形成した。マグヘマイト(Fe23)層は、基板温度130℃において、流量0.08sccmの原子状酸素を基板に照射しながらFeを0.005nm/sのレートで蒸着することにより形成した。最後に酸化物層(5)の上に強磁性体層(強磁性上部電極層6)として、厚さ0.2〜2.0nmのFe層を室温で形成した。
図6は、単結晶の酸化マグネシウム(001)層の直上に形成された厚さ0.3nmのマグヘマイト層の反射高速電子線回折(RHEED)像である。この厚さにおいても明瞭なストリーク状のRHEEDパターンが得られていることから、極薄で平坦かつ結晶性の良い高品質のマグヘマイト層が形成されていることが分かる。特に、通常濡れ性の非常に悪い酸化マグネシウム(001)の直上に形成されたマグヘマイト層が、厚さ僅か0.3nmでも高品質の連続膜になっていることは特筆に値し、“酸化マグネシウム(001)”表面上のマグヘマイト層の濡れ性が良いことを示している。
バルクのマグヘマイトはスピネル型の結晶構造を持ち、その単位胞(ユニットセル)の格子定数は約0.84nmである。したがって、マグヘマイト層の厚さがスピネル構造のユニットセルの格子定数よりも薄い場合、スピネル構造とは定義できない。例えば、厚さ0.3nmのマグヘマイト層のRHEEDパターン(図6)にはスピネル構造特有の超格子線が見えておらず、このことは厚さ0.3nmのマグヘマイト層がスピネル構造の超格子構造を有していないことを示している。
一方、厚さ2nmのマグヘマイト層のRHEEDパターンではスピネル構造特有の超格子線が確認できるため、厚さ2nm、つまりスピネル構造のユニットセルの2倍以上の厚さになるとスピネル構造の超格子構造が形成されることが分かる。このようにスピネル構造の超格子構造がある場合でも無い場合でも本発明の効果が同様に得られるため、本発明においてはスピネル構造の超格子構造は無くても構わない。したがって、スピネル構造のユニットセルの格子定数よりも薄いマグヘマイト層でも、酸化物層に積極的に用いることができる。なお、上述のようにスピネル構造のユニットセルの格子定数よりも薄い酸化物層の結晶構造を表す一般名称が存在しないため、本発明においてはスピネル構造の超格子構造が無い場合も含めて「スピネル構造」と呼ぶこととする。
図7は、厚さ0.3nmのマグヘマイト層の上に形成された、厚さ0.8nmのFe層のRHEED像である。酸化マグネシウム(001)層の直上に直接Fe層を形成した場合(図4)とは対照的に、図7のRHEED像は明瞭なストリーク状パターンであり、厚さが1nmより薄くても平坦で高品質なFe層が形成されたことを示している。つまり、マグヘマイト層表面のFe層は非常に濡れ性が良いことが示された。このように、酸化マグネシウム(001)層とFe層の間に極めて薄いマグヘマイト層を挿入することによって、Fe層の濡れ性が大幅に改善することが分かった。
図8は、厚さ0.3nmのマグヘマイト層の上に形成された、厚さ0.3〜1.5nmのFe層の室温における磁化曲線を磁気光学Kerr効果により測定したものである。酸化マグネシウム(001)直上に直接Fe層を形成した場合(図5)とは対照的に、図8では厚さ僅か0.4nmのFe層でも良好な強磁性的磁化曲線を示している。さらに、厚さ0.3nmにおいても、強磁性的な傾向が現れている。磁化測定の結果から、マグヘマイト層の上に形成されたFe層は、厚さが0.2nm以上で平坦な連続膜となっていることが明らかになった。この結果は、前述のRHEED観測の結果とも一致するものである。
以上をまとめると、“酸化マグネシウム(001)”を含む非磁性体層(4)と強磁性体層6(Fe層)との間に極めて薄い酸化物層5(マグヘマイト層)を挿入することによって、非磁性体層(4)に対する強磁性体層(6)の濡れ性が大幅に改善され、その結果、非磁性体層(4)上に非常に薄くても平坦で高品質な連続膜の強磁性体層(6)を形成することが可能となった。この発見は、極めて濡れ性の悪い“酸化マグネシウム(001)”層の上には非常に薄くて平坦な強磁性体層は作製できない、という従来の結晶成長の常識を覆すものである。ただし、本発明における結晶成長の物理的な機構や原理は、未だ不明である。
本発明の磁気多層膜をTMR素子の構成要素として用いる場合、室温で大きなMR比が得られることも重要な要件となる。基本的に、非磁性体層(4)と強磁性体層(6)との間に酸化物層(5)を挿入するとMR比は減少するが、酸化物層(5)が薄ければMR比の減少は限定的であるため、特に問題にはならない。ただし、酸化物層(5)が0.2nmよりも薄くなると、平均厚さが1原子層よりも薄くなるため、実際は非磁性体層(4)表面の一部が酸化物層(5)で覆われないため、部分的に濡れ性改善の効果が得られなくなる。逆に、酸化物層(5)が厚すぎると、(i)MR比が大きく減少する、(ii)トンネル抵抗(RA積)が大きくなりすぎる、といった問題が顕在化してくる。このため、酸化物層(5)の厚さは0.2〜1.5nmが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0nm、さらに好ましくは0.2〜0.8nm、0.2〜0.6nmあるいは0.2〜0.4nmの範囲にあると良い。MR比の観点からは、基本的に酸化物層(5)は薄い方が良いが、濡れ性改善の効果や最適なRA積の値なども考慮することにより、酸化物層(5)の最適な厚さが決まる。実際、酸化物層(5)の最適な厚さは、各種応用のために必要な磁気抵抗比やRA値などの諸特性に応じて適宜設定することになる。
酸化物層(5)の材料として実施例1ではマグヘマイトを用いたが、その他の種々の3d遷移金属元素を含む酸化物でも濡れ性改善の効果が得られる。例えば、Fe,Co,Niのうち少なくとも1元素を含む酸化物を用いると、“酸化マグネシウム(001)”層表面の濡れ性改善のために有効である。さらに、スピネル構造を持つ3d遷移金属元素を含む酸化物は、“酸化マグネシウム(001)”層との格子整合が良いため、“酸化マグネシウム(001)”層表面の濡れ性改善のために特に有効である。その例として、図9に、単結晶の酸化マグネシウム(001)直上に形成された厚さ0.2nmのCoフェライト層の反射高速電子線回折(RHEED)像を示す。マグヘマイトの場合(図6)と全く同様に、極薄のCoフェライト層においても明瞭なストリーク状のRHEEDパターンが得られていることは、極薄で平坦かつ結晶性の良い高品質のCoフェライト層が形成されていることを示唆しており、“酸化マグネシウム(001)”層表面上のCoフェライト層の濡れ性が良いことを示している。さらに、このCoフェライト層の上に形成した厚さ0.5nmのFe層のRHEED像を図10に示す。マグヘマタイト上に極薄Fe層を形成した場合(図7)と全く同様に、図10のRHEED像は明瞭なストリーク状パターンであり、厚さが1nmより薄くても平坦で高品質なFe層が形成されたことを示している。つまり、Coフェライト層表面のFe層は非常に濡れ性が良いことが示された。以上の実施例から、FeやCoなど含む酸化物を“酸化マグネシウム(001)”層表面に形成すると、“酸化マグネシウム(001)”層の濡れ性が大幅に改善される。3d遷移金属元素を含む酸化物層に含まれる3d遷移金属元素として、FeやCoと化学的な性質が似ているNiを用いることも当然可能であり、Fe,Co,Niのうち少なくとも1元素を含む酸化物を用いれば“酸化マグネシウム(001)”層の濡れ性改善に有効である。
一方、本発明の磁気多層膜をTMR素子の構成要素として用いる場合、上述のように室温で大きなMR比が得られることも重要な効果となる。酸化物層(5)の材料としてスピネルフェライト系の3d遷移金属元素を含む酸化物を用いることで、酸化物層(5)がない場合に比べMR比の減少を抑制することができる。特に、酸化物層(5)が「強磁性またはフェリ磁性のスピネルフェライト系材料」の場合、スピン分極した絶縁体バンド構造に起因したスピンフィルター効果により、より大きな磁気抵抗効果が得られる。実施例1では「強磁性またはフェリ磁性のスピネルフェライト系材料」の一例としてマグヘマイトを用いた。この場合、厚さ0.2〜1.0nmの範囲において室温で約100%という大きなMR比が得られた。
「強磁性またはフェリ磁性のスピネルフェライト系材料」としてマグヘマイト以外にも、マグネタイト、Coフェライト、Niフェライトなどの材料がある。CoフェライトやNiフェライトは、非常に高いキュリー温度や大きなスピンフィルター効果を有しているため、酸化物層(5)の材料としてマグヘマイトよりも好ましい。また、マグネタイトはハーフメタルのバンド構造を持っているため、より大きなMR比と低いRA積を得るために有効な材料である。基本的に、Fe、Co、Niなどのうち少なくとも1元素と酸素を含み、さらに必要に応じて他の元素を添加したスピネルフェライト系の酸化物が、酸化物層(5)の材料として適しており、その組成は各種応用のために必要なMR比やRA値などの諸特性に応じて適宜設定するとよい。なお、前述の通り、スピネルフェライト系の酸化物層の厚さがスピネル構造のユニットセルの格子定数よりも薄くて、スピネル構造の超格子構造を有していなくても構わない。
室温でも安定した強磁性を得るために、強磁性体層6(上部電極層)の材料は3d遷移金属元素又はその合金であることが好ましい。また、本発明の磁気多層膜をTMR素子の構成要素として用いる場合、室温で大きなMR比を得るために、強磁性体層6(上部電極層)の材料としてFeを含む強磁性金属又は強磁性合金、より好ましくはFeを含むBCC構造の強磁性金属又は強磁性合金を用いるとよい。
強磁性体層6(上部電極層)の最適な厚さは、各種応用のために必要な諸特性に応じて適宜設定すればよい。スピントルク型MRAMや高周波発振器などの応用において消費電力を低減するという観点では、強磁性体層6(上部電極層)は薄いほどよい。例えば、強磁性体層6(上部電極層)の厚さは0.8nm以下、より好ましくは0.6nm以下、さらに好ましくは0.4nm以下の範囲にあるとよい。一方、強磁性体層6(上部電極層)の厚さが0.2nm未満だと、強磁性体層6(上部電極層)が酸化物層(5)の表面を完全に覆い尽くせなくなる恐れがあるため、強磁性体層6(上部電極層)は最低でも約0.2nmの厚さがある必要がある。一方、室温で安定した強磁性を得るためには、強磁性体層6(上部電極層)の厚さは0.3nm以上、より好ましくは0.4nm以上である方がよい。各種応用において、低消費電力を優先するのか、室温における安定した強磁性を優先するのか、大きなMR比を優先するのか、などに依存して、強磁性体層6(上部電極層)の厚さを適宜設定すればよい。
実施例1では、成膜法としてMBE法を用いたが、この他、スパッタ法などの物理的成膜法(PVD)、あるいは化学的成膜法(CVD)を用いることができる。また、実施例1では、酸化物層(5)の成膜時の酸素源として原子状酸素を用いたが、この他の手法として、(i)蒸着源の材料に3d遷移金属元素を含む酸化物を用いる方法、(ii)蒸着源の材料に3d遷移金属を含む材料を用い、かつ分子状酸素やラジカル酸素、プラズマ酸素、オゾンなどの酸化源を用いる方法、などがある。
実施例1では、非磁性体層(4)として単結晶の酸化マグネシウム(001)を用いたが、(001)結晶面が優先配向した多結晶の酸化マグネシウムを用いても原理的に同じ発明の効果が得られる。製造コストの観点では、単結晶よりも多結晶の方がより好ましい。
実施例1では、基板として単結晶の酸化マグネシウム(001)を用いたが、基板は基本的に何でも良い。任意の基板の上に種々の下地層を積層することにより、その上に(001)結晶面が優先配向した単結晶又は多結晶の酸化マグネシウムを含む非磁性体層(4)を作製することが可能である。
<実施例2>
図1(b)に、実施例2における磁気多層膜及びTMR素子の断面模式図を示す。実施例1(図1(a))との違いは、実施例1の強磁性体層(6)が実施例2では第1の強磁性体層(6)と第2の強磁性体層(7)に置き換わっただけであり、この他の構成要素に関しては実施例1と実施例2は全く同じである。極めて薄い酸化物層(4)の上に、極めて薄い第1の強磁性体層(6)を配置し、さらにその上に第2の強磁性体層(7)を配置する。必要に応じて、第2の強磁性体層(7)の上に、さらに異なる強磁性体層を配置してもよい。さらに、必要に応じて、第1の強磁性体層(6)と第2の強磁性体層(7)の間にRuやTa、Cu、MgOなどの極めて薄い非磁性層を挿入してもよい。図1(b)のように、2層以上の強磁性体層を積層することによって、各種応用に応じた磁気特性やMR比の最適化が可能となる。例えば、本発明の磁気多層膜をTMR素子の構成要素として用いる場合、第1の強磁性体層(6)に高いMR比を示す材料、第2の強磁性体層(7)に所望の磁気特性を示す材料を用い、これら2層の界面に働く交換結合により、これら2層が事実上1層の強磁性体層(上部電極層)として振る舞うようにすれば、高いMR比と所望の磁気特性を同時に実現することが可能となる。
室温でも安定した強磁性を得るために、第1の強磁性体層(6)の材料は3d遷移金属元素又はその合金であることが好ましい。また、本発明の磁気多層膜をTMR素子の構成要素として用いる場合、室温で大きなMR比を得るためには、第1の強磁性体層(6)の材料としてFeを含む強磁性金属又は強磁性合金、より好ましくはFeを含むBCC構造の強磁性金属又は強磁性合金を用いると良い。
第1の強磁性体層(6)の最適な厚さは、各種応用のために必要な諸特性に応じて適宜設定することになる。スピントルク型MRAMや高周波発振器などの応用において消費電力を低減するという観点では、第1の強磁性体層(6)は薄いほどよい。例えば、第1の強磁性体層(6)の厚さは0.8nm以下、より好ましくは0.6nm以下、さらに好ましくは0.4nm以下の範囲であることが好ましい。一方、第1の強磁性体層(6)の厚さが0.2nm未満だと、第1の強磁性体層(6)が酸化物層(5)の表面を完全に覆い尽くせなくなる恐れがあるため、第1の強磁性体層(6)は最低でも0.2nmの厚さがある必要がある。さらに、室温で安定した強磁性を得るためには、第1の強磁性体層(6)の厚さは0.3nm以上、より好ましくは0.4nm以上であることが好ましい。各種応用において、低消費電力を優先するのか、室温における安定した強磁性を優先するのか、大きなMR比を優先するのか、などに依存して、第1の強磁性体層(6)の厚さを適宜設定する必要がある。
第2の強磁性体層(7)としてパーマロイなどの軟磁性体材料を用いれば、第1の強磁性体層(6)と第2の強磁性体層(6)との積層物に対して軟磁気特性を付与することができる。例えば、本実施例2の磁気多層膜をTMR素子の構成要素として用いる場合、強磁性上部電極層に対して軟磁気特性を付与することができ、より小さな印加磁界やスピントルクで動作するデバイスを実現できる。
第2の強磁性体層(7)として垂直磁化材料や垂直磁気異方性材料を用いれば、第1の強磁性体層(6)と第2の強磁性体層(7)の積層物に対して垂直磁気特性を付与することができる。例えば、本実施例2の磁気多層膜をTMR素子の構成要素として用いる場合、強磁性上部電極層に対して垂直磁気特性を付与することができ、高集積のスピントルク型MRAMに用いることができる。垂直磁化材料や垂直磁気異方性材料として、Fe-PtやFe-Pd、Co-Pt、Co-Pd、Mn-GaなどのL1規則構造の合金、強磁性金属又はその合金と非磁性金属又はその合金を積層した多層膜、Tb-CoやTb-Fe-Coなどの3d遷移金属元素と希土類金属の合金、Coを含むHCP構造の金属又はその合金、界面の垂直磁気異方性を利用した薄いCo-Fe-B合金層、などを用いることができる
第1の強磁性体層(6)と第2の強磁性体層(7)との間に適切な厚さのルテニウム(Ru)などの非磁性層を挿入することにより、第1の強磁性体層(6)の磁化と第2の強磁性体層(7)の磁化を反平行に向けることが可能となる。これにより、第1の強磁性体層(6)と第2の強磁性体層(7)の積層物からの漏洩磁界を低減することが可能となる。
第1の強磁性体層(6)と第2の強磁性体層(7)との間に非磁性層を挿入して両層間の交換結合を分断し、さらに、第1の強磁性体層(6)と第2の強磁性体層(7)のうち一方に面内磁化材料、他方に垂直磁化材料を用いることにより、第1の強磁性体層(6)の磁化と第2の強磁性体層(7)の磁化の相対角を約90°にすることができる。これにより、高周波発振器などの応用において動作電流密度を低減することが可能となる。
<実施例3>
実施例1では強磁性体層(6)の材料としてFeを用いたが、ここではCoを用いた。従来、準安定結晶層であるBCC Co層は、酸化マグネシウムのような非磁性体層(4)の上には成長、成膜が困難である。ここでは、非磁性体層(4)の上に予め極めて薄い厚さ0.4nmのマグヘマイト層からなる酸化物層(5)を形成しておき、その上に極めて薄い厚さ0.8nm程度のBCC Co層からなる強磁性体層(6)を形成することにより磁気多層膜を作製した。
その結果、BCC Co層の成長が順調で濡れ性の改善が得られた。例として厚さ0.4nmのマグヘマイト層上に形成した厚さ0.8nmのBCC Co層のRHEED(反射高速電子線回折)像を図11に示す。BCC構造の優先配向を示すストリークパターンが得られており、非磁性体層(4)上に(マグヘマイト層を介して)超薄膜BCC Co層からなる強磁性体層(6)を平坦に形成できることが分かった。酸化マグネシウム層、即ち非磁性体層(4)上に直接、成長・成膜させた場合との磁気特性の比較を図12に示す。非磁性体層(4)上に直接成長させた場合(図12(a))、BCC Co層の厚さが1.2nmにおいても角形性の悪いヒステリシスとなり、さらにBCC Co層の厚さが0.8nm以下ではBCC Co層の島状成長を反映した超常磁性挙動が見られている。
一方、厚さ0.4nmのマグヘマイト層を介して成長させた場合(図12(b))、エピタキシャル成長したBCC Co(001)層の結晶磁気異方性を反映し、BCC Co層の厚さが0.8nmの超薄膜においても角形性の良いヒステリシスが得られ、さらにBCC Co層の厚さが0.6 nmにおいても強磁性が維持されることが分かった。BCC Co層はFe層よりも高い磁気抵抗特性を示すことが知られており、本発明による、非磁性体層(4)上への極めて薄いBCC Co層からなる強磁性体層(6)の形成プロセスは、TMR素子の特性改善に非常に有効である。
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国出願2012年第192115号(2012年8月31日)
1…基板、
2…下地層、
3…下部の強磁性体層(強磁性下部電極層)、
4…非磁性体層(トンネル障壁層又はその一部)、
5…3d遷移金属元素を含む酸化物層、
6…上部の強磁性体層又は第1の強磁性層(強磁性上部電極層又はその一部)、
7…第2の強磁性体層(強磁性上部電極層又はその一部)、
8…キャップ層、
33…下部電極層、
34…非磁性体層(トンネル障壁層又はその一部)、
36…強磁性体層又は第1の強磁性体層

Claims (5)

  1. 基板側から順に、(001)結晶面が優先配向した単結晶又は多結晶の酸化マグネシウムを含む非磁性体層、厚さが0.2〜1.5nmの3d遷移金属元素を含む酸化物層及び「厚さが0.3〜0.8nmの連続膜からなる強磁性体層」を含む磁気多層膜。
  2. 請求項1に記載の磁気多層膜において、前記強磁性体層を第1の強磁性体層とし、その上に第1の強磁性体層とは組成又は結晶構造の異なる第2の強磁性体層を付加した磁気多層膜。
  3. 請求項1又は2に記載の磁気多層膜において、
    前記3d遷移金属元素を含む酸化物が“スピネルフェライト系の3d遷移金属元素を含む酸化物”である磁気多層膜。
  4. 請求項に記載の磁気多層膜において、前記“スピネルフェライト系の3d遷移金属元素を含む酸化物”が強磁性又はフェリ磁性のスピネルフェライト系材料である磁気多層膜。
  5. 基板側から順に強磁性下部電極層、トンネル障壁層及び強磁性上部電極層を含むトンネル磁気抵抗素子であって、
    その構成要素に請求項1に記載の磁気多層膜を含み、
    その場合、前記非磁性体層が前記トンネル障壁層又はその一部に相当し、前記強磁性体層が前記強磁性上部電極層又はその一部に相当するトンネル磁気抵抗素子。
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