JP6046894B2 - 液状封止材 - Google Patents
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Description
フリップチップ型の半導体装置は、バンプ電極を介して基板上の電極部と半導体素子とが接続された構造を持っている。この構造の半導体装置は、温度サイクル等の熱付加が加わった際に、エポキシ樹脂等の有機材料製の基板と、半導体素子と、の熱膨張係数の差によってバンプ電極に応力がかかり、バンプ電極にクラック等の不良が発生することが問題となっている。この不良発生を抑制するために、アンダーフィル材と呼ばれる液状封止材を用いて、半導体素子と基板との間のギャップを封止し、両者を互いに固定することによって、耐サーマルサイクル性を向上させることが広く行われている。
アンダーフィル材として用いられる液状封止材は、上記の成分に加えて、硬化促進剤を含有する場合もある。
半導体装置を構成する部品は、ハンダ等を用いて基板上に電極部に接続されるが、ブリード現象によって基板上の電極部が汚染されると、ハンダ付け等の不良が起こる場合があり、該部品の接続信頼性が失われてしまうという問題がある。
しかしながら、特許文献1に記載の半導体封止用液状エポキシ樹脂組成物の場合、調製した組成物について、上記(イ)〜(ニ)が所定の条件を満たしているか確認する必要があり、工業的規模でのアンダーフィル材の製造という観点では現実的ではない。
また、特許文献1は、チップ・オン・チップ用アンダーフィルであり、実施例でもシリコンを鏡面研磨した基板を用いて汚染防止性を評価しているため、半導体装置に一般的に用いられるFR−4などの有機基板でも汚染防止性を発揮するかは不明である。
樹脂組成物の製造時において、各成分の混練には、ロールミル等が用いられるが、硬化触媒として、マイクロカプセルを使用する場合は、マイクロカプセルが破損するおそれがあるため、高シェアでの混練ができず、製造される樹脂組成物における各成分の分散安定性を確保することができないおそれがある。
前記(c)包接化合物が、5−ヒドロキシイソフタル酸とイミダゾール誘導体との包接化合物、および、5−ニトロイソフタル酸とイミダゾール誘導体との包接化合物の少なくとも一方であり、
前記(a)〜(c)成分の合計質量に対する前記(c)成分の質量比((c)/((a)+(b)+(c))が0.003以上0.1以下であることを特徴とする液状封止材を提供する。
本発明の液状封止材は、加熱硬化時の硬化性に優れ、かつ、室温での保存安定性が良好である。
また、本発明の液状封止材は、製造時において、高シェアでの混練が可能であり、各成分の分散安定性が良好である。
本発明の液状封止材は、以下に示す(a)〜(d)成分を必須成分として含有する。
(a)成分のエポキシ樹脂は、本発明の液状封止材の主剤をなす成分である。
(a)成分のエポキシ樹脂は、常温で液状であることが好ましいが、常温で固体のものであっても、他の液状のエポキシ樹脂又は希釈剤により希釈し、液状を示すようにして用いることができる。
(a)成分としてのエポキシ樹脂は、上述したエポキシ樹脂のうち、いずれか1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(b)成分は、(a)成分のエポキシ樹脂の硬化剤である。
本発明では、液状封止材をアンダーフィル材として使用した際に、耐湿性および耐サーマルサイクル性に優れることから、(a)成分のエポキシ樹脂の硬化剤として、芳香族アミン系硬化剤を用いる。
(b)成分の芳香族アミン系硬化剤は、常温で液状であることが好ましいが、常温で固体のものであってもよい。常温で固体の場合は、加熱して液状化してから(a)成分のエポキシ樹脂と混合することが好ましい。
また、粘度が低い液状封止材を得ることができることから、3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエンの併用が好ましい。
また、好適な粘度、反応性、硬化物性を兼ね備えることから、2−メチル−4,6−ビス(メチルチオ)−1,3−ベンゼンジアミンおよび4−メチル−2,6−ビス(メチルチオ)−1,3−ベンゼンジアミンも好ましく用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエンなどと併用することもできる。
(c)成分の包接化合物は、(a)成分のエポキシ樹脂の硬化促進剤である。
本発明では(c)成分の包接化合物が、5−ヒドロキシイソフタル酸(HIPA)とイミダゾール誘導体との包接化合物、および、5−ニトロイソフタル酸(NIPA)とイミダゾール誘導体との包接化合物の少なくとも一方である。
これらの包接化合物では、HIPA(またはNIPA)の複数分子が、分子間引力により擬似的なカプセルを形成しており、その間隙にイミダゾール誘導体が包接されている、または、HIPA(またはNIPA)と、イミダゾール誘導体と、が水素結合によって安定な状態の結晶構造を形成していると考えられる。
このような包接化合物を用いることで、常温では、イミダゾール誘導体がエポキシ樹脂の硬化促進剤として作用せず、保存安定性に優れている。
また、HIPA(またはNIPA)は、(b)成分のアミン系硬化剤の作用を促進するものであるが、このような包接化合物を用いることで、HIPA(またはNIPA)による、アミン系硬化剤の作用の促進が抑制される。これによっても、保存安定性が向上する。
また、この包接化合物は、キャピラリーフローによる注入時の温度域(概ね90℃〜110℃)では包接が解離しないため、本発明の液状封止材をアンダーフィル材として使用した場合に、アンダーフィル材の注入性が良好である。
一方で、液状封止材を加熱硬化する目的で、150℃以上に加熱した際には、包接が解離して、イミダゾール誘導体がエポキシ樹脂の硬化促進剤として作用し、また、HIPA(またはNIPA)がアミン系硬化剤の作用を促進することにより、(a)成分のエポキシ樹脂の硬化反応が速やかに進行するので、加熱硬化時のブリードが抑制される。
なお、(c)成分の包接化合物として、HIPAとイミダゾール誘導体との包接化合物、および、NIPAとイミダゾール誘導体との包接化合物のうち、いずれか一方を含有していていてもよく、両方を含有していてもよい。
なお、イミダゾール誘導体として、2−メチルイミダゾール、および、2−エチル−4−メチルイミダゾールのうち、いずれか一方を含有していていてもよく、両方を含有していてもよい。
上記の手順で得られる生成物が、上記した構造の包接化合物をなしていることは、熱分析(TG及びDTA)、赤外吸収スペクトル(IR)、X線回折パターン、固体NMRスペクトル等により確認できる。
(c)/((a)+(b)+(c))が0.003未満の場合、エポキシ樹脂の硬化促進剤としての作用が不十分になるため、液状封止材をアンダーフィル材として使用した場合に、加熱硬化時のブリードを抑制することができない。
一方、(c)/((a)+(b)+(c))が0.1超だと、液状封止材をアンダーフィル材として使用した場合に、キャピラリーフローによる注入性が低下するおそれがある。
(c)/((a)+(b)+(c))は、0.003以上0.05以下であることが好ましく、0.009以上0.03以下であることがより好ましい。
(d)成分の無機充填材は、封止した部位の耐湿性および耐サーマルサイクル性、特に耐サーマルサイクル性を向上させる目的で液状封止材に添加される。無機充填材の使用により耐サーマルサイクル性が向上するのは、線膨張係数を下げることにより、サーマルサイクルによるアンダーフィル材の硬化物の膨張・収縮を抑制できるからである。
これらの中でも、シリカ、特に、非晶質の球状シリカが、本発明の液状封止材をアンダーフィル材として使用した際に流動性に優れ、硬化物の線膨張係数を低減できることから望ましい。
なお、ここで言うシリカは、製造原料に由来する有機基、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基を有するものであってもよい。
非晶質の球状シリカは、溶融法、燃焼法、ゾルゲル法など、公知の製造方法によって得られるが、所望の粒度や不純物含有量、表面状態などの特性に応じて、その製造方法を適宜選択することができる。
また、無機充填材として用いるシリカとしては、特開2007−197655号公報に記載の製造方法によって得られたシリカ含有組成物を用いてもよい。
ここで、無機充填材の形状は特に限定されず、球状、不定形、りん片状等のいずれの形態であってもよい。なお、無機充填材の形状が球状以外の場合、無機充填材の平均粒径とは該無機充填材の平均最大径を意味する。
(d)/((a)+(b)+(c)+(d))が0.3未満だと、(d)成分の無機充填材の添加により線膨張係数を下げる効果が不十分であり、本発明の液状封止材をアンダーフィル材として使用した場合に、耐サーマルサイクル性を向上させる効果が不十分となるおそれがある。
一方、(d)/((a)+(b)+(c)+(d))が0.8超だと、本発明の液状封止材をアンダーフィル材として使用した際に、キャピラリーフローによる注入性や電気的接続性が低下するおそれがある。
(d)/((a)+(b)+(c)+(d))が、0.5以上0.7以下であることがより好ましい。
本発明の液状封止材は、上記(a)〜(d)成分以外の成分を必要に応じてさらに含有してもよい。
このような成分の具体例としては、シランカップリング剤、レベリング剤、着色剤、イオントラップ剤、消泡剤、難燃剤などを配合することができる。各配合剤の種類、配合量は常法通りである。また、オキセタン、アクリレート、ビスマレイミドなどの熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、エラストマーなどを配合してもよい。
本発明の液状封止材は、上記(a)〜(d)成分、および、さらに必要に応じて配合するその他の配合剤を混合し、攪拌して調製される。混合攪拌は、ロールミルを用いて行うことができるが、勿論、これに限定されない。
本発明の液状封止材では、エポキシ樹脂の硬化促進剤として、(c)成分の包接化合物を用いているため、マイクロカプセル化した硬化促進剤を使用した場合とは違い、高シェアでの混練が可能であり、各成分の分散安定化が可能である。
なお、各成分を同時に混合しても、一部成分を先に混合し、残り成分を後から混合するなど、適宜変更しても差支えない。
本発明の液状封止材は、初期粘度が低く、アンダーフィル材として使用した場合に、キャピラリーフローによる注入性が良好である。
具体的には、後述する実施例に記載の手順で測定される初期粘度が0.01〜100Pa・sであり、1〜80Pa・sであることが好ましい。
また、本発明の液状封止材は、アンダーフィル材として使用した場合に、キャピラリーフローによる注入性が良好である。具体的には、後述する実施例に記載の手順でギャップへの注入性を評価した際に、注入時間が600秒以下であることが好ましい。
本発明の液状封止材は、速硬化性に優れており、150〜200℃の温度で10分〜2時間の加熱で硬化させることができる。
本発明の液状封止材は、後述する実施例に記載の手順で測定されるゲルタイムが800秒以下であることが好ましい。
本発明の液状封止材は、アンダーフィル材として使用した場合に、加熱硬化時のブリードが抑制されている。具体的には、後述する実施例に記載の手順で測定されるブリード幅が500μm以下であり、300μm以下であることが好ましい。
なお、後述する実施例の結果から明らかなように、キャピラリーフローによるアンダーフィル材の注入時にもブリードは生じるが、加熱硬化時に生じるブリードに比べると軽微であり、その影響は無視できる。
後述する実施例に示すように、本発明の液状封止材は、半導体装置に一般的に用いられる有機基板であるFR−4について、加熱硬化時のブリードが抑制されることを確認している。この結果から、半導体装置に一般的に用いられる他の有機基板や、セラミック基板やシリコン基板の場合でも、加熱硬化時のブリードが抑制されると考えられる。
本発明の液状封止材は、フリップチップボンディング方式により配線基板に半導体チップが実装された半導体装置を製造する際に、キャピラリーフローで供給するアンダーフィル材として使用される。
次に、配線基板を加熱して60℃〜120℃に保持した状態で、半導体チップの外周に沿ってアンダーフィル材を塗布(ディスペンス)し、毛細管現象を利用して、両者の間隙にアンダーフィル材を充填する。
次に、配線基板を150〜200℃に加熱してアンダーフィル材を硬化させる。
下記表に示す成分を、表に示す量(質量部)で量り取り、各成分を混合した混合物を三本ロールミル混練し、均一な液状封止材を得た。
なお、表中の記号は、それぞれ以下を表わす。
(a):ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量168g/Eq)
(b):芳香族アミン系硬化剤(4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、カヤハードA−A、日本化薬株式会社製)
(c1):NIPAと2−エチル−4−メチルイミダゾールとの包接化合物(NIPA−2E4MZ、日本曹達株式会社製)
(c2):HIPAと2−メチルイミダゾールとの包接化合物(HIPA−2MZ、日本曹達株式会社製)
(c3):HIPAと2−エチル−4−メチルイミダゾールとの包接化合物(HIPA−2E4MZ、日本曹達株式会社製)
(c´1):HIPA
(c´2):2−エチル−4−メチルイミダゾール
(d):非晶質球状シリカ(平均粒径0.5μm)
調製した液状封止材について、ブルックフィールド社製回転粘度計HBDV−1(スピンドルSC4−14使用)用いて、50rpmで25℃における粘度(Pa・s)を測定して初期粘度とした。次に、液状封止材を密閉容器に入れて25℃、湿度50%の環境にて24時間保管した時点における粘度を同様の手順で測定し、調製直後の粘度に対する倍率を算出してポットライフの指標となる増粘倍率を求めた。なお、比較例3は24時間保管後にはゲル化してしまっていたために、粘度を測定できなかった。
有機基板(FR−4基板)上に50μmのギャップを設けて、半導体素子の代わりにガラス板を固定した試験片を作製した。この試験片を110℃に設定したホットプレート上に置き、ガラス板の一端側に液状封止材を塗布し、注入距離が20mmに達するまでの時間を測定した。この手順を2回実施し、測定値の平均値を注入時間の測定値とした。
下記手順でDSC測定を実施した。
アルミパンに10mg前後の液状封止材を滴下する。このアルミパンをDSC(ブルカーAXS製DSC 204 F1 Phoenix)にセットし、10℃/MIN昇温で25℃から250℃まで加熱し、DSCチャートを得た。得られたDSCチャートから硬化発熱の立ち上がり温度(DSC Onset)を求め、これを反応開始温度とした。
150±2℃の熱板上に液状封止材を約5mmφの大きさに滴下し、糸引きがなくなるまでの時間を、ストップウォッチにより測定した。
FR−4基板上に、鏡面処理した10mm□のシリコンチップを接着剤で固定した試験片を作製した。試験片を150℃で30分間乾燥させた後、基板表面をプラズマ処理した。プラズマ処理の条件は以下の通り。
ガス種:Ar
出力:400W
処理時間:300sec
ガス流量:80mmTorr
プラズマ処理後、シリコンチップの外周部にアンダーフィル材を塗布し、90℃で10分間放置した後、165℃で60分間加熱してアンダーフィル材を硬化させた。アンダーフィル材の硬化後、光学顕微鏡(オリンパス社製、型式STM6−F21−3)を用いて、ブリード幅を測定した。測定は4辺にて行い、4辺のブリード幅の平均値を加熱硬化時のブリード幅の測定値とした。なお、90℃で10分間放置した後も上記と同様の手順でブリード幅の測定を行い、注入時のブリード幅の測定値とした。
一方、(c)成分を含有させなかった比較例1は、加熱硬化時のブリード幅が大きく、加熱硬化時のブリードを抑制することができなかった。
また、(c)成分の含有量が少なく、(c)/((a)+(b)+(c))が0.003未満の比較例2についても、加熱硬化時のブリード幅が大きく、加熱硬化時のブリードを抑制することができなかった。
また、(c)成分の代わりにして、HIPA(c´1)を単独で添加した比較例3では、24時間放置後にはゲル化してしまい、保存安定性に劣ることが確認された。また、初期粘度も高く、アンダーフィル材として使用する場合に、キャピラリーフローによる注入性に劣る。
また、(c)成分の代わりにして、2−エチル−4−メチルイミダゾール(c´2)を単独で添加した比較例4では、加熱硬化時のブリード幅が大きく、加熱硬化時のブリードを抑制することができなかった。
Claims (3)
- (a)エポキシ樹脂、(b)芳香族アミン系硬化剤、(c)包接化合物、(d)無機充填材を含む液状封止材であって、
前記(b)芳香族アミン系硬化剤が、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)であり、
前記(c)包接化合物が、5−ヒドロキシイソフタル酸とイミダゾール誘導体との包接化合物、および、5−ニトロイソフタル酸とイミダゾール誘導体との包接化合物の少なくとも一方であり、
前記(a)〜(c)成分の合計質量に対する前記(c)成分の質量比((c)/((a)+(b)+(c))が0.003以上0.05以下であることを特徴とする液状封止材。 - 前記イミダゾール誘導体が、2−メチルイミダゾール、および、2−エチル−4−メチルイミダゾールの少なくとも一方である、請求項1に記載の液状封止材。
- 前記(a)〜(d)成分の合計質量に対する前記(d)成分の質量比((d)/((a)+(b)+(c)+(d))が0.3以上0.8以下である、請求項1または2に記載の液状封止材。
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