以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明を省略する場合がある。
なお、実施の形態において例示される各構成要素の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるものであり、本発明はそれらの例示に限定されるものではない。また、各図における各構成要素の寸法は、実際の寸法と異なる場合がある。
<比較例>
以下、比較例として、インクリボンを用いて印画を行うサーマルプリンター1000について説明する。図6は、比較例に係るサーマルプリンター1000の概略構成を示すブロック図である。図7は、比較例に係るサーマルプリンター1000で使用されるインクリボン33の一部を示す図である。
図7を参照して、インクリボン33には、色領域21a,21b,21cおよび保護層21dから構成される転写領域が、当該インクリボン33の長手方向に沿って複数組形成される。色領域21a,21b,21cには、それぞれ、イエロー、マゼンタおよびシアンの色のインクが形成される。すなわち、インクリボン33の1つの転写領域には、3色の色領域が形成される。なお、当該1つの転写領域に形成される色領域の数は、3に限定されず、例えば、4以上であってもよい。
なお、インクリボン33において、色領域21a,21b,21c、保護層21dの各々の先頭部分(端部)には、頭出しマーク22が形成される。頭出しマーク22は、サーマルプリンター1000に設けられた検知機構により検知される。これにより、各色領および保護層の頭出しが行われる。
次に、サーマルプリンター1000が行う印画動作について説明する。まず、駆動モーター35aが、巻取側インクリボン35を駆動(回転)させることにより、インクリボン33を巻き取る。検知センサー37が、インクリボン33の頭出しマーク22を検知した場合、サーマルヘッド31とプラテンローラー32とが圧接されて、インクリボン33およびペーパー34が挟持される。
サーマルヘッド31が、インクリボン33に対し熱を加えると、インクリボン33の染料がペーパー34に転写されて1ライン分の画像が形成される。ペーパー34に、1画面に対応する指定のライン数の画像が転写されると、サーマルヘッド31とプラテンローラー32との圧接が解除される。その後、インクリボン33が所定の長さだけ巻き取られて、次の色の頭出しが行われる。
以上の処理が、色領域21a、22b、22cに対し行われる。これにより、色領域21a、22b、22cの各々の色が、ペーパー34に順次転写される。その結果、ペーパー34に画像が形成される。そして、最後に保護層21dが転写される。
図8は、インクリボン33のうち、保護層21dが形成されている部分の断面図である。図8を参照して、基材42において、サーマルヘッド31と接触する側の面には、背面部41が塗布(形成)されている。背面部41はサーマルヘッド31と基材42との融着を防ぎ、潤滑にインクリボン33を搬送させる役割をもつ。また、基材42において、ペーパー34と接触する側の面には保護層21dが塗布(形成)されている。保護層21dは、印画物の退色、傷付き等を低減させる機能を有する。
保護層21dは、積層された接着層44および剥離層43から構成されている。保護層21dに、一定の熱量の熱が与えられることにより、接着層44がペーパー34に接着する。ペーパー34に接着層44が十分な粘着力で接着した後、インクリボン33が巻き取られる。これにより、剥離層43が基材42から剥離して、ペーパー34に保護層21dが転写(形成)される。
保護層21dの転写時に、サーマルヘッド31が発する熱量が足りない場合、接着層44がペーパー34に十分な粘着力で接着しない。また、サーマルヘッド31からの熱量が多すぎる場合、接着層44がペーパー34に融着する。そのため、剥離層43が基材42から剥離した時に、保護層21dの表面に大きな凹凸が発生する。そのため、保護層21dの表面の光沢性が失われる。
また、剥離層43の表面に凹凸を設けることで、表面の光沢性を意図的に落として、保護層21dの表面にマット性を付与することも可能である。なお、サーマルプリンターは、前述したように、ペーパーの表面の光沢度(光沢性)をユーザーの好みに応じて切り替えられるように求められることが多い。
そこで、以下の実施の形態により、上記比較例で述べた要望を満たし、前述の関連技術Bにおける問題を解決する。
<実施の形態1>
まず、本発明の1つの実施の形態に係るサーマルプリンターを、図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るサーマルプリンター100の概略構成を示すブロック図である。サーマルプリンター100は、後述の特徴を有するインクリボン3を用いて印画を行う。
図1を参照して、サーマルプリンター100は、サーマルヘッド1と、プラテンローラー2と、インクリボン3と、巻取側インクリボン5と、駆動モーター5aと、供給側インクリボン6と、検知センサー7と、制御部9とを備える。なお、サーマルプリンター100には、ペーパー4が取り付けられる。ペーパー4は、インクリボン3のインク(色)の転写を行う対象となる対象物である。
サーマルヘッド1は、制御部9の制御に従い、インクリボン3に与えるための熱を発生する。詳細は後述するが、サーマルヘッド1は、熱量Pの熱と、熱量Pより大きい熱量の熱とを発生する。以下においては、熱量Pより大きい熱量の熱を、熱量Paともいう。
プラテンローラー2は、サーマルヘッド1に対向して配置される。プラテンローラー2と、サーマルヘッド1とにより、インクリボン3の一部と、ペーパー4とが挟まれる。
図2は、本発明の実施の形態1に係るインクリボン3の一部を示す図である。インクリボン3の形状は、長尺状である。図2を参照して、インクリボン3には、色領域11a,11b,11cおよび保護層11dから構成される転写領域が、当該インクリボン3の長手方向に沿って複数組塗布(形成)される。すなわち、インクリボン3は、色領域11a,11b,11cと、保護層11dとを有する。
色領域11a,11b,11cの各々は、転写の対象物であるペーパー4に転写するための色を示す。具体的には、色領域11a,11b,11cには、それぞれ、イエロー、マゼンタおよびシアンの色のインクが形成される。保護層11dは、印画が行われたペーパー4の耐久性を向上させるための層である。なお、インクリボン3において、色領域11a,11b,11cおよび保護層11dの各々の先頭部分(端部)には、頭出しマーク12が形成されている。すなわち、頭出しマーク12は、色領域11a,11b,11cおよび保護層11dの各々に対応づけて設けられる。
図3は、インクリボン3のうち、保護層11dが形成されている部分の断面図である。図3を参照して、基材14において、サーマルヘッド1と接触する側の面には、背面部13が塗布(形成)されている。背面部13はサーマルヘッド1と基材14との融着を防ぎ、潤滑にインクリボン3を搬送させる役割をもつ。
また、基材14において、ペーパー4と接触する側の面には保護層11dが塗布(形成)されている。保護層11dは、ペーパー4(対象物)に転写されることにより該ペーパー4に転写された色を保護するための層である。例えば、保護層11dは、印画物の退色、傷付き等を低減させる機能を有する。印画物とは、色領域11a,11b,11cの各々における色(インク)と、保護層とが転写されたペーパー4である。
保護層11dは、保護層17と、保護層16とを有する。保護層17は、当該保護層17の表面の光沢度(光沢性)が高い。保護層16は、当該保護層16の表面の光沢度(光沢性)が低い。すなわち、保護層17は、保護層16よりも、表面の光沢度が高い。
保護層16は、保護層17上に重なるように設けられる。すなわち、保護層16は、保護層17上に設けられる。具体的には、基材14のうち、ペーパー4に近い部分の面には保護層16が貼り付けられている(塗布されている)。また、保護層16のうち、ペーパー4に近い部分の面には保護層17が貼り付けられている(塗布されている)。保護層16は、保護層17全体を覆うように設けられる。
なお、保護層16が、保護層17の上部全体を覆うように設けられる構成に限定されない。例えば、保護層16は、保護層17の上部の半分を覆うように設けられてもよい。
保護層16は、積層された接着層16sおよび剥離層16hから構成されている。保護層17は、積層された接着層17sおよび剥離層17hから構成されている。
保護層17は、サーマルヘッド1により、熱量Pの熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられることにより、ペーパー4(対象物)に転写される。
具体的には、図4(a)および図4(b)に示すように、サーマルヘッド1により、熱量Pの熱が保護層11dに与えられることにより、接着層17sがペーパー4に接着する。接着層17sがペーパー4に十分な粘着力で接着した後、インクリボン3が巻取側インクリボン5により巻き取られて、当該インクリボン3が移動する。これにより、剥離層17hが接着層16sから剥離して、ペーパー4に、保護層17が転写(形成)される(図4(b)参照)。
以下においては、インクリボン3が巻取側インクリボン5により巻き取られる際にインクリボン3に加わる力を、巻き取り力ともいう。
なお、熱量Pの熱が保護層11dに与えられて、接着層17sがペーパー4に接着した状態において、インクリボン3に加わる巻取り力により剥離層16hが基材14から剥離しないように、剥離層17hは、剥離層16hより小さい力で剥離可能な材料で構成される。具体的には、剥離層17hが接着層16sから剥離されるために必要な力が、剥離層16hが基材14から剥離されるために必要な力より小さくなるように、剥離層17hおよび剥離層16hは構成される。
例えば、与えられる熱量に関わらず、剥離層17hの粘着力が、剥離層16hの粘着力より小さくなるように、剥離層17hおよび剥離層16hは構成される。これにより、剥離層17h(保護層17)が接着層16sに貼り付く力は、剥離層16h(保護層16)が基材14に貼り付く力より小さい。
保護層16は、サーマルヘッド1により、熱量Pより大きい熱量Paの熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられることにより、ペーパー4(対象物)に転写される。熱量Paは、例えば、熱量Pの1.1〜2.0倍の熱量である。
具体的には、図5(a)および図5(b)に示すように、サーマルヘッド1により、熱量Paの熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられることにより、接着層17sがペーパー4および剥離層17hに接着する。接着層17sがペーパー4および剥離層17hに十分な粘着力で接着した後、詳細は後述するが、インクリボン3が巻取側インクリボン5により巻き取られて、当該インクリボン3が移動する。これにより、剥離層16hが基材14から剥離して、ペーパー4の表面に、保護層17および保護層16が転写(形成)される(図5(b)参照)。
なお、熱量Paの熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられて、接着層17sが剥離層17hに接着した状態において、インクリボン3に加わる巻取り力により剥離層17hが接着層16sから剥離しないように、接着層16sおよび接着層17sは構成される。すなわち、熱量Paの熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられた場合、剥離層17hと接着層16sとが接着する力が、剥離層16hと基材14とが接着する力より大きくなるように、接着層16sおよび接着層17sは構成される。
具体的には、接着層16sおよび接着層17sの構成は、熱量Paの熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられた場合に、例えば、接着層16sの粘着力が、接着層17sの粘着力より大きくなる構成(以下、構成Aともいう)である。
以下においては、熱量Pa以上の熱が与えられた場合に粘着力が向上する材料を、材料Naともいう。この場合、上記の構成Aは、例えば、接着層16sが材料Naを含む割合(例えば、80%)が、接着層17sが材料Naを含む割合(例えば、0〜10%)より大きい構成である。
なお、構成Aは、上記に限定されず、熱量Pa以上の熱が与えられた場合に、状態(例えば、粘着力)が変化する材料を利用した構成であれば、他の構成であってもよい。
再び、図1を参照して、巻取側インクリボン5は、インクリボン3の一方側が、図示しない軸に巻きつけられることにより構成される。駆動モーター5aは、制御部9の制御に従い、巻取側インクリボン5を回転(駆動)させる。これにより、インクリボン3の一部が、巻取側インクリボン5に巻き取られる。
供給側インクリボン6は、インクリボン3の他方側が、図示しない軸に巻きつけられることにより構成される。供給側インクリボン6は、巻取側インクリボン5がインクリボン3の一部を巻き取るのに伴い、巻き取られたインクリボン3の長さの分だけ、インクリボン3を供給する。
検知センサー7は、インクリボン3の頭出しマーク12を検知し、検知した旨を示す検知信号を、制御部9へ送信する。制御部9は、駆動モーター5aおよびサーマルヘッド1を制御する。具体的には、制御部9は、駆動モーター5aのトルクを制御する。また、制御部9は、サーマルヘッド1が発生する熱の量を制御する。
次に、サーマルプリンター100の動作について詳細に説明する。まず、サーマルプリンター100の制御部9は、外部装置から、印画データおよび保護層データを受信する。印画データは、画像をペーパー4に転写するためのデータである。
保護層データは、光沢用データと、マット用データとに分類される。光沢用データは、光沢度が高い保護層17が最表面側の層となるように、保護層17をペーパー4に転写させるためのデータである。マット用データは、光沢度が低い保護層16が最表面側の層となるように、保護層16をペーパー4に転写させるためのデータである。
制御部9は、印画データおよび保護層データの受信に応じて、巻取側インクリボン5がインクリボン3の巻き取りを開始するように、駆動モーター5aを駆動させる。
制御部9は、検知センサー7が、色領域11a(イエロー)に対応づけて設けられる頭出しマーク12を検知した場合、駆動モーター5aの駆動を停止させる。これにより、インクリボン3の搬送(移動)が停止される。そして、制御部9は、サーマルヘッド1とプラテンローラー2とが圧接するよう制御を行う。
制御部9は、インクリボン3およびペーパー4を、画像の1ラインに対応する距離(1画素)だけ移動させる毎に、サーマルヘッド1が、画像データに応じた熱をインクリボン3に与えるよう、サーマルヘッド1を制御する。これにより、イエローのインク(染料)が、ペーパー4に熱転写される。以上の処理が、画像を構成する各ラインに対し行われることにより、イエローの画像がペーパー4に印画される。
イエローの画像の印画が終了すると、制御部9は、ペーパー4の巻戻しを行うとともに、インクリボン3における色領域11bの頭出しを行うために、巻取側インクリボン5にインクリボン3の巻き取りを行わせる制御を行う。
制御部9は、前述の色領域11aの場合と同様に、検知センサー7が、色領域11b(マゼンタ)に対応づけて設けられる頭出しマーク12を検知した場合、駆動モーター5aの駆動を停止させる。これにより、インクリボン3の搬送(移動)が停止される。そして、制御部9は、サーマルヘッド1とプラテンローラー2とが圧接するよう制御を行う。次に、制御部9は、イエローの画像の印画のための処理と同様な制御を行うことにより、マゼンタの画像の印画を行う。
その後、制御部9は、シアンの画像を転写(印画)するための処理および保護層を転写するための処理を順次行う。シアンの画像および保護層を転写するための処理は、イエローの画像の印画のための前述の処理と同様な処理である。そして、サーマルプリンター100は、ペーパー4を排出して印画動作を終了する。
次に、保護層を転写するための処理(以下、保護層転写処理ともいう)について具体的に説明する。保護層転写処理では、制御部9が、熱量Pの熱、および、熱量Paの熱のいずれかを、サーマルヘッド1に発生させる制御を、サーマルヘッド1に対し行う。
ここで、制御部9が受信した保護層データが、光沢用データであるとする。この場合、保護層転写処理では、制御部9が、検知センサー7が保護層11dに対応づけて設けられる頭出しマーク12を検知するまで、インクリボン3の巻き取りが行われるよう、駆動モーター5aを制御する。
そして、制御部9は、インクリボン3およびペーパー4を、画像の1ラインに対応する距離(1画素)だけ移動させる毎に、サーマルヘッド1が、熱量Pの熱をインクリボン3(保護層11d)に与えるよう、サーマルヘッド1を制御する(図4(a)参照)。これにより、前述したように、接着層17sがペーパー4に接着する。
そして、前述したように、接着層17sがペーパー4に十分な粘着力で接着した後、制御部9は、インクリボン3が巻取側インクリボン5により巻き取られように、駆動モーター5aを駆動させる。前述したように、インクリボン3が巻取側インクリボン5により巻き取られる際にインクリボン3に加わる力を、巻き取り力という。すなわち、制御部9は、駆動モーター5aを駆動させることにより、インクリボン3に加わる巻き取り力を制御する。
インクリボン3に巻き取り力が加わることにより、当該インクリボン3は、巻取側インクリボン5の方向へ移動する。インクリボン3の移動に伴い、剥離層17hには、接着層16s(基材14)から離れる方向に向かう力が加わる。
これにより、剥離層17hが接着層16sから剥離して、ペーパー4に、保護層17が転写(形成)される(図4(b)参照)。すなわち、ペーパー4に保護層17が転写される。つまり、サーマルヘッド1により、熱量Pの熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられることにより、保護層17が、ペーパー4(対象物)の最表面側の層となるように転写される。
以上により保護層転写処理は終了する。なお、保護層17(剥離層17h)の表面は、光沢度(光沢性)が高い。そのため、表面が、高い光沢度を有する印画物が得られる。
次に、制御部9が受信した保護層データが、マット用データであるとする。この場合、保護層転写処理では、制御部9が、検知センサー7が保護層11dに対応づけて設けられる頭出しマーク12を検知するまで、インクリボン3の巻き取りが行われるよう、駆動モーター5aを制御する。
そして、制御部9は、インクリボン3およびペーパー4を、画像の1ラインに対応する距離(1画素)だけ移動させる毎に、サーマルヘッド1が、熱量Paの熱をインクリボン3(保護層11d)に与えるよう、サーマルヘッド1を制御する(図5(a)参照)。これにより、前述したように、接着層17sがペーパー4および剥離層17hに接着する。
そして、前述したように、接着層17sがペーパー4および剥離層17hに十分な粘着力で接着した後、制御部9は、インクリボン3が巻取側インクリボン5により巻き取られように、駆動モーター5aを駆動させる。すなわち、制御部9は、駆動モーター5aを駆動させることにより、インクリボン3に加わる巻き取り力を制御する。
具体的には、熱量Paの熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられた状態において剥離層16hが基材14から剥離されるように、駆動モーター5aによりインクリボン3に加わる巻取り力の大きさは、制御部9により制御される。
インクリボン3に、前述のように制御された巻取り力が加わることにより、当該インクリボン3は、巻取側インクリボン5の方向へ移動する。インクリボン3の移動に伴い、剥離層16hには、基材14から離れる方向に向かう力が加わる。
その結果、剥離層16hが基材14から剥離して、ペーパー4の表面に、保護層17および保護層16が形成される(図5(b)参照)。すなわち、ペーパー4に保護層17および保護層16が転写される。つまり、保護層16は、サーマルヘッド1により、熱量Paの熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられることにより、ペーパー4(対象物)の最表面側の層となるように転写される。
以上により保護層転写処理は終了する。これにより、ペーパー4に転写された最上部の保護層16(剥離層16h)の表面は、光沢度(光沢性)が低い。そのため、マット性を有する印画物が得られる。
なお、制御部9が受信した保護層データがマット用データある場合、当該保護層データが光沢用データである場合より、駆動モーター5aの巻取り力(トルク)は大きくされる。以下、巻取り力について具体的に説明する。
前述したように、熱量Paの熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられた場合、剥離層17hと接着層16sとが接着する力が、剥離層16hと基材14とが接着する力より大きくなるように、接着層16sおよび接着層17sは構成される。すなわち、熱量Paの熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられた場合、保護層をペーパー4に転写するためには、剥離層16hを基材14から剥離するための力が必要となる。
以下においては、保護層データが光沢用データである場合の保護層転写処理により、熱量Pの熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられた状態において剥離層17hを接着層16sから剥離するための力を、力PW1ともいう。すなわち、熱量Paの熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられた状態において剥離層16hを基材14から剥離するための力は、力PW1より大きい。
そのため、保護層データがマット用データである場合の保護層転写処理では、制御部9は、駆動モーター5aの巻取り力(トルク)を、保護層データが光沢用データである場合よりも大きくして、巻取側インクリボン5によりインクリボン3を巻き取る。すなわち、制御部9は、保護層データがマット用データである場合、駆動モーター5aによりインクリボン3に加わる巻取り力を、保護層データが光沢用データである場合よりも十分に大きくして、巻取側インクリボン5によりインクリボン3を巻き取る。
すなわち、前述したように、熱量Paの熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられた状態において剥離層16hが基材14から剥離されるように、駆動モーター5aによりインクリボン3に加わる巻取り力の大きさは、制御部9により制御される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、インクリボン3において、保護層16が保護層17上に重なるように設けられる。保護層17は、熱量Pの熱が保護層11dに与えられることにより、ペーパー4に転写される。また、保護層16は、熱量Pより大きい熱量Paの熱が保護層11dに与えられることにより、ペーパー4に転写される。制御部9は、熱量Pの熱、および、熱量Paの熱のいずれかを、サーマルヘッド1に発生させる制御を行う。
すなわち、インクリボン3において、保護層16が保護層17上に重なるように設けられる。これにより、インクリボン3において、保護層16および保護層17が形成される面積が大きくなることを抑制することができる。これにより、複数種類の保護層をインクリボン3に設ける構成において、インクリボン3の長さが不必要に長くなることを抑制することができる。そのため、複数種類の保護層を選択的に転写する構成におけるコストの増加を抑制することができる。したがって、コストの増加を抑制しつつ、複数種類の保護層を選択的に転写することができる。
また、本実施の形態によれば、インクリボンに与える熱量と、駆動モーター5aの巻取り力(トルク)を制御することで、複数種類の保護層を選択して転写することができる。そのため、1種類のインクリボンで、光沢度の高い印画物と、マット性を有する印画物を提供することができる。また、マット性の印画物も安定した品質を得ることが可能になる。また、必要な表面の性質がばらつきなく得られる。
また、本実施の形態によれば、適正な熱量の熱により、保護層を選択的に転写することができる。すなわち、保護層の表面の性質として、複数種類の表面の性質を選択することができる。そのため、転写された保護層の表面の性質を安定して設定することができる。すなわち、安定した表面性を得ることができる。また、本実施の形態によれば、上記構成により、インクリボンの長さを不必要に長くすることもない。
なお、前述の関連技術Aでは、サーマルヘッドの加熱温度を高くすることで、保護層の表面の光沢度を制御している。しかしながら、関連技術Aでは、保護層の表面を変化させて光沢度を低下させる。そのため、加熱温度を高くしていくに従い安定した表面性を得ることは難しくなる。また、離型層の性能が損なわれてインクリボンの基材から保護層は剥離しにくくなる。そのため、加熱温度の上限は、保護層が剥離可能な範囲で設定する必要があり、光沢度を小さくするための制約となるという問題点がある。
また、前述の関連技術Bでは、インクリボンにおいて、2種類の保護層(オーバーコート層)が重ならないように設けられる。そのため、前述したように、所定枚数の用紙に印画を行うために必要なインクリボンの長さが増加する。そのため、インクリボンの交換頻度が高くなるため、ユーザーのハンドリング面およびコスト面で不利になるという問題点がある。
そこで、本実施の形態はで、上記のように構成することで、関連技術A,Bにおける上記の問題点を解決することができる。
なお、保護層転写処理では、熱量P,Paの熱を使用したがこれに限定されない。保護層転写処理では、制御部9が、保護層データがマット用データである場合にサーマルヘッド1が与える熱の熱量Paをさらに大きくするよう、サーマルヘッド1を制御する構成としてもよい。
以下においては、予め定められた値Pa0(0より大きい実数)を示す熱量Paを、熱量Pa0ともいう。また、以下においては、値Pa0より大きくされた熱量Paを、熱量Pa1ともいう。具体的には、制御部9が、予め定められた値Pa0より大きくされた熱量Pa(Pa1)の熱を、サーマルヘッド1に発生させる制御を行う構成(以下、構成Nともいう)としてもよい。
熱量Pa1の熱は、当該熱量Pa1の熱が保護層11dに与えられることにより、ペーパー4(対象物)に転写される保護層16の表面の光沢度(光沢性)を低下させるための熱である。
熱量Pa1は、熱量Pa0より大きい。熱量Pa1は、例えば、熱量Pa0の1.1〜2.0倍の熱量である。なお、構成Nの保護層転写処理は、保護層データがマット用データである場合に行われる。
具体的には、構成Nの保護層転写処理では、制御部9が、熱量Pa1の熱を、サーマルヘッド1に発生させる制御を行う。そして、接着層17sがペーパー4および剥離層17hに接着した状態において、制御部9は、駆動モーター5aの巻取り力(トルク)を、保護層データが光沢用データである場合よりも大きくして、巻取側インクリボン5によりインクリボン3を巻き取る。
なお、熱量Pa1の熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられた状態において剥離層16hが基材14から剥離されるように、駆動モーター5aによりインクリボン3に加わる巻取り力の大きさは、制御部9により制御される。
これにより、ペーパー4に保護層17および保護層16が転写される。すなわち、保護層16は、サーマルヘッド1により、値Pa0より大きくされた熱量Pa(熱量Pa1)の熱が保護層11d(インクリボン3)に与えられることにより、ペーパー4(対象物)の最表面側の層となるように転写される。
以上の構成Nの保護層転写処理により、ペーパー4に転写される保護層16の表面の光沢度をさらに低下させることができる。これにより、印画物の表面の光沢度(光沢性)の種類を増加させることができる。
また、保護層転写処理において、制御部9が、部分的に加える熱量をかえる制御を行う構成としてもよい。これにより、一枚の印画物中で光沢度(光沢性)を変化させることができる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
例えば、本実施の形態では、保護層11dは、積層された2種類の保護層から構成されるとしたが、これに限定されない。保護層11dは、積層された3種類以上の保護層から構成されてもよい。