JP6044261B2 - 異方導電性接着剤組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、異方導電性接着剤組成物に関する。
近年、半導体及び液晶ディスプレイ等の分野で電子部品を固定したり、回路接続を行うために各種の接着材料が使用されている。これらの用途では、ますます高密度化、高精細化が進み、接着剤にも高い接着力及び接続信頼性が求められている。
特に、液晶ディスプレイとテープキャリアパッケージ(TCP)との接続、フレキシブルプリント配線基板(FPC)とTCPとの接続又はFPCとプリント配線板との接続における回路接続材料としては、接着剤中に導電粒子を分散させた異方導電性接着剤が使用されている。また、最近では、半導体シリコンチップを基板に実装する場合でも、従来のワイヤーボンドではなく、半導体シリコンチップを基板に直接実装するいわゆるチップオングラス(COG)実装が行われており、ここでも異方導電性接着剤が適用されている。
また、近年、精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなっている。このため、従来のエポキシ樹脂系を用いた回路接続用接着材の接続条件では、配線の脱落、剥離、位置ずれが生じる等の問題があり、COG実装ではチップと基板との熱膨張差に起因する反りが発生する問題がある。さらに低コスト化のためには、スループットを向上させる必要性があり、低温(例えば、100〜170℃)、短時間(例えば、10秒以内)、換言すれば低温速硬化可能な接着剤が要求されている。
カチオン重合開始剤としては、例えば下記一般式(IX)で表されるスルホニウム塩化合物を主成分とするカチオン重合性物質の重合開始剤が提案されている(特許文献1)。
Figure 0006044261

[式(IX)中、Rは水素、メチル基、アセチル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ベンゾイル基、フェノキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基のいずれかを、R、Rは独立して水素、ハロゲン、C〜Cのアルキル基のいずれかを、RはC〜Cのアルキル基を、Qはo−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、ジニトロベンジル基、トリニトロベンジル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基のいずれかを示す。XはSbF、AsF、PF、BFのいずれかである。]
また、加熱により短時間にエポキシ樹脂を硬化させることができる重合開始剤として、下記一般式(X)又は下記一般式(XI)で表されるスルホニウム塩化合物を含有するカチオン重合開始剤が提案されている(特許文献2)。
Figure 0006044261

[式(X)中、Rは、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を表し、Rはアルキル基を表し、Rは置換されていてもよいフェニル基又は置換されていてもよいナフチル基を表し、Xは、SbF、AsF、PF又はBFを表す。]
Figure 0006044261

[式(XI)中、Rは、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基又はアルカノイル基を表し、Rはアルキル基を表し、Rは、アルケニル基、α−アルキルベンジル基、α,α−ジアルキルベンジル基、α−フェニルベンジル基又はフルオレニル基を表し、XはSbF、AsF、PF又はBFを表す。]
特開平3−237107号公報 特開平6−345726号公報
ところで、本発明者らが鋭意検討した結果、特許文献1又は2に記載のカチオン重合開始剤を用いると、得られる異方導電性接着剤は金属及び半導体配線を腐食しやすいという問題があることを見出した。これは、上記重合開始剤では、XとしてSbF、AsF、PF又はBFを有するが、Xは中心原子とフッ素原子との結合が弱く、フッ素イオンが脱離しやすいためであると推察される。また、低温速硬化可能な(例えば、100〜170℃、10秒以内)接着剤を調製するためには、XとしてSbF、AsF、PF及びBFの中でSbFが最も高活性で好ましいが、SbFは環境安全性の観点から問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低温短時間で接着可能であり、接続信頼性に優れ、且つ保存安定性に優れる、異方導電性接着剤組成物及びこれらをフィルム状にしてなるフィルム状接着剤を提供することを目的とする。また、これら異方導電性接着剤組成物を用いた、接続構造体及びその製造方法並びに半導体装置を提供することを目的とする。
本発明は、下記(1)〜(10)に記載の異方導電性接着剤組成物及びこれらをフィルム状にしてなる下記(11)に記載のフィルム状接着剤を提供する。また、これら異方導電性接着剤組成物を用いた、接続構造体及びその製造方法並びに半導体装置を提供する。
(1)(A)下記一般式(I)で表されるスルホニウム塩化合物と、(B)カチオン重合性物質と、(C)導電粒子と、を含有してなる異方導電性接着剤組成物。
Figure 0006044261

[式中、Rは置換若しくは未置換のアリールメチル基、又は置換若しくは未置換のアリル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を示し、Yは[P(R(F)6−a(式中、Rは水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されているアルキル基を示し、aは1〜6の整数を示す。aが2以上の整数である場合、複数存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)、又は[C((R)SO(式中、Rは水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されているアルキル基を示し、複数存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)を示す。ただし、R及びRは一緒になって環を形成していてもよく、Rが置換又は未置換のアリールメチル基である場合には、R及びRの少なくとも一方が置換又は未置換のアリール基であり、Rが置換又は未置換のアリル基である場合には、R及びRはアルキル基、又はR及びRが一緒になって形成された環である。]
(2)上記(A)成分として、下記一般式(II)で表されるスルホニウム塩化合物を含有する、(1)に記載の異方導電性接着剤組成物。
Figure 0006044261

[式中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換又は未置換のアリール基を示し、Yは上記と同義である。]
(3)上記(A)成分として、下記一般式(III)で表されるスルホニウム塩化合物を含有する、(2)に記載の異方導電性接着剤組成物。
Figure 0006044261

[式中、Yは上記と同義である。]
(4)上記(A)成分として、下記一般式(IV)で表されるスルホニウム塩化合物を含有する、(1)に記載の異方導電性接着剤組成物。
Figure 0006044261

[式中、A及びAは、それぞれ独立にアルキル基を示し、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を示し、Yは上記と同義である。ただし、A及びAは一緒になって環を形成していてもよい。]
(5)上記(A)成分として、一般式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)で表されるスルホニウム塩化合物を含有する、(4)に記載の異方導電性接着剤組成物。
Figure 0006044261

Figure 0006044261

Figure 0006044261

Figure 0006044261

[式中、Yは上記と同義である。]
(6)上記(A)成分として、グリシジルエーテル型エポキシ化合物との混合物についての示差走査熱量測定において、ピーク温度40〜150℃を与えるスルホニウム塩化合物を含有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の異方導電性接着剤組成物。
(7)上記(B)成分として、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びビニルエーテル化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、(1)〜(6)のいずれかに記載の異方導電性接着剤組成物。
(8)(D)フィルム形成性ポリマーを更に含有する、(1)〜(7)のいずれかに記載の異方導電性接着剤組成物。
(9)回路接続用接着剤として使用される、(1)〜(8)のいずれかに記載の異方導電性接着剤組成物。
(10)加熱により硬化される、(1)〜(9)のいずれかに記載の異方導電性接着剤組成物。
(11)(1)〜(10)のいずれかに記載の異方導電性接着剤組成物をフィルム状にしてなる、フィルム状接着剤。
(12)第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材と、上記第一の回路部材及び上記第二の回路部材の間に配置され、上記第一の回路電極と上記第二の回路電極とを電気的に接続する回路接続部材と、を備え、上記回路接続部材が(1)〜(10)のいずれかに記載の異方導電性接着剤組成物の硬化物を含む、接続構造体。
(13)第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材との間に(1)〜(10)のいずれかに記載の異方導電性接着剤組成物を配置し、上記異方導電性接着剤組成物を介して、上記第一の回路部材及び上記第二の回路部材を加熱及び加圧して、上記第一の回路電極及び上記第二の回路電極を電気的に接続する工程を備える、接続構造体の製造方法。
(14)半導体素子と、回路パターンを有する基板と、上記半導体素子及び上記基板の間に配置され、上記半導体素子と上記回路パターンとを電気的に接続する半導体素子接続部材と、を備え、上記半導体素子接続部材が(1)〜(10)のいずれかに記載の異方導電性接着剤組成物の硬化物を含む、半導体装置。
本発明はさらに、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の異方導電性接着剤組成物若しくは上記(11)に記載のフィルム状接着剤の回路接続用接着剤としての応用、又は該異方導電性接着剤組成物若しくはフィルム状接着剤の回路接続用接着剤を製造するための応用に関してもよい。
本発明によれば、低温短時間で接着可能であり、接続信頼性に優れ、且つ保存安定性に優れる、異方導電性接着剤組成物及びこれらをフィルム状にしてなるフィルム状接着剤を提供することができる。また、これら異方導電性接着剤組成物を用いた、接続構造体及びその製造方法並びに半導体装置を提供することができる。
フィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。 接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。 (a)〜(c)はそれぞれ接続構造体を製造する一連の工程図である。 半導体装置の一実施形態を示す部分断面図である。 硬化率測定試験において得られた、実施例1及び2、参考例3及び4並びに比較例1及び4のフィルム状接着剤の硬化温度と硬化率との関係を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
[異方導電性接着剤組成物]
本実施形態に係る異方導電性接着剤組成物(以下、単に「接着剤組成物」ともいう。)は、(A)一般式(I)で表されるスルホニウム塩化合物(以下、場合により「(A)成分」という。)と、(B)カチオン重合性物質(以下、場合により「(B)成分」という。)と、(C)導電粒子と、を含有する。
上記スルホニウム塩化合物は、下記一般式(I)で表される化合物である。
Figure 0006044261
式中、Rは置換若しくは未置換のアリールメチル基、又は置換若しくは未置換のアリル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を示し、Yは対アニオンを示す。ただし、R及びRは一緒になって環を形成していてもよい。
アルキル基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。これらは置換基を有していてもよく、置換基の置換位置は特に限定されるものではなくいずれの位置であってもよい。
アリール基としては、例えば、炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。より具体的には、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。これらは置換基を有していてもよく、置換基の置換位置は特に限定されるものではなくいずれの位置であってもよい。
アリールメチル基としては、例えば、メチル基における水素原子の1つが上述のアリール基により置換されたものが挙げられる。より具体的には、ベンジル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基が挙げられる。これらは置換基を有していてもよく、置換基の置換位置は特に限定されるものではなくいずれの位置であってもよい。
及びRが一緒になって形成していてもよい環としては、下記式(α)で表されるものが挙げられる。これらは置換基を有していてもよく、置換基の置換位置は特に限定されるものではなくいずれの位置であってもよい。
Figure 0006044261
上述した各基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基等のアルコキシカルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンゾイルオキシ基等のエステル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、が挙げられる。これらの置換基の置換位置は、特に限定されるものではなくいずれの位置であってもよい。
なお、置換基を有するアリル基において、シス−トランス異性体を有する場合には、どちらの異性体であってもよい。
で示される対アニオンは、[P(R(F)6−a(式中、Rは水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されているアルキル基を示し、aは1〜6の整数を示す。aが2以上の整数である場合、複数存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)、又は[C((R)SO(式中、Rは水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されているアルキル基を示し、複数存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)である。Yは、求核性が低いことが好ましい。
なお、[P(R(F)6−aとしては、Rのアルキル基における水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されていることが好ましく、Rのアルキル基における水素原子の90%以上がフッ素原子で置換されていることがより好ましく、Rが直鎖又は分岐のパーフルオロアルキル基であることがさらに好ましい。具体的には、[P(CF(F)、[P(C(F)及び[P(n−C(F)等が挙げられる。これらの対アニオンは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、[C((R)SOとしては、Rのアルキル基における水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されていることが好ましく、Rのアルキル基における水素原子の90%以上がフッ素原子で置換されていることがより好ましく、Rが直鎖又は分岐のパーフルオロアルキル基であることがさらに好ましい。具体的には、[C(CFSO、[C(CSO及び[C(n−CSO等が挙げられる。これらの対アニオンは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
スルホニウム塩化合物としては、上記Rが置換又は未置換のアリールメチル基であり、上記Rが置換又は未置換のアリール基であり、Rがメチル基である一般式(II)で表されるスルホニウム塩化合物が好ましい。このようなスルホニウム塩化合物を含有してなる接着剤組成物は、保存安定性と低温速硬化性に優れる。
また、上記Rが置換又は未置換のアリル基であり、上記R及びRがアルキル基、又はR及びRが一緒になって形成された環である一般式(IV)で表されるスルホニウム塩化合物も好ましい。このようなスルホニウム塩化合物を含有してなる接着剤組成物は、保存安定性と低温速硬化性に優れる。
スルホニウム塩化合物の具体例としては、α−ナフチルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ビフェニルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、フェニルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−メチル−フェニルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、2−メチル−フェニルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、フルオレニルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、α−ナフチルメチル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ビフェニルメチル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、フェニルメチル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−メチル−フェニルメチル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、2−メチル−フェニルメチル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、フルオレニルメチル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、α−ナフチルメチル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ビフェニルメチル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、フェニルメチル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−メチル−フェニルメチル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、2−メチル−フェニルメチル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、フルオレニルメチル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、2−ブテニルジメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、3−メチル−2−ブテニルジメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、シンナミルジメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、2−ブテニルテトラメチレンスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、シンナミルテトラメチレンスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、α−ナフチルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、ビフェニルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、フェニルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、1−メチル−フェニルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、2−メチル−フェニルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、フルオレニルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、α−ナフチルメチル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、ビフェニルメチル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、フェニルメチル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、1−メチル−フェニルメチル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、2−メチル−フェニルメチル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、フルオレニルメチル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、α−ナフチルメチル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、ビフェニルメチル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、フェニルメチル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、1−メチル−フェニルメチル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、2−メチル−フェニルメチル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、フルオレニルメチル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、2−ブテニルジメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、3−メチル−2−ブテニルジメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、シンナミルジメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、2−ブテニルテトラメチレンスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、シンナミルテトラメチレンスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、等を挙げることができる。(A)成分として、スルホニウム塩化合物のうち一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、α−ナフチルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、3−メチル−2−ブテニルジメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、シンナミルジメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、シンナミルテトラメチレンスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、α−ナフチルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、3−メチル−2−ブテニルジメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、シンナミルジメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、シンナミルテトラメチレンスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドを含有してなる接着剤組成物は、保存安定性と低温速硬化性に一層優れる。
(A)成分を含有してなる接着剤組成物の保存安定性の観点から、(A)成分としては、(A)成分とグリシジルエーテル型エポキシ化合物YL980(ジャパンエポキシレジン株式会社製品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)との混合物についての示差走査熱量測定において発熱ピークを40〜150℃に与えるものが好ましい。特に発熱ピークを70〜130℃に与えるものが一層好ましい。
本実施形態に係る接着剤組成物における(A)成分の含有割合は、(B)成分の総量基準で、0.5〜50質量%であることが好ましく、2〜25質量%とすることがより好ましい。(A)成分の含有割合が0.5質量%以上であると、より十分な硬化が得られる傾向があり、50質量%以下であると、接着力がより向上する傾向がある。
(B)成分としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられ、エポキシ化合物としてはグリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物が例示できる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、分子中にグリシジルエーテル基を有する化合物で、硬化剤の存在下又は非存在下に活性光線の照射又は加熱によって硬化するものであればよい。中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものは、硬化させた際の架橋密度が高くなるので好ましい。グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル基を有する化合物であれば特に制限なく、公知のものを使用できる。より具体的には、エピクロルヒドリンとビスフェノールA又はビスフェノールF等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂及びこれらビスフェノール型エポキシ樹脂の芳香族構造を水素添加して得られる脂環構造を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型グリシジルエーテル化合物、グリシジルアミン系エポキシ化合物、グリシジルエステル系エポキシ化合物、ビフェニルジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリグリシジルメタクリレート又はグリシジルメタクリレートと、これと共重合可能なビニル単量体との共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
脂環式エポキシ化合物としては、環状炭化水素骨格を構成する炭素原子のうち二つと酸素原子とからなるエポキシ基を分子中に有する化合物で、硬化剤の存在下又は非存在下に活性光線の照射又は加熱によって硬化するものであればよい。中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものは、硬化させた際の架橋密度が高くなるので好ましい。脂環式エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ基を有する化合物であれば特に制限なく、公知のものを使用できる。例えば、シクロヘキセン環含有化合物を酸化して得られるシクロヘキセンオキシド含有化合物及びシクロペンテン環含有化合物を酸化して得られるシクロペンテンオキシド含有化合物が挙げられる。より具体的には、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
オキセタン化合物としては、分子中にオキセタニル基を有しているオキセタン化合物で、硬化剤の存在下若しくは非存在下に活性光線の照射又は加熱によって硬化するものであればよい。中でも、オキセタン環を2個以上有する化合物は、硬化させた際の架橋密度が高くなるので好ましい。更に、分子中にオキセタン環を2〜6個有し、水酸基を1〜6個有する脂肪族系又は脂環系化合物は、硬化性に優れる観点から好ましい。
オキセタン化合物としては、下記一般式(XII)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006044261
式中、Rは水素原子、フッ素原子又は1価の炭化水素基を示し、R10は水素原子、n価の脂肪族炭化水素基又はn価の芳香族炭化水素基を示し、nは1〜6の整数を示す。ただし、R10が水素原子のときnは1である。nが2以上の整数であるとき、R10に結合する複数の酸素原子は、互いにR10の同一炭素原子に結合していてもよく、R10の異なる炭素原子に結合していてもよい。
オキセタン化合物としては、より具体的には、1,4−ジ[(3−オキセタニル−n−ブトキシ)メチル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−オキセタニル−n−ブトキシ)メチル]ビフェニル、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、2−エチルヘキシルオキセタン等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、分子中にビニルエーテル基を有する化合物で、硬化剤の存在下又は非存在下に活性光線の照射又は加熱によって硬化するものであればよい。中でも、1分子中に2個以上のビニルエーテル基を有するものは、硬化させた際の架橋密度が高くなるので好ましい。
ビニルエーテル化合物としては、下記一般式(XIII)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006044261
式中、R11はm価の脂肪族炭化水素基又はm価の芳香族炭化水素基を示し、mは1〜4の整数を示す。mが2以上の整数であるとき、R11に結合する複数の酸素原子は、互いにR11の同一炭素原子に結合していてもよく、R11の異なる炭素原子に結合していてもよい。
ビニルエーテル化合物としては、より具体的には、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
(B)成分のカチオン重合性置換基当量は、43〜1000が好ましく、50〜800がより好ましく、73〜600がさらに好ましい。カチオン重合性置換基当量が43〜1000であると、後述する電極の接続時に、接着強度がより向上する傾向がある。なお、カチオン重合性置換基当量とは、含有するカチオン重合性物質の一分子の平均分子量をカチオン重合性物質の一分子中のカチオン重合性置換基の数で除した値、つまり単位カチオン重合性置換基あたりの平均分子量を指す。
(B)成分としては、不純物イオン(Na、Cl等)及び加水分解性塩素等の含有量を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、腐食防止の観点から好ましい。
本実施形態に係る接着剤組成物における(B)成分の含有割合は、接着剤組成物の総量基準で、10〜90質量%であることが好ましく、25〜75質量%であることがより好ましい。(B)成分の含有割合が10質量%以上であると、硬化物としたときの物性(弾性率等)がより向上する傾向があり、90質量%以下であると、硬化収縮が小さく、接着力がより向上する傾向がある。
本実施形態に係る接着剤組成物において、(B)成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係る接着剤組成物は、(C)導電粒子を更に含有する。導電粒子としては、例えば、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子及びカーボンが挙げられる。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に上記金属、金属粒子又はカーボンを被覆したものでもよい。導電粒子が、プラスチックを核とし、この核に上記金属、金属粒子又はカーボンを被覆したもの及び熱溶融金属粒子である場合、加熱加圧により変形して接続時に電極との接触面積が増加し接続信頼性が向上するので好ましい。また、これらの導電粒子の表面を、さらに高分子樹脂等で被覆した微粒子は、導電粒子の配合量を増加したとき、粒子同士の接触による短絡を抑制し、電極回路間の絶縁性を向上できる。したがって、適宜、導電粒子の表面を高分子樹脂等で被覆した微粒子を単独で、又は導電粒子と混合して用いることができる。
この導電粒子の平均粒径は、SEM観察によって求めることができる。導電粒子の平均粒径は、分散性及び導電性が良好となる観点から1〜18μmであることが好ましい。本実施形態に係る接着剤組成物における導電粒子の含有割合は、特に制限を受けないが、接着剤組成物100体積%に対して、0.1〜30体積%であることが好ましく、0.1〜10体積%であることがより好ましい。導電粒子の含有割合が0.1体積%以上であると導電性がより向上する傾向があり、30体積%以下であると回路の短絡をより防ぐことができる。なお、「体積%」は、硬化前の各成分の23℃における体積をもとに決定されるが、各成分の体積は比重を利用して質量を変換して算出することもできる。また、各成分の体積はメスシリンダー等に適当な溶媒(水、アルコール等)を入れたものに、その成分を投入して増加した体積分から求めることもできる。なお、適当な溶媒とは、その成分を溶解したり膨潤させたりせず、よくぬらすものをいう。
本実施形態に係る接着剤組成物は、被着体の腐食を防止することを目的として、金属水酸化物又は金属酸化物からなる腐食防止剤を添加、混合することができる。腐食防止剤としては、より具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化マンガン及び酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種以上が好ましい。腐食防止剤が粒子状である場合には、接着剤組成物への分散、被着体への高接着化及び被着体の腐食防止能の観点から、その粒径は10μm以下であることが好ましい。
本実施形態に係る接着剤組成物における腐食防止剤の含有割合は、(A)成分の総量基準で、0.1〜60質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましい。腐食防止剤の含有割合が0.1質量%以上であると、腐食防止効果を十分に発揮することができ、60質量%以下であると分散性が高まり、接着剤組成物の接続信頼性がより向上する傾向がある。
本実施形態に係る接着剤組成物は、1分子中に2個以上のエーテル結合を有する鎖状エーテル化合物又は環状エーテル化合物をさらに含有してもよい。特に(B)成分として脂環式エポキシ化合物を含有する場合、鎖状又は環状エーテル化合物をさらに含有することによって、脂環式エポキシ化合物の硬化挙動をより容易にかつ確実に制御することができる。
鎖状又は環状エーテル化合物としては、1分子中に2個以上のエーテル結合を有するものであれば特に制限は無く、公知のものを使用できる。鎖状エーテル化合物としては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のポリエチレングリコール類;ポリエチレングリコール類の末端水酸基をエーテル結合又はエステル結合で官能化した誘導体;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド等の単官能エポキシ化合物の重合体;多官能エポキシ化合物の重合体;単官能又は多官能オキセタン化合物の重合体;単官能又は多官能テトラヒドロフラン類の重合体などが挙げられる。また、環状エーテル化合物としては、12−クラウン−4−エーテル、14−クラウン−4−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、18−クラウン−6−エーテル、21−クラウン−7−エーテル、24−クラウン−8−エーテル、30−クラウン−7−エーテル、ベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、トリベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、ポリエチレングリコール類の環化物、エポキシ化合物の重合体の環化物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のうち、反応調節能の観点から環状エーテル化合物が好ましく、12−クラウン−4−エーテル、14−クラウン−4−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、18−クラウン−6−エーテル、21−クラウン−7−エーテル、24−クラウン−8−エーテル、30−クラウン−7−エーテル、ベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、トリベンゾ−18−クラウン−6−エーテルがより好ましい。
本実施形態に係る接着剤組成物における鎖状又は環状エーテル化合物の含有量は、(A)成分に対して、0.005〜10モル%とすることが好ましく、0.01〜5モル%とすることがより好ましい。鎖状又は環状エーテル化合物の含有量が0.005モル%以上であると、接着強度がより向上し、20モル%以下であると、硬化が促進され、架橋密度がより高まる傾向がある。
本実施形態に係る接着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、公知の各種添加剤、例えば、無機充填剤;強化剤;着色剤;安定剤(熱安定剤、耐候性改良剤等);増量剤;粘度調節剤;テルペンフェノール共重合体、テルペン樹脂、ロジン誘導体及び脂環族系炭化水素樹脂等に代表される粘着付与剤;難燃剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;変色防止剤;抗菌剤;防黴剤;老化防止剤;帯電防止剤;可塑剤;滑剤;発泡剤;離型剤などを含有していてもよい。
上記着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、金属錯塩染料等の染料;カーボンブラック、マイカ等の無機顔料;カップリングアゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、チオインジゴ系、ジオキサゾン系及びフタロシアニン系等の有機顔料などが挙げられる。また、上記安定剤としては、ヒンダードフェノール系、ヒドラジン系、リン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系及びオキザリックアシッドアニリド系等の化合物が挙げられる。上記無機充填剤としては、ガラス繊維;アスベスト繊維;炭素繊維;シリカ繊維;アルミナ繊維;ジルコニア繊維;窒化ホウ素繊維;窒化珪素繊維;塩基性硫酸マグネシウム繊維;ホウ素繊維;ステンレス鋼繊維;アルミニウム、チタン、銅、真鍮及びマグネシウム等の無機質及びこれらからなる金属繊維;銅、鉄、ニッケル、亜鉛、錫、鉛、ステンレス鋼、アルミニウム、金及び銀等の金属粉末;木粉;珪酸アルミニウム;タルク;クレイ;炭酸塩;硫酸塩;リン酸塩;ホウ酸塩;ホウ珪酸塩;アルミノ珪酸塩;チタン酸塩;塩基性硫酸塩及び塩基性炭酸塩等の塩基性塩;ガラス中空球及びガラスフレーク等のガラス材料;炭化珪素;窒化アルミ;ムライト;コージェライトなどが挙げられる。
本実施形態に係る接着剤組成物は、増粘化及びフィルム化を目的として、種々のポリマーを適宜含有してもよい。含有されるポリマーとしては、(B)成分の硬化を大きく阻害しないものであれば制限はなく、公知のポリマーを使用することができる。このようなポリマーとしては、フェノキシ樹脂類、ポリメタクリレート類、ポリアクリレート類、ポリエステル類、ポリビニルブチラール類、SBS(スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)及びそのエポキシ変性体、並びにSEBS(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体)及びその変性体等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、これらポリマー中にはシロキサン結合又はフッ素置換基が含まれていても良い。これらは、混合する樹脂同士が完全に相溶するか、若しくはミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば接着剤組成物としては好適に用いることができる。特にフィルム化を目的とする場合には、フェノキシ樹脂類、ポリビニルブチラール類等のフィルム形成性ポリマーを含有することが好ましい。
上記ポリマーの分子量が大きいとフィルム形成性が容易に得られ、また接着剤組成物の流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。上記ポリマーの重量平均分子量は、特に制限を受けるものではないが、5000〜150000であることが好ましく、10000〜80000であることがより好ましい。重量平均分子量が5000以上では、フィルム形成性がより優れる傾向があり、150000以下で他の成分との相溶性がより良くなる傾向がある。ここで重量平均分子量とは、下記に示す条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
(測定条件)
装置:東ソー株式会社製 GPC−8020
検出器:東ソー株式会社製 RI−8020
カラム:日立化成工業株式会社製 Gelpack GL−A−160−S+GL−A150
試料濃度:120mg/3mL
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:60μL
圧力:2.9MPa(30kgf/cm
流量:1.00mL/mim
本実施形態に係る接着剤組成物における上記ポリマーの含有量は、(B)成分100質量部に対して20〜320質量部であることが好ましく、50〜150質量部であることがより好ましい。上記ポリマーの含有割合が20〜320質量部であると、接着剤組成物の流動性及び接着性がより向上する傾向がある。
本実施形態に係る接着剤組成物は、常温で液状である場合にはペースト状で使用することができる。室温で固体の場合には、加熱して使用する他、溶剤を使用してペースト化してもよい。使用できる溶剤としては、接着剤組成物及び添加剤と反応性がなく、かつ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限を受けないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃以上の溶剤では、常温で放置しても揮発しにくく、開放系で使用する際の制限が少ない。また、沸点が150℃以下の溶剤では、溶剤を揮発させやすく、接着後の接続信頼性がより向上する傾向がある。
本実施形態に係る接着剤組成物は、加熱により硬化することができる。加熱温度は、好ましくは40〜180℃、より好ましくは50〜150℃であり、加熱時間は、好ましくは0.1秒〜10時間、より好ましくは、1秒〜1時間である。加熱温度が40℃以上であると硬化速度がより向上する傾向があり、180℃以下であると望まない副反応が抑制され、接続信頼性がより向上する傾向がある。また、加熱時間が0.1秒以上であると硬化反応が進行しやすくなる傾向があり、10時間以下であると硬化物の生産性がより向上するとともに、望まない副反応が進行しにくくなり、接続信頼性がより向上する傾向がある。
本実施形態に係る接着剤組成物は、加熱及び加圧を併用して被着体を接着させることができる。加熱及び加圧を併用して接着する場合の加熱温度は、特に制限を受けないが、50〜190℃の温度が好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば、特に制限を受けないが、TCP及びチップオンフレックス(COF)の場合、一般的には0.1〜30MPaが好ましい。また、COG実装の場合、10〜100MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。
本実施形態に係る接着剤組成物は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用することができ、フィルム状としても使用することができる。具体的には、銀ペースト及び銀フィルム等に代表される、回路電極を有する回路部材間を接着する回路接続用接着剤、チップサイズパッケージ(CSP)用エラストマー、CSP用アンダーフィル材及びリードオンチップ(LOC)テープ等に代表される、半導体素子と回路パターンを有する半導体素子搭載用指示部材とを接着する半導体素子接続用接着剤として使用することができる。
[フィルム状接着剤]
図1は、フィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すフィルム状接着剤1は、接着剤成分5及び導電粒子7からなる、上述の接着剤組成物をフィルム状に形成したものである。このフィルム状接着剤1によれば、取り扱いが容易であり、被着体へ容易に設置することができ、接続作業を容易に行うことができる。
なお、フィルム状接着剤1は、異なる種類の接着剤組成物を用いた2層以上の層からなる多層構成(図示せず)としてもよい。上記2層以上の層においては、各層のTg(ガラス転移温度)を、例えば5℃以上異なるものとすることができる。
フィルム状接着剤1は、例えば、接着剤組成物を溶媒に溶解したものを支持体(PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等)上に塗工装置を用いて塗布し、接着剤組成物が硬化しない温度で所定時間熱風乾燥することにより作製することができる。また、フィルム状接着剤1の厚さは、例えば、10〜50μmとすることができる。
[接続構造体]
図2は、接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。図2に示すように、本実施形態の接続構造体は、相互に対向する第一の回路部材20及び第二の回路部材30を備えており、第一の回路部材20と第二の回路部材30との間には、これらを接続する回路接続部材10が設けられている。第一の回路部材20又は第二の回路部材30は無機材料から構成されていてもよい。また、接続部材との被着面の少なくとも一部が無機材料から構成されていてもよい。
第一の回路部材20は、回路基板(第一の回路基板)21と、回路基板21の主面21a上に形成された回路電極(第一の回路電極)22とを備えている。なお、回路基板21の主面21a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
一方、第二の回路部材30は、回路基板(第二の回路基板)31と、回路基板31の主面31a上に形成された回路電極(第二の回路電極)32とを備えている。また、回路基板31の主面31a上にも、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
第一の回路部材20及び第二の回路部材30としては、電気的接続を必要とする電極が形成されているものであれば特に制限はない。具体的には、液晶ディスプレイに用いられているITO等で電極が形成されているガラス又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられ、これらは必要に応じて組み合わせて使用される。このように、本実施形態では、プリント配線板やポリイミド等の有機物からなる材質をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO(indiumtinoxide)、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ケイ素(SiO)等の無機材料からなる材質のように多種多様な表面状態を有する回路部材を用いることができる。
回路接続部材10は、上記接着剤組成物の硬化物により形成され、絶縁性物質11及び導電粒子7を含有している。導電粒子7は、対向する回路電極22と回路電極32との間のみならず、主面21aと主面31aとの間にも配置されている。接続構造体においては、回路電極22及び回路電極32が、導電粒子7を介して電気的に接続されている。すなわち、導電粒子7が回路電極22及び回路電極32の双方に直接接触している。
この接続構造体においては、上述したように、対向する回路電極22と回路電極32とが導電粒子7を介して電気的に接続されている。このため、回路電極22及び回路電極32間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、回路電極22及び回路電極32間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。
[接続構造体の製造方法]
次に、上述した接続構造体の製造方法について説明する。
先ず、上述した第一の回路部材20と、フィルム状接着剤1を用意する(図3(a)参照)。
フィルム状接着剤1の厚さは、10〜50μmであることが好ましい。フィルム状接着剤1の厚さを10μm以上とすることにより、回路電極22及び回路電極32間における回路接続材料が確実に充填される。他方、フィルム状接着剤1の厚さを50μm以下とすることにより、回路電極22及び回路電極32間の回路接続材料がはみ出すことをより高度に防止することができる。
次に、フィルム状接着剤1を第一の回路部材20の回路電極22が形成されている面上に載せる。なお、フィルム状接着剤1が支持体(図示せず)上に付着している場合には、フィルム状接着剤1側を第一の回路部材20に向けるようにして、第一の回路部材20上に載せる。このとき、フィルム状接着剤1はフィルム状であり、取り扱いが容易である。このため、第一の回路部材20と第二の回路部材30との間にフィルム状接着剤1を容易に介在させることができ、第一の回路部材20と第二の回路部材30との接続作業を容易に行うことができる。
そして、フィルム状接着剤1を、図3(a)の矢印A及びB方向に加圧し、フィルム状接着剤1を第一の回路部材20に仮接続する(図3(b)参照)。このとき、加熱しながら加圧してもよい。
続いて、図3(c)に示すように、第二の回路部材30を、第二の回路電極32を第一の回路部材20に向けるようにして(すなわち、第一の回路電極22と第二の回路電極32とが対向配置される状態にして)フィルム状接着剤1上に載せる。なお、フィルム状接着剤1が支持体(図示せず)上に付着している場合には、支持体を剥離してから第二の回路部材30をフィルム状接着剤1上に載せる。
そして、フィルム状接着剤1を加熱しながら、図3(c)の矢印A及びB方向に第一の回路部材20及び第二の回路部材30を介して加圧する。こうして、フィルム状接着剤1が硬化処理され、本接続が行われ、図2に示すような接続構造体が得られる。
上記のようにして、接続構造体を製造すると、得られる接続構造体において、導電粒子7を対向する回路電極22及び回路電極32の双方に接触させることが可能となり、回路電極22及び回路電極32間の接続抵抗を十分に低減することができる。
また、フィルム状接着剤1の加熱により、回路電極22と回路電極32との間の距離を十分に小さくした状態で接着剤成分5が硬化して絶縁性物質11となり、第一の回路部材20と第二の回路部材30とが回路接続部材10を介して強固に接続される。すなわち、得られる接続構造体においては、回路接続部材10は、上記接着剤組成物を含む回路接続材料の硬化物により構成されていることから、第一の回路部材20又は第二の回路部材30に対する回路接続部材10の接着強度が十分に高くなり、特に高温高湿条件下において十分に接着強度が高くなる。また、接続構造体では接着強度が十分に高い状態が長期間にわたって持続される。したがって、得られる接続構造体は、回路電極22及び回路電極32間の距離の経時的変化が十分に防止され、回路電極22及び回路電極32間の電気特性の長期信頼性に優れる。
また、上記実施形態では、フィルム状接着剤1を用いて接続構造体を製造しているが、フィルム状接着剤1に代えて、フィルム状に形成されていない接着剤組成物を用いてもよい。この場合でも、接着剤組成物を溶媒に溶解させ、その溶液を、第一の回路部材20又は第二の回路部材30のいずれかに塗布し乾燥させれば、第一の回路部材20及び第二の回路部材30間に接着剤組成物を介在させることができる。
[半導体装置]
次に、本発明に係る半導体装置の実施形態について説明する。図4は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す概略断面図である。図4に示すように、本実施形態の半導体装置2は、半導体素子50と、半導体素子の支持部材となる基板60とを備えており、半導体素子50及び基板60の間には、これらを電気的に接続する半導体素子接続部材80が設けられている。また、半導体素子接続部材80は基板60の主面60a上に積層され、半導体素子50は更にその半導体素子接続部材80上に積層されている。
基板60は回路パターン61を備えており、回路パターン61は、基板60の主面60a上で半導体素子接続部材80を介して又は直接に半導体素子50と電気的に接続されている。そして、これらが封止材70により封止され、半導体装置2が形成される。
半導体素子50の材料としては特に制限されないが、シリコン、ゲルマニウムの4族の半導体素子、GaAs、InP、GaP、InGaAs、InGaAsP、AlGaAs、InAs、GaInP、AlInP、AlGaInP、GaNAs、GaNP、GaInNAs、GaInNP、GaSb、InSb、GaN、AlN、InGaN、InNAsP等のIII−V族化合物半導体素子、HgTe、HgCdTe、CdMnTe、CdS、CdSe、MgSe、MgS、ZnSe、ZeTe等のII−VI族化合物半導体素子、そして、CuInSe(CIS)等の種々のものを用いることができる。
半導体素子接続部材80は、上記本発明に係る接着剤組成物の硬化物により形成され、絶縁性物質11及び導電粒子7を含有している。導電粒子7は、半導体素子50と回路パターン61との間のみならず、半導体素子50と主面60aとの間にも配置されている。本実施形態の半導体装置2においては、半導体素子50と回路パターン61とが、導電粒子7を介して電気的に接続されている。このため、半導体素子50及び回路パターン61間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、半導体素子50及び回路パターン61間の電流の流れを円滑にすることができ、半導体の有する機能を十分に発揮することができる。また、この導電粒子7を上述した配合割合とすることによって電気的な接続の異方性を示すことも可能である。
半導体素子接続部材80は上記本発明に係る接着剤組成物からなる回路接続材料の硬化物により構成されている。このことから、半導体素子50及び基板60に対する半導体素子接続部材40の接着強度が十分に高くなり、かつ、半導体素子50及び回路パターン61間の接続抵抗を十分に低減することができる。そして、この状態を長期間にわたって持続させることができる。また、低温短時間での加熱により半導体素子接続部材を形成できるため、半導体素子などへの影響を小さくすることができる。したがって、半導体素子50及び基板60間の電気特性の長期信頼性を十分に高めることが可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例、参考例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(A)成分としてTA−60(サンアプロ株式会社製品名、α−ナフチルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート)、(B)成分としてグリシジルエーテル型エポキシ化合物YL980(ジャパンエポキシレジン株式会社製品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を用いた。フィルム形成性ポリマーとしてフェノキシ樹脂(YP−70、東都化成株式会社製商品名)を用いた。また、ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設けた平均粒径3μm、比重2.5の導電粒子を作製して用いた。また、腐食防止剤として水酸化アルミニウム粉末を用いた。
(A)成分、(B)成分及びフィルム形成性ポリマーを、表1に示す混合比で配合し、さらに導電粒子を8体積%配合分散させ、厚み40μmのPET樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で5分間の熱風乾燥によって接着剤層の厚みが20μmのフィルム状接着剤を得た。
(実施例2)
(A)成分としてα−ナフチルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(PMNS TFSM)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフィルム状接着剤を得た。表1に各成分の混合比を示す。
参考例3)
(A)成分として3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(MBTS TFEP)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフィルム状接着剤を得た。表1に各成分の混合比を示す。
参考例4)
(A)成分としてシンナミルテトラメチレンスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(CMS TFEP)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフィルム状接着剤を得た。表1に各成分の混合比を示す。
(比較例1)
(A)成分としてSI−60(三新化学工業株式会社製品名、α−ナフチルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフィルム状接着剤を得た。表1に各成分の混合比を示す。
(比較例2)
(A)成分としてCPI−100A(サンアプロ株式会社製品名、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフィルム状接着剤を得た。表1に各成分の混合比を示す。
(比較例3)
(A)成分としてCPI−200K(サンアプロ株式会社製品名、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフィルム状接着剤を得た。表1に各成分の混合比を示す。
(比較例4)
(A)成分としてテトラメチレンα−ナフチルメチルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(MPS TFEP)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフィルム状接着剤を得た。表1に各成分の混合比を示す。
(比較例5)
(A)成分として4−ヒドロキシフェニルメチルシンナミルスルホニウム トリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(PMCS TFEP)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフィルム状接着剤を得た。表1に各成分の混合比を示す。なお、表1で混合比は質量部で示す。
Figure 0006044261
実施例、参考例及び比較例で用いた(A)成分のスルホニウム塩化合物を表2に示す。
Figure 0006044261
[示差走査熱量測定]
実施例、参考例及び比較例で得たフィルム状接着剤の示差走査熱量測定を行い、発熱ピークの有無を調べた。
比較例2及び3で得たフィルム状接着剤において、発熱ピークは認められなかった。また、比較例5で得たフィルム状接着剤は測定前に硬化した。実施例1及び2、参考例3及び4並びに比較例1及び4で得たフィルム状接着剤は発熱ピークを与えた。その時の温度を表3に示す。
Figure 0006044261
示差走査熱量測定において、(A)成分がα−ナフチルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムを有する、TA−60(Y=[P(C、実施例1)及びPMNS TFSM(Y=[C(CFSO、実施例2)である場合、SI−60(Y=[SbF、比較例1)と同様に、発熱ピークは110℃付近に観測され、同等の低温硬化性が認められた。
また、示差走査熱量測定において、(A)成分がアリール基が3つ有するスルホニウム塩化合物(比較例2及び3)である場合、発熱ピークは認められなかったが、置換アリールメチル基と置換アリール基とを有するスルホニウム塩化合物(実施例1及び2並びに比較例1)である場合、110℃付近に発熱ピークがあり、メチル基又はフェニル基置換のアリル基とアルキル基とを有するスルホニウム塩化合物(参考例3及び4)である場合、120℃付近に発熱ピークがあり、それぞれ同等の低温硬化性が認められた。一方、置換アリールメチル基及びアルキル基を有するスルホニウム塩化合物(比較例4)である場合、150℃付近に発熱ピークがあり、実施例及び参考例の(A)成分と比較して高温で硬化性が認められた。置換アリル基と置換アリール基を有するスルホニウム塩化合物(比較例5)である場合は、測定前に硬化が進行し、保存安定性に劣る事が確認された。
[硬化率測定試験]
実施例1及び2、参考例3及び4並びに比較例1及び4のフィルム状接着剤をホットプレート上で10秒間、100〜160℃でそれぞれ加熱して硬化させた。赤外線吸収スペクトルにより、加熱前後のエポキシ基のシグナル強度の面積値の差を、加熱前のシグナル強度の面積値で除したものを硬化率として求めた。結果を図5に示す。
α−ナフチルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム塩化合物である、TA−60(Y=[P(C)を用いた実施例1及びPMNS TFSM(Y=[C(CFSO)を用いた実施例2は、SI−60(Y=[SbF)を用いた比較例1と同様に、10秒間という短時間で高い硬化率を示し、同等の低温速硬化性が認められた。
メチル基又はフェニル基置換のアリル基とアルキル基とを有するスルホニウム塩化合物を用いた参考例3及び4は、実施例1及び2並びに比較例1と同様の低温速硬化性を示した。一方、置換アリールメチル基とアルキル基とを有するスルホニウム塩化合物を用いた比較例4は殆ど硬化が進行しなかった。
[保存安定性試験]
実施例1及び2、参考例3及び4並びに比較例1〜5のフィルム状接着剤を40℃の恒温装置に5日間放置した。赤外線吸収スペクトルにより、放置後の硬化率を求めた。結果を表3に示す。
実施例1及び2、参考例3及び4並びに比較例1〜4では、ほとんど硬化が進行せずに保存安定性が良好であった。一方、比較例5は試験前に硬化し保存安定性が低かった。
[フッ素イオン濃度の測定]
実施例1及び2、参考例3及び4並びに比較例1〜5のフィルム状接着剤を、純水で100倍に希釈した後、121℃/100%RHの環境で15時間加熱して抽出した。抽出水をろ過後に陰イオンクロマトグラフ(DIONEX社製IC−20)でフッ素イオン濃度を測定した。結果を表3に示す。
として、[P(C又は[C(CFSOを有するスルホニウム塩化合物を用いた実施例1及び2、参考例3及び4並びに比較例3〜5では、フッ素イオン濃度が100ppm未満と低いが、[SbFを有するスルホニウム塩化合物を用いた比較例1及び2はフッ素イオン濃度がそれぞれ10500ppm、6800ppmと極めて高い事が確認された。
[接続構造体の作製]
ガラス基板(コーニング#1737、外形38mm×28mm、厚さ0.5mm、表面にITO(酸化インジウム錫)配線パターン(パターン幅50μm、ピッチ50μm)を有するもの)に、2×20mmの大きさで実施例1及び2、参考例3及び4並びに比較例1〜5の各フィルム状接着剤を、PET樹脂フィルムから転写した。ICチップ(外形1.7mm×17.2mm、厚さ0.55mm、バンプの大きさ50μm×50μm、バンプのピッチ50μm)を表4に示す実装条件(温度と時間)で、80MPa(バンプ面積換算)荷重をかけて加熱加圧して実装した。また、保存安定性試験後のフィルム状接着剤も同様に実装した。
[接続抵抗の評価]
上記のようにして作製した接続構造体の隣接回路間の抵抗値(14端子測定した中の最大値)を測定した。得られた結果を表4に示す。
実施例1及び2、参考例3及び4並びに比較例1のフィルム状接着剤を用いた場合では、保存安定性試験前後で共に5Ω未満と良好な値を示した。比較例2及び3のフィルム状接着剤用いた場合では硬化が進行せず接続ができなかった。また、比較例4のフィルム状接着剤を用いた場合では高い抵抗値となった。比較例5は、接続構造体の作製前に硬化が進行した。
Figure 0006044261
[接続構造体の配線腐食の観察]
上記のようにして作製した接続構造体(保存安定性試験を行っていないフィルム状接着剤を用いたもの)を、85℃85%RHの環境で24時間処理した後の、ITO配線の外観を観察した。得られた結果を表4に示す。
として、[SbFを有するスルホニウム塩化合物を用いた比較例1及び2では、顕著な配線の腐食の発生が認められたが、Yとして、[P(C又は[C(CFSOを有するスルホニウム塩化合物を用いた実施例1及び2、参考例3及び4並びに比較例3〜5では腐食は認められなかった。
以上のことから、Yが[P(R(F)6−a又は[C((R)SOで示され、特に[P(C又は[C(CFSOである、上記一般式(I)で表されるスルホニウム塩化合物を含有してなる接着剤組成物は、[SbFを含有してなるものと同等の低温速硬化性及び保存安定性を有し、さらにフッ素イオンが脱離しにくいため、腐食の発生が抑えられ、接続信頼性に優れることが判明した。また、上記一般式(I)で表されるスルホニウム塩化合物は、Rが置換若しくは未置換のアリールメチル基であり、Rが置換若しくは未置換のアリール基であり、Rがメチル基である場合、又はRが置換若しくは未置換のアリル基であり、R及びRがアルキル基、又はR及びRが一緒になって形成された環である場合、低温短時間で接続できる接着剤組成物の重合開始剤に好適である事が判明した。
1…フィルム状接着剤、2…半導体装置、5…接着剤成分、7…導電粒子((C)成分)、10…回路接続部材、11…絶縁性物質、20…第一の回路部材、21…回路基板(第一の回路基板)、21a…主面、22…回路電極(第一の回路電極)、30…第二の回路部材、31…回路基板(第二の回路基板)、31a…主面、32…回路電極(第二の回路電極)、50…半導体素子、60…基板、61…回路パターン、70…封止材、80…半導体素子接続部材。

Claims (12)

  1. (A)下記一般式(I)で表されるスルホニウム塩化合物と、
    (B)カチオン重合性物質と、
    (C)導電粒子と、
    を含有してなる異方導電性接着剤組成物。
    Figure 0006044261
    [式中、Rは置換若しくは未置換のアリールメチル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を示し、Yは[P(R(F)6−a(式中、Rは水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されているアルキル基を示し、aは1〜6の整数を示す。aが2以上の整数である場合、複数存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)、又は[C((R)SO(式中、Rは水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されているアルキル基を示し、複数存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)を示す。ただし、R 及びRの少なくとも一方が置換又は未置換のアリール基である。]
  2. 前記(A)成分として、下記一般式(II)で表されるスルホニウム塩化合物を含有する、請求項1に記載の異方導電性接着剤組成物。
    Figure 0006044261
    [式中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換又は未置換のアリール基を示し、Yは前記と同義である。]
  3. 前記(A)成分として、下記一般式(III)で表されるスルホニウム塩化合物を含有する、請求項2に記載の異方導電性接着剤組成物。
    Figure 0006044261
    [式中、Yは前記と同義である。]
  4. 前記(A)成分として、グリシジルエーテル型エポキシ化合物との混合物についての示差走査熱量測定において、ピーク温度40〜150℃を与えるスルホニウム塩化合物を含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の異方導電性接着剤組成物。
  5. 前記(B)成分として、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びビニルエーテル化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の異方導電性接着剤組成物。
  6. (D)フィルム形成性ポリマーを更に含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の異方導電性接着剤組成物。
  7. 回路接続用接着剤として使用される、請求項1〜のいずれか一項に記載の異方導電性接着剤組成物。
  8. 加熱により硬化される、請求項1〜のいずれか一項に記載の異方導電性接着剤組成物。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の異方導電性接着剤組成物をフィルム状にしてなる、フィルム状接着剤。
  10. 第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材と、前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材の間に配置され、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とを電気的に接続する回路接続部材と、を備え、
    前記回路接続部材が請求項1〜のいずれか一項に記載の異方導電性接着剤組成物の硬化物を含む、接続構造体。
  11. 第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材との間に請求項1〜のいずれか一項に記載の異方導電性接着剤組成物を配置し、前記異方導電性接着剤組成物を介して、前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材を加熱及び加圧して、前記第一の回路電極及び前記第二の回路電極を電気的に接続する工程を備える、接続構造体の製造方法。
  12. 半導体素子と、回路パターンを有する基板と、前記半導体素子及び前記基板の間に配置され、前記半導体素子と前記回路パターンとを電気的に接続する半導体素子接続部材と、を備え、
    前記半導体素子接続部材が請求項1〜のいずれか一項に記載の異方導電性接着剤組成物の硬化物を含む、半導体装置。
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