JP6040163B2 - 粉末射出成型用鉄系粉末 - Google Patents

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Description

本発明は、粉末射出成型用鉄系粉末組成物、粉末組成物からの焼結コンポーネント(sintered component)の作製方法、および粉末組成物から作製される焼結コンポーネントに関する。粉末組成物は、理論密度の93%より高い密度と最適化された機械的特性を併せ持つ焼結パーツが得られるように設計される。
金属射出成型(MIM)は、複雑な形状の高密度の焼結コンポーネントを作製するための興味深い技術である。一般に、カルボニル鉄の微粉末がこのプロセスで使用される。使用される他の型の粉末は、非常に微小な粒径のガスアトマイズおよび水アトマイズされたものである。しかしながら、これらの微粉末のコストは比較的高い。MIMプロセスの競争力を改善するためには、使用される粉末のコストを下げることが望ましい。これを達成するための方法の1つは、より粗い粉末を利用することによるものである。しかしながら、粗粉末は、微粉末よりも低い表面エネルギーを有し、それ故に、焼結過程の活性はかなり低くなる。別の課題は、粗くて不規則な粉末は低い充填密度を有し、それ故に、供給原料の最大粉末含有量が制限されるということである。粉末含有量が低いと焼結過程の収縮が大きくなり、とりわけ、生産工程で製造されるコンポーネント間で大きな寸法の乱れがもたらされ得る。
ある文献には、焼結能および充填密度が大きく損なわれないようにするために特定量の鉄粗粉末を添加し、混合比を最適化することによってカルボニル鉄の量を減らすことが示唆されている。焼結能を増大させるための別の方法は、Mo、W、Si、CrおよびPなどのフェライト相安定剤を添加することによるものである。2〜6%のMo、2〜4%のSiまたは1%までのPを、アトマイズされたカルボニル鉄ミックスに添加することが文献に記載されている。
米国特許第5,993,507号明細書には、ケイ素とモリブデンを含有する粗粉末と微粉末のブレンド組成物が開示されている。この組成物は約50%までの粗粉末を含み、Mo+Si含有量は3〜5%で異なる。
米国特許第5,091,022号明細書には、高い透磁率と優れた軟磁性特性を有し、5μm未満のカルボニル鉄を用いた射出成型を使用する焼結Fe−P粉末金属製品の製造方法が開示されている。
米国特許第5,918,293号明細書には、圧密化および焼結するための、MoとPを含有している鉄系粉末が開示されている。
通常、鉄系MIM供給原料(すなわち、射出する準備がされている、有機バインダーと混合された鉄系粉末)の固形物負荷(すなわち、鉄系粉末部分)は約50容量%であり、これは、焼結後に高密度(理論密度の93%超)に達するためには、その未焼結圧粉コンポーネント(green component)が、未焼結圧粉状態(green state)で既に比較的高い密度が得られる一軸圧密化によって製造されるPMコンポーネントとは対照的に、ほぼ50容量%収縮しなければならないことを意味する。したがって、MIMでは、通常、高い焼結活性を有する微粉末が使用される。焼結温度を高くすることにより粗粉末が使用され得るが、高い焼結温度の使用に伴う欠点は、結晶粒の粗大化が起こり、それ故に衝撃強さが低くなる得ることである。本発明によりこの問題の解決策が提供される。
予期せずに、フェライト安定剤の総量が比較的少ない本発明による粗い鉄系アトマイズ粉末組成物を含む供給原料は、理論密度の少なくとも93%の焼結密度を有するコンポーネントを得るために、粉末射出成型に使用できることがわかった。さらに、93%超の焼結密度を有するコンポーネントが得られることとは別に、粉末が特定量のモリブデンとリンを含有し、特定の金属組織を有する場合、驚くべき高い靭性、衝撃強さが得られ得ることに気付いた。
本発明の目的の1つは、合金化元素の量が少なく、金属射出成型に適している比較的粗い鉄系粉末組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、合金化元素の量が少なく、金属射出成型に適している比較的粗い鉄系粉末組成物を含む金属射出成型の供給原料組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、理論密度の93%以上の密度を有する供給原料組成物から射出成型焼結コンポーネントを製造する方法を提供することである。
本発明の更なる別の目的は、MIM法に従って製造され、理論密度の93%以上の密度および50J/cm超の衝撃強さおよび350MPa超の引張強度を有する焼結コンポーネントを提供することである。
これらの目的のうち少なくとも1つは、以下によって達成される。
・20〜60μm、好ましくは20〜50μm、最も好ましくは25〜45μmの平均粒径を有し、FePなどのリン含有粉末を含む金属射出成型用鉄系粉末組成物、
・20〜60μm、好ましくは20〜50μm、最も好ましくは25〜45μmの平均粒径を有するアトマイズ鉄系粉末組成物と、有機バインダーとを含む金属射出成型の供給原料組成物であって、前記鉄系粉末組成物はFePなどのリン含有粉末を含むもの、
・焼結コンポーネントを製造する方法であって、
a)上記に示した金属射出成型の供給原料を調製する工程と、
b)供給原料を未焼結ブランクに成型する工程と、
c)有機バインダーを除去する工程と、
d)得られたブランクを還元性雰囲気中、フェライト領域(BCC)の1200〜1400℃の温度で焼結させる工程と、
e)その焼結コンポーネントをオーステナイトとフェライトの二相エリアを通過させて冷却し、フェライト結晶粒界の粒界でオーステナイト結晶粒(FCC)の形成を得る工程、および
f)場合により、そのコンポーネントを後焼結処理、例えば、肌焼入れ、窒化、浸炭、軟窒化、浸炭窒化、高周波焼入れ、表面圧延および/またはショットピーニングに供する工程と
を含む前記方法、
・好ましくは、二相エリアの通過時、冷却速度は、結晶粒の成長を抑制するために、約400℃の温度に達するまで少なくとも0.2℃/秒、より好ましくは少なくとも0.5℃/秒であるのがよいこと、
・供給原料組成物から作製される焼結コンポーネントで、そのコンポーネントは、理論密度の少なくとも93%の密度、50J/cmより大きい衝撃強さ、350MPaより大きい引張強度および名目リン含有量(形成体の平均P−含有量)より高いリン含有量を有し、名目リン含有量より少ないリン含有量を有する結晶粒中に包埋された結晶粒を含むフェライト微細構造を有し、その低リン含有量を有する結晶粒は変態オーステナイト結晶粒から形成される。
本発明による組成物から作製されるコンポーネントの主な冷却経路を示す図である。 本発明によるコンポーネントの金属組織を示す図である。 Moの%と8Pの%の合計と焼結密度の関係を追跡している図である。 実施例4による種々の試験片の主な冷却経路を示す図である。
鉄系粉末組成物
鉄系粉末組成物は、少なくとも1種類の鉄系粉末および/または純粋な鉄粉末を含む。鉄系粉末および/または純粋な鉄粉末は、鉄溶融および場合により合金化元素の水またはガスアトマイズ処理によって製造することができる。アトマイズ粉末を、さらに還元アニールプロセスに供することができ、場合により、拡散合金プロセスを使用することによりさらに合金化してもよい。或いは、鉄粉末を酸化鉄の還元によって製造してもよい。
鉄粉末または鉄系粉末組成物の粒径は、平均粒径が20〜60μm、好ましくは20〜50μm、最も好ましくは25〜45μmとなるようなものである。さらに、D99は最大120μm、好ましくは最大100μmとすることが好ましい(D99は、粉末の99重量%がD99未満の粒径を有することを意味する)。
モリブデンは、モリブデン粉末又はフェロモリブデン粉末の形態の合金化元素として、または別のモリブデン、即ち合金粉末として、アトマイズする前に溶融体に添加されてもよく、それ故にプレアロイ粉末を形成してもよい。また、モリブデンを、熱拡散接合プロセスによって鉄粉末の表面上に拡散接合させてもよい。一例として、三酸化モリブデンが鉄粉末と混合され、その後、還元プロセスに付され、拡散接合粉末が形成されてもよい。また、モリブデン粉末、フェロモリブデン粉末の形態の、または別のモリブデン合金粉末としてのモリブデンを純粋な鉄粉末と混合してもよい。また、これらの方法の組合せも適用してもよい。モリブデン含有粉末を鉄粉末または鉄系粉末に混合する場合、モリブデン含有粉末の粒径は、鉄粉末または鉄系粉末のものより決して大きくないようにするべきである。
鉄系粉末組成物は、さらにリン含有粉末と、場合により、ケイ素および/または銅および/またはクロムなどの他のフェライト安定化元素を含有する粉末とを含む。クロムの場合、含有量は粉末組成物の5重量%までであり得る。リン含有粉末あるいはケイ素および/または銅および/またはクロムなどの他のフェライト安定化元素を含有する粉末の粒径は、好ましくは、鉄粉末または鉄系粉末のものより決して大きくしないようにするのがよい。
リンおよびモリブデンは、BCC−(体心立方)構造であるフェライト構造を安定化させる。鉄原子の自己拡散速度は、フェライト構造において、FCC−(面心立方)構造であるオーステナイト構造での速度と比べておよそ100倍高く、したがって、焼結をフェライト相で行なうと焼結時間が劇的に低減できる。
しかしながら、フェライト相において高温で長時間焼結を行なうと、過度の結晶粒の成長が引き起こされ、それ故に、衝撃強さがマイナスの影響を受ける。リン含有量とモリブデン含有量を特定の範囲内に維持すれば、FCC結晶粒がBCC結晶粒の粒界で形成され、冷却すると結晶粒組織の精錬がもたらされる。
図1は、本発明による組成物から作製されるコンポーネントの主な冷却経路を示す。焼結は、T1で示されるBCCエリアで行なうが、冷却の際は焼結コンポーネントを、二相エリアのBCC/FCC、すなわち温度T2とT3の間を通過させなければならない。そのコンポーネントが二相エリアを通過する時、結晶粒の粗大化を回避するのに充分に高い、比較的高い冷却速度でさらなる冷却を行なう。好ましくは、二相エリア(T2−T3)までの冷却速度は、約400℃の温度に達するまで0.2℃/秒より速く、より好ましくは0.5℃/秒より速くする。得られた金属組織を図2に示す。室温では、本発明によるコンポーネントは、2種類の型のフェライト結晶粒からなる金属組織を有する。図2に、二相エリアを通過させる冷却時に形成された軽質結晶粒の網目を示す。この結晶粒は、二相エリアのオーステナイトであり、したがって、冷却プロセス全体を通してフェライトのままであった取り囲んでいる結晶粒よりも低いリン含有量を有する。二相エリアを通過して形成された結晶粒は低リン含有量を有し、焼結温度においてフェライトであった結晶粒は高リン含有量を有する。
モリブデンは、図1における二相エリアを左に移動させ、また、二相エリアを水平および垂直の両方向に縮小させる効果を有する。これは、モリブデン含有量を増大させると、フェライト領域内で焼結させるための最低焼結温度が低くなり、二相エリアを通過させて冷却するために必要とされるリンの量が少なくなることを意味する。
粉末中のMoの総含有量は、0.3〜1.60wt%、好ましくは0.35〜1.55wt%、さらにより好ましくは0.40〜1.50wt%であるのがよい。
1.60%より多い含有量のモリブデンは焼結時の密度増大に寄与せず、粉末のコストが増大するだけであり、また、二相エリアが小さくなりすぎる、すなわち、高リン含有量を有し、低リン含有量を有するフェライト結晶粒に囲まれ、二相エリアで形成されたオーステナイト結晶粒から変態したフェライト結晶粒の所望の微細構造(microstructure)を得ることが困難である。0.3%より少ない含有量のモリブデンは、不要な金属組織の作出のリスクを増大させ、したがって、衝撃強さなどの機械的特性にマイナスの影響を及ぼす。
リンは、フェライト相を安定化させるためだけでなく、いわゆる液相を誘導し、したがって焼結を促進させるためにも鉄系粉末組成物に混合される。この添加は、好ましくは、20μmより小さい平均粒径を有するFePの微粉末の形態で行なわれる。しかしながら、Pは、常に鉄系組成物の0.1〜0.6wt%、好ましくは0.1〜0.45wt%、より好ましくは0.1〜0.40重量%の範囲であるのがよい。また、FePなどの他のP含有物質を使用してもよい。或いは、鉄粉末または鉄系粉末をリン含有コーティングでコーティングしてもよい。
Pの総含有量は、上記の粉末組成物中のMo含有量に依存する。好ましくは、モリブデンとリンの合計含有量は、以下の式:
Moのwt%+8Pのwt%=2〜4.7、好ましくは2.4〜4.7wt%
に従うものとする。
場合により、ケイ素(Si)を鉄系粉末組成物に、プレアロイ元素または拡散接合元素として鉄系粉末組成物中の鉄系粉末に含めてもよく、あるいは、鉄系粉末組成物に混合される粉末として含めてもよい。含める場合には、含有量は0.6重量%以下、好ましくは0.4wt%未満、より好ましくは0.3wt%未満であるのがよい。ケイ素は、アトマイズ処理前の溶鋼の融点を下げ、したがって、アトマイズ処理プロセスを容易にする。0.6wt%より多い含有量のケイ素は、オーステナイト/フェライト混合領域を通過させる焼結コンポーネントの冷却可能性にマイナスの影響を及ぼす。
不可避の不純物は可能な限り低く維持されたい。かかる元素のうち、炭素は、非常に強力なオーステナイト安定剤であるため0.1wt%未満にするべきである。
銅Cuは、固溶体硬化によって強度と硬度を高める。また、焼結温度前に銅溶融体が得られるといわゆる液相焼結がもたらされるため、Cuにより焼結時の焼結ネックの形成が助長される。粉末は、場合により、0〜3wt%の量のCu(好ましくはCu粉末の形態)および/またはクロムなどの他のフェライト安定化元素と混合されてよい。クロムの場合、含有量は粉末の5重量%までであり得る。
他の物質、例えば、硬質相の物質および機械加工性向上剤、例えば、MnS、MoS、CaF、種々の種類の鉱物などを場合により鉄系粉末組成物に添加してもよい。
供給原料組成物
供給原料組成物は、上記の鉄系粉末組成物とバインダーを混合することにより調製される。
少なくとも1種類の有機バインダーの形態のバインダーを供給原料組成物中に、30〜65容量%、好ましくは35〜60容量%、より好ましくは40〜55容量%の濃度で存在させるのがよい。本願でバインダーという用語を使用する場合、MIM−供給原料に一般的にある他の有機物質例えば、離型剤、潤滑剤、湿潤剤、レオロジー改良剤、分散剤なども包含される。好適な有機バインダーの例は、ワックス、ポリオレフィン(ポリエチレンおよびポリプロピレンなど)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンカーボネート、ポリエチレングリコール、ステアリン酸ならびにポリオキシメチレンである。
焼結
供給原料組成物はブランクに成型される。得られたブランクは、次いで熱処理されるか、または溶剤中もしくはバインダーの一部を除去するための当分野で知られた他の手段によって処理され、次いで、さらに還元性雰囲気中、真空内または減圧下で、フェライト領域内で約1200〜1400℃温度での焼結に付される。
焼結後の冷却
冷却時、焼結コンポーネントを、オーステナイト(FCC)+フェライト(BCC)の二相エリアを通過させる。したがって、フェライト結晶粒界の粒界でオーステナイトの結晶粒が形成され、結晶粒の精錬が得られる。二相エリアを通過したら、結晶粒の粗大化を回避するため、冷却速度を好ましくは0.2℃/秒より速く、より好ましくは0.5℃/秒より速くする。オーステナイトが有するリン溶解能は低いため、先に形成されたオーステナイト結晶粒は、非変態フェライト結晶粒と比べて低いリン含有量を有するフェライトに変態する。
後焼結処理
焼結コンポーネントは、所望の微細構造を得るために、熱処理と制御された冷却速度による熱処理プロセスに付されてもよい。硬化プロセスとしては、例えば、焼入れおよび焼戻し、肌焼入れ、窒化、浸炭、軟窒化、浸炭窒化、高周波焼入れなどの既知プロセスが挙げられ得る。或いは、高速冷却での焼結−硬化プロセスを使用してもよい。
他の型の後焼結処理、例えば、表面圧延またはショットピーニング、即ち圧縮残留応力が導入され、疲れ寿命が向上する処理を使用してもよい。
最終コンポーネントの性質
本発明による焼結コンポーネントは、理論密度の少なくとも93%の焼結密度、および50J/cmより大きい衝撃強さ、350MPaより大きい引張強度、ならびに名目リン含有量より高いリン含有量を有する結晶粒と、名目リン含有量より低いリン含有量を有する結晶粒とを含むことを特徴とするフェライト微細構造に至る。低リン含有量を有する結晶粒は変態オーステナイト結晶粒から形成される。
実施例1
異なるリン含有量およびモリブデン含有量を有する5種類の鉄系粉末組成物を調製した。組成物A、B、CおよびEは、約1.4重量%のモリブデン含有量を有するプレアロイ鉄粉末を、99.5%より多い鉄含有量を有する純粋な鉄粉末およびFeP粉末と混合することにより調製した。プレアロイ鉄粉末の平均粒径は37μmであり、全粒子の99%が80μm未満の粒径を有するものであった。純粋な鉄粉末の平均粒径は34μmであり、全粒子の99%が67μm未満の粒径を有するものであった。FeP粉末の平均粒径は8μmであった。
組成物Dは、プレアロイ鉄系粉末とFeP粉末のみから調製した。
MIM法に関する焼結時の緻密化挙動をシミュレーションするため、組成物を約4.5g/cm(理論密度の58%)の密度までSS EN ISO 2740による標準的引張片に圧密化し、その後、1400℃で90%N/10%H(容量基準)の雰囲気で60分間焼結させた。
表1は、試験結果を示す。
図3において、Moの%と8Pの%の合計と焼結密度の関係を追跡している。図3から、少なくとも93%の焼結密度を得るためには、Moの%と8Pの%の合計は2より大きくなければならず、94%より高い密度の焼結を得るためには、Moの%と8Pの%の合計は2.4%より大きくなければならないことが明白である。
実施例2
以下の実施例は、本発明の一実施形態による粉末組成物F、GおよびHでは、理論密度の少なくとも93%の焼結密度が得られることを示す。粉末組成物F〜Hは、実施例1に従って調製し、試験した。組成物Hでは、プレアロイ粉末とFeP粉末を使用した。圧密化試験片の調製および焼結は、実施例1に従って行なった。
Moを合金に添加すると、緻密化が補助され、焼結密度が増大する。しかしながら、リン含有量が約0.5%のときMo含有量が約1.5%より多い場合、密度の増大はみとめられない。
実施例3
機械的特性を上げるためには、多くの場合、炭素が合金化元素として使用される。表3の粉末組成物Iを還元性雰囲気中で焼結させた。焼結密度は、対応する表1の無炭素組成物Eと比べて非常に不充分であった。
実施例4
粉末組成物C、E、GおよびHの試験片を実施例1に従って調製し、機械的特性に関して試験した。
以下の表4は試験結果を示す。衝撃強さはISO 5754に従って試験した。また、引張試験はSS EN ISO 2740に従って行なった。
表4からわかるように、組成物E、GおよびHにより高い緻密化が得られるが、組成物GおよびHでの形成体の試験では低い衝撃強さの値が示されている。試験片Cの引張試験では、350MPaより小さい引張強度が得られた。図4は、実施例4による種々の試験片の主な冷却経路を示す。
実施例5
表5による粉末組成物Xを還元性雰囲気中で焼結させた。焼結密度は表4の組成物Eと同様であった。しかしながら、引張強度は増大していた。
実施例6
粉末組成物Jを含む供給原料を、実施例1による粉末組成物を調製し、この粉末組成物を有機バインダーと混合することにより調製した。有機バインダーは、47.5%のポリエチレン、47.5%のパラフィンワックスおよび5%のステアリン酸からなるものとした。百分率はすべて重量パーセント。有機バインダーと粉末組成物は49:51(容量基準)の比で混合した。
供給原料を、ISO−SS EN ISO 2740による標準的なMIM引張バーおよびISO 5754による衝撃試験用試験片に射出成型した。試験片をヘキサン中で60℃にて4時間脱脂してパラフィンワックスを除去した後、1400℃にて90%窒素、10%水素の雰囲気中で60分間焼結させた。試験を実施例4に従って行なった。以下の表6は引張試験の結果を示す。寸法の乱れの測定には、5つの引張試験用試験片を使用した。
表6からわかるように、焼結密度と機械的特性は、実施例4に従って調製した試験片、すなわち150MPaでの圧密化により調製した試験片を試験したときに得られた結果と非常に類似していた。寸法の乱れは、焼結引張バーの長さの標準偏差として評価した。供給原料において比較的粗い金属粉末および低含有量の固体を使用したにもかかわらず、寸法の乱れは、MIM法に従って製造されるコンポーネントで通常得られる値を示す。

Claims (9)

  1. 20〜60μmの平均粒径を有し、120μm未満の粒子を99%有する金属射出成型用鉄系粉末組成物であって、前記鉄系粉末組成物に対する重量パーセントで、
    Mo:0.3〜1.6
    P:0.1〜0.6、
    場合により、最大3.0のCu、
    場合により、最大0.6のSi、
    場合により、最大5のCr、
    最大1.0の不可避の不純物で、そのうち炭素が0.1未満であり、
    残りは鉄
    を含み、
    Pの含有量(前記鉄系粉末組成物に対する重量パーセント)の数値の8倍の数値と、Moの含有量(前記鉄系粉末組成物に対する重量パーセント)の数値との合計が2〜4.7の範囲内である、前記金属射出成型用鉄系粉末組成物。
  2. Moとのプレアロイ鉄粉末を、前記粉末組成物が0.3〜1.6重量%のMoを含むような量で含む、請求項1に記載の鉄系粉末組成物。
  3. PがFeP粉末の形態で存在している、請求項1〜2のいずれか一項に記載の鉄系粉末組成物。
  4. Moの含有量が、前記鉄系粉末組成物に対して0.35〜1.55重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉄系粉末組成物。
  5. Moの含有量が、前記鉄系粉末組成物に対して0.40〜1.50重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉄系粉末組成物。
  6. Pの含有量が前記鉄系粉末組成物に対して0.1〜0.45重量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の鉄系粉末組成物。
  7. Pの含有量が前記鉄系粉末組成物に対して0.1〜0.40重量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の鉄系粉末組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の鉄系粉末組成物およびバインダーを含む金属射出成型の供給原料組成物。
  9. バインダーが、供給原料組成物の30〜65容量%の濃度の少なくとも1種類の有機バインダーである、請求項8に記載の金属射出成型の供給原料。
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