JP6038708B2 - 石油製品の製造方法 - Google Patents

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  • Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)

Description

本発明は、石油製品の製造方法に関する。
近年、重油需要の低迷に伴って、重油を他の基材、例えばガソリン、灯油、軽油等へ変換する技術が望まれている。流動接触分解装置(FCC装置)から生産される分解軽油(LCO)及びコーカー装置から生産されるコーカー軽油は主に重油基材として使用されており、今後余剰になってくると予想される。こうした中、LCO及びコーカー軽油等を他の有用な基材へ変換する方法が提案されている。
例えば、LCO及びコーカー軽油等を高オクタン価ガソリン基材へ変換する試みとして、特許文献1には、特定の触媒を特定の反応条件下でLCOと接触させ、オクタン価90以上、硫黄分が10質量ppm以下のガソリン基材を製造する方法が提案されている。この方法の場合、反応温度が410℃と高いことから、触媒活性劣化が大きいものと予想される。また、オクタン価が高くても96に過ぎない。
また、LCO、コーカー軽油を水素化分解触媒等と接触させてガソリン基材へ変換する試みが行われている。例えば、特許文献2には、LCOを原料とし、それを鉄含有結晶性アルミノシリケートゼオライトと接触させ、ガソリン基材へ変換させる方法が提案されている。この方法の場合、水素化分解温度が395℃と高温にも関わらず、未分解の軽油留分が10mass%以上も残っており、かつガソリン留分のオクタン価が80程度と低いため、触媒活性が著しく劣る。
また、上記方法の他、特許文献3、4には、LCOをオクタン価の高いガソリン留分に転化する方法が提案されている。この方法の場合、オクタン価が高くても95程度に過ぎず、また水素化分解の温度が410℃と高いことから、急激な触媒活性の低下が予想され、実用的ではない。
以上のような先行技術では、そもそもオクタン価の高いガソリンを製造することだけを主目的にしたものであり、同時に生産される灯油、軽油留分の利用方法については明記されていない。
特許文献5では、高品質な灯油を製造するためにはLCOを水素化分解によって得られた灯油留分と、常圧蒸留装置からの灯油留分を脱硫した脱硫灯油と混合することが必要であることを提案しており、効率的に1段階で製品灯油を製造するためには、経済性が著しく劣る。
特開2008−127542号公報 特開2009−242507号公報 特開2010−1462号公報 特開2010−1463号公報 特開2009−292857号公報
本発明は、LCOやコーカー軽油等の石油系炭化水素から、高品質で付加価値の高い石油製品(例えば、ガソリン基材、灯油基材、ジェット燃料基材、ディーゼル燃料基材、化成品等)を効率良く得ることができる、石油製品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、芳香族分含有量が50容量%以上の石油系炭化水素について、特定の反応条件下で特定の触媒と接触させて水素化分解を行うことにより、効率良く高品質の石油製品を製造し得ることを見出し、本発明を完成した。具体的には、本発明は、好適なプロセス及び触媒を見出すことにより、LCOやコーカー軽油等の石油系炭化水素から、高品質な灯油等の石油製品を製造すると同時に、接触改質反応に好適な重質ナフサ留分をも収率良く得ることができたものである。
すなわち、本発明の一態様は、灯油留分に由来する製品及び重質ナフサ留分に由来する製品を含む石油製品の製造方法であって、芳香族分含有量が50容量%以上、10%留出温度が140℃以上、且つ95%留出温度が380℃以上の石油系炭化水素を水素化脱硫して脱硫油を得る第一の工程と、上記脱硫油を、USY型ゼオライトを含む担体に周期表第6族、第8族、第9族及び第10族の金属から選択される一種以上の活性金属が担持された水素化分解触媒に、10〜14MPaの水素分圧下で接触させて水素化分解油を得る第二の工程と、上記水素化分解油を分留して、10%留出温度が150℃以上、且つ95%留出温度が250℃以下の灯油留分、及び、芳香族分含有量が18容量%以下、10%留出温度が90℃以上、且つ95%留出温度が170℃以下の重質ナフサ留分を得る第三の工程と、を有する製造方法に関する。
本態様において、上記担体は、アルミナ、シリカ及びボリアからなる群より選択される少なくとも一種のバインダーをさらに含むものであってよい。
また、上記活性金属は、コバルト、ニッケル、モリブデン及びタングステンからなる群より選択される少なくとも一種を含むものであってよい。
また、上記灯油留分は、煙点23mm以上、硫黄分10質量ppm以下の留分であってよく、このような灯油留分は灯油基材として有用である。
また、上記灯油留分は、煙点19mm以上、硫黄分3000質量ppm以下、析出点−47℃以下の留分であってよく、このような灯油留分はジェット燃料基材として有用である。
本態様においては、第三の工程において、10%留出温度が250℃以上、且つ95%留出温度が350℃以下の軽油留分をさらに得ることができる。
また、上記軽油留分は、セタン指数50以上、硫黄分10質量ppm以下、流動点−10℃以下、目詰まり点−8℃以下の留分であってよく、このような軽油留分はディーゼル燃料基材として有用である。
また、本態様の製造方法は、上記重質ナフサ留分を接触改質して、改質油を得る第四の工程をさらに有していてもよい。
このような第四の工程を備える製造方法によれば、上記改質油由来の芳香族化合物を含有し、リサーチオクタン価が100以上のガソリン基材の製造が可能となる。
また、本態様の製造方法は、上記改質油から、少なくとも一種の芳香族化合物を分離する第五の工程をさらに有していてもよい。分離された芳香族化合物は、例えば、芳香族化合物を含有する化成品等に好適に用いることができる。
本発明によれば、LCOやコーカー軽油等の石油系炭化水素から、高品質で付加価値の高い石油製品(例えば、ガソリン基材、灯油基材、ジェット燃料基材、ディーゼル燃料基材、化成品等)を効率良く得ることができる、石油製品の製造方法が提供される。
本発明の好適な実施形態について以下に説明する。
本実施形態に係る製造方法は、石油製品の製造方法であって、芳香族分含有量が50容量%以上、10%留出温度が140℃以上、且つ95%留出温度が380℃以上の石油系炭化水素を水素化脱硫して脱硫油を得る第一の工程と、脱硫油を、USY型ゼオライトを含む担体に周期表第6族、第8族、第9族及び第10族の金属から選択される一種以上の活性金属が担持された水素化分解触媒に、10〜14MPaの水素分圧下で接触させて水素化分解油を得る第二の工程と、水素化分解油を分留して、10%留出温度が150℃以上、且つ95%留出温度が250℃以下の灯油留分、及び、芳香族分含有量が18容量%以下、10%留出温度が90℃以上、且つ95%留出温度が170℃以下の重質ナフサ留分を得る第三の工程と、を有する。
本実施形態に係る製造方法によれば、灯油留分に由来する製品として、高品質で付加価値の高い石油製品(例えば、灯油基材、ジェット燃料基材等)を得ることができる。さらに、本実施形態に係る製造方法よれば、接触改質反応に好適な重質ナフサ留分をも得ることができるため、灯油留分に由来する製品と併せて、重質ナフサ留分に由来する製品(例えば、ガソリン基材、化成品等)をも効率良く製造することができる。
本実施形態に係る製造方法では、灯油留分として、煙点23mm以上、硫黄分10質量ppm以下の留分を得ることができ、このような灯油留分は、精製操作等を経ることなく、灯油基材として用いることができる高品質な留分である。
また、本実施形態に係る製造方法では、場合により、灯油留分として、煙点19mm以上、硫黄分3000質量ppm以下、析出点−47℃以下の留分を得ることができ、このような灯油留分は、精製操作等を経ることなくジェット燃料基材として用いることができる高品質な留分である。
また、第三の工程では、10%留出温度が250℃以上、且つ95%留出温度が350℃以下の軽油留分をさらに分留することもできる。これにより、軽油留分に由来する製品(例えば、ディーゼル燃料基材等)を、上記の灯油に由来する製品及び重質ナフサ留分に由来する製品とともに製造することができる。
このような第三の工程では、軽油留分として、セタン指数50以上、硫黄分10質量ppm以下、流動点−10℃以下、目詰まり点−8℃以下の留分を得ることができ、このような軽油留分は、精製操作等を経ることなくディーゼル燃料基材として用いることができる高品質な留分である。
以上のとおり、本実施形態に係る製造方法は、特定の石油系炭化水素に対して、特定の触媒及び特定のプロセスを適用することで、重質ナフサ留分と併せて、高品質な灯油留分及び軽油留分を得ることができるものである。
また、本実施形態に係る製造方法は、重質ナフサ留分を接触改質して、改質油を得る第四の工程をさらに有していてもよい。このような工程をさらに有する製造方法では、灯油留分及び軽油留分に由来する製品に加えて、重質ナフサ留分の改質油に由来する製品を製造することができる。
第四の工程では、改質油として、リサーチオクタン価が100以上、硫黄分10質量ppm以下のものを得ることができ、このような改質油は、ガソリン基材にとして好適に用いることができる。
さらに、本実施形態に係る製造方法は、重質ナフサ留分に由来する製品として、第四の工程で得られる改質油に含まれる芳香族化合物を製造することもできる。すなわち、本実施形態に係る製造方法は、第四の工程で得られる改質油から少なくとも一種の芳香族化合物を分離する第五の工程をさらに有していてもよい。第五の工程で得られた芳香族化合物は、該芳香族化合物を含む化成品等に用いることができる。
以下、本実施形態に係る製造方法の各工程について詳述する。
(第一の工程)
第一の工程は、芳香族分含有量が50容量%以上、10%留出温度が140℃以上、且つ95%留出温度が380℃以上の石油系炭化水素を水素化脱硫して脱硫油を得る工程である。
石油系炭化水素としては、例えば、流動接触分解装置(FCC装置)から生産される分解軽油(LCO)及びコーカー装置から生産されるコーカー軽油が挙げられる。
石油系炭化水素の芳香族分含有量は、50容量%以上であり、60容量%以上であってもよく、80容量%以上であってもよい。本実施形態に係る製造方法では、芳香族分含有量が多い石油系炭化水素に対して、第一の工程及び後述する第二の工程を実施することにより、第三の工程において一層高品質な灯油留分及び軽油留分が得られ易くなる。また、石油系炭化水素の芳香族分含有量は、100容量%であってよく、95容量%以下であってもよく、90容量%以下であってもよい。
石油系炭化水素の10%留出温度は140℃以上であり、好ましくは160℃以上である。10%留出温度が140℃未満のものは、すでに重質ナフサ留分に近い炭化水素油であると言え、第二の工程の水素化分解を経てまで重質ナフサを製造することは経済性の観点で好ましくない。また、石油系炭化水素の10%留出温度は、250℃以下であってよく、230℃以下であってもよい。
石油系炭化水素の95%留出温度は380℃以下であり、好ましくは360℃以下である。また、石油系炭化水素の95%留出温度は、300℃以上であってよく、330℃以上であってもよい。
石油系炭化水素は、硫黄分を含有していてよい。石油系炭化水素の硫黄分含有量は、例えば、0.2質量%以上であってよく、0.4質量%以上であってもよい。本実施形態に係る製造方法では、このような含有量で硫黄分を含んでいても、第一の工程において十分に硫黄分を除去できるため、第二の工程の水素化分解触媒の硫黄分による被毒を十分に抑制することができる。
石油系炭化水素はまた、窒素分を含有していてもよい。石油系炭化水素の窒素分含有量は、例えば、200質量ppm以上であってよく、500質量ppm以上であってもよい。本実施形態に係る製造方法では、このような含有量で窒素分を含んでいても、第一の工程において十分に窒素分を除去できるため、第二の工程の水素化分解触媒の窒素分による被毒を十分に抑制することができる。また、石油系炭化水素の窒素分含有量は、経済性の観点から、1500質量ppm以下であることが好ましく、1000質量ppm以下であることがより好ましい。
石油系炭化水素は、芳香族分として、1環芳香族分、2環芳香族分及び3環以上の芳香族分をそれぞれ含んでいてよい。石油系炭化水素において、各芳香族分の含有量比は特に制限されない。例えば、石油系炭化水素は、石油系炭化水素の全量基準で、1環芳香族分を10〜50容量%(好ましくは10〜40容量%)、2環芳香族分を20〜60容量%(好ましくは20〜50容量%)、3環以上の芳香族分を0〜20容量%(好ましくは5〜15容量%)含むものであってよい。
石油系炭化水素は、オレフィン分等の上記以外の成分をさらに含有していてもよい。石油系炭化水素のオレフィン分含有量は、特に制限されず、例えば0〜10容量%であってよく、1〜5容量%であってもよい。
石油系炭化水素の密度は特に制限されず、例えば、15℃における密度が0.88〜0.96g/cmであってよい。
第一の工程において、石油系炭化水素の水素化脱硫は、例えば、水素存在下で、水素化精製触媒に石油系炭化水素を接触させて行うことができる。水素化精製触媒は、例えば固定床反応器内に充填されて用いられる。
水素化脱硫の条件は、石油系炭化水素の硫黄分含有量等に応じて適宜変更することができ、水素化精製触媒は、公知の水素化精製触媒を適宜選択して用いることができる。
水素化精製触媒は、例えば、周期表第13族、第14族及び第15族の金属から選択される少なくとも一種を含む担体に、周期表第6族、第8族、第9族及び第10族の金属から選択される少なくとも一種の活性金属が担持された触媒であってよい。
水素化脱硫における水素分圧は、例えば3.0〜15.0MPaとすることができ、10.0〜14.0Mpaとしてもよい。また、水素化脱硫における反応温度は、例えば250〜450℃とすることができ、270〜410℃とすることもできる。また、水素化脱硫における液空間速度は、例えば0.2〜4.0h−1とすることができ、0.2〜3.0h−1とすることもできる。さらに、水素化脱硫における水素油比は、1000〜8000scfb(1バレルあたりの標準立方フィート)とすることができ、1500〜5000scfbとすることもできる。このような条件で水素化脱硫を行うことで、より高品質な灯油留分及び軽油留分が得られやすくなる傾向がある。
ここで、水素化精製触媒の例示として、本実施形態に係る製造方法の第一の工程に、特に好適に利用可能な水素化精製触媒の一態様を示す。
本態様の水素化精製触媒は、アルミニウム、珪素、リン及びホウ素を含有する担体にモリブデン、コバルト及びニッケルが担持された触媒であって、予備硫化されたものである。
担体中のアルミニウムの含有量は、アルミニウム酸化物(Al)換算で75質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。酸化物換算のアルミニウム含有量が75質量%未満であると、触媒劣化が生じやすくなる傾向にある。
担体中の珪素の含有量は、珪素酸化物(SiO)換算で0.2〜10.0質量%であることが好ましく、0.5〜6.0質量%であることがより好ましい。酸化物換算の珪素含有量が0.2質量%未満又は10.0質量%を超えると、モリブデンが凝集して脱硫活性及び脱窒素活性が低下する傾向にある。
担体中のリンの含有量は、リン酸化物(P)換算で1.0〜5.0質量%であることが好ましく、2.0〜4.0質量%である。酸化物換算のリン含有量が1.0質量%未満又は5.0質量%を超えると、脱硫活性が低下する傾向にある。
担体中のホウ素の含有量は、ホウ素酸化物(B)換算で1.0〜10.0質量%であり、好ましくは3.0〜7.0質量%である。酸化物換算のホウ素含有量が1.0質量%未満であると、充分な脱硫活性及び脱窒素活性が得られない場合があり、10.0質量%を超えると触媒強度が弱くなり、実用上使用することが困難となる。
なお、上記アルミニウム、珪素、リン及びホウ素の含有量は、いずれも担体全体を100質量%とした際の量である。
本態様の水素化精製触媒におけるモリブデン含有量は、モリブデン酸化物換算で10〜23質量%であることが好ましく、12〜22質量%であることがより好ましく、15〜20質量%であることがさらに好ましい。酸化物換算のモリブデン含有量が10質量%未満又は23質量%を超えると、脱硫活性及び脱窒素活性が急激に低下する傾向にある。
本態様の水素化精製触媒におけるコバルト含有量は、コバルト酸化物(CoO)換算で1.0〜5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは2.0〜4.0質量%である。酸化物換算のコバルト含有量が1.0質量%未満であると、脱硫活性の低下が大きくなる傾向にあり、5.0質量%を超える量を添加しても脱硫活性の向上効果が得られない。
本態様の水素化精製触媒におけるニッケル含有量は、ニッケル酸化物(NiO)換算で0.2〜3.0質量%であることが好ましい。酸化物換算のニッケル含有量が0.2質量%未満であると脱窒素活性の低下が大きくなり、3.0質量%を超えると脱硫活性が低下する傾向にある。
なお、上記モリブデン、コバルト及びニッケルの含有量は、いずれも水素化精製触媒を100質量%とした際の量である。
本態様の水素化精製触媒は、予備硫化処理によって、担体表面に硫化モリブデンが層状に形成されている。
硫化モリブデンの平均積層数は、1.0を超え1.9以下であることが好ましく、より好ましくは1.1〜1.6である。硫化モリブデンの平均積層数が1.9以下であることにより、高い脱硫活性及び高い脱窒素活性が同時に得られる。なお、平均積層数1.0以下のものは事実上得られない。
ここで、硫化モリブデンの平均積層数は、以下の方法により求められる。すなわち、水素化精製触媒の透過型電子顕微鏡写真を撮影し、画像に見られる各硫化モリブデンの積層数を調べる。そして、以下の式により平均積層数を求める。
(平均積層数)=Σ(積層数n×積層数nの硫化モリブデンの個数)/測定対象の硫化モリブデンの合計数
(ただし、nは1以上の整数である。)
本態様の水素化精製触媒では、高い脱硫活性及び脱窒素活性が得られるため、石油系炭化水素が硫黄分及び窒素分を含む場合であっても、本態様の水素化精製触媒を用いた第一の工程を経た脱硫油が、硫黄分及び窒素分が十分に低減されたものとなる。そして、石油系炭化水素を本態様の水素化精製触媒により水素化脱硫することで、得られる脱硫油が第二の工程に好適なものとなり、高品質の灯油留分及び軽油留分並びに重質ナフサ留分を一層効率良く製造することができる。
本態様の水素化精製触媒は、下記の製造方法(以下、場合により「精製触媒製造方法」という。)により製造することができる。
すなわち、精製触媒製造方法は、アルミニウム、珪素、リン及びホウ素を含有する担体にモリブデン、コバルト及びニッケルを担持して調製された触媒前駆体を、予備硫化処理する方法である。
担体に活性金属(ここではモリブデン、コバルト及びニッケル)を担持させる方法としては、例えば、含浸法が挙げられる。ここで、含浸法とは、担体に活性金属の溶液を含浸させた後、乾燥、焼成する方法である。
精製触媒製造方法における含浸法では、モリブデン、コバルト及びニッケルの3種類の金属を同時に担体に担持することが好ましい。別々に金属を担持すると、脱硫活性又は脱窒素活性が不十分になることがある。例えば、まずモリブデンとコバルトとを同時含浸し、その後、ニッケルのみを含浸させて担持した場合には、脱窒素活性が低くなることがある。
担持を含浸法により行う場合には、担体上でのモリブデンの分散性が向上し、得られる水素化精製触媒の脱硫活性及び脱硫窒素活性がより高くなることから、リン酸又はカルボン酸化合物の共存化で行うことが好ましい。その際、酸化物換算のモリブデン100質量%に対して、3〜25質量%のリン酸及び35〜75質量%のカルボン酸化合物を添加することが好ましい。ここで、カルボン酸化合物としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等が挙げられる。
予備硫化処理は、具体的には、触媒前駆体に硫黄化合物(例えば、硫化水素、ジメチルジスルフィド等)及び水素を反応させる処理である。この処理により、硫化モリブデンの積層構造を形成させて、優れた活性を発現させることができる。
この予備硫化処理では、水素化精製触媒における硫化モリブデンの平均積層数が1.0を超え1.9以下になるように調整する。上述したように、硫化モリブデンの平均積層数が1.9以下であることにより、脱硫活性及び脱窒素活性の両方を高くすることができる。
予備硫化処理の条件によって、硫化モリブデンの硫化の度合い及び硫化モリブデンの積層数が変わるため、精製触媒製造方法では、平均積層数が上記範囲になるように、圧力(水素分圧)、温度等の条件を適宜調整する。
具体的には、予備硫化処理では、圧力を2.0Mpa以上にすることが好ましく、3.0Mpa以上にすることがより好ましい。圧力が2.0Mpa以上であれば、充分にモリブデンを硫化でき、脱硫活性及び脱窒素活性をより高くできる。なお、ここでいう圧力は、ゲージ圧力のことを示す。
また、予備硫化処理における圧力は、予備硫化装置の耐圧の観点から、150MPa以下であることが好ましい。
また、予備硫化処理では、温度を240〜380℃にすることが好ましく、250〜350℃にすることがより好ましい。また、予備硫化処理の温度が240℃以上であれば、充分にモリブデンを硫化でき、380℃以下であれば、容易に硫化モリブデンの平均積層数を1.9以下にできる。
本態様の水素化精製触媒を用いた水素化脱硫においては、水素分圧は、3.0〜15.0MPaとすることが好ましく、10.0〜14.0Mpaとすることがより好ましい。また反応温度は、250〜450℃であることが好ましく、280〜410℃であることがより好ましい。また、液空間速度は、好ましくは0.2〜4.0h−1であり、より好ましくは0.2〜3.0h−1である。また、水素油比は、1000〜8000scfb(1バレルあたりの標準立方フィート)とすることが好ましく、1500〜5000scfbとすることがより好ましい。本態様の水素化精製触媒を用い、このような条件で水素化脱硫を行うことで、脱硫油が第二の工程に供されるのにより好適なものとなり、一層高品質な灯油留分及び軽油留分を高効率で得られやすくなる。
(第二の工程)
第二の工程は、第一の工程で得られた脱硫油を、USY型ゼオライトを含む担体に周期表第6族、第8族、第9族及び第10族の金属から選択される一種以上の活性金属が担持された水素化分解触媒に、10〜14MPaの水素分圧下で接触させて水素化分解油を得る工程である。
本実施形態に係る製造方法では、第二の工程において、特定の水素化分解触媒に、比較的高い水素分圧下で脱硫油を接触させて水素化分解を行う。これにより、得られた水素化分解油は、高品質の灯油留分及び軽油留分並びに重質ナフサ留分を効率良く製造することができる。
また、第二の工程においては、第三の工程で分留される重質ナフサ留分の芳香族分含有量が、18容量%以下(好ましくは15容量%以下)となるように、水素化分解を実施する。第三の工程で分留される重質ナフサ留分の芳香族分含有量が18容量%以下となる水素化分解条件を採用することにより、第三の工程で分留される灯油留分及び軽油留分の品質が優れたものとなり、重質ナフサ留分の製造効率も向上する。
すなわち、第二の工程では、第三の工程で分留される重質ナフサ留分の芳香族分含有量を指標として、水素化分解条件を決定することができる。また、本実施形態に係る製造方法は、第三の工程で分留される重質ナフサ留分の芳香族分含有量を指標として、第二の工程の水素化分解条件を決定する方法ということもできる。
水素化分解触媒の担体は、USY型ゼオライトを含む担体である。USY型ゼオライトは、Y型ゼオライトを水熱処理及び/又は酸処理により超安定化したものである。USY型ゼオライトは、Y型ゼオライトが本来有する微細細孔構造を備える。この微細細孔構造とは、細孔径が2nm以下であるミクロ細孔から構成される構造である。また、USY型ゼオライトには、上記微細細孔構造に加えて、さらに細孔径が2〜10nmである新たな細孔が形成されている。
USYゼオライトの平均粒径は、特に制限されないが、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。また、USY型ゼオライトにおけるシリカ/アルミナのモル比(アルミナに対するシリカのモル比)は10〜200であることが好ましく、15〜100であることがより好ましく、20〜60であることがさらに好ましい。
水素化分解触媒の担体は、シリカアルミナ、シリカジルコニア及びアルミナボリア等の無定形複合金属酸化物をさらに含んでいてもよい。また、担体としては、USY型ゼオライトと、シリカアルミナ、シリカジルコニア及びアルミナボリアからなる群より選択される一種以上の無定形複合金属酸化物と、を含んで構成される担体が好ましく、USY型ゼオライトと、シリカアルミナ及びアルミナボリアからなる群より選択される一種以上の無定形複合金属酸化物と、を含んで構成される担体がより好ましい。
また、水素化分解触媒の担体の好ましい態様としては、USY型ゼオライト0.1〜80質量%と、無定形複合金属酸化物0.1〜60質量%とを含む担体が挙げられる。
担体におけるUSY型ゼオライトの含有量は、好ましくは10〜80質量%であり、より好ましくは30〜70質量%である。
水素化分解触媒の担体は、成形されていることが好ましい。成形された担体の形状としては、特に限定されないが、球状、円筒状、三つ葉型又は四つ葉型の断面を有する異形円筒状、ディスク状等が挙げられる。担体の成形方法としては、限定されず、押出成型、打錠成型等の公知の方法が用いられる。
水素化分解触媒の担体は、例えば、USY型ゼオライト及びバインダーを含む担体組成物を成形した後、焼成することにより製造できる。無定形複合金属酸化物を含む担体を含む担体を製造する場合には、例えば、担体組成物に、焼成により無定形複合金属酸化物を生じる原料を添加すればよい。
担体組成物を焼成する際の温度は、400〜550℃の範囲内にあることが好ましく、470〜530℃の範囲内であることがより好ましく、490〜530℃の範囲内であることが更に好ましい。このような温度で焼成することにより、担体に十分な固体酸性及び機械的強度を付与することができる。
水素化分解触媒は、担体に担持された活性金属として、周期表第6族、第8族、第9族及び第10族の金属から選択される一種以上を有する。なお、ここで周期表とは、IUPAC(国際純正応用化学連合)の規定に基づく長周期型の元素の周期表をいう。これらの金属の具体的な例としては、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等の貴金属、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、鉄などが挙げられる。
水素化分解触媒は、活性金属として、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、モリブデン及びタングステンからなる群より選択される一種以上を有することが好ましく、コバルト、ニッケル、モリブデン及びタングステンからなる群より選択される一種以上を有することがより好ましい。また、活性金属は、白金及び/又はパラジウムを有するものであってもよい。さらに、これらの金属は複数種を組み合わせて用いることも好ましく、その場合の好ましい組合せとしては、白金−パラジウム、コバルト−モリブデン、ニッケル−モリブデン、ニッケル−コバルト−モリブデン、ニッケル−タングステン等が挙げられる。
これらの活性金属は、例えば、含浸法やイオン交換法などの常法によって上述の担体に担持することができる。担持する金属量に特に制限はないが、例えば、活性金属の合計量が、担体質量に対して1.0〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
第二の工程においては、第一の工程で得られた脱硫油を、上述の水素化分解触媒に10〜14MPaの水素分圧下で接触させて、水素化分解を行う。脱硫油と水素化分解触媒とを接触させる方法は、固定床流通式、流動床式、移動床式等の種々の方法で行うことができるが、操作の容易性等を考慮すれば、固定床流通式で行うことが好ましい。
なお、第一の工程と第二の工程とはそれぞれ別の反応装置で実施してもよく、同一の反応装置に第一の工程の水素化精製触媒と第二の工程の水素化分解触媒とを積層して石油系炭化水素を流通する等の方法で、第一の工程と第二の工程とを同一の反応装置内で実施することもできる。
水素化分解を流通式反応装置で実施する場合、水素/油比は、例えば300〜5000Nm/KLとすることができ、500〜3000Nm/KLとすることが好ましく、1000〜2000Nm/KLとすることがより好ましい。また、このとき液空間速度(LHSV;Liquid Hourly Space Velocity)は、例えば0.1〜5.0h−1とすることができ、0.2〜3.0h−1であることが好ましく、0.3〜1.0h−1であることがより好ましい。また、水素化分解の温度は、例えば250〜450℃とすることができ、270〜430℃とすることが好ましく、280〜420℃とすることがより好ましい。
このような条件で水素化分解を行うことで、接触改質に好適な重質ナフサ留分がより効率良く得られるとともに、一層高品質な灯油留分及び軽質留分が得られる。
なお、上述のとおり、第二の工程においては、第三の工程で分留される重質ナフサ留分の芳香族分含有量が、18容量%以下(好ましくは15容量%以下)となるように、水素化分解の条件を適宜調整する。第三の工程で分留される重質ナフサ留分の芳香族分含有量を低減させる方法としては、例えば、水素分圧を高くする、水素/油比を大きくする、反応温度を高くする、液空間速度を低くする等の方法が挙げられる。
(第三の工程)
第三の工程は、第二の工程で得られた水素化分解油を分留して、10%留出温度が150℃以上、且つ95%留出温度が250℃以下の灯油留分と、10%留出温度が90℃以上、且つ95%留出温度が170℃以下の重質ナフサ留分と、を得る工程である。第三の工程で得られる重質ナフサ留分は、芳香族分含有量が18容量%以下のものである。
また、第三の工程は、上記灯油留分及び重質ナフサ留分にとともに、10%留出温度が250℃以上、且つ95%留出温度が350℃以下の軽油留分をさらに得ることもできる。
第三の工程における蒸留条件は、水素化分解油から灯油留分及び重質ナフサ留分(必要に応じてさらに軽油留分)をそれぞれ分留できる条件であれば特に限定されない。例えば、第三の工程における蒸留は、加圧下での蒸留であっても、常圧蒸留であっても、減圧蒸留であってもよい。
本実施形態に係る製造方法によれば、第三の工程で得られた灯油留分に由来する製品として、高品質で付加価値の高い石油製品(例えば、灯油基材、ジェット燃料基材等)を得ることができる。
第三の工程では、水素化分解油が上述の第一の工程及び第二の工程を経たものであるため、灯油留分として、例えば、煙点23mm以上、硫黄分10質量ppm以下の留分を得ることができる。このような灯油留分は、例えば灯油基材の要求特性を満たすものであり、更なる精製操作等を要することなく灯油基材として用いることができる、高品質な留分である。
また、第三の工程では、場合により、灯油留分として、煙点19mm以上、硫黄分3000質量ppm以下、析出点−47℃以下の留分を得ることもできる。このような灯油留分は、例えばジェット燃料基材の要求特性を満たすものであり、更なる精製操作等を要することなくジェット燃料基材として用いることができる、高品質な留分である。
また、第三の工程では、水素化分解油が上述の第一の工程及び第二の工程を経たものであるため、軽油留分として、セタン指数50以上、硫黄分10質量ppm以下、流動点−10℃以下、目詰まり点−8℃以下の留分を得ることができる。このような軽油留分は、例えばディーゼル燃料基材の要求特性を満たすものであり、更なる精製操作等を要することなくディーゼル燃料基材として用いることができる、高品質な留分である。
さらに、第三の工程では、高品質な灯油留分及び軽油留分と併せて、接触改質への適用に好適な重質ナフサ留分をも得ることができる。なお、第二の工程は、重質ナフサ留分の芳香族分含有量が18容量%以下となるように実施され、好ましくは15容量%以下となるように実施される。
接触改質に供される重質ナフサは、その芳香族分含有量が多いほど接触改質の条件を緩和し得るため、従来の方法では、重質ナフサを得る前の水素化分解反応において、敢えて重質ナフサ留分の芳香族分含有量を所定の値まで低減させようという技術的思想は無かった。
これに対して、本実施形態に係る製造方法では、第一の工程で得られた脱硫油を特定の水素化分解触媒に、所定の水素分圧下で接触させる水素化分解を行って、敢えて重質ナフサ留分の芳香族分含有量を18容量%以下にまで低減させることで、高品質の灯油留分及び軽油留分の製造を可能とするものである。さらに、本実施形態に係る製造方法では、第二の工程で、特定の水素化分解触媒を採用したことで、重質ナフサ留分の芳香族分含有量が18容量%以下となる水素化分解を経ても、充分な収率で重質ナフサ留分を得ることができる。さらに後述のとおり、第一、第二及び第三の工程を経て得られた重質ナフサ留分からは、リサーチオクタン価に優れる(例えばリサーチオクタン価100以上の)改質油を得ることができる。
(第四の工程)
第四の工程は、第三の工程で分留された重質ナフサ留分を接触改質して、改質油を得る工程である。接触改質は、例えば、水素存在下において接触改質触媒に重質ナフサ留分を接触させることにより行うことができる。
接触改質の処理条件として、例えば、反応圧力は0.3〜4.0MPaが好ましく、0.3〜2.0MPaがより好ましい。また、LHSVは0.5〜3.0h−1が好ましく、0.8〜2.0h−1がより好ましい。また、水素/炭化水素比は0.5〜7.0mol/molとすることができ、より好ましくは1.0〜4.0mol/molである。また、残留塩素濃度0.5〜1.5質量%の条件が好ましい。
接触改質触媒は、接触改質処理を有効に行えるものであれば特に限定されない。例えば、接触改質触媒としては、活性金属として白金−レニウム、白金−レニウム−錫、白金−レニウム−イリジウム等を有する触媒を好適に用いることができる。
なお、第四の工程では、接触工程の前に、重質ナフサ留分の硫黄分を低減する脱硫処理を行うことができる。脱硫処理の方法は特に制限されないが、例えば、水素存在下で重質ナフサ留分を脱硫触媒に接触させることにより行うことができる。
ここで脱硫触媒としては、例えば、ニッケル、モリブデン及びコバルトからなる群より選択される2種以上の活性金属を含む触媒を好適に用いることができ、例えば、Co−Mo系、Ni−Mo系、Ni−Co−Mo系の触媒などを用いることができる。また、脱硫触媒としては、上記の水素化精製触媒と同様の触媒を用いることもできる。
接触改質によって得られた改質油は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭素数6〜8の芳香族分を含むものである。
また、改質油は、重質ナフサ留分を接触改質した後、炭素数4以下の軽質炭化水素を除去して得られたものであってもよい。このような改質油は、例えばリサーチオクタン価が100以上のガソリン基材として好適に使用することができる。
(第五の工程)
第五の工程は、第四の工程で得られた改質油から、少なくとも一種の芳香族化合物を分離する工程である。本実施形態に係る製造方法が第五の工程を有していれば、芳香族化合物を含有する化成品を製造することができる。
改質油は、上述のとおりベンゼン、トルエン、キシレン等の炭素数6〜8の芳香族分を含むものであるため、芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭素数6〜8の芳香族分が挙げられる。なお、化成品は、芳香族化合物そのものであってもよく、芳香族化合物を配合した製品であってもよい。
改質油から芳香族化合物を分離する方法は特に制限されず、例えば、蒸留や溶剤抽出により行うことができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(水素化精製触媒A−1)
水素化精製触媒A−1としては、市販の触媒(担体:アルミナ及びシリカ、活性金属:ニッケル及びモリブデン)を用いた。
(水素化分解触媒B−1)
<担体の調製>
USY型ゼオライト50質量%及びアルミナバインダー40質量%の混合物に水を加えて粘土状に混練し、ホウ酸を10質量%添加してさらに混練し、捏和物を調製した。この捏和物を押出成型により直径約1.5mm、長さ約3mmの円柱状に成型した。得られた成型体を120℃で3時間乾燥し、更に空気中、500℃で3時間焼成して担体を得た。
<触媒の調製>
硝酸ニッケル及びタングステン酸アンモニウムを、担体の予め測定した吸水量に相当するイオン交換水に溶解して、含浸溶液を得た。この含浸溶液を、上記担体に初期湿潤法により含浸し、担体の質量を基準として、酸化物換算のNi含有量が8質量%、酸化物換算のW含有量が20質量%となるように担持を行った。次に、得られた含浸物(触前駆体)を120℃で3時間乾燥した後、空気流通下、500℃で1時間焼成して、水素化分解触媒B−1を得た。
(実施例1)
表1に記載の組成の分解軽油Aを、水素化精製触媒A−1及び水素化分解触媒B−1が積層された反応装置に流通させて、水素化脱硫及び水素化分解を行い、水素化分解油を得た。なお、該反応装置において、反応圧力は13.5MPaとし、反応温度は362℃とし、全LHSV=0.72h−1とした。
次いで、得られた水素化分解油から、灯油留分、軽油留分及び重質ナフサ留分をそれぞれ分留し、灯油留分、軽油留分及び重質ナフサ留分の性状を求めた。
また、重質ナフサ留分について、市販の脱硫触媒で脱硫した後、接触改質を行い、改質油を得た。接触改質の反応条件は、反応温度500℃、反応圧力0.48MPa、LHSV=1.4h−1、水素/炭化水素比=3.5mol/molとした。得られた改質油について、その性状を求めた。
(実施例2)
分解軽油Aを表1に記載の分解軽油Bに変更し、水素化脱硫及び水素化分解を実施した反応装置の条件を、反応圧力10.5MPa、反応温度366℃、全LHSV=0.94h−1に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、灯油留分、軽油留分、重質ナフサ留分及び改質油を得て、その性状を求めた。
(実施例3)
分解軽油Aを表1に記載の分解軽油Bに変更し、水素化脱硫及び水素化分解を実施した反応装置の条件を、反応圧力10.5MPa、反応温度358℃、全LHSV=0.63h−1に変更したこと以外は、実施例1と同様にして灯油留分、軽油留分、重質ナフサ留分及び改質油を得て、その性状を求めた。
(比較例1)
水素化脱硫及び水素化分解を実施した反応装置における反応圧力を8.0Mpaに変更したこと以外は、実施例3と同様にして灯油留分、軽油留分、重質ナフサ留分及び改質油を得て、その性状を求めた。
(比較例2)
水素化分解触媒B−1を、ゼオライトを含有させずに担体を調整したこと以外は、実施例3と同様にして灯油留分、軽油留分、重質ナフサ留分及び改質油を得て、その性状を求めた。
実施例及び比較例で得られた灯油留分、軽油留分、重質ナフサ留分及び改質油の性状を表2〜5に示す。
Figure 0006038708
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なお、本明細書中、硫黄分、窒素分、芳香族分、析出点、引火点、煙点、流動点、目詰まり点、セタン指数、RONは、以下の方法に従って得られる値を示す。
・硫黄分:JIS K 2541に規定する「原油及び石油製品―硫黄分試験方法」の「放射線式励起法」に準拠して測定される。
・窒素分:JIS K 2609「原油及び石油製品−窒素分試験方法」に準拠して測定される。
・芳香族分:芳香族分とは全芳香族分のことである。全芳香族分、1環芳香族分、2環芳香族分、及び3環以上芳香族分は、石油学会法JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ」で測定される。
・析出点:JIS K 2276「石油製品−航空燃料油試験方法」に準拠して測定される。
・引火点:JIS K 2265に準拠して測定される。
・煙点:JIS K 2537「石油製品−灯油及び航空タービン燃料油−煙点試験方法」に準拠して測定される。
・流動点:JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に準拠して測定される。
・目詰まり点:JIS K 2288「石油製品−軽油−目詰まり点試験方法」に準拠して測定される。
・セタン指数:JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」に準拠して測定される。
・RON::JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」に準拠して測定される。

Claims (10)

  1. 芳香族分含有量が50容量%以上、10%留出温度が140℃以上、且つ95%留出温度が380℃以上の石油系炭化水素を水素化脱硫して脱硫油を得る第一の工程と、
    前記脱硫油を、USY型ゼオライトを含む担体に周期表第6族、第8族、第9族及び第10族の金属から選択される一種以上の活性金属が担持された水素化分解触媒に、10〜14MPaの水素分圧下で接触させて水素化分解油を得る第二の工程と、
    前記水素化分解油を分留して、10%留出温度が150℃以上、且つ95%留出温度が250℃以下の灯油留分、及び、10%留出温度が90℃以上、且つ95%留出温度が170℃以下の重質ナフサ留分を得る第三の工程と、
    を有
    前記第二の工程が、前記第三の工程で得られる前記重質ナフサ留分の芳香族含有量が18容量%以下となるように前記脱硫油を水素化分解する工程である、
    前記灯油留分に由来する製品及び前記重質ナフサ留分に由来する製品を含む石油製品の製造方法。
  2. 前記担体が、アルミナ、シリカ及びボリアからなる群より選択される少なくとも一種のバインダーをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記活性金属が、コバルト、ニッケル、モリブデン及びタングステンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記灯油留分が、煙点23mm以上、硫黄分10質量ppm以下の留分であり、
    前記石油製品が、前記灯油留分を含有する灯油基材を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記灯油留分が、煙点19mm以上、硫黄分10質量ppm以下、析出点−47℃以下の留分であり、
    前記石油製品が、前記灯油留分を含有するジェット燃料基材を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記第三の工程において、10%留出温度が250℃以上、且つ95%留出温度が350℃以下の軽油留分をさらに得る、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 前記軽油留分が、セタン指数50以上、硫黄分10質量ppm以下、流動点−10℃以下、目詰まり点−8℃以下の留分であり、
    前記石油製品が、前記軽油留分を含有するディーゼル燃料基材を含む、請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記重質ナフサ留分を接触改質して、改質油を得る第四の工程をさらに有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 前記石油製品が、前記改質油由来の芳香族化合物を含有し、リサーチオクタン価が100以上のガソリン基材を含む、請求項8に記載の製造方法。
  10. 前記改質油から、少なくとも一種の芳香族化合物を分離する第五の工程をさらに有し、
    前記石油製品が、前記芳香族化合物を含有する化成品を含む、請求項8に記載の製造方法。
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