JP7101019B2 - 高発熱量ジェット燃料基材の製造方法 - Google Patents

高発熱量ジェット燃料基材の製造方法 Download PDF

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本発明は、高い発熱量を有するジェット燃料基材の製造方法に関する。
最近の石油製品の需要は軽質化傾向にあり、重油の需要が低迷し、重油の基材として用いられる芳香族炭化水素の含有量が多い流動接触分解装置(FCC装置)から得られる接触分解軽油(LCO;Light Cycle Oil)や、熱分解装置から得られる熱分解軽油等の分解軽油が余剰となりつつある。そこで、これら分解軽油を、燃料油を製造する際の原料油に混合して処理することが考えられる。
さらに芳香族炭化水素の含有量が多い接触分解循環油や熱分解軽油を水素化処理するとナフテン環を有する化合物が生成するため、前記化合物を有する留分の密度が高まり、それに伴う発熱量の向上が期待される。
燃料油のなかでも主に航空機の燃料油に使用されるジェット燃料は、単位体積当たりの発熱量が高いと燃料タンクを拡大せずに航続距離を伸ばすことができるため、発熱量の高いジェット燃料が強く望まれている。
特許文献1には、直留軽油を70~90容量%、接触分解循環油を10~30容量%含む原料油を水素化処理することによって、ディーゼル自動車等のエンジンの燃料噴射ポンプの耐摩耗性に優れ、かつ燃料消費量が少ないディーゼル軽油組成物が得られることが開示されている。
また、特許文献2には、直留軽油を65~88容量%、分解軽油(接触分解軽油と熱分解軽油の総量)を12~35容量%含む原料油を水素化処理することによって、硫黄分が10質量ppm以下と低く、かつ色相が良好な灯油燃料を、水素分圧8MPaで、簡素な脱硫処理設備を用いて経済的に製造できる、灯油燃料の製造方法が開示されている。
一方で、芳香族炭化水素の含有量が多い分解油を含む原料油を用いたジェット燃料の製造については特許文献1及び2には開示されていない。
さらに、オレフィン及び芳香族炭化水素の含有量が多い接触分解軽油、熱分解軽油を水素化処理すると、多量のコークが発生し、触媒の寿命が短くなるという問題があり、特許文献1及び2に記載の原料油においても原料油中の分解軽油の含有量を低くする必要がある。
従って、特許文献1及び2に記載の方法で製造されたディーゼル軽油組成物、及び灯油燃料においては、ナフテン環を有する化合物の含有量が低いため、ディーゼル軽油組成物、及び灯油燃料の密度が低く、それに伴い発熱量も低いという問題がある。
特開平8-311462号公報 特開2012-211287号公報
本発明は、密度が高く、高い発熱量を有するジェット燃料基材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、90容量%留出温度が320~360℃であり、芳香族炭化水素を37~65質量%含む原料油を、水素分圧10~18MPaで水素化処理を行うことによって、15℃における密度が0.79~0.86g/mLであり、10容量%留出温度が170~220℃であり、蒸留の終点が220~320℃であり、析出点が-65~-40℃であり、発熱量が35,000~36,500J/mLであるジェット燃料基材を得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明はジェット燃料基材の製造方法に関する。
[1] 90容量%留出温度が320~360℃であり、芳香族炭化水素を37~65質量%含む原料油を、水素分圧10~18MPaで水素化処理を行う工程を含むことを特徴とする、15℃における密度が0.79~0.86g/mLであり、10容量%留出温度が170~220℃であり、蒸留の終点が220~320℃であり、析出点が-65~-40℃であり、発熱量が35,000~36,500J/mLであるジェット燃料基材の製造方法。
[2] 前記原料油は、熱分解軽質軽油(LCGO)、接触分解軽油(LCO)、及び熱分解重質軽油を水素化処理して得られた軽質軽油(DS-LHCGO)からなる群から選ばれる少なくとも1種の基材を含む[1]に記載のジェット燃料基材の製造方法。
本発明のジェット燃料基材の製造方法によれば、高発熱量が得られるジェット燃料基材を得ることができる。
本発明の一実施形態に係るジェット燃料基材の製造フローの模式図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の記載は本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されず、その要旨の範囲内で変形して実施することができる。
本発明に係るジェット燃料基材の製造方法は、90容量%留出温度が320~360℃であり、芳香族炭化水素を37~65質量%含む原料油を、水素分圧10~18MPaで水素化処理を行う工程を含み、前記ジェット燃料基材は、15℃における密度が0.79~0.86g/mLであり、10容量%留出温度が170~220℃であり、蒸留の終点が220~320℃であり、析出点が-65~-40℃であり、発熱量が35,000~36,500J/mLである。
<原料油>
本実施形態のジェット燃料基材の製造方法で用いる原料油は、90容量%留出温度が320~360℃であり、芳香族炭化水素を37~65質量%含む原料油である。
原料油の90容量%留出温度(以下、単にT90ともいう)は、320~360℃であり、330~360℃が好ましく、340~360℃がより好ましい。T90が前記範囲の下限値以上であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなり、水素化処理によりナフテン環を有する化合物が多く生成し、得られるジェット燃料基材の発熱量が向上する。T90が前記範囲の上限値以下であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなりすぎず、水素化処理反応におけるコークの発生が抑制され、水素化処理触媒の寿命が長くなる。
なお、90容量%留出温度、後述する50容量%留出温度、10容量%留出温度、及び蒸留の終点とは、それぞれJIS K2254「石油製品-蒸留試験方法-常圧法蒸留試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
原料油中の芳香族炭化水素の含有量は、37~65質量%であり、40~60質量%が好ましく、45~60質量%がより好ましく、50~60質量%が特に好ましい。芳香族炭化水素の含有量が前記範囲の下限値以上であると、水素化処理によりナフテン環を有する化合物が多く生成し、得られるジェット燃料基材の発熱量が向上する。芳香族炭化水素の含有量が前記範囲の上限値以下であると、水素化処理反応におけるコークの発生が抑制され、水素化処理触媒の寿命が長くなる。
なお、芳香族炭化水素の含有量とは、IP548「 Determination of aromatic hydrocarbon types in middle distillates - High performance liquid chromatography method with refractive index detection」に準拠して測定される値を意味する。
原料油中の硫黄分の含有量は3質量ppm以下が好ましく、2質量ppm以下がより好ましい。硫黄分の含有量が前記上限値以下であると、水素化処理の運転条件を厳しくする必要がないため、触媒の寿命が長くなり、かつ経済的にも有利である。
硫黄分の含有量は低ければ低いほど好ましいため、硫黄分の含有量の下限値は特に限定されないが、通常0.5質量ppm以上である。
なお、硫黄分の含有量とは、JIS K 2541「原油及び石油製品-硫黄分試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
原料油中の窒素分の含有量は1,000質量ppm以下が好ましく、800質量ppm以下がより好ましい。窒素分の含有量が前記上限値以下であると、水素化処理の運転条件を厳しくする必要がないため、触媒の寿命が長くなり、かつ経済的にも有利である。また、製造したジェット燃料基材の色相にも悪影響を及ぼさない。
窒素分の含有量は低ければ低いほど好ましいため、窒素分の含有量の下限値は特に限定されないが、通常100質量ppm以上である。
なお、窒素分の含有量とは、JIS K 2609「原油及び石油製品-窒素分試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
原料油の15℃における密度は、0.86~0.91g/mLが好ましく、0.865~0.905g/mLがより好ましい。15℃における密度が前記範囲内であると、脱硫反応時に使用する原料油の送液ポンプのキャビテーションが防止され、かつ経済的にも有利である。
なお、15℃における密度とは、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」に準拠して測定される値を意味する。
本実施形態の原料油は、熱分解軽質軽油(LCGO)、接触分解軽油(LCO)、及び熱分解重質軽油を水素化処理して得られた軽質軽油(DS-LHCGO)からなる群から選ばれる少なくとも1種の基材を含むことが好ましい。
以下、各基材について図1を参照して説明を行う。
(熱分解軽質軽油)
本実施形態の原料油に含まれる基材としては、熱分解軽質軽油(以下、「LCGO」ともいう)が例として挙げられる。LCGOとは、図1に示すように減圧蒸留残渣を熱分解して得られる軽油のうちの軽質留分であり、10容量%留出温度が180~260℃、90容量%留出温度が310~380℃である留分である。
LCGOは、芳香族含有量が多い留分であるため、得られるジェット燃料基材の総発熱量の向上に寄与する。
原料油の総容積に対するLCGOの含有量は、10~90容量%が好ましく、20~80容量%がより好ましく、30~70容量%がさらに好ましい。
LCGOの含有量が前記範囲の下限値以上であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなり、水素化処理によりナフテン環を有する化合物が多く生成し、得られるジェット燃料基材の発熱量が向上する。LCGOの含有量が前記範囲の上限値以下であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなりすぎず、水素化処理反応におけるコークの発生が抑制され、水素化処理触媒の寿命が長くなる。
(接触分解軽油)
本実施形態の原料油に含まれる基材としては、接触分解軽油(以下、「LCO」ともいう)が例として挙げられる。LCOとは、図1に示すように流動接触分解装置から留出される留分であり、例えば、10容量%留出温度が185~250℃、90容量%留出温度が270~370℃である留分である。
LCOは、芳香族含有量が多い留分であるため、得られるジェット燃料基材の総発熱量の向上に寄与する。
原料油の総容積に対するLCOの含有量は、10~65容量%が好ましく、20~65容量%がより好ましく、22~63容量%がさらに好ましい。
LCOの含有量が前記範囲の下限値以上であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなり、水素化処理によりナフテン環を有する化合物が多く生成し、得られるジェット燃料基材の発熱量が向上する。LCOの含有量が前記範囲の上限値以下であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなりすぎず、水素化処理反応におけるコークの発生が抑制され、水素化処理触媒の寿命が長くなる。
(熱分解重質軽油を水素化処理して得られた軽質軽油)
本実施形態の原料油に含まれる基材としては、熱分解重質軽油(HCGO)を水素化処理して得られた軽質軽油(以下、「DS-LHCGO」ともいう)が例として挙げられる。DS-LHCGOとは、図1に示すように減圧蒸留残渣を熱分解し得られる軽油のうちLCGOよりも重質留分であるHCGOを水素化処理して得られた軽質軽油である。
DS-LHCGOは、芳香族含有量が多い留分であるため、得られる軽油基材の総発熱量の向上に寄与する。
DS-LHCGOは、10容量%留出温度が200~260℃である。また、DS-LHCGOは、90容量%留出温度が300~350℃である。
原料油の総容積に対するDS-LHCGOの含有量は、3~10容量%が好ましく、4~10容量%がより好ましく、5~10容量%がさらに好ましい。
DS-LHCGOの含有量が前記範囲の下限値以上であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなり、水素化処理によりナフテン環を有する化合物が多く生成し、得られる軽油基材の発熱量が向上する。DS-LHCGOの含有量が前記範囲の上限値以下であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなりすぎず、水素化処理反応におけるコークの発生が抑制され、水素化処理触媒の寿命が長くなる。
上述の本実施形態の原料油に含まれる基材の中でも芳香族含有量が多い留分であるLCGO、及びLCOを含有することが好ましい。
原料油の総容積に対するLCGOとLOの合計含有量は、30~100容量%が好ましく、40~98容量%がより好ましく、50~95容量%がさらに好ましく、60~95容量%が特に好ましい。
LCGOとLCOの合計含有量が前記範囲の下限値以上であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなり、水素化処理によりナフテン環を有する化合物が多く生成し、得られるジェット燃料基材の発熱量が向上する。LCGOとLCOの含有量が前記範囲の上限値以下であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなりすぎず、水素化処理反応におけるコークの発生が抑制され、水素化処理触媒の寿命が長くなる。
本発明の一つの側面としては、原料油の総容積に対して、LCGOの含有量が30~60容量%で、かつLCOの含有量が35~65容量%が好ましい。
LCGO及びLCOの含有量がそれぞれ前記範囲の下限値以上であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなり、水素化処理によりナフテン環を有する化合物が多く生成し、得られるジェット燃料基材の発熱量が向上する。LCGO及びLCOの含有量がそれぞれ前記範囲の上限値以下であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなりすぎず、水素化処理反応におけるコークの発生が抑制され、水素化処理触媒の寿命が長くなる。
<その他の基材>
本実施形態の原料油は、前記LCGO、LCO、及びDS-LHCGO以外のその他の基材を含有してもよい。
その他の基材としては、常圧蒸留によって得られる直留軽油、間接脱硫装置から得られる軽油留分、直接脱硫装置から得られる軽油留分等が例として挙げられる。
原料油の総容積に対するその他の基材の含有量は、0~70容量%が好ましく、2~60容量%がより好ましく、5~50容量%がさらに好ましい。
<水素化処理>
本発明に係るジェット燃料基材の製造方法における水素化処理は、水素分圧10~18MPaで行う。以下、水素化処理の条件の詳細を説明する。
(水素化処理触媒)
水素化処理触媒を構成する担体を構成する混合物としては、アルミナを含有する多孔質無機酸化物が使用できる。
水素化処理触媒を構成する活性成分としては、周期表第6族から選ばれる少なくとも1種の金属元素、周期表第8~10族から選ばれる少なくとも1種の金属元素が例として挙げられる。
周期表第6族から選ばれる少なくとも1種の金属元素としては、モリブデン、タングステンが好ましい。モリブデン化合物としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム等が好ましく、タングステン化合物としては、三酸化タングステン、タングステン酸アンモニウム等が好ましい。第6族金属の担持量は、酸化物換算で水素化処理触媒の総質量に対して8~20質量%が好ましい。
周期表第8~10族から選ばれる少なくとも1種の金属元素としては、コバルト、ニッケルが好ましい。コバルト化合物としては、炭酸コバルト、塩基性炭酸コバルト、硝酸コバルト等が好ましく、ニッケル化合物としては、炭酸ニッケル、塩基性炭酸ニッケル、硝酸ニッケル等が好ましい。第9族と第10族の金属元素の担持量は、酸化物換算で水素化処理触媒の総質量に対して2~6質量%が好ましい。
上述した活性成分のなかでは、モリブデンとニッケルとを組み合わせたモリブデンニッケル系触媒が好ましい。
また、上述の水素化処理触媒を、水素雰囲気下で、300~400℃で、1~36時間、水素還元処理して使用することが好ましい。
(水素化処理条件)
水素化処理における水素分圧は、10~18MPaであり、11~16MPaが好ましく、13~15MPaがより好ましい。水素分圧が前記範囲の下限値以上であると、本実施形態のようなオレフィン、芳香族炭化水素の含有量の多い原料油を水素化処理してもコークの発生が抑制され、水素化処理触媒の寿命が長くなる。水素分圧が前記範囲の上限値以下であると、水素化処理設備にコストがかかりすぎないため経済的に有利である。
水素化処理を流通式反応装置で実施する場合、反応器入り口の水素/油比(以下、「水素/油比」と記載)は、例えば100~800Nm/KLであり、200~700Nm/KLが好ましく、300~650Nm/KLがより好ましい。
水素/油比が前記範囲の下限値以上であると、充分に水素化処理反応が進行する。水素/油比が前記範囲の上限値以下であると、過剰に水素を消費することもなく、処理コストを削減できる。また、反応器内の発熱に応じてクエンチ水素を加えても良い。
水素化処理を流通式反応装置で実施する場合、液空間速度(LHSV)は、例えば0.1~3hr-1であり、0.2~2hr-1が好ましく、0.25~1hr-1がより好ましい。
液空間速度が前記範囲の下限値以上であると、水素化処理の効率が向上する。液空間速度が前記範囲の上限値以下であると、水素化処理触媒と原料油との接触時間が充分となり、水素化処理触媒の活性が充分に発揮される。
触媒層の温度は、例えば300~420℃であり、310~400℃が好ましく、310~390℃がより好ましい。
触媒層の温度が前記範囲の下限値以上であると、水素化触媒の触媒活性が向上する。触媒層の温度が前記範囲の上限値以下であると、水素化処理油の着色や、水素化処理触媒の寿命の低下が起こりにくくなる。
反応形式としては、固定床、移動床又は流動床が例として挙げられ、この反応器に上記の原料油を導入し、上記の水素化処理条件で処理すればよい。最も一般的には、上述の触媒を上記の態様で固定床として維持し、原料油が前記固定床を下方に通過するようにする。
水素化処理して得られた基材を蒸留分離して、15℃における密度が0.79~0.86g/mLであり、10容量%留出温度が170~220℃であり、蒸留の終点が220~320℃であり、析出点が-65~-40℃であり、発熱量が35,000~36,500J/mLであるジェット燃料基材を得る。
前記蒸留分離には、蒸留装置を用いることが好ましい。ここで、蒸留装置とは、液体混合物を沸点の差を利用して分離する装置で、常温、常圧で液体又は固体の混合物でも温度と圧力調節により液体混合物として蒸留により分離できる装置を意味する。
<ジェット燃料基材>
本発明に係るジェット燃料基材は、15℃における密度が0.79~0.86g/mLであり、10容量%留出温度が170~220℃であり、蒸留の終点が220~320℃であり、析出点が-65~-40℃であり、発熱量が35,000~36,500J/mLであるジェット燃料基材である。
ジェット燃料基材の15℃における密度は、0.79~0.86g/mLであり、0.80~0.85g/mLが好ましく、0.81~0.85g/mLがより好ましい。15℃における密度が前記範囲の下限値以上であると、容量あたりの炭化水素の含有量が多くなり、ジェット燃料基材の発熱量が向上する。
ジェット燃料基材の10容量%留出温度(以下、単にT10ともいう)は、170~220℃であり、180~210℃が好ましく、190~210℃がより好ましい。
ジェット燃料基材のT90は、185~265℃であり、200~260℃が好ましく、210~250℃がより好ましい。
ジェット燃料の蒸留の終点は、220~320℃であり、230~310℃が好ましく、240~300℃がより好ましく、250~300℃がさらに好ましい。
T10、T90、蒸留の終点が前記範囲内であると、寒冷地での始動時や高高度で飛行中の再着火時に点火しやすく、燃料配管内で気化ガスによる燃料供給が閉塞する「ベイパーロック」を防ぐことができるとともに、容量あたりの炭化水素の含有量が多くなり、灯油基材の発熱量が向上するため好ましい。
ジェット燃料の析出点は、-65~-40℃であり、-63~-45℃が好ましく、-61~-50℃がより好ましい。
析出点が前記範囲内であると、ジェット燃料に含まれるワックス分が析出しにくくなり、燃料フィルターや配管系内部で詰まることを防ぐことができるため好ましい。
なお、析出点とは、JIS K 2276「析出点試験方法(航空燃料油)」に準拠して測定される値を意味する。
ジェット燃料基材中の芳香族分は、10~45質量%が好ましく、13~40質量%がより好ましく、20~35質量%がさらに好ましい。芳香族分が前記範囲内であると、燃焼によってジェット燃料の全てがガス化し燃焼後に炭素粒子である「すす」の発生量が少なくなるため好ましい。
ジェット燃料基材の発熱量は、35,000~36,500J/mLであり、35,100~36,300J/mLが好ましく、35,150~36,000J/mLがより好ましく、35,500~36,000J/mLがさらに好ましい。
発熱量が前記範囲内であると、ジェット燃料の燃焼効率が向上する。
なお、発熱量とは、JIS K2279「原油及び石油製品-発熱量試験方法及び計算による推定方法」に準拠して測定される値を意味する。
なお、JIS K2279の式中の芳香族分(容量%)は前述のIP548により求めた芳香族分(質量%)の値を使用し、密度を0.9g/mLとして容量%に計算して求めることができる。
ジェット燃料基材の硫黄分の含有量は、15質量ppm以下であり、10質量ppm以下が好ましく、8質量ppm以下がより好ましい。硫黄分の含有量は低ければ低いほど好ましいため、硫黄分の含有量の下限値は特に限定されないが、通常0.1質量ppm以上である。
ジェット燃料基材の引火点は、40~70℃が好ましく、50~70℃がより好ましい。引火点が前記範囲内であると、常温で可燃性蒸気が発生することがなく、静電気などで着火する危険性を低減できるので好ましい。
なお、引火点とは、JIS K2265-1「原油及び石油製品-引火点試験方法」(タグ密閉式引火点試験方法)に準拠して測定される値を意味する。
本発明のジェット燃料基材は、必要に応じてジェット燃料基材の他に各種添加剤を添加しジェット燃料製品を製造してもよい。添加剤としては酸化防止剤、電導度調整剤、金属不活性化剤、氷結防止剤などが挙げられる。これら添加剤の添加量は任意であるが、その合計添加量は、ジェット燃料製品の総質量に対して0.5容量%以下であり、0.2容量%以下が好ましい。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
原料油、及びジェット燃料基材の性状は次の方法に準拠して求めた。
[15℃における密度]
JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」に準拠して測定した。
[硫黄分の含有量]
JIS K 2541「原油及び石油製品-硫黄分試験方法」に準拠して測定した。
[芳香族炭化水素の含有量]
IP548「 Determination of aromatic hydrocarbon types in middle distillates - High performance liquid chromatography method with refractive index detection」に準拠して測定した。
[10容量%留出温度、50容量%留出温度、90容量%留出温度、蒸留の終点]
JIS K2254「石油製品-蒸留試験方法-常圧法蒸留試験方法」に準拠して測定した。
[窒素分]
JIS K 2609「原油及び石油製品-窒素分試験方法」に準拠して測定した。
[発熱量]
JIS K2279「原油及び石油製品-発熱量試験方法及び計算による推定方法」に準拠して測定した。
なお、JIS K2279の式中の芳香族分(容量%)は前述のIP548により求めた芳香族分(質量%)の値を使用し、密度を0.9g/mLとして容量%に計算して求めた。
[析出点]
JIS K 2276「析出点試験方法(航空燃料油)」に準拠して測定した。
[引火点]
JIS K2265-1「原油及び石油製品-引火点試験方法」(タグ密閉式引火点試験方法)に準拠して測定した。
熱分解軽質軽油(LCGO)、接触分解軽油(LCO)、熱分解重質軽油を水素化処理して得られた軽質軽油(DS-LHCGO)、及び直留軽油(LGO)を用意した。使用したLCGO、LCO、DS-LHCGO、及びLGOの15℃における密度、硫黄分の含有量、窒素分の含有量、芳香族炭化水素の含有量、T10、50容量%留出温度(以下、単にT50ともいう)、及びT90を表1~4に示す。さらに表5に示す割合で配合し、原料油とした。配合1~11の原料油の15℃における密度、硫黄分の含有量、窒素分の含有量、芳香族炭化水素の含有量、T10、T50、及びT90を表5に示す。
Figure 0007101019000001
Figure 0007101019000002
Figure 0007101019000003
Figure 0007101019000004
Figure 0007101019000005
(水素化処理触媒)
水素化処理触媒としては、モリブデンニッケル系触媒を使用した。
実施例1
配合1の原料油を水素/油比:650Nm/KL、水素分圧:14.1MPa、液空間速度(LHSV):0.32hr-1、反応温度:328℃で水素化処理し、その後分留することによりジェット燃料基材を得た。得られたジェット燃料基材の性状(15℃における密度、硫黄分の含有量、引火点、芳香族炭化水素の含有量、T10、T50、T90、蒸留の終点、析出点、発熱量)を表6に示す。
実施例2
配合2の原料油を水素/油比:630Nm/KL、水素分圧:14.0MPa、液空間速度(LHSV):0.33hr-1、反応温度:329℃で水素化処理し、その後分留することによりジェット燃料基材を得た。得られたジェット燃料基材の性状を表6に示す。
実施例3
配合3の原料油を水素/油比:480Nm/KL、水素分圧:14.0MPa、液空間速度(LHSV):0.42hr-1、反応温度:341℃で水素化処理し、その後分留することによりジェット燃料基材を得た。得られたジェット燃料基材の性状を表6に示す。
実施例4
配合4の原料油を水素/油比:580Nm/KL、水素分圧:13.5MPa、液空間速度(LHSV):0.37hr-1、反応温度:335℃で水素化処理し、その後分留することによりジェット燃料基材を得た。得られたジェット燃料基材の性状を表6に示す。
実施例5
配合5の原料油を水素/油比:510Nm/KL、水素分圧:14.0MPa、液空間速度(LHSV):0.39hr-1、反応温度:334℃で水素化処理し、その後分留することによりジェット燃料基材を得た。得られたジェット燃料基材の性状を表6に示す。
実施例6
配合6の原料油を水素/油比:570Nm/KL、水素分圧:13.5MPa、液空間速度(LHSV):0.37hr-1、反応温度:342℃で水素化処理し、その後分留することによりジェット燃料基材を得た。得られたジェット燃料基材の性状を表6に示す。
実施例7
配合7の原料油を水素/油比:400Nm/KL、水素分圧:14.2MPa、液空間速度(LHSV):0.54hr-1、反応温度:340℃で水素化処理し、その後分留することによりジェット燃料基材を得た。得られたジェット燃料基材の性状を表6に示す。
実施例8
配合8の原料油を水素/油比:570Nm/KL、水素分圧:13.4MPa、液空間速度(LHSV):0.32hr-1、反応温度:334℃で水素化処理し、その後分留することによりジェット燃料基材を得た。得られたジェット燃料基材の性状を表6に示す。
実施例9
配合9の原料油を水素/油比:630Nm/KL、水素分圧:13.8MPa、液空間速度(LHSV):0.31hr-1、反応温度:334℃で水素化処理し、その後分留することによりジェット燃料基材を得た。得られたジェット燃料基材の性状を表6に示す。
比較例1
配合10の原料油を水素/油比:510Nm/KL、水素分圧:13.9MPa、液空間速度(LHSV):0.40hr-1、反応温度:336℃で水素化処理し、その後分留することによりジェット燃料基材を得た。得られたジェット燃料基材の性状を表6に示す。
比較例2
配合11の原料油を水素/油比:610Nm/KL、水素分圧:12.8MPa、液空間速度(LHSV):0.33hr-1、反応温度:335℃で水素化処理し、その後分留することによりジェット燃料基材を得た。得られたジェット燃料基材の性状を表6に示す。
Figure 0007101019000006
表6に示されるように本発明の製造方法によって製造されたジェット燃料基材は、発熱量が非常に高いことがわかった。

Claims (2)

  1. 90容量%留出温度が320~360℃であり、芳香族炭化水素を37~65質量%含む原料油を、水素分圧10~18MPa、水素/油比100~800Nm /KL、液空間速度0.1~3hr -1 、触媒層の温度300~420℃で水素化処理を行う工程と、水素化処理して得られた基材を蒸留分離する工程と、を含む、ジェット燃料基材の製造方法であって
    前記原料油は、熱分解軽質軽油(LCGO)、接触分解軽油(LCO)、及び熱分解重質軽油を水素化処理して得られた軽質軽油(DS-LHCGO)からなる群から選ばれる少なくとも1種の基材を含み、
    前記原料油の総容積に対するLCGOとLCOの合計含有量は、30~100容量%であり、
    前記ジェット燃料基材は、15℃における密度が0.79~0.86g/mLであり、10容量%留出温度が170~220℃であり、蒸留の終点が220~320℃であり、析出点が-65~-40℃であり、発熱量が35,000~36,500J/mLであるジェット燃料基材の製造方法。
  2. 前記原料油は、前記LCGO、前記LCO、及び前記DS-LHCGOを含む請求項1に記載のジェット燃料基材の製造方法。
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