JP5537781B2 - 灯油組成物 - Google Patents
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Description
しかし、近年、環境問題により重油を燃焼機関に使用した場合の排出ガスが問題となっており、その硫黄分や多環芳香族分の低減、セタン価の向上が求められている。このため、LCO留分の有効活用が課題となっている。
特許文献1には、減圧蒸留軽油、流動接触分解軽油、熱分解油および脱れき油から選ばれる1種以上を、CAT(触媒平均温度)400℃以下で水素化分解する工程と、その灯油留分を回収する工程を有することを特徴とする灯油の製造方法が開示され、また、特許文献2には、フィッシャー・トロプシュ(FT)合成油に対し、芳香族分が40容量%以上70容量%以下、硫黄分が30質量ppm以下等の特定の性状を有するFCC装置より得られるLCO留分を組成物全量基準で10〜30容量%含有し、引火点が45℃以上である燃料組成物が記載されている。
〔1〕流動接触分解(FCC)装置より得られた流動接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を少なくとも水素化分解した後、分離して得られた沸点範囲190℃以上の留分からなり、硫黄分が20質量ppm以下である基材を1〜20容量%、及び硫黄分が10質量ppm以下である脱硫灯油(以下、「DK」と称することがある。)を80〜99容量%含有し、(1)硫黄分が10質量ppm以下、(2)煙点が21mm以上、(3)総発熱量が36600J/ml以上、かつ(4)95容量%留出温度(T95)が280℃以下である灯油組成物、
〔2〕上記沸点範囲190℃以上の留分からなる基材が、(b)95容量%留出温度(T95)が310℃以下、 (c)密度(15℃)が0.84〜0.87g/cm3である、上記〔1〕に記載の灯油組成物、
〔3〕上記沸点範囲190℃以上の留分からなる基材の硫黄分が10質量ppm以下である上記〔1〕に記載の灯油組成物、
〔5〕(イ)流動接触分解(FCC)装置より得られた流動接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を少なくとも水素化分解した後、分離して得られた沸点範囲190℃以上の留分からなり、硫黄分が20質量ppm以下である基材Aを得る工程、(ロ)該基材A 1〜20容量%を、硫黄分が10質量ppm以下である脱硫灯油(DK)と混合する工程、を有する、(1)硫黄分が10質量ppm以下、(2)煙点が21mm以上、(3)総発熱量が36600J/ml以上、かつ(4)95容量%留出温度(T95)が270℃以下である灯油組成物の製造方法、及び
〔6〕脱硫灯油(DK)に、流動接触分解(FCC)装置より得られた流動接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を少なくとも水素化分解した後、分離して得られた沸点範囲190℃以上の留分からなり、硫黄分が20質量ppm以下である基材を、全組成物に対し1〜20容量%混合する、灯油の発熱量向上方法、
に関する。
FCC装置より得られるLCO留分は、主に原油から得られる重質軽油、減圧軽油、常圧残油、減圧残油、脱瀝油等の留分並びに沸点が190℃以上の分解留分の一種以上の混合油を減圧軽油水素化脱硫装置や重油水素化脱硫装置等で水素化脱硫処理した留分をFCC装置において流動接触分解して得られるものであれば、特に制限はないが、一般に、沸点範囲190〜390℃、密度0.88〜0.99g/cm3、硫黄分0.1〜0.6質量%、芳香族分60〜90容量%、多環芳香族分30〜80容量%の性状を有するものである。
また、水素化分解活性成分やリンは、通常水素化分解活性成分やリンを含む化合物を脱イオン水に溶解させた含浸液として耐火性無機酸化物担体に含浸・担持される。含浸液中の水素化分解活性成分やリンの含有量は、目標とする担持量から計算で求める。水素化分解活性成分やリンを含む化合物を脱イオン水に溶解させた後、その含浸液の液量を、担持する耐火性無機酸化物担体の吸水量に等しくなるように調整した後、含浸・担持させることができる。
さらに、水素化分解活性成分やリンを耐火性無機酸化物担体に高分散させるために、界面活性剤等の水溶性有機物を添加するのが好ましい。添加する水溶性有機物としては、分子量が90〜10000のポリエチレングリコールが好適である。上記ポリエチレングリコールを添加する場合、その添加量は耐火性無機酸化物担体に対して2〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%である。添加量が上記範囲内であれば、水素化分解活性成分やリンを耐火性無機酸化物担体に高分散でき好ましい。
水素化処理活性(脱窒素活性、脱硫活性)の点から、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケルが好適である。
上記観点から、モリブデンを含む化合物としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウムが好ましく、タングステンを含む化合物としては、三酸化タングステン、タングステン酸アンモニウムが好ましい。また、コバルトを含む化合物としては、炭酸コバルト、塩基性炭酸コバルト、硝酸コバルトが好ましく、ニッケルを含む化合物としては、炭酸ニッケル、塩基性炭酸ニッケル、硝酸ニッケルが好ましい。
上記水素化分解活性成分やリンの担持量は、触媒体として、酸化物基準で、モリブデン(MoO3)、タングステン(WO3)が10〜30質量%、コバルト(CoO)、ニッケル(NiO)が1〜6質量%、リン(P2O5)は5質量%以下が好適である。
これらの中でも、アルミナやシリカ−アルミナと強い固体酸性を有する耐火性の結晶性アルミノシリケートの組み合わせが好適である。
強い固体酸性を有する結晶性アルミノシリケートとしては、Y型ゼオライト、βゼオライト、モルデナイト等が挙げられる。特にY型ゼオライトを修飾処理ないし安定化処理したものが好ましい。修飾処理したY型ゼオライトとしては、特に鉄イオンでイオン交換したY型ゼオライト(以下、鉄ゼオライトと称することがある。)が好適である。鉄ゼオライトの物性としては、SiO2/Al2O3(モル比)が3.5以上、さらには4.6以上であることが好ましく、2.420〜2.440nmの格子定数を有するものが好適である。
耐火性無機酸化物担体の形状としては特に限定されないが、円柱、三つ葉、四つ葉等の成型体が好適である。
焼成処理は、空気雰囲気下、通常550℃以下の温度で行う。また、焼成処理時間は通常0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
また、LCO留分の水素化分解率を上記範囲で行うため、反応温度は320〜430℃、水素分圧は5〜15MPa、液空間速度(LHSV)は0.3〜3.0h-1、水素/油比は1000〜3000Nm3/KLの条件下で行うことが好ましい。
水素化精製活性成分やリンは、通常水素化精製活性成分やリンを含む化合物を脱イオン水に溶解させた含浸液として耐火性無機酸化物担体に含浸・担持される。含浸液中の水素化精製活性成分やリンの含有量は、目標とする担持量から計算で求める。水素化精製活性成分やリンを含む化合物を脱イオン水に溶解させた後、その含浸液の液量を、担持する耐火性無機酸化物担体の吸水量に等しくなるように調整した後、含浸・担持させることができる。
水素化精製活性成分、リン、有機酸、水溶性有機物等の添加量は、水素化分解触媒の調製の場合と同様である。
また、上記水素化精製活性成分やリンの担持量は、触媒体として、酸化物基準で、モリブデン(MoO3)、タングステン(WO3)が10〜40質量%、コバルト(CoO)、ニッケル(NiO)が2〜10質量%、リン(P2O5)は1〜10質量%以下が好適である。
さらに、アルミナに水溶性チタン化合物を含浸・担持したものも好適に使用される。チタンの担持量は、1〜10質量%が好ましく、2〜5質量%がより好ましい。チタンの担持量が1質量%以上であれば水素化精製能向上の効果が大きく、10質量%を超える担持量であっても水素化精製能の向上に更に寄与することはない。
また、シリカ−アルミナ中のシリカ(SiO2)の含有量は1〜20質量%が好適である。
耐火性無機酸化物担体の形状としては特に限定されないが、円柱、三つ葉、四つ葉等の成型体が好適である。
焼成処理は、空気雰囲気下、通常550℃以下の温度で行い、場合によっては300℃以下の比較的低温で焼成処理を行うこともある。また、焼成処理時間は通常0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
得られた本発明の基材は、その用途が灯油基材であることから、以下の性状(a)〜(c)の少なくともひとつを有することが好ましく、より好ましくは全部を有する。
(a)硫黄分:20質量ppm以下
(b)95容量%留出温度(T95):310℃以下
(c)密度(15℃):0.84〜0.87g/cm3
本発明の基材の95容量%留出温度(T95)が310℃以下であれば、燃焼性に優れ好ましい。上記観点から、上記T95は300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましい。その下限値には特に制限はないが、発熱量の向上の点から、通常は260℃である。なお、T95は、JIS K2254の「石油製品−蒸留試験方法」に基づいて測定した蒸留性状から求めた値である。
また、本発明の基材は、その沸点が、燃焼性の点から、190〜330℃であることが好ましく、より好ましくは190〜320℃である。また、煙点を低下させる点から、芳香族分は50容量%以下であることが好ましく、より好ましくは45容量%以下である。また、芯式ストーブのガラス芯への炭素質析出による燃焼不良抑制の観点から、多環芳香族分は8容量%以下であることが好ましく、より好ましくは5容量%以下である。
ここで、脱硫灯油(DK)とは、通常原油を常圧蒸留して得られる直留灯油を水素化脱硫して得られる留分をいう。このDKの性状としては、通常沸点範囲が145〜300℃であり、50容量%留出温度(T50)が185〜220℃であり、硫黄分が20質量ppm以下であることが好ましく、特に10質量ppm以下であることが好ましい。
本発明の灯油組成物には、高い発熱量等の点から、上記DKが、80〜99容量%含有されることが好ましく、より好ましくは80〜95容量%含有される。
(1)硫黄分が10質量ppm以下
(2)煙点が21mm以上
(3)総発熱量が36600J/ml以上
(4)95容量%留出温度(T95)が270℃以下
本発明の灯油組成物中の硫黄分が10質量ppm以下であれば、低硫黄化の点で好ましい。このような観点から、灯油組成物中の硫黄分は、8質量ppm以下であることが好ましく、6質量ppm以下であることがより好ましい。なお、硫黄分の含有量は、上記本発明の基材の場合も含め、JIS K 2541−2の「原油及び石油製品−硫黄分試験方法−微量電量滴定式酸化法」に従って測定した値である。
また、本発明の灯油組成物は、更に15℃における密度が、燃焼性と燃費の両立の点から、0.79〜0.82g/cm3であることが好ましく、0.80〜0.82g/cm3であることがより好ましい。
(5)動粘度(30℃):1.2〜1.8mm2/s
(6)芳香族分:25容量%以下
(7)不飽和分:1容量%以下
(8)飽和分:75容量%以上
(9)蒸留性状:10容量%留出温度(T10) 160〜190℃
30容量%留出温度(T30) 170〜200℃
50容量%留出温度(T50) 180〜220℃
70容量%留出温度(T70) 190〜240℃
90容量%留出温度(T90) 210〜270℃
なお、上記30℃における動粘度は、JIS K 2283の「原油及び石油製品−同粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に従って測定した値である。
また、芳香族分が25容量%以下であれば、煙点を維持しうる点で好ましく、この点で、芳香族分は23容量%以下であることがより好ましい。
なお、上記芳香族分は、上記本発明の基材の場合も含め、石油学会規格JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に従って測定した値である。
なお、上記不飽和分及び飽和分は、いずれも上記石油学会規格JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に従って測定した値である。
ここにおける、基材Aについては、上述の本発明の基材に相当し、その組成、性状及び製造方法等については、前述の通りである。また、DKについても前述の通りである。灯油組成物の各性状についても前述のとおりである。
(1)密度
JIS K 2249に準拠して測定した。
(2)蒸留性状
JIS K 2254により測定した。
(3)煙点
JIS K 2537に準拠して測定した。
(4)芳香族分、不飽和分及び飽和分
石油学会規格JPI−5S−49−97に準拠して測定した。
(5)硫黄分
JIS K 2541−2に準拠して測定した。
(6)総発熱量
JIS K 2279により測定した。
第1表に示した性状及び組成を有する各基材を、第2表に示す割合で混合して、灯油組成物を調製した。その性状及び組成を測定した結果を第2表に示す。
また、基材A〜Cは以下のような方法で製造した。各々の組成、性状は第1表に示す通りである。
(1)水素化精製触媒の調製
国際公開特許WO2002/049963に基づき、チタン含有水溶液を調製した。500℃で4時間焼成することにより求めたTiO2の割合が85質量%である含水酸化チタンの粉末12.7gと70gの脱イオン水を内容積1Lのガラス製ビーカーに入れ、撹拌し、スラリー化した。次に、35質量%過酸化水素水78.7gと26質量%のアンモニア水26.5gを混合した水溶液を上記含水酸化チタンスラリーに添加した。その後、25℃を維持したまま3時間撹拌し、黄緑色で透明なチタン含有水溶液を得た。そこへクエン酸第1水和物28.4gを添加した。その後、30℃以下の温度で6時間保持した後、80〜95℃で12時間保持することにより透明なチタン含有水溶液120gを得た。得られたチタン含有水溶液58.5gを分取し、脱イオン水で希釈して80mLとし、細孔容量0.8mL/gで四つ葉のアルミナ100gに、常圧下で含浸した。その後、ロータリーエバポレーターを用い、減圧下、70℃で1時間乾燥した後に、120℃で3時間乾燥し、最後に空気雰囲気下500℃で4時間焼成し、TiO2が5質量%担持されたアルミナ担体を得た。
水素化分解触媒は、特許公報第2908959号に基づき、ニッケル−モリブデン含有水溶液をアルミナ担体に含浸・担持して調製した。
まず、Na2O含有量が1.2質量%で、SiO2/Al2O3比(モル比)が5.0である粉末状のNH4Y型ゼオライト2kgをロータリーキルン内に投入し、700℃で3時間セルフスチーミング処理を行い、スチーミング処理Y型ゼオライトを得た。このスチーミング処理Y型ゼオライト400gに濃度1.0モル/Lの硝酸第二鉄水溶液4kgと、スチーミング処理Y型ゼオライト1kg当たりHNO3が10モル量となる量の硝酸(濃度1.5モル/L)を添加し、75℃で2時間撹拌した後、ろ過した。得られた固形分を温水洗浄し、鉄含有Y型ゼオライトを得た。得られた鉄含有Y型ゼオライトのSiO2/Al2O3比(モル比)は40で、鉄の担持量は5.0質量%であった。
高圧固定床流通式のベンチ反応器を2基直列に連結し、前段に水素化精製触媒50mL、後段に水素化分解触媒を50mL充填した。
まず、前処理として、ジメチルジスルフィドを添加して硫黄分濃度を2質量%に調整した中東系軽油をベースとする予備硫化油を水素ガスとともに流通させて、温度240℃で4時間、290℃で9時間予備硫化を行った。予備硫化後、硫黄分濃度1.1質量%、密度0.846g/cm3の中東系原油に切り替え、310℃で24時間硫化を行った。
得られた生成油を蒸留により分離し、沸点範囲190℃以上の留分をその終点の温度により基材A、基材B、基材Cとした。
Claims (6)
- 流動接触分解(FCC)装置より得られた流動接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を少なくとも水素化分解した後、分離して得られた沸点範囲190℃以上の留分からなり、硫黄分が20質量ppm以下である基材を1〜20容量%、及び硫黄分が10質量ppm以下である脱硫灯油を80〜99容量%含有し、(1)硫黄分が10質量ppm以下、(2)煙点が21mm以上、(3)総発熱量が36600J/ml以上、かつ(4)95容量%留出温度(T95)が270℃以下である灯油組成物。
- 前記沸点範囲190℃以上の留分からなる基材が、下記性状(b)〜(c)を有する、請求項1に記載の灯油組成物。
(b)95容量%留出温度(T95):310℃以下
(c)密度(15℃):0.84〜0.87g/cm3 - 前記沸点範囲190℃以上の留分からなる基材の硫黄分が10質量ppm以下である請求項1に記載の灯油組成物。
- 更に、(5)15℃の密度が0.79〜0.82g/cm3である、請求項1〜3のいずれかに記載の灯油組成物。
- (イ)流動接触分解(FCC)装置より得られた流動接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を少なくとも水素化分解した後、分離して得られた沸点範囲190℃以上の留分からなり、硫黄分が20質量ppm以下である基材Aを得る工程、(ロ)該基材A 1〜20容量%を、硫黄分が10質量ppm以下である脱硫灯油と混合する工程、を有する、(1)硫黄分が10質量ppm以下、(2)煙点が21mm以上、(3)総発熱量が36600J/ml以上、かつ(4)95容量%留出温度(T95)が270℃以下である灯油組成物の製造方法。
- 脱硫灯油に、流動接触分解(FCC)装置より得られた流動接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を少なくとも水素化分解した後、分離して得られた沸点範囲190℃以上の留分からなり、硫黄分が20質量ppm以下である基材を、全組成物に対し1〜20容量%混合する、灯油の発熱量向上方法。
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