JP5364438B2 - 重油組成物 - Google Patents

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本発明は、硫黄分の含有量が少なく、かつ芳香族分や多環芳香族分の含有量も少なくて環境性能に優れるとともに、寒冷地でも使用可能な低温流動性に優れた重油組成物に関する。
(残油)流動接触分解((R)FCC)装置より生成する流動接触分解軽油(以下、「LCO:Light Cycle Oil」と称することがある。)留分は、比較的重質(沸点180℃以上)であり、オレフィン分、硫黄分、芳香族分・多環芳香族分がいずれも多く、セタン価が低いことから、ガソリン基材、灯油基材、もしくは、軽油基材として活用することが難しいため、従来から重油基材として使用されていた。
しかし、近年、環境問題により重油を燃焼機関に使用した場合の排出ガスが問題となっており、その硫黄分や芳香族分・多環芳香族分の低減、セタン価の向上が求められている。このため、重油基材としてのLCO留分の低硫黄化、低芳香族・低多環芳香族化が課題となっている。
特許文献1には、減圧蒸留軽油、流動接触分解軽油(LCO)、熱分解油および脱れき油から選ばれる1種以上を、CAT(触媒平均温度)400℃以下で水素化分解する工程と、その灯油留分を回収する工程を有することを特徴とする灯油の製造方法が開示され、また、特許文献2には、フィッシャー・トロプシュ(FT)合成油に対し、芳香族分が40容量%以上70容量%以下、硫黄分が30質量ppm以下等の特定の性状を有するFCC装置より得られるLCO留分を組成物全量基準で10〜30容量%含有し、引火点が45℃以上である燃料組成物が記載されている。
特開2003−105349号公報 特開2007−270035号公報
本発明は、このような状況下、重油組成物として好適な基本性能を有するとともに、硫黄分や芳香族分・多環芳香族分を低減することができ、環境性能に優れるとともに、寒冷地でも使用可能な低温流動性に優れた重油組成物を提供するものである。
本発明は、
〔1〕流動接触分解(FCC)装置より得られた流動接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を水素化分解した後、沸点範囲180℃以上の留分を分離して得られた軽油基材を含有し、(1)硫黄分含有量が500質量ppm以下、(2)窒素分含有量が100質量ppm以下、(3)曇り点が−8℃以下、(4)CFPPが−8℃以下、(5)流動点が−15℃以下、(6)セタン指数が40以上、(7)密度(15℃)が0.85〜0.88g/cm3、(8)オレフィン分含有量が1容量%以下、(9)芳香族分含有量が30〜50容量%、である重油組成物、
〔2〕上記沸点範囲180℃以上の留分を分離して得られた軽油基材が、(a)硫黄分含有量が30質量ppm以下、(b)窒素分含有量が10質量ppm以下、(c)曇り点が−10℃以下、(d)CFPPが−10℃以下、(e)流動点が−20℃以下、(f)密度(15℃)が0.86g/cm3以上、(g)多環芳香族分含有量が15容量%以下、である上記〔1〕記載の重油組成物、
〔3〕上記沸点範囲180℃以上の留分を分離して得られた軽油基材を、20〜65容量%含有する、上記〔1〕又は〔2〕記載の重油組成物、
〔4〕更に、重油基材を含有する、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の重油組成物、及び、
〔5〕更に、(10)飽和炭化水素分含有量が50容量%以上、(11)蒸留性状が、10容量%留出温度(T10):200〜230℃、50容量%留出温度(T50):240〜290℃、90容量%留出温度(T90):300〜370℃、である上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の重油組成物、に関する。
本発明によれば、重油組成物として好適な基本性能を有するとともに、硫黄分及び芳香族分・多環芳香族分を低減でき、環境性能に優れ、かつ低温流動性にも優れた重油組成物を提供することができる。
本発明の重油組成物は、流動接触分解(FCC)装置より得られた流動接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を水素化分解した後、沸点範囲180℃以上の留分を分離して得られた軽油基材を含有し、(1)硫黄分含有量が500質量ppm以下、(2)窒素分含有量が100質量ppm以下、(3)曇り点が−8℃以下、(4)CFPPが−8℃以下、(5)流動点が−15℃以下、(6)セタン指数が40以上、(7)密度(15℃)が0.85〜0.88g/cm3、(8)オレフィン分含有量が1容量%以下、かつ(9)芳香族分含有量が30〜50容量%、である。
本発明の重油組成物に用いる軽油基材(以下、「本発明の基材」ということがある)は、流動接触分解(FCC)装置より得られたLCO留分を水素化分解した後、沸点範囲180℃以上の留分を分離して得られるものである。ここで、流動接触分解(FCC)装置とは、通常のFCC装置の外、残油流動接触分解(RFCC)装置も包含するものとし、これらを合わせて、以下「(残油)流動接触分解((R)FCC)装置」という。
(R)FCC装置から得られるLCO留分とは、重質軽油(HGO)、減圧軽油(VGO)、常圧残油(RC)の単独または組み合わせからなる原料油を脱金属、脱硫、脱窒素等の水素化精製処理後、(R)FCC装置に通油することにより接触分解して得られる軽油留分であって、本発明の基材としては、例えば、以下の性状を有するLCO留分を水素化分解した後、沸点範囲180℃以上の留分を分離して得られる軽油留分が好ましい。
(i)エングラー蒸留の10容量%留出温度と90容量%留出温度が170℃〜390℃の範囲であり、好ましくは180〜380℃の範囲にあって、さらに好ましくは190〜370℃の範囲にあるLCO留分
(ii)密度(15℃)が、0.88〜1.00g/cm3であり、好ましくは0.89〜0.99g/cm3であって、さらに好ましくは0.92〜0.98g/cm3であるLCO留分
沸点が上記の範囲にあり、密度が0.88〜1.00g/cm3であれば、水素化分解触媒の劣化を抑制することができる。
また、LCO留分としては、
(iii)硫黄分含有量が0.02〜4.00質量%の範囲にあるLCO留分、
(iv)窒素分含有量が2,000質量ppm以下、好ましくは1,500質量ppm以
下、さらに好ましくは1,000質量ppm以下であるLCO留分、
(v)芳香族分含有量が80容量%以下であるLCO留分、又は
(vi)多環芳香族分含有量が50容量%以下であるLCO留分、
が好ましい。
硫黄分含有量が0.02質量%以上であれば水素化分解触媒が還元されて活性が低下することがなく、また4.00質量%以下であれば水素化分解生成油である本発明の基材中の硫黄分含有量を低減することができる。したがって、硫黄分含有量が0.02質量%未満のLCO留分を水素化分解する場合は、硫化水素、二硫化炭素、ジメチルジスルフィド等の硫黄化合物を添加して使用することが好ましい。
また、LCO留分の窒素分含有量が2,000質量ppm以下であれば、水素化分解触媒の活性が低下する恐れがない。
本発明においては、上記LCO留分を水素化分解処理する。
水素化分解処理は、脱硫、脱窒素等の水素化精製処理とともに行うことが好ましく、水素化精製処理(第一工程)と水素化分解処理(第二工程)を逐次行うこともできるし、水素化精製処理と水素化分解処理を同時に行うこともできる。具体的には、2段以上の反応器を使用した連続反応により行うことが好ましい。
第一工程である水素化精製処理は、
(i)反応温度:250〜420℃(より好ましくは280〜400℃)
(ii)水素分圧:5〜15MPa(より好ましくは6〜12MPa)
(iii)水素/油比:300〜3,000Nm3/kl(より好ましくは500〜2,000Nm3/kl)
(iv)液空間速度(LHSV):0.2〜3.0h-1(より好ましくは0.3〜2.5h-1
の反応条件で行うことが好ましい。なお、ここでいう反応温度は、重量平均温度(WAT)である。
このような反応条件で水素化精製処理を行えば、脱硫・脱窒素等の水素化精製を十分に行うことができる。すなわち、第一工程である水素化精製処理では、原料油であるLCO留分中に含まれる硫黄分や窒素分を水素化脱硫・脱窒素により除去することによって第二工程の水素化分解触媒の活性低下を防止する。また、LCO留分中に含まれる多環芳香族分を部分的に水素化することにより、第二工程における該多環芳香族分の分解を促進する。
上記水素化精製処理において、反応温度が250〜420℃であれば、脱硫反応、脱窒素反応ならびに二環以上の多環芳香族分の部分水素化反応が良好に進行し、第二工程における分解反応を促進することができる。
また、水素分圧が5〜15MPaであれば、前記部分水素化反応で必要な水素量及びクエンチに必要な水素量が反応系内に確保でき、過剰な水素化が進行したり、水素化分解触媒が劣化する恐れが無い。
更に、水素/油比が300〜3,000Nm3/klであれば、水素化分解処理に必要な水素量、触媒の冷却に必要な水素量を適切に確保でき、また経済性も確保できる。
また、液空間速度(LHSV)が0.2〜3.0h-1であれば、前記良好な反応温度を保つことができる。
上記第一工程に用いる水素化精製触媒としては、通常、周期表の第6族、第8〜10族金属のうちの少なくとも一種を耐火性無機酸化物担体に担持した触媒が好ましい。
耐火性無機酸化物としては、特に制限はないが、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−ボリア、アルミナ−ボリア、粘土鉱物及びそれらの混合物等が好適に使用される。これらの中でも、アルミナ、シリカ−アルミナが好適である。また、シリカ−アルミナとしては、シリカの含有量が50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下のものが好ましい。
上記耐火性無機酸化物担体の比表面積は、100〜400m2/gが好ましく、150〜350m2/gがより好ましい。また、平均細孔径は5〜30nmの範囲であり、6〜15nmの範囲が好適である。
比表面積が100m2/gより小さいと水素化精製活性成分を高分散に担持することができず、水素化精製活性が低いという問題がある。一方、比表面積が400m2/gを超える場合は、水素化精製触媒の細孔径が小さくなりすぎ、原料であるLCO留分が水素化精製触媒の内部まで十分に到達しなくなるため、水素化精製活性が低くなるという問題がある。
耐火性無機酸化物担体の形状としては特に限定されないが、円柱、三つ葉、四葉等の形状の成型体が好適である。
さらに、耐火性無機酸化物担体に水溶性チタン化合物を含浸・担持したものも好適に使用される。チタンの担持量は、1〜10質量%が好ましく、2〜5質量%がより好ましい。チタンの担持量が1質量%未満では水素化精製活性向上の効果が小さく、10質量%を超える担持量としても水素化精製活性の向上に寄与しない。
上記水素化精製触媒においては、水素化精製活性成分としては、例えば、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等を好適に用いることができる。これら水素化精製活性成分を耐火性無機酸化物担体に担持するための原料化合物は、モリブデン化合物としては三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム等が好ましく、タングステン化合物としては、三酸化タングステン、タングステン酸アンモニウム等が好ましい。また、コバルト化合物としては、炭酸コバルト、塩基性炭酸コバルト、硝酸コバルト等が好ましく、ニッケル化合物としては、炭酸ニッケル、塩基性炭酸ニッケル、硝酸ニッケル等が好ましい。
さらに、水素化精製活性を向上させる成分としてリンを担持させることができる。リン化合物としては、五酸化リン、正リン酸等の各種リン酸が使用される。
担持量としては、水素化精製触媒に対し、酸化物基準で、モリブデン、タングステンが10〜40質量%、コバルト、ニッケルが1〜10質量%、リンが1〜10質量%が好適である。
中でも、活性金属成分としてモリブデン、コバルト、ニッケルのうちの少なくとも一種、特にモリブデンとニッケル、もしくはモリブデンとコバルトを組合せたものが好ましい。
上記水素化精製活性成分は、通常含浸法により耐火性無機酸化物担体に担持される。水素化精製活性成分である周期表第6族、第8〜10族金属ならびにリンは別々に耐火性無機酸化物担体に含浸して担持しても良いが、同時に含浸・担持するのが効率的である。
また、水素化精製活性成分は、通常、水素化精製活性成分を含む化合物を脱イオン水に溶解させた含浸液として耐火性無機酸化物担体に含浸・担持させることができる。含浸液中の水素化精製活性成分の含有量は、目標とする担持量から計算で求める。水素化精製活性成分を含む化合物を脱イオン水に溶解させた後、その含浸液の液量を、担持する耐火性無機酸化物担体の吸水量に等しくなるように調整した後、含浸・担持させる。
上記含浸液には、水素化精製活性成分を含む化合物の溶解性や耐火性無機酸化物担体内部における分布を改善するために有機酸を添加してもよい。有機酸としては、クエン酸やリンゴ酸が好適である。
さらに、水素化精製活性成分を耐火性無機酸化物担体に高分散させるために、界面活性剤等の水溶性有機物を添加するのが好ましい。添加する水溶性有機物としては、分子量が90〜10,000のポリエチレングリコールが好適である。上記ポリエチレングリコールを添加する場合、その添加量は耐火性無機酸化物担体に対して、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%である。添加量が少なすぎても多すぎても水素化精製活性成分を耐火性無機酸化物担体に高分散できないからである。
上記水素化精製活性成分を耐火性無機酸化物担体に含浸した後、水素化精製活性成分を耐火性無機酸化物担体に定着させるために通常焼成処理を行う。水素化精製活性成分を逐次的に含浸する場合には、含浸の度に焼成処理を行っても良いし、複数の含浸を行った後、最後に焼成処理を行うこともできる。
焼成処理は、空気雰囲気下、通常550℃以下の温度で行い、場合によっては300℃以下の比較的低温で焼成処理を行うこともある。また、焼成処理時間は通常0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
本発明の第二工程である水素化分解処理は、好ましくは、結晶性アルミノシリケート含有触媒を用いて、第一工程で部分的に水素化されたLCO留分中の多環芳香族化合物を軽質な炭化水素に分解して行うことができる。これによって、多環芳香族化合物は、一環の芳香族化合物と飽和炭化水素化合物に分解される。また、この第二工程の水素化分解処理では、多環芳香族化合物の水素化分解とともに、分子量の大きい直鎖の飽和炭化水素化合物の水素化分解も起こり、低温流動性に優れた、軽質な分岐飽和炭化水素化合物を生成する。
本発明の水素化分解処理においては、以下のような条件で水素化分解反応を行うことが好ましい。
(v)反応温度:320〜440℃(より好ましくは330〜430℃)
(vi)水素分圧:5〜15MPa(より好ましくは6〜12MPa)
(vii)水素/油比:1、000〜3,000Nm3/kl
(viii)液空間速度(LHSV):0.3〜3.0h-1
このような条件で水素化分解処理を行えば、多環芳香族化合物と分子量の大きい直鎖の飽和炭化水素化合物をより軽質で、重油組成物として優れた性状を有する化合物に転化することができる。
反応温度が低いとLCO留分の分解率が低くなり、得られる軽油留分の低温流動性などの性状が原料LCO留分よりも悪化する場合がある。また、反応温度が高いとLCO留分が過分解され、得られる軽油留分の生産量が低下するのみならず、水素化分解触媒の劣化が顕著になる。
水素分圧や水素/油比が上記範囲の場合、水素化分解反応で生成する熱をクエンチするのに必要な水素量を確保でき、触媒の劣化を防ぎつつ、水素化分解反応が進みすぎることも抑制できる。
また、液空間速度(LHSV)が低すぎると、水素化分解工程においても過剰な水素化が進行し、著しく発熱する恐れが有る。LHSVが高すぎるとLCO留分の水素化分解を起こさせるために反応温度が高くなり、触媒の劣化が進行する。
本発明に使用される水素化分解触媒としては、SiO2/Al23(モル比)が20以上80以下の結晶性アルミノシリケートを含む耐火性無機酸化物からなる担体に、水素化分解活性成分を担持した触媒が好ましい。
結晶性アルミノシリケート以外の耐火性無機酸化物としては、例えば、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−ボリア、アルミナ−ボリア、粘土鉱物などが挙げられ、通常これらから選ばれる1種以上を用いる。
一方、SiO2/Al23(モル比)が20以上80以下の結晶性アルミノシリケートとしては、β型ゼオライトや超安定Y型ゼオライトが好ましく、特に超安定Y型ゼオライトが好ましい。
前記超安定Y型ゼオライトとしては、SiO2/Al23モル比が25以上で、格子定数が2.440nm以下、及び結晶化度が50%以上のものが特に好適である。
中でも、アンモニアTPD法により測定した酸量が0.2mmol/g以上のものが好ましい。
このような、超安定Y型ゼオライトは、水素化分解反応において、コーク劣化を生ずることがなく、良好な水素化分解反応を行うことができる。
上記超安定Y型ゼオライトの製造方法は、通常Y型ゼオライトを水蒸気下にてスチーミング処理し、次いで酸処理を行う方法が好適である。この場合、スチーミング処理は540〜810℃で行い、酸処理は、硫酸、硝酸、塩酸などの鉱酸を加えて脱アルミニウムおよび脱落アルミニウムの洗浄を行う方法が好ましい。この酸処理において、遷移金属の酸性塩を加えて、ゼオライトを修飾することができる。その中で、鉄の硫酸塩または硝酸塩を加えて混合攪拌することにより、鉄の担持ならびに脱アルミニウムおよび脱落アルミニウムの洗浄を行ってもよい。
耐火性無機酸化物担体中における前記SiO2/Al23(モル比)が20以上80以下の結晶性アルミノシリケートの含有割合は、20〜80質量%であることが好ましく、30〜75質量%であることがより好ましく、40〜70質量%であることが特に好ましい。耐化物性担体中における結晶性アルミノシリケートの含有割合が20質量%以上であることによって、適切な水素化分解能を得ることができ、結晶性アルミノシリケートの含有割合が80質量%以下であれば、LCO留分の過分解を抑制できる。
耐火性無機酸化物担体の形状としては特に限定されないが、円柱、三つ葉、四葉等の形状の成型体が好適である。
水素化分解触媒は、上記担体に、周期表第6族金属、第8〜10族金属のうちの少なくとも一種の活性金属成分を担持したものが好ましい。
活性金属成分としては、特に、周期表第6族金属及び第8〜10族金属をそれぞれ少なくとも一種担持したものが好ましい。周期表第6族金属としては、モリブデン、タングステンが好適に挙げられ、特にモリブデンが好ましい。また、周期表第8〜10族の金属としては、コバルト又はニッケルが挙げられる。
これらの活性金属成分の担持量は、周期表第6族金属の場合は、通常金属酸化物として触媒基準で、3〜40質量%、さらに好ましくは5〜35質量%である。第8〜10族金属の場合は、通常1〜15質量%、さらに好ましくは2〜10質量%である。
上記活性金属成分は、通常含浸法により耐火性無機酸化物担体に担持される。活性金属成分である周期表第6族金属、第8〜10族金属は別々に耐火性無機酸化物担体に含浸して担持しても良いが、同時に含浸・担持するのが効率的である。
また、活性金属成分は、通常、活性金属成分を含む化合物を脱イオン水に溶解させた含浸液として耐火性無機酸化物担体に含浸・担持される。含浸液中の活性金属成分の含有量は、目標とする担持量から計算で求める。活性金属成分を含む化合物を脱イオン水に溶解させた後、その含浸液の液量を、担持する耐火性無機酸化物担体の吸水量に等しくなるように調整した後、含浸・担持させる。
上記含浸液には、活性金属成分を含む化合物の溶解性や耐火性無機酸化物担体内部における分布を改善するために有機酸やリン化合物を添加してもよい。有機酸やリン化合物は別々に添加しても良いし、同時に添加しても良い。有機酸としては、クエン酸やリンゴ酸が好適である。また、リン化合物としては、正リン酸、五酸化リン等の各種リン酸が好適に使用できる。
さらに、活性金属成分を耐火性無機酸化物担体に高分散させるために、界面活性剤等の水溶性有機物を添加するのが好ましい。添加する水溶性有機物としては、分子量が90〜10,000のポリエチレングリコールが好適である。上記ポリエチレングリコールを添加する場合、その添加量は耐火性無機酸化物担体に対して2〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%である。添加量が少なすぎても多すぎても水素化分解活性成分を耐火性無機酸化物担体に高分散できないからである。
上記活性金属成分を耐火性無機酸化物担体に含浸した後、活性金属成分を担体に定着させるために通常焼成処理を行う。活性金属成分を逐次的に含浸する場合には、含浸の度に焼成処理を行っても良いし、複数回の含浸を行った後、最後に焼成処理を行うこともできる。
焼成処理は、空気雰囲気下、通常550℃以下の温度で行う。また、焼成処理時間は通常0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
本発明においては、上記水素化分解処理の後、沸点範囲180℃以上の留分を分離して本発明の基材を得る。沸点範囲180℃以上の留分の分離は、通常の蒸留法を用いて行うことができる。
得られた本発明の基材は、その用途が重油基材であることから、以下の性状(a)〜(g)の少なくとも一つを有することが好ましく、より好ましくは性状(a)〜(c)のいずれかを有することが好ましく、更には、性状(a)〜(c)のすべて、特に、性状(a)〜(g)のすべてを有することが好ましい。
(a)硫黄分含有量が30質量ppm以下
(b)窒素分含有量が10質量ppm以下
(c)曇り点が−10℃以下
(d)CFPPが−10℃以下
(e)流動点が−20℃以下
(f)密度(15℃)が0.86g/cm3以上
(g)多環芳香族分含有量が15容量%以下
本発明の基材の硫黄分含有量が30質量ppm以下であれば、重油組成物の低硫黄化の観点から好ましい。このような観点から、その硫黄分含有量は、10質量ppm以下であることが好ましく、5質量ppm以下であることがより好ましい。
本発明の基材は、15℃における密度が0.86g/cm3以上であれば、燃焼性が良好に維持でき、高カロリーであるため重油基材として好ましい。上記観点から、密度は0.86〜0.90g/cm3であることが好ましく、0.87〜0.89g/cm3であることがより好ましい。
重油組成物の燃焼排ガス中における総炭化水素分(THC)や芳香族分の点からは、本発明の基材の芳香族分含有量は50容量%以下であることが好ましく、より好ましくは45容量%以下、更に好ましくは40容量%以下である。また、同様の観点から、多環芳香族分含有量は15容量%以下であることが好ましく、より好ましくは10容量%以下、更に好ましくは6容量%以下である。
上記本発明の基材は、低硫黄化、低窒素化の点から、本発明の重油組成物中に20〜65容量%含有されることが好ましく、30容量%以上含有されることがより好ましく、更に好ましくは40〜65容量%である。
本発明の重油組成物は、任意の方法で得ることができる。例えば、本発明の基材と後述の重油基材を適宜選択して配合し、さらに、いわゆる残留炭素分付与剤を配合することにより調製することができる。
上記本発明の基材とともに用いることができる重油基材としては、例えば、直留軽質軽油(又は脱硫軽質軽油)、直留重質軽油(又は脱硫重質軽油)、流動接触分解軽油、水素化脱硫減圧軽油、水素化分解軽油、直脱軽油等が挙げられる。これらの基材は1種又は2種以上を配合して調整すればよい。
残留炭素分付与剤としては、常圧残油、減圧残油、脱硫残油、エキストラクトなどが挙げられる。これらの残留炭素分付与剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて配合する。この残留炭素分付与剤の配合量は、重油組成物の10%残留炭素分が0.21質量%以上、好ましくは0.21〜1.0質量%になるように調整して配合する。
また、本発明の重油組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を適宜配合することができる。このような添加剤としては、例えば、セタン価向上剤、流動性向上剤、酸化防止剤、清浄剤、金属不活性化剤、防錆剤、腐食防止剤、帯電防止剤などが挙げられる。これらの添加剤は1種又は2種以上添加することができる。その添加量は状況に応じて適宜選定すればよいが、通常は添加剤の合計量として重油組成物に対して0.5質量%以下とすることが好ましい。
本発明の重油組成物は、以下の(1)〜(9)の性状を有する。
(1)硫黄分含有量が500質量ppm以下
(2)窒素分含有量が100質量ppm以下
(3)曇り点が−8℃以下
(4)CFPPが−8℃以下
(5)流動点が−15℃以下
(6)セタン指数が40以上
(7)密度(15℃)が0.85〜0.88g/cm3
(8)オレフィン分含有量が1容量%以下
(9)芳香族分含有量が30〜50容量%
硫黄分含有量が500質量ppm以下であれば重油組成物の低硫黄化及び燃焼排出ガス中の煤濃度を抑制する点で好ましい。このような観点から、重油組成物中の硫黄分は300質量ppm以下であることが好ましく、100質量ppm以下であることが特に好ましい。なお、硫黄分含有量は、上記本発明の基材の場合も含め、JIS K 2541−2の「原油及び石油製品−硫黄分試験方法−微量電量滴定式酸化法」に従って測定した値である。
本発明の重油組成物においては、窒素分含有量が100質量ppm以下であれば、燃焼排ガス中のNOx低減の点から好ましく、80質量ppm以下であることがより好ましい。ここで、窒素分の含有量はJIS K 2609「原油及び石油製品−窒素分試験方法」に従って測定した値である。
曇り点が−8℃以下であれば、低温時においても重油組成物を燃焼機関に安定して供給することができる点で好ましい。上記観点から、上記曇り点は、−9℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましい。その下限値には、特に制限はない。
また、CFPP及び流動点については、上記曇り点と同様に低温時の安定供給性の点から、それぞれ−8℃以下、−15℃以下であることが好ましい。その下限値についてはそれぞれ特に制限はない。なお、曇り点と流動点は、JIS K2269の「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」によって測定される値であり、CFPPはJIS K2288の「石油製品−軽油−目詰まり点試験方法」で測定される値である。
セタン指数が40以上であれば、燃焼性が良好であり好ましい。上記観点から、セタン指数は41以上であることが好ましく、42以上であることがより好ましい。なお、セタン指数は、JIS K2280の「オクタン価及びセタン価試験方法ならびにセタン指数算出方法」に準拠して次の式によって測定され算出される値である。
セタン指数(C)=0.49083+1.06577(X)−0.0010522(X)2
X=97.833(logA)2+2.2088BlogA+0.01247B2−423.511 logA−4.7808B
+419.59
A:(9/5)[101.3kPa(760mmHg)における50%留出温度(℃)]+32
B:API度
なお、101.3kPa(760mmHg)における50%留出温度(℃)は、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験法」によって測定し、API度は、JIS K 2249「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」によって15℃密度から換算して求める値である。
また、本発明の重油組成物は、更に15℃における密度が、カロリーの点から、0.85〜0.88g/cm3であることが好ましく、0.86〜0.88g/cm3であることがより好ましい。
なお、上記15℃における密度は、上記本発明の基材の場合も含め、JIS K 2249の「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」に従って測定した値である。
また、オレフィン分含有量が、1容量%以下であれば、酸化安定性が良好である。オレフィン分含有量は、石油学会規格JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に従って測定した値である。
また、芳香族分含有量が30〜50容量%であれば、重油組成物の燃焼排ガス中の総炭化水素分(THC)や芳香族分・多環芳香族分を低減できる点で好ましく、この点で、芳香族分は30〜40容量%であることがより好ましい。
なお、上記芳香族分含有量は、上記本発明の基材の場合も含め、石油学会規格JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に従って測定した値である。
本発明の重油組成物は、更に以下の性状(10)及び(11)の少なくとも一つを有することが好ましく、より好ましくはその全てを有する。
(10)飽和炭化水素分含有量が50容量%以上
(11)10容量%留出温度(T10):200〜230℃
50容量%留出温度(T50):240〜290℃
90容量%留出温度(T90):300〜370℃
本発明の重油組成物は、その飽和炭化水素分、例えばパラフィン分、シクロパラフィン分等の成分が50容量%以上であることが、燃焼性や長期貯蔵安定性の点で好ましい。この点から、飽和分は55容量%以上であることがより好ましい。
なお、飽和炭化水素分は、上記石油学会規格JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に従って測定した値である。
本発明の重油組成物は、その蒸留性状において、10容量%留出温度(T10)が200〜230℃、50容量%留出温度(T50)が240〜290℃、90容量%留出温度(T90)が300〜370℃であることが好ましい。
次に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。なお、重油組成物の性状は次の方法に従って求めた。
〔重油組成物の性状と組成〕
(1)密度
JIS K 2249に準拠して測定した。
(2)蒸留性状
JIS K 2254により測定した。
(3)硫黄分
JIS K 2541−2に準拠して測定した。
(4)窒素分
JIS K 2609に準拠して測定した。
(5)流動点
JIS K 2269に準拠して測定した。
(6)目詰まり点(CFPP)
JIS K 2288に準拠して測定した。
(7)曇り点(CP)
JIS K 2269に準拠して測定した。
(8)セタン指数
JIS K 2280に準拠して測定した。
(9)芳香族分、多環芳香族分、オレフィン分及び飽和分
石油学会規格JPI−5S−49−97に準拠して測定した。
実施例1〜9及び比較例1〜9
表1に示した性状及び組成を有する基材を、表2及び表3に示す割合で混合して、重油組成物を調製した。その性状及び組成を表2及び表3に示す。
また、本発明の基材は以下の方法で製造した。各基材の性状は表1に示す通りである。
〔本発明の基材の製造〕
(水素化精製触媒の調製)
国際公開特許WO2002/049963に基づき、チタン含有水溶液を調製した。500℃で4時間焼成することにより求めたチタン酸化物(TiO2)の割合が85質量%であるチタン含水酸化物粉末12.7gと70gの純水を内容積1Lのガラス製ビーカーに入れ、攪拌しスラリー化した。次に、35質量%過酸化水素水78.7gと26質量%のアンモニア水26.5gを混合した水溶液を該含水酸化チタンスラリーに添加した。その後、25℃を維持したまま3時間攪拌し黄緑色で透明なチタン含有水溶液を得た。そこへ、クエン酸第1水和物28.4gを添加した。その後、30℃以下の温度で6時間保持した後、80〜95℃で12時間保持することによりpH6.2で透明なチタン含有水溶液120gを得た。得られたチタン含有水溶液を58.5g分取し、純水で希釈し80ミリリットルとし、細孔容量0.8ミリリットル/gで四葉のアルミナ100gに常圧下で含浸(ポアフィリング法)した。その後、ロータリーエバポレータを用い減圧下で70℃で1時間乾燥した後に、120℃で3時間乾燥し、最後に500℃で4時間焼成し、TiO2−5質量%担持アルミナ担体を得た。
次に、500℃で4時間焼成することにより求めたニッケル酸化物(NiO)の割合が58.4質量%である塩基性炭酸ニッケル75.3g(NiOとして44.0g)、三酸化モリブデン220g、正リン酸34.5g(P25として29.3g)に純水を250ミリリットル加え攪拌しながら80℃で溶解し、室温にて冷却後、純水にて264ミリリットルに定容したニッケル・モリブデン含浸液を調製した。該含浸液を60ミリリットル採取し、トリエチレングリコール6gを添加して該TiO2−5質量%担持アルミナ担体100gの吸水量に見合うように純水にて希釈・定容し、常圧にて含浸し、70℃で1時間ロータリーエバポレータを用いて減圧下で乾燥した後、120℃で16時間熱処理し、水素化精製触媒1を調整した。水素化精製触媒1の組成は、アルミナ−57質量%、TiO2−3質量%、NiO−6質量%、MoO3−30質量%、P25−4質量%であった。
(水素化分解触媒の調製)
水素化分解触媒を、特許公報第2908959号を参照して、下記のようにニッケル・モリブデンを含む金属溶液をアルミナ担体に含浸担持して調製した。
Na2O含量が1.2質量%、SiO2/Al23比(モル比)が5.0である粉末状のNaNH4Y型ゼオライト2kgをロータリーキルン内に投入し、700℃で3時間セルフスチーミング処理を行い、スチーミングゼオライトを得た。このスチーミングゼオライト400gに濃度1.0モル/リットルの硝酸第二鉄水溶液4kgと、該ゼオライト1kg当たりHNO3が10モル量となる量の硝酸(濃度1.5モル/リットル)を添加し、攪拌下で75℃にて2時間処理した。次いで、ろ過し、得られた固体分を温水にて数回洗浄し、所定の鉄含有酸処理ゼオライトをスラリー状態で回収し、改質ゼオライトを得た。改質ゼオライトのSiO2/Al23(モル比)は40、格子定数は2.432、比表面積は736m3/g、Fe23の担持量は2.2質量%、Na2Oの含有量は0.13質量%であった。酸量は0.48mmol/gであった。
なお、ゼオライトの酸量は、アンモニア昇温脱離法(NH3−TPD)法で、以下のようにして測定した。
ゼオライトを測定セルに充填し、Heガスフローで400℃、2時間処理して吸着水の除去を行った。100℃で0.5%NH3/Heガスを60分流して吸着を行った後、Heに室温の飽和水蒸気(25Torr)を同伴させ、100℃で4時間を流通させる。その後、Heを減圧下(140Torr)にて100℃で60分流通させた。次いで、10〜700℃まで20℃/分で昇温して、脱離してくるNH3の定量を質量検出計にて行った。
また、硫酸アルミニウムの水溶液とアンモニア水の水溶液を数回に分けて交互に添加することによって得たベーマイトゲルを約90℃にて約12時間熟成することによって、アルミナスラリーを調製した。次に、該改質ゼオライトスラリー(水分量70質量%)に、該アルミナスラリー(水分量80質量%)を、該改質ゼオライトと該アルミナの割合が乾燥物基準の質量比でほぼ65対35となる割合で添加し、この混合スラリーを70〜80℃の温度に加熱しながら2時間ニーダーによって混合(混和)した。こうして得た混合物の水分量を成型しやすい程度に調整した後、成型し、有効径15mmの円柱状の成型物とし、これを約110℃で4時間乾燥し、さらに550℃にて3時間空気気流中で焼成し、所望のゼオライト含有組成物を得た。該ゼオライト含有組成物に、モリブデン酸アンモニウムと硝酸ニッケルの水溶液を用いてモリブデン成分とニッケル成分を含浸・担持した。この後、担持物を110℃の温度にて4時間乾燥し、さらに550℃にて3時間空気気流中で焼成し、所望の水素化分解触媒1を得た。水素化分解触媒1の組成は、該改質ゼオライト(鉄を含む)56質量%、アルミナ30質量%、NiO−4質量%、MoO3−10質量%であった。水素化分解触媒1の細孔容積は0.45ミリリットル/gであった。
(水素化精製処理及び水素化分解処理)
高圧固定床流通式の反応器を2基直列に連結し、水素化精製処理と、引き続いて水素化分解処理を実施した。触媒は、前段反応器(水素化精製反応器)に水素化精製触媒1を50ミリリットル、後段反応器(水素化分解反応器)に水素化分解触媒1を50ミリリットル充填した。原料油は水素ガスとともに反応管の上段から導入するダウンフロー形式で流通させて反応評価を行った。前処理として、DMDS(ジメチルジスルフィド)を添加し硫黄濃度を2.0質量%に調整した、密度0.844g/cm3の中東系軽油をベースとする予備硫化油を水素ガスとともに流通させて温度240℃で4時間、290℃で9時間予備硫化を行なった。予備硫化後、硫黄分1.1質量%、密度0.846g/cm3の中東系軽油に切り替え、310℃で24時間原料油硫化を行なった。
次に、LCO原料油に切り替えて、水素化精製処理及び水素化分解処理を行なった。反応圧力は水素化分解反応器出口で6.9MPa、LCO原料油の通油量は80ミリリットル/h一定とし、水素/原料油比は水素化反応器入口で2,000Nm3/キロリットルとした。水素化精製触媒1については、反応温度を349.8℃一定とし、LHSV(液空間速度)を1.6h-1とした。水素化分解触媒1については、LCO原料油の水素化分解率を調整するために、反応温度を399.6℃または406.2℃、あるいは触媒充填量を50ミリリットル(LHSV=1.6h-1)、30ミリリットル(LHSV=2.7h-1)または15ミリリットル(LHSV=5.3h-1)としてベンチ試験を行なった。
〔生成油の分析〕
水素化分解触媒1通過後のガスについては流量を測定するとともにガスクロにて分析し、生成油については全量回収・秤量し、物質収支をとった。生成油については、1リットル〜4リットル回収し、15段蒸留を行い、LPG、軽質ガソリン(〜90℃)、重質ガソリン(90〜190℃)、軽油(190℃〜)の各留分に分留し、各々の質量を秤量した。分解率は190℃−留分への転化の度合いを示すもので、軽油留分との関係は、分解率=100−軽油留分収率として定義した。
〔本発明の基材A〜Dの製造〕
表1記載のLCO留分を上記運転条件にて、水素化精製処理及び水素化分解処理を行った。水素化分解触媒1の反応温度を406.2℃とし、LHSVをそれぞれ2.7h-1、1.6h-1とすることにより、LCOの分解率をそれぞれ41.1質量%、76.2質量%に調整し、基材B及びAをそれぞれ得た。基材Bは原料LCO留分と比較して流動点は同等であるが、CFPP、曇り点が低下し、さらに硫黄分、窒素分が著しく低く、基材として改善されたことがわかる。基材Aは、LCO留分の分解率をより高めたものであるが、原料LCO留分と比較して流動点、CFPP、曇り点等の低温流動性がさらに改善され、硫黄分、窒素分もより改善されたことがわかる。
また、水素化分解反応温度を399.6℃に下げ、水素化分解触媒1を15ミリリットル充填し、LHSV=5.3h-1のベンチ実験を実施した。LHSVを5.3h-1とすることにより、原料LCO留分の分解率を13.4質量%に調整して基材Dを調製した。さらに水素化分解反応の反応温度を399.6℃のままで水素化分解触媒1のLHSVを2.7h-1とすることにより、分解率を32.8質量%に調整した基材Cを調製した。原料LCO留分の分解率を13.4質量%に調整した基材Dは、原料LCO留分より流動点が上昇しており、水素化分解処理によりかえって低温流動性が悪化したことがわかる。
Figure 0005364438
Figure 0005364438
Figure 0005364438
*1 DK:脱硫灯油
*2 DGO:脱硫軽油
*3 DSGO:直脱軽油
*4 DSRC:直脱残油

本発明の重油組成物である実施例1〜9の組成物は、いずれも低硫黄、低窒素で、かつ低温流動性に優れるものであった。
本発明の重油組成物は、重油として好適な基本性能を有すると共に、低硫黄化及び低窒素化が可能であることからA重油として好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. 流動接触分解(FCC)装置より得られた流動接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を水素化分解した後、沸点範囲180℃以上の留分を分離して得られた、以下の性状(a)〜(g)を有する軽油基材を20〜65容量%含有し、更に、重油基材及び残留炭素分付与剤を含有する、以下の性状(1)〜(9)を有する重油組成物。
    (a)硫黄分含有量が30質量ppm以下
    (b)窒素分含有量が10質量ppm以下
    (c)曇り点が−10℃以下
    (d)CFPPが−10℃以下
    (e)流動点が−20℃以下
    (f)密度(15℃)が0.86g/cm 3 以上
    (g)多環芳香族分含有量が15容量%以下
    (1)硫黄分含有量が500質量ppm以下
    (2)窒素分含有量が100質量ppm以下
    (3)曇り点が−8℃以下
    (4)CFPPが−8℃以下
    (5)流動点が−15℃以下
    (6)セタン指数が40以上
    (7)密度(15℃)が0.85〜0.88g/cm3
    (8)オレフィン分含有量が1容量%以下
    (9)芳香族分含有量が30〜50容量%
  2. 更に、下記性状(10)及び(11)を有する、請求項1に記載の重油組成物。
    (10)飽和炭化水素分含有量が50容量%以上
    (11)蒸留性状が、
    10容量%留出温度(T10)が200〜230℃
    50容量%留出温度(T50)が240〜290℃
    90容量%留出温度(T90)が300〜370℃
  3. 前記LCO留分が以下の性状(i)、(ii)を有するものである、請求項1又は2に記載の重油組成物。
    (i)エングラー蒸留の10容量%留出温度と90容量%留出温度が170℃〜390℃の範囲にある
    (ii)密度(15℃)が、0.88〜1.00g/cm 3 である
  4. 前記LCO留分の水素化分解率が32.8〜76.2質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の重油組成物。
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