JP5537780B2 - 軽油組成物 - Google Patents

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  • Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)

Description

本発明は発熱量の高い軽油組成物に関する。
GTL軽油(Gas To Liquid軽油或いはFT(フィッシャー・トロプシュ)合成軽油)は硫黄分、芳香族分を殆ど含まず環境対応型ディーゼル燃料として注目されているが、発熱量が低いことが課題である。
一方、流動接触分解(FCC)装置より生成する接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分は、比較的重質(沸点180℃以上)であり、オレフィン分、硫黄分、多環芳香族分がいずれも多く、セタン価が低いことから、ガソリン基材、灯油基材、もしくは、軽油基材として活用することが難しいため、従来は、重油基材として使用されていた。
しかし、近年、環境問題により重油を燃焼機関に使用した場合の排出ガスが問題となっており、その硫黄分、多環芳香族分の低減、セタン価の向上が求められている。このため、LCO留分の有効活用が課題となっている。
特許文献1には、FT合成油に対し、芳香族分が40容量%以上70容量%以下、硫黄分が30質量ppm以下等特定の性状を有するFCC装置より得られる石油系炭化水素混合物を組成物全量基準で10〜30容量%含有した、引火点が45℃以上である燃料組成物が記載されている。
特開2007−270035号公報
本発明は、このような状況下、軽油組成物として好適な基本性能を有すると共に、低硫黄分を維持し環境性能に優れ、かつ発熱量が高い軽油組成物を提供するものである。
本発明は、
〔1〕流動接触分解(FCC)装置より得られた接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を少なくとも水素化分解した後、分離して得られた沸点範囲190℃以上の留分からなり、硫黄分が1質量ppm以下である基材を25〜55容量%、及びGTL(Gas to Liquid)軽油を45〜75容量%含有し、下記の性状(1)〜(9)を有する軽油組成物、
(1)硫黄分:1質量ppm以下
(2)セタン指数:60以上
(3)総発熱量:37200J/ml以上
(4)密度(15℃):0.81〜0.84g/cm 3
(5)動粘度(30℃):2.5〜3.5mm 2 /s
(6)芳香族分:25容量%以下
(7)不飽和分:1容量%以下
(8)飽和分:75容量%以上
(9)蒸留性状:10容量%留出温度(T10) 190〜230℃
30容量%留出温度(T30) 230〜260℃
50容量%留出温度(T50) 260〜290℃
70容量%留出温度(T70) 290〜310℃
90容量%留出温度(T90) 310〜340℃
〕上記沸点範囲190℃以上の留分からなる基材が、(b)芳香族分が55容量%以下、かつ(c)多環芳香族分が10容量%以下である、上記〔1〕に記載の軽油組成物、
〕(イ)流動接触分解(FCC)装置より得られた接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を少なくとも水素化分解した後、分離して得られた沸点範囲190℃以上の留分からなり、硫黄分が1質量ppm以下である基材Aを得る工程、(ロ)該基材A 20〜55容量%を、GTL(Gas To Liquid)軽油45〜75容量%と混合する工程、を有する、(1)硫黄分が質量ppm以下、(2)セタン指数が60以上、かつ(3)総発熱量が37200J/ml以上である軽油組成物の製造方法、及び
〕GTL(Gas To Liquid)軽油に、流動接触分解(FCC)装置より得られた接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を少なくとも水素化分解した後、分離して得られた沸点範囲190℃以上の留分からなり、硫黄分が1質量ppm以下である基材を、全組成物に対し20〜55容量%配合する、軽油の発熱量向上方法、
に関する。
本発明によれば、軽油組成物として好適な基本性能を有すると共に、低硫黄分を維持し、環境性能に優れ、かつ発熱量が高い軽油組成物を提供することができる。
本発明の軽油組成物は、流動接触分解(FCC)装置より得られた接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を少なくとも水素化分解した後、分離して得られた沸点範囲190℃以上の留分からなる基材を25〜55質量%含有し、(1)硫黄分が5質量ppm以下、(2)セタン指数が60以上、かつ(3)総発熱量が37200J/ml以上であるものである。
本発明の軽油組成物に用いる上記基材(以下、「本発明の基材」ということがある)は、FCC装置より得られたLCO留分を少なくとも水素化分解した後、分離して得られた沸点範囲190℃以上の留分からなるものである。
FCC装置より得られるLCO留分は、主に原油から得られる重質軽油、減圧軽油、常圧残油、減圧残油、脱瀝油等の留分並びに沸点が190℃以上の分解留分の一種以上の混合油を減圧軽油水素化脱硫装置や重油水素化脱硫装置等で水素化脱硫処理した留分をFCC装置において流動接触分解して得られるるものであれば、特に制限はないが、一般に、沸点範囲180〜390℃、密度0.88〜0.99g/cm3、硫黄分0.1〜0.6質量%、芳香族分60〜90容量%、多環芳香族分30〜80容量%の性状を有するものである。
本発明においては、上記LCO留分を少なくとも水素化分解処理する。水素化分解処理は、通常、触媒として、水素化分解活性成分である周期表第6族、第8〜10族金属のうちの少なくとも一種を耐火性無機酸化物担体に担持した触媒や、さらにリンを担持した触媒を用いることができる。
上記水素化分解活性成分は、通常含浸法により各種耐火性無機酸化物担体に担持される。水素化分解活性成分である周期表第6族、第8〜10族金属ならびにリンは別々に耐火性無機酸化物担体に含浸して担持しても良いが、同時に含浸・担持するのが効率的である。
また、水素化分解活性成分やリンは、通常水素化分解活性成分やリンを含む化合物を脱イオン水に溶解させた含浸液として耐火性無機酸化物担体に含浸・担持される。含浸液中の水素化分解活性成分やリンの含有量は、目標とする担持量から計算で求める。水素化分解活性成分やリンを含む化合物を脱イオン水に溶解させた後、その含浸液の液量を、担持する耐火性無機酸化物担体の吸水量に等しくなるように調整した後、含浸・担持させることができる。
上記含浸液には、水素化分解活性成分やリンを含む化合物の溶解性や耐火性無機酸化物担体内部における分布を改善するために有機酸を添加してもよい。有機酸としては、クエン酸やリンゴ酸が好適である。有機酸は、含浸液の粘度が高すぎると触媒体内部に入りにくくなる等の点から、耐火性無機酸化物担体に対して0.01〜5.0質量%添加されることが好ましい。
さらに、水素化分解活性成分やリンを耐火性無機酸化物担体に高分散させるために、界面活性剤等の水溶性有機物を添加するのが好ましい。添加する水溶性有機物としては、分子量が90〜10000のポリエチレングリコールが好適である。上記ポリエチレングリコールを添加する場合、その添加量は耐火性無機酸化物担体に対して2〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%である。添加量が上記範囲内であれば、水素化分解活性成分やリンを耐火性無機酸化物担体に高分散でき好ましい。
上記水素化分解活性成分である周期表第6族、第8〜10族金属としては、
水素化処理活性(脱窒素活性、脱硫活性)の点から、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケルが好適である。
上記観点から、モリブデンを含む化合物としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウムが好ましく、タングステンを含む化合物としては、三酸化タングステン、タングステン酸アンモニウムが好ましい。また、コバルトを含む化合物としては、炭酸コバルト、塩基性炭酸コバルト、硝酸コバルトが好ましく、ニッケルを含む化合物としては、炭酸ニッケル、塩基性炭酸ニッケル、硝酸ニッケルが好ましい。
また、リンを含む化合物としては、五酸化リンや正リン酸等の各種リン酸を用いることができる。
上記水素化分解活性成分やリンの担持量は、触媒体として、酸化物基準で、モリブデン(MoO3)、タングステン(WO3)が10〜30質量%、コバルト(CoO)、ニッケル(NiO)が1〜6質量%、リン(P25)は5質量%以下が好適である。
上記耐火性無機酸化物担体としては、特に制限はないが、触媒活性および職内寿命の点から、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−ボリア、アルミナ−ボリア、粘土鉱物から選ばれる一種以上と、結晶性アルミノシリケートを混合したものが好適に用いられる。
これらの中でも、アルミナやシリカ−アルミナと強い固体酸性を有する耐火性の結晶性アルミノシリケートの組み合わせが好適である。
強い固体酸性を有する結晶性アルミノシリケートとしては、Y型ゼオライト、βゼオライト、モルデナイト等が挙げられる。特にY型ゼオライトを修飾処理ないし安定化処理したものが好ましい。修飾処理したY型ゼオライトとしては、特に鉄イオンでイオン交換したY型ゼオライト(以下、鉄ゼオライトと称することがある。)が好適である。鉄ゼオライトの物性としては、SiO2/Al23(モル比)が3.5以上、さらには4.6以上であることが好ましく、2.420〜2.440nmの格子定数を有するものが好適である。
また、Y型ゼオライトの安定化処理としては、温度540〜810℃でスチーミング処理することが好ましい。このスチーミング処理後のY型ゼオライトに硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸を加えて洗浄し、脱アルミニウムおよび脱落アルミニウムを除去する。鉄ゼオライトの場合は、鉄の硫酸塩を加えて混合撹拌することにより鉄イオン交換ならびに脱アルミニウムおよび脱落アルミニウムを洗浄・除去することが好ましい。
耐火性無機酸化物担体の形状としては特に限定されないが、円柱、三つ葉、四つ葉等の成型体が好適である。
上記水素化分解活性成分やリンを耐火性無機酸化物担体に含浸した後、水素化分解活性成分やリンを担体に定着させるために通常焼成処理を行う。水素化分解活性成分やリンを逐次的に含浸する場合には、含浸の度に焼成処理を行っても良いし、複数の含浸を行った後、最後に焼成処理を行うこともできる。
焼成処理は、空気雰囲気下、通常550℃以下の温度で行う。また、焼成処理時間は通常0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
本発明においては、LCO留分の水素化分解反応により低硫黄の軽油基材を高い収率で得るため、上記水素化分解触媒の存在下、LCO留分の水素化分解は、分解率30〜85%の範囲で行うことが好ましく、40〜80%の範囲であることがより好ましい。分解率が30%以上であればLCO留分が十分水素化分解され低硫黄の軽油基材を高い収率で得ることができる。分解率が85%以下であれば、ガス分やナフサ留分の得率が抑制される。
また、LCO留分の水素化分解率を上記範囲で行うため、反応温度は320〜430℃、水素分圧は5〜15MPa、液空間速度(LHSV)は0.3〜3.0h-1、水素/油比は1000〜3000Nm3/KLの条件下で行うことが好ましい。
本発明においては、上記水素化分解処理は、脱硫、脱窒素等の水素化精製処理とともに行うことが好ましく、水素化分解処理と水素化精製処理を同時に行うこともできるし、また、これらを逐次行うこともできる。具体的には、2段以上の反応器を使用した連続反応により行うことが好ましく、例えば2段反応においては、水素化精製処理を行う第1段反応器、及び水素化分解処理を行う第2段反応器を用いて行うことができる。
上記水素化精製処理は、通常、触媒として、水素化精製活性成分である周期表第6族、第8〜10族金属のうちの少なくとも一種を耐火性無機酸化物担体に担持した触媒や、さらにリンを担持した触媒を用いることができる。
上記水素化精製活性成分は、通常含浸法により各種耐火性無機酸化物担体に担持される。水素化精製活性成分である周期表第6族、第8〜10族金属ならびにリンは別々に耐火性無機酸化物担体に含浸して担持しても良いが、同時に含浸・担持するのが効率的である。水素化精製処理に用いられる水素化精製活性成分及びリンは、前述の水素化分解処理に用いられる水素化分解活性成分及びリンの各々と同様のものが使用できる。
水素化精製活性成分やリンは、通常水素化精製活性成分やリンを含む化合物を脱イオン水に溶解させた含浸液として耐火性無機酸化物担体に含浸・担持される。含浸液中の水素化精製活性成分やリンの含有量は、目標とする担持量から計算で求める。水素化精製活性成分やリンを含む化合物を脱イオン水に溶解させた後、その含浸液の液量を、担持する耐火性無機酸化物担体の吸水量に等しくなるように調整した後、含浸・担持させることができる。
上記含浸液には、水素化精製活性成分やリンを含む化合物の溶解性や耐火性無機酸化物担体内部における分布を改善するために、前述の水素化分解処理に用いられるものと同様の有機酸や界面活性剤等の水溶性有機物を添加することが好ましい。
水素化精製活性成分、リン、有機酸、水溶性有機物等の添加量は、水素化分解触媒の調製の場合と同様である。
また、上記水素化精製活性成分やリンの担持量は、触媒体として、酸化物基準で、モリブデン(MoO3)、タングステン(WO3)が10〜40質量%、コバルト(CoO)、ニッケル(NiO)が2〜10質量%、リン(P25)は1〜10質量%以下が好適である。
上記耐火性無機酸化物担体としては、特に制限はないが、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−ボリア、アルミナ−ボリア、粘土鉱物、および、それらの混合物が好適に用いられる。これらの中でも、アルミナおよびシリカ−アルミナが好適である。
さらに、アルミナに水溶性チタン化合物を含浸・担持したものも好適に使用される。チタンの担持量は、1〜10質量%が好ましく、2〜5質量%がより好ましい。チタンの担持量が1質量%以上であれば水素化精製能向上の効果が大きく、10質量%を超える担持量であっても水素化精製能の向上に更に寄与することはない。
また、シリカ−アルミナ中のシリカ(SiO2)の含有量は1〜20質量%が好適である。
上記耐火性無機酸化物担体の比表面積は、100〜400m2/gが好ましく、150〜300m2/gがより好ましい。また、平均細孔径は5〜30nmの範囲であり、6〜15nmの範囲が好適である。比表面積が100m2/g以上であれば水素化精製活性成分を高分散に担持することができ、水素化精製活性が良好である。一方、比表面積が400m2/g以下であれば、水素化精製触媒の細孔径が適正な値となり、原料のLCO留分が触媒の内部まで十分に到達できるため、水素化精製活性が高くなる。
耐火性無機酸化物担体の形状としては特に限定されないが、円柱、三つ葉、四つ葉等の成型体が好適である。
上記水素化精製活性成分やリンを耐火性無機酸化物担体に含浸した後、水素化精製活性成分やリンを担体に定着させるために通常焼成処理を行う。水素化精製活性成分やリンを逐次的に含浸する場合には、含浸の度に焼成処理を行っても良いし、複数の含浸を行った後、最後に焼成処理を行うこともできる。
焼成処理は、空気雰囲気下、通常550℃以下の温度で行い、場合によっては300℃以下の比較的低温で焼成処理を行うこともある。また、焼成処理時間は通常0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
本発明においては、LCO留分の水素化精製処理は、主としてLCO留分の脱硫を行うため、上記水素化精製触媒の存在下、反応温度は300〜430℃、水素分圧は5〜15MPa、液空間速度(LHSV)は0.3〜3.0h-1、水素/油比は300〜3000Nm3/KLの条件下で行うことが好ましい。
本発明においては、上記水素化分解処理の後、分離して得られた沸点範囲190℃以上の留分からなる本発明の基材を得る。沸点範囲190℃以上の留分の分離は、通常の蒸留法を用いて行うことができる。
得られた本発明の基材は、その用途が軽油基材であることから、沸点範囲は190〜400℃であることが好ましく、より好ましくは190〜370℃である。また、低硫黄化の観点からは、(a)硫黄分が20質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは10質量ppm以下、更に好ましくは1質量ppm以下である。
燃焼性、環境性能の点からは、(b)芳香族分は55容量%以下であることが好ましく、より好ましくは53容量%以下、更に好ましくは51容量%以下である。同様に、燃焼性、環境性能(排出ガス中のPM低減)の点から、(c)多環芳香族分は10容量%以下であることが好ましく、より好ましくは8容量%以下、更に好ましくは6容量%以下である。密度は0.85〜0.90g/cm3であることが好ましく、より好ましくは、0.86〜0.89g/cm3である.
上記本発明の基材は、発熱量や低硫黄化の点から、本発明の軽油組成物中に25〜55容量%含有され、好ましくは30〜50容量%含有され、更に好ましくは35〜50容量%含有される。
本発明の軽油組成物には、低硫黄化、低芳香族化の点から、上記本発明の基材とともに、GTL(Gas To Liquid)軽油が含有されることが好ましい。
ここで、GTL軽油とは、水素及び一酸化炭素を主成分とする混合ガス(合成ガス)に対してFT反応(フィッシャー・トロプシュ反応)を適用させて得られるナフサ、灯油、軽油相当の液体留分、およびこれらを水素化精製及び/又は水素化分解することによって得られる炭化水素混合物、およびFT反応により液体留分およびFTワックスを生成し、これを水素化精製及び/又は水素化分解することにより得られる炭化水素混合物からなる合成油を示す。
GTL軽油の原料となる混合ガスは、天然ガス、液化石油ガス、メタンガス等の常温で気体となっている炭化水素からなるガス成分や、石油アスファルト、バイオマス、石炭、建材やゴミ等の廃棄物、汚泥、および通常の方法では処理しがたい重質な原油、非在来型石油資源等を高温に晒すことで得られる混合ガス等を、酸素、水及び二酸化炭素のうちの少なくとも一種を酸化剤を用いて酸化し、更に必要に応じて水を用いたシフト反応により所定の水素および一酸化炭素濃度に調整して得られる。
FT反応に用いる金属触媒としては、特に制限はないが、好ましくは周期表第8族の金属、例えば、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ニッケル、鉄等を、活性成分として利用する方法である。これらの活性金属はシリカやアルミナ、チタニア、シリカ−アルミナなどの担体上に担持して得られる触媒の形態で使用することが一般的である。また、これら触媒に上記活性金属に加えて、ナトリウム、リチウム、マグネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の他に、ジルコニウム、ハフニウム、チタニウムなどの第2金属を組み合わせて使用することにより、触媒性能を向上させることもできる。
FT反応は、混合ガスを原料として、液体留分およびFTワックスを生成する合成法であるが、この合成法を効率的に行うために、一酸化炭素に対する水素のモル混合比(水素/一酸化炭素)を1.2以上とすることが好ましく、また、3以下とすることが好ましい。
上記触媒を用いてFT反応を行う場合の反応温度は、反応性、液体留分およびFTワックスの生成効率の点から、180℃以上320℃以下であることが好ましく、200℃以上300℃以下であることがより好ましい。
触媒に対するGHSV(ガス空間速度)に特に制限は無いが、生産性や目的物の収率などの点から、500h-1以上4000h-1以下が好ましく、1000h-1以上3000h-1以下がより好ましい。
反応圧力(一酸化炭素と水素からなる合成ガスの分圧)は特に制限が無いが、液体燃料の収率や経済性などの点から、0.5MPa以上7MPa以下が好ましく、2MPa以上4MPa以下がより好ましい。
GTL軽油は、上記FT反応により生成された液体留分およびFTワックスを、必要に応じて任意の方法で水素化精製及び/又は水素化分解し、目的に応じて蒸留性状、組成等に調整することが可能である。
水素化精製に用いる触媒は水素化活性金属を無機酸化物(例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ボリア、シリカ、ゼオライト)等の多孔質担体に担持したものが一般的であるが、同様の効果が得られる触媒であれば本発明はその形態を何ら限定するものではない。活性金属としては、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金等の周期表第8族金属から選ばれる少なくとも一種の金属、あるいはコバルト−モリブデン、ニッケル−モリブデン、ニッケル−コバルト−モリブデン、ニッケル−タングステン等の周期表第6族および第8族金属から選ばれる少なくとも一種類の金属等が挙げられる。
上記GTL軽油は、LCO留分由来の基材の燃焼性改善の観点からセタン価を向上させるため、本発明の軽油組成物中に、好ましくは45〜75容量%、より好ましくは50〜70容量%含有されることが好ましい。
本発明の軽油組成物は、上記の基材からなるものであるが、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記基材とともに、それら以外の他の基材を配合することができる。そのような基材としては、例えば、水素化分解灯油、脱硫重質ナフサ、本発明の基材以外の水素化分解軽油、接触分解軽油(LCO)、脱ろう軽油、脱ろう脱硫軽油、直脱軽油、間脱軽質軽油、高沸点重質ナフサ等が挙げられる。これらの基材の配合量は、軽油組成物全量を基準に通常30容量%以下であり、好ましくは15容量%以下、より好ましくは10容量%以下である。
また、本発明の軽油組成物には、必要に応じて各種の添加剤を適宜配合することができる。このような添加剤としては、例えば、流動性向上剤、潤滑性向上剤、清浄剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、セタン価向上剤、消泡剤などが挙げられる。これらの添加剤は一種又は二種以上添加することができる。その添加量は状況に応じて適宜選定すればよいが、通常は添加剤の合計量として軽油組成物に対して5質量%以下とすることが好ましい。
本発明の軽油組成物は、以下の(1)〜(3)の性状を有する。
(1)硫黄分が5質量ppm以下
(2)セタン指数が60以上
(3)総発熱量が37200J/ml以上
硫黄分が5質量ppm以下であれば、ディーゼル燃料に使用した場合、排ガス中のSOxやPMの排出量が増加することを抑制することができ、また、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)やNOx触媒などの後処理装置が劣化することを防ぐこともできる。このような観点から、軽油組成物中の硫黄分は、1質量ppm以下であることがより好ましい。なお、硫黄分の含有量は、上記本発明の基材の場合も含め、JIS K 2541−2の「原油及び石油製品−硫黄分試験方法−微量電量滴定式酸化法」に従って測定した値である。
また、軽油組成物のセタン指数が60以上であれば、ディーゼル燃料に使用した場合、異常燃焼によるディーゼルノックを生ずる恐れがなく、排気ガス中のNOXやPMの増大を抑制することができる。上記観点から、上記セタン指数は、61以上であることが好ましく、63以上であることがより好ましい。その上限値には、特に制限はないが、早期着火防止の点から、通常は70以下である。なお、セタン指数は、JIS K2280の「オクタン価及びセタン価試験方法ならびにセタン指数算出方法」によって測定され算出される値である。
また、軽油組成物の総発熱量が37200J/ml以上であれば、GTL軽油の有する欠点を改善することができ、軽油のカロリーアップを図ることができる。この点から、総発熱量は、37300J/ml以上であることが好ましく、37500J/ml以上であることがより好ましく、37600J/ml以上であることが更に好ましい。なお、総発熱量は、JIS K2279の「原油及び石油製品−発熱量試験方法及び計算による推定方法」によって測定される値である。
本発明の軽油組成物は、更に以下の性状(4)〜(9)の少なくとも一つを有することが好ましく、より好ましくは上記性状の全てを有することが好ましい。
(4)密度(15℃):0.81〜0.84g/cm3
(5)動粘度(30℃):2.5〜3.5mm2/s
(6)芳香族分:25容量%以下
(7)不飽和分:1容量%以下
(8)飽和分:75容量%以上
(9)蒸留性状:10容量%留出温度(T10) 190〜230℃
30容量%留出温度(T30) 230〜260℃
50容量%留出温度(T50) 260〜290℃
70容量%留出温度(T70) 290〜310℃
90容量%留出温度(T90) 310〜340℃
本発明の軽油組成物の15℃における密度が0.81〜0.84g/cm3であれば、燃費を良好に保つことができ、燃焼性を良好にし、排気ガス中の全炭化水素(THC)、CO及びPMの発生を抑制することができる点で好ましく、この点で、上記密度は0.82〜0.84g/cm3であることがより好ましい。
なお、上記密度は、前記本発明の基材の場合も含め、JIS K 2249の「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」に従って測定した値である。
また、30℃における動粘度が2.5〜3.5mm2/sであれば、潤滑性維持と適正噴霧の確保の点で好ましく、この点で、上記動粘度は3.0〜3.3mm2/sであることがより好ましい。
なお、上記30℃における動粘度は、JIS K 2283の「原油及び石油製品−同粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に従って測定した値である。
また、本発明の軽油組成物の芳香族分が25容量%以下であれば、排気ガス中の全炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)及びPM(粒子状物質)の増加を抑制することができる点で好ましく、この点で、芳香族分は23容量%以下であることがより好ましい。
なお、上記芳香族分は、上記本発明の基材の場合も含め、石油学会規格JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に従って測定した値である。
本発明の軽油組成物は、その不飽和分、例えばオレフィン分、シクロオレフィン分等の成分が1容量%以下であることが、酸化安定性の点で好ましく、飽和分、例えばパラフィン分、シクロパラフィン分等の成分が75容量%以上であることが、酸化安定性及び燃焼性の点で好ましい。この観点から、不飽和分は0.5容量%以下、飽和分は78容量%以上であることがより好ましい。
なお、上記不飽和分及び飽和分は、いずれも上記石油学会規格JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に従って測定した値である。
本発明の軽油組成物は、その蒸留性状において、10容量%留出温度(T10)が190〜230℃、30容量%留出温度(T30)が230〜260℃、50容量%留出温度(T50)が260〜290℃、70容量%留出温度(T70)が290〜310℃、90容量%留出温度(T90)が310〜340℃であることが好ましい。
なお、上記T10ないしT90は、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」に基づいて測定した蒸留性状から求めた値である。
本発明の軽油組成物の製造方法は、上記本発明の基材を用いて性状(1)〜(3)の組成物を得る方法であればいずれの方法も使用できるが、(イ)FCC装置より得られたLCO留分を水素化分解した後、沸点範囲190℃以上の留分を分離して基材Aを得る工程、(ロ)該基材A25〜55質量%を、GTL軽油と混合する工程、を有する、(1)硫黄分が5質量ppm以下、(2)セタン指数が60以上、かつ(3)総発熱量が37200J/ml以上である軽油組成物を製造する方法が好ましい。
ここにおける、基材Aについては、上述の本発明の基材に相当し、その組成、性状及び製造方法等については、前述の通りである。また、GTL軽油についても前述の通りである。軽油組成物の各組成、性状についても前述のとおりである。
次に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。なお、軽油組成物の性状及び性能は次の方法に従って求めた。
〔軽油組成物の性状と組成〕
(1)密度
JIS K 2249に準拠して測定した。
(2)蒸留性状
JIS K 2254により測定した。
(3)動粘度
JIS K 2283に準拠して測定した。
(4)セタン指数
JIS K 2280に準拠して測定した。
(5)芳香族分、不飽和分及び飽和分
石油学会規格JPI−5S−49−97に準拠して測定した。
(6)硫黄分
JIS K 2541−2に準拠して測定した。
(7)総発熱量
JIS K 2279により測定した。
実施例1〜3及び比較例1〜5
第1表に示した性状及び組成を有する各基材を、第2表に示す割合で混合して、軽油組成物を調製した。その性状及び組成を測定した結果を第2表に示す。
第1表中のDKは脱硫灯油である。また、本発明の基材は以下の方法で製造した。なお、GTL軽油は市販GTLを蒸留により分離した。各々の組成、性状は第1表に示す通りである。
〔本発明の基材の製造〕
(1)水素化精製触媒の調製
国際公開特許WO2002/049963の記載に基づき、チタン含有水溶液を調製した。500℃で4時間焼成することにより求めたTiO2の割合が85質量%である含水酸化チタンの粉末12.7gと70gの脱イオン水を内容積1Lのガラス製ビーカーに入れ、撹拌し、スラリー化した。次に、35質量%過酸化水素水78.7gと26質量%のアンモニア水26.5gを混合した水溶液を上記含水酸化チタンスラリーに添加した。その後、25℃を維持したまま3時間撹拌し、黄緑色で透明なチタン含有水溶液を得た。そこへクエン酸第1水和物28.4gを添加した。その後、30℃以下の温度で6時間保持した後、80〜95℃で12時間保持することにより透明なチタン含有水溶液120gを得た。得られたチタン含有水溶液58.5gを分取し、脱イオン水で希釈して80mLとし、細孔容量0.8mL/gで四つ葉のアルミナ100gに、常圧下で含浸した。その後、ロータリーエバポレーターを用い、減圧下、70℃で1時間乾燥した後に、120℃で3時間乾燥し、最後に空気雰囲気下500℃で4時間焼成し、TiO2が5質量%担持されたアルミナ担体を得た。
次に、500℃で4時間焼成することにより求めたNiOの割合が58.4質量%である塩基性炭酸ニッケル75.3g(NiOとして44.0g)、三酸化モリブデン220g、正リン酸34.5g(P25として29.3g)に脱イオン水を250mL加え、撹拌しながら80℃で溶解し、室温に冷却後、脱イオン水で264mLに定容したニッケル−モリブデン含浸液を調製した。この含浸液60mLを採取し、トリエチレングリコール6gを添加して、TiO25質量%担持アルミナ担体100gの吸水量に見合うように脱イオン水で希釈・定容、常圧下で含浸し、70℃で1時間、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で乾燥した後、120℃、16時間、空気雰囲気下で焼成し、水素化精製触媒を調製した。この水素化精製触媒の組成は、アルミナ57質量%、TiO23質量%、NiO6質量%、MoO33質量%、P254質量%であった。
(2)水素化分解触媒の調製
水素化分解触媒は、特許公報第2908959号に基づき、ニッケル−モリブデン含有水溶液をアルミナ担体に含浸・担持して調製した。
まず、Na2O含有量が1.2質量%で、SiO/Al23比(モル比)が5.0である粉末状のNH4Y型ゼオライト2kgをロータリーキルン内に投入し、700℃で3時間セルフスチーミング処理を行い、スチーミング処理Y型ゼオライトを得た。このスチーミング処理Y型ゼオライト400gに濃度1.0モル/Lの硝酸第二鉄水溶液4kgと、スチーミング処理Y型ゼオライト1kg当たりHNO3が10モル量となる量の硝酸(濃度1.5モル/L)を添加し、75℃で2時間撹拌した後、ろ過した。得られた固形分を温水洗浄し、鉄含有Y型ゼオライトを得た。得られた鉄含有Y型ゼオライトのSiO/Al23比(モル比)は40で、鉄の担持量は5.0質量%であった。
次に、硫酸アルミニウムの水溶液とアンモニア水とを数回に分けて交互に添加することによって得たベーマイトゲルを90℃で12時間熟成し、アルミナスラリーを調製した。上記鉄含有Y型ゼオライトスラリー(水分量70質量%)に、上記アルミナスラリー(水分量80質量%)を、鉄含有Y型ゼオライトとアルミナの割合が乾燥物基準で65対35となる割合で添加し、この混合スラリーを70〜80℃で2時間、ニーダーで混合(混和)した。こうして得た混合物の水分量を成型しやすい程度に調整した後、押出成型し、有効径15mmの円柱状の成型物とし、これを110℃で4時間乾燥し、さらに550℃で3時間空気気流中で焼成し、鉄ゼオライト含有担体を得た。この鉄ゼオライト含有担体に、モリブデン酸アンモニウムと硝酸ニッケルの水溶液を用いてモリブデンとニッケルを含浸・担持した。この後、担持物を110℃で4時間乾燥し、さらに550℃で3時間空気気流中で焼成し、水素化分解触媒を得た。得られた水素化分解触媒の組成は、鉄ゼオライト56質量%、アルミナ30質量%、NiO4質量%、MoO310質量%であった。また、細孔容積は0.45mL/gであった。
(3)本発明の基材の製造
高圧固定床流通式のベンチ反応器を2基直列に連結し、前段に水素化精製触媒50mL、後段に水素化分解触媒を50mL充填した。
まず、前処理として、ジメチルジスルフィドを添加して硫黄分濃度を2質量%に調整した中東系軽油をベースとする予備硫化油を水素ガスとともに流通させて、温度240℃で4時間、290℃で9時間予備硫化を行った。予備硫化後、硫黄分濃度1.1質量%、密度0.846g/cm3の中東系原油に切り替え、310℃で24時間硫化を行った。
次に、表1の接触分解軽油(LCO)に切り替えて水素化分解反応を行った。前段の水素化精製反応の反応温度は370℃、後段の水素化分解反応の反応温度は405℃とし、反応圧力は水素化分解反応器出口で8MPa、水素/原料油比は水素化精製反応器入口で2000Nm3/KL、LHSVは水素化精製触媒と水素化分解触媒合計で、0.8h-1の条件に調整して行った。
Figure 0005537780
Figure 0005537780
本発明の軽油組成物である実施例1〜3の軽油組成物は、いずれも低硫黄分を維持しつつ、総発熱量が高く、かつセタン指数が高いものであった、
本発明によれば、軽油として好適な基本性能を有すると共に、低硫黄分を維持し環境性能に優れ、発熱量が高い軽油組成物を得ることができる。従って、ディーゼル燃料として好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. 流動接触分解(FCC)装置より得られた接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を少なくとも水素化分解した後、分離して得られた沸点範囲190℃以上の留分からなり、硫黄分が1質量ppm以下である基材を25〜55容量%、及びGTL(Gas to Liquid)軽油を45〜75容量%含有し、下記の性状(1)〜(9)を有する軽油組成物。
    (1)硫黄分:1質量ppm以下
    (2)セタン指数:60以上
    (3)総発熱量:37200J/ml以上
    (4)密度(15℃):0.81〜0.84g/cm 3
    (5)動粘度(30℃):2.5〜3.5mm 2 /s
    (6)芳香族分:25容量%以下
    (7)不飽和分:1容量%以下
    (8)飽和分:75容量%以上
    (9)蒸留性状:10容量%留出温度(T10) 190〜230℃
    30容量%留出温度(T30) 230〜260℃
    50容量%留出温度(T50) 260〜290℃
    70容量%留出温度(T70) 290〜310℃
    90容量%留出温度(T90) 310〜340℃
  2. 前記沸点範囲190℃以上の留分からなる基材が、下記性状()〜(c)を有する、請求項1に記載の軽油組成物。
    (b)芳香族分が55容量%以下
    (c)多環芳香族分が10容量%以下
  3. (イ)流動接触分解(FCC)装置より得られた接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を少なくとも水素化分解した後、分離して得られた沸点範囲190℃以上の留分からなり、硫黄分が1質量ppm以下である基材Aを得る工程、(ロ)該基材A 25〜55容量%を、GTL(Gas To Liquid)軽油45〜75容量%と混合する工程、を有する、(1)硫黄分が質量ppm以下、(2)セタン指数が60以上、かつ(3)総発熱量が37200J/ml以上である軽油組成物の製造方法。
  4. GTL(Gas To Liquid)軽油に、流動接触分解(FCC)装置より得られた接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)留分を少なくとも水素化分解した後、分離して得られた沸点範囲190℃以上の留分からなり、硫黄分が1質量ppm以下である基材を、全組成物に対し25〜55容量%配合する、軽油の発熱量向上方法。
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