JP4286502B2 - 軽油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は硫黄分含有量の少ない軽油組成物に関する。より詳しくは過渡運転時におけるエンジンから排出される窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、粒子状物質(PM)、微小粒子、ナノ粒子、アルデヒド類を低減し、排ガス後処理装置の負荷を低減し、燃費を向上させ、運転性及び加速性に優れ、燃料噴射ポンプの駆動力を低減し、エンジン運転時の騒音を低減し、なおかつエンジン始動性に優れ、酸化安定性に優れ、部材への影響を少なくすることができる軽油組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、軽油の基材としては、原油の常圧蒸留装置から得られる直留軽油に水素化精製処理や水素化脱硫処理を施したもの、原油の常圧蒸留装置から得られる直留灯油に水素化精製処理や水素化脱硫処理を施したもの等が知られている。従来の軽油組成物は上記軽油基材及び灯油基材を1種または2種以上配合することにより製造されている。また、これらの軽油組成物には、必要に応じてセタン価向上剤や清浄剤等の添加剤が配合される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、地球規模での環境問題及び大都市圏を中心とする局所的な大気汚染問題は日々深刻の度合いを深めており、早急な改善を目指して様々な検討が行われている。
これらの検討の中でも、移動排出源である自動車、特に物流、輸送部門を支えているディーゼル自動車からの有害大気汚染物質の低減:地球規模としては二酸化炭素の削減問題及び車両の燃費の向上、局所的には未燃物質である炭化水素・一酸化炭素・アルデヒド類、粒子状物質(以降PMと表記)やその粒径サイズが細かな微小粒子・ナノ粒子、及び窒素酸化物(以降NOxと表記)等の低減が早急に達すべき課題とされている。これらの最も効果的でかつ現実的な対応としては、酸化触媒、ディーゼルパティキュレートフィルタ(以降、DPFと表記)やNOx還元触媒といった排ガス後処理装置の装着が挙げられる。
【0004】
その一方で、自動車はユーザーが直接操作し、ユーザーの意志通りの挙動を示し、ユーザーに快適感を与えることも要求されている。例えば、登坂走行時の出力やトルクの厚み、高速道路における追い越し加速、アクセル応答といった運転性能に関わる要素に優れ、燃焼や噴射ポンプ駆動時の騒音が少なく、ユーザーに不快感を与えないことも求められている。また、冬場の低温時においても、夏場の高温時においても、車両はユーザーの思いのままに始動し、所定の性能を発揮しなければならない。しかしながら、これらへの対応は前述の排ガス対策と技術的に相反する内容であり、高水準での同時の達成が困難である。
【0005】
これらの相反する性能改善要求は、定常運転及び単純なパターン運転だけからなる許認可試験モードにおける結果だけでは検討や議論が困難であり、実際の路上走行に即した過渡的な運転(以降、リアルワールド走行と表記)からなる試験モードによる評価が妥当であり必須である。
これらの自動車に求められている諸性能に対し、自動車技術の改善による対応は必須であるが、諸改善要求性能に及ぼす燃料の影響度合いも小さくはないものがあり、むしろ改善要求幅が大きくなっている現状においては燃料品質設計が担う面も大きいとされている。また、燃料品質設計による対応は、新車、既販車を問わず、即効性を持って効果を発揮する面もある。
しかしながら、現時点では特に過渡運転時のリアルワールド走行に着眼して、これらの多くの性能改善に寄与する燃料品質設計を実施した例は存在しなく、更には市販燃料油として求められている諸性能、具体的には低温流動性及び酸化安定性に優れ、部材への攻撃性が少ない等の品質設計をも鑑み、現実的な製造法の検討を踏まえた総合的な例、知見は全く存在していない。
【0006】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ディーゼル車用燃料として用いた場合、実走行条件、すなわち過渡運転時における環境負荷低減、より詳しくはエンジンから排出される窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、PM、微小粒子、ナノ粒子、アルデヒド類を低減し、排ガス後処理装置の負荷を低減し、燃費及び出力を向上させ、運転性及び加速性に優れ、燃料噴射ポンプの駆動力を低減し、エンジン運転時の騒音を低減し、なおかつエンジン始動性に優れることを、同時に高水準で達成することであり、更にはこれに加えて市販燃料油として求められている諸性能、具体的には低温流動性及び酸化安定性に優れ、部材への影響が少ない等を高水準で達成する軽油組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、90%留出温度が230℃以上380℃以下、15℃における密度が790kg/m3以上870kg/m3以下、硫黄分含有量が10質量ppm以下である水素化分解軽油を5容量%以上含有し、硫黄分含有量が10質量ppm以下であることを特徴とする軽油組成物に関する。
【0008】
本発明によれば、上記の特定の性状を有する水素化分解軽油を含有する軽油組成物とすることにより、従来の軽油組成物では実現が困難であった、過渡運転時におけるエンジンから排出される窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、粒子状物質(PM)、微小粒子、ナノ粒子、アルデヒド類の低減、排ガス後処理装置の負荷の低減、燃費の向上、運転性及び加速性の向上、燃料噴射ポンプの駆動力の低減、エンジン運転時の騒音の低減、なおかつエンジン始動性に優れ、酸化安定性に優れ、部材への影響を少なくすることができる軽油組成物が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明においては、90%留出温度が230℃以上380℃以下、15℃における密度が790kg/m3以上870kg/m3以下、且つ硫黄分含有量が10質量ppm以下である水素化分解軽油が用いられる。
本発明において水素化分解軽油とは、所定の軽油を水素化分解して得られる軽油留分である。水素化分解に供する軽油としては、原油の常圧蒸留装置から得られる直留軽油;常圧蒸留装置から得られる直留重質油や残査油を減圧蒸留装置で処理して得られる減圧軽油;脱硫又は未脱硫の減圧軽油;減圧重質軽油あるいは脱硫重油を接触分解して得られる接触分解軽油;上記の軽油を水素化処理して得られる水素化精製軽油及び水素化脱硫軽油等が挙げられる。
【0010】
水素化分解軽油を製造する際には、重質軽油、減圧軽油等の重質な原料油を、高温高圧水素条件下で、分解と水素化の二元機能を持つ触媒上に通し、水素化分解と共に脱硫、脱窒素等を行う水素化分解装置を使用することができる。触媒の分解能は、多孔性の固体酸担体に起因する傾向にある。固体酸担体としては、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア等のアモルファス系担体、各種の改質や変性が施されたゼオライト等の結晶系担体が用いられる。水素化能は、Ni、Co、Mo、W、Pd、Pt等の金属を2〜3種類組み合わせて担持されることにより発揮されるが、中でもCo−Mo、Ni−Mo、Ni−Wの組み合わせが好ましい。
【0011】
水素化分解装置を運転する際の水素圧力は、通常、8MPa以上、好ましくは10MPa以上25MPa以下である。また、反応温度は、通常、300℃以上、好ましくは350℃以上500℃以下である。液空間速度は、通常、0.1/h以上2.0/h以下、好ましくは1.0/h以下である。水素化分解率は、通常、40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。
【0012】
本発明にかかる水素化分解軽油の90%留出温度(以下、場合によりT90と表記)は、前述の通り230℃以上であることが必要であり、好ましくは240℃以上である。また当該T90は、エンジンより排出される粒子状物質の増加を抑制する点から、前述の通り380℃以下であることが必要であり、好ましくは370℃以下、より好ましくは360℃以下、さらに好ましくは350℃以下、最も好ましくは340℃以下である。なお、ここでいう90%留出温度とは、全てJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」により測定される値を意味する。
【0013】
また、本発明にかかる水素化分解軽油の15℃における密度は、前述の通り790kg/m3以上であることが必要であり、好ましくは800kg/m3以上である。また、当該密度は前述の通り870kg/m3以下であることが必要であり、好ましくは860kg/m3以下、より好ましくは850kg/m3以下、さらに好ましくは840kg/m3以下である。なお、ここでいう密度とは、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を意味する。
【0014】
本発明にかかる水素化分解軽油の硫黄分含有量は、前述の通り10質量ppm以下である必要があり、好ましくは5質量ppm以下、より好ましくは3質量ppm以下、さらに好ましくは2質量ppm以下である。なお、ここでいう硫黄分含有量とは、JIS K 2541「硫黄分試験方法」により測定される軽油組成物全量基準の硫黄分の質量含有量を意味する。
【0015】
本発明にかかる水素化分解軽油の芳香族分含有量は特に制限されないが、30容量%以下であることが好ましく、20容量%以下であることがより好ましく、15容量%以下であることがさらに好ましく、12容量%以下であることがさらにより好ましい。水素化分解軽油の芳香族分含有量が前記の範囲内であると、本発明の軽油組成物において規定される性状をより容易に且つ確実に達成することができる。なお、ここでいう芳香族分含有量は、社団法人石油学会により発行されている石油学会誌JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠され測定された、芳香族分含有量の容量百分率(容量%)を意味する。
【0016】
本発明における軽油組成物は、上記特定の水素化分解軽油を5容量%以上含有するものである。本発明にかかる水素化分解軽油の配合量は、他の基材の配合量や、市販燃料油としての実用性能(例えば低温流動性能や潤滑性能)に応じて適宜設定可能であるが、エンジンから排出される窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、粒子状物質(PM)、微小粒子、ナノ粒子、アルデヒド類の低減、排ガス後処理装置の負荷の低減、燃費の向上、運転性及び加速性の向上、燃料噴射ポンプの駆動力の低減、エンジン運転時の騒音の低減、なおかつエンジン始動性に優れ、酸化安定性に優れ、部材への影響を少なくするという効果を同時に達成するには、好ましくは10容量%以上、より好ましくは15容量%以上、さらに好ましくは20容量%以上、さらにより好ましくは25容量%以上、最も好ましくは30容量%以上である。
【0017】
水素化分解軽油の含有量が5容量%未満の場合は、上記の過渡運転時におけるエンジンから排出される窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、粒子状物質(PM)、微小粒子、ナノ粒子、アルデヒド類の低減、排ガス後処理装置の負荷の低減、燃費の向上、運転性及び加速性の向上、燃料噴射ポンプの駆動力の低減、エンジン運転時の騒音の低減、なおかつエンジン始動性に優れ、酸化安定性に優れ、部材への影響を少なくするという本発明の効果を同時に達成することができない。
【0018】
本発明における軽油組成物は、水素化分解軽油に加えて、その他のベース軽油、合成軽油、灯油基材等の他の燃料基材を1種もしくは2種以上混合して製造することができる。
【0019】
前記のその他のベース軽油としては、具体的には、原油の常圧蒸留装置から得られる直留軽油や常圧蒸留装置から得られる直留重質油や残査油を減圧蒸留装置で処理して得られる減圧軽油;硫黄分含有量に応じて、前述の軽油を水素化精製装置で水素化処理した水素化精製軽油;水素化精製よりも苛酷な条件で一段階または多段階で水素化脱硫して得られる水素化脱硫軽油等が使用可能である。
【0020】
これらの軽油基材の性状は特に制限されないが、本発明の軽油組成物における目的の性状を容易に且つ確実に達成するためには、後述する特定性状を有することが好ましい。
すなわち、上記軽油基材のT90は、好ましくは200℃以上、より好ましくは210℃以上、さらに好ましくは220℃以上、さらにより好ましくは230℃以上、最も好ましくは240℃以上である。また、当該T90は、好ましくは380℃以下、より好ましくは370℃以下、さらに好ましくは360℃以下、さらにより好ましくは350℃以下、最も好ましくは340℃以下である。なお、ここでいうT90はJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」により測定される値を意味する。
【0021】
また、上記軽油基材の15℃における密度は、好ましくは780kg/m3以上、より好ましくは790kg/m3以上、さらに好ましくは800kg/m3以上である。また、当該密度は、好ましくは870kg/m3以下、より好ましくは860kg/m3以下、さらに好ましくは850kg/m3以下、さらにより好ましくは840kg/m3以下である。なお、ここでいう密度とはJIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を意味する。
【0022】
また、上記軽油基材の硫黄分含有量は、好ましくは10質量ppm以下、より好ましくは5質量ppm以下、さらに好ましくは3質量ppm以下である。なお、ここでいう硫黄分含有量とは、JIS K 2541「硫黄分試験方法」により測定される軽油組成物全量基準の硫黄分の質量含有量を意味する。
【0023】
また、上記軽油基材の芳香族分含有量は特に制限されないが、30容量%以下であることが好ましく、20容量%以下であることがより好ましく、17容量%以下であることがさらに好ましく、12容量%以下であることがさらにより好ましい。なお、ここでいう芳香族分含有量は、社団法人石油学会により発行されている石油学会誌JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠され測定された、芳香族分含有量の容量百分率(容量%)を意味する。
【0024】
上記軽油基材の配合量は、水素化分解軽油の含有量や、市販燃料油としての実用性能(例えば低温流動性能や潤滑性能)に応じて適宜設定可能である。環境負荷低減効果と燃費の向上効果との双方をより高めるためには、当該軽油基材の配合量は、好ましくは90容量%以下、より好ましくは85容量%以下、さらに好ましくは80容量%以下、さらにより好ましくは75容量%以下、最も好ましくは70容量%以下である。
【0025】
前記の合成軽油とは、天然ガス、アスファルト分、石炭等を原料とし、これを化学合成させることで得られる合成軽油をいう。化学合成方法としては間接液化法、直接液化法などがあり、代表的な合成手法として、フィッシャートロップス合成法が挙げられるが、本発明で使用する合成軽油はこれらの製造方法により限定されるものではない。合成軽油は一般に飽和炭化水素類が主成分であり、詳しくはノルマルパラフィン類、イソパラフィン類、ナフテン類から構成されている。すなわち合成軽油は一般に、芳香族分をほとんど含有していない。
【0026】
本発明の軽油組成物における目的の性状を容易に且つ確実に達成するためには、合成軽油は後述する特定性状を有することが好ましい。
すなわち、合成軽油の15℃における密度は、好ましくは720kg/m3以上、より好ましくは730kg/m3以上、さらに好ましくは740kg/m3以上、さらにより好ましくは750kg/m3以上である。また、当該密度は、好ましくは840kg/m3以下、より好ましくは830kg/m3以下、さらに好ましくは820kg/m3以下、さらにより好ましくは810kg/m3以下である。なお、ここでいう密度とはJIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を意味する。
【0027】
また、合成軽油の硫黄分含有量は、好ましくは5質量ppm以下、より好ましくは3質量ppm以下、さらに好ましくは2質量ppm以下、さらにより好ましくは1質量ppm以下である。なお、ここでいう硫黄分含有量とは、JIS K2541「硫黄分試験方法」により測定される軽油組成物全量基準の硫黄分の質量含有量を意味する。
【0028】
前記の灯油基材としては、原油の常圧蒸留により得られる直留灯油;水素化分解軽油と共に製造される水素化分解灯油;上記の灯油留分を水素化精製して得られる水素化精製灯油;天然ガス、アスファルト分、石炭等を原料とする合成灯油等が使用可能である。
【0029】
これらの灯油基材の性状は特に制限されないが、本発明の軽油組成物における目的の性状を容易に且つ確実に達成するためには、後述する特定性状を有することが好ましい。
すなわち、灯油基材のT90は、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。また、当該T90は、好ましくは280℃以下、より好ましく270℃以下、さらに好ましくは260℃以下である。なお、ここでいうT90はJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」により測定される値を意味する。
【0030】
また、灯油基材の15℃における密度は、好ましくは750kg/m3以上、より好ましくは760kg/m3以上、さらに好ましくは770kg/m3以上である。また、当該密度は、好ましくは820kg/m3以下、より好ましくは810kg/m3以下、さらに好ましくは800kg/m3以下である。なお、ここでいう密度とはJIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を意味する。
【0031】
また、灯油基材の硫黄分含有量は、好ましくは10質量ppm以下、より好ましくは5質量ppm以下、さらに好ましくは3質量ppm以下である。なお、ここでいう硫黄分含有量とは、JIS K 2541「硫黄分試験方法」により測定される軽油組成物全量基準の硫黄分の質量含有量を意味する。
【0032】
また、灯油基材の芳香族分含有量は特に制限されないが、30容量%以下であることが好ましく、20容量%以下であることがより好ましく、17容量%以下であることがさらに好ましく、15容量%以下であることがさらにより好ましく、12容量%以下であることが最も好ましい。なお、ここでいう芳香族分含有量は、社団法人石油学会により発行されている石油学会誌JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠され測定された、芳香族分含有量の容量百分率(容量%)を意味する。
【0033】
本発明にかかる灯油基材の配合量は、水素化分解軽油の含有量や、市販燃料油としての実用性能(例えば低温流動性能や潤滑性能)に応じて適宜設定可能であるが、環境負荷低減効果と燃費の向上効果との双方をより高めるためには、好ましくは60容量%以下、より好ましくは50容量%以下、さらに好ましくは40容量%以下、さらにより好ましくは30容量%以下である。
【0034】
本発明の軽油組成物においては、必要に応じてセタン価向上剤を適量配合し、得られる軽油組成物のセタン価を向上させることができる。
セタン価向上剤としては、軽油のセタン価向上剤として知られる各種の化合物を任意に使用することができ、例えば、硝酸エステルや有機過酸化物等が挙げられる。これらのセタン価向上剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0035】
本発明においては、上述のセタン価向上剤の中でも硝酸エステルを用いることが好ましい。かかる硝酸エステルには、2−クロロエチルナイトレート、2−エトキシエチルナイトレート、イソプロピルナイトレート、ブチルナイトレート、第一アミルナイトレート、第二アミルナイトレート、イソアミルナイトレート、第一ヘキシルナイトレート、第二ヘキシルナイトレート、n−ヘプチルナイトレート、n−オクチルナイトレート、2−エチルヘキシルナイトレート、シクロヘキシルナイトレート、エチレングリコールジナイトレートなどの種々のナイトレート等が包含されるが、特に、炭素数6〜8のアルキルナイトレートが好ましい。
【0036】
セタン価向上剤の含有量は、組成物全量基準で500質量ppm以上であることが好ましく、600質量ppm以上であることがより好ましく、700質量ppm以上であることがさらに好ましく、800質量ppm以上であることがさらにより好ましく、900質量ppm以上であることが最も好ましい。セタン価向上剤の含有量が500質量ppmに満たない場合は、十分なセタン価向上効果が得られず、ディーゼルエンジン排出ガスのPM、アルデヒド類、さらにはNOxが十分に低減されない傾向にある。また、セタン価向上剤の含有量の上限値は特に限定されないが、軽油組成物全量基準で、1400質量ppm以下であることが好ましく、1250質量ppm以下であることがより好ましく、1100質量ppm以下であることがさらに好ましく、1000質量ppm以下であることが最も好ましい。
【0037】
セタン価向上剤は、常法に従い合成したものを用いてもよく、また、市販品を用いてもよい。なお、セタン価向上剤と称して市販されているものは、セタン価向上に寄与する有効成分(すなわちセタン価向上剤自体)を適当な溶剤で希釈した状態で入手されるのが通例である。このような市販品を使用して本発明の軽油組成物を調製する場合には、軽油組成物中の当該有効成分の含有量が上述の範囲内となることが好ましい。
【0038】
本発明の軽油組成物においては、上記セタン価向上剤以外の添加剤を必要に応じて配合することができ、特に、潤滑性向上剤および/または清浄剤が好ましく配合される。
潤滑性向上剤としては、例えば、カルボン酸系、エステル系、アルコール系およびフェノール系の各潤滑性向上剤の1種又は2種以上が任意に使用可能である。これらの中でも、カルボン酸系及びエステル系の潤滑性向上剤が好ましい。
カルボン酸系の潤滑性向上剤としては、例えば、リノ−ル酸、オレイン酸、サリチル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ヘキサデセン酸及び上記カルボン酸の2種以上の混合物が例示できる。
【0039】
エステル系の潤滑性向上剤としては、グリセリンのカルボン酸エステルが挙げられる。カルボン酸エステルを構成するカルボン酸は、1種であっても2種以上であってもよく、その具体例としては、リノ−ル酸、オレイン酸、サリチル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ヘキサデセン酸等がある。
【0040】
潤滑性向上剤の配合量は、HFRR摩耗痕径が後述の好ましい範囲内であれば特に制限されないが、組成物全量基準で35質量ppm以上であることが好ましく、50質量ppm以上であることがより好ましい。潤滑性向上剤の配合量が前記の範囲内であると、配合された潤滑性向上剤の効能を有効に引き出すことができ、例えば分配型噴射ポンプを搭載したディーゼルエンジンにおいて、運転中のポンプの駆動トルク増を抑制し、ポンプの摩耗を低減させることができる。また、配合量の上限値は、それ以上加えても添加量に見合う効果が得られないことから、組成物全量基準で150質量ppm以下であることが好ましく、105質量ppm以下であることがより好ましい。
【0041】
清浄剤としては、例えば、イミド系化合物;ポリブテニルコハク酸無水物とエチレンポリアミン類とから合成されるポリブテニルコハク酸イミドなどのアルケニルコハク酸イミド;ペンタエリスリトールなどの多価アルコールとポリブテニルコハク酸無水物から合成されるポリブテニルコハク酸エステルなどのコハク酸エステル;ジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ビニルピロリドンなどとアルキルメタクリレートとのコポリマーなどの共重合系ポリマー、カルボン酸とアミンの反応生成物等の無灰清浄剤等が挙げられ、中でもアルケニルコハク酸イミド及びカルボン酸とアミンとの反応生成物が好ましい。これらの清浄剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
アルケニルコハク酸イミドを使用する例としては、分子量1000〜3000程度のアルケニルコハク酸イミドを単独使用する場合と、分子量700〜2000程度のアルケニルコハク酸イミドと分子量10000〜20000程度のアルケニルコハク酸イミドとを混合して使用する場合とがある。
カルボン酸とアミンとの反応生成物を構成するカルボン酸は1種であっても2種以上であってもよく、その具体例としては、炭素数12〜24の脂肪酸および炭素数7〜24の芳香族カルボン酸等が挙げられる。炭素数12〜24の脂肪酸としては、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、炭素数7〜24の芳香族カルボン酸としては、安息香酸、サリチル酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、カルボン酸とアミンとの反応生成物を構成するアミンは、1種であっても2種以上であってもよい。ここで用いられるアミンとしては、オレイルアミンが代表的であるが、これに限定されるものではなく、各種アミンが使用可能である。
【0043】
清浄剤の配合量は特に制限されないが、清浄剤を配合した効果、具体的には、燃料噴射ノズルの閉塞抑制効果を引き出すためには、清浄剤の配合量を組成物全量基準で30質量ppm以上とすることが好ましく、60質量ppm以上とすることがより好ましく、80質量ppm以上とすることがさらに好ましい。30質量ppmに満たない量を添加しても効果が現れない可能性がある。一方、配合量が多すぎても、それに見合う効果が期待できず、逆にディーゼルエンジン排出ガス中のNOx、PM、アルデヒド類等を増加させる恐れがあることから、清浄剤の配合量は300質量ppm以下であることが好ましく、180質量ppm以下であることがより好ましい。
【0044】
なお、先のセタン価向上剤の場合と同様、潤滑性向上剤又は清浄剤と称して市販されているものは、それぞれ潤滑性向上または清浄に寄与する有効成分が適当な溶剤で希釈された状態で入手されるのが通例である。このような市販品を本発明の軽油組成物に配合する際には、軽油組成物中の当該有効成分の含有量が上述の範囲内となることが好ましい。
【0045】
また、本発明における軽油組成物の性能をさらに高める目的で、後述するその他の公知の燃料油添加剤(以下、便宜上「その他の添加剤」という)を単独で、または数種類組み合わせて添加することもできる。その他の添加剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アルケニルコハク酸アミドなどの低温流動性向上剤;フェノール系、アミン系などの酸化防止剤;サリチリデン誘導体などの金属不活性化剤;ポリグリコールエーテルなどの氷結防止剤;脂肪族アミン、アルケニルコハク酸エステルなどの腐食防止剤;アニオン系、カチオン系、両性系界面活性剤などの帯電防止剤;アゾ染料などの着色剤;シリコン系などの消泡剤等が挙げられる。
その他の添加剤の添加量は任意に決めることができるが、添加剤個々の添加量は、軽油組成物全量基準でそれぞれ好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。
【0046】
上述のように、本発明の軽油組成物は、上記特定の水素化分解軽油を5容量%以上、並びに必要に応じて配合されるその他のベース軽油、合成軽油、灯油基材、セタン価向上剤、潤滑性向上剤、清浄剤及びその他の添加剤を含んで構成されるものであり、より詳しくは軽油組成物全体として、硫黄分含有量が10質量ppm以下のものである。
【0047】
本発明の軽油組成物における硫黄分含有量は、前述の通り10質量ppm以下であることが必要であり、好ましくは7質量ppm以下、より好ましくは5質量ppm以下である。当該硫黄分含有量が10質量ppmを超えると、環境負荷の低減効果が不十分となる。なお、ここでいう硫黄分含有量とは、JIS K 2541「硫黄分試験方法」により測定される、軽油組成物全量を基準とした硫黄分の含有量を意味する。
【0048】
本発明の軽油組成物における蒸留性状としては、10%留出温度が好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは230℃以下、さらにより好ましくは225℃以下、最も好ましくは220℃以下である。10%留出温度が前記上限値を超えると、排ガス性能が悪化する傾向にある。また、10%留出温度は、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。10%留出温度が前記下限値に満たないと、エンジン出力や高温時の始動性が悪化する傾向にある。
【0049】
本発明の軽油組成物における蒸留性状としては、50%留出温度が好ましくは310℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは295℃以下、さらにより好ましくは290℃以下である。50%留出温度が前記上限値を超えると、排ガス性能が悪化する傾向にある。また、50%留出温度は、好ましくは240℃以上、より好ましくは245℃以上、さらに好ましくは250℃以上、さらにより好ましくは255℃以上、最も好ましくは260℃以上である。50%留出温度が前記下限値に満たないと、エンジン出力や高温時の始動性が悪化する傾向にある。
【0050】
本発明の軽油組成物における蒸留性状としては、90%留出温度が好ましくは360℃以下、より好ましくは350℃以下、さらに好ましくは340℃以下、さらにより好ましくは330℃以下、最も好ましくは320℃以下である。90%留出温度が前記上限値を超えると、PMや微小粒子の排出量が増加する傾向にある。また、90%留出温度は、好ましくは220℃以上、より好ましくは230℃以上、さらに好ましくは240℃以上、さらにより好ましくは250℃以上、最も好ましくは260℃以上である。90%留出温度が前記下限値に満たないと、燃費向上効果が不十分となり、エンジン出力が低下する傾向にある。なお、ここでいう10%留出温度、50%留出温度、90%留出温度とは、全てJISK 2254「石油製品−蒸留試験方法」により測定される値を意味する。
【0051】
本発明の軽油組成物における15℃における密度は、燃費及び加速性の点から、770kg/m3以上であることが必要であり、好ましくは780kg/m3以上であり、より好ましくは790kg/m3以上であり、さらにより好ましくは800kg/m3以上であり、最も好ましくは810kg/m3以上である。また、当該密度は、排出ガス中のPM濃度低下の点から、870kg/m3以下であることが必要であり、好ましくは860kg/m3以下、より好ましくは850kg/m3以下であり、さらにより好ましくは840kg/m3以下である。なお、ここでいう密度とは、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を意味する。
【0052】
本発明の軽油組成物の30℃における動粘度は1.7mm2/s以上であることが好ましく、1.72mm2/s以上であることがより好ましく、1.75mm2/s以上であることがさらに好ましく、1.78mm2/s以上であることがさらにより好ましく、1.80mm2/s以上であることが最も好ましい。当該動粘度が1.7mm2/sに満たない場合は、燃料噴射ポンプ側の燃料噴射時期制御が困難となる傾向にあり、またエンジンに搭載された燃料噴射ポンプの各部における潤滑性が損なわれるおそれがある。
また、本発明の軽油組成物の30℃における動粘度は6.0mm2/s以下であることが好ましく、5.5mm2/s以下であることがより好ましく、5.0mm2/s以下であることがさらに好ましく、4.5mm2/s以下であることがさらにより好ましい。当該動粘度が6.0mm2/sを超えると、燃料噴射システム内部の抵抗が増加して噴射系が不安定化し、排出ガス中のNOx、PMの濃度が高くなってしまう。
なお、ここでいう動粘度とは、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」により測定される動粘度を意味する。
【0053】
本発明の軽油組成物におけるセタン価は、好ましくは48以上であり、より好ましくは50以上であり、さらに好ましくは52以上であり、さらにより好ましくは54以上である。セタン価が48に満たない場合には、排出ガス中のNOx、PM及びアルデヒド類の濃度が高くなりやすい。なお、ここでいうセタン価とは、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「7.セタン価試験方法」に準拠して測定されるセタン価を意味する。
【0054】
本発明の軽油組成物のセタン指数は45以上であることが好ましい。セタン指数が45に満たない場合には、排出ガス中のPM、アルデヒド類、あるいはさらにNOxの濃度が高くなる傾向にある。また、同様の理由により、セタン指数は47以上であることがより好ましく、50以上であることがさらに好ましい。
なお、本発明でいうセタン指数とは、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」によって算出される価を意味する。ここで、上記JIS規格におけるセタン指数は、一般的にはセタン価向上剤を添加していない軽油に対して適用されるが、本発明ではセタン価向上剤を添加した軽油組成物についても上記「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」を適用し、当該算出方法により算出される値をセタン指数として表す。
【0055】
本発明の軽油組成物における芳香族分含有量は、NOx及びPM低減の観点から、好ましくは40容量%以下、より好ましくは35容量%以下、さらに好ましくは30容量%以下である。また、当該芳香族分含有量は好ましくは5容量%以上、より好ましくは7容量%以上、さらに好ましくは10容量%以上である。当該芳香族分含有量が5容量%に満たないと、噴射ポンプに使用されている材料への影響が懸念される。
また、当該芳香族分のうち2環以上の芳香族分含有量は、5容量%以下であることが好ましく、より好ましくは3容量%以下、さらに好ましくは2容量%以下である。当該2環以上の芳香族分含有量が前記上限値を超えると、排ガス中のNOx、PM排出量が増加し、環境負荷の低減効果が不十分となる。
【0056】
本発明の軽油組成物における飽和分含有量は、排出ガス中のPM及びNOxの各濃度を低下させる点で、好ましくは60容量%以上、より好ましくは65容量%以上、さらに好ましくは70容量%以上、最も好ましくは75容量%以上であることが望ましい。また、飽和分含有量の上限に関しては特に制限はないが、本発明の軽油組成物がJIS2号軽油に相当する蒸留性状を有する場合には、低温始動性および低温運転性を良好に維持する点から、飽和分含有量は好ましくは95容量%以下、より好ましくは90容量%以下、さらにより好ましくは85容量%以下であることが望ましいが、軽油組成物中のナフテン化合物含有量が20質量%以上の場合はこの限りではない。ここで、本発明でいう飽和分には、ノルマルパラフィン類、イソパラフィン類及びナフテン類が包含される。
【0057】
本発明の軽油組成物において、ナフテン化合物含有量は、排ガス性能への影響の点から、ナフテン化合物含有量は95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましく、80質量%以下であることが最も好ましい。また、当該ナフテン化合物含有量は、燃費及び出力改善の面から3質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることがさらにより好ましい。
【0058】
本発明の軽油組成物におけるオレフィン分含有量は、本発明の軽油組成物の安定性の点から、好ましくは5容量%以下、より好ましくは1容量%以下である。なお、本発明でいう飽和分含有量(容量%)、オレフィン分含有量(容量%)、芳香族分含有量(容量%)及び2環以上の芳香族分含有量(容量%)とは、それぞれ社団法人石油学会から発行されている石油学会規格JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠して測定される値を意味する。また、本発明でいうナフテン化合物含有量は、ASTM D2786「質量分析法」に準拠して測定されるナフテン分の質量百分率(質量%)を意味する。
【0059】
本発明の軽油組成物は、HFRR摩耗痕径(WS1.4)が好ましくは460μm以下、より好ましくは440μm以下、さらに好ましくは420μm以下、さらにより好ましくは400μm以下となる潤滑性能を有することが望ましい。HFRR摩耗痕径が460μmを超える場合は、特に分配型噴射ポンプを搭載したディーゼルエンジンにおいて、運転中のポンプの駆動トルク増、ポンプ各部の摩耗増を引き起こし、排ガス性能、微小粒子性能の悪化のみならずエンジン自体が破壊される恐れがある。また、高圧噴射が可能な電子制御式燃料噴射ポンプにおいても、摺動面等の摩耗が懸念される。
なお、本発明でいうHFRR摩耗痕径とは、社団法人石油学会から発行されている石油学会規格JPI−5S−50−98「軽油−潤滑性試験方法」により測定される値を意味する。
【0060】
本発明の軽油組成物においては、灰分の含有量が0.01質量%未満であることが好ましい。灰分の含有量が前記上限値を超えると、エンジンでの燃焼過程中に灰分がPMの核となり、PM全体の量及びナノ粒子の量が増加してしまう。また、灰分のまま排出された場合であっても、灰分が排ガス後処理装置に堆積してしまい、後処理装置の性能低下を招いてしまうことがある。さらには、燃料噴射系に対する悪影響も考えられる。
なお、本発明でいう灰分とは、JIS K 2272「原油及び石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」によって測定される値を意味する。
【0061】
本発明の軽油組成物においては、水分の含有量は200質量ppm以下が好ましく、150質量ppm以下がより好ましく、120質量ppm以下がさらに好ましく、100質量ppm以下が最も好ましい。水分が前記上限値を超えると、アイシング現象による低温始動性の悪化や出力の低下に繋がってしまう。
なお、本発明でいう水分とは、JIS K 2275「原油及び石油製品水分試験方法」によって測定される値を意味する。
【0062】
また、本発明の軽油組成物における流動点は、低温始動性ないしは低温運転性の観点、並びに電子制御式燃料噴射ポンプにおける噴射性能維持の観点から、−7.5℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましく、―15℃以下であることがさらに好ましく、−20℃以下であることが最も好ましい。ここで流動点とは、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」により測定される流動点を意味する。
【0063】
本発明の軽油組成物は、その目詰まり点については特に限定条件はない。しかし、一般的には組成物の目詰まり点は、ディーゼル車のプレフィルタ閉塞防止の点から、−5℃以下であることが好ましく、−8℃以下であることがより好ましく、−12℃以下であることがさらにより好ましく、−19℃以下であることが最も好ましい。ここで目詰まり点とはJIS K 2288「軽油−目詰まり点試験方法」により測定される目詰まり点を指す。
【0064】
本発明の軽油組成物においては、貯蔵安定性の点から、酸化安定性試験後の全不溶解分が2.0mg/100mL以下であることが好ましく、1.0mg/100mL以下であることがより好ましく、0.5mg/100mL以下であることがさらに好ましく、0.3mg/100mL以下であることがさらにより好ましく、0.1mg/100mL以下であることが最も好ましい。なお、ここでいう酸化安定性試験とは、ASTM D2274−94に準拠して、95℃、酸素バブリング下、16時間の条件で実施するものである。また、ここでいう酸化安定性試験後の全不溶解分とは、前記酸化安定性試験に準拠して測定される値を意味する。
【0065】
本発明の軽油組成物は、貯蔵安定性、部材への適合性の点から、上記酸化安定性試験後の過酸化物価は、好ましくは10質量ppm以下、より好ましくは5質量ppm以下、さらに好ましくは2質量ppm以下、さらにより好ましくは1質量ppm以下である。なお、ここでいう過酸化物価とは石油学会規格JPI−5S−46−96に準拠して測定される値を意味する。
本発明の軽油組成物には、全不溶解分や過酸化物価を低減するために、酸化防止剤や金属不活性剤等の添加剤を適宜添加することができる。
【0066】
また、本発明における軽油組成物における導電率は特に限定されないが、安全性の点から50pS/m以上であることが好ましい。
本発明の軽油組成物には、導電率を改善するために、適宜帯電防止剤等を添加することができる。なお、ここでいう導電率とは、JIS K 2276「石油製品−航空燃料油試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
【0067】
本発明の軽油組成物において、体積弾性率は1250MPa以上1600MPa以下であることが好ましい。
一般に、軽油のような圧縮性のある流体に高い圧力を加えた場合、雰囲気の温度、圧力に応じて流体が圧縮し、その結果、流体の密度(流量あたりの体積)が変化する。本発明では、このような流体の圧縮弾性率を体積弾性率(単位:MPa)と定義している。
例えばディーゼル燃料噴射を想定した場合、燃料流体の体積弾性率は、燃料がおかれている雰囲気の温度や圧力、さらには燃料自体の物理特性や組成に応じて一定の割合で変化する。従って、電子制御式燃料噴射ポンプのように、高圧で高精度な噴射特性を有する噴射系において、設定通りの燃料噴射量や噴射率を維持するためには、体積弾性率が安定した数値を示す燃料が必要である。この体積弾性率の安定化がPM全体及びナノ粒子、あるいはさらにNOx等の低減に繋がる
。
【0068】
かかる理由により、本発明の軽油組成物では、その体積弾性率の上限値は1600MPa以下であることが好ましく、1550MPa以下であることがより好ましく、1500MPa以下であることがさらに好ましく、1450MPa以下であることが最も好ましい。また当該体積弾性率の下限値は1250MPa以上であることが好ましく、1300MPa以上であることがより好ましく、1350MPa以上であることがさらに好ましい。
【0069】
なお、体積弾性率は単一の燃料物理特性、組成によって支配されるものではなく、複数の物理特性、組成の影響を複合的に受けた結果として定義されるものであるため、他の物理特性、組成と並行して捉えるべき燃料特性と考えることが、技術的見地から妥当である。
【0070】
ここで、軽油組成物の体積弾性率の測定方法について説明する。図1は体積弾性率測定装置の一例を示す概略構成図である。図1中、定容容器1の上面には定容容器1内に連通するように供給弁2が設けられており、供給弁2の所定の位置には排出弁3が接続されている。また、定容容器1の側面には温度センサ4及び圧力センサ5、定容容器1の下面にはピストン6がそれぞれ定容容器1内に連通するように設けられている。ここで、定容容器1及びピストン6は、雰囲気の温度及び圧力が所定量変化したときに、その容量変化が燃料の体積変化に比べて十分に小さい材料及び構造からなるものである。
図1に示した測定装置を用いる場合、先ず、測定対象である軽油組成物100を供給弁2から定容容器1内に導入し、定容容器1内を軽油組成物で充満させる。次に、ピストン6により定容容器1内の容積を変化させる。このとき、軽油組成物はその圧縮弾性特性に従って圧縮されるので、結果として定容容器1内の圧力が変化することになる。この圧縮工程の際の温度及び圧力を温度センサ4及び圧力センサ5で測定し、得られた測定値に基づいて体積弾性率を算出することができる。
【0071】
【発明の効果】
以上のように、本発明の軽油組成物は、過渡運転時におけるエンジンから排出される窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、粒子状物質(PM)、微小粒子、ナノ粒子、アルデヒド類の低減、排ガス後処理装置の負荷の低減、燃費の向上、運転性及び加速性の向上、燃料噴射ポンプの駆動力の低減、エンジン運転時の騒音の低減が図られ、なおかつエンジン始動性に優れ、酸化安定性に優れ、部材への影響を少なくすることができる。
【0072】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0073】
(実施例1〜4および比較例1〜3)
実施例、比較例で使用した軽油組成物は、灯油基材、ベース軽油、合成軽油、水素化分解軽油の燃料基材を1種もしくは2種以上混合して製造したものである。また、一部の製造した軽油組成物には下記に示す添加剤を調合している。
セタン価向上剤:2−エチルヘキシルナイトレ−ト
潤滑性向上剤:リノ−ル酸を主成分とするカルボン酸混合物
清浄剤:オレイン酸を主成分とするカルボン酸混合物とオレイルアミンとの反応生成物
低温流動性向上剤:エチレン−酢酸ビニル共重合体
【0074】
調合した軽油組成物の調合比率、及びこの調合した軽油組成物に対して、15℃における密度、30℃における動粘度、硫黄分含有量、蒸留性状、飽和分、オレフィン分、芳香族分含有量及び2環以上の芳香族分含有量、ナフテン含有量、セタン指数及びセタン価、体積弾性率、灰分、流動点、水分、酸化安定性試験後の全不溶解分、過酸化物価、導電率、流動点、目詰まり点、潤滑性評価指標である摩耗痕径を測定した結果を表1に示す。
【0075】
なお、燃料油の性状は以下の方法により測定した。
密度は、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を指す。
動粘度は、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」により測定される動粘度を指す。
硫黄分含有量は、JIS K 2541「硫黄分試験方法」により測定される軽油組成物全量基準の硫黄分の質量含有量を指す。
蒸留性状は、全てJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」によって測定される値である。
飽和分、オレフィン分、芳香族分含有量は、社団法人石油学会により発行されている石油学会法JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠され測定された芳香族分含有量の容量百分率(容量%)を意味する。
ナフテン化合物含有量は、ASTM D2786「質量分析法」に準拠して測定されるナフテン分の質量百分率(質量%)を意味する。
【0076】
セタン指数は、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」によって算出した価を指す。なお、上記JIS規格におけるセタン指数は、セタン価向上剤を添加したものに対しては適用されないが、本発明ではセタン価向上剤を添加したもののセタン指数も、上記「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」によって算出した値を表すものとする。
セタン価は、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「7.セタン価試験方法」に準拠して測定されるセタン価を意味する。
体積弾性率は前記試験方法で測定した値を意味する。
灰分は、JIS K 2272「原油及び石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」によって測定される値を意味する。
水分とは、JIS K 2275「原油及び石油製品水分試験方法」によって測定される値を意味する。
【0077】
酸化安定性試験後の全不溶解分とは、ASTM D2274−94に準拠して、95℃、酸素バブリング下、16時間の条件で測定される値を意味する。
過酸化物価とは、石油学会規格JPI−5S−46−96に準拠して測定される値を意味する。
導電率とは、JIS K 2276「石油製品−航空燃料油試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
流動点は、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」により測定される流動点を指す。
潤滑性能およびHFRR摩耗痕径とは、社団法人石油学会から発行されている石油学会規格JPI−5S−50−98「軽油−潤滑性試験方法」により測定される潤滑性能を指す。
【0078】
実施例、比較例で使用した軽油組成物は、表1に示すとおり、数種の軽油基材を特定の配合割合で調合したものである。表1に示したとおり、実施例1〜4においては、90%留出温度(T90)、15℃における密度及び硫黄分含有量が、いずれも本発明で規定される範囲内である水素化分解軽油を5容量%以上混合することにより、硫黄分含有量が10質量ppm以下である軽油組成物を容易にかつ確実に得ることができた。一方、上記特定の水素化分解軽油を用いずに軽油組成物を調製した比較例1〜3においては、目的の軽油組成物を得られない場合が存在した。
【0079】
次に実施例1〜4及び比較例1〜3の各軽油組成物を用いて、以下に示す各種試験を行った。全ての試験結果を表2に示す。なお、エンジン単体試験に係わる試験方法は、旧運輸省監修新型自動車審査関係基準集別添29「ディーゼル自動車13モード排出ガス測定の技術規準」に準拠し、車両試験に係わる試験方法は、同別添27「ディーゼル自動車10・15モード排出ガス測定の技術基準」に準拠している。
【0080】
(車両排ガス試験、燃費試験)
下記に示すディーゼルエンジン搭載車両(車両1)を用いて、NOx、THC、CO、PM、CO2、アルデヒド類及び燃費の測定を行った。PMは全量希釈トンネルにて希釈した排ガスを炭化フッ素被膜ガラス繊維フィルタで、またアルデヒド類はDPNHカートリッジを使用して捕集、分析した。試験モードは、図2に示す実走行を模擬した過渡運転モードで行い、各排ガス成分は試験モード1kmあたりの排出量として算出し、比較例1の燃料を供試した場合の結果を100として、各結果を相対的に比較、定量化した。燃費は試験モード中に消費した燃料容積流量を燃料温度補正し、重量値に置き換えた値について、比較例1の燃料を供試した場合の結果を100として、各結果を相対的に比較、定量化した。
【0081】
(車両諸元):車両1
エンジン種類:インタークーラー付過給直列4気筒ディ−ゼル
排気量 :3L
圧縮比 :18.5
最高出力 :125kW/3400rpm
最高トルク:350Nm/2400rpm
規制適合 :平成9年度排ガス規制適合
車両重量 :1900kg
ミッション:4AT
排ガス後処理装置:酸化触媒
【0082】
(微小粒子測定)
粒子数の測定の際には、図3に示す走査型モビリティ粒径分析装置を使用し、粒子の粒径ごとに分離と粒子数の検出を行った。すなわち、図3に示した装置において、希釈された排ガスサンプルを通す流路には、その上流から順に、荷電分布制御部a、分級部b、粒子数計測部cが設けられている。希釈された排ガス中の微小粒子は、荷電分布制御部aで平衡荷電分布状態となり、分級部bで粒子それぞれの電気移動度に従い分級(分離)される。そして、粒子数計測部cにおいて、粒径ごとに分離された粒子が計測される。
試験は、排ガス試験と同様に車両1を図2に示す試験モードで運転し、上記装置にて試験期間中に捕集された粒子を、総粒子数と直径100nm以下の粒子(ナノ粒子)とに区分し、比較例1の燃料を供試した場合の結果を100として、各結果を相対的に比較、定量化した。
【0083】
(排ガス後処理装置の性能改善効果判定試験)
下記エンジン1に排ガス後処理装置として、フィルタ部に酸化触媒機能を有する連続再生式DPFを装着し、試験を行った。試験はディーゼル13モード(以降D13モードと表示)で規定される40%回転数、60%回転数において、負荷をそれぞれ0%から100%まで階段状に変化させ、その時のエンジン背圧並びに後処理装置前後の差圧を測定し、背圧および差圧の変化、並びに後処理装置に堆積したPM量と再生が必要になるまでの連続使用時間等を鑑みて、排ガス後処理装置の性能改善効果の判定を行った。
なお、各判定の基準は以下の通りであるが、最終安定結果はこれらの結果ならびに従来までの知見を総合して判断している。また、排ガス後処理装置の連続再生機能に問題は見られなかったことも判定の際加味している。
エンジン背圧 :各運転条件での背圧が試験開始時より30kPa以上上昇した場合かつ、その後30分以上条件を保持しても低下しなかった場合を背圧不合格とする。
後処理装置前後差圧:各運転条件での前後差圧が開始時より30kPa以上上昇した場合かつ、その後30分以上条件を保持しても低下しなかった場合を前後差圧不合格とする。
連続使用時間 :開始時から背圧上昇が100kPaとなるまでの時間背圧、前後差圧の判定で不合格となったものに対して適用する。
【0084】
(エンジン諸元):エンジン1
エンジン種類:自然吸気直列4気筒ディ−ゼル
排気量 :5L
圧縮比 :19
最高出力 :110kW/2900rpm
最高トルク:360Nm/1700rpm
規制適合 :平成6年排ガス規制適合
【0085】
(エンジン全負荷出力)
上記エンジン1を用いて、ディーゼル13モードに規定される回転数(40%、60%、80%回転数)の3点に対する全負荷(アクセル開度全開)運転を行い、その時の最大トルク値を測定した。結果は、比較例1の燃料を供試した場合の結果を100として、各結果を相対的に比較すると共に、3つの回転数条件ごとの結果を平均化して評価した。
【0086】
(車両運転性能・加速性能評価)
環境温度25℃、環境湿度60%一定に保持したシャーシダイナモメータ(勾配条件:5%)上で、上記ディーゼルエンジン搭載車両(車両1)を用いて評価した。試験は車両を十分に暖機走行させた後、40km/h定速条件で保持し、所定の時間後スロットル(アクセル)全開運転させ、60km/hに達するまでの時間を測定し、車両運転性能及び加速性能の改善効果判定を行った。
【0087】
(噴射ポンプ駆動力測定)
噴射ポンプの駆動力測定は、下記のディーゼルエンジン(エンジン2)を用いて、エンジンベンチにて行った。エンジン設置後、噴射ポンプの駆動用ベルト等を外し、噴射ポンプ単体での駆動トルクを測定する。トルクは5回測定し、その平均値を駆動トルク値として使用する。その後、試験燃料を使用して、4200rpm、全負荷で6時間連続運転する。運転後、再度噴射ポンプ単体での駆動トルクを測定し、初期値との差を駆動トルク増加量として定義する。結果は、比較例1の燃料を供試した場合の結果を100として、各結果を相対的に比較、定量化した。
【0088】
(エンジン諸元):エンジン2
エンジン種類:自然吸気直列4気筒副室式ディ−ゼル
排気量 :2L
圧縮比 :22
最高出力 :56kW/4800rpm
最高トルク:130Nm/2800rpm
噴射ポンプ:機械式分配型噴射ポンプ
【0089】
(騒音測定)
エンジン騒音はJIS D 1616−1995「自動車−排気系の騒音試験方法」に準拠して行った。マイクロホンはエンジンの第1シリンダ横50cmの位置(吸気側)及び第4シリンダ横50cmの位置(吸気側)で、シリンダブロックとシリンダヘッドとの境目の高さに設置した。
試験は、上記エンジン1を用いて行い、エンジンを停止させた状態での暗騒音を測定し、その後十分の暖機の後にディーゼル13モード中の10モード目(60%回転数、80%負荷)の定常条件で運転し、10回の測定を行った。このとき測定された最大騒音レベルdB(A)を平均化して指標とする。比較例1の燃料を供試した場合のこの指標を100として、各燃料での結果を相対的に比較、定量化した。
【0090】
(低温始動性)
環境温度の制御が可能なシャーシダイナモメータ上で、室温で、▲1▼供試ディーゼル自動車の燃料系統を評価燃料でフラッシング(洗浄)、▲2▼フラッシング燃料の抜き出し、▲3▼メインフィルタの新品への交換、▲4▼燃料タンクに評価燃料の規定量(供試車両の燃料タンク容量の1/2)の張り込みを行う。その後、▲5▼環境温度を室温から5℃まで急冷し、▲6▼5℃で1時間保持した後、▲7▼1℃/hの冷却速度で所定の温度(−10、−12℃)に達するまで徐冷し、▲8▼所定の温度で1時間保持した後、エンジンを始動させる。10秒間のクランキングを30秒間隔で2回繰り返しても始動しない場合は不可(×)、クランキングを2回繰り返す間でエンジンが始動した場合は可(◯)とした。
【0091】
(高温始動性試験)
高温始動性を確認するため、以下の手順に従い、環境温度及び湿度の制御が可能なシャーシダイナモメータ上で、下記ディーゼルエンジン搭載車両(車両2)を用いて評価した。試験は、車両に供試燃料を15L給油し、その後エンジンを始動させアイドリングにて保持する。環境温度を後述する試験温度に設定して試験室内温度を安定させ、アイドリング中の車両の燃料噴射ポンプ出口温度が安定した時点でエンジンを停止させる。その後、5分間放置し、エンジンを再始動させる。この時、エンジンが正常に始動した場合は、環境温度を一段階上昇させた次の試験温度に設定し、前述の試験操作を繰り返す。試験温度は25℃、30℃、35℃とし、25℃から試験を開始する。正常に始動した場合を合格(○)、始動しなかった場合を不合格(×)とする。
【0092】
(車両諸元):車両2
エンジン種類:インタークーラー付過給直列4気筒ディ−ゼル
排気量 :3.2L
圧縮比 :17
最高出力 :130kW/3800rpm
最高トルク:380Nm/2000rpm
規制適合 :平成10年排ガス規制適合
車両重量 :2150kg
ミッション:4AT
排ガス後処理装置:酸化触媒
【0093】
(ゴム膨潤試験)
エンジン部品のO−リング等で使用されているゴム部材に対する影響を確認するため、以下に示す手順で浸せき試験を行った。ゴムを構成している化合物の1つであるアクリロニトリルが結合アクリロニトリル質量中心値として、全体の25%以上35%以下であるニトリルゴム(中ニトリルゴム)を評価対象のゴム部材とし、MIL R6855に準拠して試験燃料を100℃に加熱、保持し、その中に試験ゴム部材を70時間浸せきさせる。評価は70時間後の試験ゴム部材の体積変化で比較、定量化する。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】軽油組成物の体積弾性率の測定に使用される装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】排ガス試験における試験モードを示す図である。
【図3】粒子数の測定に使用する走査型モビリティ粒径分析装置の概略図である。
【符号の説明】
1 定容容器
2 供給弁
3 排出弁
4 温度センサ
5 圧力センサ
6 ピストン
100 軽油組成物
a 荷電分布制御部
b 分級部
c 粒子数計測部
Claims (1)
- 90%留出温度が230℃以上380℃以下、15℃における密度が790kg/m3以上870kg/m3以下、硫黄分含有量が10質量ppm以下である水素化分解軽油を5容量%以上含有し、硫黄分含有量が10質量ppm以下である軽油組成物。
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