特許文献1の公報には、可動接点金属板をバイメタルとする通電タイプのブレーカが記載される。このブレーカは、周囲温度が設定温度まで上昇すると、バイメタルの可動接点金属板が反転してオフ状態に切り換えられる。この構造のブレーカは、可動接点金属板をバイメタルとするので、可動接点金属板の電気抵抗が大きく、ブレーカの電圧降下による電力損失が大きくなる欠点がある。また、周囲温度が設定温度まで上昇しない状態においても、流れる電流が増加するとオフ状態に切り換えられる欠点もある。それは、電気抵抗の大きい可動接点金属板が電流のジュール熱で発熱して反転するからである。
また、特許文献2の公報には、バイメタルと可動接点金属板とを別の金属板とし、さらにバイメタルを加熱するヒーターを内蔵する無通電タイプのブレーカが記載される。このブレーカは、設定温度よりも高くなるとバイメタルが反転して、反転するバイメタルが可動接点金属板を押し上げるように変形して、可動接点を固定接点から離してオフ状態となって電流を遮断する。温度が低下してバイメタルが元の形状に復元すると、可動接点金属板の弾性で可動接点を固定接点に接触させてオン状態に復帰する。可動接点金属板は、バイメタルで押し上げられない状態、すなわちバイメタルが温度で反転しない状態では、可動接点を固定接点に弾性的に押圧している。すなわち、この状態で、可動接点は可動接点金属板の弾性で固定接点に接触されてオン状態に保持される。
以上の無通電タイプのブレーカは、周囲温度が設定温度よりも高くなると、バイメタルが反転して可動接点金属板の接点を固定接点金属板から離してオフ状態に切り換える。このように、ブレーカは、周囲温度で作動するのが本来の姿だが、実際には可動接点金属板に通電されることによって、可動接点金属板がジュール熱で発熱して、この熱によってバイメタルが加熱されて変形することがある。すなわち、ブレーカが、実際の動作温度よりも低い温度で動作してしまうことがある。ここで、無通電タイプのブレーカは、可動接点金属板をバイメタルとしないので、可動接点金属板の電気抵抗を小さくできる。しかしながら、この構造の無通電タイプのブレーカにおいても、周囲温度が設定温度まで上昇しない状態において、ブレーカの電流が増加すると、バイメタルが反転してオフ状態に切り換えられることがある。それは、可動接点金属板のジュール熱による発熱が、電流の二乗と電気抵抗の積に比例して大きくなるからである。このため、ブレーカの電流が増加すると、可動接点金属板が電流のジュール熱で発熱し、加熱された可動接点金属板がバイメタルを加熱して、バイメタルが反転してオフ状態に切り換えられる。とくに、周囲温度が高い状態では、可動接点金属板の発熱によってバイメタルが反転しやすく、周囲温度が設定温度まで上昇しない状態であっても、電流によってオフ状態に切り換えられることがある。このように、設定温度にならない状態においてもオフ状態に切り換えられることがあるブレーカは、大きな電流が流れる用途には使用できず、用途が制限される欠点がある。
以上の欠点は、可動接点金属板の断面積を大きく、すなわち厚い金属板として、電気抵抗を小さくして防止できる。しかしながら、可動接点金属板に厚い金属板を使用すると、可動接点金属板の弾性力が変化するので、これを動作させるバイメタルも可動接点金属板の接点をオフに切り換えできるものに変更する必要がある。ブレーカの接点をオフ状態に切り換える設定温度は、可動接点金属板とバイメタルの弾性、すなわちヤング率のバランスで特定される。このため、可動接点金属板を厚くして弾性が変化すると、これに応じてバイメタルの弾性も調整する必要があり、バイメタルが反転して、可動接点金属板の可動接点をオフに切り換える温度を設定値に調整するのが難しくなる。とくに、パック電池などに内蔵される無通電タイプのブレーカは、全体の厚さを約1mm程度と極めて小型化することが要求されることから、可動接点金属板とバイメタルの弾性バランスからオフ状態に切り換えられる設定温度を特定の温度範囲としながら、オフ状態に切り換えられる最大電流をより大きくするのは極めて難しくなる。
以上のように、ブレーカにより多くの電流を流すようにするためには、可動接点金属板に流れる電流に起因する発熱を考慮し、ブレーカ自体の温度上昇の影響を低減させる必要がある。本発明者は、当初、ブレーカを並列に接続することで全体に流れる電流を分流し、各ブレーカに流れる電流を小さくすることによって、可動接点金属板がジュール熱で発熱されるのを有効に防止して、ブレーカ自体の温度上昇の影響を低減できると考えていた。たとえば、2個のブレーカを並列接続して全体に10Aの電流を流す場合、各ブレーカには、5Aの電流が流れることになるので、各ブレーカにおけるジュール熱による発熱を低減してブレーカ自体の温度上昇を低減できると考えていた。しかしながら、実際には、単一のブレーカに10Aの電流を流すことによるブレーカ内の温度上昇と、2個のブレーカを並列接続して全体に10Aの電流を流す場合における各ブレーカの温度上昇にはほとんど差がなく、単に2個のブレーカを並列接続する構造では、ブレーカ自体の温度上昇を低減できないことが判明した。
さらに、本明者が鋭意試験した結果、複数のブレーカを並列接続する構造においては、ブレーカの温度上昇の影響は、ブレーカの内部よりも、ブレーカの外部、すなわち、並列接続するための接続部分での発熱の影響が大きいことが判明した。たとえば、図32に示すように、導電プレート131を介して2個のブレーカ130を並列接続したブレーカ装置の場合、各ブレーカ130の接続端子141、142と導電プレート131との接続は、抵抗溶接やスポット溶接を用いていた。この構成においては、ブレーカ130の接続端子141、142と導電プレート131との接続部分に電流が集中しやすく、この結果、大電流が通電されると、ジュール熱が発生してブレーカを加熱し、ブレーカが動作することが判明した。
本発明は、従来のこのような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、大電流での熱による誤動作のリスクを低減したブレーカ装置を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明のブレーカ装置は、複数のブレーカ30と、複数のブレーカ30を並列に接続してなる金属板の導電プレート31とを備えている。ブレーカ30は、外装ケース1と、外装ケース1の内部に配置してなる固定接点5を有する固定接点金属板4と、固定接点金属板4の固定接点5と対向する位置に可動接点7を配置する弾性アーム部6Aを有し、かつ弾性アーム部6Aを変形できるように弾性アーム部6Aの一端の固定部6Bを外装ケース1に固定してなる可動接点金属板6と、固定接点金属板4に接続されて外装ケース1から突出する固定側の接続端子42と、可動接点金属板6に接続されて外装ケース1から突出する可動側の接続端子41とを備えている。導電プレート31は、ブレーカ30の固定側の接続端子42に接続してなる固定側の導電プレート31Bと、ブレーカ30の可動側の接続端子41に接続してなる可動側の導電プレート31Aとを備えており、固定側の導電プレート31Bが固定側の接続端子42に接続され、可動側の導電プレート31Aが可動側の接続端子41に接続されて、一対の導電プレート31を介して複数のブレーカ30を並列に接続している。可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aは、金属板を非溶融状態として、可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aの金属板を、直接に又は導電性金属板を介して面接触状態として電気接続している。
上記構成により、複数のブレーカを並列接続して、より大電流に対応可能なブレーカ装置を構成すると共に、ブレーカと導電プレートとの接続部分で抵抗値が高くなって発熱する事態を抑制できる。とくに、ブレーカの外装ケースから外部に突出する可動側の接続端子を非溶融状態で導電プレートに電気接続するので、抵抗溶接などの固定方法を使用することなく可動側の接続端子を導電プレートに固定して、溶接部分に生じていた発熱を回避でき、大電流での熱による誤動作のリスクを低減できる。
さらに、上記構成によれば、可動側の接続端子を非溶融状態で導電プレートに電気接続するので、導電プレートや可動側の接続端子には電気抵抗の小さいものを使用できる。それは、金属同士を抵抗溶着やスポット溶着させるには、金属自体にある程度の抵抗が必要となるからである。以上のブレーカ装置では、可動側の接続端子を非溶融状態で導電プレートに電気接続するので、導電プレートや可動側の接続端子には従来よりも電気抵抗の小さい材質のものを使用でき、これにより、大電流でのジュール熱の発生による温度上昇を有効に防止できる。
本発明のブレーカ装置は、可動側の導電プレート31Aの通電方向における長さあたりの電気抵抗を、可動接点金属板6の通電方向における長さあたりの電気抵抗よりも小さくすることができる。
本明細書において、導電プレート及び可動接点金属板の通電方向とは、等価回路における通電方向であって、図においては、導電プレート及び可動接点金属板の延長方向を意味している。
上記構成により、複数のブレーカの可動側の接続端子が接続される導電プレートを低抵抗にして、大電流による発熱を効果的に抑制できる。
本発明のブレーカ装置は、ブレーカ30の可動側の接続端子41の通電方向における長さあたりの電気抵抗を、可動接点金属板6の弾性アーム部6Aの通電方向における長さあたりの電気抵抗よりも小さくすることができる。
本明細書において、可動側の接続端子及び弾性アーム部の通電方向とは、等価回路における通電方向であって、図においては、可動側の接続端子及び弾性アーム部の延長方向を意味している。
上記構成により、可動側の接続端子の電気抵抗を弾性アーム部より低抵抗にできるので、可動側の接続端子と導電プレートとの接続部分における電気抵抗を小さくして、大電流による発熱を効果的に抑制できる。
本発明のブレーカ装置は、可動側の接続端子41を、弾性アーム部6Aよりも厚く成形することができる。
上記構成により、簡単かつ容易に可動側の接続端子の電気抵抗を弾性アーム部より低抵抗にできる。また、導電プレートとの機械的な連結強度を向上できる。
本発明のブレーカ装置は、可動側の接続端子41を2枚の可動側の導電プレート31Aで挟着して固定することができる。
上記構成により、接続端子を2枚の導電プレートで挟着することで、連結強度を高くしながら、接触面積を広くして低抵抗にできる。
本発明のブレーカ装置は、可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aとをネジ止めして接続することができる。
本発明のブレーカ装置は、可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aとを、これらを貫通するリベット35をかしめ加工して連結することができる。
本発明のブレーカ装置は、可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aとをクランプして連結することができる。
本発明のブレーカ装置は、可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aとを圧着して固定することができる。
本発明のブレーカ装置は、可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aとをハンダ付け又は銀ロウ付けして連結することができる。
本発明のブレーカ装置は、可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aとを圧接して連結するすることができる。
本発明のブレーカ装置は、可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aとを一体成形することができる。
上記構成により、可動側の接続端子と可動側の導電プレートとを一体的に成形することで、接続部分をなくして低抵抗にできる。
本発明のブレーカ装置は、固定側の導電プレート31Bが固定側の接続端子42を弾性的に押圧する弾性押圧部39を有して、この弾性押圧部39の外側部を固定側の接続端子42に抵抗溶接またはスポット溶接して電気接続することができる。
本発明のブレーカ装置は、固定側の接続端子42と固定側の導電プレート31Bとを一体成形することができる。
上記構成により、固定側の接続端子と固定側の導電プレートとを一体的に成形することで、接続部分をなくして低抵抗にできる。
本発明のブレーカ装置は、ブレーカ30が、固定接点金属板4を可動接点金属板6よりも厚く成形することができる。
本発明のブレーカ装置は、導電プレート31を、導電率を30%IACS〜102%IACSとする金属材とすることができる。
以上の構成により、導電プレートの電気抵抗を小さくして、大電流でのジュール熱の発生による温度上昇を有効に防止できる。
本発明のブレーカ装置は、2個のブレーカ30を並列に接続することができる。
以上の構成により、極めて簡単な構造で、各ブレーカに流れる電流を小さくして、通電による発熱の影響を低減できる。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための無通電タイプのブレーカを例示するものであって、本発明はブレーカを以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
以下のブレーカ装置は、主としてパック電池に内蔵され、電池や周囲温度が高温になり、あるいはパック電池が異常な状態で使用されるときに、ブレーカで電流を遮断する用途に使用される。ただし、本発明のブレーカ装置は、用途をパック電池に特定するものではなく、たとえばモータ等のように温度上昇を検出して電流を遮断する全ての用途に使用できる。
図1ないし図18に示すブレーカ装置は、複数のブレーカ30と、これらのブレーカ30を並列に接続してなる金属板の導電プレート31とを備えている。
各ブレーカ30は、外装ケース1と、外装ケース1の内部に配置してなる固定接点5を有する固定接点金属板4と、固定接点金属板4の固定接点5と対向する位置に可動接点7を配置する弾性アーム部6Aを有し、かつ弾性アーム部6Aを変形できるように弾性アーム部6Aの一端の固定部6Bを外装ケース1に固定してなる可動接点金属板6とを備えている。さらに、ブレーカ30は、固定接点金属板4に接続されて外装ケース1から突出する固定側の接続端子42と、可動接点金属板6に接続されて外装ケース1から突出する可動側の接続端子41とを備えている。図に示すブレーカ30は、固定接点金属板4の一端を外装ケース1の外側に突出させて、この突出部4Xを固定側の接続端子42とし、可動接点金属板6の一端を外装ケース1の外部に突出させて、この突出部6Xを可動側の接続端子41としている。ただ、ブレーカは、必ずしも固定接点金属板と固定側の接続端子とを1枚の金属板で構成し、また、可動接点金属板と可動側の接続端子とを1枚の金属板で構成する構造には限定しない。たとえば、固定側の接続端子は、固定接点金属板と別部材の金属板として固定接点金属板に積層、固定して接続することができ、また、可動側の接続端子は、可動接点金属板と別部材の金属板として可動接点金属板に積層、固定して接続することができる。このように、固定接点金属板と固定側の接続端子とを別の金属板とし、また、可動接点金属板と可動側の接続端子とを別の金属板とする構造は、固定側の接続端子を固定接点金属板よりも低抵抗な金属板とし、また、可動接点金属板を可動側の接続端子よりも低抵抗な金属板とすることで、導電プレートとの接続部分をより低抵抗にできる。各ブレーカ30は、好ましくは、固定接点金属板4と可動接点金属板6とを同一形状で同一材質としている。
導電プレート31は、複数のブレーカ30を並列に接続する金属板で、導電率と熱伝導率に優れた金属板が使用される。このような金属板として、標準焼きなまし銅の導電率を100%とするIACS(International Annealed Copper Standard:国際焼きなまし銅線標準)において、導電率を30%IACS〜102%IACSとする金属材であって、たとえば銅や銅合金が使用できる。導電プレート31は、これらの金属板を、複数のブレーカ30を並列接続できる所定の形状、たとえば、帯状やコ字状に加工して使用される。
導電プレート31は、ブレーカ30の固定側の接続端子42に接続してなる固定側の導電プレート31Bと、ブレーカ30の可動側の接続端子41に接続してなる可動側の導電プレート31Aとを備えている。ブレーカ装置は、固定側の導電プレート31Bが固定側の接続端子42に接続され、可動側の導電プレート31Aが可動側の接続端子41に接続されて、一対の導電プレート31を介して複数のブレーカ30を並列に接続している。
図1ないし図17に示すブレーカ装置は、2個のブレーカ30を、可動側の接続端子41と固定側の接続端子42が同方向を向く姿勢で互いに平行に配置すると共に、対向する可動側の接続端子41同士を可動側の導電プレート31Aで接続し、対向する固定側の接続端子42同士を固定側の導電プレート31Bで接続している。図に示すブレーカ装置は、2個のブレーカ30を並列に接続するが、ブレーカ装置は、3個以上のブレーカを並列に接続することもできる。このブレーカ装置は、各ブレーカに流れる電流をさらに小さくして、通電による発熱の影響を低減できる。
さらに、図に示すブレーカ装置は、互いに平行に配置される複数のブレーカ30の間に、隙間32を設けている。複数のブレーカ30の間に隙間32を設ける構造は、互いに隣接するブレーカ30同士の熱による影響を少なくできる特徴がある。互いに隣接するブレーカ30同士の間隔(d)は、0以上であって、たとえば、5mm以上とする。ただ、ブレーカ30同士の間隔(d)が大きすぎると、ブレーカ装置全体の外形、とくにブレーカ30の短手方向である横幅が大きくなると共に、導電プレート31が長くなって製造コストが高くなる。したがって、ブレーカ30同士の間隔(d)は、100mm以下であって、好ましくは50mm以下とする。ただ、ブレーカ同士の間には、必ずしも隙間を設ける必要はなく、詳細には後述するが、隣接するブレーカ同士を接近する状態で配置することもできる。このブレーカ装置は、全体の外形を小さくしてコンパクトにできる。
さらに、ブレーカ装置は、ブレーカ30の可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aとを低抵抗な状態で電気接続するために、抵抗溶接やスポット溶接することなく、非溶融状態で電気接続している。すなわち、可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aとは、可動側の接続端子41と導電プレート31の金属板を非溶融状態として、可動側の接続端子41と導電プレート31の金属板を、直接に又は導電性金属板を介して面接触状態として電気接続している。このような接続方法として、可動側の接続端子41を、2枚の可動側の導電プレート31Aで挟着して面接触状態とし、あるいは、挟着することなく1枚の可動側の導電プレート31Aを面接触させた状態で、ねじ止め、リベットによるかしめ加工、クランプ、圧着、ハンダ付けや銀ロウ付け、圧着、圧接等により接続する。可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aは、好ましくは、直接に面接触状態として接続するが、可動側の接続端子と可動側の導電プレートの間に導電性金属板(図示せず)を介在させて接続することもできる。このような導電性金属板には、前述の導電率を30%IACS〜102%IACSとする金属材、たとえば銅や銅合金が使用できる。
以上のように、可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aとを非溶融状態で電気接続する方法は、導電プレート31に低抵抗な金属を使用できる。それは、抵抗溶接やスポット溶接等では、金属自体の抵抗による発熱で金属同士を溶融状態として接合させるため、導電プレート31には溶接できる程度の電気抵抗が必要となるが、前述のように、非溶融状態で電気接続する構造では、導電プレート31には電気抵抗が不要となるからである。ここで、導電プレート31は、好ましくは、通電方向における長さあたりの電気抵抗を、可動接点金属板の通電方向における長さあたりの電気抵抗よりも小さくする。このように、導電プレート31を低抵抗にすることで、大電流による発熱を効果的に抑制できる。
以下、ブレーカの接続端子と導電プレート31との接続例を詳述する。
図2ないし図9に示すブレーカ装置は、各ブレーカ30の可動側の接続端子41を、2枚の可動側の導電プレート31Aで挟着して固定すると共に、各ブレーカ30の固定側の接続端子42を、2枚の固定側の導電プレート31Bで挟着して固定している。図の導電プレート31は、帯状の金属板としている。これらのブレーカ装置は、対向する可動側の接続端子41同士を2枚の導電プレート31で挟着すると共に、反対側において対向する固定側の接続端子42同士を2枚の導電プレート31で挟着する状態に固定している。この状態で、可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42の両面を導電プレート31に面接触させて電気接続している。
図2と図3に示すブレーカ装置は、可動側の接続端子41と固定側の接続端子42を挟着してなる2枚の導電プレート31を、ねじ止めによって固定している。図のブレーカ装置は、導電プレート31の両端部において、2枚の導電プレート31を貫通する止ネジ33を挿通すると共に、この止ネジ33の先端をナット34にねじ込んで、2枚の導電プレート31の間に介在された可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42を挟着状態に保持している。図に示すブレーカ装置は、導電プレート31の両端部を可動側の接続端子41や固定側の接続端子42の外側まで延長しており、可動側の接続端子41や固定側の接続端子42の外側において、止ネジ33とナット34で固定している。ただ、ブレーカ装置は、導電プレートの両端部に加えて、接続端子の間の中間部分を止ネジとナットで固定することもできる。さらに、ブレーカ装置は、接続端子を貫通する状態で止ネジをねじ込んで、2枚の導電プレートと接続端子をねじ止めすることもできる。
図4と図5に示すブレーカ装置は、可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42を挟着してなる2枚の導電プレート31を、リベット35を介して固定している。図のブレーカ装置は、導電プレート31の両端部において、2枚の導電プレート31を貫通するリベット35を挿通すると共に、このリベット35の先端をかしめ加工して、2枚の導電プレート31の間に介在された可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42を挟着状態に保持している。図に示すブレーカ装置は、2枚の導電プレート31と可動側の接続端子41とを貫通する状態でリベット35を挿通し、また、2枚の導電プレート31と固定側の接続端子42とを貫通する状態でリベット35を挿通して固定している。この構造は、導電プレート31の先端を可動側の接続端子41や固定側の接続端子42の外側に突出させることなく接続できるので、全体の外形を小さくできる特徴がある。ただ、ブレーカ装置は、リベットを接続端子に貫通させることなく、接続端子の外側において接続することもできる。このブレーカ装置は、導電プレートの両端部を接続端子の外側まで延長して、接続端子の外側においてリベットで固定する。さらに、導電プレートの両端部に加えて、接続端子の間の中間部分をリベットで固定することもできる。
図6と図7に示すブレーカ装置は、可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42を挟着してなる2枚の導電プレート31を、クランプにより固定している。図のブレーカ装置は、2枚の導電プレート31を、挟着具36で両面からクランプしている。図に示す挟着具36は、弾性を有する金属板をコ字状に成形したものである。この挟着具36は、両側の折曲片を押圧片36Aとして、積層された2枚の導電プレート31を、図7において上下の両面から押圧している。図のブレーカ装置は、導電プレート31の両端部であって、可動側の接続端子41や固定側の接続端子42と対向する部分を挟着具36で挟着して、2枚の導電プレート31の間に介在された可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42を挟着状態に保持している。
図8と図9に示すブレーカ装置は、可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42を挟着してなる2枚の導電プレート31を、圧接して可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42に連結している。このブレーカ装置は、図9に示すように、可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42を挟着してなる2枚の導電プレート31を、上下の両面から高い圧力でプレスして接合している。なお、図8においては、導電プレート31の圧接された部分をわかりやすくするために、プレス部分をクロスハッチングで表示している。この接続方法は、2枚の導電プレート31を連結するための部材を必要としないので、導電プレート31と可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42をより低抵抗な状態で接続できる。
以上のブレーカ装置は、各ブレーカ30の可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42を、2枚の導電プレート31で挟着して接続しているが、各ブレーカ30の可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42は、1枚の導電プレート31で接続することもできる。図10ないし図17に示すブレーカ装置は、各ブレーカ30の可動側の接続端子41を、1枚の可動側の導電プレート31Aで接続すると共に、各ブレーカ30の固定側の接続端子42を、1枚の固定側の導電プレート31Bで接続している。このブレーカ装置は、可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42の対向面を導電プレート31に面接触させて電気接続している。
図10と図11に示すブレーカ装置は、導電プレート31を帯状の金属板としており、各導電プレート31の表面に可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42を積層すると共に、可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42の外周縁に沿ってハンダ付けして連結している。互いに積層される導電プレート31と可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42は、対向面において面接触して電気接続されると共に、ハンダ37を介して連結されて固定される。この接続方法は、導電プレート31を1枚としながら、各ブレーカ30の可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42を簡単に接続できる。ただ、ブレーカ装置は、ハンダ付けに代わって、銀ロウ付けして接続端子を導電プレートに連結することもできる。この方法は、より低抵抗に接続できる。
さらに、図12に示すブレーカ装置は、導電プレート31を平面視コ字状の金属板としており、コ字状の両先端部を各ブレーカ30の可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42に圧着して固定している。さらに、図に示すブレーカ装置は、導電プレート31の圧着部分をハンダ付けしている。この導電プレート31は、図13に示すように、コ字状の各先端部の両側に圧着片38を設けており、この圧着片38を介して可動側の接続端子41を接続し、また、固定側の接続端子42を接続している。この導電プレート31は、以下のようにして、ブレーカ30の可動側の接続端子41を連結し、また、固定側の接続端子42を連結する。
(1)導電プレート31のコ字状の各先端部の両側に設けた圧着片38を起立姿勢に折曲する。
(2)起立姿勢で対向する一対の圧着片38の間に、ブレーカ30の可動側の接続端子41(固定側の接続端子42)を配置する。
(3)対向する圧着片38を内側に折り曲げて可動側の接続端子41(固定側の接続端子42)の表面に圧着する。
(4)可動側の接続端子41(固定側の接続端子42)と圧着片38との境界部分をハンダ付けする。
このように、導電プレート31の圧着部分をハンダ37で接続する構造は、導電プレート31と可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42をより確実に固定できる特徴がある。さらに、圧着構造に限らず、前述のねじ止め、リベットによるかしめ止め、クランプ等の方法で導電プレート31と可動側の接続端子41を接続し、また、導電プレート31と固定側の接続端子42を接続する場合においても、ハンダ付けと併用することで、より確実に固定できる特徴がある。
さらに、図14ないし図17に示すブレーカ装置は、2個のブレーカ30を互いに接近する状態で配置すると共に、各ブレーカ30の可動側の接続端子41同士を、互いに接近する状態で可動側の導電プレート31Aの端部に接続し、各ブレーカ30の固定側の接続端子42同士を、互いに接近する状態で固定側の導電プレート31Bの端部に接続している。図14ないし図17に示すブレーカ装置は、導電プレート31を、ブレーカ30の長手方向に延びる帯状の金属板としており、各導電プレート31の端部に可動側の接続端子41及び固定側の接続端子42を圧着構造で接続している。これらの図に示すブレーカ装置は、2個のブレーカ30の間隔(d)を5mm以下としている。このブレーカ装置は、ブレーカ30の短手方向である横幅(D)を小さくして全体をコンパクトにできる。図に示すブレーカ装置は、2個のブレーカ30の間に隙間32を設けているが、2個のブレーカは、隙間を設けることなく互いに接触させることもできる。
以下、図14ないし図17に示すブレーカ装置の、可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aの接続構造について詳述する。なお、固定側の接続端子42と固定側の導電プレート31Bについては、詳細な説明は省略するが、可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aの接続構造と同様にして接続することができる。
図14と図15に示すブレーカ装置は、可動側の導電プレート31Aの端部の表面に、各ブレーカ30の可動側の接続端子41を互いに接近する状態で並べて積層すると共に、可動側の導電プレート31Aの端部と可動側の接続端子41との積層部に、帯状の金属バンド43を巻き付けて圧着して接続している。金属バンド43は、可動側の導電プレート31Aと可動側の接続端子41の積層部において、ブレーカ30の幅方向に巻き付けており、金属バンド43の両端部を圧着片44として、180度折り返す状態で積層部にラップして圧着している。この金属バンド43は、可動側の導電プレート31Aと可動側の接続端子41の積層部のほぼ全体を被覆できる幅と長さに成形している。このような金属バンド43には、好ましくは低抵抗な金属板であって、銅または銅合金が使用できる。金属バンド43には、たとえば、導電率を102%IACSとする無酸素銅を使用する。
図14に示すブレーカ装置は、図15に示すように、可動側の導電プレート31Aの上面に可動側の接続端子41を積層すると共に、可動側の導電プレート31Aの下面側に金属バンド43を積層し、さらに、この金属バンド43の両端部を可動側の接続端子41の上面側に折り返して圧着片44とし、この圧着片44を可動側の接続端子41の上面に圧着して接続している。このブレーカ装置は、圧着部において、上から順に、圧着片44、可動側の接続端子41、可動側の導電プレート31A、金属バンド43の順に積層して圧着している。ただ、ブレーカ装置は、図示しないが、可動側の導電プレートの上面に可動側の接続端子を積層すると共に、積層された可動側の接続端子の上面側に金属バンドを積層し、この金属バンドの両端部を可動側の導電プレートの下面側に折り返して圧着片とし、この圧着片を可動側の導電プレートの下面に圧着して接続することもできる。このブレーカ装置は、圧着部において、上から順に、金属バンド、可動側の接続端子、可動側の導電プレート、圧着片の順に積層されて圧着される。さらに、図示しないが、可動側の導電プレートと可動側の接続端子と金属バンドは、以上の積層状態から上下反転する状態に積層して圧着することもできる。
さらに、図14に示すブレーカ装置は、圧着片44の圧着部において、凹凸部45を設けており、この凹凸部45を介して、互いに積層された可動側の導電プレート31Aと可動側の接続端子41と圧着片44とが位置ずれするのを防止している。このブレーカ装置は、図15に示すように、圧着片44の圧着部を押圧ロッド46でプレス加工して、凹凸部45を成形している。押圧ロッド46でプレスされる圧着片44は、プレス面に凹部45aが形成されると共に、この凹部45aの裏面側に突出する凸部45bが形成される。さらに、圧着片44の凸部45bで押圧される可動側の接続端子41は、押圧面に凹部45cが形成されると共に、この凹部45cの裏面側に突出する凸部45dが形成される。さらに、可動側の接続端子41の凸部45dで押圧される可動側の導電プレート31Aは、押圧面に凹部45eが形成される。すなわち、凹凸部45は、可動側の導電プレート31Aの凹部45eに可動側の接続端子41の凸部45dが案内され、可動側の接続端子41の凹部45cに圧着片44の凸部45bが案内される状態で位置決めされる。以上の凹凸部45は、極めて簡単な構造で、可動側の導電プレート31Aと可動側の接続端子41と圧着片44との位置ずれを確実に防止できる。
さらに、図16と図17に示すブレーカ装置は、金属バンド43を使用することなく、可動側の導電プレート31Aに圧着片44を設けて、この圧着片44を介して可動側の導電プレート31Aと可動側の接続端子41とを圧着して接続している。図16に示す可動側の導電プレート31Aは、端部の両側に突出して圧着片44を設けており、この圧着片44を180度折り返す状態で、可動側の導電プレート31Aと可動側の接続端子41の積層部にラップして圧着している。
図16に示すブレーカ装置は、図17に示すように、可動側の導電プレート31Aの上面に可動側の接続端子41を積層すると共に、可動側の導電プレート31Aの両側に突出する圧着片44を可動側の接続端子41の上面側に折り返して、この圧着片44を可動側の接続端子41の上面に圧着して接続している。このブレーカ装置は、圧着部において、上から順に、圧着片44、可動側の接続端子41、可動側の導電プレート31Aの順に積層して圧着している。ただ、ブレーカ装置は、以上の積層状態から上下反転する状態に積層して圧着することもできる。
さらに、図16と図17に示すブレーカ装置も、圧着片44の圧着部において、凹凸部45を設けており、この凹凸部45を介して、互いに積層された可動側の導電プレート31Aと可動側の接続端子41と圧着片44とが位置ずれするのを防止している。この凹凸部45も、前述の凹凸部45と同様に、圧着片44の圧着部を押圧ロッド46でプレス加工して成形される。この凹凸部45も、可動側の導電プレート31Aの凹部45eに可動側の接続端子41の凸部45dが案内され、可動側の接続端子41の凹部45cに圧着片44の凸部45bが案内される状態で位置決めされて、可動側の導電プレート31Aと可動側の接続端子41と圧着片44との位置ずれが確実に防止される。
以上のブレーカ装置は、2個のブレーカ30を、可動側の接続端子41と固定側の接続端子42が同方向を向く姿勢で互いに平行に配置しているが、ブレーカ装置は、2個のブレーカの配列を以上の配列には特定しない。図18に示すブレーカ装置は、2個のブレーカ30を、各ブレーカ30の長手方向に一直線上に並べて並列に接続している。このブレーカ装置は、各ブレーカ30の固定側の接続端子42同士が互いに対向すると共に、可動側の接続端子41同士が互いに反対側に位置するように配列している。
対向する固定側の接続端子42同士は、互いに積層されると共に、この積層部に固定側の導電プレート31Bが接続されている。固定側の導電プレート31Bは、固定側の接続端子42の積層部に圧着して接続されている。図に示す固定側の導電プレート31Bは、帯状の金属板で、固定側の接続端子42の積層部の下面側に積層されると共に、先端部を圧着片44として固定側の接続端子42の積層部の上面側に折り返して、この圧着片44を固定側の接続端子42の上面に圧着して接続している。圧着部から引き出された固定側の導電プレート31Bは、ブレーカ装置の一方の出力端子47としている。さらに、固定側の導電プレート31Bは、圧着片44の圧着部に、前述の凹凸部45を設けて、互いに接続される固定側の接続端子42同士と固定側の導電プレート31Bの位置ずれを防止している。
また、互いに反対側に位置する可動側の接続端子41同士は、可動側の導電プレート31Aを介して接続されている。各々の可動側の導電プレート31Aは、可動側の接続端子41に圧着して接続されている。図に示す可動側の導電プレート31Aは、ブレーカ30の長手方向に沿って延びる帯状の金属板で、両端部をL字状に折曲して可動側の接続端子41を接続する接続部48としている。この可動側の導電プレート31Aは、接続部48を可動側の接続端子41の下面に積層すると共に、接続部48の先端部を圧着片44として可動側の接続端子41の上面側に折り返して、接続部48と圧着片44とで可動側の接続端子41を挟着する状態で、圧着片44を可動側の接続端子41の上面に圧着して接続している。さらに、可動側の導電プレート31Aは、圧着片44の圧着部に、前述の凹凸部45を設けて、互いに接続される可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aの位置ずれを防止している。さらに、図に示す可動側の導電プレート31Aは、ブレーカ装置の他方の出力端子47を、中央部の外側に突出して設けている。このブレーカ装置は、固定側の導電プレート31Bの出力端子47と、可動側の導電プレート31Aの出力端子47を外部端子として外部の機器に接続される。さらに、図に示すブレーカ装置は、固定側の導電プレート31Bと可動側の導電プレート31Aの間に絶縁シート49を配置して互いにショートするのを防止している。
以上のブレーカ装置は、2個のブレーカ30を短手方向に並べることなく、長手方向に並べて直線状に連結するので、ブレーカ装置全体の横幅(D)を小さくできる特徴がある。このように、横幅(D)を小さくできるブレーカ装置は、幅狭なスペースであっても、省スペースに配置できる特徴を実現できる。また、このブレーカ装置は、2個のブレーカ30を長手方向に連結するので、2個のブレーカ30を互いに離間する状態で配置して、ブレーカ30同士の熱による影響を少なくできる特徴もある。
さらに、このブレーカ装置は、図示しないが、可動側の導電プレートを折曲することで、さらに横幅(D)を小さくできる。たとえば、ブレーカ装置は、図18に示す状態から、可動側の導電プレート31Aを接続部48との境界部分(図において一点鎖線で表示)で折曲して、ブレーカ30の上面または下面に積層することができる。このブレーカ装置は、全体の横幅(D)を、各ブレーカの横幅にほぼ等しくして、幅方向の外形を小さくできる。このブレーカ装置は、積層されるブレーカと可動側の導電プレートとの間に絶縁シートを配設することで、ショート等の弊害を有効に防止できる。また、このブレーカ装置は、図18の鎖線で示すように、可動側の導電プレート31Aに設ける出力端子47の位置をずらすことで、固定側の導電プレート31Bの出力端子とのショートを防止できる。
さらに、ブレーカ装置は、図18に示す状態から、可動側の導電プレート31Aを幅方向に折曲、湾曲、あるいは巻回することができる。このように、可動側の導電プレートを幅方向に折曲し、あるいは湾曲し、あるいはまた巻回する構造は、可動側の導電プレートの抵抗を大きくすることなく幅を狭くし、あるいは、可動側の導電プレートの面積を広くして抵抗を小さくしながら幅を狭くして、ブレーカ装置全体の横幅(D)を小さくできる。さらにまた、ブレーカ装置は、可動側の導電プレートをロッド状、たとえば角柱状や円柱状とすることもできる。この構造のブレーカ装置は、可動側の導電プレートの抵抗を大きくすることなく幅を狭くし、あるいは、可動側の導電プレートの体積を大きくして抵抗を小さくしながら幅を狭くし、しかも可動側の導電プレートに剛性を持たせて、ブレーカ装置全体の強度を高めることができる。
図2ないし図18に示すブレーカ装置は、ブレーカ30の固定側の接続端子42と固定側の導電プレート31Bについても、抵抗溶接やスポット溶接することなく、非溶融状態で電気接続している。ただ、固定接点金属板4は、可動接点金属板6に比べて、金属板の厚さに制約を受けないので、可動接点金属板6よりも厚く成形して、低抵抗にすることができる。このため、固定側の接続端子42は、前述の接続方法以外の方法で接続することも可能である。
このようなブレーカの固定側の接続端子と固定側の導電プレートの接続方法の一例を図19に示す。この図に示す固定側の導電プレート31Bは、固定側の接続端子42を弾性的に押圧する弾性押圧部39を有している。図の固定側の導電プレート31は、固定側の接続端子42との接続部において、固定側の接続端子42に向かって突出する湾曲形状の凸部を成形して弾性押圧部39としている。さらに、固定側の導電プレート31Bは、弾性押圧部39を固定側の接続端子42に押圧する状態で、弾性押圧部39の外側部を固定側の接続端子42にスポット溶接(図において矢印で表示)して固定している。この接続方法によると、固定側の導電プレート31Bは、弾性押圧部39の弾性により、固定側の接続端子42に押圧状態で接触し、この接触部分により電気接続されて通電される。
以上のように、本発明のブレーカ装置は、複数のブレーカ30を並列に接続する構造を特徴とするものである。したがって、ブレーカ30には、現在すでに使用され、あるいは今後開発されるすべてのブレーカが使用される。以下、ブレーカの一例を詳述する。
図20ないし図25に示すブレーカ30は、外装ケース1と、この外装ケース1の内部に配置している固定接点5を有する固定接点金属板4と、この固定接点金属板4の固定接点5と対向する位置に可動接点7を配置する弾性アーム部6Aを有する可動接点金属板6とを備えている。さらに、図に示すブレーカは、無通電タイプのブレーカとするので、周囲温度で変形して可動接点金属板をオンからオフに切り換えるバイメタルを、可動接点金属板と固定接点金属板との間に配設している。さらに、図のブレーカ30は、バイメタル8を加温するヒーター9も備える。図のブレーカ30は、ヒーター9を備えるが、本発明のブレーカは、必ずしもヒーターを内蔵する必要はない。
可動接点金属板6の弾性アーム部6Aは、バイメタル8で押圧されない状態では、それ自体の弾性で可動接点7を固定接点5に接触させる弾性を有する。バイメタル8は、弾性アーム部6Aとヒーター9との間に配置される。このバイメタル8は、設定温度よりも低い状態では熱変形しない非変形状態にある。この状態ではバイメタル8が弾性アーム部6Aを押さず、ブレーカ30は、弾性アーム部6Aの弾性で可動接点7を固定接点5に接触させてオン状態となる。ブレーカ30は、設定温度よりも高くなると、バイメタル8が熱変形して反転して、反転湾曲状態となる。反転湾曲状態のバイメタル8は、可動接点7を固定接点5から離してオフ状態に切り換える。
バイメタル8は、温度が上昇して熱変形するように、熱膨張率が異なる金属を積層したものである。バイメタル8は、外形を四角形とし、かつ中央凸に湾曲する形状である。バイメタル8は、図において、弾性アーム部6Aとヒーター9との間にあって、設定温度になると熱変形して反転し、反転湾曲状態となる。
バイメタル8は、非変形状態から反転湾曲状態に変形でき、かつ位置ずれしないように外装ケース1に設けたバイメタル収納部28に配置される。外装ケース1は、図25の平面図に示すように、四角形のバイメタル8を定位置に配置するバイメタル収納部28を設けている。外装ケース1は、バイメタル8の周囲に外周壁10を設けて、外周壁10の内側をバイメタル収納部28としている。外周壁10で囲まれるバイメタル収納部28は、その内形をバイメタル8の外形よりもわずかに大きくして、バイメタル8を非変形状態と反転湾曲状態に変形できる状態で定位置に配置している。
可動接点金属板6は、弾性変形する金属板で、外装ケース1に固定される固定部6Bと、先端に可動接点7を設けている弾性アーム部6Aとを有する。可動接点金属板6は、図21と図22に示すように、固定部6Bを外装ケース1に固定して、先端側の弾性アーム部6Aを、外装ケース1に設けている収納スペース20に配設している。可動接点金属板6は、外装ケース1に設けている第2の外壁11Bの上部に固定部6Bを固定している。可動接点金属板6は、固定部6Bの外側を外装ケース1から突出させており、この突出部6Xを可動側の接続端子41としている。
可動接点金属板6は、突出部6Xである可動側の接続端子41の通電方向における長さあたりの電気抵抗を、弾性アーム部6Aの通電方向における長さあたりの電気抵抗よりも小さくすることができる。このような可動接点金属板6は、たとえば、可動側の接続端子41を弾性アーム部6Aよりも厚く成形して実現でき、あるいは、可動側の接続端子41を弾性アーム部6Aよりも広く成形して実現できる。図に示す可動接点金属板6は、図21と図22に示すように、突出部6Xである可動側の接続端子41から弾性アーム部6Aまでの全体を一様な厚さとするが、図25に示すように、可動側の接続端子41の横幅(W1)を弾性アーム部6Aの横幅(W2)よりも広くして、通電方向における長さあたりの電気抵抗を小さくしている。ただ、可動接点金属板は、突出部を弾性アーム部よりも厚く成形して、可動側の接続端子の通電方向における長さあたりの電気抵抗を小さくすることもできる。以上のように、可動側の接続端子41の電気抵抗を弾性アーム部6Aより低抵抗とすることで、可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aとの接続部分における電気抵抗を小さくして、大電流による発熱を効果的に抑制できる。
可動接点金属板6は、収納スペース20に配置される弾性アーム部6Aを、あるいは全体を弾性変形できる金属板としている。さらに、可動接点金属板6は、この弾性アーム部6Aの先端部であって固定接点5と対向する面に可動接点7を設けている。この可動接点金属板6は、バイメタル8の非変形状態では、可動接点7を固定接点5に接触させてブレーカをオン状態とし、バイメタル8の反転湾曲状態では、バイメタル8に押される弾性アーム部6Aを弾性変形して、可動接点7を固定接点5から離してブレーカをオフ状態とする。
さらに、図21ないし図24に示す可動接点金属板6は、バイメタル8側に凸部6Cを設けている。図の可動接点金属板6は、バイメタル8に接触する一対の凸部6Cを、バイメタル8側に突出して設けている。一対の凸部6Cは、図25に示すように、可動接点金属板6の長手方向に延びる中心線m上であって、可動接点金属板6の長手方向に離して配置している。この可動接点金属板6は、一対の凸部6Cにバイメタル8の両端の外周縁部8bを接触させて互いに押圧するようにしている。図に示す凸部6Cは、外形を円弧状としており、バイメタル8の外周縁部8bを横方向に摺動させることなく確実に接触させて互いに押圧できるようにしている。図示しないが、可動接点金属板は、バイメタルの両端部と対向する下面に、複数の凸部を設けることもできる。
図20ないし図25に示すブレーカ30は、外装ケース1を、プラスチック製の本体ケース2とプラスチック部を有する蓋ケース3で形成している。図20ないし図25の外装ケース1は、本体ケース2の底部13に固定接点金属板4をインサート成形して固定して、上面に蓋ケース3を固定している。本体ケース2は、両端部分に、第1の外壁11Aと第2の外壁11Bとを突出するように設けて、第1の外壁11Aと第2の外壁11Bとの間に収納スペース20を設けている。収納スペース20は、固定接点金属板4で底面を閉塞して、蓋ケース3で上面を閉塞している。したがって、外装ケース1は、底面側の表面には固定接点金属板4が露出している。
可動接点金属板6と固定接点金属板4と蓋ケース3は、本体ケース2に固定される。本体ケース2は、バイメタル8やヒーター9を収納する収納スペース20の両側に、第1の外壁11Aと第2の外壁11Bとを設け、さらに第1の外壁11Aと第2の外壁11Bとの間を連結する対向壁12を設けて、一対の対向壁12と、一対の外壁11とで収納スペース20の周囲を囲む外周壁10を構成している。したがって、収納スペース20は、周囲を外周壁10で囲み、底面を固定接点金属板4で閉塞し、さらに上面を蓋ケース3で閉塞して内部を閉塞された中空状としている。
本体ケース2は、第1の外壁11Aに固定接点金属板4の一部を、図21と図22においては固定接点金属板4の中間部4Bを第1の外壁11Aの途中にインサート成形して固定している。したがって、固定接点金属板4は、第1の外壁11Aを貫通する状態で本体ケース2に固定され、収納スペース20の内部に露出する部分を固定接点5とし、外部に引き出される突出部4Xを固定側の接続端子42としている。
さらに、本体ケース2は、第2の外壁11Bに可動接点金属板6の固定部6Bを固定して、可動接点金属板6の弾性アーム部6Aを収納スペース20に配置している。図21と図22のブレーカ30は、第2の外壁11Bの上端面に可動接点金属板6の固定部6Bを固定している。本体ケース2は、図21、図22、及び図25に示すように、第2の外壁11B上端面に、外周壁10の上面よりも一段低い段差凹部21を設けており、この段差凹部21に可動接点金属板6の固定部6Bを嵌合させて定位置に配置している。図の本体ケース2は、この嵌着凹部21の中央部から突出して、可動接点金属板6の固定部6Bを貫通する連結凸部15を設けている。可動接点金属板6の固定部6Bには、連結凸部15を貫通させる貫通孔6Fを設けている。図25に示す連結凸部15は、水平断面形状を長円形として、可動接点金属板6の固定部6Bを正確な姿勢で段差凹部21に配置できるようにしている。さらに、図25に示す段差凹部21は、可動接点金属板6の両側部を位置決めする位置決リブ22を第2の外壁11Bの上端部に形成している。図25に示す第2の外壁11Bは、その上端面において、位置決リブ22以外の部分を、外周壁10の上面よりも低くして嵌着凹部21を設けることにより、段差形状の位置決リブ22を形成している。可動接点金属板6は、固定部6Bの両側に位置決リブ22を案内する位置決凹部6Gを設けている。可動接点金属板6は、固定部6Bに開口された貫通孔6Fに連結凸部15が挿入されると共に、固定部6Bの両側に設けた位置決凹部6Gに位置決リブ22が案内されて、第2の外壁11Bの段差凹部21の定位置に配置される。固定部6Bが段差凹部21に配置された可動接点金属板6は、接着して第2の外壁11Bに固定され、あるいは本体ケース2に固定される蓋ケース3に挟まれて、すなわち、第2の外壁11Bの段差凹部21の底面と蓋ケース3の対向面とで上下両面から挟着されて外装ケース1、51の定位置に固定される。
蓋ケース3は、図20ないし図25に示すように、本体ケース2の上端開口部側において、可動接点金属板6の外側に積層される積層金属板25と、この積層金属板25を固定している連結プラスチック26とを備えている。蓋ケース3は、内面側、すなわち、本体ケース2側に積層金属板25を表出させており、この積層金属板25で可動接点金属板6の上方をカバーする状態で、本体ケース2の開口部側に配置されている。図20ないし図25に示す蓋ケース3は、上面側において積層金属板25のほぼ全面を連結プラスチック26で被覆して絶縁している。積層金属板25は、連結プラスチック26にインサート成形して固定される。インサート成形される積層金属板25は、連結プラスチック26を成形する金型の成形室に仮止めされ、成形室に溶融状態のプラスチックを注入して連結プラスチック26に固定される。
以上の蓋ケース3は、連結プラスチック26の外周縁部を本体ケース2の外周壁10の上面に固定して、本体ケース2に固定している。蓋ケース3の連結プラスチック26は、図24に示すように、本体ケース2の外周壁10と対向する外周縁部に、本体ケース2側に突出する外周壁27を備えており、この外周壁27の内側に積層金属板25を表出させている。連結プラスチック26の外周壁27は、本体ケース2の両端部に設けている第1の外壁11Aと第2の外壁11Bに固定され、さらに対向壁12に固定される。
図24に示す外装ケース1は、蓋ケース3と本体ケース2とを正確に位置決めしながら連結するために、互いに嵌合する連結凸部15、17と連結凹部16、18とを備えている。本体ケース2は、前述のように、第2の外壁11Bの上面において、可動接点金属板6の固定部6Bを貫通して位置決めする連結凸部15を突出して設けている。蓋ケース3は、本体ケース2の第2の外壁11B側の端部において、この連結凸部15と対向する位置に、連結凸部15を案内する連結凹部16を設けている。さらに、図24に示す蓋ケース3は、本体ケース2の第1の外壁11A側の端部の両側において、外周壁27の下面から本体ケース2に向かって突出する連結凸部17を設けている。本体ケース2は、図25に示すように、これらの連結凸部17と対向する対向壁12の上面に、連結凸部17を案内する連結凹部18を設けている。以上の外装ケース1、51は、本体ケース2の第1の外壁11A側の端部において、蓋ケース3の両側の連結凸部17が本体ケース2の連結凹部18に案内されると共に、本体ケース2の第2の外壁11B側の端部において、可動接点金属板6の固定部6Bを貫通する連結凸部15が蓋ケース3の連結凹部16に案内されて、蓋ケース3が本体ケース2の正確な位置に連結される。
連結凸部15、17と連結凹部16、18を介して定位置に連結される蓋ケース3と本体ケース2は、超音波溶着して連結プラスチック26が本体ケース2に固定される。図24に示す蓋ケース3は、連結プラスチック26の外周壁27の下面であって、本体ケース2の外周壁10との対向面に位置して、超音波振動で溶融される溶融凸条19を設けている。図の蓋ケース3は、外周壁27の下面に沿って溶融凸条19を突出して設けている。この蓋ケース3は、可動接点金属板6の固定部6Bと対向する部分を除く外周縁部に、底面視略コ字状の溶融凸条19を設けている。この蓋ケース3は、前述の連結凸部15、17と連結凹部16、18とを介して本体ケース2の定位置に連結する状態で、外周部を超音波振動させて、溶融凸条19を摩擦熱で溶融させて本体ケース2の外周壁10に溶着させる。さらに、超音波振動される蓋ケース3と本体ケース3は、互いに連結された連結凸部15、17と連結凹部16、18の接触部分も摩擦熱で溶融されて互いに溶着される。ただ、外装ケースは、蓋ケースの連結プラスチックと本体ケースとを接着して、あるいは嵌着構造や係止構造で連結して固定することもできる。
図20と図21に示すブレーカ30は、バイメタル8が熱変形しない状態で、可動接点7を確実に固定接点5に接触できるように、弾性アーム部6Aの後端部を下方に押圧する押圧凸部25Aを積層金属板25の内面から突出して設けている。この可動接点金属板6は、弾性アーム部6Aの後端部が押圧凸部25Aで下向きに押圧されることで、弾性アーム部6Aの先端部が下方に付勢されて、先端の可動接点7を確実に固定接点5に接触させる。
さらに、図21ないし図24に示す外装ケース1は、本体ケース2の収納スペース20の底部にヒーター9を配置するヒーター収納部29を設けている。ヒーター収納部29は、バイメタル収納部28の内側にあって、その底部に設けられる。ヒーター収納部29は、ヒーター9を定位置に抜けないように固定する凹部である。ヒーター9は、このヒーター収納部29に接着して固定され、あるいは抜けないように嵌着して固定される。ヒーター収納部29は収納スペース20の中央部にあって、その底面を固定接点金属板4の先端部4Aで閉塞している。ヒーター収納部29は、ここにヒーター9を挿入できるように、内形をヒーター9の外形よりもわずかに大きくしている。また、ヒーター収納部29は、外周縁に沿って突出部14を設けている。ヒーター収納部29に挿入されるヒーター9は、突出部14の上面からわずかに突出して、上面に湾曲するバイメタル8を載せている。
収納スペース20は、ヒーター収納部29の底面を固定接点金属板4で閉塞し、ヒーター収納部29の外側底面を本体ケース2のプラスチックで閉塞している。本体ケース2は、ヒーター収納部29の外側で収納スペース20の底を閉塞しているプラスチック製の底部13に、固定接点金属板4をインサート成形して本体ケース2に固定している。
図20ないし図25に示すブレーカ30は、本体ケース2の収納スペース20に、底から順番に、ヒーター9とバイメタル8と可動接点金属板6の弾性アーム部6Aを収納して、本体ケース2の第1の外壁11Aには固定接点金属板4の中間部4Bを固定して、第2の外壁11Bには可動接点金属板6の固定部6Bを固定している。
固定接点金属板4は、インサート成形して本体ケース2に固定している。固定接点金属板4は、先端部4Aを収納スペース20の底部13に埋設し、中間部4Bを収納スペース20の底部13から本体ケース2の第1の外壁11Aに埋設するようにインサート成形して、本体ケース2に固定している。図21と図22の固定接点金属板4は、ヒーター収納部29の底部を閉塞する部分よりも、第1の外壁11Aに埋設される部分を高くするように段差部4Dを設けて、段差部4Dを本体ケース2の底部13に埋設して、段差部4Dの後端側を底部13の上面に露出させて、この露出部を固定接点5としている。
ヒーター9は、通電されることによって発熱して、バイメタル8を加熱する。ヒーター9は、対向面を円形あるいは長円形とする厚みのあるPTCヒーター9Aで、上面と下面に電極を設けている。ただし、ヒーターには必ずしもPTCヒーターを使用する必要はなく、通電されてバイメタル8を加熱できる全てのヒーターを使用することができる。上下面に電極を設けているヒーター9は、下面を固定接点金属板4に接触して、上面をバイメタル8を介して可動接点金属板6に接触できるようにしている。このヒーター9は、可動接点金属板6の可動接点7が固定接点5に接触するオン状態では、可動接点金属板6とバイメタル8とが非接触状態となって通電されず、可動接点金属板6の可動接点7が固定接点5から離れてオフ状態となる状態では、可動接点金属板6に接触するバイメタル8と固定接点金属板4とを介して通電されて発熱し、バイメタル8を加熱する。加熱されるバイメタル8は、図22に示すように、可動接点7を固定接点5から離すオフ状態に保持する。
このブレーカ30は、オフ状態に切り換えられた状態で、可動接点7をオフ状態に保持するので、パック電池に使用して安全性を向上できる。それは、パック電池が異常な温度になってブレーカ30がオフに切り換えられた後は、パック電池の電池からヒーター9に通電され続けてバイメタル8が加熱されるので、ブレーカ30がオン状態に復帰することなく、電池が放電されるまで電流を遮断する状態に保持できるからである。電池が完全に放電されると、ヒーターに通電できなくなってヒーターがバイメタルを加温できなくなり、ブレーカがオン状態に復帰するが、この状態では、電池は放電できなくなっているので、安全性は確保される。また、パック電池を充電器に接続して充電する状態でパック電池が異常な温度になって、ブレーカで電流を遮断する場合においても、充電器から供給される電力でヒーターに通電してオフ状態に保持できるので、ブレーカがオン状態に復帰することなく、充電器から電力が供給される間は電流を遮断する状態に保持できる。したがって、このパック電池は、ブレーカがオフに切り換えられた後は、通電状態が解除されるまでヒーターに通電してブレーカをオフ状態に保持できるので、安全性をより向上できる。
さらに、ブレーカ装置は、複数のブレーカの可動側の接続端子と可動側の導電プレートとを一体的に成形し、また、複数のブレーカの固定側の接続端子と固定側の導電プレートとを一体的に成形することができる。図26に示すブレーカ装置は、2個のブレーカ30の可動接点金属板6と可動側の導電プレート31Aとを1枚の金属板で構成して、可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aとを接続部分のない一体構造としている。また、2個のブレーカ30の固定接点金属板4と固定側の導電プレート31Bとを1枚の金属板で構成して、固定側の接続端子42と固定側の導電プレート31Bとを接続部分のない一体構造としている。この構造は、複数のブレーカ30の可動側の接続端子41を接続部分のない状態で導電プレート31に連結できるので、低抵抗にして大電流での熱による誤動作のリスクを低減できる。同様に、複数のブレーカ30の固定側の接続端子42についても、接続部分のない状態で導電プレート31に連結できるので、低抵抗にして大電流での熱による誤動作のリスクを低減できる。
以上のブレーカ装置は、例えば、パック電池に使用されて、パック電池の電池と直列に接続される保護素子として使用することができる。保護素子であるブレーカ装置は、電池温度や周囲温度を検出して、検出温度が設定温度を越えるとバイメタルを熱変形させて電流を遮断する。とくに、図に示すブレーカ装置は、2個のブレーカ30を備えているので、いずれか一方のブレーカ30の検出温度が設定温度を越えると、このブレーカ30がバイメタル8を熱変形させて電流を遮断する。一方のブレーカ30が電流を遮断すると、他方のブレーカ30には、大きな電流が流れる状態となる。この状態になると、他方のブレーカ30の弾性アーム部6Aに大きな電流が流れてジュール熱による発熱が大きくなるので、検出温度が設定温度を越えてバイメタル8が熱変形して電流を遮断する。このように、いずれか一方のブレーカ30が設定温度に達して電流を遮断すると、他方のブレーカ30もほとんど時間差なく電流を遮断するので、2個のブレーカ30をオフ状態に切り換えて電流を遮断する。
以上のように、ブレーカ30の可動側の接続端子41と可動側の導電プレート31Aとを非溶融状態として、面接触状態で電気接続してなる本発明のブレーカ装置が、ブレーカの接続端子と導電プレートとを抵抗溶接やスポット溶接して接続してなるブレーカ装置(図32参照)に比べて、優れた温度特性を有することを実証するために、以下の発熱測定試験を実施して、可動側の接続端子と導電プレートとの接続方法の違いによる接合部における温度上昇の差を測定した。
[発熱測定試験]
図27に示すように、サンプルとなる2枚の金属板50を用意し、これらの金属板50を端部で互いに積層すると共に、この積層部分51を実施例及び比較例の接続方法で接続した後、所定の電流を通電して接合部における温度を測定した。サンプルとなる2枚の金属板50として、一方の第1金属板50Aには純ニッケルを使用し、他方の第2金属板50Bには、導電率を65%IACSとする銅系材を使用した。第1金属板50Aと第2金属板50Bは、そのサイズを、横幅7.5mm、長さ20mm、厚さ0.1mmとして統一し、第1金属板50Aと第2金属板50Bの積層部分51の長さは、5mmとした。金属板50の温度測定には、熱電対(Kタイプ φ0.1mm)を使用し、接合部において、第1金属板50A(純ニッケル)側の表面温度(図27において温度測定点を×印で表示)を測定した。なお、温度測定は、通電開始から1分後に行った。さらに、雰囲気温度は25℃とした。
[実施例1]
図28に示すように、第1金属板50Aと第2金属板50Bの積層部分51を2個のリベット35で固定した。2個のリベット35は、第1金属板50Aと第2金属板50Bの積層部分51の中央部であって、金属板50の幅方向に所定の間隔を離して固定した。接合部の温度は、2個のリベット35の中間部分で測定した。
[実施例2]
図29に示すように、第1金属板50Aと第2金属板50Bの積層部分51の周囲に金属バンド43を巻き付けて圧着した。金属バンド43には、幅を5mm、厚さを0.3mmとする金属板であって、導電率を102%IACSとする無酸素銅を使用した。第1金属板50Aと第2金属板50Aの積層部分51に巻き付けた金属バンド43の両端部は、第1の金属板50Aの表面側において、対向する両端縁の間に隙間が形成される状態で圧着し、この隙間において接合部の温度を測定した。
[比較例1]
図30に示すように、第1金属板50Aと第2金属板50Bの積層部分51において、2箇所をスポット溶接して接続した。第1金属板50Aと第2金属板50Bは、図の○印で示すように、積層部分51の中央部であって、金属板50の幅方向に所定の間隔を離した2箇所をスポット溶接した。
[比較例2]
図31に示すように、第1金属板50Aと第2金属板50Bの積層部分51において、9箇所をスポット溶接して接続した。第1金属板50Aと第2金属板50Bは、図の○印で示すように、積層部分51の全体にわたって、3×3のドットマトリクス状に9箇所をスポット溶接した。
以上の実施例及び比較例におけるサンプルに、1A、5A、10A、15Aの電流を流し、各電流に対する接合部の温度を測定した。測定温度の結果を表1に示す。
さらに、以上の実施例及び比較例におけるサンプルの抵抗値をミニオーム計で測定した。各サンプルの抵抗値の測定結果を表2に示す。
以上の試験結果から、実施例と比較例のサンプルにおける抵抗値にはほぼ差がないが、通電時の発熱には差が生じることがわかる。とくに、積層部分をスポット溶接によって接続する構造に比較して、リベットや圧着による接続方法では、通電時における温度上昇が小さく、たとえば、10Aの電流を流す状態では15〜25%も温度上昇が抑制され、15Aの電流を流す状態では10〜20%も温度上昇が抑制されることがわかる。
以上の結果からも、接続端子と導電プレートとを非溶融状態で接続する本発明のブレーカ装置では、接続端子と導電プレートとを溶接等の方法で接続する構造に比較して、通電時における温度上昇を抑制できることが実証された。