JP3820055B2 - サーマルプロテクタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サーマルプロテクタ、特に、携帯型コンピュータに内蔵される2次電池パックに用いて好適なサーマルプロテクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯型コンピュータ等に内蔵される2次電池パックでは、従来、2次電池としてニッケル・カドミウム電池やニッケル水素電池が使用されてきた。このような2次電池を用いた2次電池パックにおいては、過熱、過負荷、短絡等に対する保護手段として、バイメタル板の反転動作を利用して接点を開く形式のサーマルプロテクタを組み込むようにしている。
上記サーマルプロテクタには、所要の内部抵抗を持たせてある。これは、過負荷や短絡に基づく過大電流が流れた場合に、この内部抵抗による自己発熱によって上記バイメタル板を反転動作させるためである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、2次電池は、上記ニッケルーカドミウム電池やニッケル水素電池からリチウムイオン電池に移行しつつある。このリチウムイオン電池においては、正確な充放電管理が必要であり、このため、短絡保護も含めての管理を半導体を用いた制御回路が担うようになってきている。
【0004】
しかし、より安全性を高めるには、上記制御回路とは異なる種類の安全装置を併用することが好ましく、このため、上記リチウム電池を用いた電池パックにおいてもサーマルプロテクタを搭載することが多い。
このリチウム電池を内蔵した電池パックに適用するサーマルプロテクタは、従来のサーマルプロテクタとは逆に内部抵抗の低いことが要求される。つまり、電流に対する感応性が低いこと、換言すれば、自己発熱による動作をしない状態で流し得る電流(以下、不動作電流という)の大きいことが要求される。
【0005】
なぜなら、不動作電流が小さいと、リチウム電池の充電電荷を放電させる際、該電池が完全放電する前にサーマルプロテクタが自己発熱動作してその放電が困難になるからである。
一方、近年における携帯型コンピュータの急速な性能の向上に伴って、2次電池パックの容量も増大する傾向にあり、この点からも、上記不動作電流を大きくすること、つまり、通電容量を増大することが望まれている。
【0006】
不動作電流を大きくするには、サーマルプロテクタの内部抵抗を低下させればよい。そこで、サーマルプロテクタの導電要素(端子、可動板等)を低抵抗材料で形成することが考えられるが、材料の選択による内部抵抗の低下には限度があるので、不動作電流をより一層増大するためには、構造的な改善を図る必要がある。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、内部抵抗を低下して不動作電流の増大を図ることを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、先端部に固定接点を有し、後端部に第1の外部接続用端子を有した固定板と、弾性を有し、先端部に設けた可動接点をその弾性によって前記固定接点に当接させた可動板と、この可動板の後端部に接続される第2の外部接続用端子と、先端部を前記可動板に係合させ、設定温度を越えた際に反転して、前記可動板を前記可動接点が前記固定接点から離れる方向に駆動するバイメタル板とを備えたサーマルプロテクタであって、前記可動板の一部が折り畳み加工による二重構造を有し、この二重構造による断面積の増大によって内部抵抗を実質的に低下させている。
第2の発明は、第1の発明において、前記二重構造部を、前記可動板の基端ネック部を除いた部位に設けている。
第3の発明は、先端部に固定接点を有し、後端部に第1の外部接続用端子を有した固定板と、弾性を有し、先端部に設けた可動接点をその弾性によって前記固定接点に当接させた可動板と、この可動板の後端部に接続される第2の外部接続用端子と、先端部を前記可動板に係合させ、設定温度を越えた際に反転して、前記可動板を前記可動接点が前記固定接点から離れる方向に駆動するバイメタル板とを備えたサーマルプロテクタであって、前記可動板の後端部、前記バイメタル板の後端部および前記第2の外部接続用端子の一端部を重ね合わせて支持し、その重ね合わせ支持部における前記可動接点に近い部位で前記可動板と前記第2の外部接続用端子とを電気的に接続して内部抵抗を実質的に低下させている。
第4の発明は、先端部に固定接点を有し、後端部に第1の外部接続用端子を有した固定板と、弾性を有し、先端部に設けた可動接点をその弾性によって前記固定接点に当接させた可動板と、この可動板の後端部に接続される第2の外部接続用端子と、先端部を前記可動板に係合させ、設定温度を越えた際に反転して、前記可動板を前記可動接点が前記固定接点から離れる方向に駆動するバイメタル板とを備えたサーマルプロテクタであって、前記可動板の後端部および前記第2の外部接続用端子の一端部を重ね合わせて支持するとともに、その重ね合わせ支持部の前方に前記バイメタル板の後端部を位置させ、前記重ね合わせ支持部における前記可動接点に近い部位で前記可動板と前記第2の外部接続用端子とを電気的に接続して内部抵抗を実質的に低下させている。
第5の発明は、第1,3,4の発明のいずれかにおいて、前記可動板、第1の外部接続用端子および第2の接続用端子を、それぞれ導電率が50%IACS以上の材料で形成している。
第6の発明は、第1,3,4、5の発明のいずれかにおいて、前記第1、第2の外部接続用端子を銅で形成している。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係るサーマルプロテクタの縦断面図である。また、図2は図1のA−A断面図であり、図3は図1のB矢視図である。
図1に示すように、このサーマルプロテクタは、固定板10に固着した支持部材20上に可動板30、バイメタル板40および第2の外部接続用端子50を順次配設し、これらを樹脂製のケース60に収納した構成を有する。
【0009】
上記固定板10は、導電材料からなり、一端部(先端部)に固定接点11を形成している。そして、この固定板10の他端部は第1の外部接続用端子12を形成している。支持部材20は、電気絶縁性の材料からなり、先端部に凸部21を形成するとともに、後端部に支柱部22を形成している。
可動板30は、導電性および弾性を有した材料からなり、図4に示すように、可動部31と、該可動部31の後端から延びる支持部32と、該支持部32の後端より突出する接続部33とを備えている。
【0010】
上記可動板30の可動部31は、その両側に二重構造部34を有する。この二重構造部34は、図5の展開図に示す各折畳み片35を矢視方向(下面側)に折畳むことによって形成されている。
上記可動部31の基端部である支持部32側の端部は、該支持部32に向って徐々に巾を狭めた基端ネック部31aを構成している。上記二重構造部34は、この基端ネック部31aを除いた部位に形成してあり、このため、二重構造部34によって可動部31の剛性が高くなっても、該可動部31を自由に揺動運動させることができる。
【0011】
一方、可動部31は、先端部に可動接点36を設けるとともに、この可動接点36よりも支持部32側に位置した部位に逃げ孔37を形成し、更に、支持部32の中央部に支持孔38を形成している。
【0012】
バイメタル板40は、図6に示すように、反転作動部41と、この反転作動部41の後端から延びる支持部42と、該支持部42の後端より突出する接続部43とで構成されている。
このバイメタル板40は、先端部を上記可動板30の先端に形成した係合用突起39に遊嵌し、支持部42および接続部43を上記可動板30の支持部32および接続部33上にそれぞれ重ね合わせてある。なお、上記支持部42の中央部には、可動板30の支持孔38に対応する支持孔44が形成されている。
【0013】
第2の外部接続用端子50は、先端部を断面略U字状に折曲げ加工してあり、この先端部の下面がバイメタル板40の支持部2および接続部3の上面に接する態様で配設してある。なお、この端子50の先端部には、支持孔51が形成されている。
【0014】
図1に示したように、可動板30、バイメタル板40および外部接続用端子50は、それぞれの支持孔38,44および51を前記支持部材20の支柱部22に嵌合してある。支柱部22の頂部は、加熱変形によって支持孔51の大径部に嵌着している。したがって、可動板30、バイメタル板40および外部接続用端子50は、この支柱部22によって固定支持されている。この状態では、可動板30の弾性によって可動接点36が固定接点11に押圧当接するともに、可動板30の逃げ孔37内に支持部材20の凸部21が位置している。
【0015】
可動板30の接続部33およびバイメタル板40の接続部43は、スポット溶接等の手段によってP1点で第2の外部接続用端子50に電気的に接続されている。したがって、接点11,36が閉じた図1の状態においては、第1の外部接続用端子12と第2の外部接続用端子50が、固定接点11、可動接点36、可動板30およびバイメタル板40の接続部43を介して導通することになる。
【0016】
なお、第1の端子12および第2の端子50は、その後端部がケース60の外方に突出している。また、上記端子12,50が突出するケース60の開口部内は、樹脂70によって封止されている。
【0017】
この実施形態に係るサーマルプロテクタを図示していない携帯型コンピュータの電池パックに組込んだ場合、この電池パックに内蔵された2次電池の負荷電流が可動板30を介して端子12,50間に流れる。そして、負荷の短絡等のために上記負荷電流が異常に大きくなると、可動板30がその内部抵抗によって発熱し、その結果、バイメタル板40の温度が上昇する。
【0018】
バイメタル板40の温度が所定の反転温度に達すると、該バイメタル板40の反転作動部41が瞬時に反転動作して凹状に変形するので、支持部材20の凸部21を支点としてバイメタル板40の先端が上昇する。これにより、可動板30の先端部が係合用突起39を介して持上げられるので、可動接点36が固定接点11から離れ、その結果、それまで端子12,50間に流れていた異常負荷電流が停止する。
【0019】
ところで、前述したように、上記実施形態に係るサーマルプロテクタは、可動板30の可動部31の両側に二重構造部34を設けてあるので、該部分34の断面積が大きい。したがって、可動板31の内部抵抗を低下させて、実質的に端子12,50間の電気抵抗、つまり、サーマルプロテクタの内部抵抗を低下させることができる。
【0020】
可動板30の内部抵抗が低いこのサーマルプロテクタによれば、不動作電流の値が大きくなるので、電流に対する感応性が低くなる。それゆえ、このサーマルプロテクタをリチウム電池を内蔵した2次電池パックに適用すれば、該リチウム電池の充電電荷を放電させる際、その充電電荷を完全放電させることが可能になる。 また、結果的に通電容量が増大されることから、2次電池パックの容量の増大にも対応することができる。
【0021】
上記実施形態のサーマルプロテクタでは、可動板30、バイメタル板40および第2の外部接続用端子50を図1に示したP1点において電気的に接続してあるが、これらを図におけるP2点で接続すれば、以下の理由により端子12,50間の電気抵抗を更に低下することができる。
【0022】
上記接続点P2は、支持部42における可動接点36に近い側の部位に設定されているので、従来の接続点P1よりも距離Lだけ接点36側に接近している。この接続点P2で可動板30と端子50とが電気的に接続されると、従来に比して、第2の端子50における電路長がLだけ延長される一方、可動板30における電路長がLだけ短縮されることになる。
【0023】
可動板30の厚さ(断面積)は、第2の端子50の厚さに比して格段に小さいので、単位長さ当たりの電気抵抗は前者の方が相当に高くなる。したがって、上記位置に接続点P2を設定すれば、電気抵抗の高い可動板30の電路長が短縮されて端子12,50間の電気抵抗が実質的に低下されることになる。
【0024】
可動板30と端子50とを上記P2点で相互接続するための手段は、スポット溶接に限定されない。例えば、端子50に可動板30側に向う突起を設けるとともに、可動板にこの突起を貫通させる孔を形成し、上記突起を上記孔に挿入した後、該孔から突出する突起の先端を押圧変形して、端子50に可動板30をかしめ接続あるいはリベット接続するという接続手段を採用しても良い。
上記のように、P2点で可動板30と端子50を接続する場合、P1点での接続は不要であるが、このP1での接続処理を併せて行なえば、接続の信頼性がより向上する。
【0025】
なお、図7に示す実施形態では、二重構造部34を有した前記可動板30を使用しているが、該二重構造部34を有していない通常の可動板を使用したサーマルプロテクタであっても、この可動板上記P2点で端子50に接続することによってその内部抵抗を実質的に低下させることができる。
【0026】
図1に示した実施形態では、図6に示した形状のバイメタル板40を使用し、このバイメタル板40の支持部42および接続部43を可動板30と端子50で挟持するようにしているが、上記支持部42および接続部43を有さない図8に示すようなバイメタル板40′を使用することも可能である。この場合、バイメタル板40′の後端部は、端子50の折曲げ部と可動板30とによって構成された隙間80に挿入される。
【0027】
以上では、構造上の改善によって端子12,50間の電気抵抗を低下させているが、この電気抵抗は導電部材の材料によっても左右される。そこで、以下、導電部材の材料について説明する。
従来のサーマルプロテクタにおいては、可動板、固定板、端子等の導電部材に所要の内部抵抗を持たせるべく、該導電部材を導電率が20%IACS程度の材料(例えば、黄銅)で形成している。なお、IACSは、International Annealed Copper Standardの略語である。また、%IACSは、標準焼きなましCu線に対する電気伝導率の100分比である。
【0028】
一方、本発明に係るサーマルプロテクタでは、上記可動板30を50%IACS以上の材料(例えば、ベリリューム銅11合金)で形成し、また、上記固定板10、第1の外部接続端子12および第2の外部接続端子50を導電率が98%IACS以上の銅で形成している。
【0029】
導電部材をこのような材料で形成すれば、上記構造上の改善と相俟って、端子12,50間の電気抵抗を大きく低下させることができる。すなわち、図1または図7に示したサーマルプロテクタの導電部材を上記材料で形成した場合、端子12,50間の電気抵抗を2mΩ以下まで低下させることが可能である。
そして、上記電気抵抗の低下は、前記不動作電流の増大をもたらし、図1または図7に示したサーマルプロテクタの場合、60℃での不動作電流が10A以上まで増大する。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、内部抵抗を低下して不動作電流の値を大きくすることができる。それゆえ、このサーマルプロテクタをリチウム電池を内蔵した2次電池パックに適用すれば、該リチウム電池の充電電荷を放電させる際、その充電電荷を完全放電させることが可能になる。また、通電容量が増大されることから、2次電池パックの容量の増大にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るサーマルプロテクタの実施形態を示した縦断面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】図1のB矢視図。
【図4】可動板の斜視図。
【図5】可動板の展開図。
【図6】バイメタル板の平面図。
【図7】第2の外部接続用端子に対する可動板の接続位置を示した平面図。
【図8】本発明の他の実施形態を示した縦断面図。
【符号の説明】
10 固定板
11 固定接点
12 第1の外部接続端子
20 支持部材
21 凸部
22 支柱部
30 可動板
34 二重構造部
36 接点
40,40´ バイメタル板
50 第2の外部接続端子
60 ケース
P1,P2 接続点

Claims (6)

  1. 先端部に固定接点(11)を有し、後端部に第1の外部接続用端子(12)を有した固定板(10 )と、弾性を有し、先端部に設けた可動接点(36)をその弾性によって前記固定接点(11)に当接させた可動板(30)と、この可動板(30)の後端部(32,33)に接続される第2の外部接続用端子(50)と、先端部を前記可動板(30)に係合させ、設定温度を越えた際に反転して、前記可動板(30)を前記可動接点(36)が前記固定接点(11)から離れる方向に駆動するバイメタル板(40)と、を備えたサーマルプロテクタであって、
    前記可動板(30)は、両側部に設けた折畳み片(35)を該可動板(30)の幅方向に折畳むことによって、その先端部からその基端ネック部(31a)に至るまでの部位に二重構造部(34)を形成し、
    前記二重構造部(34)による前記可動板(30)の断面積の増大によって内部抵抗を低下させたことを特徴とするサーマルプロテクタ。
  2. 先端部に固定接点(11)を有し、後端部に第1の外部接続用端子(12)を有した固定板(10 ) と、弾性を有し、先端部に設けた可動接点(36)をその弾性によって前記固定接点(11)に当接させた可動板(30)と、この可動板(30)の後端部(32,33)に接続される第2の外部接続用端子(50)と、先端部を前記可動板(30)に係合させ、設定温度を越えた際に反転して、前記可動板(30)を前記可動接点(36)が前記固定接点(11)から離れる方向に駆動するバイメタル板(40)と、を備えたサーマルプロテクタであって、
    前記可動板(30)の後端部は、支持部(32)と、この支持部(32)から前記可動接点(36)とは逆の方向に突出する接続部(33)とを含み、
    前記可動板(30)の支持部(32)は、前記第2の外部接続用端子(50)に重ね合わされ、かつ、その重ね合わされた領域における前記可動接点(36)に近い位置(P2)で前記第2の外部接続用端子(50)と電気的に接続され、
    前記可動板(30)の接続部(33)は、前記第2の外部接続用端子(50)に重ね合わされ、かつ、その重ね合わされた位置(P1)で前記第2の外部接続用端子(50)と電気的に接続されている、
    ことを特徴とするサーマルプロテクタ。
  3. 前記バイメタル板(40)の後端部は、支持部(42)を含み、
    前記バイメタル板(40)の支持部(42)は、前記可動板(30)の支持部(32)と共に前記第2の外部接続用端子(50)に重ね合わされ、かつ、前記位置(P2)で前記可動板(30)の支持部(32)と共に前記第2の外部接続用端子(50)と電気的に接続されている
    ことを特徴とする請求項2に記載のサーマルプロテクタ。
  4. 前記可動板(30)との間に隙間 ( 80 ) が形成されるように、前記第2の外部接続用端子(50)の一部を前記可動接点(36)側に突出させ、前記隙間 ( 80 ) に前記バイメタル板(40)の後端部を挿入したことを特徴とする請求項2に記載のサーマルプロテクタ。
  5. 前記可動板(30)、第1の外部接続用端子(12)および第2の外部接続用端子(50)を、それぞれ導電率が50%IACS以上の材料で形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のサーマルプロテクタ。
  6. 前記第1、第2の外部接続用端子(12,50)が銅で形成されていることを特徴とする請求項に記載のサーマルプロテクタ。
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