JP6038597B2 - 純水製造システム - Google Patents

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本発明は、脱炭酸処理水への汚染成分の混入を防止した純水製造システムに係り、特に、脱炭酸処理水への環境からの予期せぬ揮発性有機物の混入を防止した純水製造システムに関する。
従来、例えば、半導体製造分野、医薬品製造分野では非常に純度の高い純水が使用されている。この純水は、原水から懸濁物質を除去して前処理水とする前処理システム、前処理水からイオン成分、有機物、溶存ガス等を除去して一次純水とする一次純水システム、一次純水を貯留する一次純水タンク、一次純水をさらに高純度とする二次純水システム等を備えた純水製造システムで製造され、ユースポイント(以下、POUともいう。)に供給されている。ユースポイントで使用されなかった余剰の純水は、循環配管を介して一次純水タンクにリターン循環され、再び二次純水システムで処理されてユースポイントに供給されている。
純水の製造には、種々の有機物の混入した市水や工業用水などが原水として用いられる。この有機物は主に動植物の分解によって生じたものであり、その種類や混入量は立地条件に大きく依存する。そのため、従来の純水製造システムでは、これらの有機物を分離除去する逆浸透膜装置や有機物をより分子量の小さい有機物や炭酸ガスに分解する紫外線酸化装置、紫外線酸化装置で生成した有機物を吸着するポリッシャー等を配置して有機物を可能な限り除去するようにしている。
また、一次純水システムには、炭酸カルシウム等のスケールの形成を防ぐために、原水からアルカリ土類金属イオンを除去するイオン交換装置とともに、溶存炭酸ガスを除去する脱炭酸装置が備えられている。
この脱炭酸装置は、被処理水中の溶存炭酸ガスを除去することで、後段に置かれる水処理装置、例えば強塩基性陰イオン交換装置の負荷を軽減するという役割も担っている。
脱炭酸装置は、外部の空気を脱炭酸塔内に供給することで、被処理水と空気を向流接触させ脱炭酸するものが用いられ、一般に逆浸透膜装置やイオン交換装置の前段に備えられる。このような脱炭酸装置として、脱炭酸装置に供給される空気を水洗浄する空気洗浄手段を備えた脱炭酸装置が知られている(例えば、特許文献1、参照。)
また、脱炭酸装置として、疎水性膜を介して気相と液相に分離され、疎水性膜を介して被処理水を空気と接触させることで脱炭酸を行う脱炭酸膜装置を用いて構成された純水製造システムも知られている(例えば、特許文献2、参照)。
特開平10−24286号公報 特開2003−80245号公報
ところで、近年、純水水質への要求が厳しくなってきており、例えば、TOC濃度が1.0μgC/L以下の水質を安定に得ることが求められてきている。
本発明者らは、かかる要請に応えるべく、後に詳しく説明する純水製造システムの脱炭酸装置の出口水、混床式イオン交換装置の出口水及びポリッシャーの出口水の水質をそれぞれモニターしていたところ、混床式イオン交換装置の出口水のTOC濃度が一時的に上昇し、これに若干遅れたタイミングでポリッシャーの出口水のTOC濃度も一時的に上昇したことを見出した。
そして、その原因を追究したところ、TOC濃度が急激に上昇した水が脱炭酸装置で処理されていた頃に、純水製造システムの設置された敷地内において揮発性有機物(以下、VOCともいう。)を用いた作業が行われていたことを突き止めた。さらに、追試験の結果、このTOC濃度の一時的な上昇は、作業で用いた揮発性有機物が脱炭酸装置のブロー空気へ混入したことが原因であることを確認した。
この背景には、純水製造システムの大型化が進んで占有面積が広大となり、敷地内で作業の行われる頻度も高くなって、その結果、揮発性有機物が予期せずブロー空気に混入する可能性が高くなってきたことがある。
本発明はかかる知見に基づいてなされたもので、比較的簡易な装置構成により、脱炭酸処理水への予期せぬ揮発性有機物の混入を防止することのできる純水製造システムを提供することを目的とする。
上記した課題を解決するため、本発明の純水製造システムは、被処理水を供給しつつブロー空気を供給して脱炭酸する脱炭酸装置と、前記脱炭酸装置へ供給するブロー空気中の揮発性有機物を除去する揮発性有機物除去手段と、前記脱炭酸装置へブロー空気を供給する、前記揮発性有機物除去手段を備えた第1の流路と、前記揮発性有機物除去手段の入口側と出口側をバイパスするバイパス流路と、第1の流路と前記バイパス流路のいずれか一方からブロー空気を供給するように流路を切り替える切替弁と、第1の流路の空気取入口の近傍に配置された揮発性有機物検知器と、前記揮発性有機物検知器の出力で前記切替弁を切り替える制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記揮発性有機物検知器の出力が、所定の閾値を超えたときに前記第1の流路に前記ブロー空気を供給し、所定の閾値以下になったときに前記バイパス流路に前記ブロー空気を供給するように、前記切替弁を切り替えることを特徴とする。
本発明の純水製造システムは、脱炭酸装置へ供給されるブロー空気中の揮発性有機物を除去する揮発性有機物除去手段を備えているので、脱炭酸処理水への予期せぬ揮発性有機物の混入を防ぐことができる。
また、前記脱炭酸装置は、被処理水を上方から注下させつつ、下方からブロー空気を供給して被処理水と向流接触させて脱炭酸する脱炭酸装置であることが好ましい。また、前記脱炭酸装置は、疎水性膜を介して液相と気相に分離され、前記液相に被処理水を供給しつつ前記気相にブロー空気を供給し、前記被処理水と前記ブロー空気を前記疎水性膜を介して接触させることで脱炭酸する脱炭酸膜装置であることが好ましい。
本発明の純水製造システムにおいて、前記揮発性有機物除去手段は、前記揮発性有機物を物理吸着する物理吸着剤を備えることが好ましい。この場合には、微量の揮発性有機物を確実に吸着することができるため、脱炭酸処理水への揮発性有機物の混入を防ぐことができる。
また、本発明の純水製造システムは、前記脱炭酸装置へブロー空気を供給する、前記揮発性有機物除去手段を備えた第1の流路と、前記脱炭酸装置へブロー空気を供給する、前記揮発性有機物除去手段を備えない第2の流路と、第1の流路と第2の流路のいずれか一方からブロー空気を供給するように流路を切り替える切替弁と、第2の流路の空気取入口の近傍に配置された揮発性有機物検知器と、前記揮発性有機物検知器の出力で前記切替弁を切り替える制御装置と、を備えることが好ましい。
この場合には、ブロー空気中に揮発性有機物が一定量以上混入したことを検知したときに揮発性有機物除去手段を介してブロー空気を脱炭酸装置に供給することができる。そのため、揮発性有機物除去手段の寿命を延長し、揮発性有機物を効率よく除去することができる。
そして、前記制御装置は、0.1〜0.5mg/mの間に設定された第1の閾値に基づき、前記揮発性有機物検知器の出力が第1の閾値を超えた時に第1の流路を介してブロー空気を供給し、前記第1の閾値以下の時に前記第2の流路を介してブロー空気を前記脱炭酸装置に供給するよう前記切替弁を制御することが好ましい。この場合、揮発性有機物除去手段の寿命をより延長し、揮発性有機物を効率よく除去することができる。
また、前記揮発性有機物除去手段は、活性炭吸着塔からなることが好ましい。この場合、揮発性有機物除去手段を脱炭酸装置の態様に応じて好適な形態とすることができるから、吸着能が低下した際にも容易に交換することができる。
本発明の純水製造システムは、脱炭酸装置の下流側に、紫外線酸化装置と、混床式イオン交換装置とをこの順に備えてなることが好ましい。この場合、揮発性有機物の予期せぬ混入を防ぐことで、被処理水中のTOC濃度を極めて低減することができる。
また、純水製造システムは、脱炭酸装置の下流側に、逆浸透膜装置と、紫外線酸化装置と、混床式イオン交換装置とをこの順に備えてなることが好ましい。さらに、紫外線酸化装置と混床式イオン交換装置との組を2組以上備えてなることが好ましい。この場合、より安定して高水質の純水を製造することができる。
なお、本明細書において「揮発性有機物」とは、大気中に排出され、又は飛散した時に気体である有機化合物をいう。
本発明の純水製造システムによれば、比較的簡易な装置により、脱炭酸装置での処理水への汚染成分の混入を抑制することができる。特に、揮発性有機物の混入を防ぐことができる。
純水製造システムの構成を示すフロー図である。 実施形態の揮発性有機物除去装置付設脱炭酸装置を示す概略構成図である。 実験1で用いた装置を示す概略構成図である。 実施形態の揮発性有機物除去装置付設脱炭酸装置を示す概略構成図である。 実施例における空気中のVOC濃度を示すグラフである。 実施例の純水製造システムにおける水質変動を示すグラフである。 実施例の純水製造システムにおける水質変動を示すグラフである。 実験1における空気中のVOC濃度を示すグラフである。 実験1の純水製造システムにおける水質変動を示すグラフである。 比較例の純水製造システムにおける水質変動を示すグラフである。 従来の純水製造システムにおける水質変動を示すグラフである。
次に、本発明を、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面中同様の機能を奏する装置には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図1は、従来の純水製造システムの構成を示すフロー図である。図1に示される純水製造システム1は、前処理システム10と、前処理システム10で処理された前処理水を貯留する前処理タンクT1と、前処理タンクT1の下流の一次純水システム20と、一次純水システム20で製造された一次純水を貯留するタンクT3と、タンクT3の下流の二次純水システム30とを有している。
純水製造システム1は、図示しない循環配管で一次純水タンクから前処理タンクへ一次純水を循環させるよう構成されている。また、製造された純水がユースポイントへ供給され、余剰の純水がリターン配管でタンクT3に循環されるよう構成されている。
一次純水システムは、活性炭装置(AC)21、強酸性陽イオン交換装置(SC)22、脱炭酸装置(DG)23、強塩基性陰イオン交換装置(SA)24、タンクT2、逆浸透膜装置(RO)25、紫外線酸化装置(TOC−UV)26、混床式イオン交換装置(MB)27を順に備えている。
二次純水システムは、紫外線酸化装置(TOC−UV)31、ポリッシャー(Polisher)32、脱気膜装置(MDG)33、限外ろ過膜装置(UF)34を順に備えている。
本発明者らは、純水製造システム1と同様の構成であり、100m/h以上の処理流量で比抵抗18.2MΩ・cm以上、TOC濃度1.0μgC/L以下の純水が製造されている純水製造システムの脱炭酸装置23、混床式イオン交換装置27及びポリッシャー32の出水口の水質について、図11に示されるように、TOC濃度が混床式イオン交換装置の出口水(細線)で一時的に急激に上昇し、これに若干遅れたタイミングでポリッシャーの出口水(太線)でも上昇していることを見出した。このとき、脱炭酸装置23の出口水のTOC濃度(鎖線)は、850μgC/L前後で見かけ上変動してない。しかし、本発明者らは、TOC濃度上昇の原因を詳細に追究して、末端近辺でのTOC濃度が急激に上昇した水が脱炭酸装置で処理されていた頃に、純水製造システムの設置された敷地内において揮発性有機物を用いた作業が行われていたことを突き止め、このTOC濃度の一時的な上昇が揮発性有機物によるものであることを確認すべく次に示す追試験(実験1)を行った。
(実験1)
以下の水処理装置を用いて、図1と同様の構成の純水製造システム1を、床面積30m、天井高さ約4mの建屋300内に構成して純水を製造した。純水製造システム建屋の概略構成図を図3に示す。
純水製造システム1の脱炭酸装置23には、揮発性有機物除去手段である活性炭吸着塔214と、活性炭吸着塔214をバイパスするバイパス管210を設置した。また、脱炭酸装置23のブロー空気中の揮発性有機物濃度を測定するVOC計212を、ブロー空気を送入するブローポンプ209の直後に設置し、ブロー空気中の初期VOC濃度を測定した。
純水製造システム1:処理流量1.6m/h、
原水:厚木市市水
前処理システム:メンブレンフィルター(MF):ファインセップ、野村マイクロ・サイエンス(株)社製、
タンクT1、タンクT2:容量2m
[一次純水システム]
活性炭装置21:クラレコール(登録商標、以下同じ。)GW−6−12(クラレケミカル(株)社製)、100L充填、
陽イオン交換装置22:デュオライト(登録商標、以下同じ。)C20(ダウケミカル社製)、64L充填、
脱炭酸装置23:高さ3.5m、充填層高さ:2.3m、
送気量32m/h、被処理水流量1.6m/h、
活性炭吸着塔214:クラレコールGW−6−12(クラレケミカル(株)社製)、7L充填、
揮発性有機物センサー(VOC計)212:
(株)堀場製作所製、ポータブルVOC分析計 FV−250
陰イオン交換装置24:デュオライトA113(ダウケミカル社製)、110L充填、
逆浸透膜装置25:SUL−G20、東レ(株)社製、
紫外線酸化装置26:AUV、日本フォトサイエンス(株)社製、0.3kWh/m
混床式イオン交換装置27:デュオライトC255、21L及びAGP、43L(いずれもダウケミカル社製)、混合充填。
[二次純水システム]
紫外線酸化装置31:SUV、日本フォトサイエンス(株)社製、0.3kWh/m
ポリッシャー32:MBGP、ダウケミカル社製、
脱気膜装置33:リキセル(登録商標)18×28外圧型分離膜X−40、ポリポア(株)社製、
限外ろ過膜装置34:OLT−6036H、旭化成ケミカルズ(株)社製、
タンクT3:容量2m
実験1では、ブロー空気を、バイパスライン210を通じて脱炭酸装置23に送入して純水を製造した。このとき、純水製造システムを稼働させた状態で、図3に示される純水製造システム建屋300内の、脱炭酸装置のブローポンプ209の空気取入口から直線距離Lが3mの位置でキシレン50mLをプラスチック板301(面積1m)上に静かに流下して放置した。
なお、このとき、純水製造システム建屋300はドア等を閉鎖してほぼ密閉状態とした。
キシレンの流下開始からの経過時間とブロー空気中の初期VOC濃度との関係を図8に、脱炭酸装置23、混床式イオン交換装置27、ポリッシャー32の出水口で採取した処理水のTOC濃度との関係を図9に示す。
なお、図9において、鎖線は脱炭酸装置23、細線は混床式イオン交換装置27、太線はポリッシャー32の出水中のTOC濃度をそれぞれ示している。
実験1では、空気中には総量2.7mg/m以下程度の低濃度で難分解性の揮発性有機物が混入している(図8参照)。このとき、図9に示されるように、脱炭酸装置23の出口水のTOC濃度は1,200μgC/L前後で、見かけ上変動していないにもかかわらず、混床式イオン交換装置27、ポリッシャー3出口水のTOC濃度は空気中の揮発性有機物濃度の上昇に応答して上昇し、ポリッシャー32の各出口水では一時的に1.0μgC/Lを超えてしまうことが分かる。これは、揮発性有機物が混入したままの空気が脱炭酸装置23に送入されたためである。なお、脱炭酸装置23の出口水のTOC濃度が1,200μgC/L前後で、見かけ上変動していないことから、揮発性有機物の混入による脱炭酸処理水のTOC濃度への影響が極めてわずかであることがわかる。
このように、本発明者らは、揮発性有機物がブロー空気中に予期せず混入した場合には、それが極めて低濃度であっても、末端水質に悪影響を与えることを確認した。特に、難分解性の揮発性有機物である、ベンゼン、トルエン、キシレン等は、水への溶解性が低く、また、表面張力が小さいことから、配管表面に付着し易いと考えられる。そのため、一度処理水に混入すると、イオン成分やその他の有機物成分より比較的長時間配管内に滞留して末端水質に悪影響を与え続けるおそれもあると考えられる。
また、本発明者らは、上記した知見に基づいて半導体製造工場内に設置された純水製造システム周辺の空気中VOC濃度について調査したところ、半導体製造工程において用いられるイソプロピルアルコール、アセトンなどの排ガスが、例えばスクラバーから空気中に混入し、空気中の揮発性有機物濃度が高くなる場合があることをも突き止めた。
なお、本発明者らは、ブロー空気を、揮発性有機物除去装置を通じて脱炭酸装置23に送入することで、ポリッシャー出口水のTOC濃度を低濃度で安定させることを見出したが、これについては後に実施例において詳しく述べる。
次に、本発明者らがこの実験の結果に基づいて完成した本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(第1の実施形態:揮発性有機物除去装置付設脱炭酸装置)
図2は本発明による第1の実施形態の揮発性有機物除去装置付設脱炭酸装置(以下、VOC除去装置付設脱炭酸装置という。)を示す概略構成図である。
図2に示されるVOC除去装置付設脱炭酸装置2は図1に示される脱炭酸装置23に揮発性有機物除去手段を備えるものである。
VOC除去装置付設脱炭酸装置2において、脱炭酸塔201内には、空隙率の大きい気液接触材が多数充填された充填層202が配設され、充填層202の下部には処理水貯溜部203が設けられている。被処理水は、給水管204に接続されたシャワーヘッドから充填層202に注下される。また、脱炭酸塔201にはブロー管205が接続されており、ブロー空気はブロー管205から送入され、脱炭酸塔201の上部より排出される。
ブロー管205の入気口側には、揮発性有機物除去手段として揮発性有機物除去装置206が配置されている。この揮発性有機物除去装置206には、切替弁である電磁バルブ207を介装した入気管208(第1の流路)が開口しており、この入気管208よりブローポンプ209を介して外部の空気が送入される。
さらに、揮発性有機物除去装置206をバイパスしてブロー管205に接続されたバイパス管210(第2の流路)が切替弁である電磁バルブ211を介して設けられている。
揮発性有機物除去装置206の入気口側のサンプルライン上には、送入されるブロー空気中の揮発性有機物の量を測定する揮発性有機物センサー212(揮発性有機物検知器)が備えられている。
なお、第1の実施形態では揮発性有機物除去装置206は2基が並列に接続されているが、揮発性有機物除去装置は1基であってもよく、2基以上を並列又は直列に接続してもよい。
揮発性有機物除去装置206は、揮発性有機物を除去することでその除去性能が徐々に低下して飽和するため、装置の交換や再生処理が行われるが、2基以上の揮発性有機物除去装置を並列して接続する場合には、例えば、1基の揮発性有機物除去装置の吸着能が低下したときに他の揮発性有機物除去装置を用いるようにし、吸着能が低下した揮発性有機物除去装置の交換や再生等の操作を行うことができる。
揮発性有機物除去装置206は、ブロー空気中の揮発性有機物を除去するものであり、ブロー空気中の揮発性有機物を好ましくは0.5mg/m以下、より好ましくは0.1mg/m以下に低減するものである。
揮発性有機物除去装置206としては、物理吸着剤を備えた吸着装置からなることが好ましい。物理吸着剤としては、揮発性有機物としての、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル化合物、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物、イソプロピルアルコール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のカルボニル化合物を吸着除去できるものを用いることが好ましい。このような物理吸着剤としては、活性炭、シリカゲル、アルミナ、ゼオライトを使用することができ、水分を吸着することによる吸着能の低下を抑制することができるため、疎水性の物理吸着剤が好ましく、疎水性表面を有する活性炭が特に好ましい。
揮発性有機物除去装置206として、活性炭吸着塔を用いることで、イニシャルコスト、ランニングコストを低減することができる。また、維持管理も簡便である。活性炭吸着塔を複数台、特に好ましくは2〜3台を並列に接続して設置すれば、吸着能を勘案し、交換時期に応じて順次交換することもできる。
揮発性有機物除去装置206を、活性炭吸着塔とする場合には、活性炭の形状は特に限定されず、例えば、粉砕状、粉末状、ペレット状、シート状、繊維状の活性炭で構成された活性炭吸着塔とすることもできる。
揮発性有機物センサー212(揮発性有機物検知器)としては、空気中の低濃度の揮発性有機物を検出できるものであれば限定されず、触媒酸化−非分散形赤外線分析法(NDIR)、水素炎イオン化形分析法(FID)、光イオン化検出法(PID)等を利用した装置を用いる。揮発性有機物センサー212を用いる場合には、ブロー空気中に揮発性有機物が一定量以上混入したときに揮発性有機物除去手段を介してブロー空気を脱炭酸塔に供給することができる。したがって、揮発性有機物除去装置206の交換、再生の頻度を低減し、そのための工程や装置を削減することができる。
さらに、揮発性有機物センサー212を用いる場合には、揮発性有機物除去装置206によるブロー空気中の揮発性有機物以外の成分を含めた総吸着量をより少なくすることができる。そのため、揮発性有機物除去装置206を小型化することができ、脱炭酸装置の態様に応じて物理吸着剤を充填したボンベやカートリッジ、物理吸着剤で構成された交換式フィルター、交換式モジュール等の形態とすることができるから、吸着能が低下した際にも容易に交換することができる。
次に、第1の実施形態における脱炭酸処理について説明する。
給水管204から被処理水を給水している状態で、ブローポンプ209を作動させる。
同時に揮発性有機物センサー212を作動させる。例えば、検出される揮発性有機物の濃度が0.1〜0.5mg/mの範囲に閾値を決定し、この閾値以下となった時に、電磁バルブ207を閉鎖し、電磁バルブ211を開放して、ブロー空気を、バイパスライン210を介して脱炭酸塔201に送入するようにする。揮発性有機物の濃度が上記した閾値を超えた時には電磁バルブ207を開放し、電磁バルブ211を閉鎖して、ブロー空気を、揮発性有機物除去装置206を経て脱炭酸塔201に送入するようにする。
閾値は、検出される揮発性有機物の濃度が0.5mg/mとすることが好ましく、0.3mg/mとすることがより好ましい。閾値を小さくすれば純水製造システムの末端付近におけるTOC濃度を低濃度で安定に維持できるが、小さすぎると揮発性有機物除去装置206の交換頻度が増加してコスト増を招くためである。
電磁バルブ207、211の開閉は、揮発性有機物センサー212の出力で制御装置213により制御することができる。
このとき、十分に脱炭酸を行うために、脱炭酸塔201におけるブロー空気の送気量は被処理水流量に対して20倍程度であることが好ましい。
また、脱炭酸塔201では、溶存炭酸ガス濃度が3.0mgC/L以下の脱炭酸処理水を得ることが好ましい。
このように、第1の実施形態によれば、ブロー空気への揮発性有機物の予期せぬ混入を防ぐことで、揮発性有機物の脱炭酸処理水への混入を防ぐことができる。そのため、これを用いて純水製造システムを構成した場合に、後段に備えられる紫外線酸化装置やイオン交換装置の負荷を軽減することができるから、有機物除去効率を向上させることができる。
また、第1の実施形態によれば、逆浸透膜装置や紫外線酸化装置で十分に除去することができない難分解性の揮発性有機物の脱炭酸処理水への混入を防ぐことができる。そのため、これを用いて純水製造システムを構成した場合に、難分解性の揮発性有機物に起因する処理水のTOC濃度の上昇を防止することができる。
さらに、装置構成も簡易であり、運転管理も簡便であるため、効率よく高純度の純水を製造することが可能である。
(第2の実施形態:脱炭酸膜装置を用いたVOC除去装置付設脱炭酸装置)
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態において、脱炭酸塔201の代わりに脱炭酸膜装置400を用いたものであり、その他は第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と同様の部分は詳細な説明を省略する。
図4に第2の実施形態のVOC除去装置付設脱炭酸装置4の概略構成図を示す。
図4において、脱炭酸膜装置400には、多孔性の疎水性膜401で液相402と気相403に分離された膜モジュールが収納されている。気相403にはブロー空気がブロー管205から送入されて図示しない排気口から排気されるようになっている。被処理水は被処理水供給管404から供給され、液相402を流通する際に疎水性膜を介してブロー空気と接触して脱気される。脱炭酸処理水は液相402の図示しない処理水排出口から排出されるようになっている。
脱炭酸膜装置400の構造自体は通常用いられる膜脱気装置と同様であり、膜モジュールとしては、通常の膜脱気装置に用いられるポリプロピレン系、ポリウレタン系のものであって、中空糸型、スパイラル型、中空糸型の脱気膜を用いた膜モジュールを使用することができる。
脱炭酸装置400では、疎水性膜401を介して水と空気とが接触することにより、濃度分圧の差により被処理水中の炭酸ガスが気相403のブロー空気へ移行して脱炭酸が行われ、これにより炭酸ガス濃度の低い脱炭酸処理水を得ることができる。
十分に脱炭酸を行うために、脱炭酸膜装置400におけるブロー空気の送気量は、脱炭酸膜装置400全体として被処理水流量の20倍程度とすることが好ましい。
このとき、脱炭酸膜装置の運転方法は限定されず、例えば気相403へのブロー空気の送入は減圧又は加圧された状態であってもよい。
このような脱炭酸膜装置400では、溶存炭酸ガス濃度が3.0mgC/L以下の脱炭酸処理水を得ることが好ましい。
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、難分解性の揮発性有機物の脱炭酸処理水への混入を防ぐことができる。そのため、これを用いて純水製造システムを構成した場合に、難分解性の揮発性有機物に起因する処理水のTOC濃度の上昇を防止することができる。
さらに、装置構成も簡易であり、運転管理も簡便であるため、効率よく高純度の純水を製造することが可能である。
(第3の実施形態:純水製造システム)
第3の実施形態は揮発性有機物除去手段を備えた純水製造システムの好ましい構成であり、図1に示される従来の純水製造システムと同様の構成とすることができる。
第3の実施形態の純水製造システム1は、脱炭酸装置23へ供給するブロー空気中の揮発性有機物を除去する揮発性有機物除去手段を備えている。具体的には、純水製造システム1は、脱炭酸装置23として第1の実施形態のVOC除去装置付設脱炭酸装置2又は第2の実施形態のVOC除去装置付設脱炭酸装置4を備えることが好ましい。
純水製造システム1における脱炭酸装置23では、溶存炭酸ガス濃度を3.0mgC/L以下とすることが好ましい。また、被処理水の流量は、処理流量や各水処理装置、配管設備に応じて変更することができ、0.5〜4m/hであることが好ましく、1.0〜2.0m/hであることがより好ましい。流量が小さすぎると脱炭酸が十分でないためにTOCの低減が十分に行えず、一方、流量が大きすぎると、脱炭酸装置23内での被処理水の不均一化が起こり、それぞれ処理水中のTOCの低減が十分に行えないおそれがある。
また、一次純水システムの脱炭酸装置23の下流側に、逆浸透膜装置25を備えることが好ましい。また、逆浸透膜装置25の後段に、180〜190nmの波長を含む紫外線を照射する低圧紫外線ランプを備えた紫外線酸化装置26と、混床式イオン交換装置27とをこの順に配置することが好ましい。
本実施形態では、逆浸透膜装置25での除去率の低い揮発性有機物の混入を脱炭酸装置23において防止しているので、紫外線酸化装置26の負荷を軽減することができる。同時に低圧紫外線ランプを備えた紫外線酸化装置を用いることで、残存する有機物の分解を効率的に行い、混床式イオン交換装置27の負荷を軽減することができ、その結果、純水製造効率を向上させることができる。
また、一次純水システムの逆浸透膜装置25を、逆浸透膜装置を2段とした2段逆浸透膜装置とすれば、有機物の除去率を向上させて二次純水システム30の負荷を軽減することもできる。
第3の実施形態において、二次純水システムは、紫外線酸化装置31と非再生式の混床式イオン交換装置(ポリッシャー)32とをこの順に備えることで、一次純水中に微量残存する有機物を分解、吸着除去して高純度の純水を製造することができる。
このように、二次純水システムにも紫外線酸化装置31と混床式イオン交換装置32とを備えることで、一次純水中に微量残存する有機物をも効率的に分解し、高水質の純水を製造することができる。
さらに、紫外線酸化装置31として、180〜190nmの波長を含む紫外線を照射する低圧紫外線ランプを備えた紫外線酸化装置を用いれば、有機物をより効率的に分解することができる。
そして、第3の実施形態では、脱炭酸装置23が揮発性有機物除去手段を備えており、難分解性の揮発性有機物の脱炭酸処理水への混入が抑制されるから、二次純水システム30の負荷を低減することができる。例えば紫外線酸化装置31での分解効率を向上させることができるし、ポリッシャー32の寿命を延長することもできる。また、難分解性の揮発性有機物の脱炭酸処理水への混入が抑制されるので、例えば、TOC濃度が1.0μgC/L以下の高水質の純水を安定に製造することができる。
(第4の実施形態:脱炭酸処理方法)
本発明の第4の実施形態は、第3の実施形態において、純水製造システム1の混床式イオン交換装置27の出口水のTOC濃度をモニターして、このTOC濃度に基づいてブロー空気の流路の切り替えを行い、揮発性有機物の予期せぬ混入を防止して脱炭酸処理するものである。その他については第1乃至第3の実施形態と同様であるため詳細な説明を省略する。
ところで、TOC濃度を測定する一般的なTOC計は、第1及び第2の実施形態で用いられる揮発性有機物検知器に比べて例えば短時間で測定できるなど、応答性のよいことが知られている。
本実施形態は、比較的簡易な揮発性有機物検知器を用いた場合であっても、揮発性有機物の混入を防止しつつ脱炭酸処理することができる。
例えば、測定時間が30分程度の揮発性有機物検出器を用い、第1乃至3の実施形態と同様に閾値を決定して揮発性有機物検出器の検出値に基づいてブロー空気の流路を切替えて脱炭酸処理行う場合には、揮発性有機物の検出にかかる30分間は、揮発性有機物の混入した脱炭酸処理水が下流に送られるおそれが残る。ここで、混床式イオン交換装置27の処理水の水質を、例えば測定時間が10分程度のTOC計で測定して所定の水質以下の脱炭酸処理水が二次純水システムへ流入しないようにすることで、末端における水質をより安定に高水質で維持することができる。
第3の実施形態の純水製造システムでは、図6に示されるように混床式イオン交換装置27の出口水は、揮発性有機物の混入のない状態で、TOC濃度が2.0μgC/L付近で定常状態(約60分平均)となっている。
本実施形態では、好ましくはTOC濃度の定常状態から0.1〜0.5μgC/Lを超える範囲に第1の閾値を決定し、混床式イオン交換装置27の出口水中のTOC濃度が第1の閾値以下の時に、ブロー空気を、バイパスライン210を介して脱炭酸装置23に送入するようにする。TOC濃度が上第1の閾値を超えた時には、ブロー空気を、揮発性有機物除去装置206を経て脱炭酸装置23に送入するようにする。
第1の閾値はTOC濃度の定常状態から0.5μgC/L以上とすることが好ましく、0.3μgC/L以上とすることがより好ましい。閾値を小さくすれば純水製造システムの末端付近におけるTOC濃度を低濃度で安定に維持できるが、小さすぎると排出する一次純水の量が多くなりコスト増を招くためである。
このとき、第1の実施形態と同様に、TOC計の出力を制御装置に入力して電磁バルブの開閉を制御することで、ブロー空気の流路の切り替えを行うことができる。
さらに、好ましくはTOC濃度が定常状態から0.1〜1.2μgC/Lを超える範囲、より好ましくは0.1〜0.5μgC/Lを超える範囲に第2の閾値を決定し、混床式イオン交換装置27の出口水中のTOC濃度が第2の閾値を超えた時に、一次純水を系外に排出し、又は前処理タンクT1に循環させてもよい。
第2の閾値は、測定されるTOC濃度が定常状態+0.5μgC/Lとすることが特に好ましい。第2の閾値を小さくすれば純水製造システムの末端付近におけるTOC濃度を低濃度で安定に維持できるが、小さすぎると排出される一次純水の量が多くなりコスト増を招くためである。
なお、TOC濃度の測定場所は特に限定されず、純水製造システム1のタンクT2の直後からタンクT3の直前までの任意の場所であってよい。TOC濃度の測定場所は、TOC濃度の変化をモニターし易いため、逆浸透膜装置25の直後又は混床式イオン交換装置27の直後であることが特に好ましい。
また、TOC濃度測定器は特に限定されず、例えば応答性に優れる導電率式のTOC計が好ましく使用される。
また、本実施形態では、TOC濃度の測定値を利用してブロー空気の流路の切り替えや一次純水の排出を行うため、揮発性有機物検出値に閾値を決定する場合でも、その閾値は0.5mg/mより大きくてもよい。
このように、本実施形態では、一次純水システムにおいて難分解性の揮発性有機物の処理水への混入を防止することができるから、二次純水システム30の負荷を低減することができる。例えば紫外線酸化装置31での分解効率を向上させることができるし、ポリッシャー32の寿命を延長することもできる。また、難分解性の揮発性有機物の脱炭酸処理水への混入が抑制されるので、例えば、TOC濃度が1.0μgC/L以下の高水質の純水を安定に製造することができる。
(実施例1)
実験1で用いた装置において、ブロー空気を、活性炭吸着塔214を介して脱炭酸装置23に送入した以外は実験1と同じ装置、同じ条件で純水を製造した。
実施例1では、純水製造システム1から供給される純水の比抵抗が18.2MΩ・cm以上、TOC濃度が1.0μgC/L以下の基準値で安定している状態で、実験1と同様にキシレンをプラスチック板に流下して放置した。
キシレン流下開始からの経過時間と、VOC計212で測定されるブロー空気中の初期VOC濃度との関係を図5に、脱炭酸装置23、混床式イオン交換装置27、ポリッシャー32の出口水のTOC濃度との関係を図6に示す。図6において、鎖線は脱炭酸装置23、細線は混床式イオン交換装置27、太線はポリッシャー32の出水中のTOC濃度を示している。後述する図7、図10も同様である。
図5、6に示されるように、実施例1ではブロー空気中に3.7mg/m以下で揮発性有機物が混入しているが、混床式イオン交換装置27、ポリッシャー32の各出口水のTOC濃度がそれぞれ安定に推移している。特に、ポリッシャー32の出口水のTOC濃度は安定して1.0μgC/L以下を維持している。
(実施例2)
実施例1で用いた装置のうち、脱炭酸装置23として図4に示される脱炭酸膜装置400を用いて純水製造システム1を構成した以外は実施例1と同じ装置、同じ条件で純水を製造した。
使用した脱炭酸膜装置は次のものである。
脱炭酸膜装置400:リキセル(登録商標)18×28外圧型分離膜X−40、ポリポア(株)社製
また、このとき、脱炭酸装置23のブロー空気は、活性炭吸着塔214を介して脱炭酸塔23内に送入した。
キシレンの流下開始からのVOC計212で測定される初期VOC濃度の変化は図5とほぼ同様であり、初期VOC濃度のピーク値は3.0mg/mであった。
このときの、脱炭酸装置23、混床式イオン交換装置27、ポリッシャー32の出口水のTOC濃度との関係を図7に示す。
実施例2ではブロー空気中に3.0mg/m以下で揮発性有機物が混入しているが、図7に示されるように、混床式イオン交換装置27、ポリッシャー32の各出口水のTOC濃度がそれぞれ安定に推移している。特に、ポリッシャー32の出口水のTOC濃度は安定して1.0μgC/L以下を維持している。
(比較例1)
実施例2と同じ装置、同じ条件で、ブロー空気を、常時バイパス管210を介して脱炭酸装置23に送入した他は実施例2と同じとして、250分間純水を製造した。
キシレンの流下開始からのVOC計212で測定される初期VOC濃度の変化は図5とほぼ同様であり、初期VOC濃度のピーク値は3.0mg/mであった。
このときの、脱炭酸装置23、混床式イオン交換装置27、ポリッシャー32の出口水のTOC濃度との関係を図10に示す。
図10より、比較例1では実験1と同様、混床式イオン交換装置27、ポリッシャー3出口水のTOC濃度が一時的に上昇し、ポリッシャー32の各出口水では1.0μgC/Lを超えてしまう場合があることが分かる。
(実施例3)
実施例1において、脱炭酸装置23を実施形態のVOC除去装置付設脱炭酸装置2として、実施例1と同様にキシレンの流下開始から250分間、純水を製造した。
このとき、表1に示すようにVOC濃度の閾値を設定して、それぞれの閾値を超えた時にバルブ207を開放し、バルブ211を閉鎖して、ブロー空気を、揮発性有機物除去装置206を介して脱炭酸塔201に送入し、また、VOC計の検出値が上記したそれぞれの閾値以下となった時にバルブ211を開放し、バルブ207を閉鎖して、ブロー空気を、バイパス管210を介して脱炭酸塔201に送入した。バルブ207及びバルブ211の開閉は制御装置213で制御した。その他の装置及び条件は実施例1と同じとし、それぞれの場合のポリッシャー32出口水のTOC濃度を測定した。
VOC計212で設定した閾値と、ポリッシャー32出口水の最大TOC濃度を表1に示す。
なお、表1において例(1−1)〜(1−8)は実施例であり、例(1−9)、(1−10)は比較例である。
Figure 0006038597
表1において閾値を0.5mg/m以下としてブロー空気の流路の切り替えを行った例(1−1)〜(1−5)では、ポリッシャー32の処理水のTOC濃度は0.38μgC/L以下を維持している。これは、揮発性有機物の混入がない場合に実施形態の純水製造システム1で製造される純水と同等の水質が安定して得られていることを示す。閾値を0.9mg/m以上とした例(1−9)、(1−10)では、ポリッシャーの出口水が、一般的に要求される水質であるTOC濃度1.0μgC/Lを超えてしまう場合があることが分かる。
(実施例4)
実施例1において、脱炭酸装置23を実施形態のVOC除去装置付設脱炭酸装置2として、実施例1と同様にキシレンの流下開始から250分間、純水を製造した。
このとき、混床式イオン交換装置27の出口水のTOC濃度を測定して、このTOC濃度の上昇値があらかじめ決定した閾値を超えたときに混床式イオン交換装置27の直後に分岐したブローライン(図示せず)から一次純水を系外に排出するようにした。
閾値は表2のように混床式イオン交換装置27の出口水TOC濃度の定常状態(約60分平均)から0.1〜1.4μgC/Lを超えた値の間で変更した。それぞれの場合のポリッシャー32の出口水のTOC濃度を表2に示す。
なお、表2において例(2−1)〜(2−9)は実施例であり、例(2−10)は比較例である。
Figure 0006038597
表2において、閾値を混床式イオン交換装置27の出口水TOC濃度の定常状態から+0.5μgC/L(Δ0.5μgC/L)以下として一次純水を系外に排出した例(2−1)〜(2−5)では、ポリッシャー32の出口水のTOC濃度は0.38μgC/L以下を維持している。これは、揮発性有機物の混入がない場合に実施形態の純水製造システム1で製造される純水と同等の水質が安定して得られていることを示す。一方、閾値を1.4μgC/L以上とした例(2−10)では、ポリッシャーの出口水が、一般的に要求される水質であるTOC濃度1.0μgC/Lを超えてしまう場合があることが分かる。
以上より、実施形態の純水製造システムによれば、予期せぬ揮発性有機物の混入を防止できることが分かる。そのため、難分解性の揮発性有機物に起因する処理水のTOC濃度の上昇を防止することができる。
さらに、装置構成も簡易であり、運転管理も簡便であるため、効率よく高純度の純水を製造することが可能である。
1…純水製造システム、2,4…VOC除去装置付設脱炭酸装置、201…脱炭酸塔、202…充填層、203…処理水貯留部、204…給水管、205…ブロー管、206…揮発性有機物除去装置、207,211…電磁バルブ、208…入気管、209…ブローポンプ、210…バイパス管、212…揮発性有機物センサー(VOC計)、213…制御装置、214…活性炭吸着塔、400…脱炭酸膜装置、401…疎水性膜、402…液相、403…気相、404…被処理水供給管。

Claims (9)

  1. 被処理水を供給しつつブロー空気を供給して脱炭酸する脱炭酸装置と、
    前記脱炭酸装置へ供給するブロー空気中の揮発性有機物を除去する揮発性有機物除去手段と、
    前記脱炭酸装置へブロー空気を供給する、前記揮発性有機物除去手段を備えた第1の流路と、
    前記揮発性有機物除去手段の入口側と出口側をバイパスするバイパス流路と、
    第1の流路と前記バイパス流路のいずれか一方からブロー空気を供給するように流路を切り替える切替弁と、
    第1の流路の空気取入口の近傍に配置された揮発性有機物検知器と、
    前記揮発性有機物検知器の出力で前記切替弁を切り替える制御装置と、
    を備え、
    前記制御装置は、前記揮発性有機物検知器の出力が、所定の閾値を超えたときに前記第1の流路に前記ブロー空気を供給し、所定の閾値以下になったときに前記バイパス流路に前記ブロー空気を供給するように、前記切替弁を切り替えることを特徴とする純水製造システム。
  2. 前記脱炭酸装置は、被処理水を上方から注下させつつ、下方からブロー空気を供給して被処理水と向流接触させて脱炭酸する脱炭酸装置であることを特徴とする請求項1記載の純水製造システム。
  3. 前記揮発性有機物除去手段は、前記揮発性有機物を物理吸着する物理吸着剤を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の純水製造システム。
  4. 前記制御装置は、0.1〜0.5mg/mの間に設定された第1の閾値に基づき、
    前記揮発性有機物検知器の出力が第1の閾値を超えた時に第1の流路を介してブロー空気を供給し、前記第1の閾値以下の時に前記バイパス流路を介してブロー空気を前記脱炭酸装置に供給するよう前記切替弁を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の純水製造システム。
  5. 前記揮発性有機物除去手段は、活性炭吸着塔からなることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の純水製造システム。
  6. 前記脱炭酸装置は、疎水性膜を介して液相と気相に分離され、前記液相に被処理水を供給しつつ前記気相にブロー空気を供給し、前記被処理水と前記ブロー空気を前記疎水性膜を介して接触させることで脱炭酸する脱炭酸膜装置であることを特徴とする請求項1記載の純水製造システム。
  7. 前記脱炭酸装置の下流側に、紫外線酸化装置と、混床式イオン交換装置と、をこの順に備えてなることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の純水製造システム。
  8. 前記脱炭酸装置の下流側に、逆浸透膜装置と、紫外線酸化装置と、混床式イオン交換装置とをこの順に備えてなることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の純水製造システム。
  9. 前記紫外線酸化装置と前記混床式イオン交換装置との組を2組以上備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の純水製造システム。
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