JP6036838B2 - 包括的2次元クロマトグラフ用データ処理装置 - Google Patents
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Description
本発明は、包括的2次元ガスクロマトグラフ(GC)や包括的2次元液体クロマトグラフ(LC)で収集されたデータを処理する包括的2次元クロマトグラフ用データ処理装置に関する。
GC分析手法の一つとして、包括的2次元GC(「GC×GC」とも呼ばれる)という手法が知られている(特許文献1参照)。包括的2次元GCは、試料中の各種成分を1次元目のカラム(以下「1次カラム」という)でまず分離し、その溶出成分をモジュレータに導入する。モジュレータは導入された成分を一定時間間隔(通常、数秒〜十数秒程度。この時間を通常「モジュレーション時間」という)毎に捕集した後にごく狭い時間バンド幅で離脱させ、2次元目のカラム(以下「2次カラム」という)に導入する、という操作を繰り返す。一般に、1次カラムでは、通常のGCと同様の又は通常のGCよりもやや緩慢な溶出が行えるような分離条件で以て成分分離が行われる。これに対し、2次カラムとしては1次カラムとは異なる極性で、短く内径が小さいカラムが使用され、規定のモジュレーション時間内に溶出が終了するような条件で以て成分分離が実施される。
これにより、包括的2次元GCでは、1次カラムで分離されずにピークが重なった複数の化合物を2次カラムで分離することができ、通常のGCに比べて分離性能が大幅に向上する。このため、保持時間が近い化合物を多数含むような試料の分析、典型的にはディーゼル燃料の炭化水素分析などに非常に威力を発揮する。
包括的2次元GCでは、複数のカラムにそれぞれ対応して複数の検出器を用いるマルチディメンジョナルGCとは異なり、2次カラムの出口に接続された唯一の検出器によって検出信号を取得する。したがって、カラムによる成分分離は2段階であるものの、検出器から出力されるデータは1系統の時系列順のデータである。そのため、こうして得られたデータを発生順にプロットすることで、通常のGCと同様のクロマトグラム、つまりは横軸が時間軸で縦軸が信号強度軸であるクロマトグラムを作成することができる。図2(a)はこうして作成される1次元クロマトグラムの一例である。
上述したように包括的2次元GCでは、多くの場合、2本のカラムの分離特性は相違するため、各カラムでの分離状態をそれぞれ分かり易く示すために、1次カラムにおける保持時間と2次カラムにおける保持時間とをそれぞれ直交する二軸とし、信号強度を等高線で表した2次元クロマトグラムや、信号強度を第3の軸とした3次元クロマトグラムが作成される。こうした多次元のクロマトグラムを作成するための包括的2次元GC専用のデータ処理ソフトウエアとしては、米国ジーシー・イメージ(GC Image LLC)社が提供している「GC Image」(非特許文献1参照)がよく知られている。
図2(b)は、図2(a)に示したような1次元クロマトグラムデータから2次元クロマトグラムを作成する際のデータ配置の説明図である。このグラフの縦軸の範囲はモジュレーション時間であり、1次元クロマトグラムデータを縦軸に沿って下端(0)から上方向に順次プロットしてゆき(図中の実線の矢印)、モジュレーション時間に達すると横軸に沿って右方向に移動するとともに縦軸の下端に戻り(図中の破線)、再び縦軸に沿って上方向にプロットするという操作を繰り返す。これにより、例えば図2(c)に示すような2次元クロマトグラム(2次元等高線クロマトグラム)を作成することができる。
昇温分析であれば、横軸は沸点順を表し、縦軸は極性順を表しているため、この2次元クロマトグラムによれば、各化合物の性質の理解が容易であるとともに、多数の化合物が含まれる場合であってもどのような化合物が含まれているのかを容易に把握することができる。
昇温分析であれば、横軸は沸点順を表し、縦軸は極性順を表しているため、この2次元クロマトグラムによれば、各化合物の性質の理解が容易であるとともに、多数の化合物が含まれる場合であってもどのような化合物が含まれているのかを容易に把握することができる。
一般に、包括的2次元GCにおいて試料に対する分析により得られたデータはハードディスクなどの記憶装置に一旦格納され、その後、適宜の時点で該記憶装置からデータが読み出されて上述したような専用のデータ処理ソフトウエアにより処理される。包括的2次元GCからデータを収集したり収集したデータを記憶装置に格納したりする処理は、包括的2次元GC用というわけではなく通常のGC用或いはGC/MS用のソフトウエアを用いて行われる。しかしながら、もともと通常のGCでは「モジュレーション時間」という概念はないため、収集されたクロマトグラムデータには分析条件の一つであるモジュレーション時間を示すようなデータ(パラメータ情報)は含まれない。そのため、従来は、分析者が分析実行時のモジュレーション時間情報を記録しておき、クロマトグラムデータを包括的2次元GC専用のデータ処理ソフトウエアで読み込む際に、モジュレーション時間を処理パラメータの一つとして分析者が入力するようにしている(非特許文献2参照)。こうした作業は分析者にとって大変煩わしく、入力ミス等により誤った結果を導出するおそれもあった。
なお、包括的2次元GCと同様の分析を実行する包括的2次元LCにおいても、上記事情は同じである。
「GC Image GCxGC Software」、[online]、米国GC Image LLC社、[平成24年10月17日検索]米国GC Image LLC社、インターネット<URL : http://www.gcimage.com/gcxgc/index.html>
「GC Image (GCxGC Edition) Users' Guide File Input and Output」、[online]、米国GC Image LLC社、[平成24年10月17日検索]、インターネット<URL : http://www.gcimage.com/gcxgc/usersguide/io.html>
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、包括的2次元クロマトグラフで得られたクロマトグラムデータに基づく2次元クロマトグラム作成等のデータ処理に際し、処理に必要なモジュレーション時間情報の入力を不要とすることができる包括的2次元クロマトグラフ用データ処理装置を提供することである。
上記課題を解決するためになされた本発明は、1次カラム、モジュレータ、2次カラム、及び検出器を具備する包括的2次元クロマトグラフで収集されたクロマトグラムデータを処理する包括的2次元クロマトグラフ用データ処理装置であって、
a)包括的2次元クロマトグラフで得られたクロマトグラムデータを時系列順に並べることで、時間と信号強度との関係を示す1次元クロマトグラムを作成する1次元クロマトグラム作成部と、
b)前記1次元クロマトグラム上の或る一つのピークと該ピークと同じ成分由来で別の時間に現れる1又は複数のピークとの出現時間の規則性に基づき、前記1次元クロマトグラムと該1次元クロマトグラムの時間軸をシフトさせた時間シフト1次元クロマトグラムとの相関性を調べ、シフト時間を変化させたときに相関性が最大となるシフト時間が前記モジュレータにおけるモジュレーション時間であると推定するモジュレーション時間推定部と、
を備えることを特徴としている。
a)包括的2次元クロマトグラフで得られたクロマトグラムデータを時系列順に並べることで、時間と信号強度との関係を示す1次元クロマトグラムを作成する1次元クロマトグラム作成部と、
b)前記1次元クロマトグラム上の或る一つのピークと該ピークと同じ成分由来で別の時間に現れる1又は複数のピークとの出現時間の規則性に基づき、前記1次元クロマトグラムと該1次元クロマトグラムの時間軸をシフトさせた時間シフト1次元クロマトグラムとの相関性を調べ、シフト時間を変化させたときに相関性が最大となるシフト時間が前記モジュレータにおけるモジュレーション時間であると推定するモジュレーション時間推定部と、
を備えることを特徴としている。
ここで、包括的2次元クロマトグラフは、包括的2次元GC、包括的2次元LCのいずれでもよい。
一般に1次カラムで分離された化合物のピーク幅は広いため、連続する複数のモジュレーション時間範囲に跨って同一の化合物が2次カラムに導入される。そのため、その複数のモジュレーション時間範囲に対応したクロマトグラムデータには同一化合物由来のピークが規則的に現れ、隣接する二つのモジュレーション時間範囲に対する1次元クロマトグラム上の同一化合物由来のピークの間隔はほぼモジュレーション時間になる筈である。そこで、本発明に係る包括的2次元クロマトグラフ用データ処理装置においてモジュレーション時間推定部は、上述した1次元クロマトグラム上における同一化合物由来のピークの出現の規則性を利用してモジュレーション時間を推定する。
即ち、上記モジュレーション時間推定部は、上記1次元クロマトグラムと該1次元クロマトグラムの時間軸をシフトさせた時間シフト1次元クロマトグラムとの相関性を調べ、シフト時間を変化させたときに相関性が最大となるシフト時間がモジュレーション時間であると推定する。より具体的には、例えば、1次元クロマトグラムと時間シフト1次元クロマトグラムとについて各時間の信号強度の積を計算して全測定時間範囲に亘り積値を積算する。そして、シフト時間を変化させたときの積算値の変化を求め、積算値が極大を示すシフト時間を見つけて該シフト時間がモジュレーション時間であると推定すればよい。
こうした構成によれば、簡単な演算の繰り返しによってモジュレーション時間を推定することができるから、ハードウエアに対する負荷も小さく、短時間でモジュレーション時間を推定することができる。
なお、本発明に係る包括的2次元クロマトグラフ用データ処理装置は、前記モジュレーション時間推定部により得られたモジュレーション時間に基づいて、1次カラムにおける保持時間と2次カラムにおける保持時間をそれぞれ軸とする2次元クロマトグラムを作成する2次元クロマトグラム作成部、をさらに備える構成とするとよい。
本発明に係る包括的2次元クロマトグラフ用データ処理装置によれば、包括的2次元GCや包括的2次元LCで収集された1次元的なクロマトグラムデータに基づき自動的にモジュレーション時間が求まるので、モジュレーション時間情報を利用した2次元クロマトグラムの作成等、包括的2次元クロマトグラフ特有のデータ処理を実施する際に、モジュレーション時間情報を外部から入力する必要がなくなる。それにより、そうした情報入力のための分析者の手間が不要になり、作業効率が改善されるとともに、入力ミス等による不適切なデータ処理を回避することができる。
以下、本発明に係る包括的2次元クロマトグラフ用データ処理装置を用いた包括的2次元GCシステムの一実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は本実施例による包括的2次元GCシステムの概略構成図である。
本システムにおいて、分析部1は、1次カラム12、該1次カラム12に試料ガスを導入する試料気化室などを含む試料導入部11、1次カラム12から溶出する成分(化合物)を一定時間(モジュレーション時間tm)間隔で捕集し時間的に圧縮して送り出すモジュレータ13、1次カラム12とは異なる分離特性(典型的には異なる極性)を有する高速分離可能な2次カラム14、及び、2段階のカラム12、14で分離された各化合物を検出しその量(濃度)に応じた強度信号を出力する検出器15、を備える。検出器15は、一般的にGCの検出器として用いることができるものであればその種類(検出方式)を問わない。例えば検出器15として質量分析計が用いられる場合には、該質量分析計において所定質量電荷比範囲のスキャン測定が繰り返し行われ、スキャン毎に得られるイオン強度データが積算されたトータルイオンクロマトグラムデータが検出器15から出力されるようにすればよい。
データ処理部2は、上述したように検出器15から時間経過に従い順次出力されたクロマトグラムデータを収集するデータ収集部21と、収集されたクロマトグラムデータを格納するデータ記憶部22と、データ記憶部22に格納されたデータを読み出して処理するGC×GCデータ処理部23と、を含み、GC×GCデータ処理部23は、読み出されたデータに基づいてモジュレーション時間tmを推定するモジュレーション時間推定部24と、推定されたモジュレーション時間tmに基づいて2次元クロマトグラムを作成する2次元クロマトグラム作成部25と、を含む。
分析部1に含まれる各部の動作は、分析制御部3により制御される。また、主制御部4には、ユーザインターフェイスとしての操作部5や表示部6が接続され、システム全体の制御を司る。この主制御部4、分析制御部3、データ処理部2は、パーソナルコンピュータをハードウエア資源とし、そのパーソナルコンピュータに予めインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアを実行することにより実現されるようにすることができる。特に、GC×GCデータ処理部23においてモジュレーション時間推定部24以外の機能は、非特許文献1、2に記載されたソフトウエアを用いて実現することができる。
まず、分析部1における分析動作、つまりクロマトグラムデータ収集動作を概略的に説明する。
分析部1において、試料導入部11は分析制御部3からの指示に応じて、1次カラム12に略一定流量で送られるキャリアガス中に分析対象である試料を導入する。通常、この試料には多数の化合物が含まれる。該試料に含まれる各種化合物は、所定の昇温プログラムに従って温調された1次カラム12を通過する間に分離されて時間的にずれて溶出する。この時点では全ての化合物が充分に分離されるとは限らず、1次カラム12での保持時間が近い化合物は重なって(混じった状態で)溶出する。
分析部1において、試料導入部11は分析制御部3からの指示に応じて、1次カラム12に略一定流量で送られるキャリアガス中に分析対象である試料を導入する。通常、この試料には多数の化合物が含まれる。該試料に含まれる各種化合物は、所定の昇温プログラムに従って温調された1次カラム12を通過する間に分離されて時間的にずれて溶出する。この時点では全ての化合物が充分に分離されるとは限らず、1次カラム12での保持時間が近い化合物は重なって(混じった状態で)溶出する。
モジュレータ13はモジュレーション時間tm(通常、数秒〜十数秒程度)に亘り1次カラム12から溶出してくる化合物を全て捕集し、時間圧縮してきわめて狭いバンド幅で2次カラム14に送り込む、という操作を繰り返す。したがって、1次カラム12から溶出した化合物は漏れなく2次カラム14に送り込まれる。モジュレーション時間tm毎に送り込まれた複数の化合物は2次カラム14を通過する際に高い分解能で以て時間方向に分離されて溶出し、溶出した順に検出器15に導入される。なお、上述したように検出器15として質量分析計が用いられる場合には、2次カラム14から一つの化合物が溶出している時間幅よりも短いインターバル間隔でスキャン測定を行うことによって、全ての化合物を漏れなく検出することができる。
検出器15による検出信号は内蔵されたA/D変換器により所定のサンプリング周期でデジタルデータに変換されて出力される。データ収集部21はこうして時間経過に伴って順次得られるクロマトグラムデータを収集し、データ記憶部22に格納する。通常、一つの試料に対して包括的2次元GC分析が実行されて得られた一連のクロマトグラムデータは一つのデータファイルにまとめて格納される。
GC×GCデータ処理部23は、上述したように包括的2次元GC分析で得られたデータを処理する専用のデータ処理部である。一般にGC×GCデータ処理部は、横軸を第1次元保持時間、縦軸を第2次元保持時間とした2次元クロマトグラムを作成する機能を有するが、本実施例におけるGC×GCデータ処理部23は、2次元クロマトグラム作成部25に加えて特徴的なモジュレーション時間推定部24を備えている。以下、このモジュレーション時間推定部24の動作を中心に説明する。図3はモジュレーション時間推定部24におけるモジュレーション時間推定処理の説明図である。
例えば分析者による操作部5からの操作により、所定の試料の分析結果に基づく2次元クロマトグラムの作成が指示されると、主制御部4からの制御に基づき、GC×GCデータ処理部23は指定されたデータをデータ記憶部22から読み出す。モジュレーション時間推定部24は、読み出されたクロマトグラムデータを単に時間経過に従って並べることで、図3(a)に示すような1次元クロマトグラムを作成する。次に、作成した1次元クロマトグラムのカーブ全体を時間軸の正方向(図3では右方向)に所定のシフト時間τだけシフトさせ(図3(b)参照)、そのシフト時間τを徐々に変化させて(シフト時間を大きくして)いきながら、元の(つまり全くシフトさせない状態の)1次元クロマトグラムとシフト後の1次元クロマトグラム(以下、「時間シフト1次元クロマトグラム」という)とを比較する。
1次カラム12における分離能は比較的低いため、1次カラム12から溶出したガス中には複数のモジュレーション時間tm範囲に跨って同一の化合物が含まれる。そのため、1次元クロマトグラムにおいては、或る一つの化合物に由来するピークが一つのモジュレーション時間tm範囲にのみ出現することは殆どなく、多くの場合、連続する複数のモジュレーション時間tm範囲にそれぞれ同一化合物由来の鋭いピークが現れる。モジュレータ13から2次カラム14にはモジュレーション時間tm間隔で圧縮された化合物が導入され、また同一化合物は2次カラム14において同じ保持時間を持つ筈である。したがって、1次元クロマトグラム上で、隣接するモジュレーション時間tm範囲にそれぞれ現れる同一化合物由来のピークの間隔は規則性を有し、その間隔はモジュレーション時間tmに一致する筈である。そのため、シフト時間τがモジュレーション時間tmに一致すると、時間シフト1次元クロマトグラムと元の1次元クロマトグラムとで同一化合物由来のピークの位置が一致することになる(図3(c)参照)。そこで、モジュレーション時間推定部24はこのようにピーク位置が一致するときのシフト時間τを求めることで、モジュレーション時間tmを推定する。
具体的には、次のような方法で1次元クロマトグラム上の同一化合物由来のピークの規則性を評価することができる。
いま、1次元クロマトグラムのカーブの関数をf(t)とする。このとき、シフト時間τに対する次の(1)式のような評価関数を考える。
F(τ)=∫f(t)・f(t−τ)dt …(1)
この評価関数は、元の1次元クロマトグラムと時間シフト1次元クロマトグラムとにおいて同じ位置(時間位置)の信号強度の積を時間方向に積分したものである。
F(τ)=∫f(t)・f(t−τ)dt …(1)
この評価関数は、元の1次元クロマトグラムと時間シフト1次元クロマトグラムとにおいて同じ位置(時間位置)の信号強度の積を時間方向に積分したものである。
(1)式の評価関数はシフト時間τがモジュレーション時間tmの整数倍であるときにピークが一致し、非常に大きな値を示す。一般に、モジュレーション時間tmは1秒〜十数秒程度の範囲内で設定されるので、シフト時間τの評価範囲は0秒〜少なくとも20秒から1分程度としておくとよい。もちろん、モジュレーション時間tmの設定範囲がより狭い場合には、シフト時間τの評価範囲も上記範囲より狭くすることができる。なお、(1)式中の積分演算はサンプリング間隔の総和に置き換えることもできる。
上述したようなシフト時間τの評価範囲に亘り、シフト時間τを所定ステップ幅で変化させながら、(1)式に基づく評価値F(τ)を算出する。これにより、シフト時間τと評価値F(τ)との関係が得られる。前述したように、シフト時間τがモジュレーション時間tmの2倍、3倍、…であるときにF(τ)は大きくなるから、上記のシフト時間τと評価値F(τ)との関係において、F(τ)が極大となるシフト時間τiをF(τ)が大きい順に所定個数選択する。ここで、τ0(i=0)<τ1…<τnであり、nは例えば1000程度とすればよい。こうしてシフト時間τiが得られたならば、Δτ1=τ1−τ0とし、mΔτ1がτ2からτnの中に存在する場合にはΔτ1をモジュレーション時間tmとすればよい。1次カラム12から溶出した一つの化合物由来のピークが連続した四つのモジュレーション時間tm範囲に跨るとすれば(一般的には1次カラム12における分離能はこの程度に設定される)、mの値は2〜4の全ての整数とすればよい。
なお、上述のようにmΔτ1がτ2からτnの中にあるか否かを判定するに際しては、クロマトグラムピークの幅や2次カラム14でのキャリアガス流速変動などに起因するピーク位置ずれなどを考慮して、例えば20ms程度の誤差は無視するようにするとよい。
mΔτ1がτ2からτnの中に存在しない場合には、次にΔτ2=τ2−τ0とし、mΔτ2がτ3からτnの中に存在するか否かを判定する。そして、mΔτ2がτ3からτnの中に存在すれば、Δτ2をモジュレーション時間tmとする。mΔτ2がτ3からτnの中に存在しなければ、さらに大きなτiについてmΔτiを求め同様の処理を繰り返せばよい。このようにしして、例えば外乱等によって隣接するモジュレーション時間範囲に同一化合物由来であるとみなせるピークが見つからないような場合でも、隣接でない(例えば一つのモジュレーション時間分だけ離れた)二つ又はそれ以上のモジュレーション時間範囲に同一化合物由来であるとみなせるピークが見つかった場合には、確度の高いモジュレーション時間を推定することができる。
こうしてモジュレーション時間tmが推定されたならば、2次元クロマトグラム作成部25は得られたモジュレーション時間tmに従ってクロマトグラムデータを2次元的に配置し、図2(c)に示すような2次元クロマトグラムを作成する。これにより、外部から、つまりは操作部5による操作入力や、或いは分析制御部3からの制御データの読み込み等によりモジュレーション時間tmが与えられない場合であっても、自動的に推算したモジュレーション時間tmに基づいた2次元クロマトグラムの作成が可能となる。
モジュレーション時間の推定方法は、1次元クロマトグラム上で同一化合物由来であると推測し得る複数のピークの出現時間の規則性や周期性を検出可能な方法であれば、上記記載の方法に限らない。例えば、元の1次元クロマトグラムと時間シフト1次元クロマトグラムとの波形の相関性を評価可能であればよいから、相関係数を算出可能な一般的な方法を利用することができる。
また、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。例えば、本発明に係るデータ処理装置は包括的2次元GCで得られたデータのみならず、包括的2次元LCで得られたデータの処理にも適用可能である。
1…分析部
11…試料導入部
12…1次カラム
13…モジュレータ
14…2次カラム
15…検出器
2…データ処理部
21…データ収集部
22…データ記憶部
23…GC×GCデータ処理部
24…モジュレーション時間推定部
25…2次元クロマトグラム作成部
3…分析制御部
4…主制御部
5…操作部
6…表示部
11…試料導入部
12…1次カラム
13…モジュレータ
14…2次カラム
15…検出器
2…データ処理部
21…データ収集部
22…データ記憶部
23…GC×GCデータ処理部
24…モジュレーション時間推定部
25…2次元クロマトグラム作成部
3…分析制御部
4…主制御部
5…操作部
6…表示部
Claims (2)
- 1次カラム、モジュレータ、2次カラム、及び検出器を具備する包括的2次元クロマトグラフで収集されたクロマトグラムデータを処理する包括的2次元クロマトグラフ用データ処理装置であって、
a)前記検出器で得られた時系列順に前記クロマトグラムデータを並べることで、時間と信号強度の関係を示す1次元クロマトグラムを作成する1次元クロマトグラム作成部と、
b)前記1次元クロマトグラム上の或る一つのピークと該ピークと同じ成分由来で別の時間に現れる1又は複数のピークとの出現時間の規則性に基づき、前記1次元クロマトグラムと該1次元クロマトグラムの時間軸をシフトさせた時間シフト1次元クロマトグラムとの相関性を調べ、シフト時間を変化させたときに相関性が最大となるシフト時間が前記モジュレータにおけるモジュレーション時間であると推定するモジュレーション時間推定部と、
を備えることを特徴とする包括的2次元クロマトグラフ用データ処理装置。 - 請求項1に記載の包括的2次元クロマトグラフ用データ処理装置であって、
前記モジュレーション時間推定部により得られたモジュレーション時間に基づいて、1次カラムにおける保持時間と2次カラムにおける保持時間をそれぞれ軸とする2次元クロマトグラムを作成する2次元クロマトグラム作成部、をさらに備えることを特徴とする包括的2次元クロマトグラフ用データ処理装置。
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