JP2010048732A - ガスクロマトグラフ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】目的成分由来の小さなピークを残し、クロマトグラムに重畳したバックグラウンドノイズを適切に除去する。
【解決手段】長さの相違する同種の2本のカラム4A、4Bを用いて目的試料をそれぞれGC/MS分析し、クロマトグラム作成部61でそれぞれマスクロマトグラムを作成する。保持指標換算部62はこれらの時間軸をn−アルカンを基準物質とした保持指標に換算した保持指標ベースのマスクロマトグラムに変換する。その2つのクロマトグラム上では同一成分由来のピークはほぼ同じ位置に現れ、ランダム性のノイズによるピークは同一位置には生じない。そこで、2つのクロマトグラムデータをf(t)、g(t)として適宜の重み関数を設定した重み付け畳み込み演算処理を行うことで、目的成分由来のピークを抽出し、ノイズピークを除去する。
【選択図】 図1
【解決手段】長さの相違する同種の2本のカラム4A、4Bを用いて目的試料をそれぞれGC/MS分析し、クロマトグラム作成部61でそれぞれマスクロマトグラムを作成する。保持指標換算部62はこれらの時間軸をn−アルカンを基準物質とした保持指標に換算した保持指標ベースのマスクロマトグラムに変換する。その2つのクロマトグラム上では同一成分由来のピークはほぼ同じ位置に現れ、ランダム性のノイズによるピークは同一位置には生じない。そこで、2つのクロマトグラムデータをf(t)、g(t)として適宜の重み関数を設定した重み付け畳み込み演算処理を行うことで、目的成分由来のピークを抽出し、ノイズピークを除去する。
【選択図】 図1
Description
本発明はガスクロマトグラフ装置に関し、さらに詳しくは、ガスクロマトグラフ装置で得られるクロマトグラムに重畳するノイズをデータ処理により除去する技術に関する。
ガスクロマトグラフ質量分析装置(以下「GC/MS」と略す)などにより得られるマスクロマトグラムやトータルイオンクロマトグラムには、様々な要因によるバックグラウンドノイズが重畳される。一例を挙げると、ガスクロマトグラフの検出器である質量分析装置におけるイオン検出器への不所望の荷電粒子の飛び込み、イオン検出器以降の電子回路にて発生する固有ノイズや外部からの飛込みノイズなどがバックグラウンドノイズとなり得る。バックグラウンドノイズが大きいと微量成分由来のピークはノイズに埋もれてしまうため、分析感度を向上させるにはバックグラウンドノイズをできるだけ低減することが必要である。
従来、クロマトグラフ装置においてランダム性のバックグラウンドノイズを低減する一手法として、イオン検出器で得られた時間的に連続する検出データに対しローパス型のフィルタリング処理を行う方法が知られている(例えば特許文献1など参照)。もちろん、こうしたフィルタリング処理により高周波ノイズは低減されるものの、ノイズと目的成分由来のピークとは区別されないため、目的成分由来の小さなピークのピーク強度も下がってしまい、ピーク見逃しを起こすおそれがあった。
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、クロマトグラムに現れるランダムなノイズを効果的に除去することができるガスクロマトグラフ装置を提供することにある。
上記課題を解決するためになされた第1発明に係るガスクロマトグラフ装置は、
a)目的試料に対し長さが相違する同種の2本のカラムを用いてそれぞれガスクロマトグラフ分析を実行し、対応する2つのクロマトグラムデータを取得する分析実行手段と、
b)前記2つのクロマトグラムデータの時間軸をそれぞれ所定物質を基準とする保持指標(リテンションインデックス)又は相対保持比に変換するデータ変換処理手段と、
c)前記データ変換処理手段により変換された2つのクロマトグラムデータに対し所定の重み関数を設定した畳み込み演算処理を実行する演算処理手段と、
を備えることを特徴としている。
a)目的試料に対し長さが相違する同種の2本のカラムを用いてそれぞれガスクロマトグラフ分析を実行し、対応する2つのクロマトグラムデータを取得する分析実行手段と、
b)前記2つのクロマトグラムデータの時間軸をそれぞれ所定物質を基準とする保持指標(リテンションインデックス)又は相対保持比に変換するデータ変換処理手段と、
c)前記データ変換処理手段により変換された2つのクロマトグラムデータに対し所定の重み関数を設定した畳み込み演算処理を実行する演算処理手段と、
を備えることを特徴としている。
また上記課題を解決するためになされた第2発明に係るガスクロマトグラフ装置は、
a)試料気化室と検出器との間に長さが相違する同種の2本のカラムが併設された分析部と、
b)前記分析部により目的試料に対するガスクロマトグラフ分析を実行し、前記2本のカラムでそれぞれ分離された同一成分に由来するピークが現れた1つのクロマトグラムデータを取得する分析実行手段と、
c)所定の基準物質を前記分析部によりガスクロマトグラフ分析して得られた結果に基づく2つの異なる保持指標換算情報又は相対保持比換算情報を用いて、前記分析実行手段により得られた1つのクロマトグラムデータの時間軸を保持指標又は相対保持比に変換した2つのクロマトグラムデータを生成するデータ変換処理手段と、
d)前記データ変換処理手段により生成された2つのクロマトグラムデータに対し所定の重み関数を設定した畳み込み演算処理を実行する演算処理手段と、
を備えることを特徴としている。
a)試料気化室と検出器との間に長さが相違する同種の2本のカラムが併設された分析部と、
b)前記分析部により目的試料に対するガスクロマトグラフ分析を実行し、前記2本のカラムでそれぞれ分離された同一成分に由来するピークが現れた1つのクロマトグラムデータを取得する分析実行手段と、
c)所定の基準物質を前記分析部によりガスクロマトグラフ分析して得られた結果に基づく2つの異なる保持指標換算情報又は相対保持比換算情報を用いて、前記分析実行手段により得られた1つのクロマトグラムデータの時間軸を保持指標又は相対保持比に変換した2つのクロマトグラムデータを生成するデータ変換処理手段と、
d)前記データ変換処理手段により生成された2つのクロマトグラムデータに対し所定の重み関数を設定した畳み込み演算処理を実行する演算処理手段と、
を備えることを特徴としている。
ここで「同種の2本カラム」とは、同じ種類の固定相(キャピラリカラムの場合にはカラム内壁面に塗布された固定相としての液層)を有するものを意味するが、一般に、同じ種類の固定相でもメーカーによって特性にはばらつきがある。そこで、好ましくは、「同種の2本のカラム」とは同一メーカーの同じ種類のカラムであって長さのみが相違するものとするのがよい。
また上記「基準となる所定物質」や「基準物質」は典型的にはn−アルカンであるが、n−アルカン以外の物質を利用することも可能である。
また、第1発明及び第2発明に係るガスクロマトグラフ装置では、カラムで成分分離された試料ガスを検出する検出器の種類は特に問わず、一般にGC分析に使用される熱伝導度検出器、水素炎イオン化検出器、炎光光度検出器、電子捕獲型検出器などのほか、近年盛んに利用される質量分析装置を検出器としたものでもよい。
質量分析装置を検出器としたガスクロマトグラフ質量分析装置の場合、「クロマトグラム」は、所定のm/z範囲のスキャン測定で得られた全てのイオンに対する検出信号に基づいて得られるトータルイオンクロマトグラムや特定のm/zを持つイオンのみに対する検出信号に基づいて得られるマスクロマトグラム、或いは、所定の1乃至複数のm/zに対するSIM(選択イオンモニタリング)測定により得られるクロマトグラムである。
第1発明に係るガスクロマトグラフ装置では、長さの相違する2本のカラムを用いた2回のGC分析を同一の目的試料に対して実行する。2本のカラムはユーザが付け替えるようにしてもよいし、適宜の流路切替手段を用いて長さの相違する2本のカラムの一方に選択的にキャリアガスが流れるようにしてもよい。基本的に、長さが相違する同種の2本のカラムを用いたGC分析により得られた2つのクロマトグラム上で、目的試料中の同一成分(化合物)由来のピークは異なる保持時間の位置に現れるが、保持時間を保持指標又は相対保持比に換算した2つのクロマトグラム上では目的試料中の同一成分由来のピークはほぼ同じ位置に現れる。一方、ランダムに出現するノイズ成分によるピークが保持指標又は相対保持比を横軸とする2つのクロマトグラム上で同じ位置に現れる可能性はきわめて低い。
演算処理手段が保持指標ベース又は相対保持比ベースの2つのクロマトグラムに対し適宜の重み関数を設定した畳み込み演算処理を実行すると、2つのクロマトグラム上でほぼ同じ位置にピークを持つ同一成分由来のピークが残り、一方のクロマトグラム上にしか現れないランダム性のノイズ由来のピークは抑制される。重み関数の幅を広げ過ぎると、保持指標や相対保持比が近接したノイズを抑制することができないため、重み関数の幅は同一成分由来のピークの位置ずれ量などに応じて適切に決めることが必要である。これにより、ランダム性のバックグラウンドノイズを十分に除去し、目的試料に含まれる成分に由来するピークが明瞭に現れたクロマトグラムを得ることができる。
前述のように第1発明に係るガスクロマトグラフ装置では2回のGC分析を実行する必要があるが、第2発明に係るガスクロマトグラフ装置では、併設された2本のカラムで同時にGC分析を実行し、両方の分析結果が併合された1つのクロマトグラムを取得する。基準物質をGC分析した場合にも同一物質由来の2本のピークが得られるから、これに基づいて2つの異なる保持指標換算情報を作成することができる。データ変換処理手段は、この2つの異なる保持指標換算情報を用いて、1つのクロマトグラムデータの時間軸を保持指標に変換した2つのクロマトグラムデータを生成する。演算処理手段はこの2つのクロマトグラムに対し適宜の重み関数を設定した畳み込み演算処理を実行する。この場合、両方のクロマトグラムに同一成分由来のピークが2本ずつ現れるから、重み付け畳み込み演算処理は自己相関を求めていることと同等である。
但し、第2発明に係るガスクロマトグラフ装置では、目的試料に含まれる成分の数が複数である場合に、異なる成分が2本のカラムから同時に流出してきてクロマトグラム上でピークが重なってしまう場合がある。目的試料に含まれる成分の数が多いほどこのような状況が起こる可能性が高いから、目的試料に含まれる成分の数が多い場合には第2発明よりも第1発明のほうが適している。
第1発明及び第2発明に係るガスクロマトグラフ装置によれば、試料に含まれる目的成分のピークに影響を与えることなく、ランダム性のバックグラウンドノイズを効果的にクロマトグラムデータから除去することができる。それによって、小さなピークをもつ目的成分も見逃すことなく検出でき、特に微量分析に威力を発揮する。
[第1実施例]
本発明の一実施例であるGC/MSについて、添付の図1〜図5を参照して説明する。図1(a)は本実施例によるGC/MSの全体構成図である。
本発明の一実施例であるGC/MSについて、添付の図1〜図5を参照して説明する。図1(a)は本実施例によるGC/MSの全体構成図である。
カラムオーブン3内に設置されたキャピラリカラム4Aの入口には試料気化室1が設けられ、試料気化室1を通してカラム4A内に一定流量で以てヘリウム等のキャリアガスが送給される。制御部7の制御の下に所定のタイミングでインジェクタ2より試料気化室1内に少量の液体試料が注入されると、この液体試料は瞬時に気化し、キャリアガス流に乗ってカラム4A内に送り込まれる。カラム4Aを通過する間に試料に含まれる各種化合物はカラム4Aの長手方向に分離され、時間的にずれてカラム4A出口から流出し、GCの検出器である質量分析装置5のイオン源51に導入される。質量分析装置5において、導入された試料ガス中の化合物はイオン源51でイオン化され、四重極質量フィルタなどの質量分離部52でイオンはm/zに応じて分離されてイオン検出器53で検出される。質量分析装置5は導入される試料ガス中の化合物を順次検出し、検出データをデータ処理装置6に送る。
データ処理装置6は、クロマトグラム作成部61、保持指標換算部62、畳み込み演算部63などを機能として含む。また、制御部7は、インジェクタ2を初めとするGC部の動作と質量分析装置5の動作とを制御する。データ処理装置6及び制御部7の大部分は例えばパーソナルコンピュータをハードウエア構成とし、そのパーソナルコンピュータ上で所定の制御・処理プログラムを動作させることにより具現化されるものとすることができる。
図1(a)は、試料気化室1とイオン源51との間に相対的に短いカラム4Aが取り付けられた状態てあるが、後述する特徴的な処理を行うクロマトグラムデータを収集するためには、図1(b)に示すように、短いカラム4Aに代えて試料気化室1とイオン源51との間に長いカラム4Bを取り付ける。短いカラム4Aと長いカラム4Bとは長さは相違するが、内径は同一で固定相は同じである。好ましくは、単に固定相が同じであるのみならず、同一メーカーの同一製造ロットのカラムであって長さのみが相違するものであるとよい。
本実施例のGC/MSにおける特徴的な分析動作及びデータ処理を説明する。図2はその一連の動作・処理の手順を示すフローチャート、図3〜図5はその動作・処理を説明するためのクロマトグラムや波形図である。
このGC/MSでは、1つの目的試料に対し短いカラム4Aを用いたGC分析と長いカラム4Bを用いたGC分析との2回のGC/MS分析を実行する。まず、図1(a)に示すように短いカラム4Aを装着した状態で、インジェクタ2から試料気化室1内に目的試料を注入し、その試料注入時点から所定時間が経過するまでGC/MS分析を実行する。このとき、質量分析装置5では、予め指定されたm/z範囲に亘るスキャン測定を繰り返すか、或いは予め指定された1乃至複数のm/zにおけるSIM測定を行うものとする。データ処理装置6は上記期間中に質量分析装置5から検出データを受け取り、クロマトグラム作成部61は例えばスキャン測定で得られたデータの中から予め指定された特定のm/zにおけるデータを抽出してマスクロマトグラムを作成する(ステップS1)。作成されるマスクロマトグラムの一例を図3(a)に示す。このマスクロマトグラム中に記号*で示した2本のピークが試料中の目的成分由来のピークである。
次に図1(b)に示すように相対的に長いカラム4Bを装着した状態で、インジェクタ2から試料気化室1内に同じ目的試料を注入し、その試料注入時点から所定時間が経過するまでGC/MS分析を実行する。そして、データ処理装置6のクロマトグラム作成部61は上記特定のm/zにおけるマスクロマトグラムをステップS1と同様に作成する(ステップS2)。このマスクロマトグラムの一例を図3(b)に示す。このマスクロマトグラム中でも記号*で示した2本のピークが試料中の目的成分由来のピークである。カラムの長さが相違するため、図3(a)と(b)とでは、同一成分に由来するピークが異なる保持時間に現れる。
次に保持指標換算部62は、上記の2つのマスクロマトグラムデータに対しそれぞれ保持時間を保持指標(リテンションインデックス)に換算し、横軸が保持指標であるマスクロマトグラムを作成する(ステップS3)。そのために、ここではn−アルカンの同族体系列を基準物質として予め(又は目的試料と同時に)GC/MS分析して、n−アルカンの各ピークの保持時間から任意の化合物の保持指標を求めるための保持指標換算情報を作成しておく。そして、保持指標換算部62は保持指標換算情報を利用してマスクロマトグラム上に現れる各ピークの保持時間を保持指標に換算して、保持指標ベースのマスクロマトグラムを作成する。もちろん、基準物質としてn−アルカン以外の物質を利用してもよい。また、保持指標の代わりに相対保持比を用いることもできる。
短いカラム4Aを用いて得られたマスクロマトグラムを保持指標ベースに変換したマスクロマトグラムをf(t)、長いカラム4Bを用いて得られたマスクロマトグラムを保持指標ベースに変換したマスクロマトグラムをg(t)とする(但し、これらはtの関数であるが、ここでは保持指標をtと読み替えるものとする)。図4はこの保持指標ベースの両マスクロマトグラムf(t)、g(t)を示す図である。ここで与えられる保持指標は基本的にはカラムの長さの影響を受けないため、目的試料中の同一成分に由来するピークは2つのクロマトグラム上でほぼ同じ位置(保持指標)に現れる。これに対し、ランダムに生じるノイズによるピークは2つのクロマトグラム上で同じ位置に現れない。もちろん、偶然に同じ位置にノイズによるピークが現れることもあるが、その確率は非常に低いとみなすことができる。
但し、保持指標の再現性などの影響により、同一成分由来のピークは完全には同じ位置に現れないため、若干の位置ずれを考慮して同一成分由来のピークを抽出するために、畳込み演算部63は、2つのマスクロマトグラムf(t)、g(t)を用いた重み付け畳み込み演算処理を実行する(ステップS4)。ここでは、次の(1)式の演算を実行する。
F(t)=max √|f(t)|g(t−τ)|w(τ) …(1)
この式は、或るtについて、f(t)とg(t)とのずれ量τを所定の範囲で少しずつ変化させながら、√|f(t)|g(t−τ)|w(τ)を計算し、最大となる値を求めることを意味する。
F(t)=max √|f(t)|g(t−τ)|w(τ) …(1)
この式は、或るtについて、f(t)とg(t)とのずれ量τを所定の範囲で少しずつ変化させながら、√|f(t)|g(t−τ)|w(τ)を計算し、最大となる値を求めることを意味する。
w(τ)は重み関数であり、例えばτ=0を中心にした幅Δτで高さ1の矩形やガウス関数を用いればよい。f(t)、g(t)、w(τ)の一例を図5(a)、(b)、(c)に示す。Δτとしては保持指標の再現性などを考慮し、5〜10程度の値を用いることができる。またF(t)を評価するためのτの値としては、重み関数w(τ)が十分に0に近くなる50〜100程度の範囲とすればよい。畳み込み演算のためのこれらパラメータは、どの程度の保持指標再現性を見込むのかということや、ノイズの除去性能に関連する。したがって、予め決めておいたパラメータを使用するとともに、ユーザがこれを自由に変更できるようにしてもよい。
(1)式の演算処理により、図5(d)に示されているように、重み関数w(τ)が0になる範囲に存在するピークは除去され、同一成分由来のピークが孤立ピークとして残される。これは、或る1つの成分由来のピークのみを示したものであるが、目的試料に複数の成分が含まれ、それらが十分に離れた(重み関数内に入らないような)保持指標を持てば、各ピークが孤立ピークとして抽出される。それによって、ランダム性のバックグラウンドノイズが除去されたマスクロマトグラムを得ることができるから、それを例えば記憶部に保存する(ステップS5)。
なお、(1)式で示したように最大値(max)を採る演算ではなく、τで積分して(つまり畳み込み積分を行って)平均を採っても構わない。但し、その場合には、τの範囲を広くしすぎると平均する範囲が拡がって信号のピーク値が低下する。したがって、τの範囲を保持指標値の再現範囲の2倍程度に狭めておくとよい。また、F(t)を評価するにあたり、f(t)、g(t)の絶対値をとっているが、f(f)、g(t)が負の値となる場合にはゼロにしてもよい。
[第2実施例]
本発明の別の実施例であるGC/MSについて、図6〜図8を参照して説明する。図6は本実施例によるGC/MSの全体構成図であり、図1と同じ構成要素には同じ符号を付してある。第1実施例のGC/MSでは目的試料に対して2回のGC/MS分析を実行する必要があったのに対し、この第2実施例のGC/MSでは目的試料に対して1回のGC/MS分析を行うことで短いカラム4Aと長いカラム4Bとを通した分析結果が同時に得られるようになっている。
本発明の別の実施例であるGC/MSについて、図6〜図8を参照して説明する。図6は本実施例によるGC/MSの全体構成図であり、図1と同じ構成要素には同じ符号を付してある。第1実施例のGC/MSでは目的試料に対して2回のGC/MS分析を実行する必要があったのに対し、この第2実施例のGC/MSでは目的試料に対して1回のGC/MS分析を行うことで短いカラム4Aと長いカラム4Bとを通した分析結果が同時に得られるようになっている。
このGC/MSでは、試料気化室1と検出器である質量分析装置5のイオン源51との間に、短いカラム4Aと長いカラム4Bとの2本の同種のカラムが併設されており、試料気化室1から2本のカラム4A、4Bに並行してキャリアガスが供給され、両方のカラム4A、4Bで成分分離された試料ガスはイオン源51に合流して導入される。インジェクタ2から試料気化室1内に目的試料が注入されると、気化した試料は2本のカラム4A、4Bに並行して導入される。同じ試料成分に対し長いカラム4Bは短いカラム4Aよりも長い保持時間を与え、同じ試料成分は時間的にずれてイオン源51に導入され、質量分析装置5で検出される。このため、データ処理装置8においてクロマトグラム作成部81は同一成分に由来する2本のピークが現れる1つのマスクロマトグラムを作成する。
このマスクロマトグラムの一例を図7に示す。このマスクロマトグラム中に記号*で示した4本のピークが試料中の目的成分由来のピークである。この場合にも、保持時間を保持指標に変換するための情報を得るために、予めn−アルカンの同族体系列を基準物質としてGC/MS分析するが、その際に同じn−アルカンに対して2本のピークがそれぞれ生じるので、異なる2つの保持指標換算情報を求めることができる。そこで、保持指標換算部82は、図7に示したような1つのマスクロマトグラムに現れている各ピークの保持時間を異なる2つの保持指標換算情報を用いてそれぞれ保持指標に換算し、図8に示すような2つの保持指標ベースのマスクロマトグラムを作成する。
この場合、第1実施例とは異なり、2つの保持指標ベースのマスクロマトグラムにそれぞれ同一成分由来の2本のピークが現れる。そして、カラム4A、4Bの長さを適切に定めると、一方のマスクロマトグラムにおいて或る成分由来の2本のピークのうちの後方側のピークと、他方のマスクロマトグラムにおいて同一成分由来の2本のピークのうちの前方側のピークとがほぼ同じ位置になる。一方、同一ノイズによるピークは基本的に1本しか現れない。そこで、この2つのマスクロマトグラムをf(t)、g(t)とし、(1)式により、重み付け畳み込み演算を実行する。これにより、同一成分由来のピークが2本現れるものについてのみ、つまり目的試料中の成分に由来するピークのみを抽出し、それ以外のノイズによるピークを除去することができる。
但し、目的試料に含まれる化合物が複数ある場合に、複数の化合物由来のピークが保持時間ベースのマスクロマトグラム上で重なってしまうことがあり、目的試料に含まれる化合物の数が多いと特にそうした重なりが起こり易い。そうなると第2実施例で示したデータ処理ではノイズを除去できない。したがって、目的試料に含まれる化合物の数が多いことが分かっている場合には、第1実施例による手法を用いることが好ましい。
なお、上記実施例では、スキャン測定により取得したマスクロマトグラムに重畳しているバックグラウンドノイズを除去するものであったが、トータルイオンクロマトグラムに適用できることは当然である。また、SIM測定で得られた特定のm/zにおけるクロマトグラム(いわゆるSIMデータ)に適用できることも当然である。さらに、検出器として質量分析装置以外の検出器を用いた通常のガスクロマトグラフ装置に対しても本発明を適用できることは明らかである。
また、それ以外の点についても、本発明の趣旨に沿った範囲で適宜変形や修正を行うことができることは明らかである。
1…試料気化室
2…インジェクタ
3…カラムオーブン
4A…短いカラム
4B…長いカラム
5…質量分析装置
51…イオン源
52…質量分離部
53…イオン検出器
6、8…データ処理装置
61、81…クロマトグラム作成部
62、82…保持指標換算部
63、83…畳み込み演算部
7…制御部
2…インジェクタ
3…カラムオーブン
4A…短いカラム
4B…長いカラム
5…質量分析装置
51…イオン源
52…質量分離部
53…イオン検出器
6、8…データ処理装置
61、81…クロマトグラム作成部
62、82…保持指標換算部
63、83…畳み込み演算部
7…制御部
Claims (3)
- a)目的試料に対し長さが相違する同種の2本のカラムを用いてそれぞれガスクロマトグラフ分析を実行し、対応する2つのクロマトグラムデータを取得する分析実行手段と、
b)前記2つのクロマトグラムデータの時間軸をそれぞれ所定物質を基準とする保持指標又は相対保持比に変換するデータ変換処理手段と、
c)前記データ変換処理手段により変換された2つのクロマトグラムデータに対し所定の重み関数を設定した畳み込み演算処理を実行する演算処理手段と、
を備えることを特徴とするガスクロマトグラフ装置。 - a)試料気化室と検出器との間に長さが相違する同種の2本のカラムが併設された分析部と、
b)前記分析部により目的試料に対するガスクロマトグラフ分析を実行し、前記2本のカラムでそれぞれ分離された同一成分に由来するピークが現れた1つのクロマトグラムデータを取得する分析実行手段と、
c)所定の基準物質を前記分析部によりガスクロマトグラフ分析して得られた結果に基づく2つの異なる保持指標換算情報又は相対保持比換算情報にを用いて、前記分析実行手段により得られた1つのクロマトグラムデータの時間軸を保持指標又相対保持比に変換した2つのクロマトグラムデータを生成するデータ変換処理手段と、
d)前記データ変換処理手段により生成された2つのクロマトグラムデータに対し所定の重み関数を設定した畳み込み演算処理を実行する演算処理手段と、
を備えることを特徴とするガスクロマトグラフ装置。 - 請求項1又は2に記載のガスクロマトグラフ装置であって、カラムで成分分離された試料ガスを検出する検出器が質量分析装置であるガスクロマトグラフ質量分析装置であり、前記分析実行手段は、所定のm/z範囲のスキャン測定又は所定のm/zに対するSIM(選択イオンモニタリング)測定を実行し、特定のm/zにおけるクロマトグラムデータを取得するものであることを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
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Cited By (1)
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CN104755922A (zh) * | 2012-10-25 | 2015-07-01 | 株式会社岛津制作所 | 全二维色谱仪用数据处理装置 |
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2008
- 2008-08-25 JP JP2008214809A patent/JP2010048732A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN104755922A (zh) * | 2012-10-25 | 2015-07-01 | 株式会社岛津制作所 | 全二维色谱仪用数据处理装置 |
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