JP5962845B2 - クロマトグラムデータ処理装置及び処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、クロマトグラフ、特に液体クロマトグラフ(LC)のカラムで分離された成分を含む試料やフローインジェクション法により導入された試料を分光分析することで収集されたデータを処理するクロマトグラムデータ処理装置及び処理方法に関する。
検出器としてPDA(Photo Diode Array)検出器等のマルチチャンネル型検出器を用いた液体クロマトグラフ(LC)では、移動相への試料の注入時点を基点とし、カラムからの溶出液に対して吸光度スペクトルを繰り返し取得することで、時間、波長、及び吸光度という三つのディメンジョンを持つ3次元クロマトグラムデータを得ることができる。図15はこのような3次元クロマトグラムデータの模式図である。この3次元クロマトグラムデータの中から特定の波長におけるデータを抽出することで、その特定波長における時刻と吸光度との関係を示す波長クロマトグラムを作成することができる。また、上記3次元クロマトグラムデータの中から特定の時点におけるデータを抽出することで、該時点における波長と吸光度との関係を示す吸光度スペクトルを作成することもできる。
なお、特に単一成分を含む試料中の該成分の定量分析を行う場合には、カラムを用いない(つまりは成分分離を行わない)フローインジェクション分析(FIA=Flow Injection Analysis)法が用いられることがある。FIA法は、液体クロマトグラフ用のインジェクタなどを用いて一定流量で送給される移動相中に所定量の試料を注入し、移動相の流れに乗せて試料を検出器へと導入する手法であり、カラムを用いた場合のカラム溶出液と同様に、目的成分の濃度は時間経過に伴って略山型状に変化する。このようなFIA法により導入された試料をマルチチャンネル型検出器で検出する場合に得られるデータも、時間、波長、及び吸光度という三つのディメンジョンを持つ3次元データとなり、上記のような液体クロマトグラフにより収集されるデータと実質的に同じである。そのため、本明細書でいうところの「3次元クロマトグラムデータ」は、FIA法により収集された3次元データも含むものとする。
こうした液体クロマトグラフにおいて、既知である目的成分の定量分析を行う場合には、その目的成分に対応した吸収波長における波長クロマトグラムを求め、そのクロマトグラムに現れる目的成分由来のピークの面積(又は高さ)を検量線に照らして定量値を算出するのが一般的である。
このように目的成分を定量する際に、波長クロマトグラムに現れているピークがその目的成分のみに由来するものであれば問題ないが、ピークは必ずしも単一成分(目的成分)によるものとは限らず分析者が意図しない不純物を含んでいる場合がよくある。そこで従来より、クロマトグラムに現れている或るピークが目的成分のみに由来するのか、或いは不純物を含んでいるのかを調べる、ピーク純度判定処理が行われている。
例えば特許文献1には、マルチチャンネル型検出器を用いた液体クロマトグラフで得られるクロマトグラムにおけるピーク純度判定処理の手法が開示されている。この手法では、波長クロマトグラムにおける目的ピークのピーク頂点に対応した時刻T0での吸光度スペクトルをS0(λ)、その前後の任意の時刻Tでの吸光度スペクトルをS(λ)とし、次の(1)式により、S0(λ)とS(λ)との一致度Pを算出する。
Figure 0005962845
そして、図16に示すように、一致度Pが1.0〜0.8であれば緑色、0.8〜0.6であれば黄色、0.6以下であれば橙色というように、目的ピークをそのピーク頂点との一致度Pに応じた色(図中では網掛けで表現している)によって時間軸方向に分割表示する。
目的ピークが目的成分のみに由来すれば、図16(a)に示すように、一致度Pはピーク頂点付近で高く、ピーク頂点から遠ざかるほど低くなり、その形状はピークの中心軸を挟んで概ね左右対称となる。これに対し、目的ピークのピーク頂点の前又は後に別のピークが存在する場合(即ち、目的ピークが不純物を含んでいる場合)には、目的ピークのピーク頂点の前又は後で一致度Pが低下する。例えば図16(b)に示した例では、ピーク頂点を挟んで、左側に比べて右側(時間的に後ろ側)の一致度Pが低くなっている。これにより、この付近の時間範囲において不純物が含まれる可能性が高いと判断することができる。
しかしながら、上述した従来のピーク純度判定方法では、目的ピークのピーク頂点のすぐ近傍に不純物ピークが存在したとしても、ピーク頂点近くにおける一致度Pはあまり下がらないため、不純物の存在を正しく判定することができないことがあった。
また、上述のピーク純度判定方法では、非特許文献1に記載されているように、不純物ピークが存在するか否かを判断するための一致度Pの閾値を求める上で、例えば各波長におけるノイズの大きさを成分とするノイズベクトルをパラメータとして設定する必要がある。しかしながら、ノイズベクトルを得るためには、マルチチャンネル型検出器で検出される所定の波長領域におけるノイズの大きさを逐次モニタし、該波長領域におけるノイズの時間変化の標準偏差を求めるといった煩雑な計算処理が必要であるという問題もあった。
特許第2936700号公報
水戸康敬、北岡光夫、「島津HPLC用フォトダイオードアレイUV−VIS検出器SPD−M6A」、島津評論、第46巻、第1号、1989年7月、pp.21-28
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、本発明の目的は、目的試料が不純物を含むか否かを、複雑な計算処理を必要とすることなく高精度で判定することができるクロマトグラムデータ処理装置及び処理方法を提供することにある。
上記目的を達成するために成された本発明は、目的試料について収集された、時間、波長、及び吸光度をディメンジョンとする3次元クロマトグラムデータを処理するクロマトグラムデータ処理装置において、
前記3次元クロマトグラムデータに基づき、全時間範囲又は所定時間範囲の各時点における波長と吸光度との関係を示す吸光度スペクトルについて、所定の波長範囲における波長方向の微分係数である波長微分係数の変化を表す微分スペクトルを作成する微分スペクトル作成手段と、
前記微分スペクトルの波形の時間変化に基づいて、目的成分のピークに他の1ないし複数の成分が含まれているか否かを判定する判定手段と
を備えることを特徴とする。
前記判定手段は、各時点における微分スペクトルについて微分係数がゼロになる波長を求め、この波長の時間変化に基づいて判定することが望ましい。
本発明に係るクロマトグラムデータ処理装置は、さらに、各時点における微分スペクトルについて微分係数がゼロになる波長の時間的変化を表示する表示手段を備えることが望ましい。
上記3次元クロマトグラムデータは、典型的には、クロマトグラフのカラムにより時間方向に分離された成分を含む試料に対しマルチチャンネル型検出器などの検出器により吸光度スペクトルを繰り返し取得することで得られたデータである。
また、カラムを経た試料の代わりに、FIA法により、成分分離されることなく導入された試料に対して同様に得られたデータでもよい。
また上記検出器はマルチチャンネル型検出器でなくても、その波形形状が微分可能なスペクトルが得られるものであればよく、波長走査により吸光度スペクトルを得る、紫外可視分光光度計、赤外分光光度計、近赤外分光光度計、蛍光分光光度計、などであってもよい。
また、上記クロマトグラフは、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフのいずれでもよい。
上記吸光度スペクトルは、試料からの光の波長と、各波長における吸光度との関係を示すものである。この吸光度スペクトルには、物質毎に固有の極大(及び、場合によっては極小)吸収波長が存在する。極大(又は極小)吸収波長は、多くの場合、物質毎に複数存在するが、所定の波長範囲に限った場合、一つしか現れないこともある。
また、極大(又は極小)吸収波長は物質固有であるため、通常、異なる成分の極大(又は極小)吸収波長は一致しない。また、偶然、或る一つの極大(又は極小)吸収波長が一致したとしても、互いに異なる別の極大(又は極小)吸収波長が存在することもある。こうしたことから、クロマトグラム上で目的成分に由来するピーク(目的ピーク)に他の成分が含まれていなければ、少なくとも目的ピークが含まれる時間範囲内の各時点の吸光度スペクトルにおいて、目的成分の極大(又は極小)吸収波長は極大(又は極小)のままである。そのため、各時刻における吸光度スペクトルの波長方向の微分係数の変化を表す微分スペクトルの波形は類似し、微分係数がゼロとなる波長(これは、極大(又は極小)吸収波長である)は常に一定で変化しない。
一方、クロマトグラム上で目的ピークに他の成分が含まれている場合には、極大(又は極小)吸収波長が変化するため、吸光度スペクトルの波長方向の微分係数がゼロとなる波長が変動する。他の成分のピークが目的ピークの頂点のすぐ近くに存在する場合(つまり保持時間がきわめて近い場合)でも、極大(又は極小)吸収波長は僅かに変化するため、本発明に係るクロマトグラムデータ処理装置によれば、目的試料に他の成分(不純物)が含まれているか否かを高精度に判定することができる。
また、上記構成によれば、各時刻における吸光度スペクトルが得られればよく、繰り返し得られた吸光度スペクトルを蓄積したデータからリアルタイム表示時に設定した波長以外の波長クロマトグラムを再構成して、そのピークを検出する必要がないため、リアルタイムで不純物の有無を判定することが可能となり、判定に要する時間を短縮することができる。
本発明に係るクロマトグラムデータ処理装置及び処理方法によれば、クロマトグラム上で不純物ピークが目的ピークの頂点のすぐ近傍に存在するなど、従来のピーク純度判定では見逃されるような場合であっても、目的ピークに不純物が含まれているか否かを高精度に判定することができる。また上述した従来のピーク純度判定処理とは異なり、ノイズベクトルをパラメータとして設定する必要がないため、比較的単純な計算処理によって目的ピークに不純物が含まれているか否かを判定することができる。さらに、リアルタイムで不純物の有無の判定を行うことができるため、判定に要する時間を短縮することができる。吸光度スペクトルを取得した全ての波長範囲において吸光度スペクトルの波長方向の微分係数がゼロとなる波長(これは、極大(又は極小)吸収波長である)全ての時間的変化を検討するため、より精度の高い判定結果を得ることが可能となる。
本発明のクロマトグラムデータ処理装置を備えた液体クロマトグラフシステムの概略構成図。 本発明の一実施例のクロマトグラムデータ処理装置における不純物の有無判定処理動作を示すフローチャート。 本発明における二成分ピーク分離及びピーク純度判定の原理を説明するための吸光度スペクトルの一例を示す図。 図3に示した吸光度スペクトルに基づく微分スペクトルを示す図。 クロマトグラム上の二成分混合ピークを示す図。 図4に示した微分スペクトルに基づく微分クロマトグラムを示す図。 成分xの吸光度スペクトルと成分xと成分yの混合物の吸光度スペクトルを示す図。 成分x(実線)と、成分xと成分yの混合物(点線)各々の時刻tの微分係数S'(t,λ)がゼロとなる波長λ0xを示す図。 本発明の別の実施例のクロマトグラムデータ処理装置におけるピーク純度判定処理動作を示すフローチャート。 極大(又は極小)吸収波長クロマトグラムのピークの一例を示す図。 各測定時点における吸光度スペクトルの一例を示す図。 目的成分及び不純物の吸光度スペクトルの一例を示す図。 微分クロマトグラムの一例を示す図。 クロマトグラムウィンドウとスペクトルウィンドウを示す図。 3次元クロマトグラムデータ、及び該3次元クロマトグラムデータから作成される極大(又は極小)吸収波長クロマトグラムを示す模式図。 従来のピーク純度判定処理の手法により得られる結果の表示例であり、(a)は不純物を含まないピークの例、(b)は不純物を含むピークの例。
[本発明の一実施例であるクロマトグラムデータ処理装置の構成及び動作]
まず、本発明に係るクロマトグラムデータ処理装置の一実施例について、図1を参照して説明する。図1は、本実施例におけるクロマトグラムデータ処理装置(以下、単に「データ処理装置」という)を備える液体クロマトグラフシステムの概略構成図である。
3次元クロマトグラムデータを収集するためのLC部1では、送液ポンプ12が移動相容器11から移動相を吸引し、一定の流量で試料注入部13へと送給する。試料注入部13は所定のタイミングで試料を移動相中に注入する。試料は移動相によってカラム14に送られ、カラム14を通過する間に試料中の各成分が時間方向に分離され、カラム14から溶出する。
カラム14の出口には、カラム14からの溶出液中の試料成分を検出するための検出器として、マルチチャンネル型検出器の一種であるPDA検出器15が設けられている。PDA検出器15は、図示しない光源からの光を溶出液に照射し、溶出液を透過した光を波長分散させて各波長の光の強度をPDAリニアセンサによってほぼ同時に検出する。このPDA検出器15により得られた検出信号はA/D変換器16によってデジタル信号に変換された後、データ処理装置2へ出力される。
データ処理装置2は、A/D変換器16から出力された時刻tにおける各波長の検出信号を3次元クロマトグラムデータとして格納するための3次元データ記憶部21と、波長クロマトグラム作成部22と、演算部23と、不純物を検出する不純物検出部24と、を含む。
不純物検出部24は、機能ブロックとして、微分クロマトグラム作成部25と、判定部26と、微分スペクトル作成部27と、ゼロ波長グラフ作成部28と、を含む。これら各部の動作については後述する。
表示部3は、極大(又は極小)吸収波長クロマトグラム、吸光度スペクトル、微分クロマトグラム、微分スペクトル、及び判定結果等の各種情報を表示するためのものである。操作部4は、データ取得時間tendや目的成分の極大(又は極小)吸収波長λ0など、データ処理に必要な情報等をオペレータが入力設定するために操作される。
なお、データ処理装置2の機能の一部又は全部は、パーソナルコンピュータやワークステーションにインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアを実行することにより達成することができる。また、表示部3は一般的な液晶モニタ等であり、操作部4はパーソナルコンピュータやワークステーションの標準的な装備であるキーボードやマウス等のポインティングデバイスなどとすることができる。
次に,本実施例におけるピーク純度判定の原理について説明する。本実施例では、吸光度スペクトルを波長方向に微分することにより得られる特定波長の波長微分係数の時間的変化(微分クロマトグラム)からピーク純度を判定する方法と、所定の波長範囲における吸光度スペクトルの波長微分係数が0となる波長の時間的変化からピーク純度を判定する方法を選択的に実行するようになっている。以下、これら純度判定の原理について順に説明する。
[微分クロマトグラムに基づく二成分ピーク分離及びピーク純度判定]
いま、図15に示したような3次元クロマトグラムデータに、x、yなる二つの成分が試料に含まれる場合を考える。図3はこの成分x(目的成分x)及び成分y(他の成分y)それぞれの吸光度スペクトルの一例を示す図である。図示するように、一般に、吸光度ピークの頂点(極大(又は極小)点)に対応した極大(又は極小)吸収波長は物質毎に相違する。
図4は、図3に示した吸光度スペクトルを波長方向に微分することで求まる微分スペクトルである。波長方向にカーブが上昇している局面では微分係数は正値、カーブが下降している局面では微分係数は負値になり、吸光度ピークの頂点及び谷部の底では微分係数は0となる。図4に示すように、成分xの微分スペクトルにおいて微分係数が0(ただし微分係数が正値から負値に変化する状況での「0」)となる波長をλx、成分yの微分スペクトルにおいて微分係数が0(同じく微分係数が正値から負値に変化する状況での「0」)となる波長をλyとする。つまり、ここでは、λxは成分xの極大吸収波長、λyは成分yの極大吸収波長である。
図5は、クロマトグラム上で成分xと成分yそれぞれのピークプロファイルの一例と、それらピークプロファイルが重なった状態、つまり未分離の混合ピークとを示す図である。成分xと成分yの保持時間はかなり近接しており、混合ピークから各成分x、yのピークプロファイルを予測するのは困難である。
そこで、以下のような方法を用いる。
いまここで、成分xの吸光度スペクトルをx(λ)、ピークプロファイルをa(t)、同様に成分yの吸光度スペクトルをy(λ)、ピークプロファイルをb(t)とすると、成分xと成分yとが共に溶出している(つまりはクロマトグラム上でピークが重なっている)二成分系での3次元クロマトグラムS(t,λ)は次の(2)式で表すことができる。
S(t,λ)=a(t)x(λ)+b(t)y(λ) …(2)
これを波長λで偏微分すると次の(3)式となる。
∂S(t,λ)/∂λ=a(t)x'(λ)+b(t)y'(λ) …(3)
(3)式に成分xの微分スペクトルにおける微分係数が0となる波長λxを代入すると、x'(λx)=0であることから、
∂S(t,λx)/∂λ=b(t)y'(λx) …(4)
となる。同様に、(3)式に成分yの微分スペクトルにおける微分係数が0となる波長λyを代入すると、y'(λy)=0であることから、
∂S(t,λy)/∂λ=a(t)x'(λy) …(5)
となる。
図6の(a)は(4)式の結果を時間方向にプロットしたもの、(b)は同様に(5)式の結果を時間方向にプロットしたものである。つまり、図6(a)は波長λxにおける微分クロマトグラム、図6(b)は波長λyにおける微分クロマトグラムである。(4)式から明らかなように、波長λxにおける微分クロマトグラムには、成分yのみのピークプロファイルb(t)が現れる。また(5)式から明らかなように、波長λyにおける微分クロマトグラムでは、成分xのみのピークプロファイルa(t)が現れる。これらピークプロファイルa(t)、b(t)の面積や高さはそれぞれの成分の濃度に依存する。なお、図4〜図6に関する上記説明は成分x、yの極大吸収波長λx、λyを用いた場合についての説明であるが、極大吸収波長の代わりに成分x、yの極小吸収波長を利用してもよい。
いま図6(a)に着目すると、この微分クロマトグラムにピークが現れなかったとすれば、つまりは微分係数が0のままであったとすれば、これは成分yが存在しなかったことを意味する。即ち、成分xの極大(又は極小)吸収波長λxにおける微分クロマトグラムにピークが生じるか否かを判定すれば、成分yの重なりの有無を判定することができる。この判定を行うだけであれば、成分yの極大(又は極小)吸収波長λyが既知である必要はなく、成分y自体が未知の成分であってもよいことは明らかである。これを拡張して考えれば、単に或る既知の成分のクロマトグラムのピークに他の成分が含まれているか否かを判定するだけであれば、該他の成分は一つである必要はなく、1乃至複数の成分をまとめて不純物として扱えばよいことが分かる。
即ち、成分xの3次元クロマトグラムがa(t)x(λ)であり、これに他の1乃至複数の成分が不純物として混入している場合、3次元クロマトグラムS(t,λ)は次の(6)式で表すことができる。
S(t,λ)=a(t)x(λ)+b(t)y(λ)+c(t)z(λ)+… …(6)
これを波長λで偏微分し、成分xの微分スペクトルx'(λ)の値が0となる波長λxを代入すると、次の(7)式となる。
∂S(t,λx)/∂λ=b(t)y'(λx)+c(t)z'(λx)+… …(7)
この(7)式が成分xの極大(又は極小)吸収波長λxにおける微分クロマトグラムであり、成分x由来のピークは除去され、不純物のピークのみが現れることが分かる。
これにより、上述した二成分のピーク分離と同じ原理により、目的成分(成分x)に混入している不純物の有無も判定可能であることが分かる。
このように、上記した判定方法では、目的成分(成分x)の1つの極大(又は極小)吸収波長λxにおける微分クロマトグラムの時間的変化をみて不純物の有無を判定する。
[微分スペクトルに基づくピーク純度判定]
前述の通り吸光度スペクトルS(t,λ)の吸光度ピークの頂点(極大(又は極小)点)に対応した極大(又は極小)吸収波長は物質毎に相違し、また、極大(又は極小)吸収波長は物質固有であるため、通常、異なる成分の極大(又は極小)吸収波長は一致しない(図3参照)。従って、目的試料に2つの成分(成分x及び成分y)が含まれていると、図7に示すようにその吸光度ピークの頂点も変動する。これは、目的試料に3以上の成分が含まれていても同様である。そこで、各時刻の吸光度スペクトルS(t,λ)の吸光度ピークの頂点となる波長の時間的変化を観察することで目的試料に2以上の成分が含まれるか否か、すなわち不純物が含まれるか否かを判定することができる。
すなわち、クロマトグラム上で目的成分(成分x)に由来するピークに他の成分が含まれていなければ、少なくとも目的成分由来のピークが含まれる時間範囲内の各時点の吸光度スペクトルにおいて、目的成分の極大(又は極小)吸収波長は極大(又は極小)のままである。そのため、各時刻における吸光度スペクトルの波長方向の微分係数がゼロとなる波長(これは、極大(又は極小)吸収波長である)は常に一定で変化しない(図8中の(1))。
一方、目的成分(成分x)由来のピークに他の成分(成分y)が含まれていれば、該他の成分(成分y)が含まれる時間範囲内の各時点の吸光度スペクトルにおいて、目的成分(成分x)の極大(又は極小)吸収波長がその他の成分(成分y)の影響を受けて変化する(図7中の(2))。そのため、その時間範囲では、時刻tにおける吸光度スペクトルの波長方向の微分係数がゼロとなる波長(これは、極大(又は極小)吸収波長である)は変動する(図8中の(2))。
従って、各時刻の吸光度スペクトルS(t,λ)の吸光度ピークの頂点となる波長、すなわち、各時刻における吸光度スペクトルを波長方向に微分した微分係数がゼロとなる波長の時間的変化(図8)により、目的成分(成分x)に混入している不純物(成分y)の有無が判定可能であることが分かる。
第2の判定方法では、極大(又は極小)吸収波長が未知の場合でも各時刻に得られる吸光度スペクトルにのみ基づいて不純物の有無を判定することができるため、リアルタイムで簡単に不純物の有無を判定することが可能である。ここで、「リアルタイム」とは、クロマトグラフ分析の終了を待たず吸光度スペクトルが得られる度に、という意味である。
極大(又は極小)吸収波長は、所定の波長範囲に限った場合一つしか現れないこともあるが、前述のように、多くの場合、物質毎に複数存在する物質固有の波長である。そのため、通常、異なる成分の極大(又は極小)吸収波長は一致せず、偶然、複数の極大(又は極小)吸収波長の一つが一致したとしても、互いに異なる別の極大(又は極小)吸収波長が存在する。従って、上記した微分クロマトグラムに基づく判定方法においては、偶然一致するある一つの極大(又は極小)吸収波長における波長微分係数によって不純物を含まないと判定されるような場合があるが、この判定方法では、全波長領域において各時刻における吸光度スペクトルの波長方向の微分係数がゼロとなる複数の波長を調べることができる(図7中のλ0x1、λ0x2、λ0x3)ため、不純物が含まれることを精度良く判定することが可能となる。
次に、本実施例の液体クロマトグラフシステムにおけるピーク純度判定のデータ処理動作について説明する。まず、微分スペクトルに基づく判定方法におけるデータ処理動作について図2のフローチャートを参照して説明する。
オペレータは、操作部4より、クロマトグラフ分析を開始した後のデータ取得の終了時刻tendを設定する(ステップS1)。なお、ここでは、クロマトグラム分析を開始した直後からデータを取得することとして説明するが、データ取得の開始時刻と終了時刻を設定するようにしても良い。
LC部1において目的試料に対するクロマトグラフ分析が実行されると、所定の波長範囲における時刻tにおける各波長の吸光度(検出信号)がPDA検出器15から3次元データ記憶部21へと出力され、該3次元データ記憶部21に格納される(ステップS2)。
演算部23で、まず、時刻tがtendを超えていないか判断され(ステップS3)、超えていなければ、3次元データ記憶部21に格納された時刻tにおける吸光度と波長の関係を表す吸光度スペクトルS(t,λ)を作成し(ステップS4)、この吸光度スペクトルを全波長範囲において波長方向に微分し、波長毎の微分係数S'(t,λ)を算出する(ステップS5)。時刻tがtendを超えていたら、判定は終了とされる。
続いて、微分スペクトル作成部27は、演算部23で算出された微分係数S'(t,λ)と波長との関係を表す微分スペクトルを作成する(ステップS6)。その後、ゼロ波長グラフ作成部28は、微分スペクトルから微分係数がゼロとなる波長λoを抽出し、該波長λ0を記録する(ステップS7)。最後に、横軸を時間、縦軸を波長λoとしたグラフが表示部3に表示される(ステップS8)。
ステップS2〜S8は、クロマトグラフ分析の終了を待つことなく、吸光度スペクトルが得られる度に行われ、横軸を時間、縦軸を波長λoとした点がリアルタイムで表示部3上のグラフにプロットされる。従って、オペレータは、このプロットされたグラフの形状に基づいて目的試料に2以上の成分が含まれるか否か、すなわち不純物が含まれるか否かをリアルタイムで判定することが可能となる。
また、本実施例では、ある時刻tの微分係数S'(t,λ)がゼロである波長λo,t1の値が、その直前の時刻tのS'(t,λ)がゼロである波長λo,t2と比較され(ステップS9)、両者の差が所定範囲内にあれば(すなわち、図2のステップS9でNoであれば)、判定部26は、目的試料が時刻tまで不純物を含まない、すなわち、目的試料は1つの成分のみからなると判定する(ステップS10)。一方、ある時刻tのS'(t,λ)がゼロである波長λo,t1と、その直前の時刻tのS'(t,λ)がゼロである波長λo,t2との差が所定範囲を超えていれば(すなわち、図2のステップS9でYesであれば)、目的試料は不純物を含んでいると判定する(ステップS11)。このように得られた判定結果は、表示部3によってオペレータに通知される(ステップS12)。
ある時刻tのS'(t,λ)がゼロである波長λoの値が複数ある場合も(例えば、図7中の(1)成分xにおけるλ0x1、λ0x2、λ0x3)、単一の場合と同様に、各λo(λ0x1、λ0x2、λ0x3)毎に上記のステップS9〜S12が行われ、不純物の有無が判定されるため、より高精度な判定を行うことができる。
前述のように、本実施例では、目的成分のピーク頂点のごく近傍に不純物が含まれる場合であっても、不純物が入っていれば、吸光度スペクトルS(t,λ)を波長方向に微分した値S'(t,λ)がゼロとなる極大(又は極小)吸収波長λ0は変化する。そのため、従来のピーク純度判定手法に比べて格段に高精度な判定結果を得ることができる。また、各時間に取得された吸光度スペクトルの全波長範囲の極大(又は極小)吸収波長を検討しているため、目的成分の単一の極大(又は極小)吸収波長のクロマトグラムを検討する場合よりも精度が高いものとなる。さらに、リアルタイムで判定できるため、判定にかかる時間を短縮することが可能となる。
また、本実施例に係るデータ処理装置2では、上述した従来技術とは異なり、各波長におけるノイズ成分から成るノイズベクトルをパラメータとして設定する必要がないため、従来に比べて格段に平易な計算処理によってピーク純度判定を行うことができる。
なお、上記説明では、分析開始後のデータ取得の終了時刻tendを最初に設定したが、データ取得が全測定時間に亘る場合はtendを特に設定せずに、得られた全ての吸光度スペクトルに対して上記のステップS2〜S12を行うようにしてもよい。
また、ステップS6において表示部3に表示されるλ0の時間的変化の表示は、分かりやすい表示であれば、特に上記のグラフに限定されず、例えば表であってもよい。
次に、微分クロマトグラムに基づくピーク純度判定のデータ処理動作について、図9〜図14を参照して説明する。
まず、LC部1において目的試料に対するクロマトグラフ分析が実行されると、所定の波長範囲における時刻tの各波長の吸光度(検出信号)がPDA検出器15から3次元データ記憶部21へと出力され、該3次元データ記憶部21に格納される(ステップS1)。
次に、オペレータは、試料に含まれる目的成分(例えば定量したい成分)の極大(又は極小)吸収波長λS0の波長値を操作部4により入力する(ステップS2)。これを受けて、波長クロマトグラム作成部22は、入力された極大(又は極小)吸収波長λS0及び3次元データ記憶部21に格納されている吸光度データに基づいて、横軸に時間、縦軸に極大(又は極小)吸収波長λS0における吸光度をプロットした極大(又は極小)吸収波長クロマトグラムを作成する(ステップS3)。図15(a)に示した3次元クロマトグラムデータに基づいて作成される極大(又は極小)吸収波長クロマトグラムの一例を図15(b)に示す。
演算部23は、波長クロマトグラム作成部22により作成された極大(又は極小)吸収波長クロマトグラムの曲線の傾斜量を時間方向に順次調べ、図10に示すように、その傾斜量が所定値以上になったときをピークの始点TSと、傾斜量が正から0になりさらに負に転じたときをピーク頂点T0と、傾斜量の絶対値が所定値以下になったときをピークの終点TEとそれぞれ判断して、ピークを検出する(ステップS4)。図10では一つのピークのみを示しているが、試料に複数の成分が含まれる場合には、通常、複数のピークが検出される。検出されたピークの情報は表示部3の画面上に表示され、オペレータは、それら複数のピークの中から目的成分に由来する目的ピークを操作部4により選択する(ステップS5)。
目的ピークが選択されると、微分クロマトグラム作成部25は、目的ピークの始点TSから終点TEまでの時間範囲における吸光度スペクトルを3次元データ記憶部21から取得し、各吸光度スペクトルについてそれぞれ、操作部4から設定した、目的成分の極大(又は極小)吸収波長λS0における吸光度の波長微分係数を求める(ステップS6)。そして、横軸に時間、縦軸に算出された波長微分係数をプロットした微分クロマトグラムを作成する(ステップS7)。図13に微分クロマトグラムの一例を示す。
微分クロマトグラム作成部25により作成された微分クロマトグラムに基づいて、判定部26は、上述した原理に基づく以下のような処理を実施することで、目的ピークの始点TSから終点TEまでの時間範囲内で不純物の有無の判定を行う。
図12は、クロマトグラフ分析中の或る時点Tuにおける目的成分の吸光度スペクトルのパターン(図12中の(1))及び不純物の吸光度スペクトルのパターン(図12中の(2))を模式的に示す図である。このように目的成分の吸収波長域と不純物の吸収波長域とが互いに重なっている場合、上記時点Tuにおいて実際に得られる吸光度スペクトルのパターンは、目的成分の吸光度スペクトルのパターンと不純物の吸光度スペクトルのパターンを加算したもの(図12中の(3))となる。そのため、この吸光度スペクトルの極大(又は極小)位置と目的成分の極大(又は極小)吸収波長λS0とが一致しなくなる。
目的ピークが目的成分のみに由来する場合、図11に示すように、目的ピークの始点TSから終点TEまでの間のいずれの時点においても、目的成分の極大(又は極小)吸収波長λS0は各時点における吸光度スペクトルの極大(又は極小)位置と一致するため、極大(又は極小)吸収波長λS0における波長微分係数はゼロとなる。したがって、目的ピークの始点TSから終点TEまでの時間範囲における微分クロマトグラムは、図13において実線で示されるような、不可避なノイズのみを含んだ平坦な状態になる。一方、目的ピークが不純物を含んでいる場合、図12に示すように、目的成分の極大(又は極小)吸収波長λS0が各時点における吸光度スペクトルの極大(又は極小)位置と一致しなくなるため、極大(又は極小)吸収波長λS0における波長微分係数は、時間範囲TS〜TEにおいてゼロ以外の値となる。したがって、微分クロマトグラムは、図13において点線で示すように、不純物を含む時間域では平坦な状態とはならない。
そこで判定部26は、目的ピークの始点TSから終点TEまでの時間範囲内において微分クロマトグラムが平坦か否かを判定する(ステップS8)。該時間範囲内で微分クロマトグラムが平坦であれば(図9のステップS8でYesであれば)、判定部26は目的ピークが該時間範囲内において不純物を含まない、即ち、目的成分のみに由来するピークであると判定する(ステップS9)。一方、上記時間範囲内で微分クロマトグラムが平坦でなければ(即ち、ステップS8でNoであれば)、判定部26は目的ピークが該時間範囲内において不純物を含んでいると判定する(ステップS10)。このように得られた判定結果は、表示部3によってオペレータに通知される(ステップS11)。
微分クロマトグラムが平坦であるか否かの判定は、例えば、ベースラインのノイズ強度の平均のN倍又は所定のピーク面積以上であるピークが存在するか否か判定することで行うようにすればよい。また、それ以外の判定方法でもよい。
このように、本判定方法でも、極大(又は極小)吸収波長が目的成分の極大(又は極小)吸収波長λS0から僅かでも外れれば、微分クロマトグラムの形状に不純物の有無が反映される。そのため、従来のピーク純度判定手法に比べて格段に高精度な判定結果を得ることができる。
また、上述した従来技術とは異なり、各波長におけるノイズ成分から成るノイズベクトルをパラメータとして設定する必要がないため、従来に比べて格段に平易な計算処理によってピーク純度判定を行うことができる。
さらにまた、本実施例では、測定時間の全範囲ではなく、目的ピークの始点TSから終点TEまでの時間範囲に絞って微分クロマトグラムを作成するようにしたため、目的ピークに不純物が含まれているか否かをより効率よく判定でき、より短時間で判定を終了することができる。
なお、上記説明では、オペレータが操作部4によって目的ピークを選択するようにしていたが、この際に一つのピークではなく複数のピークを目的ピークとして選択するようにしてもよい。その場合、選択された目的ピーク毎に上述したような不純物の検出を実施すればよい。また、検出されたピークの数に拘わらず、検出された全てのピークについて不純物の検出を実施するように予め設定しておいてもよい。その場合、自動で全てのピークに対して不純物の検出を実施するため、図9のフローチャートにおいてステップS5の処理は省略される。
また、本実施例では、ステップS2において目的成分の極大(又は極小)吸収波長λS0の波長値をオペレータが入力するようにした。しかし、微分クロマトグラムにより不純物の検知を行う場合、目的成分の極大(又は極小)吸収波長λS0の波長値、すなわち微分係数S'(t,λ)がゼロとなる波長値を正確に設定しなければ、吸光度スペクトルを波長方向に微分したときに目的成分のピークを除去することができない。具体的には、微分係数S'(t,λ)がゼロとなる波長は0.01nmオーダーの精度で設定する必要があるが、現実的には、このような精度でオペレータが微分係数S'(t,λ)がゼロとなる波長値を設定することは困難である。また、表示部3上に表示された吸光度スペクトルから波長を指定できるようにしても、波長の設定には0.01nmオーダーの正確さが求められるため、スペクトルを十分に拡大表示してから設定する必要があり、設定に手間が掛かる。
そこで、オペレータが、吸光度スペクトルを表示する画面上からS'(t,λ)がゼロとなる波長のおおよその位置を指定し、その波長近傍でS'(t,λ)がゼロとなる正確な波長を自動的に検出するようにしても良い。
具体的には、表示部3に、クロマトグラムウィンドウとスペクトルウィンドウをユーザインターフェースとして表示する(図14中の(1))。オペレータは、まず、スペクトルウィンドウにより吸光度スペクトルの極大値又は極小値(波長S'(t,λ)がゼロとなる波長)の近くの波長をカーソルで指定する(図14中の(2))。すると、演算部23は、オペレータが指定した波長に最も近い、微分値がゼロとなる波長λ0を求める(図14中の(3))。波長λ0が求まると、演算部23は上述したように波長λ0における微分係数を求め、微分クロマトグラムを表示部3に表示する(図14中の(4))。
このように表示部3に、クロマトグラムウィンドウとスペクトルウィンドウをユーザインターフェースとして用意することによって、オペレータは吸光度スペクトル上の所望の波長位置の近くを指定するだけで、微分値がゼロとなる正確な波長λ0が得られ、当該波長λ0での微分クロマトグラムを表示・確認することができる。すなわち、オペレータが吸光度スペクトルを波長方向に微分した微分係数がゼロとなる波長を事前に調べる必要や、吸光度スペクトル上から微分係数がゼロと成る正確な波長を入力する必要がなくなり、オペレータは、より直感的且つ短時間で目的の波長における微分クロマトグラムを得ることが可能となる。
なお、目的成分の極大(又は極小)吸収波長λS0の波長値の入力方法としては、上記した他、オペレータが目的成分の名称や構造式などを指定すると、それに対応する波長値がデータベースから取得されるようにしてもよい。目的成分が複数の極大(又は極小)吸収波長を有する場合には、そのうちの一つを用いるようにすればよい。
さらにまた、目的ピークが含まれる時間範囲の設定に関し、オペレータが波長クロマトグラム上の目的ピークの保持時間の前後に適当な時間幅を設けた時間範囲を操作部4によって予め入力することにより、目的ピークの始点に対応する時間TS及び終点に対応する時間TEが取得されるようにしてもよい。
また、図10に示したような波長クロマトグラムを表示部3の画面上に表示し、オペレータがそれを見て、操作部4により、目的ピークの始点に対応する時間TS及び終点に対応する時間TEを指定するようにしてもよい。
こうした構成の場合、ステップS5においてオペレータが直接的に上記時間範囲を入力したり、波長クロマトグラム上で始点及び終点の位置をクリック操作等で指定したりすることにより、目的ピークの始点TSから終点TEまでの時間範囲が決定されるようにすることができる。
さらにまた、複数の極大(又は極小)吸収波長が存在する場合、一般的には、その中の最大強度の波長を選択することが望ましい。また、目的成分の極大(又は極小)吸収波長λS0としては、目的ピークのピーク頂点の近傍に不純物ピークが存在することが予め分かっており、その不純物の多寡を判定したい場合には、その不純物の吸収スペクトルを波長方向に微分した値が充分な大きさを持つ極大(又は極小)吸収波長を選択するとよい。
本発明は、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、追加、修正を加えても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
例えば、本発明のデータ処理装置による処理対象の3次元クロマトグラムデータを取得するクロマトグラフの検出器はPDA検出器等のマルチチャンネル型検出器でなくてもよく、吸光度スペクトルの吸光度を波長方向に順次微分したときにそのスペクトルカーブの傾斜を正確に反映した微分係数が得られるように、波形形状が微分可能なスペクトルが得られるものであればよい。ただし、所定波長範囲に亘る吸光度の測定に時間が掛かり過ぎるのは適当でないから、高速の波長走査が可能である紫外可視分光光度計、赤外分光光度計、近赤外分光光度計、蛍光分光光度計、などであってもよい。
また、クロマトグラフは、液体クロマトグラフでなくガスクロマトグラフでもよいが、上記のような検出器を用いるクロマトグラフは通常、液体クロマトグラフである。また、上述したように、クロマトグラフのカラムで分離された試料を検出器で検出して得られるデータでなく、FIA法により成分分離されることなく導入された試料中の成分を検出器で検出して得られるデータを処理する装置や方法にも本発明を適用できることは明らかである。
1…LC部
11…移動相容器
12…送液ポンプ
13…試料注入部
14…カラム
15…PDA検出器
16…A/D変換器
2…データ処理装置
21…3次元データ記憶部
22…波長クロマトグラム作成部
23…演算部
24…不純物検出部
25…微分クロマトグラム作成部
26…判定部
27…微分スペクトル作成部
28…ゼロ波長グラフ作成部
3…表示部
4…操作部
51…クロマトグラムウィンドウ
52…スペクトルウィンドウ

Claims (4)

  1. 目的試料について収集された、時間、波長、及び吸光度をディメンジョンとする3次元クロマトグラムデータを処理するクロマトグラムデータ処理装置において、
    前記3次元クロマトグラムデータに基づき、全時間範囲又は所定時間範囲の各時点における波長と吸光度との関係を示す吸光度スペクトルについて、所定の波長範囲における波長方向の微分係数である波長微分係数の変化を表す微分スペクトルを作成する微分スペクトル作成手段と、
    前記微分スペクトルの波形の時間変化に基づいて、目的成分のピークに他の1ないし複数の成分が含まれているか否かを判定する判定手段と
    を備えることを特徴とするクロマトグラムデータ処理装置。
  2. 前記判定手段は、各時点における微分スペクトルについて微分係数がゼロになる波長を求め、この波長の時間変化に基づいて判定することを特徴とする請求項1に記載のクロマトグラムデータ処理装置。
  3. さらに、各時点における微分スペクトルについて微分係数がゼロになる波長の時間的変化を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項2に記載のクロマトグラムデータ処理装置。
  4. 目的試料について収集された、時間、波長、及び吸光度をディメンジョンとする3次元クロマトグラムデータを処理するクロマトグラムデータ処理方法において、
    前記3次元クロマトグラムデータに基づき、全時間範囲又は所定時間範囲の各時点における波長と吸光度との関係を示す吸光度スペクトルについて、所定の波長範囲における波長方向の微分係数である波長微分係数の変化を表す微分スペクトルを作成する微分スペクトル作成ステップと、
    前記微分スペクトルの波形の時間変化に基づいて、目的成分のピークに他の1ないし複数の成分が含まれているか否かを判定する判定ステップと
    を備えるクロマトグラムデータ処理方法。
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