JP6036223B2 - クッション機構を有した筆記具 - Google Patents

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Description

本発明は、クッション機構を有した筆記具に関するものである。
従来、クッション機能を備えたシャープペンシルとしては、クッションスプリングを備えたシャープペンシルが一般的に知られており、例えば、特許文献1に開示された構成をしている。
前記特許文献1に開示された構成として、クッションスプリングは、スリーブを常時前方に付勢している。ここから、芯を把持したチャックが筆圧を受けると、芯からチャック及びチャックリングを介してスリーブにこの力が伝わり、クッションスプリングが収縮して、力を緩衝するようになっており、筆記開始時等に発生する急激な力が芯に作用することを防ぎ、ソフトなタッチで筆記を行うことができ、芯折れを防ぎ筆記性が良いものとしている。具体的には、コイルスプリングからなるクッションスプリングによる予付勢力を通常筆記時に芯に作用する最大力よりも弱め、通常筆記時にクッションスプリングを変形させ、芯を僅かに後退させて、クッションスプリングによる緩衝力を受ける構成をしたシャープペンシルである。このような構成をしている為、芯が筆圧の入力を受ける度にクッション効果を得ることが出来る。
特開2012−106452号公報
前記特許文献1の構成によると、クッションするストロークはクッションスプリングが予圧縮状態から最大に圧縮するまで、つまり、クッションスプリング(コイルスプリング)の密着長で規制されており、筆圧の入力を受ける度にクッションスプリングはその密着長まで圧縮されることになる。しかしながら、コイルスプリングの性質上、最大たわみの20〜80%での使用が好ましいとされている。この為、密着長付近での使用を重ねた場合、その断面に計算以上の過度の高応力が発生して折損を招いてしまったり、歪んで変形することでクッション不可能となり、意図した筆記感が損なわれてしまう。さらに、前記クッションスプリングの破損により、中軸セットが軸筒に対して固定できなくなり、使用時にカタカタと音が発生して使用者にとって煩わしい現象が発生したり、クッションスプリングの変形によって、例えばクッション状態で中軸セットが軸筒内で固定されてしまったりすると、ノックによる芯出長さが変わってしまったり、クッション効果が得られないといった不具合が発生してしまう。
前記した課題を解決する為になされた本発明の筆記具は、外筒と、その外筒内に配設されクッションスリーブを有する筆記体と、前記クッションスリーブを前方に付勢する弾性部材を備える筆記具であって、前記クッションスリーブは鍔部を有し、筆記時に前記筆記体が筆圧を受けると、前記弾性部材が変形すると共に、その弾性部材の弾撥力を受けながら前記筆記体が後退し、その後退動作は前記クッションスリーブの鍔部が外筒に当接するまで行われることに特徴を有する。
本発明の筆記具は、筆記体の後退動作を外筒、及びクッションスリーブの剛体部品によって規制し、クッションスプリングの密着長付近での使用を防止している為、弾性部材の破損(破断、変形)を防止する事が出来、耐久性に優れることで半永久的に不具合なく使用し続けることが出来る。
本発明の第1の実施形態にかかるシャープペンシルを示す全体縦断面図。 本発明の第1の実施形態にかかるシャープペンシルを示す前方縦断面図。 本発明の第1の実施形態にかかるシャープペンシルの芯保護管先端より筆記芯が1.0mm突出している状態から、押圧動作(芯繰り出し操作)を行い、筆記芯を突出した後の状態を示す前方縦断面図。 本発明の第1の実施形態にかかるシャープペンシルの芯保護管先端より筆記芯が1.0mm突出している状態から、筆記芯が紙面から筆記圧を受けた状態を示す前方縦断面図。
本発明の第1の実施形態の構成について、図面を参照して説明する。尚、ペン先側を「前方側」として、以下説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるシャープペンシルの全体縦断面図、図2は本発明の第1の実施形態にかかるシャープペンシルの前方縦断面図を示している。これら図1、及び図2は、いずれも、芯保護管3先端より筆記芯Pが1.0mm突出したシャープペンシルの未使用状態(筆記前の状態)における図である。
本発明の第1実施形態に係るシャープペンシルAは、外筒1を有し、前記外筒1には、口先部2が取り付けられている。前記口先部2は、その前端部に対して芯保護管3が配設され、口先部2内部には、筆記芯Pの戻り止めとして機能するゴム製の芯保持部材4が配設されている。また、シャープペンシルAの内部には、中軸セット(筆記体)Bが配設されている。
その中軸セットBは、チャック5、チャックリング6、クッションスリーブ7、チャックスプリング8、中継9、芯タンク10により構成されており、芯繰り出し機構(筆記芯の突出手段)を成している。そして、シャープペンシルAに内蔵された中軸セットBのクッションスリーブ7後端面と外筒1の内部に形成されたクッションスプリング受座1c前端面との間には、クッションスプリング11が張設されている。
また、芯タンク10の後端部には、芯タンク10と係脱可能なように消しゴム13を支承する為の消しゴム受け12が組み付けられ、さらに、その消しゴム受け12、及び消しゴム13を覆うキャップ14が係脱可能に配設されている。
以上が本実施形態の構成であるが、各ユニットを含め、第1の実施形態を構成する各部材について詳述する。
外筒1は、円筒形状を成しており、外周前方部に形成された縮径部1aを有し、さらにその外周部には、雄螺子部1bが形成されている。また、外筒1内部のほぼ中央部には、縮径されたクッションスプリング受座1cが形成されている。
口先部2の内部には、円筒状の孔(内孔)とともに複数の段部が形成されており、前記内孔は、口先部2最後端に形成された最大内径を有する内孔2bから、内孔2c、内孔2d、内孔2e、芯保護管圧入孔2aと口先部2前方に向かうに従って、徐々に内径が小さくなるように形成されている。また、チャックリング解放段部2fは、内孔2cと内孔2dによって出来る段部として形成され、スリーブ受段部2gは、内孔2bと内孔2cによって出来る段部として形成されている。さらに、口先部2の内孔2bには、そのほぼ中間部から後方にかけて雌螺子部2hが形成されており、外筒1の外周前方部に形成された縮径部1aの外周部に形成された雄螺子部1bと螺合して、外筒1と口先部2が固定される。尚、この外筒1と口先部2との固定方法としては、螺子部を設けずに、圧入固定させても、係脱可能に係合させても良い。
また、前記口先部2の芯保護管圧入孔2aに対して芯保護管3が、内孔2eに対して筆記芯Pの戻り止めとして機能するゴム製の芯保持部材4が、それぞれ圧入固定される。尚、芯保持部材4の中央には、筆記芯Pを保持する為の芯挿通孔4aが形成されている。
前記芯保護管3は、繰り出された芯の保護と、視認性を向上させる目的で配設されるが、口先部2と一体に形成しても良い。尚、前記芯保護管3に用いられる材質は、芯の保護(筆記芯の芯折れ防止機能)を目的とする為には、金属を用いることが良く、具体的には鉄、及びその合金、銅、及びその合金等が挙げられる。
芯保持部材4の外形形状としては、前方が後方よりも縮径した円筒形状を成しており、この芯保持部材4に用いられる材質は、弾性を有する樹脂であれば良く、具体的には、ニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。
また、本第1の実施形態において、芯保護管3は口先部2に圧入固定されているが、その限りではなく、例えば、芯保護管3を、紙面に接触した場合に後退するスライダー式にしても良い。
前述したように中軸セットBは、チャック5、チャックリング6、クッションスリーブ7、チャックスプリング8、中継9、芯タンク10により構成されている。
チャック5は、略円筒形状を成しており、その前方部に大径部5aを有し、前記大径部5aの外周には、二つ割、若しくは三つ割のスリットが形成され、拡縮可能に形成されている。このチャック5の大径部5aは、円筒状のチャックリング6に囲繞され、その外周がチャックリング6の内周に係合している。前記チャック5の後方は、円筒形状を成した中継9の前端に圧入固定されており、その中継9には、その外周面のおよそ中間部に拡径された大径部9aが形成されている。また、本第1の実施形態では、前記中継9の後方は、円筒形状を成した芯タンク10の前端に圧入固定されているが、中継9と芯タンク10は、一体で形成されていても良い。クッションスリーブ7は、略円筒形状を成しており、その前端部に拡径された鍔部7aを有しており、クッションスリーブ7内部には、前方から後端部にかけて、中継9の大径部9a外径よりも大径の中継摺動孔7bが形成されている。ここで、クッションスリーブ7の前端内径部をチャック摺動孔7cと呼称し、前記チャック摺動孔7cと中継摺動孔7bとで形成された内径段部をチャックスプリング受座7dと呼称する。
中軸セットBの組立方法としては、芯タンク10に対して中継9の後端部を圧入固定し、内径が中継9前方の外径より大きく、外径が中継9の大径部9a外径より小さいチャックスプリング8の後端部が中継9の大径部9a前端面に当接した形で取り付けられる。さらに、クッションスリーブ7を中継摺動孔7b後端部側から挿入し、クッションスリーブ7のチャックスプリング受座7dをチャックスプリング8前端に当接させて、押し込む事でチャックスプリング8を圧縮させる。そして、チャックリング6に囲繞されたチャック5の後端部をクッションスリーブ7のチャック摺動孔7cを通過させ、中継9前端に圧入させることで中軸セットBを成している。尚、チャックスプリング8は、その付勢力によって、クッションスリーブ7を前方側へ押し出すと共に、クッションスリーブ7の前端面がチャックリング6の後端面へ接触している為、チャックリング6も前方へと押し出す。チャックリング6が前方へと押し出されると、チャック5の大径部5aを囲繞し、次にチャック5を前方へと押し出す力が作用するが、前記チャック5は中継9と圧入固定されている為、それ以上押し出されないような構成としている。つまり、チャックスプリング8は、中継9の大径部9aとクッションスリーブ7のチャックスプリング受座7dの間に張設されている為、中継9によりチャックリング6を介してチャック5を引き離す力を発生させるが、チャックスプリング8の付勢力よりも、チャック5を中継9に対して圧入固定させている力が強い為、それ以上動作しない状態となり、その状態で固定される。
また、シャープペンシルAに内蔵された中軸セットBのクッションスリーブ7後端面と外筒1の内部に形成されたクッションスプリング受座1c前端面との間には、クッションスプリング11が張設されている。
尚、シャープペンシルAは、外筒1に、クッションスプリング11、及び中軸セットBが内蔵された状態で、口先部2の雌螺子部2hと外筒1の縮径部1aが、クッショスリーブ7の鍔部7aを挟むようにして、螺合により連結され、さらに、芯タンク10の後端部と消しゴム受け12が組み付けられ、その消しゴム受け12、及び消しゴム13を覆うキャップ14が係脱可能に配設されることで構成されている。この状態が未使用状態となり、クッションスプリング11によって、前記クッションスリーブ7前端面が口先部2のスリーブ受段部2gと当接される。尚、口先部2の後端面が外筒1の雄螺子部1b後方の段部に当接することによって口先部2と外筒1の螺合が完了するが、前記クッションスリーブ7の鍔部7aは、その螺合により口先部2のスリーブ受段部2gと外筒1の前端面との間に形成されるクリアランス内を摺動可能としている。また、そのクッションスプリング受座1cとクッションスリーブ7後端面で張設されたクッションスプリング11の付勢力は、筆記者が筆記面に対して加える筆記荷重以下に設定されている。
尚、筆圧の入力による突然のクッション動作を防止する為、粘着性グリースに代表される粘着性媒体を、筆圧の入力を受けた際に摺動するクッションスリーブ7の外周面と外筒1の内周面に塗布しても良い。また、前記粘着性媒体としては、粘着性グリースを使用することが好ましく、前記構成によって、筆圧入力時の衝撃を吸収すると共に、軸筒に対して筆記時の違和感となり得る衝撃(振動)の伝達を防止できる。さらに、その粘着性媒体としては、そのちょう度が100〜400の範囲のものを用いることが望ましく、粘着性グリースとしては、例えば信越化学工業社製の商品名「信越シリコーングリース」品番:G330〜334、G340〜342、G351〜353、G631〜633を好適に利用することが出来る。また、他に粘着性媒体としては、ひまし油等の高粘度油であったり、液状ゴム、低分子量樹脂、粘土等を用いても良い。
次に本発明の第1の実施形態における芯の繰り出し(筆記芯の突出)動作について図3の図面を基に説明する。図3は、芯保護管3先端より筆記芯Pが1.0mm突出したシャープペンシルの状態から、押圧動作(芯繰り出し操作)を行い、芯を1.3mm突出した後の状態を示している。
図1に示す状態からキャップ14の後端部を押圧すると、キャップ14の前進に伴い、消しゴム受け12、芯タンク10、中継9、チャック5、チャックリング6は前進する。その際、クッションスリーブ7は、その鍔部7a前端部が口先部2のスリーブ受段部2gと当接しており、それ以上は動作しない為、クッションスリーブ7のチャックスプリング受座7dと中継9の大径部9a前端面との間に張設されたチャックスプリング8は、中継9の前進動作によって圧縮される。次に、チャックリング6の前端面が、口先部2のチャックリング解放段部2fに当接すると、チャックリング6に対してチャック5が前進し、チャックリング6の内径部に縮径されながら格納されていたチャック5の大径部5aが解放され、拡開すると共に、大径部5aの内部で把持されていた筆記芯Pも解放される。この際、筆記芯Pは芯保持部材4によって保持されることとなり、大径部5aの拡開と共に、筆記芯Pの前進が止まる。
つまり、筆記芯Pは、前記押圧動作によって、チャックリング6が前進し、前記チャックリング6の前端部が、チャックリング解放段部2fの後端部に当接するまでに進んだ距離と略同等な量、繰り出されることとなる。尚、前記チャックリング6の前端部とチャックリング解放段部2fの後端部に当接する距離を任意に設計することで、1回の押圧で芯を繰り出す長さは自由に設定することができる。
また、本実施例1では、前記押圧動作を、消しゴム受け12のほぼ中間部に形成された外鍔部12a前端面が、外軸1の後端面に当接するまで行うことができる。尚、押圧動作を解除すると、圧縮されていたチャックスプリング8が元の状態へと復元する為、中継9の大径部9a前端面を後退させるに伴いチャック5やチャックリング6、芯タンク10などの各部品も後退する。その際、チャック5は後退するが、筆記芯Pと芯保持部材4との摩擦力により、筆記芯Pが芯保護管3先端より突出した位置を維持することになる。そして、チャック5の後退によって大径部5aがチャックリング6と接触し、チャックリング6の後端面がクッションスリーブ7の前端面に当接する。その後、チャックリング6内にチャック5の大径部5aは引き込まれ、チャックリング6によって再びチャック5の大径部5aが囲繞され、チャック5の大径部5aは再び筆記芯Pを把持する。
以上が、筆記芯Pの繰り出し動作になるが、例えば、筆記芯Pの芯保護管3先端からの突出量が十分でない場合には、再び前記キャップ14の後端部を押圧する動作を行い、所望の筆記芯Pの突出量に調整することが可能である。
次に、筆記中に筆記芯が筆圧を受けた際のシャープペンシルの動作について、図4の図面を基に説明する。図4は、筆記芯が紙面から筆記圧を受けた状態の前方縦断面図を示している。
図2の状態から、筆記芯Pが紙面に当接し、筆記芯Pが筆圧を受けると、筆記芯Pを把持しているチャック5が、その筆圧を受けることになる。つまり、筆記芯Pが筆圧を受けると、図4に示す如く、その筆圧によって筆記芯Pが後退すると共に、筆記芯Pを把持しているチャック5を含む中軸セットBもクッションスプリング11を圧縮させながら後退する。
そして、前記後退動作により、中軸セットBはクッションスリーブ7に形成された鍔部7a後端面が外筒1の前端面に接触するまで後退することができる。尚、上記動作によって、中軸セットBはシャープペンシルA内部を後退することになるが、この際、筆記芯Pは、中軸セットBのチャック5により把持されている為、中軸セットBと連動して、同距離分後退する。また、この後退距離は、一回の繰り出し動作での筆記芯Pの突出量(本第1の実施形態においては約0.3mm)以下が望ましい。これは、それ以上後退させると筆記時に筆記芯Pが芯保護管3に潜り込む感触があり、使用者が感じる違和感に繋がってしまったり、筆記者が次の文字を筆記する際に後退量よりも大きく筆記芯P先端を紙面から離間させて、筆記を行う必要があるからである。また、一般的には芯保護管3より筆記芯Pを凡そ1.0mm前後突出させた状態で筆記動作を行うが、後退量をそれ以上に設定してしまうと、筆記時において筆記芯Pが芯保護管3内に完全に没入する為、筆記動作を行うと、紙面に対して直接筆圧がかかるのではなく、クッションスプリングの弾撥力で筆記する事になってしまう。その為、使用者の意図した筆跡の文字等が書けないばかりか、芯保護管3の先端面が紙面と接触しながらの筆記となり、筆記時の抵抗が大きく、非常に書き辛いものとなる。よって、前記筆記芯の後退距離は、一回の繰り出し動作での筆記芯Pの突出量以下が望ましい。
ここで、前記クッションスプリング11の付勢力は、前述したように筆記者が筆記面に対して加える筆記荷重以下に設定されている。この為、筆記圧が加わると直ちに筆記芯Pは後退し、クッションスリーブ7に形成された鍔部7a後端面が外筒1の前端面に接触するまで後退する間で筆記開始時の衝撃荷重を逃がすと共に、ソフトなタッチで筆記を行うことができる。また、筆記開始時に急激な強い力が筆記芯Pに作用しないようにすることができる為、芯折れを防ぐことができると共に、筆記面にも強い筆圧の痕跡(筆記動作によって紙面が凹んだ痕跡)を残す事がない。
さらに、粘着性グリースに代表される粘着性媒体が筆圧の入力を受けた際に摺動するクッションスリーブ7の外周面と外筒1の内周面に塗布されている為、筆記芯Pの急激な軸方向への移動動作には大きな粘性抵抗が発生し、比較的緩慢に動作する静的な荷重に対しては粘性抵抗が非常に小さくなる為、紙面に対して筆記芯Pが接触する際の衝撃を筆圧、筆記速度に応じて効果的に緩和させることが可能となる。
次に、筆圧の入力が解除された時の動作を説明する。筆圧の入力が解除されると、前記筆圧の入力により圧縮されたクッションスプリング11の復元力により、クッションスリーブ7の後端面を前進させる為、筆圧の入力と共に後退していた中軸セットBも一体となって前進する。上記筆圧の解除動作によって、中軸セットBはシャープペンシルA内部を前進することになるが、この際、筆記芯Pは中軸セットBのチャック5により把持されている為、中軸セットBと連動して、同距離分前進し、未使用時の状態へ復元する。従って、この時には、使用者には筆記芯Pが送り出されたような感覚を与えることができる。
筆記者は、漢字、平仮名、カタカナ、アルファベットや数字等の文字を筆記したり、また、絵を描いたりするが、一画または一筆ごとに筆記面に芯を当接して芯を離反する動作を繰り返す事が一般的であり、筆記開始と筆記終了とを頻繁に繰り返している。従って、筆記開始、終了の度にクッションスプリング11が伸縮して、クッションスプリングによる緩衝力をその都度、受けることになる。
ここで、本第1の実施形態では、外筒1と、外筒1内に配設された中軸セットBを備え、前記中軸セットBには鍔部7aが形成されたクッションスリーブ7が具備され、前記中軸セットBのクッションスリーブ7を前方に付勢するクッションスプリング11を備えたシャープペンシルであって、筆記時に筆記芯が筆圧を受けると、クッションスプリング11が変形し、前記クッションスプリング11の弾撥力を受けながら筆記芯Pが後退すると共に、前記後退動作は、クッションスリーブ7の鍔部7aが、外筒1に当接されるまで行われることを特徴としている為、クッションスプリング11のたわみ量を自由に設定できることが可能となり、コイルスプリングを使用時に好適とされる最大たわみ量20〜80%の範囲で使用する事ができるので、繰り返しの使用で破損することなく使用する事ができる。
これは、例えば密着長付近での使用を重ねた場合、その断面に計算以上の過度の高応力が発生して折損を招いてしまったり、歪んで変形することでクッション不可能となり、意図した筆記感が損なわれてしまうことになる。また、前記クッションスプリングの破損により、中軸セットが外筒に対して固定できなくなり、使用時にカタカタと音が発生して使用者にとって煩わしい現象が発生したりする。さらには、クッションスプリング11の変形によって、例えばクッション状態で中軸セットが外筒内で固定されたりすると、ノックによる芯出長さが変わってしまったりといった不具合が発生してしまう。しかしながら、本第1の実施形態にあっては、外筒と、外筒内に配設された芯繰り出し機構を備え、前記芯繰り出し機構のクッションスリーブを前方に付勢する弾性部材を備え、筆記時に筆記芯が筆圧を受けると、弾性部材が変形し、前記弾性部材の弾撥力を受けながら筆記芯が後退すると共に、前記後退動作は、クッションスリーブの鍔部後端面が、前記外筒前端面に当接されるまで行われる為、使用者にとって非常に使い勝手が良く、耐久性に優れ、半永久的に繰り返し安心して使用ができる筆記具となる。
また、従来のクッション機構を有するシャープペンシルの構成において、クッションストローク量をコイルスプリングの密着長で規制しているものがあるが、コイルスプリングが密着長になった後、さらに強い筆圧を受けた場合には、コイルスプリングが変形してしまい、クッションストロークが伸びてしまうといった問題があった。しかしながら、本第1の実施形態においては、クッションスリーブ7の鍔部7aが、外筒1の前端面に当接されるまで行われることを特徴としている為、強い筆圧を受けてもクッション量は変化せず、必要なクッションストローク量が高精度で実現可能となり、製品間でのクッションストロークのばらつきを抑えることが出来ると共に、筆圧の異なる使用者が使用しても、クッションストローク量が変わらずに使用することが出来る。
また、本第1の実施形態において、前記クッション動作は、クッションスリーブ7の鍔部7aが外筒1の前端面に当接されるまで行われる様に構成されているが、クッションスリーブ7の一部を外筒1に対して当接させれば良く、例えば、外筒1内部に段部を形成し、クッションスリーブ7の後端面を当接させる等しても良い。
尚、本第1の実施形態では、クッションスプリング11として圧縮コイルバネを使用しているが、弾性変形が可能な部品(弾性部材)であれば良く、バネやゴム等であったり、形状的に弾性変形可能な樹脂、金属であっても良い。尚、クッションスプリング11に使用している圧縮コイルバネの代わりに、他のバネ部品や、ゴム、弾性変形可能な部品を代用した場合であっても、(剛体の)部品同士を当接させてクッション量を規制することで、クッション部材(本第1の実施形態で言うクッションスプリング11)に対して、過度の応力負荷がかかることを防止することができる。さらに、部品同士を接触させてクッション量の規制をすることによって、より高精度にクッション量の管理ができる。
また、構成する部品点数を削減する為に、クッションスプリング11を配設しないことも可能であり、その場合には、例えばクッションスリーブ7の後端部を、例えばスリットを形成する等、弾性変形可能な形状にしても良い。
この他、本第1の実施形態においては、クッション動作の際、クッションスリーブ7に形成された鍔部7a後端面と外筒1の前端面に当接させることで、それ以上、筆記芯が後退することのないように構成されており、詳述すると、鍔部7aの外径は外筒1の前端面の外径よりも小さく構成されている。これは、口先部2が略円錐形状である為、鍔部7aの外径を外筒1の外径よりも小さくすればする程、口先部2先端へのテーパ角度を急にすることが出来、より自由に口先部2の形状をデザインすることが出来る。
その一方で、前記クッションスリーブ7の鍔部7a外径を外筒1の外径よりも大きく構成しても良い。これは、筆圧を受けた際にクッション動作の度にクッションスリーブ7の鍔部7a後端面と外筒1の前端面が接触するので、その都度、クッションスリーブ7と外筒1に集中して応力がかかることになる。しかし、前記構成を採ることによって、クッション動作によって鍔部7a後端面と外筒1の前端面の当接する面積が増加する為、局所的ではなく、全体的に応力を分散してかけることが出来るので、部品の破損等を防ぎ、耐久的に優れた構造にすることが出来る。
また、中軸セットが内蔵されたシャープペンシルは、一般的に口先部と外筒で中軸セットの一部に設けられた鍔部を挟みこんで位置を固定するタイプのものが多い。その為、本第1の実施形態では、外筒1と口先部2が組み付けられた状態で外筒1前端面から口先部2のスリーブ受段部2gとの間にクリアランスを設け、その間をクッションスリーブ7の鍔部7aが摺動可能な構成としている。つまり、例えば、従来のクッションしないシャープペンシルであっても、外筒の内部にクッションスプリング受座を形成し、口先部との螺合部分の全長を短くしてクリアランスを設け、クッションスプリングを配置するといった構成を変更することで、既存の中軸セット、及び外筒以外の部品が流用可能であり、簡単にクッション可能なシャープペンシルを作製できるという特徴がある。
以上の第1実施形態にあっては、シャープペンシルを例に挙げたが、本発明は、ボールペンやマーキングペン、固形描画材など、種々の筆記具に対して用いることができる。本発明における筆記体の筆記芯は、実施例に記載のシャープペンシルの芯以外にも、ボールペンにおけるリフィル(チップ)、マーキングペンにおけるペン先、固形描画材における描画芯などとしても良い。いずれの筆記具にあっても、筆記による筆記面への接触によって、確実に筆記体(筆記芯)は後退する為、筆記開始時の衝撃荷重を逃がすと共に芯折れを防ぐことができ、ソフトなタッチで筆記を行うことができる。
また、クッション機構の各部品に対して高負荷がかからないように構成されている為、耐久的に優れ、使用者にとって非常に使い勝手が良い。
A シャープペンシル
B 中軸セット(筆記体)
P 筆記芯
1 外筒
1a 縮径部
1b 雄螺子部
1c クッションスプリング受座
2 口先部
2a 芯保護管圧入孔
2b 内孔
2c 内孔
2d 内孔
2e 内孔
2f チャックリング解放段部
2g スリーブ受段部
2h 雌螺子部
3 芯保護管
4 芯保持部材
4a 芯挿通孔
5 チャック
5a 大径部
6 チャックリング
7 クッションスリーブ
7a 鍔部
7b 中継摺動孔
7c チャック摺動孔
7d チャックスプリング受座
8 チャックスプリング
9 中継
10 芯タンク
11 クッションスプリング
12 消しゴム受け
12a 外鍔部
13 消しゴム
14 キャップ

Claims (5)

  1. 外筒と、その外筒内に配設されクッションスリーブを有する筆記体と、前記クッションスリーブを前方に付勢する弾性部材を備える筆記具であって、前記クッションスリーブは鍔部を有し、筆記時に前記筆記体が筆圧を受けると、前記弾性部材が変形すると共に、その弾性部材の弾撥力を受けながら前記筆記体が後退し、その後退動作は前記クッションスリーブの鍔部が外筒に当接するまで行われることを特徴とするクッション機構を有した筆記具。
  2. 前記後退動作は、前記クッションスリーブの鍔部後端面が、前記外筒前端面に当接するまで行われることを特徴とする請求項1に記載のクッション機構を有した筆記具。
  3. 前記クッションスリーブの鍔部外径が、前記外筒の前端外径よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載のクッション機構を有した筆記具。
  4. 粘着性媒体を、前記クッションスリーブの外周面と前記外筒の内周面に介在させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたクッション機構を有した筆記具。
  5. 前記筆記具がシャープペンシルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載されたクッション機構を有した筆記具。
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