以下において、まず、図1から図17を用いて比較例としての摩擦ダンパーユニットを組み込んだ制振構造を説明する。そして、その後に、比較例と比較しつつ実施形態について説明を行う。
図1は、比較例に係る接合部の制振構造を建物の間柱に組み込んだ状態の一例を示す斜視図である。図2は、比較例の摩擦ダンパーユニット25を正面から見た模式図である。図3は、図2におけるA−A断面図であり、図4は、図2におけるB−B断面図であり、図5Aは、図2におけるC−C断面の第1の図であり、図5Bは、図2におけるC−C断面の第2の図である。
摩擦ダンパーユニットを組み込んだ比較例の制振構造は、多層階ビルディング等の上階層と下階層との間に設けられる柱、梁、ブレース及び間柱などがボルトで接合されたボルト接合部にて、水平方向の相対移動を制振する。
比較例では、図1に示すように、摩擦ダンパー20、30を間柱10に組み込んだ形態を例に挙げて説明する。
間柱10は、上階層3と下階層5との間にて上下を架け渡し方向として配置されている。また、間柱10は、その長手方向たる前記架け渡し方向の略中央の位置において分断されており、分断された端部を利用して摩擦ダンパー20、30を形成しつつ接合されている。
具体的には、図1〜図5に示すように、間柱10が上下方向に間隔を隔てるように分断されて、第1部材としての間柱下部11と、第3部材としての間柱上部12とをなしている。
間柱下部11と間柱上部12とは、間柱下部11の上端部11cと間柱上部12の下端部12cとが、所定方向としての上下方向に互いに間隔を隔てて対向している。間柱下部11と間柱上部12との、表裏面側にはそれぞれ、間柱下部11と間柱上部12とに架け渡された第2部材としての対をなす2枚のスプライスプレート21が、相対移動方向に沿って3対並べて設けられている。3対のスプライスプレート21と間柱下部11及び間柱上部12との接合部がそれぞれ摩擦ダンパー20、30を構成している。即ち、間柱下部11と間柱上部12とに架け渡された、一対のスプライスプレート21と間柱下部11及び間柱上部12との2つの接合部にて摩擦ダンパー20、30が構成された摩擦ダンパーユニット25が3セット設けられている。以下、間柱上部12とスプライスプレート21との接合部にて形成されている摩擦ダンパーを上摩擦ダンパー20とし、間柱下部11とスプライスプレート21との接合部にて形成されている摩擦ダンパーを下摩擦ダンパー30として説明する。ここで、下摩擦ダンパー30が第1接合部に相当し、上摩擦ダンパー20が第2接合部に相当する。
なお、説明の便宜上、3セットの摩擦ダンパーユニットのうち、中央の摩擦ダンパーユニットを第1摩擦ダンパーユニット25−1と呼び、右側の摩擦ダンパーユニットを第2摩擦ダンパーユニット25−2と呼び、左側の摩擦ダンパーユニットを第3摩擦ダンパーユニット25−3と呼ぶことがある。
3セットの摩擦ダンパーユニット25の上摩擦ダンパー20は、いずれも同じ構成である。一方、3セットの摩擦ダンパーユニット25の下摩擦ダンパー30は、隙間S1、S2で構成が異なっている。まずは、摩擦ダンパーユニット25において共通する上摩擦ダンパー20の構成について説明し、その後、隙間S1、S2が異なる下摩擦ダンパー30の構成について説明する。
摩擦ダンパーユニット25は、対をなすスプライスプレート21が、上下方向と交差する方向にて間柱下部11と間柱上部12を挟んで互いに対向するとともに、間柱下部11と間柱上部12との間に架け渡されている。即ち、上摩擦ダンパー20側では、2枚のスプライスプレート21と、その間に介在された間柱上部12とが重なっている。
また、間柱上部12と各スプライスプレート21との間には、間柱上部12側に滑り板としての滑動板26が固定され、スプライスプレート21側に摩擦板28が固定されている。ここで、摩擦板28には、有機系摩擦材や無機系摩擦材を使用し得る。有機系摩擦材は、熱硬化型樹脂を結合材として、アラミド繊維,ガラス繊維,ビニロン繊維,カーボンファイバーなどの繊維材料と、カシューダスト,鉛などの摩擦調整材と、硫酸バリュームなどの充填剤とからなる複合摩擦材料で形成される。上記熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂,メラミン樹脂,フラン樹脂,ポリイミド樹脂,DFK樹脂,グアナミン樹脂,エポキシ樹脂,キシレン樹脂,シリコーン樹脂,ジアリルフタレーン樹脂,不飽和ポリエステル樹脂などがある。一方、滑動板26はステンレスやチタンなどの耐食性を有する材料によって形成される。
間柱上部12と滑動板26とには、相対移動方向に長い長孔12a、26aが設けられている。長孔12a、26aの長さは、後述する間柱下部11に設けられる長孔11b1、11b2、26b1、26b2よりも長い。また、2枚のスプライスプレート21と摩擦板28には、円形状の丸孔21a(第4貫通孔に相当)、28aが設けられている。間柱上部12に設けられた長孔12aは第2貫通孔に相当する。
2枚のスプライスプレート21、間柱上部12、2対の滑動板26及び摩擦板28に設けられた長孔12a、26a又は丸孔21a、28aには高力ボルト16が貫通されている。
高力ボルト16は、対をなすスプライスプレート21のうちの一方のスプライスプレート21の、間柱上部12と反対側に設けられ複数の皿ばねが重ねられた皿ばね積層体8を貫通するとともにナット18が螺合されている。このとき、高力ボルト16の頭部16aと他方のスプライスプレート21との間、一方のスプライスプレート21と皿ばね積層体8との間、皿ばね積層体8とナット18との間にはそれぞれ座金45が介在されている。また、皿ばね積層体8と高力ボルト16との間には、皿ばね積層体8の内周側に入り込み各皿ばねの位置を規制するブッシュ46が設けられている。
皿ばね積層体8は、高力ボルト16にナット18が螺合されて締め込まれて圧縮されることにより、2枚のスプライスプレート21の間に圧接力を付勢する第2圧接力付勢部材である。2枚のスプライスプレート21と間柱上部12とは皿ばね積層体8による圧接力が付勢されつつ水平方向に相対移動可能に構成され、2枚のスプライスプレート21と間柱上部12とが相対移動したときには、摩擦板28と滑動板26とが摺動して摩擦力が生じるように構成されている。
下摩擦ダンパー30側では、2枚のスプライスプレート21と、その間に介在された間柱下部11とが重なっている。また、間柱下部11と各スプライスプレート21との間には、間柱下部11側に滑動板26が固定され、スプライスプレート21側に摩擦板28が固定されている。
間柱下部11及び滑動板26のうち、中央の下摩擦ダンパー30が設けられる位置には、長孔11b1、26b1が設けられる。間柱下部11及び滑動板26のうち、左右の下摩擦ダンパー30が設けられる位置には、長孔11b2、26b2が設けられる。また、2枚のスプライスプレート21及び摩擦板28には、丸孔21b、28bが設けられており、丸孔21b、28b、及び、長孔11b1、11b2、26b1、26b2には、パイプ部材としての鋼製の丸パイプ17に、管軸方向に挿通された高力ボルト16が貫通されている。ここで、間柱11に設けられている長孔11b1、11b2が第1貫通孔に相当する。
2枚のスプライスプレート21及び摩擦板28の丸孔21b、28bの孔径は、貫通される丸パイプ17との間の隙間がほぼ零になるように設定されている。また、間柱下部11及び滑動板26の長孔11b1、11b2、26b1、26b2の縦方向の幅は、丸パイプ17との間に若干の隙間Sが形成されるように設定されている(図3)。
一方、中央の下摩擦ダンパー30が設けられる間柱下部11及び滑動板26の長孔11b1、26b1の相対移動方向の幅は、丸パイプ17との間に隙間S1が形成されるように設定されている(図5A)。また、左右の下摩擦ダンパー30が設けられる間柱下部11及び滑動板26の長孔11b2、26b2の相対移動方向の幅は、丸パイプ17との間に隙間S1よりも広い隙間S2が形成されるように設定されている(図5B)。
ここで、より望ましくは高力ボルト16と丸パイプ17との間に隙間を設けると良く、より望ましくは、当該隙間の大きさを、設計で想定する限界状態(例えば、弾性限界)まで変形状態の丸パイプ17において当該丸パイプ17の内周面と高力ボルト16とが当接しないようなサイズにすると良い。そして、このように設定すれば、対を成すスプライスプレート21を摺動させるための外力は、専ら丸パイプ17のみに作用して高力ボルト16には作用しないので、高力ボルト16の健全性を高い状態に維持可能となる。
高力ボルト16は、一方のスプライスプレート21の、間柱下部11と反対側に設けられ複数の皿ばねが重ねられた皿ばね積層体8を貫通するとともにナット18が螺合されている。このとき、高力ボルト16の頭部16aと他方のスプライスプレート21との間、一方のスプライスプレート21と皿ばね積層体8との間、皿ばね積層体8とナット18との間にはそれぞれ座金45が介在されている。また、皿ばね積層体8と高力ボルト16との間には、皿ばね積層体8の内周側に入り込み各皿ばねの位置を規制するブッシュ46が設けられている。
皿ばね積層体8は、高力ボルト16にナット18が螺合されて締め込まれることにより圧縮され、2枚のスプライスプレート21の間に圧接力を付勢する第1圧接力付勢部材である。2枚のスプライスプレート21と間柱下部11とは皿ばね積層体8による圧接力が付勢されつつ水平方向に相対移動可能に構成され、2枚のスプライスプレート21と間柱下部11とが相対移動したときには、摩擦板28と滑動板26とが摺動して摩擦力が生じるように構成されている。このとき、間柱下部11側に設けられた皿ばね積層体8の付勢力による圧接力は、間柱上部12側に設けられた皿ばね積層体8の付勢力による圧接力より小さく設定されている。即ち、ここでは、皿ばね積層体8の付勢力による圧接力を上摩擦ダンパー20と下摩擦ダンパー30とで相違させることにより、同一の摩擦板28と滑動板26とを用いても、第1接合部にて発生する摩擦力を第2接合部にて発生する摩擦力より小さくしている。
具体的には、上摩擦ダンパー20は、地震等の大きな外力が作用する振動により間柱上部12とスプライスプレート21とが相対移動し、下摩擦ダンパー30は、風荷重のような小さな外力が作用する振動であっても相対移動するように設定されている。上摩擦ダンパー20の圧接力と下摩擦ダンパー30の圧接力の違いは、例えば、上摩擦ダンパー20及び下摩擦ダンパー30が備える皿ばね積層体8を構成する皿ばねの枚数を違えることにより調整している。即ち、上摩擦ダンパー20の皿ばね積層体8の方が、下摩擦ダンパー30の皿ばね積層体8より多くの皿ばねが重ねられて構成されている。
また、間柱下部11には、傾き規制部材11dが設けられている。傾き規制部材11dは、間柱下部11からスプライスプレート21側に突出する突起状の部材である。図2に示されるように、傾き規制部材11dは、スプライスプレート21の中心軸が長孔11b1の中央に位置するときにおいて、丸パイプ17の端部から間柱下部11の長孔11b1の端部までの距離ΔX1だけスプライスプレート21の端部から離間した位置に左右対称に設けられる。
なお、ここでは、中央の摩擦ダンパーユニットを例に説明を行ったが、左右の摩擦ダンパーユニットの場合、傾き規制部材11dの位置は、丸パイプ17の端部から間柱下部11の長孔11b2の端部までの距離ΔX2だけスプライスプレート21の端部から離間した位置に左右対称に設けられる。
このようにすることによって、スプライスプレート21が相対移動方向に移動し、丸パイプ17が長孔11b1に当接係合すると、丸パイプ17を軸にスプライスプレート21が回転するような傾きを生ずるおそれがあるが、スプライスプレート21の側壁が傾き規制部材11dの端面と当接するので、その傾きが生ずるのを抑制することができる。
尚、ここでは、傾き規制部材11dは長孔11b1の長手方向に延びる中心軸上に配置されているが、スプライスプレート21の側壁から距離δX1離れていれば、他の位置であってもよい。そのとき、傾き規制部材11は、複数設けられることが望ましい。また、図2において、傾き規制部材11dはスプライスプレート21と面で接する矩形形状としたが、点で接する円柱形状とすることもできる。
図6は、下摩擦ダンパーの動作の説明図である。図6では、中央の下摩擦ダンパー30を例にその動作について説明する。図6(a)では、間柱下部11の長孔11b1の中央に、下摩擦ダンパー30が位置している。間柱下部11を左に移動させようとする力が作用すると、間柱下部11が滑動板とともに、下摩擦ダンパー30に対して左側に相対移動する(図6(b))。また、間柱下部11を右に移動させようとする力が作用すると、間柱下部11が滑動板とともに、下摩擦ダンパー30に対して右側に相対移動する(図6(c))。
図7は、上摩擦ダンパーの動作の説明図である。図7(a)では、間柱上部12の長孔12aの中央に、上摩擦ダンパー20が位置している。後述するように、下摩擦ダンパー30の高力ボルトの軸16bが長孔11b1、11b2に係合した状態で、間柱下部11を右に移動させようとする力が作用すると、その係合による規制により、間柱上部12は滑動板とともに、上摩擦ダンパー20に対して左側に相対移動する(図7(b))。また、下摩擦ダンパー30の高力ボルトの軸16bが長孔11b1、11b2に係合した状態で、間柱下部11を左に移動させようとする力が作用すると、その係合による規制により、間柱上部12は滑動板とともに、上摩擦ダンパー20に対して右側に相対移動する(図7(c))。
上記のような動作において、スプライスプレート21と間柱上部12との間で相対移動が生じるときは、上摩擦ダンパー20における摩擦力が作用する。一方、スプライスプレート21と間柱下部11との間で相対移動が生じるときは、下摩擦ダンパー30における摩擦力が作用する。なお、上摩擦ダンパー20における摩擦力は、下摩擦ダンパー30における摩擦力よりも大きい。
図8は、比較例における制振構造1の振動エネルギー吸収特性を示すグラフである。このグラフは、相対移動方向に所定の振幅δ1、δ2、又は、δ3で強制加振して得られるグラフであり、横軸には、相対移動方向の相対変位量δを示し、縦軸には、上摩擦ダンパー20及び下摩擦ダンパー30が発生する摩擦力の総和を示している。なお、δ1は例えば風荷重作用下の想定振幅量であり、δ2は例えば中規模地震時の想定振幅量であり、振幅δ3は例えば大規模地震時の想定振幅量である。
図9は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第1の図である。以下、図9から図17には、摩擦ダンパーの各部位の相対移動方向の移動を容易に説明するために、摩擦ダンパーユニットのうち、スプライスプレート21、間柱上部12、間柱上部の長孔12a、上摩擦ダンパー20における高力ボルトの軸16b、間柱下部11、間柱下部の長孔11b1、11b2、及び、下摩擦ダンパー30における丸パイプ17のみが示されている。また、これらのうち、高力ボルトの軸16b、丸パイプ17、間柱上部の長孔12a、間柱下部の長孔11b1、11b2は、本来他の部材にて隠蔽されるため、外観から視認できない場合がほとんどであるが、ここではこれらを実線で表し、透過的に視認可能として説明する。
また、以下の説明において、間柱下部11が間柱上部12に対して相対的に右側に移動する場合を、図8における荷重及び変位ともにプラスとして表す。
図9の状態は、図8においてZ点に対応する。すなわち、間柱上部12と間柱下部11との間に相対移動方向の荷重が加わっていないか、又は、加わっていたとしてもA点の荷重を超えないため、間柱上部12と間柱下部11との相対移動を生じていない状態である。
間柱上部12と間柱下部11との間にA点を超える荷重が加わると、間柱下部11が各スプライスプレート21に対して右側に相対移動する。すなわち、ここで生ずる摩擦力は、間柱下部11とスプライスプレート21を接合する3つの下摩擦ダンパー30による摩擦力の総計となる。間柱下部11がスプライスプレート21に対して相対移動し、間柱上部12がスプライスプレート21に対して相対移動しないのは、上摩擦ダンパー20の圧接力のほうが下摩擦ダンパー30の圧接力よりも大きく、その結果、摩擦力も大きいからである。
図10は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第2の図である。図8のZ点の状態において、A点を超える荷重が加わり相対移動量がδ1に達すると、図10に示すような各部の配置となる。これは、間柱下部11がスプライスプレート21に対して右側に相対移動した結果、中央下摩擦ダンパー30の丸パイプ17が間柱下部11の中央長孔11b1の左壁に当接係合した状態である。よって、さらに間柱下部11がスプライスプレート21に対して右側に相対移動しようとした場合、中央のスプライスプレート21は間柱上部12との間で相対移動しなければならない。この状態は、図8におけるB点の状態に相当する。
図8のB点の状態(図10)から、さらにC点を超える荷重が加わると、間柱下部11が左右のスプライスプレート21に対して右側に相対移動する。また、中央のスプライスプレート21が間柱上部12に対して右側に相対移動する。ここで生ずる摩擦力は、2つの下摩擦ダンパー30による摩擦力と、1つの上摩擦ダンパー20による摩擦力の総計となる。上摩擦ダンパー20の摩擦力は下摩擦ダンパー30の摩擦力よりも大きいため、ここでは、A点からB点に移動したときよりも大きな摩擦力が作用する。
図11は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第3の図である。図8のB点の状態において、C点を超える荷重が加わり相対移動量がδ2に達すると、図12に示すような各部の配置となる。これは、間柱下部11が間柱上部12に対して右側にさらに相対移動した結果、下摩擦ダンパー30の丸パイプ17の全てが間柱下部11の長孔11b1、11b2の左壁にそれぞれ当接係合した状態である。この状態は、図8におけるD点の状態に相当する。
図8のD点の状態(図11)から、さらにE点を超える荷重が加わると、全てのスプライスプレート21が間柱上部12に対して右側に相対移動する。これは、下摩擦ダンパー30の丸パイプ17の全てがスプライスプレート21の長孔11b1、11b2に当接係合しているため、上摩擦ダンパー20において摺動せざるを得ないからである。よって、ここでは、3つの上摩擦ダンパー20による摩擦力が作用する。
図12は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第4の図である。図8のD点の状態において、E点を超える荷重が加わり相対移動量がδ3に達すると、図12に示すような各部の配置となる。前述のように、各スプライスプレート21が間柱上部12に対して右側に相対移動した結果、中央の上摩擦ダンパー20の高力ボルト軸16bが、中央の長孔12aの右壁に当接係合した状態である。この状態は、図8におけるF点の状態であって、限界変形の状態であるが、実際にはこの状態にまでは至らないように設計される。ここでは、限界変形を説明する便宜上、当接係合した状態を示したにすぎない。
次に、間柱上部12及び間柱下部11に加わる荷重の方向が反転する。すなわち、間柱下部11が間柱上部12に対して左側に相対移動する荷重が加わる。図8のF点の状態(図12)から、G点を超えるマイナスの荷重が加わると、間柱下部11が各スプライスプレート21に対して左側に相対移動する。ここでは、3つの下摩擦ダンパー30による摩擦力が作用する。
図13は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第5の図である。図8のF点の状態において、G点を超えるマイナスの荷重が加わると、図13に示すような各部の配置となる。前述のように、間柱下部11が各スプライスプレートに対して左側に相対移動した結果、中央の下摩擦ダンパー30の丸パイプ17が、長孔11b1の右壁に当接係合する。この状態は、図8におけるH点の状態に相当する。
図8のH点の状態(図13)から、さらにI点を超えるマイナスの荷重が加わると、左右の間柱下部11がそれぞれのスプライスプレート21に対して左側に相対移動する。また、前述のように、中央の下摩擦ダンパー30の丸パイプ17は、中央のスプライスプレート21の長孔11b1に当接掛合しているため、中央のスプライスプレート21が間柱上部12に対して左側に相対移動する。よって、ここでは、2つの下摩擦ダンパー30による摩擦力と、1つの上摩擦ダンパー20による摩擦力が作用する。
図14は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第6の図である。図8のH点の状態において、I点をマイナス方向に超える荷重が加わると、図14に示すような各部の配置となる。左右の間柱下部11がそれぞれのスプライスプレート21に対して左側に相対移動した結果、左右の下摩擦ダンパー30の丸パイプ17が長孔11b2に当接係合する。この状態は、図8におけるJ点の状態に相当する。
図8のJ点の状態(図14)から、さらにK点を超えるマイナスの荷重が加わると、各スプライスプレート21が間柱上部12に対して右側に相対移動する。よって、ここでは、3つの上摩擦ダンパー20による摩擦力が作用する。
図15は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第7の図である。図8のJ点の状態において、K点をマイナス方向に超える荷重が加わると、図15に示すような各部の配置となる。前述のように、3つのスプライスプレート21が相対移動した結果、中央の上摩擦ダンパー20の高力ボルトの軸16bが中央の長孔12aの左壁に当接係合した状態である。この状態は、図8におけるL点の状態であって、限界変形の状態であるが、実際にはこの状態にまでは至らないように設計される。ここでも、限界変形を説明する便宜上、当接係合した状態を示したにすぎない。
次に、再度、間柱上部12及び間柱下部11に加わる荷重の方向が反転する。すなわち、間柱下部11が間柱上部12に対して右側に相対移動する荷重が加わる。そして、その荷重が、M点を超える荷重となると、間柱下部11が各スプライスプレート21に対して右側に相対移動する。よって、ここでは、3つの下摩擦ダンパー30による摩擦力が作用する。
図16は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第8の図である。図8のL点の状態において、M点を超える荷重が加わると、図16に示すような各部の配置となる。前述のように、間柱下部11が3つのスプライスプレート21に対して右側に相対移動した結果、中央の下摩擦ダンパー30の丸パイプ17が長孔11b1の左壁に当接係合する。この状態は、図8のN点の状態に相当する。
図8のN点の状態(図16)から、さらにO点を超える荷重が加わると、間柱下部11が左右のスプライスプレート21に対して右側に相対移動する。一方、中央の下摩擦ダンパー30の丸パイプ17は長孔11b1に当接係合しているため、中央のスプライスプレート21は間柱上部12に対して右側に相対移動する。よって、ここでは、2つの下摩擦ダンパー30による摩擦力と、1つの上摩擦ダンパー20による摩擦力が作用する。
図17は、摩擦ダンパーユニットの動作を説明する第9の図である。図8のN点の状態において、O点を超える荷重が加わると、図17に示すような各部の配置となる。前述のように、間柱下部11が左右のスプライスプレート21に対して右側に相対移動した結果、左右の下摩擦ダンパー30の丸パイプ17が長孔11b2の左壁に当接係合する。この状態は、図8のP点の状態に相当する。
図8のP点の状態(図17)から、さらにQ点を超える荷重が加わると、間柱下部11が3つのスプライスプレート21に対して右側に相対移動する。よって、ここでは、3つの上摩擦ダンパー20による摩擦力が作用する。そして、各部は、前述の図12に示す位置関係となる。
以上の説明では、加わる繰り返し荷重が大きく、図8のF点からQ点で囲まれる領域の振動エネルギーが上摩擦ダンパー20及び下摩擦ダンパー30により吸収される様子を説明した。以下では、加わる繰り返し荷重がより小さい場合について説明する。
図8のB点の状態(図10)からマイナス方向にB1点を超える荷重が加わると、間柱下部11が各スプライスプレート21に対して左側に相対移動する。このとき、長孔11b1分の相対移動が行われ、中央の下摩擦ダンパー30の丸パイプ17は、長孔11b1の右壁に当接係合する。この状態は、図8のB2点の状態に相当する。すなわち、このような範囲で荷重が作用する場合には、B−B1−B2−B3で囲まれた領域の振動エネルギーが吸収される。
また、図8のD点の状態(図11)からマイナス方向にD1点を超える荷重が加わると、間柱下部11が各スプライスプレート21に対して左側に相対移動する。そして、長孔11b1分の相対移動が行われ、中央の下摩擦ダンパー30の丸パイプ17は、長孔11b1の右壁に当接係合する。この状態は、図8のD2点の状態に相当する。
さらに、図8のD2点の状態からマイナス方向にD3点を超えるマイナスの荷重が加わると、中央のスプライスプレート21が間柱上部12に対して左側に相対移動する。また、左右の下摩擦ダンパー30の丸パイプ17がスプライスプレート21に対して左側に相対移動する。そして、左右の下摩擦ダンパー30の丸パイプ17が、それぞれ、長孔11b2の右壁に当接係合する。この状態は、図8のD4点の状態に相当する。
図8のD4点の状態からプラス方向にD5点を超える荷重が加わると、間柱下部11が各スプライスプレート21に対して右側に相対移動する。そして、中央の下摩擦ダンパー30の丸パイプ17が、長孔11b1の右壁に当接係合する。この状態は、図8のA点の状態に相当する。さらに、図8のA点の状態からプラス方向にD6点を超える荷重が加わると、中央の丸パイプ17は、長孔11b1と係合しているため、中央のスプライスプレート21が間柱上部12に対して右側に相対移動する。また、間柱下部11は、左右のスプライスプレート21に対して右側に相対移動する。そして、左右の丸パイプ17は、左右の長孔11b2の右壁に当接係合する。この状態は、図8のD点の状態に相当する。すなわち、このような範囲で荷重が作用する場合には、図8の破線で囲まれた領域の振動エネルギーが吸収されることになる。
このように、比較例における摩擦ダンパーユニットでは、3つの下摩擦ダンパー30により摩擦力を生じさせる場合と、下摩擦ダンパー30の摩擦力と摩擦ダンパー20の摩擦力が組み合わさる場合と、3つの上摩擦ダンパー20により摩擦力を生じさせる場合があるので、段階的に摩擦力を変化させることができる。そして、吸収できる振動エネルギーの領域を段階的に増加させることができる。
なお、間柱下部11と間柱上部12とに設けられた滑動板26と、2枚のスプライスプレート21に設けられ、間柱下部11及び間柱上部12に対し相対移動したときに滑動板26と摺動して摩擦力が生じる摩擦板28と、を有しているので、上摩擦ダンパー20及び下摩擦ダンパー30にてそれぞれ相対移動したときに安定した摩擦力を生じさせて制振することが可能である。
また、上摩擦ダンパー20及び下摩擦ダンパー30に、圧縮方向の変形量に対して、荷重の変動が小さい非線形ばね領域を備えた皿ばね積層体8を用いたので、より安定した圧接力を発生させることが可能である。このため、本接合部の制振構造では、上摩擦ダンパー20と下摩擦ダンパー30とにおいて、発生する摩擦力を違えるために、安定した圧接力が得られる皿ばね積層体8を使用している。また、皿ばね積層体8は、重ねる皿ばねの数を相違させることにより圧接力を相違させ、容易に摩擦力を調整することが可能である。
また、ここでは、間柱下部11に設けられる長孔の種類を2種類(11b1、11b2)としたが、摩擦ダンパーユニットの数を増やし、さらに長孔の種類をさらに増加させることができる。そうすることで、より多段階で振動エネルギーを吸収することができる。
また、上記比較例においては、圧接力付勢部材として皿ばね積層体8を用いた例について説明したが、これに限るものではなく、例えばコイルバネや板バネ等、圧縮されて圧接力を付勢可能な部材であれば構わない。
ところで、図8において、荷重幅P1と荷重幅P2は一例として同じ荷重幅として示されていたが、摩擦板28及び滑動板26の摩擦係数を変化させることによって、荷重幅P1及びP2を調整することができる。すななち、上摩擦ダンパー20と下摩擦ダンパー30との調整で、自由に荷重幅P1及びP2の比率を設定することができる。また、皿ばねの枚数を調整することによっても、これらの荷重幅を調整することができる。さらに、以下の実施形態では、これら以外の手法により、荷重幅の調整を可能としている。
以下、第1実施形態における制振構造1’について説明する。なお、前述の比較例と共通する構成についてはその説明を省略し、比較例と異なる点について述べる。
図18は、第1実施形態に係る接合部の制振構造を建物の間柱に組み込んだ状態の一例を示す斜視図である。図19は、第1実施形態の定摩擦ダンパーユニットの一部正面図である。図20は、図19におけるA’−A’断面図である。なお、第1実施形態において比較例に対応する各部の符号については、符号に「’」(ダッシュ)を付している。
第1実施形態における制振構造1’において、前述の比較例の制振構造1と異なる点は、定摩擦ダンパーユニット25−4’が付加されている点である。定摩擦ダンパーユニット25−4’以外の構成については、比較例と同様である(なお、図20において丸孔21a’は第8貫通孔に相当)ため、ここでは定摩擦ダンパーユニット25−4’の構成について説明し、他の構成の説明については省略する。
定摩擦ダンパーユニット25−4’において、上摩擦ダンパー側の構成は比較例と同じである。一方、定摩擦ダンパーユニット25−4’では、間柱下部11’とスプライスプレート21’は実質的に固定されている。よって、定摩擦ダンパーユニット25−4’において、間柱下部側は下摩擦ダンパーと呼ばず、ここでは下固定部位130’とする。
定摩擦ダンパーユニット25−4’は、対をなすスプライスプレート21’(第4圧接板に相当)が間柱下部11’と間柱上部12’との間に架け渡されている。すなわち、下固定部位130’側では、2枚のスプライスプレート21’と、その間に介在された間柱下部11’とが重なっている。
また、間柱下部11’と各スプライスプレート21’との間には、フィラー29’がこれらと固定的に挟持されている。なお、間柱下部11’と各スプライスプレート21’との間に、間柱下部11’側に滑り板としての滑動板26’が固定され、スプライスプレート21’側に摩擦板28’が固定されることとしてもよい。
間柱下部11’、2枚のスプライスプレート21’、2対のフィラー29’に設けられた丸孔111b’(第5貫通孔に相当)、121b’(第7貫通孔に相当)、129b’には、高力ボルト16’が挿通される。高力ボルト16’とナット18’との間には、座金45’が介在される。このようにすることにより、2枚のスプライスプレート21’と間柱下部11’が固定される。
一方、間柱上部12’と滑動板26’には、相対移動方向に長い長孔12a’(第6貫通孔に相当)、26a’が設けられている。これらの長孔12a’、26a’の長さは、前述の摩擦ダンパーユニットにおける上摩擦ダンパー側の長孔の長さと同じ長さである。
このような構成にすることにより、間柱上部12’と間柱下部11’とが相対移動方向に相対移動した場合、定摩擦ダンパーユニット25−4’において上摩擦ダンパー20’において定摩擦を生じさせることができる。
なお、定摩擦ダンパーユニット25−4’において、長孔を間柱上部側に設けることとして説明を行ったが、間柱下部側に設けることとしてもよい。
図21は、第1実施形態における動き出し前の摩擦ダンパーユニットの動作を説明する図である。図22は、第1実施形態における動き出し後の摩擦ダンパーユニットの動作を説明する図である。以下、これらの図を参照しつつ、第1摩擦ダンパーユニット25−1から定摩擦ダンパーユニット25−4’の初期の動きについて説明する。
図21及び図22においても、摩擦ダンパーの各部位の相対移動方向の移動を容易に説明するために、摩擦ダンパーユニットのうち、スプライスプレート21’、間柱上部12’、間柱上部の長孔12a’、上摩擦ダンパー20’及び下固定部位130’における高力ボルトの軸16b’、間柱下部11’、間柱下部の長孔11b1’、11b2’、及び、下摩擦ダンパー30’における丸パイプ17’のみが示されている。また、これらのうち、高力ボルトの軸16b’、丸パイプ17’、間柱上部の長孔12a’、間柱下部の長孔11b1’、11b2’、下固定部位130’の丸孔111b’は、本来他の部材にて隠蔽されるため、外観から視認できない場合がほとんどであるが、ここではこれらを実線で表し、透過的に視認可能として説明する。
図21における配置は、第1実施形態における制振構造1’において何ら荷重が加えられていない初期状態の配置である。これに対し、図22における配置は、上層階3’と下層階5’との間に変位を生じ、間柱上部12’と間柱下部11’との間に荷重が加わった様子を示すものである。すなわち、図22は、比較例における図10に対応するものである。よって、第1摩擦ダンパーユニット25−1’から第3摩擦ダンパーユニット25−3’の動き、及び、生じさせる摩擦力の原理は前述の比較例と同様である。
一方、第1実施形態では、定摩擦ダンパーユニット25−4’が設けられている。そして、定摩擦ダンパーユニット25−4’において、間柱上部12’と間柱下部11’との間で相対移動を生ずると、定摩擦ダンパーユニット25−4’の上摩擦ダンパー20’において摩擦力を生じさせることになる。すなわち、間柱上部12’と間柱下部11’の最初の動き出し時から動き出し終わりまで確実に摩擦力を生じさせることになる。これは、定摩擦ダンパーユニット25−4’を設けることで、一定の摩擦力を制振構造1’に加えることができることを意味する。
なお、第1摩擦ダンパーユニット25−1から第3摩擦ダンパーユニット25−3が段階的に摩擦力を生じさせる原理は比較例と同様である。よって、動き始めより後のこれらの動きの説明は省略する。
定摩擦ダンパーユニット25−4’は、上記説明のように間柱下部11’と間柱上部12’との間に相対移動が生ずれば必ず摩擦力を生じさせることから、第1摩擦ダンパーユニット25−1’から第3摩擦ダンパーユニット25−3’が段階的に生じさせる摩擦力に定摩擦ダンパーユニット25−4’が生じさせる摩擦力が加算されることになる。
図23は、第1実施形態における制振構造1’の振動エネルギー吸収履歴特性を示すグラフである。前述のように、第1実施形態における振動エネルギー吸収履歴特性は、第1摩擦ダンパーユニット25−1’から第3摩擦ダンパーユニット25−3’が段階的に生じさせる摩擦力に、定摩擦ダンパーユニット25−4’の摩擦力が加算されたものとなる。
比較例の手法であると、荷重幅P1と荷重幅P2を一律に大きくするためには、対応する摩擦ダンパーで摩擦板の摩擦係数を異なるものにする必要がある。そのため、摩擦板の種類を増加させなければならないという問題があった。しかしながら、第1実施形態のように、第1摩擦ダンパーユニット25−1’から第3摩擦ダンパーユニット25−3’による段階的な摩擦ダンパーユニットに定摩擦ダンパーユニット25−4’を加え、定摩擦ダンパーユニット25−4’にも第1摩擦ダンパーユニット25−1’から第3摩擦ダンパーユニット25−3’で用いられた摩擦板を採用することにより、荷重幅P1、P2を一律に高く設定することができる。
また、皿ばねの枚数を調整することで荷重幅P1を荷重幅P2より大きくすることができるが、このとき、荷重幅P1のみを大きくするときは、下摩擦ダンパー30’のみを調整すればよいが、荷重幅P2も大きくするときには、上摩擦ダンパー20’も調整する必要がある。
このように、荷重幅P1、P2を一律に大きく設定することにより、小さな荷重では振動エネルギーの吸収を開始せず、大きな荷重が加わらないと振動エネルギーの吸収を開始しない。よって、中規模以上の地震から大規模の地震にかけて生ずる振動を効率よく吸収することができる。
図24は、第2実施形態における摩擦ダンパーユニット25’’の正面図である。図24は、第2実施形態における第1摩擦ダンパーユニット25−1’’、第2摩擦ダンパーユニット25−2’’、または、第3摩擦ダンパーユニット25−3’’の正面図を示す。図25は、第2実施形態における定摩擦ダンパーユニット25−4’’の正面図を示す。そして、第2実施形態において第1実施形態に対応する各部の符号については、符号に「’’」(2つのダッシュ)を付している。
第1実施形態において、相対移動方向及び長孔の方向はスプライスプレート21’の長手方向に直交する方向であったが、第2実施形態では、スプライスプレート21’’の長手方向を相対移動方向及び長孔の方向と一致させている。そして、各摩擦ダンパーユニットを、ブレースにも適用可能としている。
このとき、符号12’’が付された部材は、第2圧接板に相当する。また、符号11’’が付された部材は第1圧接板に相当する。また、符号21’’が付された部材は、第3圧接板に相当する。また、図24には、摩擦ダンパーユニット25’’が一組のみ示されているが、相対移動方向と交差する方向にも摩擦ダンパーユニット25’’が複数並べて設けられるとともに、図25の定摩擦ダンパーユニット25−4’’も並べて設けられる。
そして、第1摩擦ダンパーユニット25−1’’における長孔11b1’’、26b1’’、12a’’、26a’’は、相対移動方向に長い長孔である。また、第2摩擦ダンパーユニット25−2’’、及び、第3摩擦ダンパーユニット25−3’’における長孔11b2’’、26b2’’、12a’’,26a’’も、相対移動方向に長い長孔となっている。
また、図25に示される通り、定摩擦ダンパーユニット25−4’’においても、その長孔12a’’、26a’’は相対移動方向に長くなるように構成されている。
このようにすることによって、符号12’’の部材と符号11’’の部材が近づく方向又は遠ざかる方向に相対移動する場合であっても、第1実施形態と同様の原理から、段階的に摩擦力を生じさせることができるとともに、その摩擦力に定摩擦ダンパーユニット25−4’’による一定の摩擦力を加えることができる。そして、荷重に応じて適切な摩擦力を生じさせることができる。
なお、定摩擦ダンパーユニット25−4’’において、長孔を符号12’’が付された部材側に設けることとして説明を行ったが、符号11’’が付された部材側に設けることとしてもよい。
また、異なる構成の間柱においても上記技術は適用可能である。
図26は、第3実施形態における摩擦ダンパーユニット25’’’の正面図である。図27は、第3実施形態における定摩擦ダンパーユニット25−4’’’の正面図である。第3実施形態において第1実施形態に対応する各部の符号については、符号に「’’’」(3つのダッシュ)を付している。
第3実施形態では上記第1実施形態と比較すると、符号12’’’の部材と符号11’’’の部材とが相対移動方向に関して重ならず、ずれて配置されている。そして、スプライスプレート21’’’が、これら符号12’’’の部材と符号11’’’の部材に相対移動方向に掛け渡されている。
このとき、符号12’’’が付された部材は、第2圧接板に相当する。また、符号11’’’が付された部材は第1圧接板に相当する。また、符号21’’’が付された部材は、第3圧接板に相当する。また、図26には、摩擦ダンパーユニット25’’’が一組のみ示されているが、相対移動方向と交差する方向に摩擦ダンパーユニット25’’’が複数並べて設けられるとともに、図27の定摩擦ダンパーユニット25−4’’’も並べて設けられる。
そして、第1摩擦ダンパーユニット25−1’’’における長孔11b1’’’、26b1’’’、12a’’’、26a’’’は、相対移動方向に長い長孔である。また、第2摩擦ダンパーユニット25−2’’’、及び、第3摩擦ダンパーユニット25−3’’’における長孔11b2’’’、26b2’’’、12a’’’,26a’’’も、相対移動方向に長い長孔となっている。
また、図27に示される通り、定摩擦ダンパーユニット25−4’’’においても、その長孔12a’’’、26a’’’は相対移動方向に長くなるように構成されている。
このようにすることによっても、符号12’’’の部材と符号11’’’の部材が相対移動する場合であっても、第1実施形態と同様の原理から、段階的に摩擦力を生じさせることができるとともに、その摩擦力に定摩擦ダンパーユニット25−4’’’による一定の摩擦力を加えることができる。そして、荷重に応じて適切な摩擦力を生じさせることができる。
なお、定摩擦ダンパーユニット25−4’’’において、長孔を符号12’’’が付された部材側(図27において紙面右側)に設けることとして説明を行ったが、符号11’’’が付された部材側に設けることとしてもよい。
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。