JP6035835B2 - フルオロスルホン酸リチウムの製造方法、およびフルオロスルホン酸リチウム - Google Patents
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Description
これまで、非水電解液二次電池の特性を改善するための手段として、数多くの技術が検討されている。例えば特許文献1には、フルオロスルホン酸リチウムを電解質とすると、60℃充放電サイクル評価時の放電容量が高い電池が得られることが記載されている。
このフルオロスルホン酸リチウムを製造する方法については、以下の二法が報告されているのみである。
しかしながら、この手法では、一旦アンモニウム塩を合成した後、改めてリチウム塩へのカチオン交換を実施している為、煩雑であり、かつ脱離するアンモニアの混入が懸念される。
さらには、電解液に溶解した際にこの水が六フッ化リン酸リチウムを分解してフッ化水素を副生するという悪影響を与えることからこの結晶水を予め取り除く必要があり、さらに操作が煩雑になる。
(1)フッ化ナトリウム・カリウムと、三酸化硫黄又は発煙硫酸を反応させる方法(特許文献3、4及び非特許文献2)
(2)無機フッ化物塩と三酸化硫黄との反応(非特許文献3(六フッ化ケイ酸塩)、非特許文献4(六フッ化リン酸塩))
(3)酢酸溶媒中、フルオロスルホン酸と酢酸カリウムとの塩交換反応(非特許文献5)
すなわち本発明は、
<1>非水溶媒中で、カルボン酸リチウムとフルオロスルホン酸との反応工程を経て得ることを特徴とするフルオロスルホン酸リチウムの製造方法、に関するものであり、
<2>前記反応工程に用いられる非水溶媒が、カルボン酸以外の非水溶媒であることが好ましく、
<3>また、前記反応工程に用いられる非水溶媒が、非プロトン性極性有機溶媒であることが好ましく、
<4>また、前記反応工程後に副生するカルボン酸を除去する工程を経ることが好ましく、
<5>また、前記カルボン酸を除去する工程が、蒸留操作により為されることが好ましく、
<6>また、前記カルボン酸を除去が、反応工程後に副生するカルボン酸よりも高い沸点を持つ非水溶媒の溶液中から行われることが好ましく、
<7>また、前記カルボン酸を除去する工程に用いられる非水溶媒が、非プロトン性極性
有機溶媒であることが好ましく、
<8>また、前記非水溶媒が、鎖状炭酸エステルであることが好ましく、
<9>また、前記反応工程またはカルボン酸を除去する工程後に、精製工程を経ることが好ましく、
<10>また、前記精製工程中に、反応工程で得られた粗フルオロスルホン酸を含む非水溶液に、さらに、非水溶媒を混合する操作を有することが好ましく、
<11>また、<10>に記載の非水溶媒が、非プロトン性極性有機溶媒であることが好ましく、
<12>また、<11>に記載の非プロトン性極性有機溶媒が、鎖状炭酸エステルであることが好ましく、
<13>さらに、<1>〜<12>に記載の製造方法により得られたフルオロスルホン酸リチウムであって、当該フルオロスルホン酸リチウム中のカルボン酸の含有量が、フルオロスルホン酸リチウムの全量に対して、5.0×10−2mol/kg以下であることを特徴とするフルオロスルホン酸リチウム、に関するものである。
<フルオロスルホン酸リチウムの製造方法>
<1.カルボン酸リチウムとフルオロスルホン酸との反応工程>
本発明は、非水溶媒中で、カルボン酸リチウムとフルオロスルホン酸との反応工程を経て得ることを特徴とするフルオロスルホン酸リチウムの製造方法、に関する。
1)脂肪族モノカルボン酸
ギ酸リチウム、酢酸リチウム、プロピオン酸リチウム、酪酸リチウム、イソ酪酸リチウム、フェニル酢酸リチウム、等
2)脂肪族ジカルボン酸モノリチウム
シュウ酸水素リチウム、マロン酸水素リチウム、コハク酸水素リチウム、フマル酸水素リチウム、マレイン酸水素リチウム、等
3)脂肪族ジカルボン酸ジリチウム
シュウ酸リチウム、マロン酸リチウム、コハク酸リチウム、フマル酸リチウム、マレイン酸リチウム、等
4)芳香族モノカルボン酸
安息香酸リチウム、等
5)芳香族ジカルボン酸モノリチウム
フタル酸水素リチウム、テレフタル酸水素リチウム、等
6)芳香族ジカルボン酸ジリチウム
フタル酸リチウム、テレフタル酸リチウム、等
これらのカルボン酸リチウムの中でも、安価で高純度品が容易に入手可能であることから、脂肪族モノカルボン酸リチウム、脂肪族ジカルボン酸ジリチウムが好ましい。
また、ジカルボン酸ジリチウムでは、分子内元素中のリチウム含有比率が高い方が、廃棄物量が減る等の観点から好ましく、具代的には、シュウ酸リチウム、マロン酸リチウム、コハク酸リチウムが好ましい。
これらのカルボン酸リチウムは単独で用いても組み合わせてもよいが、操作を複雑にしない為に単独で用いることが好ましい。
本発明の反応に用いられるカルボン酸リチウムは、市販のものをそのまま用いても精製して用いてもよく、他の化合物から製造して用いてもよい。純度については特に限定はされないが、フルオロスルホン酸リチウム中にハロゲン化リチウム由来の不純物が残存することにより、電池等の性能が悪化することが懸念される為、より高純度であることが好ましく、好ましくは99質量%以上で有ることが好ましい。
本発明の反応工程で用いられるフルオロスルホン酸とカルボン酸リチウム中のリチウムとの仕込みの量比は特に限定はされないが、原料の消費効率の観点から比率が1:1から大きく外れないことが好ましい。
一方、残留した場合の電池特性等に与える影響から、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル等の鎖状炭酸エステルが好ましい。これらのことから、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルが好ましく、さらに、炭酸ジエチルは、沸点が炭酸ジエチルより低いカルボン酸が存在することから最も好ましい。
本発明の反応工程に用いる非水溶媒のフルオロスルホン酸に対する比率は、特に限定されないが、好ましくは体積比100倍以下、さらに好ましくは50倍以下、さらに好ましくは25倍以下である。また、反応に用いる溶媒のフルオロスルホン酸に対する比率は、好ましくは体積比2倍以上、さらに好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上である。上記範囲内にあると、製造の効率に優れ、得られるフルオロスルホン酸リチウムが反応中に過度に析出することなく、攪拌を阻害する等の問題が発生し難くなる。
温度+20℃以下、さらに好ましくは+10℃以下、さらに好ましくは+5℃以下である。本発明の反応における投入時の温度は、好ましくは開始時の温度−20℃以上、より好ましくは−10℃以上、さらに好ましくは−5℃以上であり、開始時の温度前後に保つことが特に好ましい。本発明の反応工程における投入時の温度が上記範囲内にあると、溶媒の揮発や予測されざる副反応の発生等の問題や反応速度の低下等の問題が生じにくくなる。
また、投入時の温度より高くとも低くとも構わないが、熟成の効果を高める為には高い方が好ましい。
本発明の反応工程における上記熟成工程の時間は、特に限定はされないが、好ましくは20時間以下、さらに好ましくは10時間以下、さらに好ましくは5時間以下である。また、本発明の反応における反応の時間は、好ましくは1分以上、さらに好ましくは10分以上、さらに好ましくは30分以上である。熟成工程の時間が上記範囲内であると、製造の効率が良好となり、熟成の効果を十分に得ることができる。
上記反応工程後の非水溶液から、(粗)フルオロスルホン酸リチウムを回収する方法に関しては特に限定はされない。
また、反応工程時にカルボン酸リチウムを過剰に用いた場合、選択するカルボン酸リチウムの種類と非水溶媒の種類との組合せによっては過剰なカルボン酸リチウムが不溶分として残存する場合が有る。この場合、精製工程に先立ち、予めこの過剰なカルボン酸リチウムの不溶分を分離しておくことが望ましい。カルボン酸リチウムの不溶分の分離方法に関しては特に限定されず、減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過等の濾過、静置、遠心による沈降して上澄みを取り出す等を用いることが出来、さらにこれらの手法を組合せたり、同一の手法を繰り返したりすることが出来る。なお、この工程は、反応工程後、反応工程時に用いた非水溶媒を取り除く工程後又はその途中、カルボン酸を除去する工程の途中のいずれかの段階で実施すれば良い。
続いて、反応工程時に用いた非水溶媒を取り除く工程、副生するカルボン酸を除去する工程について説明するが、副生するカルボン酸の種類と選択する非水溶媒の種類によって
、工程の順序を入れ替える、または双方の工程を兼ねて一工程として行うことが出来る。
反応工程時に用いた非水溶媒を取り除く方法については、特に限定はされないが、濃縮留去等を用いることが出来る。濃縮留去を行う際の温度は特に限定されないが、反応工程時の温度を大きく超えない温度に制御することが好ましい。濃縮留去時の温度は、高すぎると予測されざる副反応の発生等の問題から好ましくない。好ましくは熟成時の温度に対して+50℃以下が好ましく、さらに+40℃以下が好ましく、さらに+30℃以下が好ましい。濃縮留去を行う際の圧力は常圧、減圧のどちらでも構わないが、濃縮の際の好ましい温度に合わせて設定される必要がある。
反応時に用いた溶媒を残存させる量としては、残存させる量が多すぎると固体として回収される量が少なくなることがあるため、好ましくは、投入したフルオロスルホン酸の体積比で20倍以下が好ましく、さらに体積比で15倍以下が好ましく、さらに体積比で10倍以下が好ましい。一方、残存させる量が少なすぎると粘稠なスラリー状態になり、取扱いが困難になることがあるため、反応時に用いた溶媒を残存させる量としては、好ましくは、投入したフルオロスルホン酸の体積比で0.3倍以上が好ましく、さらに体積比で0.5倍以上が好ましく、さらに体積比で1倍以上が好ましい。
反応工程時に用いた非水溶媒を残存させた場合は、この溶媒と固体を分離する必要が有る。分離方法に関しては特に限定されず、減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過等の濾過、静置、遠心による沈降して上澄みを取り出す等を用いることが出来る。
なお、副生するカルボン酸の種類と選択する溶媒の種類によって、本工程と次項に述べる工程双方の工程を兼ねて一工程として行うことが出来る。
副生するカルボン酸を除去する工程については、副生するカルボン酸の物性によって、二種類の方法を適宜選択することが出来る。
1)副生するカルボン酸が操作を実施する温度において液体である場合
蒸留操作により除去する
2)副生するカルボン酸が操作を実施する温度において固体である場合
フルオロスルホン酸リチウムが可溶でかつ副生するカルボン酸が難溶・不溶であり除去が容易である溶媒にフルオロスルホン酸リチウムを溶解し、得られたスラリーから、副生するカルボン酸を固体と液体を分離する各種手法により分離する。
この操作は、反応工程後に、フルオロスルホン酸リチウムが可溶でかつ副生するカルボ
ン酸の沸点よりも高い沸点を有しさらに除去が容易な非水溶媒をさらに加えて行ってもよく、予め反応溶媒としてフルオロスルホン酸リチウムが可溶でかつ副生するカルボン酸の沸点よりも高い沸点を有しさらに除去が容易な非水溶媒を選択して反応溶媒の除去と副生するカルボン酸の除去を一工程で兼ねてもよい。工程を簡略化するためには一工程で兼ねることがより好ましい。
これらの溶媒を蒸留操作により除く際は、理論段数が多段の精留塔を用いることがより好ましい。
過剰なカルボン酸リチウムを取り除いた後に、一旦反応に用いた非水溶媒を除去し、改めてフルオロスルホン酸リチウムが可溶でかつ副生するカルボン酸が難溶・不溶であり除去が容易である非水溶媒を加えて実施してもよいし、あらかじめ反応工程で用いる非水溶媒にフルオロスルホン酸リチウムが可溶でかつ副生するカルボン酸が難溶・不溶であり除去が容易である非水溶媒を用い、過剰なカルボン酸リチウムと副生するカルボン酸を一度に取り除いてもよい。副生するカルボン酸を除去した後の溶媒の除去に関しては、反応工程時に用いた非水溶媒を取り除く工程に準じて行うことが出来る。
本発明においては、フルオロスルホン酸リチウムの純度を更に上げるために、精製工程を経ることが好ましい。具体的には、反応工程を経て得られた(粗)フルオロスルホン酸リチウムを非水溶媒に接触させた後、洗浄、再結晶、再沈殿等の操作を経ることにより、高純度化できる。前記操作の中でも、再結晶法を用いることがより好ましい。さらには、再結晶法行った後に洗浄を行うことが好ましい。再結晶の回数としては特に限定されず、繰り返し実施してもよい。洗浄の回数としては特に限定されず、繰り返し実施してもよく、再結晶を繰り返した場合はその度毎に少なくとも一回以上実施することが好ましいが、特に限定されない。
非プロトン性極性有機溶媒としては、具体的には、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル等の鎖状炭酸エステル;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル;メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、エタンスルホン酸メチル等の鎖状スルホン酸エステル;アセトニトリル、プロピオニトリル等の鎖状ニトリル;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル、等が挙げられる。
精製工程に再結晶を行う際の溶媒量については特に限定はされないが、少なくとも一度は(粗)フルオロスルホン酸リチウムを溶解させる量が必要である一方、多すぎると再結晶時の回収効率が低下する為好ましくない。好ましい量は、フルオロスルホン酸リチウムの溶解度が用いる溶媒によって異なるため、特に限定されないが、例えば炭酸ジメチルの場合には、好ましくは粗製フルオロスルホン酸リチウム固体の質量に対して2倍量以上が好ましく、さらに好ましくは3倍量以上が好ましく、さらに好ましくは5倍量以上が好ましい。また、例えば炭酸ジメチルの場合には、好ましくは粗製フルオロスルホン酸リチウム固体の質量に対して20倍量以下が好ましく、さらに好ましくは15倍量以上が好ましく、さらに好ましくは10倍量以下が好ましい。
再結晶を行う際、溶解後結晶化させる前に不溶な不純物が残存している懸念が有る為、濾過等の方法にて不溶物を除去する操作を行うことが好ましい。
上記精製工程を経て得られたフルオロスルホン酸リチウムの固体には、上記精製工程に用いた非水溶媒が残存している為、乾燥により除去することが好ましい。溶媒の除去方法
は特に限定はされないが、除去の操作にて高い温度をかけると熱分解が懸念される為好ましくない。一方、温度が低すぎると十分な除去が行われない可能性が有る為好ましくない。除去の温度は、好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。また、好ましくは0℃以上、さらに好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上である。除去の時間は、長ければ長いほど除去効率があがり好ましい一方、生産効率が落ちる。このことから、適切な範囲の時間で実施することが好ましい。除去の時間は好ましくは、30分以上、さらに好ましくは1時間以上、さらに好ましくは2時間以上である。また、除去の時間は好ましくは、24時間以下、さらに好ましくは10時間以下、さらに好ましくは5時間以下である。
フルオロスルホン酸リチウムを電池等に用いた場合により高い性能を示す為に、純度は高いことが好ましいが、その中でも、例えばカルボン酸リチウムを用いて製造した場合、電池内で容易に酸化されるカルボン酸イオンが電解液
中に溶解しないように除去されていることが電池特性を制御する上で望ましい。これは、水に溶かした際のカルボン酸イオン量を測定することで確認が出来る。
分析にはイオンクロマトグラフィー測定と、核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定を用いた。また、カルボン酸除去時、留出する成分中のカルボン酸量の分析にはガスクロマトグラフィーを用いた。
NMRはジメチルスルフォキシド−d6を測定溶媒に、ベンゾドリフルオリドを内部標準として用いて測定し、そのシグナルと積分値から、フルオロスルホン酸イオン分と溶媒の比を求めた。
ガスクロマトグラフィーはFID検出器を有する島津製作所製のGC−17Aを用い、カラムにはGLサイエンス社製のTC−1(径0.53μm、膜厚0.2μm、全長50m)を用い、各成分の試薬の検出面積比を試薬のそれと比較した。
<反応工程>
乾燥窒素気流下、200mlのPFA製四口フラスコに酢酸リチウム6.8g(103.1mmol)を量り取り、炭酸ジメチル125mlを加えた。この溶液を氷浴中で攪袢しながらフルオロスルホン酸5ml(8.6g、86.2mmol)を約10分かけてと滴下した。滴下前に10℃であった液温は、酸の滴下により発熱し20℃まで昇温されたが、滴下終了後に速やかに元の温度に戻った。滴下に伴い、炭酸ジメチルに難溶である酢酸リチウムが溶解した。氷水浴にて冷却しながら2時間撹拌した後、氷水浴を外し室温環
境下にて1時間攪袢した。反応終了後の溶液からメンブレンフィルター(PTFE製、公称孔径0.5μm)を用いて過剰の酢酸リチウムを濾別した。
上記反応溶液から約10kPa、40℃で炭酸ジメチルを留出が終了するまで蒸留留去し、透明で粘稠な液体を得た。
NMR分析結果から得られた粉末はフルオロスルホン酸リチウムと酢酸、炭酸ジメチルの混合物であり、イオンクロマトグラフィーの結果から、硫酸イオンの含量は0.3mol/kgであった。
上記の粘稠な液体に、150mlの炭酸ジエチルを加え、トートクエンジ社製のHelipackNo.1を充填した精留塔を用いて、60℃、6.0kPaにて減圧蒸留を開始し、2.4kPaまで徐々に減圧真空度を変化させた。ここまでの流出量は、135mlであった。
ロータリーエバポレーターにて残りの炭酸ジエチルを留去したところ白色の固体が得られた。イオンクロマトグラフィーによる分析の結果、酢酸イオンの含量は0.001mol/kg以下であった。
<反応工程>
乾燥窒素気流下、500mlのPFA製四口フラスコに酢酸リチウム7.9g(120.1mmol)を量り取り、炭酸ジメチル250mlを加えた。この溶液を水浴中で攪袢しながらフルオロスルホン酸5.43ml(10.0g、100mmol)を約10分かけて滴下した。滴下前に25℃であった液温は、酸の滴下により発熱し30℃まで昇温されたが、滴下終了後に速やかに元の温度に戻った。滴下に伴い、炭酸ジメチルに難溶である酢酸リチウムが溶解した。水浴にて1時間撹拌した。
上記反応溶液を浴温45℃にて減圧度を制御しながら炭酸ジメチルを約220ml蒸留留去し、脱水された不活性ガスにて大気圧に復圧後、300mlの炭酸ジエチルを加えた。この溶液からメンブレンフィルター(PTFE製、公称孔径0.5μm)を用いて過剰の酢酸リチウムを濾別した。
上記溶液をトートクエンジ社製のHelipackNo.2を充填した10cmの精留塔を用いて、浴温45℃にて、減圧度を制御しながら、残りの炭酸ジメチルと炭酸ジエチルを炭酸ジエチルが残り約10mlとなるまで留去した。
脱水された不活性ガスにて大気圧に復圧後、浴温45℃を保ちながら、炭酸ジメチルを40ml加えた。得られた溶液を、脱水された不活性ガス雰囲気下、メンブレンフィルター(PTFE製、公称孔径0.5μm)を用いて熱時漉過を行い、溶液を不活性ガス雰囲気下で徐々に4℃まで冷却したところ、白色結晶が得られた。収率は66%、硫酸イオンの含量は0.01mol/kg以下、酢酸イオンの含量は0.001mol/kg以下であった。さらに、得られた固体を45℃にて50mlのDMCに溶解し、同様の工程を実施したところ、90%の回収率で、硫酸イオン・酢酸イオン共に0.001mol/kg以下の白色結晶を得た。
<反応工程>
乾燥窒素気流下、500mlのPFA製四口フラスコに酢酸リチウム7.9g(120.1mmol)を量り取り、炭酸ジエチル300mlを加えた。この溶液を水浴中で攪袢しながらフルオロスルホン酸5.43ml(10.0g、100mmol)を約10分かけて滴下した。滴下前に25℃であった液温は、酸の滴下により発熱し30℃まで昇温されたが、滴下終了後に速やかに元の温度に戻った。滴下に伴い、炭酸ジエチルに難溶である酢酸リチウムが溶解した。水浴にて1時間撹拌した。
上記溶液をトートクエンジ社製のHelipackNo.2を充填した10cmの精留塔を用いて、浴温45℃にて、減圧度を制御しながら、炭酸ジエチル合わせて220mlを留去した。脱水された不活性ガスにて大気圧に復圧後、この溶液からメンブレンフィルター(PTFE製、 公称孔径0.5μm)を用いて過剰の酢酸リチウムを濾別した。
この漉過後の溶液から、さらに炭酸ジエチルを残り約10mlになるまで同条件にて留去した。
実施例2と同様に実施したところ、65%の収率で、白色結晶が得られた。硫酸イオンの含量は0.01mol/kg以下、酢酸イオンの含量は0.001mol/kg以下で実施例2と同様であった。さらに、得られた固体を45℃にて50mlのDMCに溶解し、同様の工程を実施したところ、90%の回収率で、硫酸イオン・酢酸イオン共に0.001mol/kg以下の白色結晶を得た。これも実施例2と同様であった。
溶媒に水を用いた以外は実施例1と同様に<反応>操作を行った。
得られた濃縮を実施例1の<濃縮>操作と同様に濃縮した所固体は析出しなかった。
イオンクロマトグラフィー分析の結果、フルオロスルホン酸が全量硫酸に加水分解していることが確認された。
実施例2と同様に<反応工程>を実施し、<反応工程時に用いた非水溶媒を取り除く工程>と同様の条件で炭酸ジメチルが約40ml程度まで留去されたところで、留去を留め、<精製工程>と同様に冷却したところ、結晶の生成は見られなかった。
しかし、約0.2kPa以下まで減圧し、残った炭酸ジメチルを留去したところ白色のワックス状の固体を得ることができた。この固体中のフルオロスルホン酸リチウムに対する酢酸イオン量は0.063mol/kgであった。
実施例3と同様に<反応工程>を実施した後、炭酸ジエチルを、ロータリーエバポレーターで5Torr以下を保ちながら一気に200ml留去し、実施例3同様に過剰の酢酸リチウムを濾別した後、さらにロータリーエバポレーターで5Torr以下を保ちながら一気に10ml程度まで濃縮した。実施例3と同様に<精製工程>工程を実施したところ、50%の収率で白色粉末が得られた。酢酸イオンの含量は0.11mol/kgと高かったが、硫酸イオンの含量は0.01mol/kg以下に抑えることができた。さらに、得られた固体を45℃にて50mlのDMCに溶解し、同様の工程を実施したところ、90%の回収率で白色結晶が得られ、酢酸イオンはあまり減少しなかったが、硫酸イオンを0.001mol/kg以下と更に減少することができた。
Claims (11)
- 非水溶媒中で、カルボン酸リチウムとフルオロスルホン酸との反応工程を経て得ることを特徴とするフルオロスルホン酸リチウムの製造方法。
- 前記反応工程に用いられる非水溶媒が、カルボン酸以外の非水溶媒であることを特徴とする請求項1に記載のフルオロスルホン酸リチウムの製造方法。
- 前記反応工程に用いられる非水溶媒が、非プロトン性極性有機溶媒である請求項1または2に記載のフルオロスルホン酸リチウムの製造方法。
- 前記反応工程後に副生するカルボン酸を蒸留操作により除去する工程を経ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のフルオロスルホン酸リチウムの製造方法。
- 前記カルボン酸を除去する工程が、反応工程後に副生するカルボン酸よりも高い沸点を持つ非水溶媒の溶液中から行われることを特徴とする請求項4に記載のフルオロスルホン酸リチウムの製造方法。
- 前記カルボン酸を除去する工程に用いられる非水溶媒が、非プロトン性極性有機溶媒であることを特徴とする請求項5に記載のフルオロスルホン酸リチウムの製造方法。
- 前記非水溶媒が、鎖状炭酸エステルである請求項1〜6の何れか1項に記載のフルオロスルホン酸リチウムの製造方法。
- 前記反応工程またはカルボン酸を除去する工程後に、洗浄、再結晶、再沈殿のうちの少なくとも一つの精製工程を経ることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のフルオロスルホン酸リチウムの製造方法。
- 前記精製工程中に、反応工程で得られた粗フルオロスルホン酸を含む非水溶液に、さらに、非水溶媒を混合する操作を有することを特徴とする請求項8に記載のフルオロスルホン酸リチウムの製造方法。
- 請求項9に記載の非水溶媒が、非プロトン性極性有機溶媒であることを特徴とするフルオロスルホン酸リチウムの製造方法。
- 請求項10に記載の非プロトン性極性有機溶媒が、鎖状炭酸エステルであることを特徴とするフルオロスルホン酸リチウムの製造方法。
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