図1に、本発明の側枝検出装置100aの第1の実施形態が示されている。
図1において、1は電源であり、1つ或いは複数の異なる周波数の測定用信号Pnを出力する。電源1は、2つの周波数、例えば500Hz及び2KHzの測定用信号Pnを出力する。2は信号切り替え部であり、制御部6の指示に従って、500Hz或いは2KHzの測定用信号Pnを選択し或いは切替えて順次整合部3へ送る。整合部3は、根尖位置及び側枝位置検出用の測定電極(以下、「位置検出用電極」という)10に送る測定用信号Pnを、測定に適した電圧に変換し、増幅部4に送る。増幅部4は、被検査歯24の歯肉に配置した口腔電極11から得られる測定された電流Inを測定された電圧Vnに変換し増幅する。5は変換部であり、測定された電圧Vnを直流電圧Vdcに変換する。6は制御部であり、制御部6は側枝検出装置100aの各要素の制御をつかさどり、処理する。7は表示部であり、制御部の指示に従い、直流電圧Vdcに基づいた測定結果を表示し、或いは/及び警告音を発する。表示部7は、データ処理部12が出力したデータを選択的に或いは一括して表示することができる。8は、側枝検出装置100aを自動化する場合、位置検出用電極10を根尖位置23に向けて自動的に移動させるための駆動機構であり、インターフェイス回路を備えることができる。駆動機構は必要に応じて採用することができ、或いは不採用とすることができる。12は、直流電圧Vdcに対して表示部7に送信する表示用データを作成するデータ処理部である。電源1から位置検出用電極(例、リーマ)10に、例えば500Hz或いは2KHzの各周波数の測定用信号Pnを印加すると、位置検出用電極10と口腔電極11間から周波数毎の2種類の測定された電流(In500HzとIn2KHz)が検出される。この2種類の測定された電流は、位置検出用電極(リーマ)10を根管22内で根尖位置23に向かって挿入していく過程で、位置検出用電極10の挿入位置に対応して検出部25により順次検出される。
図1において、10’は、位置検出用電極10を使用して側枝の位置が検出された後、位置検出用電極10に替えて使用される側枝方向検出用の測定電極(以下、「方向検出用電極」という)である。12aは、根尖の位置を検出する根尖位置検出機構である。12bは、位置検出用電極10の先端の位置を検出する電極位置検出機構である。12cは、側枝の有無と側枝の位置を検出する側枝及び側枝位置検出機構である。12dは、側枝の開口方向を検出する側枝方向検出機構である。データ処理部12は、これらの検出機構12a〜12dを選択的に切り替えることができる。データ処理部12に切替機構を設け、この切替機構によりこれらの検出機構12a〜12dを切り替えても良い。13は、複数のモデル歯根尖位置測定データグループと複数のモデル歯位置測定データグループを記憶する第1の記憶部である。各モデル歯根尖位置測定データグループは、位置検出用電極10の先端が各々のモデル歯の根尖位置に配置された状態における、口腔電極から出力される複数の測定された信号(測定された電流In、Inを増幅し変換した電圧Vn又はVnを変換した直流電圧Vdc)から構成される。複数のモデル歯位置測定データグループは、位置検出用電極10の先端がモデル歯の各々の根管内の複数の所定の位置の各々に配置された状態における、口腔電極から出力される複数の測定された信号(In、Vn又はVdc)及び根尖位置から位置検出用電極10の先端までの距離を表示する指示値の組から構成される。各モデル歯位置測定データグループは、モデル歯毎に異なる。各モデル歯位置測定データグループは、根尖があり側枝がない各モデル歯で測定された測定データである。複数のモデル歯根尖位置測定データグループと複数のモデル歯位置測定データグループは、側枝位置検出前に、予め第1の記憶部13に記憶されている。14は、位置検出用電極10が根管内に挿入されるに従って変化する、根尖位置から位置検出用電極の先端までの距離を表示する指示値が凸状を示した際の複数の測定された信号(In、Vn又はVdc)及び指示値を記憶する第2の記憶部である。第2の記憶部14の詳細は後述する。
図1の装置は、位置検出用電極10を使用して根尖位置を検出する機能と、位置検出用電極10の先端の位置を検出する機能と、側枝の有無及び側枝の位置を検出する機能と、方向検出用電極10’を使用して側枝の開口方向を検出する機能を備える。以下、各機能について説明する。
図1において、位置検出用電極10の先端が根管内22に挿入されていく過程で、電源1は位置検出用電極10と口腔電極11の間にPn500HzとPn2KHzの測定用信号を交互に順次印加する。この結果、位置検出用電極10の先端が根管内22に挿入されていくに従って、口腔電極11から得られる複数の測定された電流は変化する。これらの複数の測定された電流は検出部25により順次検出される。
図1などによる根尖位置を検出する機能を説明する。データ処理部12は、根尖位置検出機構12aを備えている。根尖位置検出機構12aは、検出部25が検出した複数の測定された電流In(又はInを増幅し変換したVn或いはVnを変換したVdc)を、第1の記憶部13に記憶された複数のモデル歯根尖位置測定データグループと比較する。そして、所定の関係にある(例、一致)複数のモデル歯根尖位置測定データグループを検出する。この比較結果の一致は、位置検出用電極10の先端が根尖に位置したことを意味するので、このときの位置検出用電極10が歯の上部から移動した距離から根尖位置を出力することができ、表示部7は根尖位置を表示することができる。
図1などによる位置検出用電極10の先端の位置を検出する機能を説明する。データ処理部12は、電極位置検出機構12bを備えている。電極位置検出機構12bは、検出部25が検出した複数の測定された電流In(又はInを増幅し変換したVn或いはVnを変換したVdc)を、第1の記憶部13に記憶された根管内の各測定位置における複数のモデル歯位置測定データグループと比較する。そして、所定の関係にあるモデル歯位置測定データグループが示す根尖位置から位置検出用電極の先端までの距離を表示する「指示値」を出力する。根尖位置から位置検出用電極の先端までの距離を表示するこの指示値に基づいて、表示部7は位置検出用電極10の先端の位置を表示することができる。この表示部7の例を図2に示す。術者はこの表示を観察することにより、位置検出用電極10の先端が根尖位置23に近づいていく状況を正確に把握することができる。表示部7は、複数の測定された信号(In、Vn又はVdc)及び指示値の推移の波形を表示するための表示用データを表示することもできる。
このように、モデル歯24’のモデル歯位置測定データグループを、根尖位置から例えば1mm単位毎の距離で作成することにより、図1の装置は位置検出用電極10の先端が根尖位置23に近づいている状況を1mm単位で検出することができる。
この検出された位置検出用電極10の先端の位置は、図2に示す表示部7により表示することができる。図2の表示部7には、被検査歯24と根管22が描かれている。被検査歯24には、根尖位置からの距離26を表すスケールが描かれている。根管の部分には、横じま表示27が描かれる。位置検出用電極10が根尖位置に向かって挿入されていく時に従って、横じま表示の最下部27aは下降して、位置検出用電極の先端位置を表示する。図2では、位置検出用電極10の先端が根尖位置の3mm手前に位置していることを表示している。
位置検出用電極10を自動的に挿入する自動挿入装置を採用した場合の、根管内での位置検出用電極10の先端の位置を測定する機構としては、該自動挿入装置に位置検出用電極を自動挿入した距離を検出する仕組みを組み込むことができる。
図1などによる側枝の有無及び側枝の位置を検出する機能について説明する。データ処理部12は、側枝及び側枝位置検出機構12cを備えている。図3は、図1の装置を使用して、側枝が無く、根尖孔がある被検査歯を検査した結果である。ここで、測定用信号Pnとして、500Hz,1KHz,2KHz,4KHz,8KHzの各周波数の電圧を使用した。図3中で、位置検出用電極を根管内に挿入していった際に、測定周波数別の各測定された電流を変換した直流電圧の推移の波形と、電極位置検出機構12bにより検出した上記指示値の推移の波形が示されている。複数の測定された信号(In、Vn又はVdc)と所定の関係にあるモデル歯位置測定データグループが示す「指示値」は、例えば図3の縦軸に示す数値で表すことができる。図3において側枝がない被検査歯の「指示値」の推移の波形は単調に増加している。
一方、図4は、同じく図1の装置を使用して、側枝が根尖から3mm付近の位置に有り、根尖孔がある被検査歯24を検査した結果である。測定用信号Pnの周波数は、500Hz,1KHz,2KHz,4KHz,8KHzである。図4中にも、位置検出用電極を根管内に挿入していった際に、測定周波数別の各測定された電流を変換した直流電圧の推移の波形と、電極位置検出機構12bにより検出した上記指示値の推移の波形が示されている。
図4の中の「指示値」、すなわち「‥・‥」で示される推移の波形は、500Hzと2KHzの2つの周波数の測定用信号による、直流電圧Vdc500HzとVdc2KHzを使用して複数のモデル歯位置測定データグループから得た指示値の推移の波形である。
図4の指示値の推移の波形は、3mm付近で凸状のカーブを描いている。図4に示されるように、根尖孔が有る被検査歯において、500Hz,1KHz,2KHz,4KHz,8KHzの周波数の各測定用信号Pnによる直流電圧Vdcの推移の波形は、図3の側枝が無い被検査歯の直流電圧Vdcとほぼ同様に単調に増加していることから、図3あるいは図4の各直流電圧Vdcの推移の波形から、側枝を検出することは容易ではない。
図5は、同じく図1の装置を使用して、側枝が根尖から3mm付近の位置に有り、根尖孔がない被検査歯24を検査した結果である。測定用信号Pnの周波数は、500Hz,1KHz,2KHz,4KHz,8KHzである。図5中にも、位置検出用電極を根管内に挿入していった際に、測定周波数別の各測定された電流を変換した直流電圧の推移の波形と、電極位置検出機構12bにより検出した上記指示値の推移の波形が示されている。
図5の各直流電圧Vdcの推移の波形に注目する。図1において、位置検出用電極10を根尖位置23に向けて根管22内に挿入していくときに、位置検出用電極10と口腔電極11の間に流れる電流は、側枝がある位置までは、電極から側枝を経由して流れる。すなわち、位置検出用電極先端と側枝との間の距離に応じた電流が流れる。しかし、位置検出用電極10が側枝の位置を過ぎると、導電性電極の本体表面と側枝までの距離は一定となり、側枝を経由する電流は、同距離に応じたほぼ一定の値となる、と考えられる。
一方、図3、図4及び図5の「指示値」の推移の波形に注目する。図3の側枝が無い被検査歯に関する「指示値」の推移の波形は単調に増加しているが、側枝が有る図4と図5の「指示値」の推移の波形は、凸状を示している。この凸状に変化する推移の波形を検知することにより、被検査歯が側枝を有することを正確かつ容易に検出可能である。
図3と図4の「指示値」がこのように異なる理由は、図4の測定された電流Inにおいては、次のような変化が生じるためである。図1において、位置検出用電極10を根尖位置23に向けて根管22内に挿入していくときに、位置検出用電極10と口腔電極11の間に流れる電流は、側枝がある位置までは、電極から、根尖と側枝を経由して流れる。すなわち、位置検出用電極先端と側枝との間の距離に応じた電流が流れる。しかし、位置検出用電極10が側枝の位置を過ぎると、導電性電極の本体表面と側枝までの距離は一定となり、側枝を経由する電流は、同距離に応じたほぼ一定の値となる、と考えられる。図4の測定された電流のこのような変化により、図3と図4の「指示値」に上述のような差異が生じる。
さらに、図1の装置の「指示値」は、「根尖位置から位置検出用電極の先端までの距離を表示するデータ」を採用している。よって、「指示値」の推移の波形が凸状を示すX軸上の位置は、側枝及び側枝位置検出機構12cにより、側枝がある位置として検出されることができる。
図6は、図4の検査結果について、各測定用信号Pnに対応する各測定された電流を変換した直流電圧は500Hzと2KHzの周波数の場合のみ示したものである。根尖までの距離が3.0mmの時に指示値が凸状を示し、ここに側枝があることが判る。この時の複数の測定された信号(In、Vn又はVdc)の値及び指示値を、1回目の複数の測定された信号(In、Vn又はVdc)の値及び指示値として第2の記憶部14に記憶する。第2の記憶部14に記憶する複数の測定された信号の値はIn、Vn、Vdcのいずれの値でも良い。
次に、再度、位置検出用電極10を根管内に挿入する。位置検出用電極10が根管内に挿入されていく過程で、2回目の各測定された信号(In、Vn又はVdc)の値及び指示値と第2の記憶部14に記憶された1回目の各測定された信号(In、Vn又はVdc)の値及び指示値をそれぞれ順次比較する。比較の結果、両測定された信号(In、Vn又はVdc)の値及び指示値の少なくとも2つが一致した又は所定の誤差範囲に達したときに、位置検出用電極10の先端が側枝の位置に達したと判断することができる。位置検出用電極10の先端が側枝の位置に達したときにその旨を術者に表示することができる。比較の結果、両測定された信号(In、Vn又はVdc)の値及び指示値の少なくとも2つが一致した又は所定の誤差範囲に達したときに、位置検出用電極10を止めて位置検出用電極10の先端の位置を測定し、測定した結果を側枝の位置として出力することができる。表示する方法としては、警告音のような音または振動で知らせることも可能である。距離表示を点滅させて術者へ知らせることもできる。これらは自動で行うこともできる。所定の誤差範囲とは、例えば数%の誤差である。
根管内において位置検出用電極10の位置が少しでもずれると各測定用信号に対応する各測定された電流Inの値が変わるため、図6に示す指示値も変わってくる。このため、指示値の推移の波形が凸状を示したときの表示部に表示される距離表示は、実際の側枝の位置との間に誤差が出る。そこで、より高い精度で側枝位置の距離表示を行うために、上述のように再度側枝位置検出を実施する。指示値だけでなく、各測定された信号の値も用いて側枝位置検出を行う。これは以下の理由による。図6を参照すると、指示値の推移の波形が凸状を示した点(横軸の根尖までの距離が3.0mm辺り)とこの指示値と同じ値をとる点(横軸の根尖までの距離が1.6mm辺り)がある。このため、再度側枝位置検出を実施したときに、2回目の指示値と1回目の指示値を順次比較するだけでは側枝がある箇所を特定することができない。一方、図6において指示値の推移の波形が凸状を示した点とこの指示値と同じ値をとる点において、各測定用信号に対応する各直流電圧Vdcの値は異なっている。よって、指示値だけでなく、各測定された信号の値も用いることにより、側枝がある箇所を特定することができる。
再度側枝位置検出を実施し、2回目の各測定された信号の値及び指示値と、記憶された1回目の各測定された信号の値及び指示値をそれぞれ比較する。比較の結果、両測定された信号の値及び指示値が一致した又は所定の誤差範囲に達したときに、位置検出用電極を止めて位置検出用電極の先端の位置を測定し、測定した結果を側枝の位置として出力する。出力された側枝位置は距離表示によって表示部に表示される。上述のように、図6において指示値の推移の波形が凸状を示した点とこの指示値と同じ値をとる点において、各測定用信号に対応する各直流電圧Vdcの値は異なる。よって、少なくとも2つの値が一致または所定の誤差範囲にあるときに位置検出用電極の先端の位置を測定することによって、より高い精度で側枝位置の距離表示を行うことができる。
図1の装置はさらに、1回目の各測定された信号の値及び指示値と2回目の各測定された信号の値及び指示値の上記比較の結果、一致した又は所定の誤差範囲に達したときに、位置検出用電極10の先端の位置を自動的に測定する測定機構を備えても良い。
位置検出用電極10は、図7(a)に示すような被検査歯に固定するためのストッパー10fを備えていても良い。例えば、位置検出用電極10の先端が側枝の位置に達したときに、位置検出用電極10を止め、位置検出用電極10のストッパー10fを被検査歯の上部まで下ろして位置検出用電極10を固定する。固定した後、位置検出用電極10の先端からストッパー10fまでの距離を測定する。図1の装置はこのような測定機構を備えることも可能である。これにより、より高い精度で側枝位置を検出することができる。
ストッパー10fは位置検出用電極10を被検査歯に固定できる大きさであれば良く、被検査歯よりも小さくて良い。位置検出用電極10の先端からストッパー10fまでの距離を測定するために、位置検出用電極10には目盛を付けても良いし、目盛の代わりに位置検出用電極10を色分けしても良い。
データ処理部12は、ストッパー10fを自動的に動かし、位置検出用電極10の先端からストッパー10fまでの距離を自動的に測定する機構を備えることも可能である。この自動的に測定する機構は、測定した側枝の位置を表示部7での表示により術者に知らせることができる。
図8の表示部7を使用する場合を説明する。位置検出用電極10を被検査歯の根管内に挿入して行くと、表示部7の横じま表示27の先端27aも、根尖位置23に向かって下降していくが、側枝がある位置で同先端27aは上昇に反転する。この反転を確認して側枝があることを検出することができる。さらに、この反転する位置が側枝が存在する位置として検出することができる。表示部7は、検出された側枝位置と、複数の測定された信号(In、Vn又はVdc)及び指示値の推移の波形を表示するための表示用データと、を選択的に或いは一括して表示することもできる。
図1などによる側枝の開口方向を検出する機能について説明する。データ処理部12は、側枝方向検出機構12dを備えている。図1の装置はさらに、位置検出用電極10と交換可能な方向検出用電極10’を備える。図9を参照する。図9(a)−(d)に示した方向検出用電極10’を用意する。方向検出用電極10’は、図9(b)に示すようにその針状の導電性金属部10aの、少なくとも根管内に挿入される部分の表面には絶縁膜10bが施され、表面が被覆されている。図9(b)、(c)に示すように、絶縁膜10bの少なくとも先端部の長軸方向には、導電性金属部10aの一部を露出させるための開口部10cが設けられている。金属部10aは、この開口部10cを介して、絶縁膜10bの外部環境と電気的に連結される。この開口部10cは、導電性金属部10aの先端部分の一点のみで構成されるのではなく、この開口部10cを介して絶縁膜10bの外部環境と電気的に連結可能な大きさを有する。
図9(a)に示すように、この方向検出用電極10’のハンドル部10dにはマーキング10eが表示される。マーキング10eは、ハンドル部10dを上部から見て、開口10eと同じ方向に配置される。
以下、方向検出用電極10’を側枝位置に配置する手順について説明する。
術者は、側枝を有する被検査歯24を検査することにより、例えば図8に示すような表示部7の「LC(Lateral Canal)」表示により、被検査歯24に側枝が存在すること、及び距離表示により側枝位置を確認することができる。
この距離表示は、仮に根尖3mm手前に側枝があった場合は丸印(図8では6個)により側枝の位置を表示することができる。この距離表示は、表示中央部の数値(3.0)と対応する。よって、方向検出用電極10’を根管内に挿入していき、横じま表示が数値3.0を指す位置まで方向検出用電極10’を挿入することにより、方向検出用電極10’の先端を側枝位置に配置することができる。
方向検出用電極10’は、図7(b)に示すような被検査歯に固定するためのストッパーを備えていても良い。例えば、位置検出用電極10がストッパー10fを備えている場合に、上述の方法で位置検出用電極10の先端からストッパー10fまでの距離を測定し、側枝位置を検出する。次に、位置検出用電極10を方向検出用電極10’に替える。そして、検出された側枝位置に基づいて方向検出用電極10’のストッパー10f’の位置を設定した後、方向検出用電極10’を根管内に挿入してストッパー10f’が被検査歯の上部に接触する位置に方向検出用電極10’を配置する。この手順により方向検出用電極10’の先端を側枝位置に配置することができる。これにより、より高い精度で側枝の開口方向を検出することができる。ここで、被検査歯の上部とは、歯の測定基準点gである。
ストッパー10f’は方向検出用電極10’を被検査歯に固定できる大きさであれば良く、被検査歯よりも小さくて良い。方向検出用電極10’のストッパー10f’の位置を設定するために、方向検出用電極10’には目盛を付けても良いし、目盛の代わりに方向検出用電極10’を色分けしても良い。
データ処理部12は、ストッパー10f’を自動的に動かし、検出された側枝位置に基づいて方向検出用電極10’のストッパー10f’の位置を設定する設定機構を備えることも可能である。データ処理部12はさらに、方向検出用電極10’を自動的に動かし、方向検出用電極10’を根管内に挿入してストッパー10f’が被検査歯の上部に接触する位置に方向検出用電極10’を配置する配置機構を備えることも可能である。
方向検出用電極10’を、上記の手順で検出された側枝位置に配置する。この位置で、電源1が、方向検出用電極10’及び口腔電極11の内の1つに、複数種類の測定用信号Pnを順次切替えて印加し、方向検出用電極10’の先端を根管内で長軸回転方向に回転させる。検出部25は、検出された側枝位置で方向検出用電極10’を長軸回転方向に回転させていく過程で、方向検出用電極10’と口腔電極11間で各測定用信号Pnに対応する各測定された電流を順次検出する。この位置で、方向検出用電極10’を回転させると、絶縁膜10bの開口部10cが、側枝の開口部に一致した時に、方向検出用電極10’と口腔電極11の間に流れる測定電流Inは大きくなる。一方、方向検出用電極10’を回転させ、絶縁膜10bの開口部10cが、側枝の開口部から外れた状態では、方向検出用電極10’と口腔電極11の間に流れる測定電流Inは小さくなる。この理由は、測定電流Inは、根尖孔と側枝を介して流れることから、方向検出用電極10’の開口部10cが側枝の開口部から外れると、開口部10cと側枝の開口部間の距離が長くなり、側枝を介して流れる電流が減少するからである。側枝方向検出機構12dは、検出された側枝位置で方向検出用電極10’が回転されるに従って変化する各測定用信号に対応する各測定された電流の値が最大になった際の方向検出用電極10’の開口部10cの方向を側枝の開口方向として検出することができる。
図10は、側枝の方向を検出したときの表示部7の表示例である。「LC」により側枝があったことを表示する。表示部7の右側の丸印(図10では6個)により側枝の高さを表示する。表示部7の左上の数値により角度(検出された側枝の開口方向)を表示する。分解能は例えば10度とすることができる。表示部7の上部の円を形作っている10個のバーにより大凡の角度を表示する。
側枝の位置に配置した方向検出用電極10’を回転させて、方向検出用電極10’と口腔電極11間に流れる測定電流Inが一番大きくなったときのマーキング10eの方向を、側枝の方向として確認することができる。
絶縁膜10bに設けた開口部10cは、小さい開口とすることにより側枝の開口方向を感度良く検出できるが、方向検出用電極10’を側枝位置に正確に合わせることが求められる。開口部10cを大きな開口とすれば、検出感度が下がるが、方向検出用電極10’を側枝位置に合わせる精度を下げることができる。開口部10cの形状は感度良く検出できれば円形でも非円形でも良い。方向検出用電極10’は、複数の測定された電流の波形を得るために先端が絶縁されている必要があるが、例えば先端から1mm〜5mm(2mmがより好ましい)を絶縁コーティングし、その絶縁コーティングの上2mm〜5mm(3mmがより好ましい)を開口にすることができる。3mmよりも上まで開口にしても良い。方向検出用電極10’は絶縁コーティングした後、一部を切り取って開口を形成したものを使用することができる。絶縁膜は、導電性金属の表面を酸化させて酸化膜にすることにより形成しても良い。
開口部10cの形状を横幅を狭くし、上下に長い長方形とすることにより、側枝の開口方向の検出感度を下げずに、方向検出用電極10’を側枝位置に合わせやすくできる。
図9(d)に示すように、開口部10cの外部表面を平坦にし、凹凸がない面とすることにより、方向検出用電極10’を根管内に挿入し回転させる際に、開口部10cが根管内壁に引っかかり難くすることができる。
側枝の方向を確認する上記手順は、自動化することが可能である。この自動化は、例えば方向検出用電極10’のハンドル部10d内に、方向検出用電極10’を回転させる回転機構10d1、測定電流の検出機構10d2及び測定電流が最も大きな値を示す回転角を検出する検出機構10d3を設けることにより、実現可能である。
次に、図1の側枝検出装置100aにおいて側枝の位置とその開口方向を検出する方法について説明する。ここで説明する第1の実施形態の方法は、側枝の位置を検出することと、側枝の開口方向を検出することと、を備える。
側枝位置検出について説明する。根管内に挿入される位置検出用電極10及び口腔内表面に配置される口腔電極11間に、複数種類の測定用信号Pnを切替えて印加する。複数種類の測定用信号Pnを印加している間、位置検出用電極10を根管内に挿入していき、根管内における位置検出用電極10の各挿入位置に対応して各測定用信号Pnに対応する各第1の測定された信号(In、Vn又はVdc)を検出する。位置検出用電極10は例えば針状の導電性金属部を有する電極が用いられる。測定用信号Pnとしては、例えば上述の各周波数の電圧が電源1から印加される。各第1の測定された信号は検出部25により検出される。検出部25で検出された各第1の測定された信号の値を、根尖位置検出機構12aが複数のモデル歯根尖位置測定データグループと比較する。比較の結果に基づいて、根尖位置検出機構12aが根尖位置を出力する。複数のモデル歯根尖位置測定データグループは上述のグループが用いられ、予め記憶されている。
次に、各第1の測定された信号の値を、電極位置検出機構12bが複数のモデル歯位置測定データグループと比較する。比較の結果、電極位置検出機構12bが、所定の関係にあるモデル歯位置測定データグループが示す根尖位置から位置検出用電極の先端までの距離を表示する指示値を出力する。複数のモデル歯位置測定データグループは上述のグループが用いられ、予め記憶されている。電極位置検出機構12bから出力された、位置検出用電極10が根管内に挿入されるに従って変化する指示値の推移の波形が凸状を示した際の各第1の測定された信号の値及び指示値を、側枝及び側枝位置検出機構12cが、第2の記憶部14に記憶する。
続いて、側枝位置検出を再度実施し、側枝及び側枝位置検出機構12cが、2回目の各第1の測定された信号の値及び指示値と、記憶された1回目の各第1の測定された信号の値及び指示値をそれぞれ比較する。比較の結果、少なくとも2つが一致した又は所定の誤差範囲に達したときに、側枝及び側枝位置検出機構12cが、位置検出用電極を止めて位置検出用電極の先端の位置を測定し、測定した結果を側枝の位置として出力する。
側枝方向検出について説明する。上述の側枝位置検出後、位置検出用電極10を方向検出用電極10’に替え、方向検出用電極10’及び口腔電極11間に、複数種類の測定用信号Pnを順次切替えて印加する。複数種類の測定用信号Pnを印加している間、上述の側枝位置検出で検出された側枝位置で方向検出用電極の先端を長軸回転方向に回転させ、各測定用信号に対応する各第2の測定された信号を検出する。測定用信号Pnとしては、例えば上述の各周波数の電圧が電源1から印加される。方向検出用電極10’は上述の電極が用いられる。各第2の測定された信号は検出部25により検出される。側枝方向検出機構12dが、側枝位置で方向検出用電極10’が回転されるに従って変化する、検出部25で検出された各第2の測定された信号の値が最大になった際の方向検出用電極の開口部の方向を側枝の開口方向として出力する。
位置検出用電極の先端の位置を測定することは、位置検出用電極のストッパー10fを被検査歯の上部まで下ろして位置検出用電極10を固定した後、位置検出用電極10の先端からストッパー10fまでの距離を測定することを備えることができる。図1の装置が測定機構を備える場合、測定機構がこの測定を行うことができる。
ここで説明される方法は、例えばファームウェア、ソフトウェアまたはこれらの組み合わせで実装することができる。ファームウェア、ソフトウェアまたはこれらの組み合わせで実装される場合には、本方法の機能は、ファームウェア、ソフトウェアまたはこれらの組み合わせの、コンピュータに実行させるためのプログラムとしてコンピュータ可読記録媒体上に記録されることができる。
図11を参照して、第2の実施形態の側枝検出装置100bを説明する。図11の装置は、方向検出用電極10’を保持するための電極保持機構15を備える点を除いて、図1の装置と同じである。図1の装置と同じ機能については説明を省略する。以下、方向検出用電極10’を使用して側枝の開口方向を検出する機能について説明する。
図11の側枝検出装置100bは、方向検出用電極10’を保持する電極保持機構15を備える。図12に電極保持機構15の例を示す。図12の電極保持機構15は、方向検出用電極10’を保持する保持部15aと、保持部15aに回転を伝える回転機構15bとを備えており、回転機構15bを回転させることにより方向検出用電極10’を長軸回転方向に回転させることができる。電極保持機構15は、方向検出用電極10’を機械的に滑らかに回転させ精度良く測定するための超低速回転を実現することができる。電極保持機構15は方向検出用電極10’を低速で機械的に滑らかに回転させることができれば良く、図12の電極保持機構15に限定されない。図12の電極保持機構15は、保持部15a、ギヤ15b1とモーター15b2からなる回転機構15b、電池15c、電源スイッチ15dを備える。電源スイッチ15dをONにすると、モーター15b2がギヤ15b1を回転させることにより、保持部15aに保持された方向検出用電極10’を回転させる。回転機構15bは、1〜2秒程度で一回転するようにモーターにギヤを用いて製作するかまたは、手動で板歯車の様な構造で、押す力を回転する力に変換して製作することも可能である。
方向検出用電極10’を、第1の実施形態と同様の手順で検出された側枝位置に配置する。検出部25は、検出された側枝位置で方向検出用電極10’を長軸回転方向に回転させていく過程で、方向検出用電極10’と口腔電極11間で各測定用信号Pnに対応する各測定された電流を順次検出する。この位置で、電源1が、方向検出用電極10’及び口腔電極11間に、複数種類の測定用信号Pnを順次切替えて印加し、電極保持機構15によって回転機構15bを回転させることにより方向検出用電極10’の先端を根管内で長軸回転方向に回転させる。側枝方向検出機構12dは、検出された側枝位置で電極保持機構15により方向検出用電極10’が回転される回転角度に対応して各測定用信号に対応する各測定された電流の値が最大になった際の方向検出用電極10’の開口部10cの方向を側枝の開口方向として検出することができる。電極保持機構15により機械的に滑らかな低速回転を実現できるため、より高い精度で側枝の開口方向を検出することができる。
図13は、側枝のある被検査歯に対して、超低速モーターを備える図12の電極保持機構15に方向検出用電極10’を保持して方向検出用電極10’を回転させたときの測定結果を示すグラフである。横軸はデータサンプル時間で1回が60msで、このグラフは約7.5秒間測定したデータである。縦軸は、500Hz及び2KHzの測定用信号Pnに対応する方向検出用電極10’と口腔電極11間で順次検出される複数の測定された電流を変換した直流電圧と、その直流電圧に基づく、方向検出用電極10’の開口部と側枝との距離を表示する指示値である。各測定用信号に対応する各測定された信号はIn、Vn、Vdcのいずれで表しても良い。図13では、時間軸の1〜30の間は方向検出用電極10’が停止している状態であり、時間軸の30付近からモーターの回転が始まっている。指示値が最小の時、直流電圧の値が最大になっているので、方向検出用電極10’の開口部10cが側枝位置と一致したことが判る。一方、指示値が最大の時、直流電圧の値が最小になっているので、方向検出用電極10’の開口部10cは側枝位置と反対側にあることが判る。また、停止状態の指示値と方向検出用電極10’を回転させたときの指示値の最小値がほぼ等しくなっている。電極保持機構15により機械的に滑らかな低速回転を実現できるため、図13に示すような指示値の推移の波形を得ることができる。図13は、各測定された電流Inを変換した直流電圧Vdcの値に基づいて、複数のモデル歯位置測定データグループと比較し、所定の関係にあるモデル歯位置測定データグループが示す指示値をグラフに表したものである。方向検出用電極10’の開口部と側枝との距離を表示する指示値が得られれば、複数のモデル歯位置測定データグループを用いなくても良い。方向検出用電極10’が停止状態の時の指示値とモーター1回転分のデータを比較すると側枝の角度が判る。すなわち、各測定用信号に対応する各測定された信号(In、Vn又はVdc)に基づく、方向検出用電極の開口部と側枝との距離を表示する指示値に基づいて側枝の開口方向を計算することができる。これにより、より高い精度で側枝の開口方向を検出することができる。さらに、方向検出用電極10’を回転させる前の指示値、指示値の最小値及び最大値に基づいて側枝の開口方向を計算することができる。方向検出用電極10’の開口位置方向を歯に挿入する時に固定すれば、側枝の開口方向を示す角度を計算することができる。このグラフでは、停止状態の時の指示値と回転させた時の指示値の最小値がほぼ同一なので、0度の位置に側枝があることが判る。
図14は被検査歯と方向検出用電極10’の断面図である。図14では、分かりやすくするために、被検査歯と方向検出用電極10’を別々に描いているが、方向検出用電極10’は被検査歯の根管内に挿入される。以下、方向検出用電極10’を根管内で回転させるときの様子を説明する。
図14では、方向検出用電極10’の開口部cと側枝がほぼ同じ方向にあるので電流が大きく流れることが判る。方向検出用電極10’を図14の回転方向に回すと側枝と方向検出用電極10’の開口部cが遠ざかり電流は徐々に小さくなる。方向検出用電極10’の開口部cと側枝が反対方向になったとき、電流は最小となり、以降、電流は徐々に大きくなる。方向検出用電極10’を挿入するとき、予め開口部c位置を固定(図14では頬側位置をマーキング10eに合わせている)すれば停止状態の指示値と、電流が最大になるとき及び最小になるときの指示値が判れば側枝の方向を示す角度を計算することができる。
表示部7は、検出された側枝の方向と、複数の測定された信号(In、Vn又はVdc)及び指示値の推移の波形を表示するための表示用データと、を選択的に或いは一括して表示することもできる。
次に、図11の側枝検出装置100bにおいて側枝の位置とその開口方向を検出する方法について説明する。ここで説明する第2の実施形態の方法では、第1の実施形態の方法と同じステップについては説明を省略する。
第2の実施形態の側枝の位置とその開口方向を検出する方法は、第1の実施形態で説明した方法の側枝方向検出に、方向検出用電極10’を保持する保持部15aと、保持部15aに回転を伝える回転機構15bとを備える電極保持機構15によって、回転機構15bを回転させることにより方向検出用電極10’を長軸回転方向に回転させるステップを追加している。例えば、方向検出用電極10’が方向検出用電極10’を被検査歯に固定するストッパー10f’を備える場合、このステップの前に次の2つのステップを追加することができる。1つは検出された側枝位置に基づいて方向検出用電極10’のストッパー10f’の位置を設定するステップである。もう1つは方向検出用電極10’を根管内に挿入していき、方向検出用電極10’のストッパー10f’が被検査歯の上部に接触する位置に方向検出用電極10’を配置するステップである。
第2の実施形態の側枝の位置とその開口方向を検出する方法は、方向検出用電極の開口部と側枝との距離を表示する指示値に基づいて側枝の開口方向を計算することができる。さらに、方向検出用電極10’を回転させる前の指示値、指示値の最小値及び最大値に基づいて側枝の開口方向を計算することができる。
ここで説明される方法は、例えばファームウェア、ソフトウェアまたはこれらの組み合わせで実装することができる。ファームウェア、ソフトウェアまたはこれらの組み合わせで実装される場合には、本方法の機能は、ファームウェア、ソフトウェアまたはこれらの組み合わせの、コンピュータに実行させるためのプログラムとしてコンピュータ可読記録媒体上に記録されることができる。
図15を参照して、図3−6、13に示したデータを測定した際の状況を説明する。図15は該測定に使用した測定回路である。側枝検出装置100a(図1)、100b(図11)から、位置検出用電極10又は方向検出用電極10’に500Hz、1KHz、2KHz、4KHz、8KHzの矩形波の電圧50mVを印加する。口腔電極11から出力される電流Inを直流電圧Vdcに変換して記憶するとともに、表示部7に表示させる。被検査歯24は、生理食塩水の中に立たせ、根管内に位置検出用電極10を挿入し、ハイトゲージ30のメモリを根尖位置で0になるように調整した。位置検出用電極10が根管入り口から挿入された距離はハイトゲージ30で読み取り、記憶されることができる。口腔電極から出力される測定された電流Inは、変換部5で直流電圧Vdcに変換され、記憶され、表示部7で表示した。被検査歯は、ドリルを用いて側枝孔を形成した。測定において必要に応じて、根尖孔及び側枝孔をロウで塞いだ。
以上のように、本発明によれば、より高い精度で側枝の位置を検出することができる。さらに本発明によれば、より高い精度で側枝の開口方向を検出することができる。