JP6035303B2 - ダイレクトダイオードレーザ加工装置及びこれを用いた金属板の加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ダイレクトダイオードレーザ加工装置及びこれを用いた金属板の加工方法に関する。
従来、板金加工用のレーザ加工装置として、炭酸ガス(CO)レーザ発振器やYAGレーザ発振器、ファイバレーザ発振器をレーザ光源として用いたものが知られている。ファイバレーザ発振器は、YAGレーザ発振器よりも光品質に優れ、発振効率が極めて高い等の利点を有する。このため、ファイバレーザ発振器を用いたファイバレーザ加工装置は、産業用、特に板金加工用(切断又は溶接等)に利用されている。
更に近年では、ダイレクトダイオードレーザ(DDL:Direct Diode Laser)発振器をレーザ光源として用いるDDL加工装置が開発されている。DDL加工装置は、複数のレーザダイオード(LD:Laser Diode)を用いて多波長(multiple-wavelength)のレーザ光を重畳し、伝送ファイバを用いて加工ヘッドまで伝送する。そして、伝送ファイバの端面から射出されたレーザ光は、コリメータレンズ及び集光レンズ等により被加工材上に集光されて照射される。
ところで、板金加工用のレーザ加工装置においては、厚板に対してもより高速に切断加工を行えることが要求される。このため、特許文献1では、多波長のレーザ光を色消し機能を持たない集光レンズで集光し、色収差の影響により同一光軸上の異なる位置にフォーカスして被加工物に照射して、かつ、レーザ光を波長の短い順に繰り返して点灯させることにより、厚物材料に対しても高性能の加工を可能としている。
特開2008−44000号公報
しかしながら、特許文献1では、色消し機能を持たない合成石英製の集光レンズを用いたときに生じる色収差を利用しているが、色収差による多重焦点の間隔を積極的に大きくするものではない。
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、多波長のレーザ光を集光したときの色収差により生じる多重焦点の間隔を積極的に大きくすることができ、厚板の切断加工に適したビームを形成することができるダイレクトダイオードレーザ加工装置及びこれを用いた金属板の加工方法を提供することである。
本発明の一態様によれば、多波長のレーザ光を発振するレーザ発振器と、レーザ発振器により発振された多波長のレーザ光を伝送する伝送ファイバと、伝送ファイバにより伝送された多波長のレーザ光を平行光に変換するコリメータレンズと、コリメータレンズにより平行光に変換された多波長のレーザ光を集光して被加工材に照射する集光レンズとを備え、コリメータレンズ及び集光レンズの少なくともいずれか一方に、石英よりも波長分散の大きい材料を用いることにより、光軸上の異なる位置に複数の集光点を形成し、且つ複数の集光点の間隔を分散させるダイレクトダイオードレーザ加工装置及びこれを用いた金属板の加工方法が提供される。
本発明によれば、多波長のレーザ光を集光したときの色収差により生じる多重焦点の間隔を積極的に大きくすることができ、厚板の切断加工に適したビームを形成することができるダイレクトダイオードレーザ加工装置及びこれを用いた金属板の加工方法を提供することができる。
本発明の実施の形態に係るDDL加工装置の一例を示す斜視図である。 図2(a)は、本発明の実施の形態に係るレーザ発振器の一例を示す正面図である。図2(b)は、本発明の実施の形態に係るレーザ発振器の一例を示す側面図である。 本発明の実施の形態に係るレーザ発振器の一例を示す概略図である。 本発明の実施の形態に係るレーザ発振器の発振波長の一例を表すグラフである。 本発明の実施の形態に係るコリメータレンズ及び集光レンズの一例を示す概略図である。 各波長のd2に対するピーク強度を表すグラフである。 レンズの材料毎の焦点位置の変化を表すシミュレーション結果である。 レンズの材料の組み合わせ毎の焦点位置の変化を表すシミュレーション結果である。
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態に係るダイレクトダイオードレーザ(以下、「DDL」という)加工装置の全体構成を説明する。本発明の実施形態に係るDDL加工装置は、図1に示すように、多波長のレーザ光LBを発振するレーザ発振器11と、レーザ発振器11により発振されたレーザ光LBを伝送する伝送ファイバ(プロセスファイバ)12と、伝送ファイバ12により伝送されたレーザ光LBを高エネルギー密度に集光させて被加工材(ワーク)Wに照射するレーザ加工機13とを備える。
レーザ加工機13は、伝送ファイバ12から射出されたレーザ光LBをコリメータレンズ15で略平行光に変換するコリメータユニット14と、略平行光に変換されたレーザ光LBを、X軸及びY軸方向に垂直なZ軸方向下方に向けて反射するベンドミラー16と、ベンドミラー16により反射されたレーザ光LBを集光レンズ18で集光する加工ヘッド17とを備える。なお、図1では図示を省略するが、コリメータユニット14内には、コリメータレンズ15を光軸に平行な方向(X軸方向)に駆動するレンズ駆動部が設置されている。また、DDL加工装置は、レンズ駆動部を制御する制御部を更に備える。
レーザ加工機13は更に、被加工材Wが載置される加工テーブル21と、加工テーブル21上においてX軸方向に移動する門型のX軸キャリッジ22と、X軸キャリッジ22上においてX軸方向に垂直なY軸方向に移動するY軸キャリッジ23とを備える。コリメータユニット14内のコリメータレンズ15、ベンドミラー16、及び加工ヘッド17内の集光レンズ18は、予め光軸の調整が成された状態でY軸キャリッジ23に固定され、Y軸キャリッジ23と共にY軸方向に移動する。なおY軸キャリッジ23に対して上下方向へ移動可能なZ軸キャリッジを設け、当該Z軸キャリッジに集光レンズ18を設けることも出来る。
本発明の実施の形態に係るDDL加工装置は、集光レンズ18により集光されて最も小さい集光直径(最小集光直径)のレーザ光LBを被加工材Wに照射し、また同軸にアシストガスを噴射して溶融物を除去しながら、X軸キャリッジ22及びY軸キャリッジ23を移動させる。これにより、DDL加工装置は被加工材Wを切断加工することができる。被加工材Wとしては、ステンレス鋼、軟鋼、アルミニウム等の種々の材料が挙げられる。被加工材Wの板厚は、例えば0.1mm〜50mm程度である。
次に、図2及び図3を参照して、レーザ発振器11について説明する。レーザ発振器11は、図2(a)及び図2(b)に示すように、筐体60と、筐体60内に収容され、伝送ファイバ12に接続されているDDLモジュール10と、筐体60内に収容され、DDLモジュール10に電力を供給する電源部61と、筐体60内に収容され、DDLモジュール10の出力等を制御する制御モジュール62等が設けられている。また、筐体60の外側には、筐体60内の温度及び湿度を調整する空調機器63が設置されている。
DDLモジュール10は、図3に示すように、多波長(multiple-wavelength)λ,λ,λ,・・・,λのレーザ光を重畳して出力する。DDLモジュール10は、複数のレーザダイオード(以下、「LD」という)3,3,3,・・・3(nは4以上の整数)と、LD3,3,3,・・・3にファイバ4,4,4,・・・4を介して接続され、多波長λ,λ,λ,・・・,λのレーザ光に対してスペクトルビーム結合(spectral beam combining)を行うスペクトルビーム結合部50と、スペクトルビーム結合部50からのレーザ光を集光して伝送ファイバ12へ入射させる集光レンズ54とを備える。
複数のLD3,3,3,・・・3としては、各種の半導体レーザが採用可能である。LD3,3,3,・・・3の種類と数の組み合わせは特に限定されず、板金加工の目的に合わせて適宜選択可能である。LD3,3,3,・・・3の波長λ,λ,λ,・・・,λは、例えば1000nm未満で選択したり、800nm〜1000nmの範囲で選択したり、910nm〜950nmの範囲で選択したりすることができる。
多波長λ,λ,λ,・・・,λのレーザ光は、例えば、波長帯域毎に群(ブロック)管理されて制御される。そして、波長帯域毎に個別に出力を可変調節することができる。また、全波長帯域の出力を吸収率が一定となるよう調整することができる。
切断加工に際しては、LD3,3,3,・・・3を同時に動作させると共に、酸素、窒素等の適宜のアシストガスを焦点位置近傍へ吹き付ける。これにより、LD3,3,3,・・・3からの各波長のレーザ光が、相互に協働すると共に、酸素等のアシストガスとも協働してワークを高速で溶融する。また当該溶融ワーク材料がアシストガスにより吹き飛ばされてワークが高速で切断される。
スペクトルビーム結合部50は、ファイバ4,4,4,・・・4の射出端側を束ねて固定しファイバアレイ4とする固定部51と、ファイバ4,4,4,・・・4からのレーザ光を平行光にするコリメータレンズ52と、多波長λ,λ,λ,・・・,λのレーザ光を回折し光軸を一致させる回折格子(diffraction grating)53と、LD3,3,3,・・・3後端部に設けた反射面と共に共振器を構成する部分反射カプラ55を備える。なお、図3に示す部分反射カプラ55の位置は一例であり、これに特に限定されるものではない。
図4に示すように、レーザ発振器11は、多波長(図4では5つの波長λ1〜λ5)のレーザ光を発振する。このため、レーザ発振器11からのレーザ光をレンズにより集光すると色収差が生じる。そこで、本発明の実施の形態においては、色収差を積極的に利用すべく、コリメータレンズ15及び集光レンズ18の少なくともいずれかの材料を、石英よりも波長分散の大きい(換言すれば、多重焦点化の効果が大きい)材料を使用する。石英よりも波長分散の大きい材料としては、硫化亜鉛(ZnS)又はセレン化亜鉛(ZnSe)等が採用可能である。コリメータレンズ15及び集光レンズ18の少なくともいずれかの材料として、石英よりも波長分散の大きい材料を用いることにより、色収差の影響がより顕著になり、光軸上の多重焦点の間隔をより大きくすることができ、多重焦点を分散することができる。
なお、コリメータレンズ15及び集光レンズ18の材料としては、互いに同一材料であってもよく、異なる材料であってもよい。コリメータレンズ及び集光レンズ18の一方がZnS、ZnSeであれば、コリメータレンズ及び集光レンズ18がともに石英の場合に比べ、多重焦点化が可能である。
ここで、図5に示すように、伝送ファイバ12の射出端とコリメータレンズ15との距離をd0、コリメータレンズ15と集光レンズ18との距離をd1、集光レンズ18と加工点(集光点)Pとの距離をd2とする。例えば、波長が800nm〜840nmの範囲で、800nm、810nm、820nm、830nm、840nmの5つの波長の光が出力、結合されているとし、d0=97.8mm、d1=1500mmとする。この場合、波長800nm、810nm、820nm、830nm、840nmのd2はそれぞれ、134.2mm、135.2mm、136.1mm、137.0mm、137.8mmとなり、3.6mmの範囲内で、約0.9mm間隔の多重焦点が形成される。
また、例えば波長が960nm〜1000nmの範囲で、960nm、970nm、980nm、990nm、1000nmの5つの波長の光が出力、結合されているとし、d0=100.9mm、d1=1500mmとする。この場合、波長960nm、970nm、980nm、990nm、1000nmのd2はそれぞれ、130.4mm、131.4mm、132.3mm、133.2mm、134.0mmとなり、3.6mmの範囲内で、約0.9mm間隔の多重焦点が形成される。
<実施例>
次に、本発明の実施の形態に係るDDL加工装置の実施例を説明する。コリメータレンズ15として、曲率R=147.808mmのZnSeからなる平凸レンズを用い、集光レンズ18として、曲率R=221.711mmのZnSeからなる平凸レンズを用いるとする。また、レーザ発振器11では、波長が910nm〜950nmの範囲で、910nm、920nm、930nm、940nm、950nmの5つの波長の光が出力、結合されているとする。なおレーザ光は連続波を用いることができる。
例えばd0=100mm、d1=1500mmとすると、図6に示すように、波長910nm、920nm、930nm、940nm、950nmのd2はそれぞれ、131.9mm、132.9mm、133.8mm、134.7mm、135.5mmとなり、3.6mmの範囲内で、約0.9mm間隔の多重焦点が形成される。よって、例えば0.9mm〜3.6mm程度の板厚の被加工材Wの切断可能に好適である。
図6において、横軸はd2を示し、縦軸は各波長のレーザ光のピーク強度を示す。なお伝送ファイバから出射される各波長の光出力とBPPは同じとした。これより、d2方向(加工深さ方向)に各波長のピーク強度がシフトしていることが分かる。これは厚板切断に優位であることを示す。
なお上記において多波長のレーザ光の実質的なレイリー長(最も短い焦点距離のレーザ光のレイリー領域(当該レーザ光において、ビームウェストの上下のレイリー長でカバーされる領域)の最上端から、最も長い焦点距離のレーザ光のレイリー領域の最下端までの距離)はワークの板厚とほぼ等しいのが望ましい。
図7は、レンズの焦点距離(設計波長:1080nm)、配置は同条件時の材料毎の波長による焦点位置の変化についてのシミュレーション結果を示す。シミュレーションにおいて、コリメータレンズ15までの距離d0:100mm、コリメータレンズ15の焦点距離:100mm(設計波長が1080nmの平凸レンズ)、コリメータレンズ15と集光レンズ18の距離d1:1500mm、集光レンズ18の焦点距離:150mm(設計波長が1080nmの平凸レンズ)とした。縦軸には波長1nmによる焦点位置の変化を示す。横軸の「C」はコリメータレンズ15、「F」は集光レンズ18を示す。図7から、ZnS、ZnSeは石英より焦点間隔の広い多重焦点が形成されることが分かる。
図8に、図7と同条件の場合の材料の組み合わせによる焦点位置の変化についてのシミュレーション結果を示す。縦軸には波長1nmによる焦点位置の変化を示す。横軸の「C」はコリメータレンズ15、「F」は集光レンズ18を示す。図8から、コリメータレンズ15と集光レンズ18のいずれかにZnS、ZnSeを用いれば、石英より焦点間隔の広い多重焦点が形成されることが分かる。
以上説明したように、本発明によれば、コリメータレンズ15及び集光レンズ18の少なくともいずれか一方に、石英よりも波長分散の大きい材料を用いることにより、従来のようなレンズの曲率を特殊に変化させた多重焦点レンズを用いることなく光軸上の異なる位置に複数の集光点を形成し、且つ複数の集光点の間隔をより大きく分散させることができる。したがって、厚板に適したビームを形成することができ、厚板に対しても切断加工の高速化を図ることができる。
また、厚板の種類に応じて、コリメータレンズ15及び集光レンズ18の材料の組み合わせを替えることにより、複数の集光点の間隔を可変させることができ、加工対象の厚板に適したビームを形成することができる。
また、LD3,3,3,・・・3を同時に動作させると共に、酸素、窒素等の適宜のアシストガスを焦点位置近傍へ吹き付けることにより、高速切断が可能となる。
本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
10…DDLモジュール
11…レーザ発振器
12…伝送ファイバ(プロセスファイバ)
13…レーザ加工機
14…コリメータユニット
15,52…コリメータレンズ
16…ベンドミラー
17…加工ヘッド
18,54…集光レンズ
21…加工テーブル
22…X軸キャリッジ
23…Y軸キャリッジ
,3,3,・・・3…レーザダイオード(LD)
,4,4,・・・4…ファイバ
50…スペクトルビーム結合部
51…固定部
53…回折格子
55…部分反射カプラ
60…筐体
61…電源部
62…制御モジュール
63…空調機器

Claims (5)

  1. 板厚が0.9mm〜3.6mmの板金を切断加工するためのダイレクトダイオードレーザ加工装置であって、
    多波長のレーザ光を発振するレーザ発振器と、
    前記レーザ発振器により発振された多波長のレーザ光を伝送する伝送ファイバと、
    前記伝送ファイバにより伝送された多波長のレーザ光を平行光に変換するコリメータレンズと、
    前記コリメータレンズにより平行光に変換された多波長のレーザ光を集光して被加工材に照射する集光レンズと、を備え、
    前記コリメータレンズ及び前記集光レンズの少なくともいずれか一方に、石英よりも波長分散の大きい材料を用いることにより、光軸上の異なる位置に複数の集光点を形成し、且つ前記複数の集光点の間隔を分散させるダイレクトダイオードレーザ加工装置であって、
    最も短い焦点距離のレーザ光のレイリー領域の最上端から、最も長い焦点距離のレーザ光のレイリー領域の最下端までの距離はワークの板厚とほぼ等しい
    ダイレクトダイオードレーザ加工装置。
  2. 前記コリメータレンズ及び前記集光レンズの少なくともいずれか一方が、硫化亜鉛又はセレン化亜鉛からなる請求項1に記載のダイレクトダイオードレーザ加工装置。
  3. アシストガスを加工位置へ吹き付ける手段を有する請求項1乃至2の何れかに記載のダイレクトダイオードレーザ加工装置。
  4. 前記多波長のレーザ光の波長が800nm〜1000nmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のダイレクトダイオードレーザ加工装置。
  5. レーザ発振器からの多波長のレーザ光を重畳して出力し、スペクトルビーム結合されたレーザ光を集光して伝送ファイバへ入射させる請求項1乃至4の何れかに記載のダイレクトダイオードレーザ加工装置。
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