以下、本発明の一実施形態による動力伝達装置を備えた介護用ベッドについて、図面を参照して説明する。
図1に示したように、本実施形態における介護用ベッド1は、長手方向の寸法L及び幅方向の寸法Wを有している。長手方向寸法L及び幅方向寸法Wは、被介護者が横臥するベッド上面2を形成する上面形成部材3の長手方向寸法及び幅方向寸法に対応している。
上面形成部材3は、ベッド基台4の上方に配置されており、ベッド基台4には、上面形成部材3の少なくとも一部を水平方向に移動させるための駆動機構5が設けられている。
そして、本実施形態による介護用ベッド1においては、ベッド上面2が、全体として、幅方向Wにおいて下向きに湾曲した湾曲面で構成されている。この湾曲面は、長手方向に沿って延びる中心軸線を持つ仮想の円筒面の一部を構成する円弧面である。
図1及び図2に示したように、ベッド基台4に設けられた駆動機構5は、ロボットアーム6と、このロボットアームの先端部が選択的に接続される複数の駆動力入力ポート(被回転駆動体)7を備えている。複数の駆動力入力ポート7(7A、7B、7C、7D、7E)のそれぞれが、後述する上面形成部材3における互いに異なる移動動作に対応している。
図1及び図3に示したように、介護用ベッドの上面形成部材3は、長手方向に沿って、頭部領域8、肩部領域9、腰部領域10、及び足部領域11に区分されている。
上面形成部材3の頭部領域8は、一連一体の板状の方形部材12によって形成されている。
上面形成部材3の長手方向の中央部にあたる肩部領域9及び腰部領域10は、それぞれ、幅方向に延びる複数の可動細長片13を長手方向に並置して構成されている。
肩部領域9は、長手方向に沿って一つ置きに配置された複数の可動細長片13によって構成される肩Aグループと、肩Aグループに属する可動細長片13同士の間に配置された複数の可動細長片13によって構成される肩Bグループとから構成されている。
肩Aグループに属する複数の可動細長片13は、駆動機構5によって、上下方向及び水平方向に一体に駆動され、同様に、肩Bグループに属する複数の可動細長片13は、駆動機構5によって、上下方向及び水平方向に一体に駆動される。また、肩Aグループと肩Bグループとは、駆動機構5によって互いに独立に駆動することができる。
また、腰部領域10は、長手方向に沿って一つ置きに配置された複数の可動細長片13によって構成される腰Aグループと、腰Aグループに属する可動細長片13同士の間に配置された複数の可動細長片13によって構成される腰Bグループとから構成されている。
腰Aグループに属する複数の可動細長片13は、駆動機構5によって、上下方向及び水平方向に一体に駆動され、同様に、腰Bグループに属する複数の可動細長片13は、駆動機構5によって、上下方向及び水平方向に一体に駆動される。また、腰Aグループと腰Bグループとは、駆動機構5によって互いに独立に駆動することができる。
足部領域11は、右足に対応する部分と左足に対応する部分とから成る。右足に対応する部分は、長手方向に並置された一対の可動矩形片14によって構成されており、左足に対応する部分も、同じく長手方向に並置された一対の可動矩形片14によって構成されている。
足部領域11の右足に対応する部分及び左足に対応する部分は、それぞれ、駆動機構5によって中央の部分が押し上げられて、図1に示したように隆起して山形形状に変形する。これにより、被介護者の右足又は左足を、その膝裏から押し上げて屈曲させることができる。
次に、本実施形態による介護用ベッド1の駆動機構5の内部構造について説明する。
図4に示したように、駆動機構5は、上面形成部材3(の一部)がその上端に設けられた支持基部15を備えている。なお、図4においては、複数の可動細長片13から成る上面形成部材3(の一部)を模式的に一体物として示している。
支持基部15の下端部が、直動支持部材(リニアガイド)16で支持されており、これにより、支持基部15は、ベッド左右方向において水平方向に移動可能とされている。支持基部15を支持する直動支持部材16は、可動支持板17の上端に設けられている。可動支持板17は、上下方向に延設された一対の直動支持部材(リニアガイド)18によって、上下動可能に支持されている。
可動支持板17の一方の側端部にはラック19が上下方向に延設されており、このラック19にピニオン20が噛み合っている。このピニオン20は接続軸21の一端に設けられており、接続軸21の他端にはウォームギア22のホイールが設けられている。このウォームギア22のホイールは、ウォームギア22のウォームと噛み合っており、このウォームは、先端部が駆動力入力ポート7を形成する入力軸23に形成されている。この駆動力入力ポート7は、上面形成部材3を上下動させるための回転動力の入力部である。
支持基部15の下端部にはラック24が設けられており、このラック24にはピニオン25が噛み合っている。このピニオン25は接続軸26の上端に設けられており、接続軸26の下端にはべベルギア27が設けられている。このべベルギア27は、可動支持板17に回転可能に設けられたべベルギア28と噛み合っている。
可動支持板17に設けられたべベルギア28には、プーリ29が一体的に形成されており、このプーリ29にはベルト30が掛けられている。このベルト30は、他のプーリ31に掛けられており、このプーリ31は接続軸32の一端に設けられており、接続軸32の他端にはウォームギア33のホイールが設けられている。ウォームギア33のホイールは、ウォームギア33のウォームに噛み合っている。
ウォームギア33のウォームが形成された接続軸34の端部にはピニオン35が設けられており、このピニオン35は、上下方向に延設されたラック36に噛み合っている。このラック36は、上下方向に延設された直動支持部材(リニアガイド)37によって上下動可能に支持されている。この直動支持部材37には、ラック36と一体的に他のラック38が上下動可能に支持されており、このラック38がピニオン39と噛み合っている。
このピニオン39は入力軸40の一端に設けられており、この入力軸の他端は駆動力入力ポート7を形成している。この駆動力入力ポート7は、上面形成部材3を左右方向に水平移動させるための回転動力の入力部である。
次に、介護用ベッド1の上面形成部材3を上下動させる際の動作について、図5を参照して説明する。
上下動用の駆動力入力ポート7Bを回転させると、この回転動力がウォームギア22を介して接続軸21に伝達される。すると、接続軸21と一体にピニオン20が回転し、このピニオン20の回転により、ラック19が上下方向に移動する。ラック19は可動支持板17に固定されているので、ラック19と共に可動支持板17が上下方向に移動する。これにより、支持基部15と共に上面形成部材3が上下方向に移動する。
なお、可動支持板17と一体に接続軸34が上下に移動するので、ラック36も同時に上下に移動する。このとき、左右動用の駆動力入力ポート7Cが回転してしまうが、この左右動用の駆動力入力ポート7Cはフリーなので、回転しても問題ない。
また、ウォームギア22は出力側から回転させることができない構造であるため、上下動用の駆動力入力ポート7Bの印加トルクが除去されても、その時の姿勢を保持することができる。
次に、介護用ベッド1の上面形成部材3を左右方向に水平移動させる際の動作について、図6を参照して説明する。
左右動用の駆動力入力ポート7Cを回転させると、この回転力がラック38に伝達され、他方のラック36と共に上下方向に移動する。ラック36の上下動によってピニオン35が回転し、この回転力がウォームギア33を介してプーリ31に伝達される。
プーリ31が回転すると、ベルト30を介して同時に他方のプーリ29が回転する。これにより、プーリ29に一体に設けられたべベルギア28が回転し、このべベルギア28に噛み合ったべベルギア27が回転する。
べベルギア27が回転すると同時にピニオン25が回転し、このピニオン25の回転によりラック24が左右方向に移動する。その結果、支持基部15と共に上面形成部材3が左右方向に水平移動する。
なお、ウォームギア33は出力側から回転させることができない構造であるため、左右動用の駆動力入力ポート7Cの印加トルクが除去されても、その時の姿勢を保持することができる。
図7は、足部領域11を構成する可動矩形片14を下方から押し上げるための足部用の駆動機構を示している。この足部用の駆動機構においては、足部用の駆動力入力ポート7A(7)を回転させると、この駆動力入力ポート7Aが先端部に形成された入力軸41が回転する。
この入力軸41には、ウォームギア42を構成するウォームが形成されており、同じくウォームギア42を構成するホイールに動力が伝達される。ウォームギア42のホイールは接続軸43の一端に設けられており、この接続軸43の他端にはピニオン44が設けられている。
ピニオン44はラック45と噛み合っており、ラック45は可動支持板17の側端部に設けられている。可動支持板17は、上下方向に延設された一対の直動支持部材(リニアガイド)46によって、上下動可能に支持されている。
ピニオン44の回転によってラック45が上下動し、これにより可動支持板17が上下動する。可動支持板17の上端部には押上部材47の下端部が固定されており、この押上部材47の上端部によって、可動矩形片14がその下方から押し上げられる。
次に、ロボットアーム6及び駆動力入力ポート7を含んで構成される動力伝達装置50について説明する。この動力伝達装置50は、介護用ベッドの駆動機構の一部を構成している。
図8及び図9に示したように、ロボットアーム6は基端部6aと先端部6bを有しており、ロボットアーム6の基端部6aは、ロボット主軸51の上端部に装着されている。ロボットアーム6の先端部6bには、回転駆動体52が回転可能に設けられている。
ロボットアーム6は、基端側リンク部材53及び先端側リンク部材54を備えており、基端側リンク部材53の基端部がロボットアームの基端部6aを構成し、先端側リンク部材54の先端部がロボットアーム6の先端部6bを構成している。基端側リンク部材53の先端部と先端側リンク部材54の基端部とが、互いに回転可能に接続されている。
図10に示したように、ベッド基台4の内部には、ロボット主軸51用の駆動モータ55が設けられており、この駆動モータ55によってロボット主軸51が、第1軸線L1周りに回転駆動される。
基端側リンク部材53の内部には、先端側リンク部材53用の駆動モータ56が設けられており、この駆動モータ56によって先端側リンク部材54が第2軸線L2周りに回転駆動される。
先端側リンク部材54の内部には、回転駆動体52用の駆動モータ57が設けられており、この駆動モータ57によって回転駆動体52が第3軸線L3周りに回転駆動される。
なお、第1軸線L1、第2軸線L2、及び第3軸線L3は、互いに平行である。
各駆動モータ55、56、57は、ロボット制御部58によってその回転が制御される。ロボット制御部58には、被介護者に対してその人に固有の床擦れ防止動作を実現できるように、当該介護者に固有のプログラムを記憶させることができる。
図11に示したように、駆動モータ57側のべベルギア59と回転駆動体52側のべベルギア60とが噛み合っている。回転駆動体52側のべベルギア60の中央部にはスプライン溝を含む貫通孔61が形成されており、この貫通孔61に回転駆動軸62が、第3軸線L3に沿って移動可能に挿通されている。この回転駆動軸62は、べベルギア60の貫通孔に対してスプライン嵌合しており、これにより回転駆動軸62は、べベルギア60に対して、第3軸線L3周りの回転が阻止されると共に、第3軸線L3に沿った直動動作が許容される。
回転駆動軸62の一方の端部には回転駆動体52が装着されており、回転駆動軸62の他方の端部には、エアシリンダ63のピストン64の先端部が、ベアリング65を介して接続されている。エアシリンダ63を駆動してピストン64を進出させることにより、回転駆動軸62と共に回転駆動体52が第3軸線L3に沿って前進する。
駆動モータ57を駆動すると、その回転駆動力が、駆動モータ57側のべベルギア59から回転駆動体52側のべベルギア60に伝達される。回転駆動体52の回転駆動軸62とべベルギア60とはスプライン嵌合しているので、べベルギア60の回転駆動力が回転駆動軸62に伝達され、回転駆動軸62と一体に回転駆動体52が回転する。
次に、図12乃至図14を参照して、ベッド基台4側の駆動力入力ポート7とロボットアーム6側の回転駆動体52とを接続するための接続機構について説明する。
エアシリンダ63を駆動して、ロボットアーム6先端の回転駆動体52を、ベッド基台4側の駆動力入力ポート7に接続する際には、回転駆動体52の駆動力入力ポート7への位置決め誤差や、回転駆動体52及び駆動力入力ポート7の機械公差分のズレ(偏心など)を吸収する必要があり、これをカップリングで行う必要がある。
そこで、本実施形態においては、図12及び図13に示したように、オルダムカップリングを採用することにより、このズレを吸収するようにしている。即ち、オルダムカップリングにおいては、そのハブ66、67の突起がスライダ68の溝を滑ることでズレが吸収される(図14参照)。なお、ハブ66及びスライダ68が回転駆動体52を構成し、ハブ67が駆動力入力ポート7を構成している。
ここで、本実施形態における動力伝達装置50においては、駆動側と被駆動側との脱着のため、スライダ68は、ロボットアーム6側のハブ66に水平方向をフリーにして取り付け、カップリング時の軸方向の衝撃を緩和するために、ロボットアーム6側のハブ66とスライダ68との間にバネ69を介装している。
次に、本実施形態による介護用ベッド1の動力伝達装置50の動作例について説明する。
ロボットアーム6を駆動してアーム先端の回転駆動体52を、所望の駆動力入力ポート7に対して向き合った状態となるように接近させて位置決めする。ロボットアーム6先端にあるエアシリンダ63を駆動して、第3軸線L3に沿って回転駆動体52を駆動力入力ポート7に向けて前進させ、両者を噛み合わせる。このとき、エアシリンダ63のストローク長を検出して、回転駆動体52と駆動力入力ポート7とが正常に噛み合ったことを確認する。
続いて、ロボットアーム6先端にある駆動モータ57を駆動して、回転駆動体52を回転させる。回転駆動体52は駆動力入力ポート7に接続されているので、回転駆動体52からの回転力が駆動力入力ポート7に伝達される。その結果、当該駆動力入力ポート7に対応する上面形成部材3の部位が所定の動作を行う。
所定量だけ駆動力入力ポート7を回転させたら、駆動モータ57を停止する。エアシリンダ63を駆動して回転駆動体52を後退させて、回転駆動体52と駆動力入力ポート7とを切り離す。ロボットアーム6を駆動して、回転駆動体52を次の駆動力入力ポート7に移動して位置決めする。
次に、本実施形態による介護用ベッドの動作例について説明する。
ロボットアーム6先端の回転駆動体52を、1番目の駆動力入力ポート7A(右膝に対応)に接続し、駆動モータ57を回転させる。これにより、回転駆動体52からの回転駆動力が、介護用ベッド1の上面形成部材3の右膝に対応する部位の駆動系に伝達される。その結果、右膝に対応する部位が山形形状に変形する。
駆動モータ57の回転を止めた後、エアシリンダ63を駆動して動力接続部(回転駆動体52及び駆動力入力ポート7)を切り離し、ロボットアーム6を駆動して、2番目の駆動力入力ポート7B(腰Aグループ上下に対応)にロボットアーム6先端の回転駆動体52を接続する。
この状態で駆動モータ57を回転させる。これにより、回転駆動体52からの回転駆動力が、介護用ベッド1の上面形成部材3の腰Aグループに対応する部位の上下駆動系に伝達される。その結果、腰Aグループに対応する部位が上昇する。
駆動モータ57の回転を止めた後、エアシリンダ63を駆動して動力接続部を切り離し、ロボットアーム6を駆動して、3番目の駆動力入力ポート7C(腰Aグループ水平に対応)にロボットアーム6先端の回転駆動体52を接続する。
この状態で駆動モータ57を回転させる。これにより、回転駆動体52からの回転駆動力が、介護用ベッド1の上面形成部材3の腰Aグループに対応する部位の水平駆動系に伝達される。その結果、腰Aグループに対応する部位が水平動作する。
駆動モータ57の回転を止めた後、エアシリンダ63を駆動して動力接続部を切り離し、ロボットアーム6を駆動して、4番目の駆動力入力ポート7D(肩Aグループ上下に対応)にロボットアーム6先端の回転駆動体52を接続する。
この状態で駆動モータ57を回転させる。これにより、回転駆動体52からの回転駆動力が、介護用ベッド1の上面形成部材3の肩Aグループに対応する部位の上下駆動系に伝達される。その結果、肩Aグループに対応する部位が上昇する。
駆動モータ57の回転を止めた後、エアシリンダ63を駆動して動力接続部を切り離し、ロボットアーム6を駆動して、5番目の駆動力入力ポート7E(肩Aグループ水平に対応)にロボットアーム6先端の回転駆動体52を接続する。
この状態で駆動モータ57を回転させる。これにより、回転駆動体52からの回転駆動力が、介護用ベッド1の上面形成部材3の肩Aグループに対応する部位の水平駆動系に伝達される。その結果、肩Aグループに対応する部位が水平動作する。
駆動モータ57の回転を止めた後、エアシリンダ63を駆動して動力接続部を切り離し、ロボットアーム6を駆動して、3番目の駆動力入力ポート7C(腰Aグループ水平に対応)にロボットアーム6先端の回転駆動体52を接続する。
この状態で駆動モータ57を回転させる。これにより、回転駆動体52からの回転駆動力が、介護用ベッド1の上面形成部材3の腰Aグループに対応する部位の水平駆動系に伝達される。その結果、腰Aグループに対応する部位が、さらに水平動作する。
駆動モータ57の回転を止めた後、エアシリンダ63を駆動して動力接続部を切り離し、ロボットアーム6を駆動して、5番目の駆動力入力ポート7E(肩Aグループ水平に対応)にロボットアーム6先端の回転駆動体52を接続する。
この状態で駆動モータ57を回転させる。これにより、回転駆動体52からの回転駆動力が、介護用ベッド1の上面形成部材3の肩Aグループに対応する部位の水平駆動系に伝達される。その結果、肩Aグループに対応する部位が、さらに水平動作する。
以上のようにロボットに教示して、被介護者に合った床ずれ防止動作をプログラミングする。上記の動作例は、肩部と腰部の体幹を左にずらす場合であるが、さらにこれから右に体幹をずらし換えるには、上記の手順を逆にして、一旦体幹を真っ直ぐに戻し、さらに左膝に対応する駆動力入力ポートを選択して体位変更を行う。
なお、上下動作の上と下の方向、及び水平動作の右方向と左方向の切換えは、駆動モータ57の正転・逆転で切り替える。
以上述べたように、本実施形態による動力伝達装置50を備えた介護用ベッド1によれば、被介護者の体をベッド上面2の湾曲面で下から支持した状態で、被介護者の体を水平方向に移動させるようにしたので、被介護者の体を自然な状態で優しくずらしていくことができるので、体幹のベッドへの重心点を変えることができ、結果的に自然な状態で体幹の優しい回転も期待できる。これにより、寝返り動作に近い自然な動きを実現して、体位変更時の被介護者の体への負担を極力抑制しつつ、床擦れを防止することができる。
また、ロボット制御部58に予め組み込まれたプログラムによってロボットアーム6を駆動して、所定の床擦れ防止動作を自動的に行うようにしたので、深夜などに介護者が定期的に作業を行う必要がなく、介護者の精神的・肉体的な負担が解消され、被介護者にとっても、介護者に対する精神的な負担から解放される。
また、ロボットアーム6の位置決めにより、共通の回転駆動体52によって、複数の駆動力入力ポート7へ選択的に回転駆動力を伝達するようにしたので、複数の異なる動作を実現するための駆動源が一つで済み、構成を簡素化することができる。
また、ロボットへの教示内容を変更することにより、駆動力の供給点(駆動力入力ポート7)の指定順序(シーケンス)を容易に変更することができるので、複数の異なる動作を実現する上での柔軟性を高めることができる。
また、複数の駆動力入力ポート7に対する動力伝達の切替え機能を、ロボットアーム6自体が果たしているので、従来のような動力伝達先の切替えのためのクラッチ機構を不要とすることができる。
次に、上記実施形態による介護用ベッド1の一変形例としては、肩部領域9及び腰部領域10の部分の上面形成部材3の左右方向への移動を、水平方向ではなく、上面形成部材3の湾曲面(ベッド上面2)に沿って行うようにしても良い。
具体的には、図15に示したように、上端に上面形成部材3が設けられた支持基部15の下端部に、上面形成部材3の湾曲面と同じ曲率を持つ湾曲ラック24Aを設ける。この湾曲ラック24Aには、接続軸26Aの上端に設けられたべベルギア48が噛み合っている。
支持基部15の下端部は、上面形成部材3の湾曲面(ベッド上面2)と同じ曲率で湾曲しており、例えば可動支持板17の上端に設けた複数のローラ部材(図示せず)によって、支持基部15の下端部をその湾曲面に沿って移動可能に支持する。
この変形例においては、べベルギア48を回転させることにより、上面形成部材3の湾曲面(ベッド上面2)に沿ってラック24Aが左右方向に移動する。これにより、上面形成部材3のベッド上面2が、その湾曲面に沿って左右方向に移動する。
上記の通り本変形例においては、上面形成部材3のベッド上面2を、その湾曲面に沿って左右方向に移動するようにしたので、被介護者の体をベッド上面2の湾曲面で下から支持した状態で、局所的な応力の発生を抑制しつつ、被介護者の体をより一層自然な状態で回転させながら、優しくずらしていくことができる。これにより、寝返り動作により近い自然な動きを実現して、体位変更時の被介護者の体への負担を極力抑制しつつ、床擦れを防止することができる。
上記実施形態の他の変形例としては、ロボットアーム6を、基端部6a及び先端部6bを含む1本のリンク部材によって構成することもできる。即ち、図16及び図17に示したように、1本のリンク部材49の基端部がロボット主軸51の上端部に装着されており、同リンク部材49の先端部に回転駆動体52が設けられている。
また、複数の駆動力入力ポート7は、ロボット主軸51の回転軸線(第1軸線L1)を中心とした仮想円上に配置されている。この構成においては、ロボット主軸51の回転によってロボットアーム6が旋回し、ロボットアーム6の先端部の回転駆動体52を所望の駆動力入力ポート7の正面に位置決めすることができる。
なお、本変形例においても、回転駆動体52と駆動力入力ポート7との接続機構は、上述した実施形態と同様である。
上記実施形態の他の変形例としては、図18に示したように、駆動力入力ポート7において、十字状の接続用凹部7aを形成すると共に、回転駆動体52において、十字状の接続用凸部52aを形成する。接続用凹部7aと接続用凸部52aは、互いに緩やかに嵌り合う寸法及び形状を有している。
また、図18に示したように接続用凸部52aは、先細形状を有しており、一方、接続用凹部7aは、接続用凸部52aの先細形状に対応する傾斜形状を有している。
この接続方式においては、駆動力入力ポート7に形成された接続用凹部7aに対して、その正面から回転駆動体52の接続用凸部52aを嵌め入れる。このとき、接続用凸部52aの先細形状と接続用凹部7aの傾斜形状とが係合することにより、回転駆動体52の駆動力入力ポート7への位置決め誤差等を吸収する方向への位置決め機能が発揮され、自然な嵌合を達成することができる。
上記実施形態の他の変形例としては、回転駆動体52と駆動力入力ポート7との接続方式に関して、それらの接続を、回転軸線(第3軸線L3)に直交する方向に沿って両者を接近させて接続するように構成しても良い。
具体的には、図19に示したように、駆動力入力ポート7において、その直径方向に沿って接続用凹部7aを形成すると共に、回転駆動体52において、その直径方向に沿って接続用凸部52aを形成する。接続用凹部7aと接続用凸部52aは、互いに緩やかに嵌り合う寸法及び形状を有している。
この接続方式においては、図19に示したように駆動力入力ポート7に形成された接続用凹部7aに対して、その側面から回転駆動体52の接続用凸部52aを嵌め入れることができる。このため、駆動力入力ポート7への接続に際して、回転駆動体52をその回転軸線(第3軸線L3)方向に進出させる必要がなく、エアシリンダ63等を省略して構造を簡素化することができる。
上記実施形態の他の変形例としては、2台の介護用ベッド1の複数の駆動力入力ポート7を、共通のロボットアーム6の回転駆動体52によって選択的に駆動するように構成しても良い。
即ち、本変形例においては、図20に示したように、介護用ベッド1の上面形成部材3と、その駆動機構(ロボットアーム部分を除く)とが、それぞれ二つずつ配置されている。ロボット主軸51が垂直方向に配置されており、各駆動力入力ポート7も、べベルギア70を介して垂直方向に配置されている。
そして、本変形例においては、ロボットアーム6を水平方向に回転駆動して所望の駆動力入力ポート7に位置決めすることにより、一方の介護用ベッド1の複数の駆動力入力ポート7と、他方の介護用ベッド1の複数の駆動力入力ポート7とを、共通のロボットアーム6の回転駆動体52によって選択的に回転駆動することができる。
上記実施形態の他の変形例としては、ロボットアーム6先端の回転駆動体52を進退させるための機構として、アーム先端にエアシリンダを設ける機構に代えて、ロボット主軸51をその回転軸線に沿って移動させる機構を設けて、ロボット主軸51の進出動作によってロボットアーム6全体を動かすようにしても良い。
上記実施形態の他の変形例としては、回転駆動体52と駆動力入力ポート7との接続機構に関して、回転駆動体52を駆動力入力ポート7に対して進退駆動する方式に代えて、駆動力入力ポート7側にエアシリンダ等を設け、回転駆動体52に対して駆動力入力ポート7を進退駆動するように構成することもできる。
上記実施形態の他の変形例としては、動力接続部(駆動力入力ポート7及び回転駆動体52)の接続方式に関して、上述したように凹部と凸部とを嵌合させる方式に代えて、ロボットアーム6先端の回転駆動体52に摩擦板を設けると共に、駆動力入力ポート7にも摩擦板を設けても良い。
この変形例においては、回転駆動体52を回転させながら駆動力入力ポート7に押し付けることにより、両方の摩擦板を係合させて接続状態を達成する。このようにすれば、接続時に摩擦板同士の間に滑りがあるので、動力の伝達が滑らかになる。このため、上面形成部材3の動作も滑らかとなり、被介護者への負荷をより一層軽減することができる。
また、動力接続部(駆動力入力ポート7及び回転駆動体52)の他の接続方式としては、回転駆動体52と駆動力入力ポート7とを磁力により接続する方式を採用しても良い。