JP6032303B2 - 溶媒抽出方法、クラッド発生防止方法 - Google Patents
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Description
本発明に係る溶媒抽出方法は、高分子凝集剤を含有する硫酸水溶液と有機抽出剤とを混合させて、その硫酸水溶液に含まれる金属イオンを有機抽出剤中に抽出する金属の溶媒抽出方法である。具体的に、本発明に係る溶媒抽出方法は、金属イオンを含む硫酸水溶液に活性炭を接触させた後に、その硫酸水溶液と有機抽出剤とを混合させる。つまり、溶媒抽出処理の対象溶液である硫酸水溶液に対して活性炭を用いた処理を前処理として行うことを特徴としている。
図1に示すスカンジウム回収プロセスでは、スカンジウム含有溶液として、ニッケル酸化鉱を高温高圧下で硫酸により浸出して、得られた浸出液に対して中和処理、硫化処理を経て得られた硫化後液(金属としてスカンジウムを含有する硫酸水溶液)を用い、この溶液からスカンジウムを回収する。
ニッケル酸化鉱の湿式製錬工程S1では、ニッケル酸化鉱に対して浸出処理を施し、得られた浸出液に対して中和処理、硫化処理を経て硫化後液を得る。具体的には、図1に示すように、ニッケル酸化鉱の湿式製錬工程S1は、ニッケル酸化鉱を高温高圧下で硫酸により浸出して浸出スラリーを得る浸出工程S11と、浸出スラリーから浸出液と浸出残渣とに固液分離する固液分離工程S12と、浸出液に中和剤を添加して不純物を含む中和澱物と中和後液とを得る中和工程S13と、中和後液に硫化剤を添加してニッケル硫化物と硫化後液とを得る硫化工程S14とを有する。
浸出工程S11は、例えば高温加圧容器(オートクレーブ)等を用いて、ニッケル酸化鉱のスラリーに硫酸を添加するとともに高圧蒸気と高圧空気を供給して、240℃〜260℃の温度下で攪拌処理を施し、ニッケルやスカンジウムを含有する浸出液とヘマタイトを含む浸出残渣とからなる浸出スラリーを生成させる工程である。ニッケル酸化鉱としては、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱が挙げられる。これらのニッケル酸化鉱には、スカンジウムが含まれている。
固液分離工程S12では、浸出工程S11にて生成した浸出スラリーを多段洗浄し、ニッケルやスカンジウムを含む浸出液と、ヘマタイトである浸出残渣とを分離する。固液分離工程S12では、浸出スラリーを洗浄液と混合させた後、シックナー等の固液分離装置を用いて固液分離処理を施す。具体的には、先ず、スラリーが洗浄液により希釈され、次に、スラリー中の浸出残渣がシックナーの沈降物として濃縮される。
中和工程S13は、浸出液に中和剤を添加してpHを調整し、不純物元素を含む中和澱物と中和後液とを得る工程である。この中和工程S13における中和処理により、ニッケルやコバルト、スカンジウム等の有価金属は中和後液に含まれるようになり、アルミニウムをはじめとした不純物の大部分が中和澱物となる。
硫化工程S14は、得られた中和後液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加してニッケル硫化物と、硫化後液とを得る工程である。この硫化工程S14における硫化処理により、ニッケル、コバルト、亜鉛等は硫化物となって回収され、スカンジウム等は硫化後液に残留することになる。したがって、このニッケル酸化鉱の湿式製錬プロセスにおける硫化処理により、ニッケルとスカンジウムとを効果的に分離することができる。
イオン交換工程S2では、上述したようにニッケル酸化鉱の湿式製錬工程S1により得られた硫化後液(スカンジウムを含有する硫酸溶液)に対してイオン交換処理を施すことによって、不純物であるアルミニウムやクロム等を除去して溶液中のスカンジウムを濃縮させる。これにより、高純度のスカンジウムをより効率的に回収することができる。イオン交換工程S2における処理としては、特に限定されないが、キレート樹脂を使用したイオン交換処理が挙げられる。
吸着工程S21では、硫化後液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムをキレート樹脂に吸着させる。キレート樹脂としては、例えば、イミノジ酢酸を官能基とする樹脂を用いることができる。
アルミニウム除去工程S22では、スカンジウムを吸着したキレート樹脂に0.1N以下の硫酸を接触させ、キレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去する。なお、アルミニウムを除去する際、pHを1以上2.5以下の範囲に維持することが好ましい。
スカンジウム溶離工程S23では、アルミニウム除去工程S22を経たキレート樹脂に0.3N以上3N未満の硫酸を接触させ、スカンジウム溶離液を得る。スカンジウム溶離液を得るに際して、溶離液に用いる硫酸の規定度を0.3N以上3N未満の範囲に維持することが好ましく、0.5N以上2N未満の範囲に維持することがより好ましい。
クロム除去工程S24では、スカンジウム溶離工程S23を経たキレート樹脂に3N以上の硫酸を接触させ、キレート樹脂に吸着したクロムを除去する。クロムを除去する際に、溶離液に用いる硫酸の規定度が3Nを下回ると、クロムが適切にキレート樹脂から除去されないため、好ましくない。
溶媒抽出工程S3では、イオン交換工程S2における処理を経て得られたスカンジウム溶離液(スカンジウムや微量の不純物を含有する硫酸水溶液)を抽出剤に接触させ、スカンジウム溶離液に微量含まれる不純物を抽出液中に抽出し、得られた抽出液に逆抽出剤を加えることで不純物を含む逆抽出物を得てスカンジウムから分離する。このように、溶媒抽出処理を行うことで、スカンジウム溶離液に含まれるスカンジウムの純度をよりいっそう高めることができる。
前処理工程S31では、イオン交換工程S2を経てスカンジウムが濃縮された溶液を活性炭に接触させることによって活性炭処理を施す。
抽出工程S32では、前処理工程S31にて活性炭と接触させて活性炭処理を行った溶液と、抽出剤を含む有機溶媒(有機抽出剤)とを混合させて抽出処理を施す。より具体的には、活性炭処理後のスカンジウムを含有した溶液と抽出剤を含む有機溶媒とを混合して、スカンジウム以外の不純物元素を選択的に抽出し、不純物元素を含有する抽出後有機溶媒と、スカンジウムの純度を高めた抽残液とを得る。
必須の態様ではないが、不純物を抽出させた有機溶媒中にスカンジウムが僅かに共存する場合には、抽出液を逆抽出する前に、その有機溶媒(有機相)に対してスクラビング(洗浄)処理を施し、スカンジウムを水相に分離させて抽出剤から回収することが好ましい(スクラビング工程S33)。
逆抽出工程S34では、不純物元素を抽出した有機溶媒からその不純物元素を逆抽出する。この逆抽出工程S34では、有機溶媒に、水又は低濃度の酸溶液を逆抽出溶液(逆抽出始液)として用いて混合することで抽出時における反応とは逆の反応を進行させて不純物元素を逆抽出し、その不純物元素を含む逆抽出後液(逆抽出物)を得る。
焙焼工程S4では、溶媒抽出工程S3を経て得られたスカンジウムを含有する抽残液を用いて、スカンジウムをシュウ酸塩(シュウ酸スカンジウム)とし、それを焙焼することで酸化スカンジウムとしてスカンジウムを回収する。このようにスカンジウムをシュウ酸塩とすることによって、濾過性等のハンドリング性を向上させることができ、スカンジウムを効率的に回収することができる。なお、スカンジウムの回収方法としては、このような処理に限定されない。
シュウ酸化工程S41では、溶媒抽出工程S3を経て得られた溶液にシュウ酸溶液を添加してスカンジウムのシュウ酸塩を晶析させる。
焙焼工程S42では、シュウ酸化処理により得られたシュウ酸スカンジウムの結晶を焙焼することで酸化スカンジウムとする。焙焼処理は、得られたシュウ酸スカンジウムの結晶を水で洗浄し、乾燥させた後に焙焼する処理である。この焙焼処理を経ることで、スカンジウムを酸化スカンジウムとして回収することができる。
ニッケル酸化鉱のスラリーをオートクレーブに装入し、硫酸を添加して浸出処理を施し、得られた浸出液に対して中和処理、硫化処理を施して、ニッケル硫化物とスカンジウムを含有する硫化後液を得た。さらに、硫化後液に対して公知のイオン交換処理、濃縮処理を経ることによってスカンジウム濃縮液を得た。
実施例1と同様にして得られたスカンジウム濃縮液80mlに対し、アミン系抽出剤(Primene JM−T:5体積%、シェルゾールA150:95体積%)を20ml加えて混合させて溶媒抽出処理を行った。すなわち、比較例1では、実施例1のように溶媒抽出処理に先立って活性炭を詰め込んだカラムに通液させる処理を行わなかった。
Claims (2)
- ニッケル酸化鉱の湿式製錬処理により得られ、高分子凝集剤を含み、スカンジウムを含有する硫化後液から該スカンジウムを回収するスカンジウムの回収方法であって、
前記硫化後液をイオン交換樹脂に通液するイオン交換工程と、
前記イオン交換樹脂から溶離した溶離液を有機抽出剤による溶媒抽出に付して抽残液と抽出後抽出剤とに分離する溶媒抽出工程と、
前記抽残液からスカンジウムの沈殿物を得るスカンジウム回収工程と、を有し、
前記溶媒抽出工程では、
前記有機抽出剤としてアミン系抽出剤を用い、
前記溶離液に活性炭を接触させた後に、該溶離液と前記有機抽出剤とを混合させる
スカンジウムの回収方法。 - 前記溶媒抽出工程では、前記溶離液に前記活性炭を接触させることによって該溶離液中のTOC濃度が0.04g/l以下となるまで低減した後、該溶離液と前記有機抽出剤とを混合させる
請求項1に記載のスカンジウムの回収方法。
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