JP6623935B2 - スカンジウムの回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、スカンジウムの回収方法に関し、より詳しくは、ニッケル酸化鉱石等から抽出したスカンジウムを含有する酸性溶液を用いて、スカンジウムをイオン交換樹脂により吸着、溶離させて不純物と分離し、高純度なスカンジウム原料溶液を回収するスカンジウムの回収方法に関する。
スカンジウムは、高強度合金の添加剤や燃料電池の電極材料として極めて有用である。しかしながら、生産量が少なく高価であるため、広く用いられるには至っていない。
ところで、ラテライト鉱やリモナイト鉱等のニッケル酸化鉱石には、微量のスカンジウムが含まれている。しかしながら、ニッケル酸化鉱石はニッケル品位が低いため、長らくニッケル酸化鉱石をニッケル原料として工業的に利用されてこなかった。そのため、ニッケル酸化鉱石からスカンジウムを工業的に回収することも殆ど研究されていない。
近年、ニッケル酸化鉱石を硫酸と共に加圧容器に装入し、240℃〜260℃程度の高温に加熱してニッケルを浸出させ、そのニッケルを浸出させた浸出液と浸出残渣とに固液分離する高圧酸浸出(High pressure acid leaching、以下「HPAL」と称する)プロセスが実用化されている。
このHPALプロセスでは、得られた浸出液に中和剤を添加することで不純物が分離され、次いで硫化剤を添加することでニッケルをニッケル硫化物として回収することができる。そして、得られたニッケル硫化物を既存のニッケル製錬工程で処理することで電気ニッケルやニッケル塩化合物を得ることができる。
上述したようなHPALプロセスを用いる場合、ニッケル酸化鉱石に含まれるスカンジウムは、ニッケルと共に浸出液に含まれることになる(例えば、特許文献1参照)。そして、HPALプロセスで得られた浸出液に対して中和剤を添加して不純物を分離し、次いで硫化剤を添加すると、ニッケルはニッケル硫化物として回収される一方で、スカンジウムは硫化剤添加後の酸性溶液(硫化後液)に含まれるようになる。そのため、HPALプロセスを使用することで、ニッケルとスカンジウムとを効果的に分離することができる。
そして、上述した酸性溶液からスカンジウムを回収する方法としては、例えばイミノジ酢酸塩を官能基とするキレート樹脂等にスカンジウムを吸着させて不純物と分離し、濃縮することによって回収する方法が提案されている(例えば、特許文献2〜4参照)。
なお、ちなみに、ニッケル酸化鉱石から溶媒抽出を用いてスカンジウムを回収する方法も提案されている(例えば、特許文献5参照)。この特許文献5の記載の技術は、先ず、スカンジウムの他に少なくとも鉄、アルミニウム、カルシウム、イットリウム、マンガン、クロム、マグネシウムの1種以上を含有する水相の含スカンジウム溶液に、2−エチルヘキシルスルホン酸−モノ−2−エチルヘキシルをケロシンで希釈した有機溶媒を加えて、スカンジウム成分を有機溶媒中に抽出する。次いで、有機溶媒中にスカンジウム共に抽出されたイットリウム、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムを分離するために、塩酸水溶液を加えてスクラビングを行い、イットリウム、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムを除去した後、有機溶媒中にNaOH水溶液を加えて、有機溶媒中に残存するスカンジウムをSc(OH)を含むスラリーとする。そして、これを濾過して得らえたSc(OH)を塩酸で溶解し、塩化スカンジウム水溶液を得て、これにシュウ酸を加えてシュウ酸スカンジウム沈殿とし、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムを濾液中に分離した後、仮焼することにより高純度な酸化スカンジウムを得るというものである。
しかしながら、上述した特許文献1〜4に記載の方法を用いたとしても、ニッケル酸化鉱石には、スカンジウムの他にも、鉄、アルミ、クロム等の様々な不純物が含まれている。その中でも、クロムイオンや3価の形態の鉄イオンは、上述したキレート樹脂と強固に吸着する性質を有するため、いったんキレート樹脂に吸着すると、そのキレート樹脂からクロムや鉄を分離することが難しくなる。また、それだけでなく、その後にキレート樹脂に吸着するスカンジウムの量も減少してしまうため、設備効率が低下する。さらに、キレート樹脂には、スカンジウムと不純物との両方が吸着するため、不純物成分が吸着した後にキレート樹脂を再利用すると、回収されるスカンジウムの品位が低下する等の問題がある。これらのことから、キレート樹脂を使用した効率的なスカンジウム回収方法の開発が必要となっている。
特開平3−173725号公報 特開平1−133920号公報 特開平9−176756号公報 特開平9−194211号公報 特開平9−291320号公報
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、スカンジウムを含有する溶液から不純物を有効に分離して、高品位のスカンジウムを効率よく回収することができる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、スカンジウムを含有する酸性溶液に対して、複数のカラムにキレート樹脂を充填した連続式カラム法によるイオン交換処理を施すことで、上述した課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明の第1の発明は、カラムに充填されたキレート樹脂にスカンジウムを含有する酸性溶液を接触させて、該酸性溶液中のスカンジウムを該キレート樹脂に吸着させるイオン交換工程を含むスカンジウムの回収方法であって、前記イオン交換工程は、複数のカラムに充填された前記キレート樹脂にスカンジウムを吸着させる吸着工程と、吸着処理後のカラムを洗浄し、スカンジウムを溶離させる洗浄・溶離工程と、を有し、前記吸着工程では、前記複数の全てのカラムに対して、該カラム1本あたりに通液可能な液量の前記酸性溶液を並列にかつ同時に通液し、前記洗浄・溶離工程では、吸着の終了した所定本数のカラムに対して、直列に洗浄液を通液させる、スカンジウムの回収方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記洗浄・溶離工程では、少なくともアルミニウム及び鉄を洗浄除去する処理(Al及びFe洗浄)と、吸着したスカンジウムを溶離させる処理(Sc溶離)と、クロムを洗浄除去する処理(Cr洗浄)と、キレート樹脂に付着した酸を除去する処理(酸除去)と、の各処理工程を行う、スカンジウムの回収方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記吸着工程では、前記複数のカラムを一組として、該カラム1本あたりに通液可能な前記酸性溶液の液量を該一組のカラムの本数で除した液量を、各カラムに複数回通液する、スカンジウムの回収方法である。
(4)本発明の第4の発明は、第2の発明において、前記洗浄・溶離工程では、Al及びFe洗浄、Sc溶離、Cr洗浄、酸除去の各処理工程を順次行うに際して、それぞれの処理工程において、カラム1本あたりに必要な通液量を各処理工程におけるカラムの所定本数で除した液量を、各カラムに複数回直列に通液し、前記カラム1本あたりに必要な通液量を通液し終えたカラムを、順次、次の処理工程に移動させる、スカンジウムの回収方法である。
(5)本発明の第5の発明は、第4の発明において、前記Al+Fe洗浄処理工程におけるカラムの所定本数に等しい数のバッチにわたり、0.1N以下の硫酸洗浄液を各カラムに直列に通液し、バッチ毎に該カラムを下流側に移動させて切り換える、スカンジウムの回収方法である。
(6)本発明の第6の発明は、第4の発明において、前記Sc溶離処理工程におけるカラムの所定本数に等しい数のバッチにわたり、溶離液を各カラムに直列に通液し、バッチ毎に該カラムを下流側に移動させて切り換える、スカンジウムの回収方法である。
(7)本発明の第7の発明は、第4の発明において、前記Cr洗浄処理工程におけるカラムの所定本数に等しい数のバッチにわたり、3N以上の硫酸洗浄液を各カラムに直列に通液し、バッチ毎に該カラムを下流側に移動させて切り換える、スカンジウムの回収方法である。
(8)本発明の第8の発明は、第4の発明において、前記酸除去処理工程におけるカラムの所定本数に等しい数のバッチにわたり、洗浄水を各カラムに直列に通液し、バッチ毎に該カラムを下流側に移動させて切り換える、スカンジウムの回収方法である。
(9)本発明の第9の発明は、第1乃至第8のいずれかの発明において、前記吸着工程及び前記洗浄・溶離工程における操作に必要な本数のカラムを直列に配置し、全カラム数に等しい数のバッチにわたり、バッチ毎に各カラムを順次下流側に移動させて切り換えることにより、各バッチにおいて各工程を同時に行い、1つのカラムがすべての工程を終了した時点を1サイクルとする、スカンジウムの回収方法である。
(10)本発明の第10の発明は、第1乃至第9のいずれかの発明において、前記キレート樹脂として、イミノジ酢酸塩を官能基とするキレート樹脂を使用する、スカンジウムの回収方法である。
(11)本発明の第11の発明は、第1乃至第10のいずれかの発明において、前記洗浄・溶離工程において、前記キレート樹脂からスカンジウムを溶離させる処理を行い、得られたスカンジウム溶離液中のスカンジウム濃度が、単一のカラム(シングルカラム)を使用して前記吸着工程及び前記洗浄・溶離工程を実施した場合に得られるスカンジウム溶離液中のスカンジウム濃度よりも高くなる、スカンジウムの回収方法である。
(12)本発明の第12の発明は、第1乃至第11のいずれかの発明において、前記洗浄・溶離工程において使用される薬剤使用量が、単一のカラム(シングルカラム)を使用して前記吸着工程及び前記洗浄・溶離工程を実施した場合に必要な薬剤使用量よりも少ない、スカンジウムの回収方法である。
(13)本発明の第13の発明は、第2の発明において、前記洗浄・溶離工程において、前記キレート樹脂に付着した酸を除去する処理工程では、酸除去溶液として、前記吸着工程にて通液する前記酸性溶液を使用する、スカンジウムの回収方法である。
本発明によれば、スカンジウムを含有する溶液から不純物を有効に分離して、高品位のスカンジウムを効率よく回収することができる。
スカンジウムの回収方法の流れの一例を説明するための工程図である。 複数のカラム(14本)にキレート樹脂を充填した連続向流多段式イオン交換装置(CCIX)の一例を示す模式図である。 図2に示すCCIXの状態から7バッチ進んだ状態を示す模式図である。 複数のカラム(30本)にキレート樹脂を充填したCCIXの一例を示す模式図である。 図4に示すCCIXの状態から19バッチ進んだ状態を示す模式図である。 図4に示すCCIXを用いた処理が進行し、カラム18が3バッチにわたる純水によるリンス工程を終了したとき(全工程の終了)の様子を示す模式図である。 実施例2において、カラム中に吸着したスカンジウム濃度、クロム濃度の測定結果を示すグラフ図である。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
≪1.概要≫
本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法は、カラムに充填されたキレート樹脂にスカンジウムを含有する酸性溶液を接触させて、その酸性溶液中のスカンジウムをキレート樹脂に吸着させるイオン交換処理工程を含む方法である。
そして、そのイオン交換処理工程では、複数のカラムにキレート樹脂を充填した連続向流多段式イオン交換装置に通液することによって、スカンジウムを分離、回収して、高濃度のスカンジウム溶離液を得ることを特徴としている。
具体的に、本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法は、複数のカラムに充填されたキレート樹脂にスカンジウムを吸着させる吸着工程と、吸着処理後のカラムを洗浄し、スカンジウムを溶離させる洗浄・溶離工程と、を有するイオン交換工程を備えるものであり、吸着工程では、複数の全てのカラムに対して、そのカラム1本あたりに通液可能な液量のスカンジウム含有酸性溶液を並列にかつ同時に通液し、また、洗浄・溶離工程では、吸着の終了した所定本数のカラムに対して、直列に洗浄液を通液させる。
このような方法によれば、不純物を有効に分離して、高濃度にスカンジウムを含む溶離液を得ることができるとともに、使用するキレート樹脂量、及び洗浄・溶離工程に使用する溶離液、洗浄溶液等の薬剤使用量を低減することができる。
≪2.スカンジウムの回収方法≫
図1は、スカンジウムの回収方法の流れの一例を説明するための工程図である。なお、図1では、スカンジウム含有酸性溶液として、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにより得られる硫化後液を用いた場合を一例として示しているが、これに限られない。
このスカンジウムの回収方法は、少なくとも、ニッケル、スカンジウム、アルミニウム、及びクロムを含有するニッケル酸化鉱石を高温高圧下で硫酸により浸出して浸出液を得る浸出工程S1と、浸出液に中和剤を添加して不純物を含む中和澱物と中和後液とを得る中和工程S2と、中和後液に硫化剤を添加してニッケル硫化物と硫化後液とを得る硫化工程S3と、上記硫化後液をキレート樹脂に接触させて上記スカンジウムを上記キレート樹脂に吸着させ、スカンジウム溶離液を得るイオン交換工程S4と、上記スカンジウム溶離液を抽出剤に接触させ、逆抽出液を得る溶媒抽出工程S5と、上記逆抽出液に中和剤又はシュウ酸を加え、沈殿物を得るスカンジウム沈殿工程S6と、この沈殿物を乾燥し、焙焼して、酸化スカンジウムを得る焙焼工程S7とを含む。
<ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスについて>
本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法における回収対象溶液である、スカンジウムを含有する酸性溶液(スカンジウム含有酸性溶液)としては、例えば、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスを経て得られる浸出液を用いることができる。
具体的に、スカンジウム含有酸性溶液としては、ニッケル酸化鉱石を高温高圧下で硫酸により浸出して浸出液を得る浸出工程S1と、浸出液に中和剤を添加して不純物を含む中和澱物と中和後液とを得る中和工程S2と、中和後液に硫化剤を添加してニッケル硫化物と硫化後液とを得る硫化工程S3とを有するニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにより得られる硫化後液を用いることができる。以下では、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスの流れを説明する。
(1)浸出工程
浸出工程S1は、例えば高温加圧容器(オートクレーブ)等を用いて、ニッケル酸化鉱のスラリーに硫酸を添加して240℃〜260℃の温度下で撹拌処理を施し、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを形成する工程である。
ここで、ニッケル酸化鉱としては、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱が挙げられる。ラテライト鉱のニッケル含有量は、通常、0.8〜2.5重量%であり、水酸化物又はケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物として含有される。また、これらのニッケル酸化鉱には、スカンジウムが含まれている。
浸出工程S1では、得られた浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを洗浄しながら、ニッケルやコバルト、スカンジウム等を含む浸出液と、ヘマタイトである浸出残渣とに固液分離する。この固液分離処理では、例えば、浸出スラリーを洗浄液と混合した後、凝集剤供給設備等から供給される凝集剤を用いて、シックナー等の固液分離設備により固液分離処理を施す。具体的には、先ず、浸出スラリーが洗浄液により希釈され、次に、スラリー中の浸出残渣がシックナーの沈降物として濃縮される。なお、この固液分離処理では、シックナー等の固液分離槽を多段に連結させて用い、浸出スラリーを多段洗浄しながら固液分離することが好ましい。
(2)中和工程
中和工程S2は、上述した浸出工程S1により得られた浸出液に中和剤を添加してpHを調整し、不純物元素を含む中和澱物と中和後液とを得る工程である。この中和工程S2における中和処理により、ニッケルやコバルト、スカンジウム等の有価金属は中和後液に含まれるようになり、鉄、アルミニウム等の不純物の大部分が中和澱物となる。
中和剤としては、従来公知のもの使用することができ、例えば、炭酸カルシウム、消石灰、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
中和工程S2における中和処理では、分離された浸出液の酸化を抑制しながら、pHを1〜4の範囲に調整することが好ましく、pHを1.5〜2.5の範囲に調整することがより好ましい。pHが1未満であると、中和が不十分となり中和澱物と中和後液とに分離できない可能性がある。一方で、pHが4を超えると、アルミニウム等の不純物のみならず、スカンジウムやニッケル等の有価金属も中和澱物に含まれる可能性がある。
(3)硫化工程
硫化工程S3は、上述した中和工程S12により得られた中和後液に硫化剤を添加してニッケル硫化物と硫化後液とを得る工程である。この硫化工程S3における硫化処理により、ニッケル、コバルト、亜鉛等は硫化物となり、スカンジウム等は硫化後液に含まれることになる。
具体的に、硫化工程S3では、得られた中和後液に対して、硫化水素ガス、硫化ナトリウム、水素化硫化ナトリウム等の硫化剤を吹きこみ、不純物成分の少ないニッケルを含む硫化物(ニッケル硫化物)と、ニッケル濃度を低い水準で安定させ、スカンジウム等を含有させた硫化後液とを生成させる。
硫化工程S3における硫化処理では、ニッケル硫化物のスラリーをシックナー等の沈降分離装置を用いて沈降分離処理してニッケル硫化物をシックナーの底部より分離回収する一方で、水溶液成分である硫化後液はオーバーフローさせて回収する。
本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法では、以上のようなニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおける各工程を経て得られる硫化後液を、スカンジウム回収処理の対象の元液原料となるスカンジウム含有酸性溶液として用いることができる。
<イオン交換処理プロセスについて>
次に、本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法では、例えば上述のようにして得られたスカンジウムを含有する酸性溶液を、カラムに充填されたキレート樹脂に接触させて、その溶液中のスカンジウムをキレート樹脂に吸着させるイオン交換処理を行う。
イオン交換工程S4の態様としては、特に限定されないが、スカンジウム含有酸性溶液である硫化後液をキレート樹脂に接触させスカンジウムをキレート樹脂に吸着させる吸着工程S41と、スカンジウムを吸着したキレート樹脂に硫酸を接触させ、キレート樹脂に吸着した不純物のアルミニウムを除去するアルミニウム除去工程S42と、キレート樹脂に硫酸を接触させてスカンジウムを溶離させたスカンジウム溶離液を得るスカンジウム溶離工程S43と、溶離後のキレート樹脂に硫酸を接触させ、キレート樹脂に吸着した不純物のクロムを除去するクロム除去工程S44と、を含むものをすることができる。
(1)吸着工程
吸着工程S41では、スカンジウム含有酸性溶液である硫化後液をキレート樹脂に接触させて、溶液中のスカンジウムをキレート樹脂に吸着させる。
キレート樹脂としては、特に限定されないが、イミノジ酢酸を官能基とする樹脂であることが好ましい。具体的には、イミノジ酢酸を官能基とする樹脂として、例えば、三菱化学株式会社製の商品名ダイアイオンCR−11型等が市販されている。
ところで、キレート樹脂に通液させる硫化後液のpH範囲が低いほど、ニッケル酸化鉱石に由来し、その硫化後液に含まれることになった不純物のキレート樹脂への吸着量は少なくなる。そのため、できるだけ低いpH領域の溶液をキレート樹脂に通液することで、キレート樹脂への不純物の吸着を抑制することができる。しかしながら、溶液のpHが1未満であると、不純物の吸着量だけでなく、スカンジウムの吸着量も少なくなる可能性がある。そのため、極端に低いpH領域の溶液をキレート樹脂に通液させることは好ましくない。
(2)アルミニウム除去工程
アルミニウム除去工程S42では、吸着工程S41でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に0.1N以下の硫酸を接触させ、キレート樹脂に吸着した不純物成分であるアルミニウムを除去する。
アルミニウムを除去するに際しては、キレート樹脂に接触させる硫酸のpHを1.0〜2.5の範囲に維持することが好ましく、1.5〜2.0の範囲に維持することがより好ましい。硫酸のpHが1.0未満であると、アルミニウムだけでなく、吸着させたスカンジウムもキレート樹脂から除去される可能性がある。一方で、硫酸のpHが2.5を超えると、アルミニウムが適切にキレート樹脂から除去されない可能性がある。
(3)スカンジウム溶離工程
スカンジウム溶離工程S43では、アルミニウムを除去したキレート樹脂に0.3N以上3.0N未満の硫酸を接触させ、キレート樹脂からスカンジウムを溶離し、スカンジウム溶離液を得る。すなわち、硫酸を溶離液として用いてスカンジウムを溶離させる。
スカンジウム溶離液を得るに際しては、溶離液に用いる硫酸の規定度を0.3N以上3.0N未満の範囲に維持することが好ましく、0.5N以上2.0N未満の範囲に維持することがより好ましい。規定度が3.0N以上であると、スカンジウムだけでなく、キレート樹脂に吸着した不純物のクロムまでも溶離してスカンジウム溶離液に含まれてしまうことがある。一方で、規定度が0.3N未満であると、スカンジウムが適切にキレート樹脂から溶離されないため、好ましくない。
なお、このスカンジウム溶離工程S43にて得られたスカンジウム溶離液を繰り返し用い、すなわち、得られたスカンジウム溶離液をキレート樹脂に再度接触させてスカンジウム溶離工程S43を行うようにすることで、スカンジウム溶離液に含まれるスカンジウムの濃度を高めることができる。
(4)クロム除去工程
クロム除去工程S44では、スカンジウム溶離工程S43を経てスカンジウムを溶離させたキレート樹脂に3N以上の硫酸を接触させ、キレート樹脂に吸着した不純物成分であるクロムを除去する。
クロムを除去するに際しては、硫酸の規定度を3N以上とすることが好ましい。硫酸の規定度が3Nを下回ると、クロムが適切にキレート樹脂から除去されない可能性がある。
(5)鉄除去工程
また、図示していないが、上述したアルミニウム除去工程S42に先立ち、不純物成分である鉄を除去する鉄除去工程を設けるようにしてもよい。スカンジウム含有酸性溶液には、その原料に由来して不純物として鉄が含まれることがある。例えば、上述したように、ニッケル酸化鉱石を原料として酸浸出処理を経て得られた硫化後液には、そのニッケル酸化鉱石に含まれる鉄が硫化後液中にも含まれることがある。
このようなとき、不純物を低減してスカンジウム溶離液中のスカンジウム濃度を高める観点から、鉄除去工程を設けて、キレート樹脂に吸着した鉄を除去することが好ましい。具体的に、鉄除去工程は、アルミニウム除去工程S42の前工程として設けるようにし、アルミニウム除去工程S42で使用する硫酸の規定度よりも小さい規定度の硫酸をキレート樹脂に接触させて、キレート樹脂に吸着した鉄を除去する。
鉄を除去するに際して、硫酸のpHとしては1〜3の範囲に調製し維持することが好ましい。硫酸のpHが1未満であると、鉄だけでなく、スカンジウムもキレート樹脂から除去される可能性がある。一方で、硫酸のpHが3を超えると、鉄が適切にキレート樹脂から除去されない可能性がある。
さて、本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法では、イオン交換工程S4におけるイオン交換処理に際して、複数のカラムにキレート樹脂を充填した連続向流多段式イオン交換装置(Continuous counter current ion−exchange、以下「CCIX」と略して記す場合がある)を用い、そこにスカンジウム含有酸性溶液である硫化後液を通液することで、高濃度のスカンジウム溶離液を得ることを特徴としている。このように、CCIXを用いてイオン交換処理を施すことで、不純物をより効果的に除去できるとともに、イオン交換樹脂(キレート樹脂)の量や洗浄・溶離工程に使用する薬剤(硫酸)の使用量を有効に低減させることが可能になる。なお、CCIXを用いたイオン交換処理については、後で詳細に説明する。
<溶媒抽出プロセスについて>
本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法では、イオン交換工程S4を経て得られたスカンジウム溶離液に対して溶媒抽出処理を施す。溶媒抽出処理では、得られたスカンジウム溶離液を抽出剤に接触させ、得られた抽出液に逆抽出剤を加えることでスカンジウムを含む逆抽出物(逆抽出液)を得る。このように、イオン交換処理を行うとともに、得られたスカンジウム溶離液に対して溶媒抽出処理を施すことで、不純物成分をより高品位に分離することができ、スカンジウムの純度をより一層に高めることができる。
なお、溶媒抽出処理に先立ち、例えば、スカンジウム溶離液に含まれるスカンジウムをシュウ酸化するシュウ酸化処理や、中和剤によりpHを調整して不純物を沈殿除去する中和処理等の濃縮工程を設けるようにしてもよい。これにより、回収されるスカンジウムの品位を一層に高めることができる。
溶媒抽出工程S5の態様としては、特に限定されないが、スカンジウム溶離液と抽出剤とを混合し、スカンジウムを抽出した抽出後有機溶媒と抽残液とに分離する抽出工程S51と、抽出後有機溶媒に塩酸溶液又は硫酸溶液を混合して抽出後有機溶媒から不純物を分離して洗浄後有機溶媒を得るスクラビング工程S52と、洗浄後有機溶媒に逆抽出始液を混合し、洗浄後有機溶媒からスカンジウムを逆抽出して逆抽出液を得る逆抽出工程S53とを有するものを例示することができる。
(1)抽出工程
抽出工程S51では、スカンジウム溶離液と、抽出剤を含む有機溶媒とを混合して、有機溶媒中にスカンジウムを選択的に抽出する。抽出剤としては、特に限定されないが、スカンジウムとの選択性の観点から、リンを含む溶媒和抽出剤、具体的にはトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)を官能基とするものを用いることが好ましい。トリオクチルホスフィンオキシドには、アルキル鎖が異なる種々のトリアルキルホスフィンオキシド類が存在するが、何れのものであっても好適に使用することができる。なお、抽出時は、例えば炭化水素系の有機溶媒等で希釈して使用することが好ましい。
(2)スクラビング(洗浄)工程
必須の態様ではないが、抽出液を逆抽出する前に、有機溶媒(有機相)にスクラビング(洗浄)処理を施し、不純物元素を水相に分離して抽出剤から除去することが好ましい(スクラビング工程S52)。
スクラビングに用いる溶液(洗浄溶液)としては、塩酸溶液や硫酸溶液を使用することができる。塩酸溶液を用いる場合は2.0mol/L以上9.0mol/L以下の濃度範囲とすることが好ましく、硫酸溶液を用いる場合は3.5mol/L以上9.0mol/L以下の濃度範囲とすることが好ましい。
(3)逆抽出工程
逆抽出工程S53では、スカンジウムを抽出した有機溶媒からスカンジウムを逆抽出する。この逆抽出工程S53では、有機溶媒に、水又は低濃度の酸溶液を逆抽出溶液(逆抽出始液)として用いて混合することで、抽出工程S51での抽出時における反応とは逆の反応を進行させ、スカンジウムを含む逆抽出液(逆抽出後液)を得る。
逆抽出始液としては、水であってもよいが、有機相との相分離が不良となる可能性があるため、低濃度の酸溶液を用いることが好ましい。酸溶液としては、例えば、3.5mol/L未満程度の濃度の硫酸溶液を用いることができる。
<スカンジウムの回収プロセスについて>
溶媒抽出工程S5での溶媒抽出処理の後、得られた逆抽出後液、すなわちスカンジウムが濃縮されたスカンジウム含有溶液からスカンジウムを回収する。スカンジウムを回収するプロセスとしては、特に限定されないが、例えば、得られた逆抽出後液に中和剤又はシュウ酸を加えてスカンジウムの沈殿物を生成させるスカンジウム沈殿工程S6と、スカンジウム沈殿物を水で洗浄し、乾燥し、焙焼することで、酸化スカンジウムを得る焙焼工程S7により構成することができる。これらの工程を経ることで、ニッケル酸化鉱石から酸化スカンジウムを回収することができる。
[スカンジウム沈殿工程]
スカンジウム沈殿工程S6では、得られた逆抽出後液に中和剤又はシュウ酸を添加してスカンジウムの沈殿物を生成させる。
具体的には、その逆抽出後液に中和剤を添加して沈殿物を生成させる場合、その中和剤としては、例えば、炭酸カルシウム、消石灰、水酸化ナトリウム等の従来公知のものを用いることができる。その中でも、逆抽出始液として硫酸溶液を用いて得られた逆抽出後液である場合には、中和剤がカルシウム塩であると中和によって石膏が生成するため、水酸化ナトリウムを中和剤として用いることが好ましい。
また、逆抽出後液に中和剤を添加して沈殿物を生成させる場合には、その中和剤の添加により溶液のpHを8以上9以下の範囲に調整することが好ましい。pHが8未満であると、中和が不十分となり、スカンジウムを十分に沈殿物化できない可能性がある。一方で、pHが9を超えると、中和剤の使用量が増えてしまい、コストアップにつながる。
一方、逆抽出後液にシュウ酸を添加して沈殿物を生成させる場合、中和剤を添加する場合に比べても一層に高品位なスカンジウムを回収することができ、好ましい。添加するシュウ酸の量としては、特に限定されないが、逆抽出後液に含まれるスカンジウム量に対して計算量で1.05倍以上1.2倍以下であることが好ましい。シュウ酸の添加量がスカンジウム量に対して1.05倍未満であると、逆抽出後液に含まれるスカンジウムの全量を沈殿物化することができない可能性があり、回収ロスが生じることがある。一方で、1.2倍を超えると、コストアップにつながるほか、過剰なシュウ酸の分解に必要な酸化剤、例えば次亜塩素ソーダの使用量が増えるため好ましくない。
[焙焼工程]
焙焼工程S7では、スカンジウム沈殿工程S6で得られたスカンジウムの沈殿物を水で洗浄し、乾燥し、焙焼することによって、酸化スカンジウムを得る。このような焙焼工程S7での焙焼処理を経ることで、極めて高品位な酸化スカンジウムを得ることができる。
焙焼の条件としては、特に限定されないが、例えば、管状炉に入れて約900℃で2時間程度加熱する条件とすることができる。
≪3.CCIXを用いたイオン交換処理≫
ここで、本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法では、上述したイオン交換工程S4におけるイオン交換処理に際して、キレート樹脂を充填した連続向流多段式イオン交換装置を用い、そこにスカンジウム含有酸性溶液である硫化後液を通液することで、高濃度のスカンジウム溶離液を得ることを特徴としている。
連続向流多段式イオン交換装置(CCIX)では、キレート樹脂を複数のカラムに分割して充填したものを使用し、吸着処理、アルミニウム(Al)及び鉄(Fe)の洗浄処理、スカンジウム(Sc)の溶離処理、クロム(Cr)の洗浄処理、純水でキレート樹脂を洗浄する洗浄処理(=酸濃度低減)の各ゾーンを複数のカラムで構成して、その各ゾーンに連続的に通液する。CCIXでは、各カラムを、これらのゾーン中において1つずつ次の工程(ポジション)へ移動させることで、キレート樹脂に吸着するスカンジウム吸着量を増加させた後に、そのキレート樹脂からの不純物成分とスカンジウムとの選択溶離を順次実施する。
イオン交換工程S4は、上述したように、複数のカラムに分割して充填されたキレート樹脂にスカンジウムを吸着させる吸着工程(工程S41)と、吸着処理後のカラムを洗浄し、スカンジウムを溶離させる洗浄・溶離工程(工程S42〜S44)と、を有する。
[吸着工程]
吸着工程においては、吸着始液である硫化後液に含まれるスカンジウムの濃度が数10〜20mg/Lと低いため、キレート樹脂の量に対して、大量の吸着始液を通液する必要がある。このことから、複数のカラムにより構成されるCCIXにおける吸着ゾーンでは、硫化後液を、そのゾーンにおける複数のカラムを組み合わせて並列に、またその並列の複数のカラムに同時に通液することで、1本あたりのカラムに通液する始液流速を抑えるようにする。
また、吸着ゾーンにおける吸着処理は、2段階で実施することが好ましく、1段目の吸着ではスカンジウム濃度をある程度下げ(例えば、始液濃度の40%程度)、2段目の吸着では吸着後液中のスカンジウム濃度をより低減させることが好ましい。
また、吸着ゾーンにおける各カラムへの吸着始液通液量は、カラム1本あたりに必要な通液量を1組の本数(1段目の吸着ゾーンのカラム数が9本であれば「9」)で除した液量を各カラムに複数回に亘って通液することが好ましい。例えば、カラム1本あたりに必要な通液量が16.2Lで、1段目の吸着ゾーン及び2段目の吸着ゾーンのカラム数がそれぞれ9本である場合、16.2L÷9=1.8Lの量を、9回に亘って通液させることで、各カラムに合計16.2Lの吸着始液を接触させることが可能となる。
[洗浄・溶離工程]
洗浄・溶離工程では、Al+Fe洗浄、Sc溶離、Cr洗浄、純水洗浄の各処理工程を順次行う場合に、各処理工程において、カラム1本あたりに必要な通液量を各処理工程における所定本数で除した液量を各カラムに複数回直列に通液する。そして、カラム1本あたりに必要な通液量を通液し終えたカラムを、順次次の工程に移動させる。
具体的には、Al+Fe洗浄処理工程における所定本数に等しい数のバッチにわたり各カラムを順次Al+Fe洗浄処理工程に入れ、硫酸洗浄液を各カラムに直列に通液し、バッチ毎に、カラムを下流側に1工程ずつ移動して切り換える。また、Sc溶離処理工程における所定本数に等しい数のバッチにわたり各カラムを順次Sc溶離処理工程に入れ、溶離液を各カラムに直列に通液し、バッチ毎に、カラムを下流側に1工程ずつ移動して切り換える。さらに、Cr洗浄処理工程における所定本数に等しい数のバッチにわたり各カラムを順次Cr洗浄処理工程に入れ、硫酸洗浄液を各カラムに直列に通液し、バッチ毎ごとに、カラムを下流側に1工程ずつ移動して切り換える。またさらに、純水洗浄処理工程における所定本数に等しい数のバッチにわたり各カラムを順次純水洗浄処理工程に入れ、純を各カラムに直列に通液し、バッチ毎に、カラムを下流側に1工程ずつ移動して切り換える。
このように、不純物(Al、Fe、Cr)を洗浄する洗浄処理工程及びScを溶離する溶離処理工程における操作に必要な所定本数のカラムを直列に配置し、全カラム数に等しい数のバッチにわたり、各カラムを順次下流側に切り換えることで、各バッチにおいて全工程を同時に行い、1つのカラムが全工程を一通り終了した時点を1サイクルとする。
[CCIXにおける具体的な通液操作]
(1)第1の実施形態
ここで、上述した硫化後液からスカンジウムを回収する方法における、CCIXを用いたキレート樹脂によりイオン交換処理の通液操作の具体例を、図2のCCIXの模式図に基づいて説明する。図2の模式図では、カラムの合計本数が14本の場合の例を示しているが、これに限定されない。
なお、カラムへの通液速度及び通液量は通常、それぞれ、SV、BVで表わされる。すなわち、「SV20でBV30」とは、1時間に樹脂量の20倍の速度により、樹脂量の30倍の液量を通液するということを意味する。例えば、「SV20,BV30,樹脂量500ml」の場合では、通液速度10L/hrにて1.5時間かけて15Lの通液量とすることになる。
(吸着処理工程について)
図2に示すように、キレート樹脂による吸着工程における通液方法は、3本のカラムを並列に2段階で配置し(1段吸着ゾーン、2段吸着ゾーン)、吸着始液の全量を均等に分割した量の吸着始液をそれぞれのカラムに通液し、回収対象であるスカンジウムを2段階の処理でキレート樹脂に吸着させる。なお、最初にカラム1,2,3に吸着始液を通液した後、その吸着後液をカラム4,5,6に供給する。
各カラムは、1バッチ終了毎に、図2において向かって左方向に1つだけ移動し、カラム1はカラム14の位置に移動する。このとき、カラム14に対して硫酸洗浄液の給液装置を移動し、カラム1に対して排液装置を移動してもよく、または、カラム14を硫酸洗浄液の給液装置に対して移動し、カラム1を排液装置に対して移動してもよい。このようにして複数のバッチにわたりカラムを順次工程の下流側に移動させ、通液するカラムを切換えていく。
(洗浄処理工程について)
図3に、図2に示す状態から7バッチ進んだ状態の模式図を示す。この図3を参照して、キレート樹脂の洗浄処理工程について説明する。
例えば、Al+Feの除去洗浄処理を受けるカラムの所定本数を2本とすると、図3に示すように、最初のバッチ(=1バッチ目)においてはカラム5に対して0.05N硫酸溶液(硫酸洗浄液)を給液し、カラム6から洗浄後液を排液する。所定量(この場合、1本のカラムで洗浄に必要なBVの1/2)の通液が終了すれば、次のバッチでは、カラムを下流側に移動させて、カラム6に対して硫酸洗浄液を給液し、カラム7から洗浄後液を排液する。
ここで、カラム1本当たりの洗浄に必要な液量がBV10であると仮定した場合、1バッチあたりの通液量は、BV10を所定本数である2本で分割した液量(すなわちBV10/2本でBV5)となる。このため、7バッチ目において、カラム5に対して硫酸洗浄液を給液してカラム6から洗浄後液を排出するようにして通液した場合には、8バッチ目でカラム6に対する通液量がBV10となる。
本実施の形態においては、通液を開始するとエンドレスに回収可能となる方法であり、通液量が不足するのは通液開始時のみ(カラム1,2,3からの1段目の吸着後液が無いと、カラム4,5,6への給液が行われない)となる。したがって、通液開始時における不足量を補う必要があれば、1バッチ目に先立って、吸着始液のみをカラム1,2,3に給液し、1段目の吸着後液が排出され始めたことを確認した後に、全ての通液を開始(全てのポンプを稼働)して、その後の処理を続けるようにする。このような追加的方法により、液量不足を解決することができる。
さて、従来、1本のカラム(以下、「シングルカラム」と称する)にキレート樹脂を充填させて洗浄、溶離の処理を行った場合には、各処理工程で必要な液量を通液すると、それぞれの処理の効率が低いために、Al、Fe、Cr濃度の低い吸着後液及び洗浄液、Sc濃度の低い溶離液が多量に発生していた。
これに対して、本実施の形態においては、CCIXを使用し、カラムを複数本に分割して所定本数を並列又は直列に配置して通液している。このように、例えば吸着工程において、吸着始液を複数のカラムに並列にかつ同時に通液させた後、Scが残留している(キレート樹脂に吸着しきれていない)1段目の吸着後液を次の複数のカラムに2段階で通液させることで、キレート樹脂に効率的にScを吸着させることができる。また、洗浄・溶離工程においても、吸着の終了した所定本数のカラムに対して、直列に洗浄液を通液させることによって、Al、Fe、Cr等の不純物成分の洗浄効率を向上させることができる。これらのことにより、全体として通液させる処理液の量を有効に低減させることができ、設備を小規模化することが可能となり、また排水処理における負荷を軽減させることが可能となる。
なお、Al+Fe洗浄処理、Sc溶離処理、Cr洗浄処理、純水洗浄処理の終了後のそれぞれのカラム内に残留する液は、次のサイクルの補充液として使用することもできる。
(2)第2の実施形態
次に、第2の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態において使用するCCIXの模式図を示すものであり、カラムの合計本数が30本である例を示す。なお、第1の実施形態と同様に、上流側に位置する1段目吸着工程及び2段目吸着工程から、Al+Fe洗浄処理工程、Sc溶離処理工程、Cr洗浄処理工程を経て、下流側の純水洗浄処理工程に至る各工程から構成され、これらの処理を連続的に行うものである。
具体的に、図4に示すように、上述した6工程のそれぞれに入るカラムの所定本数は、1段目吸着工程(1段吸着ゾーン)が9本、2段目吸着工程(2段吸着ゾーン)が9本、Al+Fe洗浄処理工程が3本、Sc溶離処理工程が4本、Cr洗浄処理工程が2本、純水洗浄処理工程が3本としている。そして、吸着工程では並列に、その他の工程ではすべて直列で通液して、例えば、カラムを15分/バッチで切り換えるように操作する。
例えば、各工程の1本当たりの必要通液量BVとしては、例えば後述する下記表1に記載の通りとすることができる。なお、下記表1の記載の条件とした場合、直列に通液する工程における1バッチあたりの通液量は、1本あたりに必要な通液量BVを各工程の所定本数で分割した液量、例えばBV3/3本×(15分/60分)で、1バッチあたりBV0.25となる。
(吸着処理工程について)
キレート樹脂にScを吸着させるに際して、30本のカラムのうち、9本のカラム(1〜9)に並列に別々に吸着始液を給液して吸着させ、その1段目の吸着後液を別の9本のカラム(10〜18)に並列に別々に給液して吸着させる。ここで、1本あたりの必要通液量をBV30としたとき、1バッチあたりの通液量BVは30/9本でBV3.3となる。なお、例えば65L/hrで吸着始液を給液した場合には、9本のカラムにそれぞれ65/9=7.22L/hrで供給される。
(洗浄処理工程について)
図5に、図4に示す状態から19バッチ進んだ状態の模式図を示す。図5に示すように、カラム18が、2段目の吸着を9バッチ、1段目の吸着を9バッチ経て、Al+Fe洗浄処理工程に入った状態となっている。また、カラム6が、2段目の吸着工程に入り、カラム1は、既に6バッチ目の2段吸着工程を経ている。なお、図5における最も左のカラム(カラム19)は、次のバッチでは最も右のカラムのポジションに移動する。
・Al+Fe洗浄ゾーン
吸着工程後のキレート樹脂から不純物であるAl、Fe、またその他の元素としてNiを洗浄除去するために、洗浄溶液として0.05Nの硫酸溶液を3本直列に連結したカラムに通液して洗浄する。図5の例では、カラム16、17、18が直列に連結されており、カラム16に硫酸溶液が通液される。硫酸溶液の通液は、その3本のカラムに対して全必要量を1バッチで行ってもよいが、全必要量を3バッチに分割して、バッチ毎に1カラムずつ下流側(図の左側)に移動するようにすることが好ましい。例えば、上述のように、9カラム×2段=18バッチにわたり順次、吸着始液を通液させて吸着させた場合、19バッチ目から21バッチ目までにかけて、1バッチあたりBV9.4/3=3.1の量の硫酸溶液を3本のカラムに対して直列に通液する。
・Sc溶離ゾーン
硫酸溶液を通液させてAl、Feを洗浄した後のキレート樹脂からScを溶離するために、溶離液として0.5Nの硫酸溶液を4本直列に連結したカラムに通液する。図5の例では、カラム12、13、14、15が直列に連結されており、カラム12に溶離液が通液される。カラムに対する溶離液の通液方法としては、上述した洗浄ゾーンにおける通液と同様とすることができる。例えば、図5に示すカラム18に関しては、19バッチ目から21バッチ目までにかけて硫酸洗浄してAl、Feを除去した後、22バッチ目から25バッチ目までにかけて、1バッチあたりBV14.5/4=3.6の量の溶離液を4本のカラムに対して直列に通液する。
・Cr洗浄ゾーン
Scを溶離させた後のキレート樹脂から不純物であるCrを洗浄除去するために、洗浄溶液として高濃度の硫酸溶液を2本直列に連結したカラムに通液する。図5の例では、カラム10、11が直列に連結されており、カラム10に硫酸溶液が通液される。カラムに対する硫酸溶液の通液方法としては、上述したAl+Fe洗浄ゾーンにおける通液と同様とすることができる。例えば、図5に示すカラム18に関しては、22バッチ目から25バッチ目までにかけてScを溶離させた後、26バッチ目から27バッチ目までにかけて、1バッチあたりBV4.7/2=2.4の量の高濃度硫酸溶液を2本のカラムに対して直列に通液する。
・純水洗浄ゾーン
キレート樹脂中に残留した高濃度硫酸を排出するために、純水を3本直列に連結したカラムに通液する(なお、この工程を「リンス工程」ともいう)。図5の例では、カラム7、8、9が直列に連結されており、カラム7に純水が通液される。カラムに対する純水の通液方法としては、上述したAl+Fe洗浄ゾーンにおける通液と同様とすることができる。例えば、図5に示すカラム18に関しては、26バッチ目から27バッチ目までにかけて硫酸洗浄してCrを除去した後、28バッチ目から30バッチ目までにかけて、1バッチあたりBV8.5/3=2.8の量の純水を2本のカラムに対して直列に通液する。
図6に、カラム18が3バッチにわたる純水によるリンス工程を終了したときの様子を示す模式図である。つまり、全工程(1周)を終了するところを示す。なお、図6においては、30バッチが1サイクルとなり、この方法では、1サイクル目は各工程とも通液量が足りないカラムが発生するものの、2サイクル目からは所定の通液量となる。
以上、第1の実施形態、第2の実施形態を例示して説明したように、このスカンジウムの回収方法は、複数のカラムに充填されたキレート樹脂にスカンジウムを吸着させる吸着工程と、吸着処理後のカラムを洗浄し、スカンジウムを溶離させる洗浄・溶離工程と、を有するイオン交換工程を備えており、その吸着工程では、複数の全てのカラムに対して、そのカラム1本あたりに通液可能な液量の酸性溶液を並列にかつ同時に通液し、また、洗浄・溶離工程では、吸着の終了した所定本数のカラムに対して、直列に洗浄液を通液させることを特徴としている。そして、このとき、各処理工程でカラム1本あたりに必要な通液量を各所定本数で分割し、分割した液量の通液操作を1バッチとして、各バッチで所定本数を一定のまま、バッチ毎に1カラムずつ下流側にずらすことによって、各工程を連続的に行うようにする。
このような方法では、Scの吸着処理に必要な樹脂量を各工程の所定本数のカラムに分割しており、常に連続的な操作で、Scを吸着させ溶離して、回収することができる。また、このような方法によれば、分割したカラムを直列に配置し、低濃度の溶離液をカラムに対して直列に通液することでも十分に溶離でき、溶離液中のSc濃度を高めることができ、一方で、Scを溶離させるための溶離液の総量を有効に減らすことができる。
また、Sc溶離液中のSc濃度を高めることができることにより、例えばその後の濃縮処理等の実施が不要となり、後工程における設備規模の縮小を可能にして、操業資材コスト等を低減することができる。
なお、このスカンジウムの回収方法におけるイオン交換工程では、各処理工程のカラムの所定本数を単に増加させればよいというものではなく、Al+Fe洗浄処理、Sc溶離処理、Cr洗浄処理、純水洗浄処理においては、樹脂に吸着したAl、Fe、Crと置換するために必要なH(水素イオン)がなくなった溶液を通液しても除去、溶離ができず、洗浄処理においてカラム内の溶液と同程度の濃度の溶液を通液しても効率的に洗浄することができない。このことから、効率的に洗浄や溶離を行うことができ、溶離液中のScを高濃度化することができ、かつ処理液の量を有効に低減することが可能な、最適な所定本数を適宜設定することが好ましい。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
図4の模式図に示すような30本のカラムを使用した連続向流多段式イオン交換装置を用いて、スカンジウム(Sc)を含有する酸性溶液(吸着始液)からスカンジウム(Sc)を吸着、溶離する処理を行った。
具体的に、上流側である吸着工程において、各カラムに、イミノジ酢酸を官能基とするキレート樹脂(三菱レーヨンアクア・ソリューションズ株式会社製,商品名:三菱ダイアイオンCR−11)530ml/本を充填し、スカンジウム含有酸性溶液を65リットル/hrの流速でカラムに並列で通液し、そのキレート樹脂にScを吸着させた。
吸着始液であるスカンジウム含有酸性溶液として、Sc濃度:18mg/L、pH=1の硫酸酸性溶液を用いた。表1に、スカンジウム酸性溶液に含まれる元素の濃度を示す。
Figure 0006623935
また、吸着条件は、吸着温度60℃、SV13.6でBV30までの通液とした。そして、この吸着工程では、カラム9本を1セットとし、約50℃の吸着始液を当該1セットのカラムに並列に通液させた。なお、1本あたりの必要通液量はBV3.3となる。
この実施例1では、1本のカラムにおいて吸着工程、洗浄・溶離工程(Al+Fe洗浄処理工程、Sc溶離処理工程、Cr洗浄処理工程、純水洗浄処理工程)の各工程を1通り通すことを1サイクルとして、カラムの所定本数を各工程で異にした。すなわち、吸着工程では9本×2=18本、Al+Fe洗浄処理工程では3本、Sc溶離処理工程では4本、Cr洗浄処理工程では2本、純水洗浄処理工程では3本として、全工程におけるカラムの合計本数を30本とした。吸着工程では、9本のカラムに対して並列にかつ同時に吸着始液を通液し、それぞれの洗浄・溶離工程では各処理液を直列に通液した。そして、それぞれ所定本数を一定のままバッチ毎に各カラムを工程の下流側(吸着→Al+Fe洗浄→Sc溶離→Cr洗浄→純水洗浄の方向)に相対的に順次移動させた。なお、各バッチの処理時間を15分(15分/バッチ)とし、カラムと給排出装置とを相対的に15分毎に切り換えて、7.5時間で1サイクルとなるようにした。
(吸着工程)
具体的には、先ず、1バッチ目において、カラム1〜9(図4参照。以下のカラムについても同様)に対して給液排液装置を切り換え、9本のカラム全てに並列にかつ同時にカラム上部から吸着始液を通液し、各カラムの下部から抜き出した。そして、この抜き出した液(1段吸着後液)をカラム10〜18のカラム全てに並列にかつ同時にカラム上部から通液し、カラム下部から抜き出した。このような2段階の吸着処理を行った後、次に、2バッチ目において、全てのカラムをカラム1本分だけ工程の下流側(図の向かって左側)に移動させ、カラム列に対して給排液装置を切り換えて、カラム2〜10のカラム全てに並列にかつ同時にカラム上部から吸着始液を通液し、そのカラム下部から抜き出した1段吸着後液を、続いてカラム11〜19のカラム全てに並列にかつ同時にカラム上部から通液し、そのカラム下部から抜き出した。次バッチ移行も同様の手順で、給排液装置をカラム列に対して切り換え、18バッチ目でカラム18が2段吸着で9バッチ、1段吸着で9バッチ通液されるようにした。
(洗浄・溶離工程)
次に、Al+Fe洗浄処理工程について、カラム3本からなる「Al+Fe洗浄ゾーン」を設け、洗浄溶液として0.05N硫酸溶液を通液させた。
ここで、吸着カラムを30本に分割し、1本あたりの樹脂量を530mlとし、切り替え時間を15分/バッチとした場合、Al+Fe洗浄ゾーン(カラム3本)での1本あたりの総供給(接触)液量は5リットル(6.6L/hr×0.25hr×3バッチ≒5L)で目的の終点に達する。これはBV3.1に相当する。なお、一方で、従来のようなシングルカラムで樹脂量が16リットル(530ml×30)の場合には、必要通液量がBV8であるとすると、総供給液量は128リットルとなる。
カラムを分割して、所定本数ずつ配置したカラムに直列に通液を行う場合の各工程における総BVは、以下の式(i)から計算できる。例えば、Al+Fe洗浄ゾーンをカラム3本に分割し、1本ずつに直列に通液する場合では、必要通液BVを3等分した液量、すなわちBV1.0ずつ通液すればよく、総BVは式(ii)のようになる。
総BV=必要通液BV/所定本数×(カラム総数+所定本数−1) ・・・(i)
総BV=8/3×(30+3−1)=85.3 ・・・(ii)
したがって、この場合の工程全体における必要な総液量は530ml×85.3で「45.2リットル」となり、総樹脂量が同じでも総液量はシングルカラムの128リットルに対して減少していることが分かる。減少率としては、約35%に相当する。
なお、実施例1においては、Al+Fe洗浄処理工程について説明したが、Sc溶離処理工程、Cr洗浄処理工程、及び純水洗浄処理工程でも同様となる。
[比較例1]
比較例1では、実施例1と同じキレート樹脂15.9リットルを充填したシングルカラムを用い、同様の酸性溶液を吸着始液として、吸着温度60℃、SV20でBV30まで通液した(吸着工程)。次に、洗浄・溶離工程(Al+Fe洗浄処理工程、Sc溶離処理工程、Cr洗浄処理工程、純水洗浄処理工程)では、実施例1と同様の処理液をそれぞれ約30℃にてカラム上部から通液した。
下記表2に、実施例1(連続式カラム法)と比較例1(シングルカラム法)とにおける液量を比較した結果を示す。なお、比較例1において、シングルカラムの吸着工程における通液量は、実施例1と同様に、BV30×15.9リットル=447リットルの通液量として比較した。
Figure 0006623935
表2に示すように、Sc回収量は、比較例1のシングルカラムによる方法で5.3g/サイクルであったのに対して、実施例1の連続式カラムによる方法では6.8g/サイクルとなり、6.8/5.3×100%=128%と、28%も回収量が増加する結果となった。このことは、同量のScを回収しようとする場合に、連続式カラム法では5.3/6.8×100%=78%の通液量で十分であるといえ、これは、BV30×78%=23.4に相当する。
また、洗浄・溶離工程(Al+Fe洗浄処理工程、Sc溶離処理工程、Cr洗浄処理工程、純水洗浄処理工程)についても、実施例1の連続式カラムによる方法では、同条件(同じ樹脂量のシングルカラムの場合)と比較して、必要な液量(BV)を約40%にまで削減可能である結果となった。そして、これら4工程に使用する合計液量は、比較例1(シングルカラム)では318Lであったのに対して、実施例1(連続式カラム)では132Lであり、132/318×100%=41.5%の液量まで削減可能であることが分かった。
[実施例2]
図4の模式図に示すような30本のカラムを使用した連続向流多段式イオン交換装置を用いて、実施例1と同様にして、スカンジウム(Sc)を含有する酸性溶液(吸着始液)からScを吸着、溶離する処理を行った。そして、これらカラムの切り換えが起こる直前のカラム22(樹脂再生後)、カラム1(1段目吸着カラムでSc最大吸着のもの)、カラム10(2段目吸着カラムでSc最大吸着のもの)の3種のカラムについて、その樹脂中に吸着したスカンジウム濃度、クロム濃度を測定した。
なお、カラムにおいては、通液(縦)方向に吸着成分の濃度差が生じることから、カラムの上部、中部、下部と3等分にした後、縮分して、樹脂サンプルとした。図7に、それぞれのカラム中に吸着したスカンジウム濃度、クロム濃度の測定結果を示す。
図7のグラフに示すように、スカンジウムとクロムの再生後の樹脂(カラム22)の濃度を比較すると、その樹脂中には、クロムが2g/L−resin程度蓄積されており、一方で、スカンジウムは0.1g/L−resin以下まで除去されていることが分かった。このことから、両者の吸着の選択性は、クロムの方が優勢であるといえる。
次に、1段目吸着カラムであるカラム1と、2段目吸着カラムであるカラム10とを比較すると、通液量の少ない2段目吸着カラムであるカラム10では、クロム濃度が高く、樹脂の成分選択性に従った吸着がなされているが、1段目吸着カラムであるカラム1では、クロムがスカンジウムにより置換されていることが観察され、カラム1の方が、樹脂自体のスカンジウムの選択性が高まっていることが分かった。
このことは、スカンジウムとクロムとが効果的に分離されて、スカンジウムの精製効率の上昇を示すものであり、連続式カラム法を適用することで、スカンジウムをより高品位に回収することができるといえる。
このように、連続式カラムの方法を適用した実施例では、各工程を同時に行うことができ、常に連続してScの回収が可能となる。また、不純物の選択性を向上させることができ、Sc溶離液中のSc濃度を高めることができる。さらに、給液供給量を低減させることも可能となり、洗浄・溶離工程に要する薬剤使用量を有効に低減することができる。
[実施例3]
実施例2と同様に、図4の模式図に示すような30本のカラムを使用した連続向流多段式イオン交換装置を用いて、スカンジウム(Sc)を含有する酸性溶液(吸着始液)からScを吸着、溶離する処理を行った。そして、Sc溶離処理工程を経て回収されたSc溶離液中に含まれる成分量を測定した。なお、Sc溶離処理工程では、0.5Nの硫酸溶液を溶離液として通液させて処理した。
下記表3に、Sc溶離液中の成分含有量の測定結果を示す。また、表3では、実施例3とは異なり、シングルカラム法(比較例1と同様)によりイオン交換処理を行って得られたSc溶離液中の成分含有量の測定結果も併せて示す。
Figure 0006623935
表3に示すように、連続式カラム法により処理した実施例3では、Sc溶離液中に含まれるSc濃度が197mg/Lとなり、シングルカラム法により処理して得られたSc溶離液中のSc濃度よりも、およそ2.5倍も高濃度に含まれる結果となった。

Claims (13)

  1. カラムに充填されたキレート樹脂にスカンジウムを含有する酸性溶液を接触させて、該酸性溶液中のスカンジウムを該キレート樹脂に吸着させるイオン交換工程を含むスカンジウムの回収方法であって、
    前記イオン交換工程は、
    複数のカラムに充填された前記キレート樹脂にスカンジウムを吸着させる吸着工程と、
    吸着処理後のカラムを洗浄し、スカンジウムを溶離させる洗浄・溶離工程と、を有し、
    前記吸着工程では、前記複数のカラムのうちの所定の複数本からなる1段目のカラムに対して前記酸性溶液を並列に通液してスカンジウムを吸着させ、該1段目のカラムに通液後に得られる吸着後液を、前記複数のカラムのうち前記1段目のカラムとは異なる所定の複数本からなる2段目のカラムに対して並列に通液してスカンジウムをさらに吸着させ、
    前記洗浄・溶離工程では、吸着の終了した所定本数のカラムに対して、直列に洗浄液を通液させる
    スカンジウムの回収方法。
  2. 前記洗浄・溶離工程では、少なくともアルミニウム及び鉄を洗浄除去する処理(Al及びFe洗浄)と、吸着したスカンジウムを溶離させる処理(Sc溶離)と、クロムを洗浄除去する処理(Cr洗浄)と、キレート樹脂に付着した酸を除去する処理(酸除去)と、の各処理工程を行う
    請求項1に記載のスカンジウムの回収方法。
  3. 前記吸着工程では、前記複数のカラムを一組として、該カラム1本あたりに通液可能な前記酸性溶液の液量を該一組のカラムの本数で除した液量を、各カラムに複数回通液する
    請求項1又は2に記載のスカンジウムの回収方法。
  4. 前記洗浄・溶離工程では、Al及びFe洗浄、Sc溶離、Cr洗浄、酸除去の各処理工程を順次行うに際して、
    それぞれの処理工程において、カラム1本あたりに必要な通液量を各処理工程におけるカラムの所定本数で除した液量を、各カラムに複数回直列に通液し、
    前記カラム1本あたりに必要な通液量を通液し終えたカラムを、順次、次の処理工程に移動させる
    請求項2に記載のスカンジウムの回収方法。
  5. 前記Al及びFe洗浄処理工程におけるカラムの所定本数に等しい数のバッチにわたり、0.1N以下の硫酸洗浄液を各カラムに直列に通液し、バッチ毎に該カラムを下流側に移動させて切り換える
    請求項4に記載のスカンジウムの回収方法。
  6. 前記Sc溶離処理工程におけるカラムの所定本数に等しい数のバッチにわたり、溶離液を各カラムに直列に通液し、バッチ毎に該カラムを下流側に移動させて切り換える
    請求項4に記載のスカンジウムの回収方法。
  7. 前記Cr洗浄処理工程におけるカラムの所定本数に等しい数のバッチにわたり、3N以上の硫酸洗浄液を各カラムに直列に通液し、バッチ毎に該カラムを下流側に移動させて切り換える
    請求項4に記載のスカンジウムの回収方法。
  8. 前記酸除去処理工程におけるカラムの所定本数に等しい数のバッチにわたり、洗浄水を各カラムに直列に通液し、バッチ毎に該カラムを下流側に移動させて切り換える
    請求項4に記載のスカンジウムの回収方法。
  9. 前記吸着工程及び前記洗浄・溶離工程における操作に必要な本数のカラムを直列に配置し、全カラム数に等しい数のバッチにわたり、バッチ毎に各カラムを順次下流側に移動させて切り換えることにより、各バッチにおいて各工程を同時に行い、1つのカラムがすべての工程を終了した時点を1サイクルとする
    請求項1乃至8のいずれか1項に記載のスカンジウムの回収方法。
  10. 前記キレート樹脂として、イミノジ酢酸塩を官能基とするキレート樹脂を使用する
    請求項1乃至9のいずれか1項に記載のスカンジウムの回収方法。
  11. 前記洗浄・溶離工程において、前記キレート樹脂からスカンジウムを溶離させる処理を行い、得られたスカンジウム溶離液中のスカンジウム濃度が、単一のカラム(シングルカラム)を使用して前記吸着工程及び前記洗浄・溶離工程を実施した場合に得られるスカンジウム溶離液中のスカンジウム濃度よりも高くなる
    請求項1乃至10のいずれか1項に記載のスカンジウムの回収方法。
  12. 前記洗浄・溶離工程において使用される薬剤使用量が、単一のカラム(シングルカラム)を使用して前記吸着工程及び前記洗浄・溶離工程を実施した場合に必要な薬剤使用量よりも少ない
    請求項1乃至11のいずれか1項に記載のスカンジウムの回収方法。
  13. 前記洗浄・溶離工程において、前記キレート樹脂に付着した酸を除去する処理工程では、酸除去溶液として、前記吸着工程にて通液する前記酸性溶液を使用する
    請求項2に記載のスカンジウムの回収方法。
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