JP2016153534A - スカンジウム回収方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、Ni酸化鉱を硫酸とともに加圧容器に装入し、浸出液と浸出残渣とに固液分離する浸出工程S1と、浸出液に中和剤を加え、中和澱物と中和後液とを得る中和工程S2と、中和後液に硫化剤を添加し、Ni硫化物と硫化後液とに分離する硫化工程S3と、硫化後液をキレート樹脂に接触させてScをキレート樹脂に吸着させ、Sc溶離液を得るイオン交換工程S4と、Sc溶離液を抽出剤に接触させ、抽出液に逆抽出剤を加えることで逆抽出物を得る溶媒抽出工程S6と、逆抽出物を焼成して、酸化Scを得る焙焼工程S8とを含む。加えて、イオン交換工程S4の後、Sc溶離液から澱物を生成し、この澱物を酸溶解する濃縮工程S5や、溶媒抽出工程S6の後、逆抽出物を塩酸で溶解し、さらにシュウ酸を加えてシュウ酸Scの結晶を得るSc沈殿工程S7をさらに含むことが好ましい。
【選択図】図1
Description
浸出工程S1では、スカンジウム、アルミニウム及びクロムを含有するニッケル酸化鉱を硫酸とともに加圧容器に装入し、高温高圧下で浸出液と浸出残渣とに固液分離する。
中和工程S2では、浸出工程S1で得られた浸出液に中和剤を加え、中和澱物と中和後液とを得る。スカンジウムやニッケル等の有価金属は中和後液に含まれ、アルミニウムをはじめとした不純物の大部分は中和澱物に含まれる。
硫化工程S3では、中和後液に硫化剤を添加し、硫化物と硫化後液とに分離する。ニッケル、コバルト及び亜鉛等は硫化物に含まれ、スカンジウム等は硫化後液に含まれる。
イオン交換工程S4では、硫化後液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムをキレート樹脂に吸着させ、スカンジウム溶離液を得る。イオン交換工程S4の態様は特に限定されるものではないが、イオン交換工程S4は、硫化後液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムを前記キレート樹脂に吸着させる吸着工程S41と、この吸着工程S41でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に0.1N以下の硫酸を接触させ、吸着工程S41でキレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去するアルミニウム除去工程S42と、このアルミニウム除去工程S42を経たキレート樹脂に0.3N以上3N以下、より好ましくは0.4N以上0.6N以下の硫酸を接触させ、スカンジウム溶離液を得るスカンジウム溶離工程S43と、このスカンジウム溶離工程S43を経たキレート樹脂に3N以上の硫酸を接触させ、吸着工程S41でキレート樹脂に吸着したクロムを除去するクロム除去工程S44とを含むことが好ましい。
吸着工程S41では、硫化後液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムをキレート樹脂に吸着させる。
アルミニウム除去工程S42では、吸着工程S41でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に0.1N以下の硫酸を接触させ、吸着工程S41でキレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去する。
スカンジウム溶離工程S43では、アルミニウム除去工程S42を経たキレート樹脂に0.3N以上3N未満の硫酸を接触させ、スカンジウム溶離液を得る。
クロム除去工程S44では、スカンジウム溶離工程S43を経たキレート樹脂に3N以上の硫酸を接触させ、吸着工程S41でキレート樹脂に吸着したクロムを除去する。
また、図示していないが、ニッケル酸化鉱に、不純物として鉄が含まれている場合がある。この場合、アルミニウム除去工程S42に先立ち、吸着工程S41でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に、アルミニウム除去工程S42で使用する硫酸の規定度よりも小さい規定度の硫酸を接触させ、吸着工程S41でキレート樹脂に吸着した鉄を除去することが好ましい。
また、必須の態様ではないが、スカンジウム溶離工程S43で得たスカンジウム溶離液に中和剤を添加してpHを2以上4以下の範囲、好ましくはpH3を中心とした2.7〜3.3の範囲に調整し(工程S101)、次いで還元剤を添加し(工程S102)、次いで硫酸を添加してpHを1以上2.5以下の範囲、好ましくはpH2を中心とした1.7〜2.3の範囲に調整する(工程S103)ことでスカンジウム溶離液のpH調整後液を得、このpH調整後液を用いて上記吸着工程S41、上記アルミニウム除去工程S42及び上記スカンジウム溶離工程S43を再び行うことが好ましい。これらの工程を経ることで、回収されるスカンジウムの品位をいっそう高めることができる。また、スカンジウム溶離液からスカンジウムを分離する際の薬剤コストや設備規模を縮減できる。
スカンジウム溶離工程S43によって得られたスカンジウム溶離液に対して再びスカンジウム溶離工程S43を行うことで、スカンジウム溶離液の濃度を高めることができる。
また、必須ではないが、上記イオン交換工程S4の後に、濃縮工程S5を設けて、スカンジウム溶離液に含まれるスカンジウムの沈殿を生じさせて不純物と分離し、さらにこの沈殿を硫酸及び/又は塩酸で溶解して、次工程の溶媒抽出に供する抽出始液に供する処理を行うことが好ましい。
以下では、濃縮の一態様である水酸化中和について説明する。水酸化中和を採用する場合、イオン交換工程S4で得られたスカンジウム溶離液に中和剤を添加して、沈殿物を得て固液分離する。次いで、酸で溶解し酸性溶液を得る。
続いて、濃縮の別態様であるシュウ酸化について説明する。シュウ酸化を採用する場合、スカンジウム溶離液にシュウ酸を添加してシュウ酸スカンジウムの結晶にする。このとき、pHは0以上0.5以下であることが好ましい。pHが低すぎると、スカンジウムシュウ酸塩の溶解度が増加し、スカンジウム回収率が低下するため、好ましくない。pHが高すぎると、溶解液中に含まれる不純物が沈殿しスカンジウム純度を下げてしまうため、好ましくない。
また、濃縮の別態様として、上記の水酸化中和とシュウ酸化との両方を行うことが挙げられる。まず、スカンジウム溶離工程S43で得られたスカンジウム溶離液に上記の水酸化中和を行って水酸化スカンジウムを含有する沈殿物を得る。次いで、この沈殿物に塩酸を添加して再溶解し、この再溶解液にシュウ酸を添加し、シュウ酸スカンジウムの結晶として沈殿させる。次いで、この結晶を上記のように、酸溶解し、溶媒抽出工程S6に付する。
溶媒抽出工程S6では、スカンジウム溶離液を抽出剤に接触させ、抽出液に逆抽出剤を加えることで逆抽出物を得る。溶媒抽出工程S6の態様は特に限定されないが、スカンジウム溶離液と有機溶媒である抽出剤とを混合し、スカンジウムを抽出した抽出後有機溶媒と抽残液とに分離する抽出工程S61と、この抽出後有機溶媒に、塩酸溶液又は硫酸溶液を混合して抽出後有機溶媒から不純物を分離して洗浄後有機溶媒を得るスクラビング工程S62と、洗浄後有機溶媒に逆抽出剤を添加し、洗浄後有機溶媒からスカンジウムを逆抽出して逆抽出物を得る逆抽出工程S63とを含むことが好ましい。溶媒抽出工程S6を行うことで、スカンジウム溶離液に含まれるスカンジウムの純度をよりいっそう高めることができる。
抽出工程では、スカンジウム溶離液と、抽出剤を含む有機溶媒とを混合して、有機溶媒中にスカンジウムを選択的に抽出する。抽出剤には様々な種類があるが、スカンジウムとの選択性から、リンを含む酸性抽出剤、具体的には、ジ−2−エチルヘキシルリン酸(D2EHPA)、2−エチルヘキシルホスホン酸−モノ−2−エチルヘキシル(2−ethylhexy 2−ethylhexyl phosphoric acid)(商品名:PC−88A)等を用いることが好ましい。
必須の態様ではないが、スカンジウムを抽出した溶媒中にスカンジウム以外の不純物元素が共存する場合には、抽出液を逆抽出する前に、有機溶媒(有機相)にスクラビング(洗浄)処理を施し、不純物元素を水相に分離して抽出剤から除去することが好ましい。
逆抽出工程S63では、スカンジウムを抽出した有機溶媒から、スカンジウムを逆抽出する。逆抽出工程S63は、有機溶媒と逆抽出溶液(逆抽出始液)とを混合することで、抽出時の逆反応を進行させる工程である。
溶媒抽出工程S6の後、固体のスカンジウム塩を焙焼する焙焼工程S8を行うことで、ニッケル酸化鉱から酸化スカンジウムを回収できる。上記したとおり、本発明では、逆抽出工程S63において、既に水酸化スカンジウムの沈殿物が得られている。そのため、焙焼工程S8では、固体の水酸化スカンジウムをそのまま焼成して酸化スカンジウムの固体を得ることもできる。しかしながら、この水酸化スカンジウムは、依然として不純物を含み得るものであるため、スカンジウムの純度を高めるため、焙焼工程S8の前に、水酸化スカンジウムを塩酸等で酸溶解し、シュウ酸を加えてシュウ酸スカンジウムにするスカンジウム沈殿工程S7を行い、その後、シュウ酸スカンジウムを焙焼工程S8に供することで酸化スカンジウムを得ることが好ましい。
スカンジウム沈殿工程S7は、溶媒抽出工程S6で得た逆抽出物を酸で中和し、さらにシュウ酸を加えてシュウ酸スカンジウムの固体として析出、沈殿させて分離する工程である。酸に溶解するときのpHは、0以上0.5以下であることが好ましい。pHが0未満のように低すぎると、スカンジウムシュウ酸塩の溶解度が増加し、スカンジウム回収率が低下するため好ましくない。pHが0.5を超えると、溶解液中に含まれる不純物が沈殿しスカンジウム純度を下げてしまうため、好ましくない。
焙焼工程S8は、スカンジウム沈殿工程S7で得られた沈殿物を水で洗浄し、乾燥し、焙焼する工程である。焙焼工程S8を経ることで、極めて高品位な酸化スカンジウムを得ることができる。
また、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、スカンジウムをキレート樹脂で分離し、さらに溶媒抽出に付すことによって得られるスカンジウム含有物を焙焼することで、高品位のスカンジウムを簡便かつ効率よく得られることを見出し、本実施形態に記載の他の発明を完成するに至った。具体的に、本実施形態に記載の他の発明では、以下のようなものを提供する。
[浸出工程S1]
まず、ニッケル酸化鉱を濃硫酸とともにオートクレーブに装入し、245℃の条件下で1時間かけてスカンジウムやニッケル等の有価金属を含有するスラリーを生成させ、このスラリーから各種の有価金属を含有する浸出液と、浸出残渣とに固液分離した。
そして、この浸出液に炭酸カルシウムを添加し、中和澱物と中和後液とを得た。スカンジウムやニッケル等の有価金属は中和後液に含まれ、アルミニウムをはじめとした不純物の大部分は中和澱物に含まれる。
続いて、中和後液に硫化水素ガスを吹き込み、ニッケルやコバルトや亜鉛を硫化物として硫化後液と分離した。
〔吸着工程S41〕
この硫化後液に中和剤として消石灰を添加してpHを1.6に調整した。加えて、消石灰添加後の液には含まれていないか、含まれているとしても含有量がごく微量である元素の挙動も明らかにするため、一部の元素については試薬を添加し、表1に示す組成の吸着元液を得た。
次に、このキレート樹脂に、濃度0.1Nの硫酸溶液800リットルを(SVが40となる)毎分27リットルの流量で通液した。カラムから排出された残留したアルミの多い洗浄液は、アルミ洗浄液として貯液し、一部をサンプリングしてICPで分析した。
分析値は、Ni:7mg/l、Mg:1mg/l、Mn:4mg/l、Fe:1mg/l、Al:84mg/l、Sc:3mg/lであった。Cr、Caの分析値は、測定可能な下限以下であった。
その後、キレート樹脂に、濃度1Nの硫酸溶液400リットルを(SVが40となる)毎分80リットルの流量で通液した。カラムから排出された溶離液は、スカンジウム溶離液として貯液しサンプリングして分析した。結果を表2に示す。Mn、Caの分析値は、測定可能な下限以下であった。
続いて、キレート樹脂に、濃度3Nの硫酸溶液80リットルを(SVが40となる)毎分2.6リットルの流量で通液した。カラムから排出された洗浄液は、クロム洗浄液として貯液しサンプリングして分析した。分析値は、Fe:2mg/l、Cr:30mg/lであった。Ni、Mg、Mn、Al、Ca、Scの分析値は、測定可能な下限以下であった。
次に、表2の組成のスカンジウム溶離液に、水酸化ナトリウムを添加してpHを8〜9に維持し、沈殿を生成させた。この沈殿に硫酸を添加して溶解し、キレート溶離液水酸化物溶解液を得た。キレート溶離液水酸化物溶解液の組成を分析した結果を表3に示す。Mg、Cr、Mn、Caの分析値は、測定可能な下限以下であった。
〔抽出工程S61〕
上記表3の組成の溶解液103リットルを抽出始液とした。これに、酸性抽出剤、ジ−2−エチルヘキシルリン酸(D2EHPA、ランクセス社製)を溶剤テクリーンN20(JX日鉱日石社製)を用いて13体積%に調整した有機溶媒2.6リットルを混合して室温で60分撹拌し、スカンジウムを含む抽出有機相を得た。抽出時にクラッドを形成することはなく、静置後の相分離も迅速に進行した。
次に、抽出工程で得られたスカンジウムを含む2.6リットルの有機溶媒(抽出有機相)に、濃度6.5mol/lの塩酸溶液を、相比(O/A)が1の比率となる2.6リットル混合し、10分間撹拌して洗浄した。その後、静置して水相を分離し、有機相は再び濃度6.5mol/lの新たな塩酸溶液2.6リットルと混合して洗浄し、同様に水相を分離した。このような洗浄操作を合計3回繰り返した。
次に、洗浄後の抽出有機相に、濃度6mol/lの水酸化ナトリウムを、相比O/A=1/1の比率となるように混合して20分撹拌し、スカンジウムを水相に逆抽出した。逆抽出操作によって析出した固体と液相が混じったスラリー状態となったので、濾過して、固体と液相とを分離した。固体については、水洗浄し、固体に付着する有機相や逆抽出後液を除去した。液相については、液相に塩酸を添加して5分間撹拌し、静置して逆抽出後有機溶媒の有機相と逆抽出後液の水相とを分離した。
次に、上記で得た水酸化スカンジウムの固体に塩酸を添加してスラリーのpHを1.0以上1.5以下の範囲に維持しつつ、撹拌して水酸化スカンジウムの固体を完全に溶解し再溶解液を得た。次いで、再溶解液に対し、再溶解液に含まれるスカンジウム量に対して計算量で2倍となるシュウ酸・2水和物(三菱ガス社製)の結晶を溶解し、60分撹拌混合してシュウ酸スカンジウムの白色結晶性沈殿を生成させた。
上記のスカンジウム沈殿工程で得たシュウ酸スカンジウムを吸引濾過し、純水を用いて洗浄し、105℃で8時間乾燥させた。続いて、シュウ酸スカンジウムを管状炉に入れて850〜900℃に維持して焙焼(焼成)させて、酸化スカンジウムを得た。
S2 中和工程
S3 硫化工程
S4 イオン交換工程
S5 濃縮工程
S6 溶媒抽出工程
S7 スカンジウム沈殿工程
S8 焙焼工程
Claims (4)
- スカンジウム、アルミニウム及びクロムを含有する溶液をキレート樹脂に接触させて前記スカンジウムを前記キレート樹脂に吸着させる吸着工程と、
前記吸着工程でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に0.1N以下の硫酸を接触させ、前記吸着工程で前記キレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去するアルミニウム除去工程と、
前記アルミニウム除去工程を経たキレート樹脂に0.3N以上3N未満の硫酸を接触させ、スカンジウム溶離液を得るスカンジウム溶離工程と、
前記スカンジウム溶離液を酸性抽出剤に接触させ、抽出液に逆抽出剤を加えることで逆抽出物を得る溶媒抽出工程とを含む、スカンジウム回収方法。 - 前記スカンジウム溶離工程の後、前記スカンジウム溶離液からスカンジウムを含有する澱物を生成し、この澱物を硫酸で溶解してスカンジウム濃縮液を得る濃縮工程をさらに含み、
前記溶媒抽出工程は、前記スカンジウム濃縮液を前記酸性抽出剤に接触させ、逆抽出物を得る工程を含む、請求項1に記載のスカンジウム回収方法。 - 前記スカンジウム溶離工程を経たキレート樹脂に3N以上の硫酸を接触させ、前記吸着工程で前記キレート樹脂に吸着したクロムを除去するクロム除去工程をさらに含む、請求項1又は2に記載のスカンジウム回収方法。
- 前記スカンジウム溶離工程は、前記アルミニウム除去工程を経たキレート樹脂に0.3N以上1N以下の硫酸を接触させ、スカンジウム溶離液を得る工程である、請求項1から3のいずれかに記載のスカンジウム回収方法。
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