JP2016153534A - スカンジウム回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ニッケル酸化鉱から高品位のスカンジウムを効率よく回収する。
【解決手段】本発明は、Ni酸化鉱を硫酸とともに加圧容器に装入し、浸出液と浸出残渣とに固液分離する浸出工程S1と、浸出液に中和剤を加え、中和澱物と中和後液とを得る中和工程S2と、中和後液に硫化剤を添加し、Ni硫化物と硫化後液とに分離する硫化工程S3と、硫化後液をキレート樹脂に接触させてScをキレート樹脂に吸着させ、Sc溶離液を得るイオン交換工程S4と、Sc溶離液を抽出剤に接触させ、抽出液に逆抽出剤を加えることで逆抽出物を得る溶媒抽出工程S6と、逆抽出物を焼成して、酸化Scを得る焙焼工程S8とを含む。加えて、イオン交換工程S4の後、Sc溶離液から澱物を生成し、この澱物を酸溶解する濃縮工程S5や、溶媒抽出工程S6の後、逆抽出物を塩酸で溶解し、さらにシュウ酸を加えてシュウ酸Scの結晶を得るSc沈殿工程S7をさらに含むことが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、スカンジウムの回収方法に関する。
スカンジウムは、高強度合金の添加剤や燃料電池の電極材料として極めて有用である。しかしながら、生産量が少なく、高価であるため、広く用いられるには至っていない。
ところで、ラテライト鉱やリモナイト鉱等のニッケル酸化鉱には、微量のスカンジウムが含まれている。しかしながら、ニッケル酸化鉱では、ニッケル含有品位が低いため、長らく、ニッケル酸化鉱をニッケル原料として工業的に利用されてこなかった。そのため、ニッケル酸化鉱からスカンジウムを工業的に回収することもほとんど研究されていなかった。
しかしながら、近年、ニッケル酸化鉱を硫酸とともに加圧容器に装入し、240〜260℃程度の高温に加熱してニッケルを含有する浸出液と浸出残渣とに固液分離するHPALプロセスが実用化されつつある。このHPALプロセスで得た浸出液に対し、中和剤を添加して不純物が分離され、次いで硫化剤を添加してニッケルをニッケル硫化物として回収され、このニッケル硫化物を既存のニッケル製錬工程で処理して電気ニッケルやニッケル塩化合物が得られている。
上記のようなHPALプロセスを用いる場合、ニッケル酸化鉱に含まれるスカンジウムは、ニッケルとともに浸出液に含まれる(特許文献1参照)。そして、HPALプロセスで得た浸出液に対し、中和剤を添加して不純物を分離し、次いで硫化剤を添加すると、ニッケルはニッケル硫化物として回収される一方、スカンジウムは、硫化剤添加後の酸性溶液に含まれるため、HPALプロセスを使用することで、ニッケルとスカンジウムとを効果的に分離できる。
そして、上記酸性溶液からスカンジウムを回収する方法として、イミノジ酢酸塩を官能基とするキレート樹脂にスカンジウムを吸着させて不純物と分離し、濃縮することが提案されている(特許文献2〜4参照)。
ところで、ニッケル酸化鉱石から溶媒抽出を用いてスカンジウムを回収する方法も提案されている(特許文献5参照)。特許文献5では、スカンジウムの他に少なくとも鉄、アルミニウム、カルシウム、イットリウム、マンガン、クロム、マグネシウムの1種以上を含有する水相の含スカンジウム溶液に、2−エチルヘキシルスルホン酸−モノ−2−エチルヘキシルをケロシンで希釈した有機溶媒を加えて、スカンジウム成分を有機溶媒中に抽出し、次いで、有機溶媒中にスカンジウム共に抽出されたイットリウム、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムを分離するために、塩酸水溶液を加えてスクラビングを行い、イットリウム、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムを除去した後、有機溶媒中にNaOH水溶液を加えて、有機溶媒中に残存するスカンジウムをSc(OH)を含むスラリーとし、これを濾過して得たSc(OH)を塩酸で溶解し、塩化スカンジウム水溶液を得、これにシュウ酸を加えてシュウ酸スカンジウム沈殿とし、沈殿を濾過し、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムを濾液中に分離した後、仮焼することにより高純度な酸化スカンジウムを得ることが提案されている。
特開平3−173725号公報 特開平1−133920号公報 特開平9−176756号公報 特開平9−194211号公報 特開平9−291320号公報
しかしながら、キレート樹脂を単独で使用しただけでは、鉄、アルミ、クロム等は溶離液中への分配が非常に小さいが原料中に多量に含まれているため分離のためには複数回の吸着・溶離操作が必要となる。また、その他ごく微量に含まれる複数の不純物の吸着・溶離挙動はスカンジウムよりも劣るものの溶離液中への分配が高いため分離が困難であった。
一方、溶媒抽出では、ニッケル酸化鉱に含有するスカンジウム品位が非常に微量であるため工程液を直接処理することは回収率や設備容量が大きくなるためコスト的に困難であった。
このように、ニッケル酸化鉱石からスカンジウムを工業的に回収するのに適した方法は見出されなかった。
本発明は、スカンジウム、アルミニウム及びクロムを含有する溶液から高品位のスカンジウムを簡便かつ効率よく回収することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、スカンジウムをキレート樹脂で分離し、さらに溶媒抽出に付すことによって得られるスカンジウム含有物を焙焼することで、高品位のスカンジウムを簡便かつ効率よく得られることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明では、以下のようなものを提供する。
(1)本発明は、スカンジウム、アルミニウム及びクロムを含有する溶液をキレート樹脂に接触させて前記スカンジウムを前記キレート樹脂に吸着させる吸着工程と、前記吸着工程でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に0.1N以下の硫酸を接触させ、前記吸着工程で前記キレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去するアルミニウム除去工程と、前記アルミニウム除去工程を経たキレート樹脂に0.3N以上3N未満の硫酸を接触させ、スカンジウム溶離液を得るスカンジウム溶離工程と、前記スカンジウム溶離液を酸性抽出剤に接触させ、抽出液に逆抽出剤を加えることで逆抽出物を得る溶媒抽出工程とを含む、スカンジウム回収方法である。
(2)また、本発明は、前記スカンジウム溶離工程の後、前記スカンジウム溶離液からスカンジウムを含有する澱物を生成し、この澱物を硫酸で溶解してスカンジウム濃縮液を得る濃縮工程をさらに含み、前記溶媒抽出工程は、前記スカンジウム濃縮液を前記酸性抽出剤に接触させ、逆抽出物を得る工程を含む、(1)に記載のスカンジウム回収方法である。
(3)また、本発明は、前記スカンジウム溶離工程を経たキレート樹脂に3N以上の硫酸を接触させ、前記吸着工程で前記キレート樹脂に吸着したクロムを除去するクロム除去工程をさらに含む、(1)又は(2)に記載のスカンジウム回収方法である。
(4)また、本発明は、前記スカンジウム溶離工程が、前記アルミニウム除去工程を経たキレート樹脂に0.3N以上1N以下の硫酸を接触させ、スカンジウム溶離液を得る工程である、(1)から(3)のいずれかに記載のスカンジウム回収方法である。
本発明によると、スカンジウム、アルミニウム及びクロムを含有する溶液から高品位のスカンジウムを効率よく回収できる。
本発明に係るスカンジウムの回収方法を説明するための図である。 上記回収方法を使用したときに、有機溶媒に含まれるSc、Th、U、Al及びFeの抽出率を示す図である。 上記回収方法を使用したときの硫酸濃度と洗浄率との関係を示す図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
図1は、本発明に係るスカンジウムの回収方法を説明するための図である。本発明は、スカンジウム、アルミニウム及びクロムを含有するニッケル酸化鉱を硫酸とともに加圧容器に装入し、高温高圧下で浸出液と浸出残渣とに固液分離する浸出工程S1と、前記浸出液に中和剤を加え、中和澱物と中和後液とを得る中和工程S2と、前記中和後液に硫化剤を添加し、ニッケル硫化物と硫化後液とに分離する硫化工程S3と、前記硫化後液をキレート樹脂に接触させて前記スカンジウムを前記キレート樹脂に吸着させ、スカンジウム溶離液を得るイオン交換工程S4と、スカンジウム溶離液を抽出剤に接触させ、抽出液に逆抽出剤を加えることで逆抽出物を得る溶媒抽出工程S6と、前記逆抽出物を焼成して、酸化スカンジウムを得る焙焼工程S8とを含む、スカンジウム回収方法。
本発明は、スカンジウムを回収し、精製するにあたり、イオン交換と溶媒抽出とを併用することを特徴とする。本発明の方法を用いることで、不純物をより高品位で分離でき、ニッケル酸化鉱石のような多くの不純物を含有する原料からであっても、コンパクトな設備で安定した操業を行うことができる。
なお、必須の態様ではないが、イオン交換工程S4の後、溶媒抽出工程S6に先立ち、スカンジウム溶離液からスカンジウムを含有する澱物を生成し、この澱物を酸溶解してスカンジウム濃縮液を得る濃縮工程S5を行ってもよい。
また、必須の態様ではないが、溶媒抽出工程S6の後、焙焼工程S8に先立ち、逆抽出物を塩酸で溶解し、この溶解で得られる塩酸溶解液にシュウ酸を加えてシュウ酸スカンジウムの結晶を得るスカンジウム沈殿工程S7をさらに行ってもよい。
また、必須の態様ではないが、イオン交換工程S4で得たスカンジウム溶離液に中和剤を添加し(工程S101)、次いで還元剤を添加し(工程S102)、次いで硫酸を添加する(工程S103)ことでスカンジウム溶離液のpH調整後液を得、このpH調整後液を用いてイオン交換工程S4を再び行ってもよい。これらの工程を経ることで、回収されるスカンジウムの品位をいっそう高めることができる。
<浸出工程S1>
浸出工程S1では、スカンジウム、アルミニウム及びクロムを含有するニッケル酸化鉱を硫酸とともに加圧容器に装入し、高温高圧下で浸出液と浸出残渣とに固液分離する。
浸出工程S1は、従来知られているHPALプロセスにしたがって行えばよく、例えば、特許文献1に記載されている。
<中和工程S2>
中和工程S2では、浸出工程S1で得られた浸出液に中和剤を加え、中和澱物と中和後液とを得る。スカンジウムやニッケル等の有価金属は中和後液に含まれ、アルミニウムをはじめとした不純物の大部分は中和澱物に含まれる。
中和剤は従来公知のものであれば足り、例えば、炭酸カルシウム、消石灰、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
中和工程では、pHを1〜4の範囲に調整することが好ましく、pHを1.5〜2.5の範囲に調整することがより好ましい。pHが1未満であると、中和が不十分であり、中和澱物と中和後液とに分離できない可能性があるため、好ましくない。pHが4を超えると、アルミニウムをはじめとした不純物のみならず、スカンジウムやニッケル等の有価金属も中和澱物に含まれるため、好ましくない。
<硫化工程S3>
硫化工程S3では、中和後液に硫化剤を添加し、硫化物と硫化後液とに分離する。ニッケル、コバルト及び亜鉛等は硫化物に含まれ、スカンジウム等は硫化後液に含まれる。
硫化剤は従来公知のものであれば足り、例えば、硫化水素ガス、硫化ナトリウム、水素化硫化ナトリウム等が挙げられる。
<イオン交換工程S4>
イオン交換工程S4では、硫化後液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムをキレート樹脂に吸着させ、スカンジウム溶離液を得る。イオン交換工程S4の態様は特に限定されるものではないが、イオン交換工程S4は、硫化後液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムを前記キレート樹脂に吸着させる吸着工程S41と、この吸着工程S41でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に0.1N以下の硫酸を接触させ、吸着工程S41でキレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去するアルミニウム除去工程S42と、このアルミニウム除去工程S42を経たキレート樹脂に0.3N以上3N以下、より好ましくは0.4N以上0.6N以下の硫酸を接触させ、スカンジウム溶離液を得るスカンジウム溶離工程S43と、このスカンジウム溶離工程S43を経たキレート樹脂に3N以上の硫酸を接触させ、吸着工程S41でキレート樹脂に吸着したクロムを除去するクロム除去工程S44とを含むことが好ましい。
[吸着工程S41]
吸着工程S41では、硫化後液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムをキレート樹脂に吸着させる。
キレート樹脂の種類は特に限定されるものでないが、イミノジ酢酸を官能基とする樹脂であることが好ましい。
ところで、pH範囲が低いほど、ニッケル酸化鉱に含まれる不純物の吸着量は少なくなる。そのため、できるだけ低いpH領域の液をキレート樹脂に通液することで、不純物のキレート樹脂への吸着を抑制できる。しかしながら、pHが2未満であると、不純物の吸着量だけでなく、スカンジウムの吸着量も少なくなる。そのため、極端に低いpH領域の液を樹脂に通液して吸着させるのは好ましくない。
[アルミニウム除去工程S42]
アルミニウム除去工程S42では、吸着工程S41でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に0.1N以下の硫酸を接触させ、吸着工程S41でキレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去する。
アルミニウムを除去する際、pHを1以上2.5以下の範囲に維持することが好ましく、1.5以上2.0以下の範囲に維持することがより好ましい。pHが1未満であると、アルミニウムだけでなく、スカンジウムもキレート樹脂から除去されるため、好ましくない。pHが2.5を超えると、アルミニウムが適切にキレート樹脂から除去されないため、好ましくない。
[スカンジウム溶離工程S43]
スカンジウム溶離工程S43では、アルミニウム除去工程S42を経たキレート樹脂に0.3N以上3N未満の硫酸を接触させ、スカンジウム溶離液を得る。
スカンジウム溶離液を得る際、溶離液に用いる硫酸の規定度を0.3N以上3N未満の範囲に維持することが好ましく、0.5N以上2N未満の範囲に維持することがより好ましい。そして、規定度は、1N以下の範囲に維持することがさらに好ましい。規定度が高すぎると、スカンジウムだけでなく、クロムもスカンジウム溶離液に含まれてしまうため、好ましくない。規定度が低すぎると、スカンジウムが適切にキレート樹脂から除去されないため、好ましくない。
[クロム除去工程S44]
クロム除去工程S44では、スカンジウム溶離工程S43を経たキレート樹脂に3N以上の硫酸を接触させ、吸着工程S41でキレート樹脂に吸着したクロムを除去する。
クロムを除去する際、溶離液に用いる硫酸の規定度が3Nを下回ると、クロムが適切にキレート樹脂から除去されないため、好ましくない。
[鉄除去工程]
また、図示していないが、ニッケル酸化鉱に、不純物として鉄が含まれている場合がある。この場合、アルミニウム除去工程S42に先立ち、吸着工程S41でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に、アルミニウム除去工程S42で使用する硫酸の規定度よりも小さい規定度の硫酸を接触させ、吸着工程S41でキレート樹脂に吸着した鉄を除去することが好ましい。
鉄を除去する際、pHを1以上3以下の範囲に維持することが好ましい。pHが1未満であると、鉄だけでなく、スカンジウムもキレート樹脂から除去されるため、好ましくない。pHが3を超えると、鉄が適切にキレート樹脂から除去されないため、好ましくない。
<スカンジウム溶離液のキレート樹脂への再吸着>
また、必須の態様ではないが、スカンジウム溶離工程S43で得たスカンジウム溶離液に中和剤を添加してpHを2以上4以下の範囲、好ましくはpH3を中心とした2.7〜3.3の範囲に調整し(工程S101)、次いで還元剤を添加し(工程S102)、次いで硫酸を添加してpHを1以上2.5以下の範囲、好ましくはpH2を中心とした1.7〜2.3の範囲に調整する(工程S103)ことでスカンジウム溶離液のpH調整後液を得、このpH調整後液を用いて上記吸着工程S41、上記アルミニウム除去工程S42及び上記スカンジウム溶離工程S43を再び行うことが好ましい。これらの工程を経ることで、回収されるスカンジウムの品位をいっそう高めることができる。また、スカンジウム溶離液からスカンジウムを分離する際の薬剤コストや設備規模を縮減できる。
還元剤の添加は、酸化還元電位(ORP)が銀塩化銀電極を参照電極とする値で200mVを越えて300mV以下となる範囲に維持するように行うことが好ましい。酸化還元電位が200mV以下であると、添加された硫化剤に由来する硫黄分が微細な固体として析出し、硫化後の濾過工程で濾布を目詰まりさせて固液分離を悪化させ生産性の低下原因となったり、キレート樹脂に再通液する際に、樹脂塔内で目詰まりや液流れの偏りを生じ均一な通液が行えない等の原因となり得る。一方、酸化還元電位が300mVを超えると、残留する鉄イオン等が樹脂に吸着しスカンジウムの吸着を阻害する等の問題を生じ得る。
中和剤は従来公知のものであれば足り、例えば、炭酸カルシウム等が挙げられる。また、還元剤は従来公知のものであれば足り、例えば、硫化水素ガス、硫化ナトリウム等の硫化剤や二酸化硫黄ガス、ヒドラジン、金属鉄等が挙げられる。
スカンジウム溶離液のキレート樹脂への再吸着を行うにあたり、キレート樹脂は、すでに使用したものを再使用してもよいし、新たなキレート樹脂を使用してもよいが、不純物のコンタミを防止する観点から、クロム除去工程S44を経たキレート樹脂を再使用するか、新たなキレート樹脂を使用することが好ましい。特に、クロム除去工程S44を経たキレート樹脂を再使用することで、不純物のコンタミを防止できるだけでなく、キレート樹脂の使用量を抑えられる。
<スカンジウム溶離液の精製>
スカンジウム溶離工程S43によって得られたスカンジウム溶離液に対して再びスカンジウム溶離工程S43を行うことで、スカンジウム溶離液の濃度を高めることができる。
スカンジウム溶離工程S43を数多く繰り返すほど、回収されるスカンジウムの濃度が高まるが、多く繰り返し過ぎても、回収されるスカンジウムの濃度の上昇の程度が小さくなるため、工業的には、スカンジウム溶離工程S43を繰り返す回数は8回以下であることが好ましい。
<濃縮工程S5>
また、必須ではないが、上記イオン交換工程S4の後に、濃縮工程S5を設けて、スカンジウム溶離液に含まれるスカンジウムの沈殿を生じさせて不純物と分離し、さらにこの沈殿を硫酸及び/又は塩酸で溶解して、次工程の溶媒抽出に供する抽出始液に供する処理を行うことが好ましい。
具体的な濃縮手法として、水酸化中和、シュウ酸化、又は水酸化中和とシュウ酸化との両方を行うことのいずれを採用してもよいが、得られた沈殿物の溶解度付近で溶解することが好ましい。得られた沈殿物の溶解度付近で溶解することで、一度固体を析出させて任意の濃度に再溶解できるので、スカンジウム濃度を任意に選択でき高めることができ、次工程の溶媒抽出工程での液量、ひいては設備規模を縮減できる点で工業的に極めて好ましい態様となる。
なお、本工程で得られた沈殿物に使用する酸は、塩酸、硫酸のどちらでも構わないが、硫酸であるほうが好ましい。
[水酸化中和]
以下では、濃縮の一態様である水酸化中和について説明する。水酸化中和を採用する場合、イオン交換工程S4で得られたスカンジウム溶離液に中和剤を添加して、沈殿物を得て固液分離する。次いで、酸で溶解し酸性溶液を得る。
中和剤は従来公知の物であれば足り、例えば、炭酸カルシウム、消石灰、水酸化ナトリウム等が挙げられるが、スカンジウム溶離液が硫酸溶液である場合、Ca分を含む中和剤は石膏を生成する為、中和剤は、水酸化ナトリウム等であることが好ましい。
中和剤を加えたときのpHは、8以上9以下であることが好ましい。pHが8未満であると、中和が不十分であり、Scを十分に回収できない可能性があるため、好ましくない。pHが9を超えると、中和剤の使用量が増加するため、コスト増となる点で好ましくない。
[シュウ酸化]
続いて、濃縮の別態様であるシュウ酸化について説明する。シュウ酸化を採用する場合、スカンジウム溶離液にシュウ酸を添加してシュウ酸スカンジウムの結晶にする。このとき、pHは0以上0.5以下であることが好ましい。pHが低すぎると、スカンジウムシュウ酸塩の溶解度が増加し、スカンジウム回収率が低下するため、好ましくない。pHが高すぎると、溶解液中に含まれる不純物が沈殿しスカンジウム純度を下げてしまうため、好ましくない。
また、シュウ酸の添加量は、スカンジウムをシュウ酸塩として析出させるのに必要な当量の1.05倍以上1.2倍以下であることが好ましい。添加量が必要な当量の1.05倍未満であると、スカンジウムを全量回収できなくなる可能性があるため、好ましくない。一方、添加量が必要な当量の1.2倍を超えると、シュウ酸スカンジウムの溶解度が増加することでスカンジウムが再溶解して回収率が低下するため、好ましくない。
[水酸化中和とシュウ酸化との併用]
また、濃縮の別態様として、上記の水酸化中和とシュウ酸化との両方を行うことが挙げられる。まず、スカンジウム溶離工程S43で得られたスカンジウム溶離液に上記の水酸化中和を行って水酸化スカンジウムを含有する沈殿物を得る。次いで、この沈殿物に塩酸を添加して再溶解し、この再溶解液にシュウ酸を添加し、シュウ酸スカンジウムの結晶として沈殿させる。次いで、この結晶を上記のように、酸溶解し、溶媒抽出工程S6に付する。
濃縮工程S5を設けることにより、スカンジウム溶離液に含まれる不純物を大幅に除去でき、イオン交換工程S4や溶媒抽出工程S6に係る工数を軽減できる。また、溶媒抽出に付す始液の濃度を任意に調整することができるため、溶媒抽出工程S6の設備規模の縮小による設備投資の削減や、始液濃度の安定化により操業を安定化できるという効果も有する。
<溶媒抽出工程S6>
溶媒抽出工程S6では、スカンジウム溶離液を抽出剤に接触させ、抽出液に逆抽出剤を加えることで逆抽出物を得る。溶媒抽出工程S6の態様は特に限定されないが、スカンジウム溶離液と有機溶媒である抽出剤とを混合し、スカンジウムを抽出した抽出後有機溶媒と抽残液とに分離する抽出工程S61と、この抽出後有機溶媒に、塩酸溶液又は硫酸溶液を混合して抽出後有機溶媒から不純物を分離して洗浄後有機溶媒を得るスクラビング工程S62と、洗浄後有機溶媒に逆抽出剤を添加し、洗浄後有機溶媒からスカンジウムを逆抽出して逆抽出物を得る逆抽出工程S63とを含むことが好ましい。溶媒抽出工程S6を行うことで、スカンジウム溶離液に含まれるスカンジウムの純度をよりいっそう高めることができる。
[抽出工程S61]
抽出工程では、スカンジウム溶離液と、抽出剤を含む有機溶媒とを混合して、有機溶媒中にスカンジウムを選択的に抽出する。抽出剤には様々な種類があるが、スカンジウムとの選択性から、リンを含む酸性抽出剤、具体的には、ジ−2−エチルヘキシルリン酸(D2EHPA)、2−エチルヘキシルホスホン酸−モノ−2−エチルヘキシル(2−ethylhexy 2−ethylhexyl phosphoric acid)(商品名:PC−88A)等を用いることが好ましい。
抽出時は、例えば炭化水素系の有機溶媒等で希釈して使用することが好ましい。有機溶媒中のD2EHPAやPC‐88Aの濃度としては、特に限定されないが、抽出、逆抽出時の相分離性等を考慮すると、10体積%以上30体積%以下であることが好ましく、特に20体積%前後となる15体積%以上25体積%以下であることがより好ましい。
また、抽出時の有機溶媒とスカンジウム溶離液の体積割合は、スカンジウム溶液中のメタルモル量に対して有機溶媒モル量を0.4倍以上1.0倍以下にすることが好ましい。
[スクラビング(洗浄)工程S62]
必須の態様ではないが、スカンジウムを抽出した溶媒中にスカンジウム以外の不純物元素が共存する場合には、抽出液を逆抽出する前に、有機溶媒(有機相)にスクラビング(洗浄)処理を施し、不純物元素を水相に分離して抽出剤から除去することが好ましい。
スクラビングに用いる溶液(洗浄溶液)には、塩酸溶液や硫酸溶液を使用することができる。塩酸溶液を用いる場合は5.0mol/l以上7.0mol/l以下の濃度範囲が好ましく、硫酸溶液を用いる場合は、D2EHPAの場合には2.5mol/l以上3.5mol/l以下の濃度範囲、PC−88Aを用いる場合は2.0mol/l以上5.0mol/l以下の濃度範囲とすることがそれぞれ好ましい。
洗浄段数(回数)としては、有機相(O)と水相(A)の相比O/A=1とした場合、不純物元素の種類、濃度にも依存するのでそれぞれの酸性抽出剤や条件によって適宜変更できるが、一例を示せば、DE2HPAの場合3〜5段の段数、PC−88Aの場合3〜8段の段数、があればほぼすべての元素を分析下限未満まで分離できる。
[逆抽出工程S63]
逆抽出工程S63では、スカンジウムを抽出した有機溶媒から、スカンジウムを逆抽出する。逆抽出工程S63は、有機溶媒と逆抽出溶液(逆抽出始液)とを混合することで、抽出時の逆反応を進行させる工程である。
本発明では、抽出剤として酸性抽出剤を用いているため、スカンジウムを有機溶媒から分離するためには、アルカリを用いて有機溶媒中に含まれるスカンジウムの結合を切る必要である。そのため、逆抽出溶液(逆抽出始液)は、水酸化ナトリウムをはじめとした強アルカリ溶液であることが好ましい。逆抽出溶液が水酸化ナトリウムである場合、水酸化スカンジウムは、pHが8以上であれば沈殿物として生成するため、沈殿の生成と、過剰な使用の抑制との両方を考慮すると、水酸化スカンジウムの使用量は、pHが8以上9以下を維持できる程度であることが好ましい。そして、水酸化ナトリウムの濃度は、5mol/l以上8mol/l以下であることが好ましい。
アルカリによって逆抽出した場合、生成物は、水酸化スカンジウムの固体と、有機溶媒及びアルカリ性の逆抽出後液を含む液相との混合物であり、スラリー状である。そこで、まず、生成物をろ過し、水酸化スカンジウムの固体を液相から分離する。続いて、液相に酸を加え、液相を有機相と水相とに比重分離する。これらの工程を経て得られた水酸化スカンジウムの固体を逆抽出物として次工程に供給する。なお、水酸化スカンジウムの固体に有機相の付着がみられる場合、この固体を洗浄することが好ましい。
<スカンジウムの回収>
溶媒抽出工程S6の後、固体のスカンジウム塩を焙焼する焙焼工程S8を行うことで、ニッケル酸化鉱から酸化スカンジウムを回収できる。上記したとおり、本発明では、逆抽出工程S63において、既に水酸化スカンジウムの沈殿物が得られている。そのため、焙焼工程S8では、固体の水酸化スカンジウムをそのまま焼成して酸化スカンジウムの固体を得ることもできる。しかしながら、この水酸化スカンジウムは、依然として不純物を含み得るものであるため、スカンジウムの純度を高めるため、焙焼工程S8の前に、水酸化スカンジウムを塩酸等で酸溶解し、シュウ酸を加えてシュウ酸スカンジウムにするスカンジウム沈殿工程S7を行い、その後、シュウ酸スカンジウムを焙焼工程S8に供することで酸化スカンジウムを得ることが好ましい。
[スカンジウム沈殿工程S7]
スカンジウム沈殿工程S7は、溶媒抽出工程S6で得た逆抽出物を酸で中和し、さらにシュウ酸を加えてシュウ酸スカンジウムの固体として析出、沈殿させて分離する工程である。酸に溶解するときのpHは、0以上0.5以下であることが好ましい。pHが0未満のように低すぎると、スカンジウムシュウ酸塩の溶解度が増加し、スカンジウム回収率が低下するため好ましくない。pHが0.5を超えると、溶解液中に含まれる不純物が沈殿しスカンジウム純度を下げてしまうため、好ましくない。
シュウ酸の添加量は、スカンジウムをシュウ酸塩として析出させるのに必要な当量の1.05倍以上1.2倍以下の量とすることが好ましい。1.05倍未満であると、スカンジウムを全量回収できなくなる可能性があるため、好ましくない。一方、1.2倍を超えて添加すると、シュウ酸スカンジウムの溶解度が増加することでスカンジウムが再溶解して回収率が低下したり、過剰なシュウ酸を分解するために次亜塩素ソーダのような酸化剤を使用する量が増加したりするため、好ましくない。
[焙焼工程S8]
焙焼工程S8は、スカンジウム沈殿工程S7で得られた沈殿物を水で洗浄し、乾燥し、焙焼する工程である。焙焼工程S8を経ることで、極めて高品位な酸化スカンジウムを得ることができる。
焙焼の条件は特に限定されるものでないが、例えば、管状炉に入れて約900℃で2時間程度加熱すればよい。工業的には、ロータリーキルン等の連続炉を用いると、乾燥と焼成(焙焼)を同じ装置で行うことができるため、好ましい。
<本実施形態に記載の他の発明>
また、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、スカンジウムをキレート樹脂で分離し、さらに溶媒抽出に付すことによって得られるスカンジウム含有物を焙焼することで、高品位のスカンジウムを簡便かつ効率よく得られることを見出し、本実施形態に記載の他の発明を完成するに至った。具体的に、本実施形態に記載の他の発明では、以下のようなものを提供する。
(1)スカンジウム、アルミニウム及びクロムを含有するニッケル酸化鉱を硫酸とともに加圧容器に装入し、高温高圧下で浸出液と浸出残渣とに固液分離する浸出工程と、前記浸出液に中和剤を加え、中和澱物と中和後液とを得る中和工程と、前記中和後液に硫化剤を添加し、ニッケル硫化物と硫化後液とに分離する硫化工程と、前記硫化後液をキレート樹脂に接触させて前記スカンジウムを前記キレート樹脂に吸着させ、スカンジウム溶離液を得るイオン交換工程と、前記スカンジウム溶離液を抽出剤に接触させ、抽出液に逆抽出剤を加えることで逆抽出物を得る溶媒抽出工程と、前記逆抽出物を焼成して、酸化スカンジウムを得る焙焼工程とを含む、スカンジウム回収方法。
(2)前記キレート樹脂がイミノジ酢酸を官能基とする樹脂であり、前記イオン交換工程が、前記硫化後液を前記キレート樹脂に接触させて前記スカンジウムを前記キレート樹脂に吸着させる吸着工程と、前記吸着工程でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に0.1N以下の硫酸を接触させ、前記吸着工程で前記キレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去するアルミニウム除去工程と、前記アルミニウム除去工程を経たキレート樹脂に0.3N以上3N未満の硫酸を接触させ、前記スカンジウム溶離液を得るスカンジウム溶離工程と、前記スカンジウム溶離工程を経たキレート樹脂に3N以上の硫酸を接触させ、前記吸着工程で前記キレート樹脂に吸着したクロムを除去するクロム除去工程を含む、(1)に記載のスカンジウム回収方法。
(3)前記イオン交換工程の後、前記スカンジウム溶離液からスカンジウムを含有する澱物を生成し、この澱物を酸溶解してスカンジウム濃縮液を得る濃縮工程をさらに含み、前記溶媒抽出工程は、前記スカンジウム濃縮液を前記抽出剤に接触させ、逆抽出物を得る工程を含む、(1)又は(2)に記載のスカンジウム回収方法。
(4)前記濃縮工程が、前記スカンジウム溶離液に中和剤を添加してpHを8以上9以下の範囲に調整することで中和物を生成する工程と、前記中和物を硫酸又は塩酸で酸溶解する工程とを含む、スカンジウム回収方法である。
(5)前記濃縮工程が、前記スカンジウム溶離液にシュウ酸を添加することでシュウ酸スカンジウムの結晶を生成する工程と、前記シュウ酸スカンジウムの結晶を硫酸又は塩酸で酸溶解する工程とを含む、(3)又は(4)に記載のスカンジウム回収方法。
(6)前記抽出剤が酸性抽出剤である、(1)から(5)のいずれかに記載のスカンジウム回収方法。
(7)前記酸性抽出剤がジ−2−エチルヘキシルリン酸である、(6)に記載のスカンジウム回収方法。
(8)前記逆抽出剤が、濃度が5mol/l以上8mol/l以下の水酸化ナトリウムであり、前記逆抽出物が水酸化スカンジウムの沈殿物である、(1)から(7)のいずれかに記載のスカンジウム回収方法。
(9)前記溶媒抽出工程が、前記スカンジウム溶離液と有機溶媒である前記抽出剤とを混合し、スカンジウムを抽出した抽出後有機溶媒と抽残液とに分離する抽出工程と、前記抽出後有機溶媒に、5.0mol/l以上7.0mol/l以下の濃度の塩酸溶液、又は2.5mol/l以上3.5mol/l以下の濃度の硫酸溶液を混合して前記抽出後有機溶媒から不純物を分離して洗浄後有機溶媒を得るスクラビング工程と、前記洗浄後有機溶媒に前記逆抽出剤を添加し、前記洗浄後有機溶媒からスカンジウムを逆抽出して前記逆抽出物を得る逆抽出工程とを含む、(1)から(8)のいずれかに記載のスカンジウム回収方法。
(10)前記酸性抽出剤が2−エチルヘキシルホスホン酸−モノ−2−エチルヘキシルである、(9)に記載のスカンジウム回収方法。
(11)前記スカンジウム溶離液と有機溶媒である前記抽出剤とを混合し、スカンジウムを抽出した抽出後有機溶媒と抽残液とに分離する抽出工程と、前記抽出後有機溶媒に、5.0mol/l以上7.0mol/l以下の濃度の塩酸溶液、又は2.0mol/l以上5.0mol/l以下の濃度の硫酸溶液を混合して前記抽出後有機溶媒から不純物を分離して洗浄後有機溶媒を得るスクラビング工程と、前記スクラビング工程で得たスクラビング後有機溶媒に5mol/l以上8mol/l以下の水酸化ナトリウム添加し、水酸化スカンジウム澱物を得る工程と、前記水酸化スカンジウム澱物に酸を添加し、スカンジウム溶解液を得る工程とを含む、(10)に記載のスカンジウム回収方法。
(12)前記溶媒抽出工程の後、前記逆抽出物を塩酸で溶解し、この溶解で得られる塩酸溶解液にシュウ酸を加えてシュウ酸スカンジウムの結晶を得るスカンジウム沈殿工程をさらに含み、前記焙焼工程が前記シュウ酸スカンジウムの結晶を焼成する工程を含む、(1)から(9)のいずれかに記載のスカンジウム回収方法。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
<実施例1>
[浸出工程S1]
まず、ニッケル酸化鉱を濃硫酸とともにオートクレーブに装入し、245℃の条件下で1時間かけてスカンジウムやニッケル等の有価金属を含有するスラリーを生成させ、このスラリーから各種の有価金属を含有する浸出液と、浸出残渣とに固液分離した。
[中和工程S2]
そして、この浸出液に炭酸カルシウムを添加し、中和澱物と中和後液とを得た。スカンジウムやニッケル等の有価金属は中和後液に含まれ、アルミニウムをはじめとした不純物の大部分は中和澱物に含まれる。
[硫化工程S3]
続いて、中和後液に硫化水素ガスを吹き込み、ニッケルやコバルトや亜鉛を硫化物として硫化後液と分離した。
[イオン交換工程S4]
〔吸着工程S41〕
この硫化後液に中和剤として消石灰を添加してpHを1.6に調整した。加えて、消石灰添加後の液には含まれていないか、含まれているとしても含有量がごく微量である元素の挙動も明らかにするため、一部の元素については試薬を添加し、表1に示す組成の吸着元液を得た。
Figure 2016153534
次いで、表1に示す組成の吸着元液を、イミノジ酢酸を官能基とするキレート樹脂(製品名:ダイヤイオン CR11,三菱化学(株)製)を充填したカラムに通液した。なお、カラムの樹脂量は40リットルとし、通液はSVが8となるように、毎分5.3mlの流量とし、2400リットル(Bed Volume:BV=60)まで通液した。通液時の給液での液温は60℃とした。
〔アルミニウム除去工程S42〕
次に、このキレート樹脂に、濃度0.1Nの硫酸溶液800リットルを(SVが40となる)毎分27リットルの流量で通液した。カラムから排出された残留したアルミの多い洗浄液は、アルミ洗浄液として貯液し、一部をサンプリングしてICPで分析した。
分析値は、Ni:7mg/l、Mg:1mg/l、Mn:4mg/l、Fe:1mg/l、Al:84mg/l、Sc:3mg/lであった。Cr、Caの分析値は、測定可能な下限以下であった。
〔スカンジウム溶離工程S43〕
その後、キレート樹脂に、濃度1Nの硫酸溶液400リットルを(SVが40となる)毎分80リットルの流量で通液した。カラムから排出された溶離液は、スカンジウム溶離液として貯液しサンプリングして分析した。結果を表2に示す。Mn、Caの分析値は、測定可能な下限以下であった。
Figure 2016153534
〔クロム除去工程S44〕
続いて、キレート樹脂に、濃度3Nの硫酸溶液80リットルを(SVが40となる)毎分2.6リットルの流量で通液した。カラムから排出された洗浄液は、クロム洗浄液として貯液しサンプリングして分析した。分析値は、Fe:2mg/l、Cr:30mg/lであった。Ni、Mg、Mn、Al、Ca、Scの分析値は、測定可能な下限以下であった。
[濃縮工程S5]
次に、表2の組成のスカンジウム溶離液に、水酸化ナトリウムを添加してpHを8〜9に維持し、沈殿を生成させた。この沈殿に硫酸を添加して溶解し、キレート溶離液水酸化物溶解液を得た。キレート溶離液水酸化物溶解液の組成を分析した結果を表3に示す。Mg、Cr、Mn、Caの分析値は、測定可能な下限以下であった。
Figure 2016153534
[溶媒抽出工程S6]
〔抽出工程S61〕
上記表3の組成の溶解液103リットルを抽出始液とした。これに、酸性抽出剤、ジ−2−エチルヘキシルリン酸(D2EHPA、ランクセス社製)を溶剤テクリーンN20(JX日鉱日石社製)を用いて13体積%に調整した有機溶媒2.6リットルを混合して室温で60分撹拌し、スカンジウムを含む抽出有機相を得た。抽出時にクラッドを形成することはなく、静置後の相分離も迅速に進行した。
抽出有機相に含まれる各種元素の組成を分析した。抽出有機相に含まれる各種元素の物量を、抽出前元液に含有された各元素の物量で割った値を抽出率とし、結果を表4に示す。
Figure 2016153534
表4から、抽出工程S61を通じて、抽出前元液に含まれていたスカンジウムは、ほぼ全て抽出有機相に抽出されることが分かる。加えて、抽出有機相には、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、クロム、マンガン、カルシウム、コバルト、銅、亜鉛といった元素がほとんど含まれていないことが分かる。
〔スクラビング(洗浄)工程S62〕
次に、抽出工程で得られたスカンジウムを含む2.6リットルの有機溶媒(抽出有機相)に、濃度6.5mol/lの塩酸溶液を、相比(O/A)が1の比率となる2.6リットル混合し、10分間撹拌して洗浄した。その後、静置して水相を分離し、有機相は再び濃度6.5mol/lの新たな塩酸溶液2.6リットルと混合して洗浄し、同様に水相を分離した。このような洗浄操作を合計3回繰り返した。
抽出有機相を3回洗浄することにより、溶出するスカンジウム以外の不純物金属濃度を1mg/l以下のレベルまで除去できた。一方で、スカンジウムについては、10mg/lの低いレベルのロスに留まり、有機溶媒に抽出したスカンジウムを水相に分離させずに、不純物のみを効果的に除去できることが分かった。
〔逆抽出工程S63〕
次に、洗浄後の抽出有機相に、濃度6mol/lの水酸化ナトリウムを、相比O/A=1/1の比率となるように混合して20分撹拌し、スカンジウムを水相に逆抽出した。逆抽出操作によって析出した固体と液相が混じったスラリー状態となったので、濾過して、固体と液相とを分離した。固体については、水洗浄し、固体に付着する有機相や逆抽出後液を除去した。液相については、液相に塩酸を添加して5分間撹拌し、静置して逆抽出後有機溶媒の有機相と逆抽出後液の水相とを分離した。
また、逆抽出操作によって析出した固体(水酸化スカンジウム)に含まれる各種元素の組成を分析した。固体(水酸化スカンジウム)に含まれる各種元素の物量を、抽出工程S61において有機相に抽出された各種元素の物量で割った値を回収率とし、結果を表5に示す。
Figure 2016153534
表5から、溶媒抽出工程S6を通じて、抽出前元液に含まれていたスカンジウムを固体(水酸化スカンジウム)としてほぼ全て回収できることが分かる。加えて、回収される水酸化スカンジウムには、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、クロム、マンガン、カルシウム、コバルト、銅、亜鉛といった元素はほとんど含まれておらず、水酸化スカンジウムに含まれるスカンジウムの品位は、高いといえる。
[スカンジウム沈殿工程S7]
次に、上記で得た水酸化スカンジウムの固体に塩酸を添加してスラリーのpHを1.0以上1.5以下の範囲に維持しつつ、撹拌して水酸化スカンジウムの固体を完全に溶解し再溶解液を得た。次いで、再溶解液に対し、再溶解液に含まれるスカンジウム量に対して計算量で2倍となるシュウ酸・2水和物(三菱ガス社製)の結晶を溶解し、60分撹拌混合してシュウ酸スカンジウムの白色結晶性沈殿を生成させた。
[焙焼工程S8]
上記のスカンジウム沈殿工程で得たシュウ酸スカンジウムを吸引濾過し、純水を用いて洗浄し、105℃で8時間乾燥させた。続いて、シュウ酸スカンジウムを管状炉に入れて850〜900℃に維持して焙焼(焼成)させて、酸化スカンジウムを得た。
上記の酸化スカンジウムを発光分光分析法によって分析した。表6に除去率を示すが、スカンジウム以外の不純物、特にアルミニウム、ニッケル、ウラン、銅をほぼ完全に除去することができ、酸化スカンジウムScとしての純度が99.9%を上回る極めて高純度な酸化スカンジウムを得ることができた。
Figure 2016153534
<実施例2>
上記実施例1と同じニッケル酸化鉱石を上記実施例1と同じ方法で浸出し、中和し、硫化して得た表7に示す組成の硫化後液を得た。
Figure 2016153534
(単位はmg/l)
この硫化後液に対し、上記実施例1と同じ手法でイオン交換工程及び濃縮工程を行い、得られた水酸化スカンジウムを硫酸で再び溶解し、キレート溶離液水酸化物溶解液を得た。キレート溶離液水酸化物溶解液の組成を分析した結果を表8に示す。
Figure 2016153534
この表8に示す組成のキレート溶離液水酸化物溶解液を抽出始液とし、酸性抽出剤を用いた溶媒抽出に付した。なお、酸性抽出剤にはPC−88A(大八化学社製)を用い、これを溶剤テクリーンN20(JX日鉱日石社製)で20%に希釈した。抽出平衡pHを0とし、有機量と液中メタル量の比を元に有機量(O)と抽出始液(A)の量とを表9に示す条件に選定した。
Figure 2016153534
図2は、有機溶媒に含まれるSc、Th、U、Al及びFeの抽出率を示す。図2から、メタル量に対する有機量の比である有機量/メタル量(単位:mol/mol、以下同じ)が0.4以上1.0以下の範囲にある場合、スカンジウムをトリウムやアルミニウムや鉄と分離することが可能となり、その結果、有機溶媒中にスカンジウムを濃縮することができる。具体的には、O/Aが2.00である場合、トリウムの抽出率は0%で鉄の抽出率は4%、アルミニウムの抽出率は6%となるのに対して、スカンジウムの抽出率は63%となる。
一方、有機量/メタル量が0.4倍未満であると、有機相と水相の分相が悪く、好ましくない。また、有機量/メタル量が1.0倍を超えると、有機相にスカンジウム以外の金属も含まれ得るため、好ましくない。
続いて、実施例2−2に係るメタルを抽出後の有機溶媒PC−88Aに硫酸を混合し、表10に示す条件で洗浄した。
Figure 2016153534
図3は、硫酸濃度と洗浄率との関係を示す。洗浄率とは、有機溶媒から分離し、硫酸に含まれる金属の割合をいう。どのサンプルであっても、ウランを有機溶媒から分離し、除去することができるが、特に、硫酸濃度が2mol/l以上5mol/l以下である場合、80%以上のウランを有機溶媒から分離し、除去できる。
続いて、スカンジウムを含む有機溶媒に水酸化ナトリウムや炭酸ソーダを混合し、逆抽出した。逆抽出後の逆抽出液の組成を分析した結果を表8に示す。なお、回収率は、硫酸洗浄後の有機相に含まれる各成分の重量(単位:mg)に対する逆抽出後液に含まれる各成分の重量(単位:mg)の割合とした。
Figure 2016153534
表11から、スカンジウムを95%以上の回収率で回収できることが確認された。
S1 浸出工程
S2 中和工程
S3 硫化工程
S4 イオン交換工程
S5 濃縮工程
S6 溶媒抽出工程
S7 スカンジウム沈殿工程
S8 焙焼工程

Claims (4)

  1. スカンジウム、アルミニウム及びクロムを含有する溶液をキレート樹脂に接触させて前記スカンジウムを前記キレート樹脂に吸着させる吸着工程と、
    前記吸着工程でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に0.1N以下の硫酸を接触させ、前記吸着工程で前記キレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去するアルミニウム除去工程と、
    前記アルミニウム除去工程を経たキレート樹脂に0.3N以上3N未満の硫酸を接触させ、スカンジウム溶離液を得るスカンジウム溶離工程と、
    前記スカンジウム溶離液を酸性抽出剤に接触させ、抽出液に逆抽出剤を加えることで逆抽出物を得る溶媒抽出工程とを含む、スカンジウム回収方法。
  2. 前記スカンジウム溶離工程の後、前記スカンジウム溶離液からスカンジウムを含有する澱物を生成し、この澱物を硫酸で溶解してスカンジウム濃縮液を得る濃縮工程をさらに含み、
    前記溶媒抽出工程は、前記スカンジウム濃縮液を前記酸性抽出剤に接触させ、逆抽出物を得る工程を含む、請求項1に記載のスカンジウム回収方法。
  3. 前記スカンジウム溶離工程を経たキレート樹脂に3N以上の硫酸を接触させ、前記吸着工程で前記キレート樹脂に吸着したクロムを除去するクロム除去工程をさらに含む、請求項1又は2に記載のスカンジウム回収方法。
  4. 前記スカンジウム溶離工程は、前記アルミニウム除去工程を経たキレート樹脂に0.3N以上1N以下の硫酸を接触させ、スカンジウム溶離液を得る工程である、請求項1から3のいずれかに記載のスカンジウム回収方法。
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