JP6032043B2 - 車両用操舵制御装置及び車両用操舵制御方法 - Google Patents
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Description
このような操舵制御装置は、一般的に、ステアバイワイヤ(SBW)と呼称するシステム(SBWシステム)を形成する装置であり、例えば、特許文献1に記載のものがある。このSBWシステムでは、ステアリングホイールの操舵角に基づいて前輪の目標転舵角を算出し、転舵モータを制御すると共に、算出した目標転舵角に基づいて反力モータを制御している。
そこで、本発明は、目標転舵応答と良好な操舵反力との両立を実現することができる車両用操舵制御装置及び車両用操舵制御方法を提供することを課題としている。
(第1の実施の形態)
(構成)
図1は、本実施形態の車両用操舵装置を備えた車両の全体構成図である。この車両用操舵装置は、ステアリングホイール1と前輪(転舵輪)2を転舵する舵取り機構3とを機械的に切り離した、所謂ステア・バイ・ワイヤ(SBW)システムである。
この車両は、反力モータ5を備える。反力モータ5は、ステアリングホイール1を支持するコラムシャフト4に設ける。また、この車両は、回転角センサ6と、操舵トルクセンサ7と、反力モータ角度センサ8とを備える。回転角センサ6は、コラムシャフト4の回転角を検出する。操舵トルクセンサ7は、コラムシャフト4の捩れ角から操舵トルクを検出する。反力モータ角度センサ8は、反力モータ5の回転角度を検出する。
また、この車両は、第1,第2転舵モータ角度センサ10a,10bと、第1,第2タイヤ横力センサ12a,12bと、を備える。第1,第2転舵モータ角度センサ10a,10bは、前輪2の直進状態からの回転角である転舵角として第1,第2転舵モータ9a,9bの回転角度を検出する。第1,第2タイヤ横力センサ12a,12bは、前輪2の横力として前輪2からラック11の軸方向に入力する力を検出する。なお、第1転舵モータ9aはピニオンギヤ13aとラック11を介して、第2転舵モータ9bはピニオンギヤ13bとラック11を介して前輪2と機械的に接続している。そのため、第1,第2転舵モータ9a,9bの回転角度を検出することで前輪2の転舵角を検出することができる。
第2コントローラ15は、回転角センサ6からのコラムシャフト回転角と、操舵トルクセンサ7からの操舵トルクと、反力モータ角度センサ8からの反力モータ角度と、第1,第2タイヤ横力センサ12a,12bからのタイヤ横力とを入力する。また、第2コントローラ15は、図外のCAN通信線を介して車輪速等の車両情報も入力する。
なお、第2コントローラ15は、イグニッションオン時、回転角センサ6が検出したコラムシャフト回転角に基づき、コラムシャフト4の回転角度をニュートラル位置(転舵角ゼロに対応する位置)に合わせる。
以下、説明を簡略化するために、個々を別々に説明する必要がある場合を除き、第1,第2転舵モータ9a,9bを転舵モータ9、第1,第2転舵モータ角度センサ10a,10bを転舵モータ角度センサ10、第1,第2,第3コントローラ14,15,16をコントローラ15という。
転舵制御部19は、目標転舵角生成部19aと、モータ駆動部19bとを有する。
目標転舵角生成部19aは、定常ステア制御量演算部19aaと、操舵角速度演算部19abと、微分ステア制御量演算部19acと、加算部19adとを有する。
定常ステア制御量演算部19aaは、操舵角に応じた制御量である定常ステア制御量(第一の定常ステア制御量)を演算する。定常ステア制御量は、運転者のステアリングホイール1への入力角度である操舵角と車速とに基づいて、可変ギヤ比マップを参照して算出する。
トーションバー捩れ角=操舵トルク/トルクセンサバネ定数
ここで、操舵トルクは、操舵トルクセンサ7が検出したトルクである。また、トルクセンサバネ定数は、トーションバーの固有値であって、予め実験等により判明している。
よって、操舵角は、
操舵角=トーションバー捩れ角+反力モータ角度
として求めることができる。
なお、この操舵角は、回転角センサ6で検出したステアリングホイール1の回転角を用いて検出しても良い。
微分ステア制御量演算部19acは、操舵角速度演算部19abで演算した操舵角速度に応じた制御量である微分ステア制御量(第一の微分ステア制御量)を演算する。微分ステア制御量は、操舵角速度に基づいて、微分ステアマップを参照して算出する。
また、モータ駆動部19bは、目標転舵角生成部19aが生成した目標転舵角と実際の転舵角(実転舵角)とが一致するような指令電流(すなわち目標転舵角と実転舵角との偏差に応じた指令電流)を転舵モータ9へ供給する。
操舵反力制御部20は、仮想目標転舵角生成部20aと、目標反力生成部20bと、モータ駆動部20cとを有する。
仮想目標転舵角生成部20aは、定常ステア制御量演算部20aaと、操舵角速度演算部20abと、微分ステア制御量演算部20acと、加算部20adとを有する。
微分ステア制御量演算部20acは、操舵角速度演算部20abで演算した操舵角速度に応じた制御量である微分ステア制御量(第二の微分ステア制御量)を演算する。微分ステア制御量は、操舵角速度に基づいて、微分ステアマップを参照して算出する。この微分ステアマップは、走行モードによって切り替わらないように固定しておく。
加算部20adは、定常ステア制御量演算部20aaで演算した定常ステア制御量と、微分ステア制御量演算部20acで演算した微分ステア制御量とを加算して、仮想目標転舵角を生成する。
目標反力生成部20bは、仮想目標転舵角生成部20aが生成した仮想目標転舵角と、車速、車両状態および転舵モータ電流(第1,第2転舵モータ9a,9bの電流値)を参照して目標操舵反力を生成する。
Th=Ih・d2θ/dt2+Ch・dθ/dt+Kh・θ+Th・(θ−θac)+Fh・CF+Lh・AP ………(1)
ここで、Ihは慣性係数、Chはダンピング係数、Khはバネ性係数、Thはフィードバック係数、Fhはタイヤ横力係数、CFはタイヤ横力、Lhは転舵軸力係数、APは転舵モータ電流より換算した転舵軸力、θacは実際の転舵角である。
モータ駆動部20cは、目標反力生成部20bが生成した目標操舵反力に応じた目標電流と実反力(不図示の電流センサで検出された、反力モータ5に供給されている実電流)とが一致するような指令電流を反力モータ5へ供給する。
次に、本実施形態の動作について説明する。
運転者が、停車していた車両を発進させるとともに、ステアリングホイール1を操舵したとする。すると、コントローラ15は、操舵角および車速に基づいて目標転舵角を算出する(目標転舵角生成部19a)。このとき、車両の走行モードに応じた可変ギヤ比マップを参照して定常ステア制御量(定常項)を算出すると共に、車両の走行モードに応じた微分ステアマップを参照して微分ステア制御量(過渡項)を算出する。そして、定常ステア制御量と微分ステア制御量との加算結果を目標転舵角とする。続いて、コントローラ15は、算出した目標転舵角から実際の転舵角を減じた減算結果に基づいて転舵モータ9の指令電流を算出する。この指令電流に基づいて転舵モータ9を駆動することにより、運転者の操舵操作に応じて転舵輪2が転舵する。
このように、コントローラ15は、転舵制御の目標転舵角と反力制御の目標操舵反力を決める目標転舵角(仮想目標転舵角)とを、それぞれ別系統(目標転舵角生成部19a,仮想目標転舵角生成部20a)で生成する。そして、これら2つの系統の構成を互いに異ならせるものとする。
具体的には、個々の走行モードに対応した適切な車両感覚(目標応答)を得るために、先ず転舵制御において、操舵角に対する転舵角の比と、目標転舵角に対する実転舵角の位相(転舵指令角に対するラックの動きの進み量)を調整する。つまり、目標転舵角生成部19aにおいて、走行モードに応じて可変ギヤ比マップ及び微分ステアマップをそれぞれ切替えることで、目標応答に適した目標転舵角を生成する。
これに対して、本実施形態では、転舵制御と反力制御とを同一の入力値(操舵角)に基づく演算とし、それぞれの演算を並列で流す。このように、転舵制御の演算と反力制御の演算とを並列で流すことにより、この2つの制御を独立に適合/調整することが可能となる。
そこで、本実施形態では、反力制御においては、可変ギヤ比マップは走行モードに応じて切替えるが、微分ステアマップは走行モードによらずに固定とする。これにより、不必要に操舵反力の位相を変更することがなくなり、違和感のない操舵フィーリングを維持することができる。
そして、反力制御においては、転舵制御と同様に、定常ステア制御量については走行モードに応じて可変ギヤ比マップを切替えて演算するが、微分ステア制御量については、走行モードによらずに微分ステアマップを固定して演算する。そのため、操舵角に対する操舵反力の比のみを走行モードに適合し、操舵角に対する操舵反力の位相については走行モードによらずに固定とすることができる。
なお、図2において、定常ステア制御量演算部19aaが第一定常ステア制御量演算部に対応し、微分ステア制御量演算部19acが第一微分ステア制御量演算部に対応し、加算部19adが目標転舵角設定部に対応している。また、定常ステア制御量演算部20aaが第二定常ステア制御量演算部に対応し、微分ステア制御量演算部20acが第二微分ステア制御量演算部に対応し、加算部20ad及び目標反力生成部20bが操舵反力設定部に対応している。
第1の実施形態では、以下の効果が得られる。
(1)転舵制御部19は、操舵角に応じた制御量である定常ステア制御量を演算する。また、転舵制御部19は、操舵角速度に応じた制御量である微分ステア制御量を、車両の走行モードに対応した微分ステアマップを参照して演算する。さらに、転舵制御部19は、定常ステア制御量と微分ステア制御量とを加算した値を転舵輪の目標転舵角として設定する。操舵反力制御部20は、操舵角に応じた制御量である定常ステア制御量を演算する。また、操舵反力制御部20は操舵角速度に応じた制御量である微分ステア制御量を、予め固定した微分ステアマップを参照して演算する。さらに、操舵反力制御部20は、定常ステア制御量と微分ステア制御量とを加算した値に基づいてステアリングホイール1に付与する目標操舵反力を設定する。
このように、転舵制御で、走行モードに応じて定常ステアマップ(可変ギヤ比マップ)を切替えて定常ステア制御量を演算するので、操舵角に対する転舵角の比を走行モードに適合することができる。また、反力制御でも、走行モードに応じて定常ステアマップ(可変ギヤ比マップ)を切替えて定常ステア制御量を演算するので、操舵角に対する操舵反力の比を走行モードに適合することができる。したがって、適切な車両感覚(目標応答)の実現と良好な操舵反力の付与とを両立することができる。
また、このとき、転舵制御と反力制御とで、同一の可変ギヤ比マップを用いるようにすれば、保舵時や運転者がゆっくり操舵している場合(定常状態)の転舵角と操舵反力とのバランスを最適に保つことができる。
(1)上記実施形態においては、運転者が走行モードの切り替えを指示したときに、当該走行モードに応じて可変ギヤ比マップや微分ステアマップを切替えるようにしているが、ステアリングホイール1がニュートラル位置にあるときにマップを切替えるようにしてもよい。すなわち、運転者がモード切替スイッチ31を操作して走行モードの切り替えを指示した場合、ステアリングホイール1がニュートラル位置にくるまでの間は、それまでの走行モードを継続し、ニュートラル位置となったタイミングでマップを切替えるようにする。これにより、マップの変更に伴いギヤ比が急に変更となることに起因してステアリング操作が不安定になるのを防止することができる。
Claims (3)
- ステアリングホイールと転舵輪とが機械的に分離され、前記ステアリングホイールの操舵状態に応じた目標転舵角に前記転舵輪を転舵制御する転舵制御部と、前記操舵状態に応じた目標操舵反力を前記ステアリングホイールに付与する操舵反力制御部と、を備える車両用操舵制御装置において、
前記転舵制御部は、
前記ステアリングホイールの操舵角に応じた制御量である第一定常ステア制御量を演算する第一定常ステア制御量演算部と、
前記ステアリングホイールの操舵角速度に応じた制御量である第一微分ステア制御量を、車両の走行モードに対応した第一微分ステアマップを参照して演算する第一微分ステア制御量演算部と、
前記第一定常ステア制御量演算部で演算した第一定常ステア制御量と、前記第一微分ステア制御量演算部で演算した第一微分ステア制御量とを加算した値を前記目標転舵角として設定する目標転舵角設定部と、を備え、
前記操舵反力制御部は、
前記ステアリングホイールの操舵角に応じた制御量である第二定常ステア制御量を演算する第二定常ステア制御量演算部と、
前記ステアリングホイールの操舵角速度に応じた制御量である第二微分ステア制御量を、予め固定した第二微分ステアマップを参照して演算する第二微分ステア制御量演算部と、
前記第二定常ステア制御量演算部で演算した第二定常ステア制御量と、前記第二微分ステア制御量演算部で演算した第二微分ステア制御量とを加算した値を仮想目標転舵角として設定し、当該仮想目標転舵角に基づいて前記目標操舵反力を設定する操舵反力設定部と、を備えることを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 前記第一定常ステア制御量演算部は、前記走行モードに対応した第一定常ステアマップを参照して前記第一定常ステア制御量を演算し、
前記第二定常ステア制御量演算部は、前記走行モードに対応した第二定常ステアマップを参照して前記第二定常ステア制御量を演算することを特徴とする請求項1に記載の車両用操舵制御装置。 - ステアリングホイールと転舵輪とが機械的に分離され、前記ステアリングホイールの操舵状態に応じた目標転舵角に前記転舵輪を転舵制御すると共に、前記操舵状態に応じて目標操舵反力を前記ステアリングホイールに付与する車両用操舵制御方法において、
前記ステアリングホイールの操舵角に応じた制御量である第一定常ステア制御量と前記ステアリングホイールの操舵角速度に応じた制御量である第一微分ステア制御量とを加算した値を前記目標転舵角として設定するに際し、車両の走行モードに対応した第一微分ステアマップを参照して前記第一微分ステア制御量を演算すると共に、
前記操舵角に応じた制御量である第二定常ステア制御量と前記操舵角速度に応じた制御量である第二微分ステア制御量とを加算した値に基づいて前記目標操舵反力を設定するに際し、予め固定した第二微分ステアマップを参照して前記第二微分ステア制御量を演算することを特徴とする車両用操舵制御方法。
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