JP6031886B2 - 静電アクチュエータの制御方法 - Google Patents
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Description
ただ、図8の部分拡大断面図で模式的に示すように、従来の静電アクチュエータ200は、固定子1と移動子2とが擦れて摩擦帯電による静電気が固定子1及び移動子2に発生すると、移動子2が固定子1に張り付いて停止したり、動きが鈍ったりし、移動子2の円滑な移動が妨げられてしまう。静電気の帯電は、環境の電位が偏っていたり、乾燥したり
しているときに生じ易い。同図では、固定子1に負の静電気が帯電し、移動子2に正の静電気が帯電した例を示し、固定子1の静電気を、固定子1の移動子2との対向面側に描き、移動子2の静電気を、移動子2の固定子1との対向面とは反対側に描いてある。
そこで、移動子の円滑な移動動作ができるように、帯電を防止した静電アクチュエータが提案されている(特許文献1、特許文献2)。
特許文献4では、静電気帯電の除電ではないが、移動動作させるため駆動用の正負の電荷を移動子に与える手段として、イオン風を用いた静電アクチュエータを提案している。
特許文献2の帯電防止策は、除電ブラシを利用する結果、除電ブラシによる擦り傷やブラシ屑などが、固定子或いは移動子の対向面に塵となって付着するという、新たな問題を生じることがある。また、静電アクチュエータを展示物として用いる場合は、外観が損なわれてしまう。
特許文献4で利用するイオン風を帯電防止に利用することも考えられるが、イオン風を使うには、イオン発生器および送風機が必要であり、静電アクチュエータが大型化する上、重量も重くなり、またコスト高にも繋がり、好ましくない。
(1)固定子と前記固定子上に配置された移動子とを備え、前記固定子及び前記移動子の互いの対向面に平行な方向に前記移動子を移動させる移動信号を前記固定子に設けられた複数の電極に供給する静電アクチュエータの制御方法であって、
前記移動信号を前記複数の電極に供給しないときに、前記移動信号を供給する電極である前記複数の電極の各々に、前記固定子及び前記移動子に生じる帯電の帯電量を減少させる交流の除電信号を供給する静電アクチュエータの制御方法。
(2)前記除電信号は、正の電圧を印加する時間及び負の電圧を印加する時間である電圧正負時間が、時間と共に減少する信号である、前記(1)の静電アクチュエータの制御方法。
(3)前記除電信号は、正の電圧を印加する時間及び負の電圧を印加する時間である電圧正負時間における電圧の絶対値の最大値が、時間と共に減衰する信号である、前記(1)の静電アクチュエータの制御方法。
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図1は、本発明の静電アクチュエータの制御方法の一実施形態を適用可能な静電アクチュエータの一例を示し、図1(a)は側面図、図1(b)は部分拡大断面図である。
同図に示す静電アクチュエータ100は、固定子1と移動子2とを備え、前記固定子1に設けられた複数の電極3に移動信号Smが供給されることによって、前記移動子2に電荷を誘起させて、この電荷によって前記固定子1と前記移動子2間に作用する静電気力により、前記移動子2を、前記固定子1と前記移動子2との互いの対向面に平行な方向に移動させることができる。
なお、図1に示す静電アクチュエータ100では、移動子2は固定子1上に配置されているように描いてあり、図面下方向が地面、言い換えると図面下方向が重力方向であるときは、文字どおり、移動子2は固定子1の上方に配置されることになる。しかし、本発明において、「固定子上に配置された移動子」の意味は、移動子2と固定子1との位置関係として、固定子1に対して重力方向から遠い方に移動子2が配置される位置関係に限定されず、固定子1及び移動子2の互いの対向面が接触する位置関係であれば良く、例えば、固定子1及び移動子2の互いの対向面が、重力方向に対して垂直面となる位置関係でも良い。
複数の電極3に対しては、後述図2で説明するように、バスライン4、接続端子5を介して、移動信号Sm及び除電信号Seが供給される。接続端子5には、後述する電源部6が、静電アクチュエータ100の少なくとも駆動時には接続されることによって、移動信号Sm及び除電信号Seが、複数の電極3に供給される。接続端子5を介して電源部6を接続することで、電源部6は異なる固定子1に共通して使い回しが出来るようになっている。
抵抗体層は、例えば、移動子2の固定子1との対向面の反対側の面に設けることができる。
固定子1が備える複数の電極3に供給される移動信号Smには、従来公知の各種方式のものを採用することができる。例えば、2相式、3相式、4相式など、複数相の移動信号Smを供給する方式を採用することができる。
なお、本明細書において、異なる相の相毎の電極3a、電極3b、電極3c、及び、電極3dを纏めて言うときは、単に「電極3」と言うこともある。
同様に、バスライン4a、バスライン4b、バスライン4c、及び、バスライン4dを纏めて言うときは、単に「バスライン4」と言うこともある。
同様に、接続端子5a、接続端子5b、接続端子5c、及び、接続端子5d、を纏めて言うときは、単に「接続端子5」と言うこともある。
なお、本発明においては、移動信号Smのデューティ比は必ずしも50%に限定されるものではない。
除電信号Seは、移動信号Smが複数の電極3に供給されないときに、複数の電極3の各々に、固定子1及び移動子2のに生じる帯電の帯電量を減少させる交流の信号である。この除電信号Seによって、前記帯電を減らすことができる。
除電信号Seは、強制的に、正の帯電と負の帯電を交互に生じさせつつ、正の帯電量と負の帯電量を、時間と共に減衰させるような信号である。正の帯電と負の帯電を交互に生じさせても、それらの帯電量を減衰させないで一定のまま信号を加えたのでは、最後に加えた信号波形によって、帯電が残ってしまうので、帯電量が時間とともに強制的に減衰するような信号となっている。
なお、「固定子及び移動子に生じる」の「生じる」とは、静電気の帯電が生じる可能性があるもののまだ静電気の帯電が生じていない状態、静電気の帯電が生じている状態の両方の状態を含む。
図5に例示する除電信号Sevは、電圧が減衰する信号の一例である。したがって、図5に例示する除電信号Sevは、正の電圧を印加する時間及び負の電圧を印加する時間である電圧正負時間における電圧の絶対値の最大値が、時間と共に減衰する信号でもある。
図4に例示する除電信号Sef、及び図5に例示する除電信号Sevは、共に、正負の電圧の絶対値の最大値が互いに等しい矩形波の交流で、デューティ比が50%の信号である。図4に例示する除電信号Sefは、デューティ比50%であるために、周波数が漸増する信号でもある。
電圧が正負に交互に、好ましくは等しい時間で、切り替わる交流の除電信号Seが供給されることで、正負の帯電を交互に強制的に生じさせつつ帯電量を減少させていくことができる。
本発明においては、除電信号Seは矩形波に限定されない。ただ、除電信号Seとして矩形波は、後述する電源部6をデジタル処理回路で構成することができる利点がある。
なお、本発明の除電信号Seには該当しないが、移動信号Smの周波数に比べて、帯電誘起が追いつかず移動不可能な程度に高い周波数、例えば1kHzなどの信号で、周波数一定且つ電圧一定且つデューティ比一定の交流信号を供給すると、固定子1と移動子2に発生した静電気の正負が偏った帯電の偏りは解消させることができるが、帯電そのものは、移動子2の円滑な移動動作を回復できる程度までには減らすことができず、本発明による除電信号Seに比べて劣る。
なお、本明細書において、電圧正負時間が減少する除電信号Sef、及び、電圧が減衰する除電信号Sevを纏めて言うときは、単に「除電信号Se」と言うこともある。
図4に一例を示した電圧正負時間が減少する除電信号Sefは、電圧は一定でよく、例えば、電圧は800Vpp一定として、周波数を10Hzから初めて1kHzまで上げた後、複数の電極3の各々への供給を一斉に停止する。これにより、帯電を減らすことができる。
また、電圧正負時間が減少する図4の除電信号Sefは、周波数も一定でもよく、例えば周波数は50Hz一定として、電圧を順に1周期で、有限時間の正、有限時間のゼロ、有限時間の負、有限時間のゼロと変位させて、正の電圧の時間と、負の電圧の時間が共に減少するようにしてもよい。矩形波においては、1周期において、電圧が正の時間のパルス幅、及び、電圧が負の時間のパルス幅が、共に減少するとともに、ゼロボルトの時間が次第に増えていく信号である。
複数の電極3に移動信号Smを供給する後述電源部6に、容易に除電信号Seも供給可能なように出来る点では、大きい電圧でも移動信号Smと大差のない電圧であることが好ましい。例えば、除電信号Seとしての電圧正負時間が減少する除電信号Sefにおいて、1000Vppで効果が得られている。
電圧正負時間が減少する除電信号Sefの電圧正負時間減少後の終了時点の1周期内における電圧正の時間或いは電圧負の時間は、デューティ比50%の信号でみた周波数で言えば、移動信号Smの周波数が通常、1〜10Hz、最大でも100Hz程度であることから、電圧の変化に帯電が追従できない早さとして、移動信号Smの最大周波数に対して10倍以上の周波数、例えば、1kHz以上とすることが好ましい。すなわち、デューティ比50%のとき周波数1kHzでは、電圧正の時間或いは電圧負の時間は、(1s/1000)×0.5=0.5msである。
ただ、周波数を高くし過ぎても帯電に対しては無意味となる上、電力消費の上でも無駄となる点を考慮して、終了時点の電圧正の時間或いは電圧負の時間を決めると良い。
なお、電圧正負時間が減少する除電信号Sefは、電圧は一定でよいが、電圧が一定であることは必須ではない。ただし、電圧を漸増させるのは逆に帯電を増やす方向となるので、電圧変化はあっても減衰する変化が好ましい。また、周波数は一定でも良いが、周波数を減衰させるのは逆に帯電を増やす方向となるので、周波数変化はあっても漸増する変化が好ましい。
図5に一例を示した電圧が減衰する除電信号Sevは、周波数は一定でよく、例えば、周波数は50Hz一定として、電圧を1000Vppから開始して10Vppまで下げた後、複数の電極3の各々への供給を一斉に停止する。正負の絶対値が等しい矩形波の除電信号Sevを供給しているので、開始時の正の最大電圧は500V、負の絶対値の最大電圧も500Vである。これにより、帯電を減らすことができる。
電圧が減衰する除電信号Sevの周波数は、前記したように時定数が存在するので正又は負の帯電が生じ得る時間を確保できる周波数以下とするのが好ましい。例えば、除電信号Sevの周波数は、移動信号Smの周波数と同程度でよい。したがって、除電信号Sevの周波数は、例えば、1〜100Hzとすることが好ましい。
デューティ比は50%以外でもよい。交互に繰り返す正の帯電と、負の帯電の各々の帯電量を、なるべく等しくて減じる波形であれば良い。
なお、電圧が減衰する除電信号Sevは、周波数は一定でよいが、周波数が一定であることは必須ではない。ただし、周波数を減少させるのは逆に帯電を増やす方向となるので、周波数変化はあっても漸増する変化が好ましい。
前記した移動信号Sm及び除電信号Seを固定子1の複数の電極3に供給させるための電源部6としては、その構成は特に制限はない。電源部6は、前記した移動信号Sm及び除電信号Seを固定子1の複数の電極3に供給することができるものであればよい。電源部6は、移動信号Sm及び除電信号Seを出力する駆動信号出力部と言うこともできる。
以下、電源部6の構成について、その一例を説明する。ここで説明する電源部6は、除電信号Seにおける電圧正負時間減少の除電信号Sefとして、デューティ比50%一定で周波数を漸増する形式のもので説明する。
図7のような3領域に分けた複数の電極3の配置は、領域Aで移動子2を固定子1に対してY方向に相対移動させたときに、X方向への蛇行や偏った移動によって、移動子2が領域Yから外れそうになって、領域A或いは領域Bに進入したときに、領域Yに戻すことができる、配置である。
電源部6は、本体61、コントロールボックス62、ACアダプターまたは電池63を含む。本体61は、ACアダプターまたは電池63からの電力の供給を受けて、コントロールボックス62からの指令信号に従って動作し、移動信号Smと除電信号Seを生成し、複数の電極3に供給する。
電源部6は、本体61の高圧4線SW回路66,67,68の各々から、固定子1の領域Y、領域A及び領域Bのそれぞれの複数の電極3に、移動信号Sm或いは除電信号Seを供給することができる。
本体61は、ACアダプターまたは電池63から電力の供給を受けて動作する。ACアダプターまたは電池63からの電力の供給は、本体61の自動切換え回路/電圧変換回路64において行なわれる。自動切換え回路/電圧変換回路64は、ACアダプターと電池との両方からの電力の供給が可能なときには、電池を回路から切り離して電池からの電力の供給を遮断するとともにACアダプターだけから電力の供給が行なわれるようにする。
コントロールボックス62は、静電アクチュエータ100における移動子2の移動動作と、除電を制御するコントローラである。コントロールボックス62には操作者による操作が可能なように押ボタンスイッチ、切替スイッチ、十字スイッチ、ジョイスティック、等のうちの1以上の操作手段が設けられている。操作者がそれらの1以上を操作すると、コントロールボックス62は指令信号を、本体61のI/F65に出力する。
本体61の動作は、コントロールボックス62を操作者が操作することによって、制御することができる。例えば、コントロールボックス62の操作によって、移動子2の移動速度、移動方向、除電などを制御することができる。コントロールボックス62を操作者が操作すると、コントロールボックス62から指令信号が出力される。この指令信号は本体61のI/F65を通じて本体61のデータ処理部であるCPU(central processor unit)に入力される。入力された指令信号に基づいて本体61のCPUが本体61の各部分(図6参照)の動作を決める信号を各部に出力する。その信号にしたがって各部分が動作することによって、本体61は、移動信号Sm或いは除電信号Seを出力する。
本体部61の各部は、自動切換え回路/電圧変換回路64からの電力供給を受けて動作する。例えば、CPUには、定電圧化されて一定電圧の電力が供給される。
ここでの+高圧発生回路は+900Vまでの正の電圧を発生でき、−高圧発生回路は−900Vまでの負の電圧を発生できるようになっている。
本体61のCPUは、コントロールボックス62からの指令信号に基づいて、必要なデータ処理を行い、+高圧発生回路及び−高圧発生回路に出力させる電圧値を、電圧デコーダを経由して、+高圧発生回路及び−高圧発生回路に出力する。前記電圧値は、移動信号Smのときは時間で一定であるが、除電信号Seとして電圧が減衰する除電信号Sevのときは時間経過と共に減衰し、除電信号Seとして電圧正負時間が減少する除電信号Sefのときは時間で一定である。
また、本体61のCPUは、コントロールボックス62からの指令信号に基づいて、必要なデータ処理を行い、デコーダを経て、正・逆/停止パターン回路に、移動信号Sm或いは除電信号Seに応じたスイッチ操作信号を出力させる。スイッチ操作信号は、高圧4線SW回路66,67,68に主力され、高圧4線SW回路66,67,68は、スイッチ操作信号に基づいて、+高圧発生回路及び−高圧発生回路から出力された高電圧をスイッチ操作して移動信号Sm或いは除電信号Seを生成する。
例えば、移動子2の移動速度を遅くするときは、スイッチ速度が遅くなり周波数の低い移動信号Smが生成され、周波数が漸増する形式の電圧正負時間減少の除電信号Sefを出力させるときは、スイッチ速度が次第に早くなり周波数が漸増する形式の除電信号Sefが生成される。
前記移動速度を早くするときは周波数をより早くする指令信号をCPUが出力し、移動速度を遅くするときは周波数をより低くする指令信号をCPUが出力したのと同じように、CPUが周波数を次第に早くする指令信号すると共に、4線の出力を移動信号Smのように互いに異なる4相の信号とはせずに、全て位相の揃った同一の信号とする指令信号を出力する。
また、除電信号Seとして、電圧が減衰する除電信号Sevを採用した電源部6である場合は、CPUが周波数を増加させる指令信号の代わりに、電圧を次第に低くする指令信号を出力する。
なお、除電信号Seの供給は、操作者の操作によるコントロールボックス62からの強制的な指令信号によらずに、或いはこれと併用して、CPUが実行するデータ処理内容をソフトウェア的に変更することで、CPUに、移動子2の移動停止時に自動的に供給できるような指令を出力させて、自動処理してもよい。
2 移動子
3,3a〜3d 電極
4,4a〜4d バスライン
5,5a〜5d 入力端子
6 電源部
61 本体
62 コントロールボックス
63 ACアダプターまたは電池
64 自動切換え回路/電圧変換回路
65 I/F(インターフェイス)
66 高圧4線SW回路(領域Y用)
67 高圧4線SW回路(駆動A用)
68 高圧4線SW回路(駆動B用)
100 静電アクチュエータ
200 従来の静電アクチュエータ
A 領域A
B 領域B
Sm,Sm1〜Sm4 移動信号
Se 除電信号
Sef 除電信号(電圧正負時間が減少)
Sev 除電信号(電圧が減衰)
Y 領域Y
Claims (3)
- 固定子と前記固定子上に配置された移動子とを備え、前記固定子及び前記移動子の互いの対向面に平行な方向に前記移動子を移動させる移動信号を前記固定子に設けられた複数の電極に供給する静電アクチュエータの制御方法であって、
前記移動信号を前記複数の電極に供給しないときに、前記移動信号を供給する電極である前記複数の電極の各々に、前記固定子及び前記移動子に生じる帯電の帯電量を減少させる交流の除電信号を供給する静電アクチュエータの制御方法。 - 前記除電信号は、正の電圧を印加する時間及び負の電圧を印加する時間である電圧正負時間が、時間と共に減少する信号である、請求項1に記載の静電アクチュエータの制御方法。
- 前記除電信号は、正の電圧を印加する時間及び負の電圧を印加する時間である電圧正負時間における電圧の絶対値の最大値が、時間と共に減衰する信号である、請求項1に記載の静電アクチュエータの制御方法。
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