JP6026236B2 - 金属錯体色素、光電変換素子、色素増感太陽電池、色素溶液、色素吸着電極及び色素増感太陽電池の製造方法 - Google Patents

金属錯体色素、光電変換素子、色素増感太陽電池、色素溶液、色素吸着電極及び色素増感太陽電池の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属錯体色素、光電変換素子、色素増感太陽電池、色素溶液、色素吸着電極及び色素増感太陽電池の製造方法に関する。
光電変換素子は各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。この光電変換素子には金属を用いたもの、半導体を用いたもの、有機顔料や色素を用いたもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどの様々な方式が実用化されている。とくに、非枯渇性の太陽エネルギーを利用した太陽電池は、燃料が不要であり、無尽蔵のクリーンエネルギーを利用するものとして、その本格的な実用化が大いに期待されている。その中でも、シリコン系太陽電池は古くから研究開発が進められ、各国の政策的な配慮もあって普及が進んでいる。しかし、シリコンは無機材料であり、スループット及びコスト等の改良には自ずと限界がある。
そこで色素増感型太陽電池の研究が精力的に行われている。特にその契機となったのは、スイス ローザンヌ工科大学のGraetzel等の研究成果である。彼らは、ポーラス酸化チタン薄膜の表面にルテニウム錯体からなる色素を固定した構造を採用し、アモルファスシリコン並の変換効率を実現した。これにより、高価な真空装置を使用しなくても製造できる色素増感型太陽電池が一躍世界の研究者から注目を集めるようになった。
現在までに、光電変換素子に使用される金属錯体色素として一般にN3、N719、Z907、J2等が開発されている。しかしながら、従来の色素増感型太陽電池は、一般に光電変換効率が低く、耐久性が悪い場合が多かった。
最近になって、太陽スペクトルの可視及び長波長領域内で強度の吸収を示す、エテニレン構造を有するアンカー基を分子構造内に含む色素が提案されている(特許文献1参照)。
特表2011−502187号公報
特許文献1で提案された色素は太陽スペクトルの長波長領域内で吸収を示すことが記載され、光電変換素子に採用されると従来の色素よりも光電変換効率を向上させることができると推測される。しかし、色素増感太陽電池に対する要求される性能レベルは年々高まっており、特に光電変換効率(η)の向上という点においてさらなる改良が求められている。
したがって、本発明の課題は、光電変換効率(η)に対して優れた性能を示す金属錯体色素、この金属錯体色素を使用することで優れた性能の光電変換素子及び色素吸着電極、色素増感太陽電池及びその製造方法ならびに金属錯体色素を含有する色素溶液を提供することにある。
本発明者等は、光電変換効率(η)を向上させるには、色素のモル吸光係数を向上させることが重要であり、そのためには配位子の最高被占軌道(HOMOと称する。)と最低空軌道(LUMOと称する。)の重なり積分が大きくなることが有効であると考えた。
この想定に基づいて検討を行ったところ、半導体微粒子に吸着するアンカー基の配位子母核への置換方法及び置換母核を工夫した3座配位子と、1つ又は2つの配位原子がアニオン性である2座配位子又は3座配位子とを併用すると、電子状態が適正化されモル吸光係数が増大することを見出した。モル吸光係数の増大は、光電変換効率の向上に有効と考えられ、これらの知見に基づき本発明者等はさらに研究を重ね、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
(1)電性支持体、電解質を含む感光体層、電解質を含む電荷移動体層及び対極を有する光電変換素子であって、該感光体層が、下記式(I)で表される金属錯体色素が担持された半導体微粒子を有する光電変換素子。
(式中、Mは金属イオンを表す。
環A、環B及び環Cは各々独立にピリジン環を表す。Z及びZ は炭素原子を表す。ここで、ZとN原子の間の結合及びZとN原子の間の結合は単結合でも二重結合でもよい
は、−O−、−S−、−NR’(R’は水素原子又は置換基を表す。)−、飽和脂肪族基、該環Bとπ共役しない不飽和基を有する不飽和脂肪族基、芳香族炭化水素環基若しくは非芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基若しくは非芳香族ヘテロ環基又はこれらを組み合わせた基を表す。Anc1〜Anc3は各々独立に酸性基を表す。l1及びl3は各々独立に1〜4の整数、l2は1〜5の整数をそれぞれ表す。mは0〜3の整数を表す。
〜Lは配位子を表す。但し、とLが互いに結合して下記式(2L−1)〜(2L−5)のいずれかで表される2座の配位子を形成し、又は、L、L及びLが互いに結合して下記式(3L−1)〜(3L−5)のいずれかで表される3座の配位子を形成している。ここで、L 中の配位原子、L 中の配位原子及び 配位原子のうち1つ又は2つの配位原子アニオンとなって配位している
Yは電荷を中和させるのに必要な対イオンを表し、nは0〜2の整数を表す。)
(式中、
*は前記金属イオンMへの結合位置を表す。
環Dはピラゾール環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チオフェン環およびベンゼン環から選択される芳香族環を表す。
111 〜A 141 はアニオンとなって配位している窒素原子又は炭素原子を表し、A 151 はアニオンとなって配位している窒素原子、酸素原子又は硫黄原子のいずれかを表す。R 111 〜R 154 は水素原子、又は、Anc1、Anc2及びAnc3を有しない置換基を表す。)
(式中、
*は前記金属イオンMへの結合位置を表す。
環Dはピラゾール環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チオフェン環およびベンゼン環から選択される芳香族環を表す。
211 〜A 242 は窒素原子又は炭素原子を表し、A 251 及びA 252 は窒素原子、酸素原子又は硫黄原子のいずれかを表す。ただし、A 211 とA 212 、A 221 とA 222 、A 231 とA 232 、A 241 とA 242 のそれぞれにおいて少なくとも1つはアニオンとなって配位している窒素原子又は炭素原子であり、A 251 とA 252 の少なくとも1つはアニオンとなって配位している窒素原子、酸素原子又は硫黄原子である。R 211 〜R 253 は水素原子、又は、Anc1、Anc2及びAnc3を有しない置換基を表す。)
(2)式(I)において、MがFe2+、Ru2+又はOs2+である(1)に記載の光電変換素子
(3)式(I)において、Anc1〜Anc3は、各々独立に、−COOH、−SOH、−PO、−OH又は−SHである(1)又は)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
)式(I)において、L〜Lは、いずれも、酸性基を有しない配位子である(1)〜()のいずれか1項に記載の光電変換素子。
)式(I)において、 がNCS配位子である(1)〜()のいずれか1項に記載の光電変換素子。
(6)L とL が互いに結合して式(2L−1)で表される2座の配位子を形成し、又は、L 、L 及びL が互いに結合して式(3L−1)で表される3座の配位子を形成している(1)〜(5)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
)式(I)において、Xは、ベンゼン環基である(1)〜()のいずれか1項に記載の光電変換素子。
)半導体微粒子に、吸着性基を有する基を少なくとも1つ有する共吸着剤が担持されている(1)〜()のいずれか1項に記載の光電変換素子。
)共吸着剤が、下記式(CA)で表される()に記載の光電変換素子。
(式中、RA1は酸性基を有する置換基を表す。RA2は置換基を表す。nAは0以上の整数を表す。)
10)(1)〜()のいずれか1項に記載の光電変換素子を具備する色素増感太陽電池。
(15)下記式(I)で表される金属錯体色素。
(式中、
は金属イオンを表す。
環A、環B及び環Cはピリジン環を表す。Z 及びZ は炭素原子を表す。ここで、Z とN原子の間の結合及びZ とN原子の間の結合は単結合でも二重結合でもよい。
は、−O−、−S−、−NR’(R’は水素原子又は置換基を表す。)−、飽和脂肪族基、該環Bとπ共役しない不飽和基を有する不飽和脂肪族基、芳香族炭化水素環基若しくは非芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基若しくは非芳香族ヘテロ環基又はこれらを組み合わせた基を表す。Anc1〜Anc3は各々独立に酸性基を表す。l1及びl3は各々独立に1〜4の整数、l2は1〜5の整数をそれぞれ表す。は0〜3の整数を表す。
〜L は配位子を表す。但し、L とL が互いに結合して下記式(2L−1)〜(2L−5)のいずれかで表される2座の配位子を形成し、又は、L 、L 及びL が互いに結合して下記式(3L−1)〜(3L−5)のいずれかで表される3座の配位子を形成している。ここで、L 中の配位原子、L 中の配位原子及びL 中の配位原子のうち1つ又は2つの配位原子はアニオンとなって配位している。
は電荷を中和させるのに必要な対イオンを表し、は0〜2の整数を表す。)
(式中、
*は前記金属イオンMへの結合位置を表す。
環Dはピラゾール環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チオフェン環およびベンゼン環から選択される芳香族環を表す。
111 〜A 141 はアニオンとなって配位している窒素原子又は炭素原子を表し、A 151 はアニオンとなって配位している窒素原子、酸素原子又は硫黄原子のいずれかを表す。R 111 〜R 154 は水素原子、又は、Anc1、Anc2及びAnc3を有しない置換基を表す。)
(式中、
*は前記金属イオンMへの結合位置を表す。
環Dはピラゾール環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チオフェン環およびベンゼン環から選択される芳香族環を表す。
211 〜A 242 は窒素原子又は炭素原子を表し、A 251 及びA 252 は窒素原子、酸素原子又は硫黄原子のいずれかを表す。ただし、A 211 とA 212 、A 221 とA 222 、A 231 とA 232 、A 241 とA 242 のそれぞれにおいて少なくとも1つはアニオンとなって配位している窒素原子又は炭素原子であり、A 251 とA 252 のそれぞれ少なくとも1つはアニオンとなって配位している窒素原子、酸素原子又は硫黄原子である。R 211 〜R 253 は水素原子、又は、Anc1、Anc2及びAnc3を有しない置換基を表す。)
12)(11)に記載の金属錯体色素を溶解してなる色素溶液。
13)有機溶媒中に、金属錯体色素を0.001〜0.1質量%含有させ、水を0.1質量%以下に抑えてなる(12)に記載の色素溶液。
14)共吸着剤を含有する(12)又は(13)に記載の色素溶液。
15)共吸着剤が、下記式(CA)で表される(14)に記載の色素溶液。
(式中、RA1は酸性基を有する置換基を表す。RA2は置換基を表す。nAは0以上の整数を表す。)
16)半導体を付与した導電性支持体に、(12)〜(15)のいずれか1項に記載の色素溶液を塗布し、これを硬化させて感光体層とした色素増感太陽電池用の色素吸着電極の製造方法
17)(16)に記載の製造方法により色素吸着電極を得、この色素吸着電極と電解質対極を用いて色素増感太陽電池を組み立てる色素増感太陽電池の製造方法。
本明細書において、特に断りがない限り、炭素−炭素二重結合については、分子内にE型及びZ型が存在する場合、そのいずれであっても、またこれらの混合物であってもよい。特定の符号で表示された置換基や連結基、配位子等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時もしくは択一的に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接するとき(特に、隣接するとき)には特段の断りがない限り、それらが互いに連結して環を形成してもよい。また、環、例えば脂環、芳香環、ヘテロ環、はさらに縮環して縮合環を形成していてもよい。
本発明により、光電変換効率(η)を向上させることのできる優れた性能を発揮する金属錯体色素、この金属錯体色素を使用することで優れた性能の光電変換素子及び色素吸着電極、色素増感太陽電池及びその製造方法ならびに金属錯体色素を含有する色素溶液が提供できる。
本発明の光電変換素子の一実施態様について、層中の円部分の拡大図も含めて模式的に示した断面図である。 実施例2で作製した色素増感型太陽電池を模式的に示す断面図である。 実施例1で合成した金属錯体色素Dye−2の合成中間体である化合物3の1H−NMRのチャートである。 実施例1で合成した金属錯体色素Dye−2の分光吸収測定により得られたスペクトルチャートである。
本発明の光電変換素子は、導電性支持体、電解質を含む感光体層、電解質を含む電荷移動体層及び対極を有する。該感光体層は下記式(I)で表される金属錯体色素が担持された半導体微粒子を有している。
<<金属錯体色素>>
本発明の金属錯体色素は、下記式(I)で表される。
式中、Mは金属イオンを表す。
環A、環B及び環Cは各々独立に含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z及びZは各々独立に炭素原子又は窒素原子を表す。ここで、ZとN原子の間の結合及びZとN原子の間の結合は単結合でも二重結合でもよい。
〜Rは各々独立にAnc1〜Anc3を有しない置換基を表す。n1〜n3は各々独立に0〜3の整数を表す。R〜Rが各々においてそれぞれ複数存在する場合、これらは互いに結合して環を形成してもよい。
Xは、−O−、−S−、−NR’(R’は水素原子又は置換基を表す。)−、飽和脂肪族基、該環Bとπ共役しない不飽和基を有する不飽和脂肪族基、芳香族炭化水素環基若しくは非芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基若しくは非芳香族ヘテロ環基又はこれらを組み合わせた基を表す。Anc1〜Anc3は各々独立に酸性基を表す。l1及びl3は各々独立に1〜4の整数、l2は1〜5の整数をそれぞれ表す。mは0〜3の整数を表す。
〜Lは配位子を表し、LとLが互いに結合した2座の配位子であるか、L、L及びLが互いに結合した3座の配位子である。ここで、L〜Lの1つ又は2つの配位原子はアニオン性である。
Yは電荷を中和させるのに必要な対イオンを表し、nは0〜2の整数を表す。
式(I)で表される金属錯体色素は、少なくとも1つの酸性基Anc1が直接結合した環Aと環Bと少なくとも1つのAnc3が直接結合した環Cとを有し、これら環A〜Cが直接結合してなる3座配位子と、配位原子がアニオン性の配位子を1つ又は2つ含む配位子L〜Lとを有している。このような構造を有する金属錯体色素は、光電変換効率(η)が大幅に増加すると共に吸着安定性及び性能の均質性にも優れる。
− 金属イオンM −
Mは金属錯体色素の中心金属であり、長周期率表上8〜10族の元素が挙げられる。
このような元素としては、Ru、Fe、Os、Cu、W、Cr、Mo、Ni、Pd、Pt、Co、Ir、Rh、Re、Mn及びZnの各金属イオンが挙げられる。
本発明においては、MはOs2+イオン、Ru2+イオン、Fe2+イオン又はCu2+イオンが好ましく、なかでもRu2+イオンが好ましい。
なお、光電変換素子中に組み込まれた状態においては、Mの価数は、周囲の材料との酸化還元反応により変化することがある。
− アクセプター配位子 −
式(I)において、環A、環B及び環Cが互いに連結して形成される3座配位子は、半導体微粒子の表面に吸着する吸着基(酸性基ともいう。)を有する配位子である。この配位子を「アクセプター配位子」と称することがある。以下、このアクセプター配位子を説明する。
[環A、環B及び環C]
環A、環B及び環Cは、ぞれぞれ、含窒素芳香族ヘテロ環であり、それぞれ連結基などを介することなく互いに環構成原子同士が連結して、アクセプター配位子としての3座配位子を形成する。ここで、環A、環B及び環Cを構成し、金属イオンMに結合する窒素原子は、アニオンでもよいが、孤立電子対を有するのが好ましい。また、環A及び環CにおいてZ及びZは炭素原子又は窒素原子を表し、環AにおけるZとN原子の間の結合、及び、環CにおけるZとN原子の間の結合は、各々独立に、単結合でも二重結合でもよい。これらZ及びZによって環A及び環Cは環Bに連結している。Z及びZは共に炭素原子であるのが特に好ましい。
環A、環B及び環Cは、ぞれぞれ、金属イオンMと結合することができればどのような含窒素芳香族ヘテロ環でもよい。このような含窒素芳香族ヘテロ環は5員環又は6員環であるのが好ましい。これらの含窒素芳香族ヘテロ環は、他の環、例えば、後述する置換基Tのアリール基若しくはヘテロ環基、又は、後述する非芳香族ヘテロ環基の環若しくは非芳香族炭化水素環基が縮環しても構わない。また、含窒素芳香族ヘテロ環の環構成ヘテロ原子は、2〜6個の窒素原子であっても、窒素原子に加えて、他のヘテロ原子、例えば、酸素原子、硫黄原子を含んでもよい。
6員環の含窒素芳香族ヘテロ環としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環が挙げられ、5員環の含窒素芳香族ヘテロ環としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インドリン環、インダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、フラザン環、インドール環、ベンゾピロール環、イソインドール環、ベンゾトリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環が挙げられる。
環A及び環Cは、非縮合の5もしくは6員環又は縮環(好ましくはベンゼン縮環)した5員環が好ましく、非縮合の5もしくは6員環が光電変換効率の点で特に好ましい。これら環A及び環Cは、環A又は環Cのπ電子と共役しない孤立電子対を有する含窒素芳香族ヘテロ環であるが特に好ましい。孤立電子対を有する含窒素芳香族ヘテロ環としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、トリアゾール環、ピラゾール環等が挙げられる。
環Bは、非縮合の6員環が好ましく、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアゾール環がより好ましく、ピリジン環又はピリミジン環が特に好ましい。
及びZは、少なくとも一方が、炭素原子が好ましく、両方が炭素原子の場合がより好ましい。Z又はZが窒素原子である場合は環A又は環Cはそれぞれピラゾール環又はトリアゾール環が好ましい。
環A、環B及び環Cは同一でも互いに異なっていてもよく、環A及び環Cは異なっていてもよいが同一であるのが好ましい。環A、環B及び環Cの組合せとしては、例えば、環A−環B−環Cの順に、ピリジン環−ピリジン環−ピリジン環、ピリジン環−ピリジン環−ピリミジン環、ピリジン環−ピリジン環−ベンゾチアゾール環、ピリジン環−ピリジン環−イミダゾール環、ピリジン環−ピリミジン環−ピリジン環、ピリミジン環−ピリジン環−ピリミジン環、トリアジン環−ピリジン環−トリアジン環、ピリジン環−ピラジン環−ピリジン環、ピリジン環−ピリジン環−ピラジン環、ピラジン環−ピリジン環−ピラジン環、ピリジン環−ピリジン環−ピラゾール環等が挙げられる。
アプセプター配位子において、環A、環B及び環Cの連結様式は、光電変換効率の点で、環AのZ及び環CのZが単結合で環Bの炭素原子に連結しているのが好ましく、これらのみで環A〜環Cが互いに連結しているのが特に好ましい。
[置換基R、R及びR
環A、環B及び環CはそれぞれAnc1、Anc2及びAnc3を有しない置換基R、R及びRを有していてもよい。これらの環A〜Cが各々独立に有する置換基R、R及びRとしては置換基Tが挙げられる。
<置換基T>
置換基Tとしては、下記のものが挙げられる。なお、本明細書において、単に置換基としてしか記載されていないは、この置換基Tを参照するものであり、また、各々の基、例えば、アルキル基、が記載されているのみの時は、この置換基Tの対応する基における好ましい範囲、具体例が適用される。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、1−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、フルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基で、例えば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘキサフルオロプロピル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数5〜20での、例えばシクロペンテニル、シクロヘキセニル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数2〜20で、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子(−S−、−SO−、−SO−)、窒素原子、珪素原子及びセレン原子等を有する5又は6員環のヘテロ環基が好ましく、例えば、フラニル、チエニル、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、オクチルオキシ基、ベンジルオキシ等)、アルケニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、ビニルオキシ、アリルオキシ等)、アルキニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、2−プロペニルオキシ、4−ブチニルオキシ等)、シクロアルキルオキシ基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、4−メチルシクロヘキシルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、ヘテロ環オキシ基(例えば、イミダゾリルオキシ、ベンゾイミダゾリルオキシ、チアゾリルオキシ、ベンゾチアゾリルオキシ、トリアジニルオキシ、プリニルオキシ)、
アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20ので、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、シクロアルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数4〜20ので、例えば、シクロプロピルオキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数6〜20で、例えば、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20で、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、アルキニルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、シクロアルケニルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、N−アリルアミノ、N−(2−プロピニル)アミノ、N−シクロヘキシルアミノ、N−シクロヘキセニルアミノ、アニリノ、ピリジルアミノ、イミダゾリルアミノ、ベンゾイミダゾリルアミノ、チアゾリルアミノ、ベンゾチアゾリルアミノ、トリアジニルアミノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのスルファモイル基が好ましく、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−シクロヘキシルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、ベンゾイル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのカルバモイル基が好ましく、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、
アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数0〜20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのスルホンアミド基が好ましく、例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、N−メチルメタンスルスルホンアミド、N−シクロヘキシルスルホンアミド、N−エチルベンゼンスルホンアミド等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、シクロアルキルチオ基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ、4−メチルシクロヘキシルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル、ベンゼンスルホニル等)、
シリル基(好ましくは炭素数1〜20で、アルキル、アリール、アルコキシ及びアリールオキシが置換したシリル基が好ましく、例えば、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、ジエチルベンジルシリル、ジメチルフェニルシリル等)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、アルキル、アリール、アルコキシ及びアリールオキシが置換したシリルオキシ基が好ましく、例えば、トリエチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシ、ジエチルベンジルシリルオキシ、ジメチルフェニルシリルオキシ等)、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、スルホ基、ホスホニル基、ホスホリル基、ホウ酸基
等が挙げられる。
また、置換基Tは、前述の基を複数組み合わせてなる基であってもよい。例えば、1又は2以上のアルコキシ基で置換されたアリール基、1又は2以上のアルキル基を有するアリール基又はヘテロ環基、1又は2以上のアルキル基を有するアリール基又はヘテロ環基で置換されたアルケニル基等が挙げられる。
置換基T又は化合物等がアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
置換基R、R及びRとしては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ハロゲン原子等が好ましく、アルキル基、アルケニル基、アリール基が特に好ましい。なお、置換基R〜Rが各々においてそれぞれ複数存在する場合、これらは直接又は連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
[n1〜n3]
式(I)において、n1〜3は各々独立に0〜3の整数を表す。n1〜n3はいずれも0又は1であるのが好ましい。
[連結基X]
連結基Xは、環B及びAnc2を連結する基であり、例えば、−O−、−S−、−NR’(R’は水素原子又は置換基を表す。)−、飽和脂肪族基、環Bとπ共役しない不飽和基を有する不飽和脂肪族基、芳香族炭化水素環基若しくは非芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基若しくは非芳香族ヘテロ環基又はこれらの組み合わせにより形成される基である。ここで、R’は水素原子又は前述の置換基Tを挙げることができる。なお、連結基Xは置換基Tを有していてもよい。
飽和脂肪族基は、直鎖状、分岐鎖又は環状であってもよい。特に好適な飽和脂肪族基はアルキレン基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロペニレン基、ブチレニン基等の炭素数1〜6のアルキレン基が挙げられる。
環Bとπ共役しない不飽和基を有する不飽和脂肪族基は、Anc2と結合する原子と環Bとがπ共役しない不飽和基を有していればよく、例えば、1つ又は2つ以上の不飽和結合を環Bとπ共役しない位置に有している。不飽和結合としては、例えば、炭素−炭素二重結合及び/又は炭素−炭素三結合が挙げられる。このような基として、環Bに結合する炭素原子がsp混成軌道を有する炭素原子すなわち飽和炭素原子である不飽和脂肪族基が挙げられる。この不飽和脂肪族基の不飽和基は、環Bとπ共役しなければ、他の不飽和基とπ共役してもしなくてもよい。特に好適な不飽和脂肪族基について具体的に説明すると、アルキレン基、炭素数3以上のアルケニレン基、炭素数3以上のアルキニレン基等が挙げられる。アルキレン基は、例えば、炭素数2〜6のアルキレン基、具体的には、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。炭素数3以上のアルケニレン基としては、例えば1−プロぺニレン基(−CH=CH−CH−)等が挙げられ、炭素数3以上のアルキニレン基としては、例えば1−プロピニレン基(−C≡C−CH−)等が挙げられる。これらのアルケニレン基及びアルキニレン基において、環Bと結合する炭素原子はsp混成軌道を有する炭素原子、例えば、メチレン炭素原子である。
芳香族炭化水素環基は、例えば、置換基Tのアリール基に対応する基等が挙げられ、具体的には、ベンゼン環基、ナフタレン環基等が挙げられる。
非芳香族炭化水素環基としては、例えば、ヒュッケル則を満たさないように炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を1つ又は2つ以上有する炭化水素環基が挙げられる。なお、環構成原子がオキソ基(>C=O)を含む場合、互変異性体としてエノール構造を取り得、形式上、例えば6π共役となるが、これらは非芳香族炭化水素環基に分類する。好適な非芳香族炭化水素環基としては、例えば、炭素−炭素二重結合を1つ又は2つ以上有するシクロアルケニレン基、炭素−炭素三重結合を1つ又は2つ以上有するシクロアルキニレン基等が挙げられる。シクロアルケニレン基及びシクロアルキニレン基としては、例えば、環を構成する炭素数が4〜6のシクロアルケニレン基及びシクロアルキニレン基が挙げられる。なお、非芳香族炭化水素環基において環A又は環Cに結合する炭素原子は炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を形成する炭素原子であるのがπ共役系を延長できるので好ましい。
芳香族ヘテロ環基としては、環A〜環Cの含窒素芳香族ヘテロ環に対応する2価以上の基及び置換基Tのヘテロ環基に対応する2価以上の基等が挙げられる。具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、トリアゾール環及びピラゾール環等に対応する2価以上の芳香族ヘテロ環基、チオフェン環構造を有する基(チオフェン環基、ベンゾチオフェン環基、チオフェン 1−オキシド環基、チオフェン 1,1−ジオキシド環基等を含む。)及びフラン環基等に対応する2価以上の芳香族ヘテロ環基が挙げられる。
非芳香族ヘテロ環基としては、例えば、炭素−炭素二重結合及び/又は炭素−ヘテロ二重結合を1つ又は2つ以上有し、ヒュッケル則を満たさないヘテロ環基、例えば、ピロリン環基、イミダゾリン環基、下記式で表されるヘテロ環基等が挙げられる。なお、非芳香族炭化水素環基と同様に、非芳香族ヘテロ環基の環構成原子がオキソ基(>C=O)を含む場合も非芳香族ヘテロ環基に分類する。非芳香族ヘテロ環基において環A又は環Cに結合する原子(例えば、下記式で表される複素環基において符号「*」又は「**」が付されている炭素原子)は炭素−炭素二重結合又は炭素−ヘテロ二重結合を形成する炭素原子又はヘテロ原子であるのがπ共役系を延長できるので好ましい。
式中、*及び**は、環B又はAnc2との結合位置を表し、R11及びR12は置換基を示す。置換基R11としては置換基Tが挙げられ、R12としては置換基Tのうち電子求引性基が挙げられ、例えばシアノ基等が好ましい。
連結基Xは、上記で説明した連結基を複数組み合わせてなる連結基(以下、複合連結基ということがある。)であってもよい。このような複合連結基は、例えば、複数の該連結基が結合してなる結合連結基、上記で説明した連結基がAnc1、Anc2及びAnc3を有しない少なくとも1つの置換基で置換された置換連結基等が挙げられる。
連結基Xは、金属錯体色素がより一層高い光電変換効率(η)を発揮する点で、直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基であるのが好ましく、芳香族炭化水素環基がより好ましく、特にベンゼン環基が好ましい。
[酸性基Anc1、Anc2及びAnc3]
式(I)中、Anc1、Anc2及びAnc3で示される酸性基は、解離性のプロトンを有する置換基であり、pKaが11以下の基である。例えば、−COOH、−SOH、−PO、−OH又は−SH等の酸性を示す酸性基が挙げられる。また酸性基はプロトンを放出して解離した形を採っていてもよく、塩であってもよい。酸性基としては、COOH、−SOH、−POもしくは−OH若しくは−SH又はこれらの塩のいずれかであることが好ましい。酸性基が塩である場合、その塩となるときの対イオンとしては特に限定されないが、例えば、式(I)における対イオンYで示す正のイオンの例が挙げられる。Anc1、Anc2及びAnc3としては、それぞれ、吸着安定性と電子注入の観点から−COOH又は−OHであるのが好ましい。
式(I)で表される金属錯体色素は、吸着安定性、すなわち耐久性の観点及び性能のばらつき低減の観点から、Anc1及びAnc3を必須とする複数の酸性基を有しているのが好ましく、複数の酸性基のうち少なくとも1つが環A及び環Cそれぞれに結合していれば、残余の酸性基は環A〜環Cのいずれに結合していてもよい。
[l1〜l3]
式(I)において、l1及びl3は各々独立に1〜4の整数、l2は1〜5の整数を表す。l1及びl3は各々独立に1又は2であるのが好ましく、l2は0、1又は2であるのが好ましい。
[m]
式(I)において、mは、0〜3の整数を表し、モル吸光係数増大の観点からは0又は1であるのが好ましく、吸着安定性及び性能の均質性の観点からは1であるのが特に好ましい。
− 配位子L、L及びL
本発明において、L、L及びLは、それらの2つ又は3つが互いに直接結合した2座又は3座の配位子である。これらの配位子L〜Lは、いずれも、酸性基を有しない配位子であり、「ドナー配位子」とも称される。このような2座又は3座の配位子L、L及びLをアクセプター配位子と組み合わせて用いると、金属錯体色素のモル吸光係数が増大することによって光電変換効率(η)が大幅に増加する。これらL、L及びLは、それぞれ、金属イオンMに結合する配位子を表し、L〜Lの1つ又は2つがアニオン性の配位原子を持つ配位子である。例えば、L〜Lが2座の配位子である場合には、それらの配位原子のうち少なくとも一方はアニオン性であるのが好ましく、L〜Lが3座の配位子である場合には、それらの配位原子のうち1つ又は2つがアニオン性であるのが好ましい。配位子の1つ又は2つがアニオン性の配位原子を持つ配位子であると、金属錯体色素のモル吸光係数が増大して光電変換素子の光電変換効率が改善される。また、配位子L、L及びLが共役構造を有していると光電変換素子の光電変換効率が増大する点で好ましい。
配位子L、L及びLとしては、
(La)金属イオンMに結合する原子が孤立電子対を有し、アニオン性を有しない含窒素芳香族環基、
(Lb)金属イオンMに結合する環構成原子としてアニオン性の窒素原子を有する含窒素芳香族環基、
(Lc)金属イオンMに結合する環構成原子としてアニオン性の炭素原子を有する、含窒素芳香族環基(Lb)以外の芳香環基
(Ld)アニオン性の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有する官能基で置換された芳香族炭化水素環基、
(Le)アニオン性の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有する官能基で置換された含窒素芳香族環基、及び、
(Lf)(La)〜(Le)以外の配位子
等が挙げられる。
これらの配位子(La)〜(Lf)は、同種又は異種が連結して2座又は3座の配位子を形成し、好ましくはこれらが単結合で連結した2座又は3座の配位子である。
なお、これらの配位子は、各配位子の特性を阻害しない置換基を有していてもよい。このような置換基として、半導体微粒子表面に吸着する吸着基以外の置換基が挙げられ、例えば、置換基Tが挙げられる。具体的には、含窒素芳香族環基(La)はアニオン性でない置換基Tを有していてもよい。置換基Tのうち好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ハロゲン原子、複数組み合わせてなる基等であり、特に好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、複数組み合わせてなる基である。この置換基Tは隣接する2つの環それぞれに結合してこれらと縮環してもよい。
金属イオンMに結合する原子が孤立電子対を有し、アニオン性を有しない含窒素芳香族環基(La)としては、環構成原子の少なくとも1つが孤立電子対を有する窒素原子を有し、環構成原子として、窒素原子のほかに、酸素原子、硫黄原子(−S−、−SO−、−SO−)、セレン原子等を含有していてもよい。ここで、孤立電子対を有する含窒素芳香族環基(La)における孤立電子対とは、芳香環上のπ電子ではなく、結合に関与しない孤立電子対である。
この含窒素芳香族環基(La)は、金属イオンMに結合する環構成原子としてアニオン性の炭素原子又は窒素原子を有さず、かつアニオン性の官能基を有していない含窒素芳香族環基である。なお、アニオン性の炭素原子又は窒素原子及びアニオン性の官能基については後述する。この含窒素芳香族環基(La)における環としては、5〜7員環が好ましく、縮環していてもよい。このような含窒素芳香族環基(La)の環としては、例えば、環A等で説明した含窒素芳香族ヘテロ環のうち金属イオンMに結合する環構成原子としてアニオン性の炭素原子又は窒素原子を有していないものが挙げられる。具体的には、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、キノリン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、金属イオンMに結合する原子が2位の窒素原子であるピラゾール環基等が挙げられ、ピリジン環が好ましい。この含窒素芳香族環基(La)は置換基Tを有していてもよく、配位子Lが含窒素芳香族環基(La)から選択される場合は置換基Tを有しているのが好ましい。含窒素芳香族環基(La)の置換基Tは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、1又は2以上のアルコキシ基で置換されたアリール基、1又は2以上のアルキル基を有するアリール基又はヘテロ環基、1又は2以上のアルキル基を有するアリール基又はヘテロ環基で置換されたアルケニル基等が好ましい。
金属イオンMに結合する環構成原子としてアニオン性の窒素原子を有する含窒素芳香族環基(Lb)は金属錯体色素の配位子として組み込まれた場合に含窒素芳香族環基の少なくとも1つの窒素原子−NH−部分がアニオン−N−になる炭素環芳香族基である。そして、この含窒素芳香族環基(Lb)は、この−NH−部分がアニオン−N−になって金属イオンMと結合する、又は結合できるものが好ましい。すなわち、この含窒素芳香族環基(Lb)は金属イオンMに結合する環構成原子である窒素原子が活性水素を有する含窒素芳香族環基である。含窒素芳香族環基(Lb)における環としては、5〜7員環が好ましく、縮環していてもよい。このような含窒素芳香族環基(Lb)の環としては、環A等で説明した含窒素芳香族へテロ環のうちアニオン性の窒素原子を有するものが挙げられ、具体的には、イミダゾール環基、トリアゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、1H−インダゾール環基、プリン環基、ピロール環基、金属イオンMに結合する原子が1位の窒素原子であるピラゾール環基等が挙げられ、イミダゾール環基、トリアゾール環基、ピロール環基、金属イオンMに結合する原子が1位の窒素原子であるピラゾール環基が好ましい。
この含窒素芳香族環基(Lb)は、イミダゾール環基、ピラゾール環基、トリアゾール環基又はピロール環基に由来する、下記式(a−1)〜(a−5)で表される基が好ましく、(a−1)、(a−2)又は(a−5)で表される基がより好ましく、(a−2)で表される基が特に好ましい。
式中、Rdは置換基を表す。b1は0〜2の整数、b2は0〜3の整数、b3は0又は1をそれぞれ表す。b1が2のとき、又はb2が2以上のとき、複数のRd同士が互いに結合して環を形成してもよい。Rdとしては、例えば、前述の置換基Tが挙げられる。
ここで、式(a−1)〜(a−5)において、隣接するRd同士が環を形成した場合も含めると下記構造の基が挙げられる。
式中、Rd、b1〜b3は前述の式(a−1)〜(a−5)中のRd、b1〜b3と同義であり、好ましい範囲も同じである。b4は0〜4、b5は0〜5の各整数を表す。なお、式(a−1a)、(a−1b)において、Rdはベンゼン環だけでなく、ピロール環にも有してもよいことを示すものである。
Rdとして好ましくは直鎖又は分岐のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、フルオロアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、シクロアルコキシカルボニル基、シアノ基及びこれらを組み合わせてなる基であり、特に好ましくは直鎖又は分岐のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、フルオロアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基及びこれらを組み合わせてなる基である。
金属イオンMに結合する環構成原子としてアニオン性の炭素原子を有する、含窒素芳香族環基(Lb)以外の芳香環基(Lc)は、金属錯体色素の配位子として組み込まれた場合に芳香族環基の炭素原子−CH−部分がアニオン−C−になる芳香族環基である。このような芳香族環基(Lc)としては、金属イオンMに結合する環構成原子として炭素原子を有し、芳香族性を発揮する環であればよく、例えば、芳香族炭化水素環基、ヘテロ環基、金属イオンMに結合する環構成原子として窒素原子を有しない含窒素芳香族環基等が挙げられる。芳香族炭化水素環基としては、置換基Tのアリール基のうち環構成原子としてアニオン性の炭素原子を有するもの、特にm,m−ジフルオロベンゼン環、o,p−ジフルオロベンゼン環、p−フルオロベンゼン環、p−シアノベンゼン環、p−ニトロベンゼン環、シクロペンタジエン環、ナフタレン環、無置換のベンゼン環等が挙げられる。なお、ベンゼン環の置換位置o、m及びpは金属イオンMに結合する炭素原子に対する位置を表す。また、ヘテロ環基としては、置換基Tのヘテロ環基のうちのうち環構成原子として炭素原子がアニオン性になるもの、例えば、フラン、チオフェン等が挙げられる。さらに、金属イオンMに結合する環構成原子が窒素原子でない含窒素芳香族環基としては、金属イオンMに結合する原子が5位の炭素原子であるピラゾール環基、金属イオンMに結合する原子が4位の炭素原子であるピリジン環基等が挙げられる。
アニオン性の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有する官能基で置換された芳香族炭化水素環基(Ld)としては、金属錯体色素の配位子として組み込まれた場合に官能基の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子の少なくとも1つの−XH−部分(XはN、O又はSを表す。)がアニオン−X−になる芳香族炭化水素環基である。そして、この芳香族炭化水素環基(Ld)は、この−XH−部分がアニオン−X−になって金属イオンMと結合する、又は結合できるものが好ましい。すなわち、この芳香族炭化水素環基(Ld)は官能基を構成する少なくとも1つの窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が活性水素を有する芳香族炭化水素環基である。芳香族炭化水素環基(Ld)における環としては、置換基Tのアリール基からなる環が挙げられ、置換基Tを有していてもよい。
このような芳香族炭化水素環基(Ld)が有する官能基としては、例えば、水酸基、チオール基、アミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシアルキル基、メルカプトアルキル基、アミノアルキル基等が挙げられ、水酸基、チオール基、アミノ基、置換アミノ基が好ましい。このような官能基を有する芳香族炭化水素環基(Ld)としては、具体的には、フェノール環基、チオフェノール環基、アニリン環基、置換アニリン環基、ヒドロキシアルキルベンゼン環基、メルカプトアルキルベンゼン環基、アノミアルキルベンゼン環基等が挙げられる。
これらの官能基のうち、置換アミノ基は、その水素原子の1つ又は2つが置換されたアミノ基であり、例えば、−NHSORy(Ryは置換基を表す。)等が挙げられる。Ryとして前述の置換基Tが挙げられ、中でもアルキル基が好ましい。−NHSORyとしては、具体的には、−NHSOCH、−NHSO、−NHSO等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基は、その水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換されたアルキル基であり、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等が挙げられる。メルカプトアルキル基は、その水素原子の少なくとも1つがチオール基で置換されたアルキル基であり、例えば、メルカプトメチル基、メルカプトエチル基等が挙げられる。アノミアルキル基は、その水素原子の少なくとも1つがアミノ基で置換されたアルキル基であり、例えば、アミノメチル基、アミノエチル基等が挙げられる。ここで、ヒドロキシアルキル基、メルカプトアルキル基及びアノミアルキル基において、ヒドロキシ基、メルカプト基又はアミノ基が結合するアルキル基の炭素原子は特に限定されないが、金属イオンMとの配位容易性を考慮すると、アルキル基の末端炭素原子であるのがよい。
アニオン性の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有する官能基で置換された含窒素芳香族環基(Le)としては、金属錯体色素の配位子として組み込まれた場合に官能基の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子の少なくとも1つの−XH−部分(XはN、O又はSを表す。)がアニオン−X−になる含窒素芳香族環基である。そして、この含窒素芳香族環基(Le)は、この−XH−部分がアニオン−X−になって金属イオンMと結合する、又は結合できるものが好ましい。すなわち、この含窒素芳香族環基(Le)は官能基を構成する少なくとも1つの窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が活性水素を有する含窒素芳香族環基である。この含窒素芳香族環基(Le)は、芳香族炭化水素環基の代わりに含窒素芳香族環基を有していること以外は芳香族炭化水素環基(Ld)と同義である。すなわち、含窒素芳香族環基(Le)の官能基は芳香族炭化水素環基(Ld)の官能基と同義であり、好ましいものも同じである。含窒素芳香族環基(Le)の含窒素芳香族環基は、含窒素芳香族環基(La)の環又は含窒素芳香族環基(Lb)の環と同様の環であればよいが、活性水素のない含窒素芳香族環基(La)の環と同様の環が好ましい。この含窒素芳香族環基(Le)は例えば置換基Tを有していてもよい。
配位子(Lf)としては、(La)〜(Le)以外の配位子であればよく、例えば無機配位子、又は、含窒素芳香族環基若しくは配位子(Ld)及び(Le)の官能基を有しない有機配位子等が挙げられる。本発明において、無機化合物又は無機化合物に由来するアニオン、原子若しくは化合物を無機配位子と称し、含窒素芳香族環基若しくはこの官能基以外で金属イオンMに結合する有機化合物又はこの有機化合物に由来するアニオンを有機配位子と称する。このような配位子としては、公知の配位子を特に限定されることなく挙げることができ、例えば、アシルオキシアニオン、アシルチオアニオン、チオアシルオキシアニオン、チオアシルチオアニオン、アシルアミノオキシアニオン、チオカルバメートアニオン、ジチオカルバメートアニオン、チオカルボネートアニオン、ジチオカルボネートアニオン、トリチオカルボネートアニオン、アシルアニオン、チオシアネートアニオン、イソチオシアネートアニオン、シアネートアニオン、イソシアネートアニオン、シアノアニオン、アルキルチオアニオン、アルコキシアニオンからなる群から選択されるアニオンもしくはこれらの基で結合する単座の配位子、又はハロゲン原子、シアノ、エーテル、チオエーテル、スルホキシド、カルボニル、ジアルキルケトン、カルボンアミド、チオカルボンアミド及びチオ尿素からなるアニオン、原子もしくは化合物(アニオンに水素原子が置換された化合物を含む)の群より選ばれる単座の配位子を表す。なお、この配位子(Lf)がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキレン基等を含む場合、それらは直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、置換されていても無置換でもよい。また配位子(Lf)がアリール基、ヘテロ環基、シクロアルキル基等を含む場合、それらは置換されていても無置換でもよく、単環でも縮環していてもよい。
本発明において、配位子(Lf)は、これらの中でも、シアネートアニオン、イソシアネートアニオン、チオシアネートアニオン、イソチオシアネートアニオン等のアニオンが好ましく、イソシアネートアニオン、イソチオシアネートアニオンがより好ましく、イソチオシアネートアニオンが特に好ましい。
配位子L、L及びLは、それぞれ、(La)〜(Lf)からなる群より選択され、その1つ又は2つがアニオン性の配位原子を持つ配位子として、例えば(Lb)〜(Le)及び(Lf)のアニオンからなる群より選択され、残りの2つ又は1つが(La)、場合によっては(Lf)の化合物からなる群より選択される。このとき、配位子LとL又は配位子LとLが直接結合して2座の配位子を形成してもよく、また配位子LとLとLが直接結合して3座の配位子を形成してもよい。特に、光電変換素子の光電変換効率が増大する点で、配位子L、L及びLが2座の配位子となる場合は、配位子Lは(La)から選択され、配位子L及びLは(Lb)〜(Lf)の中から選択される配位原子がアニオン性の配位子であるのが好ましく、配位子Lは配位子(Lf)から選択されるのが特に好ましい。また、光電変換素子の光電変換効率が増大する点で、配位子L、L及びLが3座配位子となる場合は、配位子Lは(La)から選択され、配位子L及びLは(Lb)〜(Le)の中から選択される配位原子がアニオン性の配位子であるのが、好ましい。
配位子LとL又は配位子LとLが直接結合してなる2座配位子としては、下記式(2L−1)〜(2L−5)のいずれかで表される2座配位子が好ましい。
式(2L−1)〜(2L−5)中、*は金属イオンMへの結合位置を表す。環Dは芳香族環を表す。A111〜A141はアニオン性の窒素原子又は炭素原子を表し、A151はアニオン性の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子のいずれかを表す。R111〜R154は水素原子又はAnc1、Anc2及びAnc3を有しない置換基を表す。
111〜A141は環Dを構成する窒素原子又は炭素原子に結合した水素原子が脱離した炭素アニオン又は窒素アニオンである。A151は芳香族炭化水素環基(Ld)及び含窒素芳香族環基(Le)における官能基のうち(置換)アミノ基、水酸基又はチオール基から活性水素を除去した残基と同義である。式(2L−1)〜(2L−5)において、D環は、A111〜A141のいずれか1つと炭素原子又は2つの炭素原子を含む芳香族環である。この芳香族環は、例えば、含窒素芳香族環基(Lb)から構成される含窒素芳香族環、又は、(Lc)の芳香族炭化水素環基から構成される芳香族炭化水素環、(Lc)のヘテロ環基から構成されるヘテロ環、若しくは、(Lc)の、金属イオンMに結合する環構成原子として窒素原子を有しない含窒素芳香族環基から構成される含窒素芳香族環等が挙げられ、それぞれ、好ましいものも同様である。式(2L−1)〜(2L−4)においてA111〜A141がアニオン化する前のD環及び式(2L−5)においてA151が置換する環Dは、例えば、ベンゼン環、m,m−ジフルオロベンゼン環、o,p−ジフルオロベンゼン環、p−フルオロベンゼン環、p−シアノベンゼン環、p−ニトロベンゼン環若しくはチオフェン環、フラン環、又は、式(a−1)〜(a−5)、(a−1a)、(a−2a)、(a−1b)及び(a−4a)で表される基からなる環等が挙げられる。
111〜R154の置換基としては例えば置換基Tが挙げられ、その中でも特に好ましいものは含窒素芳香族環基(La)の好ましいもの、及び、フルオロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基である。
配位子L〜Lのうち2つが2座配位子となる場合は、残りの配位子は配位子L〜Lのうち少なくとも1つがアニオン性の配位原子を持つ配位子ではないように(La)〜(Lf)から選択され、NCS配位子が選択されるのが好ましい。
配位子LとLとLが直接結合してなる3座の配位子としては、下記式(3L−1)〜(3L−5)のいずれかで表される3座配位子が好ましい。
式(3L−1)〜(3L−5)中、*は金属イオンMへの結合位置を表す。環Dは芳香族環を表す。A211〜A242は窒素原子又は炭素原子を表し、A251及びA252は窒素原子、酸素原子又は硫黄原子のいずれかを表す。ただし、A211とA212、A221とA222、A231とA232、A241とA242、A251とA252のそれぞれ少なくとも1つはアニオン性である。R211〜R253は水素原子又はAnc1、Anc2及びAnc3を有しない置換基を表す。
211〜A242のうちアニオン性であるものは式(2L−1)〜(2L−5)のA111〜A141と同義である。A211〜A242のうちアニオン性を有しないものは、水素原子を有しない炭素原子又は窒素原子である。A251及びA252は式(2L−5)のA151と同義である。式(3L−1)〜(3L−5)におけるD環は式(2L―1)〜(2L−5)の環Dと同義であり、具体的には、A211〜A242のいずれか1つと炭素原子又は2つの炭素原子を含む芳香族炭化水素環基又は含窒素芳香族環基から構成される芳香族炭化水素環又は含窒素芳香族環である。このとき、各式において2つのD環は同一でも異なってもよい。置換基R211〜R253は式(2L−1)〜(2L−5)の置換基R111〜R154と同義であり、好ましいものも同じである。
− 対イオンY −
式(I)中のYは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の電荷中和対イオンを表す。一般に、色素が陽イオン又は陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を有するかどうかは、金属錯体色素中の金属、配位子及び置換基に依存する。
置換基が解離性基を有することなどにより、式(I)で表される金属錯体色素は解離して負電荷を持ってもよい。この場合、式(I)で表される金属錯体色素全体の電荷はYにより電気的に中性とされる。
対イオンYが正の対イオンの場合、例えば、対イオンYは、無機又は有機のアンモニウムイオン(例えばテトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等)、ホスホニウムイオン(例えばテトラアルキルホスホニウムイオン、アルキルトリフェニルホスホニウムイオン等)、アルカリ金属イオン又はプロトンである。
対イオンYが負の対イオンの場合、例えば、対イオンYは、無機陰イオンでも有機陰イオンでもよい。例えば、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、置換アリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン等)、アリールジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン等)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン等)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。さらに電荷均衡対イオンとして、イオン性ポリマーあるいは色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよく、金属錯イオン(例えばビスベンゼン−1,2−ジチオラトニッケル(III)等)も使用可能である。
本発明において、Yは無機又は有機のアンモニウムイオン、特にテトラブチルアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、プロトンが好ましい。
− n −
対イオンYは、電荷を中和させるのに必要な数であればよく、通常、0〜2の整数から選択される。
以下に、本発明の金属錯体色素の具体例および参考例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の金属錯体色素は、溶液における極大吸収波長が、好ましくは300〜1000nmの範囲であり、より好ましくは350〜950nmの範囲であり、特に好ましくは370〜900nmの範囲である。
本発明の金属錯体色素は、特開2001−291534号公報や当該公報に引用された方法に準じた方法、Chem.Commun.,2009,5844−5846に記載の方法、Angew.Chem.Int.Ed.,50,2054〜2058(2011)に記載の方法、又はこれらに準じた方法で合成することができる。
<<光電変換素子及び色素増感太陽電池>>
本発明の光電変換素子の一例として、例えば、図1に示す光電変換素子10が挙げられる。この光電変換素子10は、導電性支持体1、色素(金属錯体色素)21により増感された半導体微粒子を含む感光体層2、正孔輸送層である電荷移動体層3及び対極4からなる。ここで本発明においては、半導体微粒子22に、色素(金属錯体色素)21とともに、共吸着剤が吸着されていることが好ましい。感光体層2を設置した導電性支持体1は光電変換素子10において作用電極として機能する。本実施形態においては、この光電変換素子10を外部回路6で動作手段Mに仕事をさせる電池用途に使用できるようにした色素増感太陽電池を利用したシステム100として示している。
本実施形態において受光電極5は、導電性支持体1、及び色素(金属錯体色素)21の吸着した半導体微粒子を含む感光体層2よりなる。本実施形態においては受光電極5に電解質を含みうるものとして示しているが、これを含まないものとしてみてもよい。感光体層2は目的に応じて設計され、単層構成でも多層構成でもよい。一層の感光体層中の色素(金属錯体色素)21は一種類でも多種の混合でもよいが、そのうちの少なくとも1種は、上述した本発明の金属錯体色素を用いる。感光体層2に入射した光は色素(金属錯体色素)21を励起する。励起された色素21はエネルギーの高い電子を有しており、この電子が色素(金属錯体色素)21から半導体微粒子22の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体1に到達する。このとき色素(金属錯体色素)21は酸化体となっているが、電極上の電子が外部回路6で仕事をしながら、対極4を経由して、色素(金属錯体色素)21の酸化体が存在(好ましくはこの酸化体とともに共存する電解質が存在)する感光体層2に戻ることで太陽電池として働く。
本発明において光電変換素子もしくは色素増感太陽電池に用いられる材料及び各部材の作成方法については、この種のものにおける通常のものを採用すればよく、例えば米国特許第4,927,721号明細書、米国特許第4,684,537号明細書、米国特許第5,0843,65号明細書、米国特許第5,350,644号明細書、米国特許第5,463,057号明細書、米国特許第5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。以下、主たる部材について概略を説明する。
− 導電性支持体 −
導電性支持体は、金属のように支持体そのものに導電性があるものか、又は表面に導電膜層を有するガラスもしくはプラスチックの支持体であるのが好ましい。支持体としては、ガラス及びプラスチックの他、セラミック(特開2005−135902号公報)、導電性樹脂(特開2001−160425号公報)を用いてもよい。支持体上には、表面に光マネージメント機能を施してもよく、例えば、特開2003−123859号公報に記載の高屈折膜及び低屈性率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜、特開2002−260746号公報に記載のライトガイド機能が挙げられる。
導電膜層の厚さは0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることが更に好ましく、特に好ましくは0.05〜20μmである。
導電性支持体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上が特に好ましい。透明導電性支持体としては、ガラスもしくはプラスチックに導電性の金属酸化物を塗設したものが好ましい。金属酸化物としてはスズ酸化物が好ましく、インジウム−スズ酸化物、フッ素ドープド酸化物が特に好ましい。このときの導電性の金属酸化物の塗布量は、ガラスもしくはプラスチックの支持体1m当たり0.1〜100gが好ましい。透明導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。
− 半導体微粒子 −
半導体微粒子は、好ましくは金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)又はペロブスカイトの微粒子である。金属のカルコゲニドとしては、好ましくはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、もしくはタンタルの酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。ペロブスカイトとしては、好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち酸化チタン(チタニア)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが特に好ましい。
チタニアの結晶構造としては、アナターゼ型、ブルッカイト型、又は、ルチル型があげられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。チタニアナノチューブ・ナノワイヤー・ナノロッドをチタニア微粒子に混合するか、又は半導体電極として用いてもよい。
半導体微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で1次粒子として0.001〜1μm、分散物の平均粒径として0.01〜100μmであることが好ましい。半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法として、湿式法の他、乾式法、その他の方法が挙げられる。
透明導電膜と半導体層(感光体層)の間には、電解液と電極が直接接触することによる逆電流を防止するため、短絡防止層を形成することが好ましい。光電極と対極の接触を防ぐために、スペーサーやセパレータを用いることが好ましい。半導体微粒子は多くの色素を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。例えば半導体微粒子を支持体上に塗設した状態で、その表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。一般に、半導体微粒子を含む層の厚みが大きいほど単位面積当たりに担持できる色素の量が増えるため光の吸収効率が高くなるが、発生した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。半導体層である感光体層の好ましい厚みは素子の用途によって異なるが、典型的には0.1〜100μmである。色素増感太陽電池として用いる場合は1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることがより好ましい。半導体微粒子は、支持体に塗布した後に粒子同士を密着させるために、100〜800℃の温度で10分〜10時間焼成してもよい。支持体としてガラスを用いる場合、製膜温度は400〜60℃が好ましい。
なお、半導体微粒子の支持体1m当たりの塗布量は0.5〜500g、さらには5〜100gが好ましい。色素の使用量は、全体で、支持体1m当たり0.01〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜10ミリモルである。この場合、本発明の金属錯体色素の使用量は5モル%以上とすることが好ましい。また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1gに対して0.001〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。このような色素量とすることによって、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。
色素が塩である場合、特定の金属錯体色素の対イオンは特に限定されず、例えばアルカリ金属イオン又は4級アンモニウムイオン等が挙げられる。
色素を吸着した後に、アミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類としてピリジン類(例えば4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン)等が挙げられる。これらは液体の場合はそのまま用いてもよいし有機溶媒に溶解して用いてもよい。
本発明の光電変換素子(例えば光電変換素子10)及び色素増感太陽電池(例えば光電気化学電池20)においては、少なくとも上記の本発明の金属錯体色素を使用する。
本発明においては、本発明の金属錯体色素と他の色素を併用してもよい。
併用する色素としては、特許第3731752号、特公表2002−512729号、特開2001−59062号、特開2001−6760号、特許第3430254号、特開2003−212851号、国際公開第2007/91525号パンフレット、特開2001−291534号、特願2010−127308号の各公報もしくは明細書などに開示のRu錯体色素、特開平11−214730号、特開2012−144688号、特開2012−84503号等の各公報に記載のスクアリリウムシアニン色素、特開2004−063274号、特開2005−123033号、特開2007−287694号、特開2008−71648号、特開2007−287694号、国際公開第2007/119525号パンフレットの各公報もしくは明細書に記載の有機色素、Angew.Chem.Int.Ed.,49,1〜5(2010)などに記載のポルフィリン色素、Angew.Chem.Int.Ed.,46,8358(2007)などに記載のフタロシアニン色素が挙げられる。併用する色素として好ましくは、Ru色素、スクアリリウムシアニン色素、又は有機色素が挙げられる。
本発明の金属錯体色素と他の色素を併用する場合、本発明の金属錯体色素の質量/他の色素の質量の比は、95/5〜10/90が好ましく、95/5〜50/50がより好ましく、95/5〜60/40がさらに好ましく、95/5〜65/35が特に好ましく、95/5〜70/30が最も好ましい。
− 電荷移動体層 −
本発明の光電変換素子に用いられる電荷移動体層は、色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層であり、受光電極と対極(対向電極)との間に設けられる。代表的な例としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体電解質、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリクスに含浸したいわゆるゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩などが挙げられる(本明細書ではこれらを総称して電解質組成物ともいう。)効率を高めるためには液体電解質が好ましい。液体電解質の溶媒はニトリル化合物、エーテル化合物、エステル化合物等が用いられるが、ニトリル化合物が好ましく、アセトニトリル、メトキシプロピオニトリルが特に好ましい。
酸化還元対として、例えばヨウ素とヨウ化物(ヨウ化物塩、ヨウ化イオン性液体が好ましく、ヨウ化リチウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化メチルプロピルイミダゾリウムが好ましい)との組み合わせ、アルキルビオローゲン(例えばメチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲンテトラフルオロボレート)とその還元体との組み合わせ、ポリヒドロキシベンゼン類(例えばハイドロキノン、ナフトハイドロキノン等)とその酸化体との組み合わせ、2価と3価の鉄錯体の組み合せ(例えば赤血塩と黄血塩の組み合せ)、2価と3価のコバルト錯体の組み合わせ等が挙げられる。これらのうちヨウ素とヨウ化物との組み合わせ、2価と3価のコバルト錯体の組み合わせが好ましい。
コバルト錯体は、なかでも下記式(CC)で表される錯体が好ましい。
Co(LL)ma(X)mb・CI 式(CC)
式(CC)において、LLは2座又は3座の配位子を表す。Xは単座の配位子を表す。maは0〜3の整数を表す。mbは0〜6の整数を表す。CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。
Xはハロゲンイオンであることが好ましい。
CIは式(I)におけるYが挙げられる。
LLは下記式(LC)で表される配位子が好ましい。
式(LC)において、ZLC1、ZLC2及びZLC3は各々独立に、5又は6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。ZLC1、ZLC2及びZLC3は置換基を有していてもよく、置換基を介して隣接する環と閉環していてもよい。qは0又は1を表す。該置換基としては置換基Tが挙げられる。
上記式(LC)で表される配位子は、下記式(LC−1)〜(LC−3)で表される配位子がより好ましい。
LC1〜RLC9は置換基を表す。q1、q2、q6及びq7は各々独立に、0〜4の整数を表す。q3及びq5は各々独立に、0〜3の整数を表す。q4は0〜2の整数を表す。
式(LC−1)〜(LC−3)において、RLC1〜RLC9の置換基としては例えば、脂肪族基、芳香族基、複素環基等が挙げられる。置換基の具体的な例としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ヘテロ環等を挙げることができる。好ましい例としては、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ドデシル、シクロヘキシル、ベンジル等)、アリール基(例えばフェニル、トリル、ナフチル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、n−ブチルチオ、n−ヘキシルチオ、2−エチルヘキシルチオ等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、ナフトキシ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、ナフチルチオ等)、ヘテロ環基(例えば、2−チエニル、2−フリル等)を挙げることができる。
式(LC)で表されるコバルト錯体の具体例としては、例えば以下の錯体が挙げられる。
電解質として、ヨウ素とヨウ化物との組み合せを用いる場合、5員環又は6員環の含窒素芳香族カチオンのヨウ素塩をさらに併用するのが好ましい。
酸化還元対を、これらを溶かす有機溶媒としては、非プロトン性の極性溶媒(例えばアセトニトリル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチルイミダゾリノン、3−メチルオキサゾリジノン等)が好ましい。ゲル電解質のマトリクスに使用されるポリマーとしては、例えばポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオリド等が挙げられる。溶融塩としては、例えばヨウ化リチウムと他の少なくとも1種類のリチウム塩(例えば酢酸リチウム、過塩素酸リチウム等)にポリエチレンオキシドを混合することにより、室温での流動性を付与したもの等が挙げられる。この場合のポリマーの添加量は1〜50質量%である。また、γ−ブチロラクトンを電解液に含んでいてもよく、これによりヨウ化物イオンの拡散効率が高くなり変換効率が向上する。
電解質への添加物として、前述の4−tert−ブチルピリジンのほか、アミノピリジン系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、アミノトリアゾール系化合物及びアミノチアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、アミノトリアジン系化合物、尿素誘導体、アミド化合物、ピリミジン系化合物及び窒素を含まない複素環を加えることができる。
また、効率を向上するために、電解液の水分を制御する方法をとってもよい。水分を制御する好ましい方法としては、濃度を制御する方法や脱水剤を共存させる方法を挙げることができる。ヨウ素の毒性軽減のために、ヨウ素とシクロデキストリンの包摂化合物の使用をしてもよく、逆に水分を常時補給する方法を用いてもよい。また環状アミジンを用いてもよく、酸化防止剤、加水分解防止剤、分解防止剤、ヨウ化亜鉛を加えてもよい。
電解質として溶融塩を用いてもよく、好ましい溶融塩としては、イミダゾリウム又はトリアゾリウム型陽イオンを含むイオン性液体、オキサゾリウム系、ピリジニウム系、グアニジウム系及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらカチオン系に対して特定のアニオンと組み合わせてもよい。これらの溶融塩に対しては添加物を加えてもよい。液晶性の置換基を持っていてもよい。また、四級アンモニウム塩系の溶融塩を用いてもよい。
これら以外の溶融塩としては、例えば、ヨウ化リチウムと他の少なくとも1種類のリチウム塩(例えば酢酸リチウム、過塩素酸リチウム等)にポリエチレンオキシドを混合することにより、室温での流動性を付与したもの等が挙げられる。
電解質と溶媒からなる電解液にゲル化剤を添加してゲル化させることにより、電解質を擬固体化してもよい。ゲル化剤としては、分子量1000以下の有機化合物、分子量500〜5000の範囲のSi含有化合物、特定の酸性化合物と塩基性化合物からできる有機塩、ソルビトール誘導体、ポリビニルピリジンが挙げられる。
また、マトリックス高分子、架橋型高分子化合物又はモノマー、架橋剤、電解質及び溶媒を高分子中に閉じ込める方法を用いても良い。
マトリックス高分子として好ましくは、含窒素複素環を主鎖あるいは側鎖の繰り返し単位中に持つ高分子及びこれらを求電子性化合物と反応させた架橋体、トリアジン構造を持つ高分子、ウレイド構造をもつ高分子、液晶性化合物を含むもの、エーテル結合を有する高分子、ポリフッ化ビニリデン系、メタクリレート・アクリレート系、熱硬化性樹脂、架橋ポリシロキサン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアルキレングリールとデキストリンなどの包摂化合物、含酸素又は含硫黄高分子を添加した系、天然高分子などが挙げられる。これらにアルカリ膨潤型高分子、一つの高分子内にカチオン部位とヨウ素との電荷移動錯体を形成できる化合物を持った高分子などを添加しても良い。
マトリックスポリマーとして2官能以上のイソシアネートを一方の成分として、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基などの官能基と反応させた架橋ポリマーを含む系を用いても良い。また、ヒドロシリル基と二重結合性化合物による架橋高分子、ポリスルホン酸又はポリカルボン酸などを2価以上の金属イオン化合物と反応させる架橋方法などを用いても良い。
上記擬固体の電解質との組み合わせで好ましく用いることができる溶媒としては、特定のリン酸エステル、エチレンカーボネートを含む混合溶媒、特定の比誘電率を持つ溶媒などが挙げられる。固体電解質膜あるいは細孔に液体電解質溶液を保持させても良く、その方法として好ましくは、導電性高分子膜、繊維状固体、フィルタなどの布状固体が挙げられる。
以上の液体電解質及び擬固体電解質の代わりにp型半導体あるいはホール輸送材料などの固体電荷輸送層、例えば、CuI、CuNCSなどを用いることができる。また、Nature,vol.486,p.487,2012等に記載の電解質を用いてもよい。固体電荷輸送層として有機ホール輸送材料を用いても良い。ホール輸送層として好ましくは、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール及びポリシランなどの導電性高分子及び2個の環がC、Siなど四面体構造をとる中心元素を共有するスピロ化合物、トリアリールアミンなどの芳香族アミン誘導体、トリフェニレン誘導体、含窒素複素環誘導体、液晶性シアノ誘導体が挙げられる。
酸化還元対は、電子のキャリアになるので、ある程度の濃度が必要である。好ましい濃度としては合計で0.01モル/1以上であり、より好ましくは0.1モル/1であり、特に好ましくは0.3モル/1以上である。この場合の上限には特に制限はないが、通常5モル/1程度である。
− 共吸着剤 −
本発明の光電変換素子においては、本発明の金属錯体色素又は必要により併用する色素とともに共吸着剤を使用することが好ましい。このような共吸着剤としては酸性基(好ましくは、カルボキシル基もしくはその塩の基)を1つ以上有する共吸着剤が好ましく、脂肪酸やステロイド骨格を有する化合物が挙げられる。脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、例えばブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ヘキサデカン酸、ドデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
ステロイド骨格を有する化合物として、コール酸、グリココール酸、ケノデオキシコール酸、ヒオコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸等が挙げられる。好ましくはコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸であり、さらに好ましくはケノデオキシコール酸である。
好ましい共吸着剤は、下記式(CA)で表される化合物である。
式中、RA1は酸性基を有する置換基を表す。RA2は置換基を表す。nAは0以上の整数を表す。
酸性基は、先に示したものと同義である。
nAは2〜4であることが好ましい。
これらの具体的化合物は、上述のステロイド骨格を有する化合物として例示した化合物が挙げられる。
本発明の共吸着剤は、半導体微粒子に吸着させることにより、色素の非効率な会合を抑制する効果及び半導体微粒子表面から電解質中のレドックス系への逆電子移動を防止する効果がある。共吸着剤の使用量は特に限定されないが、上記色素1モルに対して、好ましくは1〜200モル、さらに好ましくは10〜150モル、特に好ましくは20〜50モルであることが上記の作用を効果的に発現させられる観点から好ましい。
対向電極は、色素増感太陽電池(光電気化学電池)の正極として働くものであることが好ましい。対向電極は、通常前述の導電性支持体と同義であるが、強度が十分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必要でない。対極の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。感光層に光が到達するためには、前述の導電性支持体と対向電極との少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の色素増感太陽電池においては、導電性支持体が透明であって太陽光を支持体側から入射させるのが好ましい。この場合、対向電極は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。色素増感太陽電池の対向電極としては、金属もしくは導電性の酸化物を蒸着したガラス、又はプラスチックが好ましく、白金を蒸着したガラスが特に好ましい。色素増感太陽電池では、構成物の蒸散を防止するために、電池の側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。このようにして得られる本発明の色素増感太陽電池の特性は、好ましくはAM1.5Gで100mW/cmのとき、開放電圧0.01〜1.5V、短絡電流密度0.001〜20mA/cm、形状因子0.1〜0.9、変換効率0.001〜25%である。
本発明は、特許第4260494号公報、特開2004−146425号公報、特開2000−340269号公報、特開2002−289274号公報、特開2004−152613号公報、特開平9−27352号公報に記載の光電変換素子、色素増感太陽電池に適用することができる。また、特開2004−152613号公報、特開2000−90989号公報、特開2003−217688号公報、特開2002−367686号公報、特開2003−323818号公報、特開2001−43907号公報、特開2000−340269号公報、特開2005−85500号公報、特開2004−273272号公報、特開2000−323190号公報、特開2000−228234号公報、特開2001−266963号公報、特開2001−185244号公報、特表2001−525108号公報、特開2001−203377号公報、特開2000−100483号公報、特開2001−210390号公報、特開2002−280587号公報、特開2001−273937号公報、特開2000−285977号公報、特開2001−320068号公報等に記載の光電変換素子、色素増感太陽電池に適用することができる。
<<色素溶液、それを用いた半導体電極及び色素増感太陽電池の製造方法>>
本発明においては、本発明の金属錯体色素を含有する色素溶液を使用して色素吸着電極を製造することが好ましい。
このような色素溶液には、本発明の金属錯体色素が溶媒に溶解されてなり、必要により共吸着剤や他の成分を含んでもよい。
使用する溶媒としては、特開2001−291534号公報に記載の溶媒が挙げられるが特に限定されない。本発明においては有機溶媒が好ましく、さらにアルコール類、アミド類、ニトリル類、アルコール類、炭化水素類、及び、これらの2種以上の混合溶媒が好ましい。混用溶媒としては、アルコール類と、アミド類、ニトリル類、アルコール類又は炭化水素類から選択される溶媒との混合溶媒が好ましい。さらに好ましくはアルコール類とアミド類、アルコール類と炭化水素類の混合溶媒、特に好ましくはアルコール類とアミド類の混合溶媒である。具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドが好ましい。
色素溶液は共吸着剤を含有することが好ましく、共吸着剤としては、前述の共吸着剤が好ましく、なかでも式(CA)で表される化合物が好ましい。
ここで、本発明の色素溶液は、光電変換素子や色素増感太陽電池を作成する際に、この溶液をこのまま使用できるように、金属錯体色素や共吸着剤が濃度調整されているものが好ましい。本発明においては、本発明の金属錯体色素を0.001〜0.1質量%含有することが好ましい。
色素溶液は、水分含有量を調整することが特に好ましく、従って、本発明においては水の含有量(含有率)を0〜0.1質量%に調整することが重要である。
同様に、光電変換素子や色素増感太陽電池における電解液の水分含有量の調整も、本発明の効果を効果的に奏するために重要であり、このため、この電解液の水分含有量(含有率)を0〜0.1質量%に調整することが好ましい。この電解液の調整は、色素溶液で行なうのが特に好ましい。
本発明においては、上記色素溶液を用いて、半導体電極が備える半導体微粒子表面に金属錯体色素を担持させてなる色素増感太陽電池用半導体電極が好ましい。
また、上記色素溶液を用いて、半導体電極が備える半導体微粒子表面に金属錯体色素を担持させることにより色素増感太陽電池を製造することが好ましい。
以下に実施例に基づき本発明について更に詳細に説明するが、本発明がこれに限定して解釈されるものではない。
<金属錯体色素の合成>
以下に、本発明の金属錯体色素の合成方法(調製方法)を詳しく説明するが、出発物質、色素中間体及び合成(調製)ルートについてはこれにより限定されるものではない。
〔金属錯体色素Dye−1〕〜〔金属錯体色素Dye−4〕を以下のようにして合成した。ここで、金属錯体色素Dye−4は参考例である。
実施例1〔金属錯体色素Dye−2の合成〕
〔金属錯体色素Dye−2の合成〕
金属錯体色素Dye−2の合成経路を以下に示す。
100mL三口フラスコを窒素置換し、2−クロロイソニコチン酸メチル(1)(1.09g、6.35mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(735mg、636μmol)、ヘキサメチル二スズ(2.50g、7.63mmol)、無水トルエン(25mL)を入れ、2.5時間還流攪拌した。2,6−ジブロモピリジン(2)(678mg、2.86mmol)を加え、さらに一夜還流攪拌した。室温まで冷却して析出物を濾過して集め、メタノールとヘキサンで洗浄した。カラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶離液:トルエン−酢酸エチル(9:1〜4:1))に供することで、目的化合物3を得た(185mg、収率19%)。この化合物3のH−NMR(400MHz、CDCl)を図3に示す。
化合物3 60mg、三塩化ルテニウム46mg、エタノール5mlを100mL三口フラスコに加え、8時間還流撹拌した。沈殿物をろ過し、エタノール洗浄を施すことで、化合物4を82mg(収率86%)得た。
化合物4 65mg、化合物5 79mg、エタノール5mLを100mL三口フラスコに入れ、撹拌しながらN−メチルモルホリン40μLを加え、90℃で24時間加熱撹拌した。溶媒を留去し、塩化メチレン:酢酸エチル=2:1を溶離液としたシリカゲルカラムに供することで、化合物6 59mg(収率29%)を得た。
化合物6 30mg、THF1mL、メタノール1mLを10mLナスフラスコに入れ、3N水酸化ナトリウム49.8μL加え、30℃で1時間撹拌した。続いて1Nトリフルオロメタンスルホン酸水溶液を加えてpH1にし、その後酢酸エチルで抽出、水洗を繰り返すことでpH7とし、有機溶媒を減圧留去し、Dye−2 21mg(72%)を得た。このようにして合成した金属錯体色素Dye−2をESI−MSで同定した。ESI−MS:[M−H]=1101のフラグメントが検出された。
合成した金属錯体色素Dye−2について、340μmol/Lのテトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶媒で色素濃度が17μmol/Lとなるように調整し、分光吸収測定を行った。得られたスペクトルチャートを図4に示す。図4に示されるように、金属錯体色素Dye−2は400nm、500nm付近だけでなく、特に600〜700nmにも高い吸収ピークを有し、吸収の裾は750nmまで広がっていることが確認された。
<色素増感太陽電池の作製>
実施例2〔色素増感太陽電池〕
まず、金属錯体色素Dye−1〜Dye−4以外に下記比較化合物(1)及び(2)を準備した。比較化合物(1)は特開2005−162718号公報に記載の化合物No.2aであり、比較化合物(2)は同公報に記載の化合物No.2eである。
以下に示す手順により、特開2002−289274号公報に記載の図5に示されている光電極12と同様の構成を有する光電極を作製し、更に、光電極を用いて、同公報の図3されている光電極以外は色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する10mm×10mmのスケールの色素増感型太陽電池1を作製した。具体的な構成は本願に添付の図2に示した。本願の図2では、41が透明電極、42が半導体電極、43が透明導電膜、44が基板、45が半導体層、46が光散乱層、40が光電極、20が色素増感太陽電池、CEが対極、Eが電解質、Sがスペーサーである。
[ペーストの調製]
(ペーストA)
球形のTiO粒子(アナターゼ、平均粒径;25nm以下、球形TiO粒子Aという。)とを硝酸溶液に入れて撹拌することによりチタニアスラリーを調製した。次に、チタニアスラリーに増粘剤としてセルロース系バインダーを加え、混練してペーストを調製した。
(ペースト1)
球形TiO粒子Aと、球形のTiO粒子(アナターゼ、平均粒径;200nm以下、球形TiO粒子Bという。)とを硝酸溶液に入れて撹拌することによりチタニアスラリーを調製した。次に、チタニアスラリーに増粘剤としてセルロース系バインダーを加え、混練してペースト(TiO粒子Aの質量:TiO粒子Bの質量=30:70)を調製した。
(ペースト2)
ペーストAに、棒状TiO粒子(アナターゼ、直径;100nm、アスペクト比;5以下、棒状TiO粒子Cという。)を混合し、棒状TiO粒子Cの質量:ペーストAの質量=30:70のペーストを調製した。
(光電極40の作製)
ガラス基板44上にフッ素ドープされたSnO導電膜(膜厚;500nm)43を形成した透明電極41を準備した。そして、このSnO導電膜43上に、上述のペースト1をスクリーン印刷し、次いで乾燥させた。その後、空気中、450℃の条件のもとで焼成した。更に、ペースト2を用いてこのスクリーン印刷と焼成とを繰り返すことにより、SnO導電膜43上に図2に示す半導体電極42と同様の構成の半導体電極(受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層45の層厚;6μm、光散乱層46の層厚;4μm、光散乱層に含有される棒状TiO粒子Cの含有率;30質量%)42を形成し、色素を含有していない光電極40を作製した。
(色素吸着)
次に、半導体電極(色素吸着電極の前駆体)42に色素を以下のようにして吸着させた。先ず、マグネシウムエトキシドで脱水した無水ブタノールとジメチルホルムアミドの1:1(体積比)の混合物を溶媒として、下記表1に記載の色素を3×10−4モル/Lとなるように溶解し、さらに共吸着剤として、ケノデオキシコール酸とコール酸の等モル混合物を金属錯体色素1モルに対して20モル加え、各色素溶液を調製した。この色素溶液をカール・フィッシャー滴定により水分量を測定したところ、水は0.01質量%未満であった。この色素溶液には0.059質量%の金属錯体色素が含有していた。次に、この溶液に半導体電極42を数時間浸漬し、引き上げ後50℃で乾燥させることにより、半導体電極42に色素が吸着した光電極40をそれぞれ完成させた。
(太陽電池の組み立て)
次に、対極CEとして上記の光電極40と同様の形状と大きさを有する白金電極(Pt薄膜の厚さ;100nm)、電解液として、ヨウ素0.1M、ヨウ化リチウム0.05M、4−t−ブチルピリジン0.25Mを含むヨウ素系レドックスアセトニトリル溶液を調製した。更に、半導体電極42の大きさに合わせた形状を有するデュポン社製のスペーサーS(商品名:「サーリン」)を準備し、光電極40と対極CEを、スペーサーSを介して対向、熱圧着させ、内部に上記の電解質を充填して各色素増感太陽電池をそれぞれ完成させた。これらの色素増感太陽電池の性能を下記のようにして評価した。
(光電変換効率の測定)
電池特性試験を行い、上記色素増感太陽電池の光電変換効率(η(%))を測定した。電池特性試験は、ソーラーシミュレーター(WACOM製、WXS−85H)を用い、AM1.5フィルターを通したキセノンランプから1000W/mの疑似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、光電変換効率(η(%))を求めた。光電変換効率(η(%))は、比較化合物(1)の光電変換効率(η(%))を基準にして、この光電変換効率(η(%))の1.10倍以上を「A」で表記し、1.01倍以上1.10倍未満を「B」、1.01倍未満を「C」とした。これらの結果をまとめて表1に示す。
表1から明らかなように、本発明の金属錯体色素Dye−1〜Dye−を用いた本発明の色素増感太陽電池および参考例である金属錯体色素Dye−4を用いた参考例の色素増感太陽電池は、各比較化合物を用いた色素増感太陽電池に対し、光電変換効率(η)に優れることがわかった。
1 導電性支持体
2 感光体層
21 色素
22 半導体微粒子
23 CdSe量子ドット
3 電荷移動体層
4 対極
5 受光電極
6 回路
10 光電変換素子
100 光電気化学電池を利用したシステム
M 電動モーター(扇風機)
20 色素増感太陽電池
40 光電極
41 透明電極
42 半導体電極
43 透明導電膜
44 基板
45 半導体層
46 光散乱層
CE 対極
E 電解質
S スペーサー

Claims (17)

  1. 導電性支持体、電解質を含む感光体層、電解質を含む電荷移動体層及び対極を有する光電変換素子であって、該感光体層が、下記式(I)で表される金属錯体色素が担持された半導体微粒子を有する光電変換素子。
    (式中、
    Mは金属イオンを表す。
    環A、環B及び環Cはピリジン環を表す。Z及びZ は炭素原子を表す。ここで、ZとN原子の間の結合及びZとN原子の間の結合は単結合でも二重結合でもよい
    は、−O−、−S−、−NR’(R’は水素原子又は置換基を表す。)−、飽和脂肪族基、該環Bとπ共役しない不飽和基を有する不飽和脂肪族基、芳香族炭化水素環基若しくは非芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基若しくは非芳香族ヘテロ環基又はこれらを組み合わせた基を表す。Anc1〜Anc3は各々独立に酸性基を表す。l1及びl3は各々独立に1〜4の整数、l2は1〜5の整数をそれぞれ表す。mは0〜3の整数を表す。
    〜Lは配位子を表す。但し、とLが互いに結合して下記式(2L−1)〜(2L−5)のいずれかで表される2座の配位子を形成し、又は、L、L及びLが互いに結合して下記式(3L−1)〜(3L−5)のいずれかで表される3座の配位子を形成している。ここで、L 中の配位原子、L 中の配位原子及び 配位原子のうち1つ又は2つの配位原子アニオンとなって配位している
    Yは電荷を中和させるのに必要な対イオンを表し、nは0〜2の整数を表す。)
    (式中、
    *は前記金属イオンMへの結合位置を表す。
    環Dはピラゾール環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チオフェン環およびベンゼン環から選択される芳香族環を表す。
    111 〜A 141 はアニオンとなって配位している窒素原子又は炭素原子を表し、A 151 はアニオンとなって配位している窒素原子、酸素原子又は硫黄原子のいずれかを表す。R 111 〜R 154 は水素原子、又は、Anc1、Anc2及びAnc3を有しない置換基を表す。)
    (式中、
    *は前記金属イオンMへの結合位置を表す。
    環Dはピラゾール環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チオフェン環およびベンゼン環から選択される芳香族環を表す。
    211 〜A 242 は窒素原子又は炭素原子を表し、A 251 及びA 252 は窒素原子、酸素原子又は硫黄原子のいずれかを表す。ただし、A 211 とA 212 、A 221 とA 222 、A 231 とA 232 、A 241 とA 242 のそれぞれにおいて少なくとも1つはアニオンとなって配位している窒素原子又は炭素原子であり、A 251 とA 252 の少なくとも1つはアニオンとなって配位している窒素原子、酸素原子又は硫黄原子である。R 211 〜R 253 は水素原子、又は、Anc1、Anc2及びAnc3を有しない置換基を表す。)
  2. 前記式(I)において、前記MがFe2+、Ru2+又はOs2+である請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記式(I)において、前記Anc1〜Anc3は、各々独立に、−COOH、−SOH、−PO、−OH又は−SHである請求項1又は2に記載の光電変換素子。
  4. 前記式(I)において、前記L〜Lは、いずれも、酸性基を有しない配位子である請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  5. 前記式(I)において、前記 がNCS配位子である請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  6. 前記L と前記L が互いに結合して前記式(2L−1)で表される2座の配位子を形成し、又は、前記L 、前記L 及び前記L が互いに結合して前記式(3L−1)で表される3座の配位子を形成している請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  7. 式(I)において、前記Xは、ベンゼン環基である請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  8. 前記半導体微粒子に、吸着性基を有する基を少なくとも1つ有する共吸着剤が担持されている請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  9. 前記共吸着剤が、下記式(CA)で表される請求項に記載の光電変換素子。
    (式中、RA1は酸性基を有する置換基を表す。RA2は置換基を表す。nAは0以上の整数を表す。)
  10. 請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換素子を具備する色素増感太陽電池。
  11. 下記式(I)で表される金属錯体色素。
    (式中、
    は金属イオンを表す。
    環A、環B及び環Cはピリジン環を表す。Z 及びZ は炭素原子を表す。ここで、Z とN原子の間の結合及びZ とN原子の間の結合は単結合でも二重結合でもよい。
    は、−O−、−S−、−NR’(R’は水素原子又は置換基を表す。)−、飽和脂肪族基、該環Bとπ共役しない不飽和基を有する不飽和脂肪族基、芳香族炭化水素環基若しくは非芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基若しくは非芳香族ヘテロ環基又はこれらを組み合わせた基を表す。Anc1〜Anc3は各々独立に酸性基を表す。l1及びl3は各々独立に1〜4の整数、l2は1〜5の整数をそれぞれ表す。は0〜3の整数を表す。
    〜L は配位子を表す。但し、L とL が互いに結合して下記式(2L−1)〜(2L−5)のいずれかで表される2座の配位子を形成し、又は、L 、L 及びL が互いに結合して下記式(3L−1)〜(3L−5)のいずれかで表される3座の配位子を形成している。ここで、L 中の配位原子、L 中の配位原子及びL 中の配位原子のうち1つ又は2つの配位原子はアニオンとなって配位している。
    は電荷を中和させるのに必要な対イオンを表し、は0〜2の整数を表す。)
    (式中、
    *は前記金属イオンMへの結合位置を表す。
    環Dはピラゾール環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チオフェン環およびベンゼン環から選択される芳香族環を表す。
    111 〜A 141 はアニオンとなって配位している窒素原子又は炭素原子を表し、A 151 はアニオンとなって配位している窒素原子、酸素原子又は硫黄原子のいずれかを表す。R 111 〜R 154 は水素原子、又は、Anc1、Anc2及びAnc3を有しない置換基を表す。)
    (式中、
    *は前記金属イオンMへの結合位置を表す。
    環Dはピラゾール環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チオフェン環およびベンゼン環から選択される芳香族環を表す。
    211 〜A 242 は窒素原子又は炭素原子を表し、A 251 及びA 252 は窒素原子、酸素原子又は硫黄原子のいずれかを表す。ただし、A 211 とA 212 、A 221 とA 222 、A 231 とA 232 、A 241 とA 242 のそれぞれにおいて少なくとも1つはアニオンとなって配位している窒素原子又は炭素原子であり、A 251 とA 252 のそれぞれ少なくとも1つはアニオンとなって配位している窒素原子、酸素原子又は硫黄原子である。R 211 〜R 253 は水素原子、又は、Anc1、Anc2及びAnc3を有しない置換基を表す。)
  12. 請求項11に記載の金属錯体色素を溶解してなる色素溶液。
  13. 有機溶媒中に、前記金属錯体色素を0.001〜0.1質量%含有させ、水を0.1質量%以下に抑えてなる請求項12に記載の色素溶液。
  14. 共吸着剤を含有する請求項12又は13に記載の色素溶液。
  15. 前記共吸着剤が、下記式(CA)で表される請求項14に記載の色素溶液。
    (式中、RA1は酸性基を有する置換基を表す。RA2は置換基を表す。nAは0以上の整数を表す。)
  16. 半導体を付与した導電性支持体に、請求項1215のいずれか1項に記載の色素溶液を塗布し、これを硬化させて感光体層とした色素増感太陽電池用の色素吸着電極の製造方法
  17. 請求項16に記載の製造方法により色素吸着電極を得、この色素吸着電極と電解質対極を用いて色素増感太陽電池を組み立てる色素増感太陽電池の製造方法。
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