JP2015053150A - 光電変換素子および色素増感太陽電池 - Google Patents

光電変換素子および色素増感太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】短絡電流を高め、光電変換効率に優れた光電変換素子および太陽電池を提供する。【手段】導電性支持体上に、色素が担持された半導体微粒子を有する感光体層、電解質を含む電荷移動体層及び対極をこの順で有し、導電性支持体及び対極の間に下記式(I)で表すことができる化合物を含む光電変換素子及び色素増感太陽電池。式(I):HS−RRは、特定のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基又は−C(=X)−Rxを表す。Xは酸素原子、硫黄原子、=C(R1)(R2)又は=N(R3)、Rxはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換アミノ基を表す。R1〜R3は水素原子又は置換基を表す。XとRxが互いに結合して環を形成してもよい。【選択図】図1

Description

本発明は、光電変換素子および色素増感太陽電池に関する。
光電変換素子は各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。この光電変換素子には金属を用いたもの、半導体を用いたもの、有機顔料や色素を用いたもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどの様々な方式が実用化されている。特に、非枯渇性の太陽エネルギーを利用した太陽電池は、燃料が不要であり、無尽蔵のクリーンエネルギーを利用するものとして、その本格的な実用化が大いに期待されている。その中でも、シリコン系太陽電池は古くから研究開発が進められ、各国の政策的な配慮もあって普及が進んでいる。しかし、シリコンは無機材料であり、スループットおよびコスト等の改良には自ずと限界がある。
そこで色素増感太陽電池の研究が精力的に行われている。特にその契機となったのは、スイス ローザンヌ工科大学のGraetzel等の研究成果である。彼らは、ポーラス酸化チタン薄膜の表面にルテニウム錯体からなる色素を固定した構造を採用し、アモルファスシリコン並の光電変換効率を実現した。これにより、高価な真空装置を使用しなくても製造できる色素増感太陽電池が一躍世界の研究者から、注目を集めるようになった。
色素増感太陽電池に使用される色素は積極的に研究され、これまでに、N3、N719、N749、Z907、J2と呼ばれる色素(増感色素とも称す)等が開発されている。
一方、色素増感太陽電池に使用される電解質に関しては、酸化還元対がヨウ素系のI/I にほぼ固定されて検討されており、また、電解質に加える添加剤については、比較的少ないものの開放電圧を向上させる目的でのt−ブチルピリジンや特定のアミノ基含有ヘテロ環化合物が中心であり、色素に比べると研究、報告例は多くない。例えば、特許文献1および2が挙げられる。
特開2004−47229号公報 国際公開第2011/158922号パンフレット
光電変換効率(η%)は、[開放電圧(Voc)×短絡電流(Jsc)×フィルファクター(FF)]/入射光エネルギーで求まるように、開放電圧、短絡電流、フィルファクターのそれぞれの値を大きくすることにより、高めることができる。
しかしながら、上記の特許文献で見出されている添加剤のように、多くの添加剤は、フェルミ準位を高めることによる開放電圧の向上であり、逆に、短絡電流を低下させるものであり、開放電圧の向上と短絡電流の向上を同時に達成することは困難な状況であった。
このような状況を打開するには、短絡電流を向上させる添加剤の開発が必要であった。
すなわち、本発明は、短絡電流を高めることで優れた光電変換効率の光電変換素子および太陽電池を提供することを課題とする。
本発明者等は、電解質に種々の添加剤を加えて評価したところ、酸化還元対としてのアルキルチオール/ジスルフィドのような明らかに酸化還元対を形成するアルキルチオールでなく、非常に弱いケト−エノール互変異性、すなわち、実質ケト型に固定されているようなチオケトン化合物が、短絡電流の向上に効果があることを見出し、これを手掛りに、チオールもしくはチオン化合物を種々検討した結果、特定の構造に至ることができ、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
<1>導電性支持体上に、色素が担持された半導体微粒子を有する感光体層と、電解質を含む電荷移動体層と、対極とをこの順で有する光電変換素子であって、
導電性支持体および対極の間に下記式(I)で表すことができる化合物を含む光電変換素子。
式(I)
HS−R
(式中、Rは、分岐アルキル基、置換アルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基または−C(=X)−Rxを表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、=C(R)(R)または=N(R)を表し、Rxは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換アミノ基を表す。R〜Rは各々独立に、水素原子または置換基を表す。ここで、XとRxが互いに結合して環を形成してもよい。)
<2>式(I)で表すことができる化合物が、Rが、−C(=X)−Rxであり、この化合物のケト−エノール互変異におけるケト構造が、下記式(IA)で表される<1>に記載の光電変換素子。
Figure 2015053150
(式中、RxおよびXは、式(I)におけるRxおよびXと同義である。)
<3>式(I)で表すことができる化合物が、下記式(IA−1)または(IB−1)で表される<1>または<2>に記載の光電変換素子。
Figure 2015053150
(式中、Ryはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Xは−N(Ra)−、−O−、−C(Rb)(Rc)−または単結合を表し、Xは−N(Rd)(Re)を表す。ここで、Ra〜Reは各々独立に、水素原子または置換基を表す。Rzはシクロアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。)
<4>式(I)で表すことができる化合物が、下記式(IA−2)または(IB−2)で表される<1>〜<3>のいずれかに記載の光電変換素子。
Figure 2015053150
(式中、XおよびXは、式(IA−1)におけるXおよびXと同義である。環Aは、環構成原子に窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含むヘテロ環または芳香族炭化水素環を表す。)
<5>環Aが電子吸引性基で置換されている<4>に記載の光電変換素子。
<6>導電性支持体および対極の間に、開放電圧向上剤を含有する<1>〜<5>のいずれかに記載の光電変換素子。
<7>開放電圧向上剤が、含窒素ヘテロ環化合物である<6>に記載の光電変換素子。
<8>式(I)で表すことができる化合物と開放電圧向上剤の含有モル比率〔式(I)で表すことができる化合物/開放電圧向上剤〕が、1/99〜30/70である<6>または<7>に記載の光電変換素子。
<9>式(I)で表すことができる化合物と開放電圧向上剤の含有モル比率〔式(I)で表すことができる化合物/開放電圧向上剤〕が、5/95〜20/80である<6>〜<8>のいずれかに記載の光電変換素子。
<10>電解質の酸化還元対がヨウ素系酸化還元対である<1>〜<9>のいずれかに記載の光電変換素子。
<11>式(I)で表すことができる化合物を、電解質に含まれるヨウ素およびヨウ素イオンのモル数の和に対して、0.1〜40モル%含有する<10>に記載の光電変換素子。
<12>式(I)で表すことができる化合物を、電解質中、および、半導体微粒子の表面の少なくとも一方に有する<1>〜<11>のいずれかに記載の光電変換素子。
<13>前記<1>〜<12>のいずれかに記載の光電変換素子を具備する色素増感太陽電池。
本明細書において、特に断りがない限り、炭素−炭素二重結合については、分子内にE型およびZ型が存在する場合、そのいずれであっても、またこれらの混合物であってもよい。特定の符号で表示された置換基や連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時もしくは択一的に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接するとき(特に、隣接するとき)には特段の断りがない限り、それらが互いに連結して環を形成してもよい。また、環、例えば脂環、芳香族環、ヘテロ環、はさらに縮環して縮合環を形成していてもよい。
本発明においては、各置換基は、特に断らない限り、さらに置換基で置換されていてもよい。
本発明により、短絡電流を高めることで優れた光電変換効率の光電変換素子および太陽電池を提供することが可能になった。
また、本発明で新たに開発した短絡電流を高める添加剤により、開放電圧を高める添加剤の欠点を克服し、開放電圧と短絡電流をともに向上させる手段を得ることができ、これにより、光電変換効率をさらに向上させることも可能になった。
本発明の光電変換素子の一実施態様について、層中の円部分の拡大図も含めて模式的に示した断面図である。 本発明の光電変換素子の第2の態様の色素増感太陽電池を模式的に示した断面図である。
<<光電変換素子および色素増感太陽電池>>
本発明の光電変換素子は、導電性支持体上に、色素が担持された半導体微粒子を有する感光体層と、電解質を含む電荷移動体層と、対極(対向電極)とをこの順で有し、導電性支持体および対極の間に、後述の式(I)で表すことができる化合物(本発明の化合物ともいう)を有している。本発明の化合物は、導電性支持体および対極の間であればいずれに存在してもよく、好ましくは電解質(電荷移動体層)中および半導体微粒子の表面の少なくとも一方に有している。
本発明の光電変換素子は、上記構成を有していれば、その他の構成は特に限定されず、光電変換素子に関する公知の構成を採用できる。本発明の光電変換素子における各層は単層であっても複層であってもよく、必要により上記各層以外の層を有してもよい。
本発明の色素増感太陽電池は、本発明の光電変換素子を用いてなる。
本発明の光電変換素子ないし色素増感太陽電池は、例えば、図1に示される実施形態とすることができる。図1に示すように、光電変換素子10は、導電性支持体1、色素21により増感された半導体微粒子を含む感光体層2、正孔輸送層である電荷移動体層3および対極4からなる。ここで、本実施形態においては、電荷移動体層3中に本発明の化合物を有していることが好ましい。また、半導体微粒子22に、色素21とともに、本発明の化合物または共吸着剤が吸着されていることが好ましい。感光体層2を設置した導電性支持体1は光電変換素子10において作用電極として機能する。本実施形態においては、この光電変換素子10を外部回路6で動作手段(電動モーター)Mに仕事をさせる電池用途に使用できるようにした色素増感太陽電池を利用したシステム100として示している。
感光体層2に入射した光は色素21を励起する。励起された色素はエネルギーの高い電子を有しており、この電子が色素21から半導体微粒子22の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体1に到達する。このとき、後述するように、本発明の化合物は、再配列エネルギーが低く、色素の励起状態を安定化させる。上述の電子移動により、色素21は酸化体となっているが、電極上の電子が外部回路6で仕事をしながら、対極4、電解質が存在する電荷移動体層3を経由して、色素21の酸化体が存在する感光体層2に戻ることで太陽電池として働く。
本発明において光電変換素子もしくは色素増感太陽電池に用いられる材料および各部材の作成方法については、この種のものにおける通常のものを採用すればよく、例えば米国特許第4,927,721号明細書、米国特許第4,684,537号明細書、米国特許第5,0843,65号明細書、米国特許第5,350,644号明細書、米国特許第5,463,057号明細書、米国特許第5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。
以下、本発明の化合物および主たる部材について概略を説明する。
< 式(I)で表すことができる化合物 >
本発明の光電変換素子は、下記式(I)で表すことができる化合物を有している。
なお、ここで、式(I)で表すことができる化合物とは、極限的な化学構造式として、例えば、互変異性構造であるケト−エノール構造において、実際の存在確率が低いとしてもエノール構造と成り得る化学式構造の化合物である。
式(I)
HS−R
式中、Rは分岐アルキル基、置換アルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基または−C(=X)−Rxを表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、=C(R)(R)または=N(R)を表し、Rxは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換アミノ基を表す。R〜Rは各々独立に、水素原子または置換基を表す。ここで、XとRxが互いに結合して環を形成してもよい。
Rにおける分岐アルキル基は、炭素数3〜30のアルキル基が好ましく、例えば、イソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、イソアミル、t−アミル、2−エチルヘキシル、t−オクチルが挙げられる。
Rにおける置換アルキル基は、炭素数3〜30が好ましく、置換基としては、後述の置換基Wが挙げられる。なかでも置換基としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基以外の置換基が好ましく、例えば、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、置換アミノ基が好ましい。
ここで、カルボキシ基、ヒドロキシ基のように半導体微粒子表面に吸着する基を含んでいると、半導体微粒子表面に吸着等し、電荷移動層中に存在する式(I)で表すことができる化合物が局在することになるためと想定される。
Rにおける置換もしくは無置換のシクロアルキル基は、炭素数3〜30のシクロアルキル基が好ましく、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられ、置換基としては、後述の置換基Wが挙げられる。
Rにおける置換もしくは無置換アルケニル基は、炭素数2〜30のアルケニル基が好ましく、例えばビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、2−ブテニル、オレイルが挙げられる。置換基としては、後述の置換基Wが挙げられる。
Rにおける置換もしくは無置換のアルキニル基は、炭素数2〜30のアルキニル基が好ましく、例えばエチニル、2−プロピニル、2−ペンテン−4−イニルが挙げられ、置換基としては後述の置換基Wが挙げられる。
Rにおける置換もしくは無置換のアリール基は、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、例えばフェニル、ナフチルが挙げられ、置換基としては、後述の置換基Wが挙げられる。
Rにおける置換もしくは無置換のヘテロ環基におけるヘテロ環は、環構成ヘテロ原子が、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、5員環または6員環が好ましく、該ヘテロ環は、芳香族ヘテロ環であっても、飽和もしくは不飽和(ただし芳香環ではない)のヘテロ環であっても構わない。また、他の環、例えばベンゼン環、脂環やヘテロ環で縮環していてもよい。このようなヘテロ環は、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、テトラヒドロチオフェン環、ピロリジン環、テトラヒドロフラン環、ピロリン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、ピペラジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環が挙げられる。置換基としては、後述の置換基Wが挙げられる。
Rは、また−C(=X)−Rxを表す。
ここで、Xは、酸素原子、硫黄原子、=C(R)(R)または=N(R)を表し、Rxは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換アミノ基を表す。R〜Rは各々独立に、水素原子または置換基を表す。
Rxにおけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基は、上記Rにおけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基が好ましい。
Rxにおけるアルコキシ基は、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、2−エチルヘキシルオキシ、n−オクチルオキシが挙げられる。また置換基としては後述の置換基Wが挙げられる。
Rxにおけるアルキルチオ基としては、炭素数1〜30のアルキルチオ基が好ましく、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、2−エチルヘキシルチオ、n−オクチルチオが挙げられる。また置換基としては後述の置換基Wが挙げられる。
Rxにおける置換アミノ基の置換基は後述の置換基Wが挙げられる。置換アミノ基としては、例えば、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、アルキニルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基などが挙げられ、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキニルアミノ基、シクロアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基が好ましい。
〜Rにおける置換基は、後述の置換基Wが挙げられる。
〜Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基が好ましい。
XとRxは、互いに結合して、環を形成してもよく、該環としては5員環または6員環が好ましく、形成された環が、芳香環であってもそれ以外の不飽和環であっても構わない。また、形成された環に他の環、例えばベンゼン環またはヘテロ環が縮環していてもよい。
Rは、置換もしくは無置換の、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、または−C(=X)−Rxが好ましい。なかでも、−C(=X)−Rxが好ましい。
式(I)で表すことができる化合物は、本発明では、特にRが、−C(=X)−Rxであり、この化合物のケト−エノール互変異におけるケト構造が、下記式(IA)で表される化合物が好ましい。
Figure 2015053150
式中、RxおよびXは、式(I)におけるRxおよびXと同義であり、好ましい範囲も同じである。
一方、式(I)で表すことができる化合物は、全体的には、下記式(IA−1)または(IB−1)で表される化合物が好ましい。
Figure 2015053150
式中、Ryはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Xは−N(Ra)−、−O−、−C(Rb)(Rc)−または単結合を表し、Xは−N(Rd)(Re)を表す。ここで、Ra〜Reは各々独立に、水素原子または置換基を表す。Rzはシクロアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
Ryにおけるアルキル基、アリール基またはヘテロ環基は、Rにおけるアルキル基、アリール基またはヘテロ環基が好ましい。
におけるRa〜Reは各々独立に、水素原子または置換基を表し、該置換基としては後述の置換基Wが挙げられる。
Rzにおけるシクロアルキル基、アリール基またはヘテロ環基は、Rにおけるシクロアルキル基、アリール基またはヘテロ環基が好ましい。
式(IA−1)、(IB−1)で表される化合物のうち、式(IA−1)で表される化合物が好ましい。
本発明の式(I)で表すことができる化合物は、下記式(IA−2)または(IB−2)で表される化合物がより好ましい。
Figure 2015053150
式中、XおよびXは、式(IA−1)におけるXおよびXと同義であり、好ましい範囲も同じである。
環Aは、環構成原子に窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含むヘテロ環または芳香族炭化水素環を表す。
環Aは、前記Rにおいて挙げたヘテロ環またはアリール基が好ましく、好ましい範囲も、これらと同じである。
環Aは置換基を有していてもよく、該置換基としては後述の置換基Wが挙げられる。なかでも置換基としては電子吸引性基が好ましく、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ハロゲン化アルキル基(特にフッ素原子置換アルキル基が好ましく、例えばトリフルオロメチル基)が好ましく、シアノ基またはフッ素原子置換アルキル基がより好ましい。
式(IA−2)、(IB−2)で表される化合物のうち、式(IA−2)で表される化合物が好ましい。
以下に、式(I)で表される化合物の具体例を示すが、これによって、本発明が、これらに限定されるものではない。
Figure 2015053150
本発明の化合物は、基本的には購入可能であり、市販されてないものについては、Journal of chemical Research synopses,2010,#3,p151、European Journal of Medicinal chemistry,2008,vol43,#4,p749等に記載された方法に準じた方法で合成することができる。
なお、本発明の式(I)で表すことができる化合物は、共存する酸化還元対と相互作用することが想定され、該酸化還元対としてはヨウ素系が好ましく、なかでも、I/I が好ましい。
本発明における式(I)で表すことができる化合物は、例えば下記反応のように、色素またはIに対して、電子を供与することができ、また逆に対極またはIから電子を授与することができる。
この効果により、電子移動に対し効果的な補助作用を行っていると推測される。具体的には本発明の持つSH基が色素カチオンまたは酸性基部位に対し高い親和力を有することで、色素カチオン近傍に存在することができ、電子移動に有利に働いていると推測される。
Figure 2015053150
このような効果は、例えば、式(I)で表すことができる化合物を主体として酸化還元対に用いた場合には得ることができない効果である。これを単分子で用いた場合は、色素に電子を渡した後に生成するジスルフィドがチオールに戻るためには電極近傍から対極まで移動する必要があるが、ヨウ素に比べ拡散性が低く、これが性能向上を妨げていると推測される。
ここで用いる酸化還元対としては、ヨウ素系酸化還元対が好ましい。
本発明の式(I)で表すことができる化合物は、電解質に含まれるヨウ素およびヨウ素イオンのモル数の和に対して、0.1〜40モル%含有することが好ましく、1〜15モル%含有することがより好ましく、1〜5モル%含有することがさらに好ましい。
< 開放電圧向上剤 >
本発明の式(I)で表すことができる化合物は、開放電圧向上剤と併用することが好ましい。開放電圧向上剤は、本発明の式(I)で表すことができる化合物と同じ場所で共存することが好ましい。このため、導電性支持体および対極の間、すなわち、電解移動層中の電解質で共存することが好ましい。
これによって、短絡電流の向上と、開放電圧の向上を同時に行うことが可能となる。
開放電圧向上剤は、含窒素ヘテロ環化合物が好ましく、下記式(II)として表すことができる。
Figure 2015053150
式中、Rは置換基を表す。mは0以上の整数を表す。環Bは含窒素ヘテロ環を表す。環Bは、式中で示した窒素原子以外の窒素原子、酸素原子および硫黄原子を環構成原子として含んでもよく、また、環構成原子が、式中で示した窒素原子のみであっても構わない。
環Bは、5員環または6員環が好ましく、ベンゼン環や脂環またはヘテロ環で縮環していてもよい。また環Bは、芳香族ヘテロ環であっても、芳香族でない飽和ヘテロ環であっても不飽和ヘテロ環であっても構わないが、芳香族ヘテロ環が好ましい。
環Bは、例えば、式(I)のRにおいて例示したヘテロ環のうちの含窒素ヘテロ環が挙げられる。環Bは、なかでも、イミダゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が好ましい。
における置換基としては後述の置換基Wが挙げられ、中でも、アルキル基、アリール基、アミノ基が好ましい。なかでも、アルキル基、アミノ基が好ましく、アミノ基としては、アミノ基、アルキルアミノ基が好ましい。
以下に、式(II)で表される化合物の具体例を示すが、これによって、本発明が、これらに限定されるものではない。
Figure 2015053150
また、上記以外にも、国際公開第2011/158922号パンフレットの3頁25行目〜4頁6行目に記載のピリジンやピリジン系化合物、特開2004−47229号公報の段落番号0015、特開2004−171821号公報の段落番号0014などに記載のアミノピリジン系化合物、特開2004−273272号公報の段落番号0014に記載のベンズイミダゾール系化合物、特開2005−38711号公報の段落番号0014〜0023に記載のアミノトリアゾール系化合物、特開2005−108663号公報の段落番号0015〜0026に記載のアミノチアゾール系化合物、特開2005−135782号公報の段落番号0014〜0035に記載のキノリン系化合物、特開2005−183166号公報の段落番号0014〜0021に記載のアミノトリアジン系化合物、特開2004−247158号公報の段落番号0048〜0054に記載のピリミジン系化合物も好ましく使用することができる。
本発明の式(I)で表すことができる化合物と開放電圧向上剤との混合モル比率〔式(I)で表すことができる化合物/開放電圧向上剤〕は、1/99〜30/70が好ましく、5/95〜20/80がより好ましい。
本明細書において化合物(錯体、色素を含む)の表示については、当該化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、本明細書において置換・無置換を明記していない置換基(連結基についても同様)については、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換・無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Wが挙げられる。
また、本明細書において、単に置換基としてしか記載されていない場合は、この置換基Wを参照するものであり、また、各々の基、例えば、アルキル基が記載されているのみの時は、この置換基Wの対応する基における好ましい範囲、具体例が適用される。
置換基Wとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル、トリフルオロメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数5〜20で、例えばシクロペンテニル、シクロヘキセニル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数2〜20で、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5または6員環のヘテロ環基がより好ましく、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アルケニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、ビニルオキシ、アリルオキシ等)、アルキニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、2−プロピニルオキシ、4−ブチニルオキシ等)、シクロアルキルオキシ基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、4−メチルシクロヘキシルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、ヘテロ環オキシ基(例えば、イミダゾリルオキシ、ベンゾイミダゾリルオキシ、チアゾリルオキシ、ベンゾチアゾリルオキシ、トリアジニルオキシ、プリニルオキシ)、
アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、シクロアルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数4〜20で、例えば、シクロプロピルオキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数6〜20で、例えば、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20で、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、アルキニルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、シクロアルケニルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、N−アリルアミノ、N−(2−プロピニル)アミノ、N−シクロヘキシルアミノ、N−シクロヘキセニルアミノ、アニリノ、ピリジルアミノ、イミダゾリルアミノ、ベンゾイミダゾリルアミノ、チアゾリルアミノ、ベンゾチアゾリルアミノ、トリアジニルアミノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのスルファモイル基が好ましく、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−シクロヘキシルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、ベンゾイル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのカルバモイル基が好ましく、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、
アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数0〜20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのスルホンアミド基が好ましく、例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、N−メチルメタンスルホンアミド、N−シクロヘキシルスルホンアミド、N−エチルベンゼンスルホンアミド等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、シクロアルキルチオ基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ、4−メチルシクロヘキシルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル、ベンゼンスルホニル等)、
シリル基(好ましくは炭素数1〜20で、アルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシが置換したシリル基が好ましく、例えば、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、ジエチルベンジルシリル、ジメチルフェニルシリル等)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、アルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシが置換したシリルオキシ基が好ましく、例えば、トリエチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシ、ジエチルベンジルシリルオキシ、ジメチルフェニルシリルオキシ等)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、カルボキシ基、スルホ基、ホスホニル基、ホスホリル基、ホウ酸基であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、シクロアルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基またはシアノ基が挙げられる。
化合物ないし置換基等がアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。また、アリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
< 導電性支持体 >
導電性支持体は、金属のように支持体そのものに導電性があるものか、または表面に導電膜層を有するガラスもしくはプラスチックの支持体であるものが好ましい。プラスチックの支持体としては、例えば、特開2001−291534号公報の段落番号0153に記載の透明ポリマーフィルムが挙げられる。支持体としては、ガラスおよびプラスチックの他、セラミック(特開2005−135902号公報)、導電性樹脂(特開2001−160425号公報)を用いてもよい。導電性支持体上には、表面に光マネージメント機能を施してもよく、例えば、特開2003−123859号公報に記載の高屈折膜および低屈折率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜、特開2002−260746号公報に記載のライトガイド機能が挙げられる。
導電膜層の厚さは0.01〜30μmが好ましく、0.03〜25μmが更に好ましく、特に好ましくは0.05〜20μmである。
導電性支持体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光(波長300〜1200nm)の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上が特に好ましい。透明導電性支持体としては、ガラスもしくはプラスチックに導電性の金属酸化物を塗設したものが好ましい。金属酸化物としてはスズ酸化物(TO)が好ましく、インジウム−スズ酸化物(スズドープ酸化インジウム;ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)等のフッ素ドープ酸化物が特に好ましい。このときの導電性の金属酸化物の塗布量は、ガラスもしくはプラスチックの支持体1m当たり0.1〜100gが好ましい。透明導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。
< 感光体層 >
感光体層は、目的に応じて設計された色素が担持された半導体微粒子を有している。感光体層2中の色素21は一種類でも多種の混合でもよい。この感光体層は、好ましくは、色素とともに、本発明の化合物および共吸着剤の少なくとも一方が担持された半導体微粒子を有している。
本実施形態において、受光電極5は、導電性支持体1と感光体層2とよりなる。
− 半導体微粒子 −
半導体微粒子は、好ましくは金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)またはペロブスカイトの半導体微粒子である。金属のカルコゲニドとしては、好ましくはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、もしくはタンタルの酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。ペロブスカイトとしては、好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち酸化チタン(チタニア)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが特に好ましい。
チタニアの結晶構造としては、アナターゼ型、ブルッカイト型、または、ルチル型が挙げられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。チタニアナノチューブ・ナノワイヤー・ナノロッドをチタニア半導体微粒子に混合するか、または半導体電極として用いてもよい。
半導体微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で1次粒子として0.001〜1μm、分散物の平均粒径として0.01〜100μmであることが好ましい。半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法として、湿式法の他、乾式法、その他の方法が挙げられる。
透明導電膜と半導体層(感光体層)の間には、電解質と電極が直接接触することによる逆電流を防止するため、短絡防止層を形成することが好ましい。また、光散乱層を設けてもよい。光電極(受光電極)と対極の接触を防ぐために、スペーサーやセパレータを用いることが好ましい。半導体微粒子は多くの色素、所望により本発明の化合物等を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。例えば半導体微粒子を支持体上に塗設した状態で、その表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。一般に、半導体微粒子の層の厚みが大きいほど単位面積当たりに担持できる色素等の量が増えるため光の吸収効率が高くなるが、発生した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。半導体微粒子層(半導体層)である感光体層の好ましい厚みは光電変換素子の用途によって異なるが、典型的には0.1〜100μmである。色素増感太陽電池として用いる場合は1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることがより好ましい。半導体微粒子は、支持体に塗布した後に粒子同士を密着させるために、焼成処理に付すことが好ましい。当該焼成条件は、例えば100〜800℃で10分〜10時間とすることができる。半導体微粒子層の成膜温度に特に制限はないが、例えば、導電性支持体がガラスであれば、60〜400℃で成膜することが好ましい。
なお、半導体微粒子の支持体1m当たりの塗布量は0.5〜500g、さらには5〜100gが好ましい。
− 色素 −
本発明の光電変換素子(例えば光電変換素子10)および色素増感太陽電池(例えば色素増感太陽電池20)においては、色素を使用する。本発明において、色素は、光電変換素子および色素増感太陽電池における通常のものを、特に限定されることなく使用できる。
このような色素として、例えば、Ru金属錯体色素、スクアリリウムシアニン色素、有機色素、ポルフィリン色素、フタロシアニン色素が挙げられる。有機色素はシアニン色素が好ましい。
(Ru金属錯体色素)
Ru金属錯体色素は、下記式(DA)で表される色素が好ましく、また、ビピリジンまたはターピリジン骨格の配位子が配位したRu金属錯体色素が好ましく、分子内にアミノ基を有するRu金属錯体色素も好ましい。下記式(DA)で表される色素であって、ビピリジンまたはターピリジン骨格の配位子が配位したRu金属錯体色素が好ましい。
式(DA)
Ru(L1)m1(L2)m2(L3)m3・CI
式中、L1は1座の配位子を表し、L2は2座の配位子を表し、L3は3座の配位子を表す。CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。m1は0〜3の整数を表し、m2は0〜3の整数を表し、m3は0〜2の整数を表す。ただし、m1+m2×2+m3×3=6である。
L1における1座の配位子は、ハロゲンイオン、シアネートアニオン、イソシアネートアニオン、チオシアネートアニオン、イソチオシアネートアニオン、セレノシアネートアニオン、イソセレノシアネートアニオンが好ましく、イソシアネートアニオン、イソチオシアネートアニオン、イソセレノシアネートアニオンがより好ましく、イソチオシアネートアニオンが特に好ましい。
L2における2座の配位子としては、ビピリジン(特に2,2’−ビピリジン)、1,3−ジケトンが好ましく、ビピリジンがより好ましく、カルボキシ基が置換したビピリジン(特に、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)がさらに好ましい。
L3における3座の配位子は、含窒素ヘテロアリール環の環構成窒素原子に結合する環構成炭素同士が単結合で3個の含窒素ヘテロアリール環が結合した配位子が好ましい。含窒素ヘテロアリール環としては、該環を構成するヘテロ原子が、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、また環員数としては、5員環または6員環が好ましく、該環は芳香環、脂環(脂肪族環)やヘテロ環で縮環していてもよい。含窒素ヘテロアリール基を構成する5員環としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、フラン環、チオフェン環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インドリン環、インダゾール環が挙げられる。また、6員環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キナゾリン環が挙げられる。L3はなかでもターピリジン(特に、2,2’:6’,2”−ターピリジン)が好ましい。
これらの含窒素ヘテロアリール環はカルボキシ基が置換したものが好ましく、2つ以上の含窒素ヘテロアリール環にカルボキシ基が置換したものがより好ましく、3つの含窒素ヘテロアリール環にカルボキシ基が置換したものがさらに好ましい。
なかでも、4,4’,4”−トリカルボキシ−2,2’:6’,2”−ターピリジンが好ましい。
CIは、Cl、I、CFSO (TfO)、PF 、H、N(C (NBu )が挙げられ、Cl、N(C が好ましい。
このようなRu金属錯体色素としては、例えば、特表平7−500630号公報に記載のRu金属錯体色素(特に第5頁左下欄5行目〜第7頁右上欄7行目に例1〜例19で合成された色素)、特表2002−512729号公報に記載のRu金属錯体色素(特に第20頁の下から3行目〜第29頁23行目に例1〜例16で合成された色素)、特開2001−59062号公報に記載のRu金属錯体色素(特に、段落番号0087〜0104に記載の色素)、特開2001−6760号公報に記載のRu金属錯体色素(特に、段落番号0093〜0102に記載の色素)、特開2001−253894号公報に記載のRu金属錯体色素(特に、段落番号0009〜0010に記載の色素)、特開2003−212851号公報に記載のRu金属錯体色素(特に、段落番号0005に記載の色素)、国際公開第2007/91525号パンフレットに記載のRu金属錯体色素(特に、段落番号0067に記載の色素)、特開2001−291534号公報に記載のRu金属錯体色素(特に、段落番号0120〜0144に記載の色素)、特開2012−012570号公報に記載のRu金属錯体色素(特に、段落番号0095〜0103に記載の色素)、特開2013−084594号公報に記載のRu金属錯体色素(特に、段落番号0072〜0081などに記載の色素)、国際公開第2013/088898号パンフレットに記載のRu金属錯体色素(特に、段落番号0286〜0293に記載の色素)が挙げられる。
以下に、Ru金属錯体色素の具体例を示すが、これによって、本発明が、これらに限定されるものではない。なお、下記において、「Bu」はブチル基を示す。
なお、以下では、一部Ru金属錯体色素以外のOs金属錯体色素も例示したが、Ru金属錯体色素に次いで、好ましい金属錯体色素である。
Figure 2015053150
Figure 2015053150
スクアリリウムシアニン色素としては、例えば、特開平11−214730号公報に記載のスクアリリウムシアニン色素(特に、段落番号0036〜0047に記載の色素)、特開2012−144688号公報に記載のスクアリリウムシアニン色素(特に、段落番号0039〜0046および段落番号0054〜0060に記載の色素)、特開2012−84503号公報に記載のスクアリリウムシアニン色素(特に、段落番号0066〜0076などに記載の色素)が挙げられる。
有機色素としては、例えば、特開2004−063274号公報に記載の有機色素(特に、段落番号0017〜0021に記載の色素)、特開2005−123033号公報に記載の有機色素(特に、段落番号0021〜0028に記載の色素)、特開2007−287694号公報に記載の有機色素(特に、段落番号0091〜0096に記載の色素)、特開2008−71648号公報に記載の有機色素(特に、段落番号0030〜0034に記載の色素)、国際公開第2007/119525号パンフレットに記載の有機色素(特に、段落番号0024に記載の色素)が挙げられる。
ポルフィリン色素としては、例えば、Angew.Chem.Int.Ed.,49,1〜5(2010)などに記載のポルフィリン色素が挙げられる。
フタロシアニン色素としては、例えば、Angew.Chem.Int.Ed.,46,8358(2007)などに記載のフタロシアニン色素が挙げられる。
本発明においては、複数の色素を併用してもよい。併用する色素としては、上記のRu金属錯体色素、スクアリリウムシアニン色素、または有機色素が挙げられる。
色素の使用量は、全体で、支持体1m当たり0.01〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜10ミリモルである。本発明で用いる色素は単独で色素増感太陽電池の増感色素として機能するものが好ましい。また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1gに対して0.001〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。このような色素量とすることによって、半導体微粒子における増感効果が十分に得られる。
色素が塩である場合、対イオンは特に限定されず、上記CIの他に、例えばアルカリ金属イオン又は4級アンモニウムイオン等が挙げられる。
本発明において、半導体微粒子への色素の吸着は、後述するように、色素を含有する色素溶液を用いて行うことが好ましい。例えば、支持体上に半導体微粒子層(感光体層)を形成させた半導体電極を、色素を溶解してなる色素溶液に浸漬するなどして行うことができる。
− 共吸着剤 −
本発明の光電変換素子においては、共吸着剤を使用し、色素とともに半導体微粒子の表面に吸着させるのが好ましい。このような共吸着剤としては酸性基(好ましくは、カルボキシ基もしくはその塩の基)を1つ以上有する共吸着剤が好ましく、脂肪酸やステロイド骨格を有する化合物が挙げられる。脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、例えばブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ヘキサデカン酸、ドデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
ステロイド骨格を有する化合物として、コール酸、グリココール酸、ケノデオキシコール酸、ヒオコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸等が挙げられる。好ましくはコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸であり、さらに好ましくはケノデオキシコール酸である。
共吸着剤としては、特開2012−012570号公報の段落番号0107に記載の化合物が好ましく、該特開2012−012570号公報の段落番号0107の記載が、そのまま本願明細書に好ましく取り込まれる。
共吸着剤は、半導体微粒子に吸着させることにより、色素の非効率な会合を抑制する効果および半導体微粒子表面から電解質中のレドックス系への逆電子移動を防止する効果がある。共吸着剤の使用量は特に限定されないが、色素1モルに対して、好ましくは1〜200モル、さらに好ましくは10〜150モル、特に好ましくは20〜50モルであることが上記の作用を効果的に発現させる観点から好ましい。
< 電荷移動体層 >
本発明の光電変換素子に用いられる電荷移動体層は、受光電極と対極との間に設けられる。この電荷移動体層は、色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層である。
− 電解質 −
電荷移動体層は電解質を有する。本実施形態において電荷移動体層は電解質からなる。
電解質の例としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体電解質、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリクスに含浸したいわゆるゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩などが挙げられる。効率を高めるためには液体電解質が好ましい。
酸化還元対として、例えばヨウ素とヨウ化物(ヨウ化物塩、ヨウ化イオン性液体が好ましく、ヨウ化リチウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化メチルプロピルイミダゾリウムが好ましい)との組み合わせ、アルキルビオローゲン(例えばメチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲンテトラフルオロボレート)とその還元体との組み合わせ、ポリヒドロキシベンゼン類(例えばハイドロキノン、ナフトハイドロキノン等)とその酸化体との組み合わせ、2価と3価の鉄錯体の組み合せ(例えば赤血塩と黄血塩の組み合せ)、2価と3価のコバルト錯体の組み合わせ等が挙げられる。これらのうちヨウ素とヨウ化物との組み合わせ、2価と3価のコバルト錯体の組み合わせが好ましく、ヨウ素とヨウ化物との組み合わせが特に好ましい。
上記コバルト錯体は、特開2013−077449号公報の段落番号0060〜0063に記載の式(A)で表される錯体が好ましく、該特開2013−077449号公報の段落番号0060〜0077の記載が、そのまま本願明細書に好ましく取り込まれる。
電解質として、ヨウ素とヨウ化物との組み合せを用いる場合、5員環または6員環の含窒素芳香族カチオンのヨウ素塩をさらに併用するのが好ましい。
電解質は、酸化還元対に加えて、好ましくは本発明の化合物を有する。本発明の化合物は上述した通りである。
電解質への添加物としては、本発明の化合物のほか、本発明の化合物以外の化合物、なかでも開放電圧向上剤や、他の添加剤を加えることができる。
酸化還元対および本発明の化合物、場合により上記添加物を溶かす有機溶媒としては、特に限定されないが、非プロトン性の極性溶媒(例えばアセトニトリル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチルイミダゾリノン、3−メチルオキサゾリジノン等)が好ましい。
特に、液体電解質の有機溶媒は、ニトリル化合物、エーテル化合物、エステル化合物等が用いられ、ニトリル化合物が好ましく、アセトニトリル、メトキシプロピオニトリルが特に好ましい。
酸化還元対は、電子のキャリアになるので、ある程度の濃度を含有するのが好ましい。好ましい濃度としては合計で0.01モル/L以上であり、より好ましくは0.1モル/L以上であり、特に好ましくは0.3モル/L以上である。この場合の上限には特に制限はないが、通常5モル/L程度である。
ゲル電解質のマトリクスに使用されるポリマーとしては、例えばポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオリド等が挙げられる。
溶融塩としては、例えばヨウ化リチウムと他の少なくとも1種類のリチウム塩(例えば酢酸リチウム、過塩素酸リチウム等)にポリエチレンオキシドを混合することにより、室温での流動性を付与したもの等が挙げられる。この場合のポリマーの添加量は1〜50質量%である。また、γ−ブチロラクトンを電解液に含んでいてもよく、これによりヨウ化物イオンの拡散効率が高くなり光電変換効率が向上する。
また、光電変換効率を向上するために、電解液の水分を制御する方法をとってもよい。水分を制御する好ましい方法としては、濃度を制御する方法や脱水剤を共存させる方法を挙げることができる。ヨウ素の毒性軽減のために、ヨウ素とシクロデキストリンの包摂化合物の使用をしてもよく、逆に水分を常時補給する方法を用いてもよい。また環状アミジンを用いてもよく、酸化防止剤、加水分解防止剤、分解防止剤、ヨウ化亜鉛を加えてもよい。
電解質として溶融塩を用いてもよく、好ましい溶融塩としては、イミダゾリウムまたはトリアゾリウム型陽イオンを含むイオン性液体、オキサゾリウム系、ピリジニウム系、グアニジウム系およびこれらの組み合わせが挙げられる。これらカチオン系に対して特定のアニオンと組み合わせてもよい。これらの溶融塩に対しては添加物を加えてもよい。液晶性の置換基を持っていてもよい。また、四級アンモニウム塩系の溶融塩を用いてもよい。
これら以外の溶融塩としては、例えば、ヨウ化リチウムと他の少なくとも1種類のリチウム塩(例えば酢酸リチウム、過塩素酸リチウム等)にポリエチレンオキシドを混合することにより、室温での流動性を付与したもの等が挙げられる。
電解質と溶媒からなる電解液にゲル化剤を添加してゲル化させることにより、電解質を擬固体化してもよい。ゲル化剤としては、分子量1000以下の有機化合物、分子量500〜5000の範囲のSi含有化合物、特定の酸性化合物と塩基性化合物からできる有機塩、ソルビトール誘導体、ポリビニルピリジンが挙げられる。
また、マトリックスポリマー、架橋型高分子化合物またはモノマー、架橋剤、電解質および溶媒を高分子中に閉じ込める方法を用いてもよい。
マトリックス高分子として好ましくは、含窒素複素環を主鎖あるいは側鎖の繰り返し単位中に持つ高分子およびこれらを求電子性化合物と反応させた架橋体、トリアジン構造を持つ高分子、ウレイド構造をもつ高分子、液晶性化合物を含むもの、エーテル結合を有する高分子、ポリフッ化ビニリデン系、メタクリレート・アクリレート系、熱硬化性樹脂、架橋ポリシロキサン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアルキレングリコールとデキストリンなどの包摂化合物、含酸素または含硫黄高分子を添加した系、天然高分子などが挙げられる。これらにアルカリ膨潤型高分子、一つの高分子内にカチオン部位とヨウ素との電荷移動錯体を形成できる化合物を持った高分子などを添加してもよい。
マトリックスポリマーとして2官能以上のイソシアネートを一方の成分として、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシ基などの官能基と反応させた架橋ポリマーを含む系を用いても良い。また、ヒドロシリル基と二重結合性化合物による架橋高分子、ポリスルホン酸またはポリカルボン酸などを2価以上の金属イオン化合物と反応させる架橋方法などを用いても良い。
上記擬固体の電解質との組み合わせで好ましく用いることができる溶媒としては、特定のリン酸エステル、エチレンカーボネートを含む混合溶媒、特定の比誘電率を持つ溶媒などが挙げられる。固体電解質膜あるいは細孔に液体電解質溶液を保持させても良く、その方法として好ましくは、導電性高分子膜、繊維状固体、フィルタなどの布状固体が挙げられる。
以上の液体電解質および擬固体電解質の代わりにp型半導体あるいはホール輸送材料などの固体電荷輸送層、例えば、CuI、CuNCSなどを用いることができる。また、Nature,486,487(2012)等に記載の電解質を用いてもよい。固体電荷輸送層として有機ホール輸送材料を用いても良い。ホール輸送層として好ましくは、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリシランなどの導電性高分子および2個の環がC、Siなど四面体構造をとる中心元素を共有するスピロ化合物、トリアリールアミンなどの芳香族アミン誘導体、トリフェニレン誘導体、含窒素複素環誘導体、液晶性シアノ誘導体が挙げられる。
光電変換素子や色素増感太陽電池における電解質の水分含有量の調整は、本発明の効果を効果的に奏するうえで好ましく、例えば、この電解質の水分含有量(含有率)を0〜0.1質量%に調整することがより好ましい。
< 対極 >
対極は、色素増感太陽電池(光電気化学電池)の正極として働くものであることが好ましい。対極は、通常前述の導電性支持体と同義であるが、強度が十分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必要でない。対極の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。感光層に光が到達するためには、前述の導電性支持体と対極の少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の色素増感太陽電池においては、導電性支持体が透明であって太陽光を支持体側から入射させるのが好ましい。この場合、対極は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。色素増感太陽電池の対極としては、金属もしくは導電性の酸化物を蒸着したガラス、またはプラスチックが好ましく、白金を蒸着したガラスが特に好ましい。色素増感太陽電池では、構成物の蒸散を防止するために、電池の側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。
本発明は、特許第4260494号公報、特開2004−146425号公報、特開2000−340269号公報、特開2002−289274号公報、特開2004−152613号公報、特開平9−27352号公報に記載の光電変換素子、色素増感太陽電池に適用することができる。また、特開2004-152613号公報、特開2000-90989号公報、特開2003−217688号公報、特開2002−367686号公報、特開2003−323818号公報、特開2001−43907号公報、特開2000−340269号公報、特開2005−85500号公報、特開2004−273272号公報、特開2000−323190号公報、特開2000−228234号公報、特開2001−266963号公報、特開2001−185244号公報、特表2001−525108号公報、特開2001−203377号公報、特開2000−100483号公報、特開2001−210390号公報、特開2002−280587号公報、特開2001−273937号公報、特開2000−285977号公報、特開2001−320068号公報等に記載の光電変換素子、色素増感太陽電池に適用することができる。
以下に実施例に基づき、本発明について更に詳細に説明するが、本発明がこれに限定して解釈されるものではない。
実施例1
< 色素増感太陽電池の作製 >
下記のようにして、色素増感太陽電池を作製し、短絡電流JSCの測定を行った。
本発明の化合物としてS−1、S−3、S−5〜S−7、S−11、S−13およびS−17〜S−19、開放電圧向上剤として下記化合物T−1〜T−3およびT−6を使用した。
Figure 2015053150
これらは購入するか、またはJournal of chemical Research synopses,2010,#3,p151、European Journal of Medicinal chemistry,2008,vol43,#4,p749等に従って合成した。
また、色素は下記のN749(Black Dye)を用いた。
Figure 2015053150
以下に示す手順により、特開2002−289274号公報に記載の図5に示されている光電極12と同様の構成を有する光電極を作製し、さらに、光電極を用いて、同公報の図3における光電極以外は色素増感太陽電池20と同様の構成を有する10×10mmのスケールの色素増感太陽電池20を作製した。具体的な構成は本願に添付の図2に示した。
本願の図2では、41が透明電極、42が半導体電極、43が透明導電膜、44が基板、45が半導体層、46が光散乱層、40が光電極、20が色素増感太陽電池、CEが対極、Eが電解質、Sがスペーサーである。
(ペーストの調製)
(ペーストA)球形のTiO粒子(アナターゼ、平均粒径;25nm、以下、球形TiO粒子Aという)を硝酸溶液に入れて撹拌することによりチタニアスラリーを調製した。次に、チタニアスラリーに増粘剤としてセルロース系バインダーを加え、混練してペーストを調製した。
(ペースト1)球形TiO粒子Aと、球形のTiO粒子(アナターゼ、平均粒径;200nm、以下、球形TiO粒子Bという)とを硝酸溶液に入れて撹拌することによりチタニアスラリーを調製した。次に、チタニアスラリーに増粘剤としてセルロース系バインダーを加え、混練してペースト(TiO粒子Aの質量:TiO粒子Bの質量=30:70)を調製した。
(ペースト2)ペーストAに、棒状TiO粒子(アナターゼ、直径;100nm、アスペクト比;5、以下、棒状TiO粒子Cという)を混合し、棒状TiO粒子Cの質量:ペーストAの質量=30:70のペーストを調製した。
(光電極の作製)
ガラス基板44上にフッ素ドープされたSnO導電膜43(膜厚;500nm)を形成した透明電極41を準備した。そして、このSnO導電膜上に、上述のペースト1をスクリーン印刷し、次いで乾燥させた。その後、空気中、450℃の条件のもとで焼成した。更に、ペースト2を用いてこのスクリーン印刷と焼成とを繰り返すことにより、SnO導電膜上に図2に示す半導体電極42と同様の構成の半導体電極(受光面の面積;10mm×10mm、層厚;15μm、半導体層の層厚;10μm、光散乱層の層厚;5μm、光散乱層に含有される棒状TiO粒子Cの含有率;30質量%)を形成し、色素を含有していない光電極を作製した。
(色素吸着)
次に、上記のようにして作製した光電極に上記色素(N749)を以下のようにして吸着させた。
先ず、N,N−ジメチルホルムアミド/t−BuOH=1/1を溶媒として、これに色素を、その濃度が3×10−4mol/Lとなるように溶解し、さらに共吸着剤として、ケノデオキシコール酸とコール酸の等モル混合物を色素1モルに対して20モル加え、色素溶液を調製した。この色素溶液をカール・フィッシャー滴定により水分量を測定したところ、水は0.01質量%未満であった。次に、この溶液に、上記で作製した半導体電極を浸漬し、これにより、半導体電極42に色素吸着した光電極40を完成させた。
次に、対極CEとして上記の光電極40と同様の形状と大きさを有する白金電極(Pt薄膜の厚さ;100nm)、電解質Eとして、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド(0.5mol/L)、ヨウ素(0.1mol/L)およびヨウ化リチウム(0.2mol/L)と、下記表1に示す添加剤(本発明の化合物または開放電圧向上剤)(濃度0.25mol/L)とをアセトニトリルに溶解して液体電解質を調製した。更に、半導体電極42の大きさに合わせた形状を有するデュポン社製のスペーサーS(商品名:「サーリン」)を準備し、特開2002−289274号公報に記載の図3に示されているように、光電極40と対極CEとスペーサーSを介して対向させ、内部に上記の電解質Eを充填して光電極を使用した色素増感太陽電池を完成させた。
< 短絡電流JSCの測定と評価 >
電池特性試験は、ソーラーシミュレーター(WACOM製、WXS−85H)を用い、AM1.5フィルタを通したキセノンランプから1000W/mの擬似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、短絡電流JSCを求めた。添加剤なしの場合を1.00としたときの相対値で、以下の基準に基づき評価した。
(短絡電流JSC
A:1.18倍以上
B:1.10倍以上1.18倍未満
C:1.06倍以上1.10倍未満
D:1.00倍以上1.06倍未満
E:0.93倍以上1.00倍未満
得られた結果を、下記表1に示す。
Figure 2015053150
上記表1から明らかなように、本発明の式(I)で表すことができる化合物は、いずれも短絡電流が優れていることがわかる。
実施例2
実施例1と同様にして、下記表2に示す添加剤の組み合わせの色素増感太陽電池を作製した。なお、添加剤の総使用モル数は、実施例1と同じモル数に調製し、添加剤の組み合わせのみ変更した。ここで、添加剤(A)は、本発明の化合物であり、添加剤(B)は開放電圧向上剤である。
このうち、下記表2の試料No.c21は実施例1の試料No.c11と、試料No.c23は実施例1の試料No.c13と、試料No.201は実施例1の試料No.104の色素増感太陽電池と同じものである。
< 短絡電流JSCおよび開放電圧VOCの測定ならびに光電変換効率の評価 >
電池特性試験は、実施例1と同様に、ソーラーシミュレーター(WACOM製、WXS−85H)を用い、AM1.5フィルタを通したキセノンランプから1000W/mの擬似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、光電変換効率を求めた。測定された短絡電流JSCおよび開放電圧VOCおよび得られた光電変換効率を、添加剤なしの場合を1.00としたときの相対値で、以下の基準に基づき評価した。なお、短絡電流JSCは、実施例1と同じ基準で評価した。
(開放電圧VOC
A:1.45倍以上
B:1.35倍以上1.45倍未満
C:1.10倍以上1.35倍未満
D:0.95倍以上1.10倍未満
(光電変換効率)
AA:1.41倍以上
A:1.37倍以上1.41倍未満
B:1.33倍以上1.37倍未満
C:1.29倍以上1.33倍未満
D:1.25倍以上1.29倍未満
E:1.10倍以上1.25倍未満
F:0.98倍以上1.10倍未満
得られた結果をまとめて、下記表2に示す。
Figure 2015053150
上記表2から明らかなように、開放電圧向上剤を使用すると、開放電圧は改良されるものの、短絡電流が低下するが、本発明の式(I)で表すことができる化合物と併用すると、開放電圧と短絡電流を同時に向上させることが可能となり、この結果、光電変換効率に優れた光電変換素子が得られることがわかる。
1 導電性支持体
2 感光体層
21 色素
22 半導体微粒子
3 電荷移動体層
4 対極
5 受光電極
6 回路
10 光電変換素子
100 色素増感太陽電池を利用したシステム
M 電動モーター(扇風機)
20 色素増感太陽電池
40 光電極
41 透明電極
42 半導体電極
43 透明導電膜
44 基板
45 半導体層
46 光散乱層
CE 対極
E 電解質
S スペーサー

Claims (13)

  1. 導電性支持体上に、色素が担持された半導体微粒子を有する感光体層と、電解質を含む電荷移動体層と、対極とをこの順で有する光電変換素子であって、
    前記導電性支持体および前記対極の間に下記式(I)で表すことができる化合物を含む光電変換素子。
    式(I)
    HS−R
    (式中、Rは、分岐アルキル基、置換アルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基または−C(=X)−Rxを表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、=C(R)(R)または=N(R)を表し、Rxは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換アミノ基を表す。R〜Rは各々独立に、水素原子または置換基を表す。ここで、XとRxが互いに結合して環を形成してもよい。)
  2. 前記式(I)で表すことができる化合物が、前記Rが、前記−C(=X)−Rxであり、該化合物のケト−エノール互変異におけるケト構造が、下記式(IA)で表される請求項1に記載の光電変換素子。
    Figure 2015053150
    (式中、RxおよびXは、前記式(I)におけるRxおよびXと同義である。)
  3. 前記式(I)で表すことができる化合物が、下記式(IA−1)または(IB−1)で表される請求項1または2に記載の光電変換素子。
    Figure 2015053150
    (式中、Ryはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Xは−N(Ra)−、−O−、−C(Rb)(Rc)−または単結合を表し、Xは−N(Rd)(Re)を表す。ここで、Ra〜Reは各々独立に、水素原子または置換基を表す。Rzはシクロアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。)
  4. 前記式(I)で表すことができる化合物が、下記式(IA−2)または(IB−2)で表される請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
    Figure 2015053150
    (式中、XおよびXは、前記式(IA−1)におけるXおよびXと同義である。環Aは、環構成原子に窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含むヘテロ環または芳香族炭化水素環を表す。)
  5. 前記環Aが電子吸引性基で置換されている請求項4に記載の光電変換素子。
  6. 前記導電性支持体および前記対極の間に、開放電圧向上剤を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  7. 前記開放電圧向上剤が、含窒素ヘテロ環化合物である請求項6に記載の光電変換素子。
  8. 前記式(I)で表すことができる化合物と前記開放電圧向上剤の含有モル比率〔前記式(I)で表すことができる化合物/前記開放電圧向上剤〕が、1/99〜30/70である請求項6または7に記載の光電変換素子。
  9. 前記式(I)で表すことができる化合物と前記開放電圧向上剤の含有モル比率〔前記式(I)で表すことができる化合物/前記開放電圧向上剤〕が、5/95〜20/80である請求項6〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  10. 前記電解質の酸化還元対がヨウ素系酸化還元対である請求項1〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  11. 前記式(I)で表すことができる化合物を、前記電解質に含まれるヨウ素系酸化還元対の全モル数に対して、0.1〜40モル%含有する請求項10に記載の光電変換素子。
  12. 前記式(I)で表すことができる化合物を、前記電解質中、および、前記半導体微粒子の表面の少なくとも一方に有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の光電変換素子を具備する色素増感太陽電池。
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