JP6300332B2 - 光電変換素子、色素増感太陽電池、金属錯体色素および色素溶液 - Google Patents

光電変換素子、色素増感太陽電池、金属錯体色素および色素溶液 Download PDF

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Description

本発明は、光電変換素子、色素増感太陽電池、金属錯体色素および色素溶液に関する。
光電変換素子は、各種の光センサー、複写機、太陽電池等の光電気化学電池等に用いられている。この光電変換素子には、金属を用いた方式、半導体を用いた方式、有機顔料や色素を用いた方式、または、これらを組み合わせた方式等の様々な方式が実用化されている。特に、非枯渇性の太陽エネルギーを利用した太陽電池は、燃料が不要であり、無尽蔵のクリーンエネルギーを利用するものとして、その本格的な実用化が大いに期待されている。そのなかでも、シリコン系太陽電池は古くから研究開発が進められ、各国の政策的な配慮もあって普及が進んでいる。しかし、シリコンは無機材料であり、スループットおよびコスト等の改良には自ずと限界がある。
そこで、金属錯体色素を用いた光電気化学電池(色素増感太陽電池ともいう)の研究が精力的に行われている。特にその契機となったのは、スイス ローザンヌ工科大学のGraetzel等の研究成果である。彼らは、ポーラス酸化チタン膜の表面にルテニウム錯体からなる色素を固定した構造を採用し、アモルファスシリコン並の光電変換効率を実現した。これにより、高価な真空装置を使用しなくても製造できる色素増感太陽電池が一躍世界の研究者から注目を集めるようになった。
Graetzel等の報告の後、色素増感太陽電池に使用される金属錯体色素として、N3、N719、N749(ブラックダイともいう)、Z907、J2と呼ばれる色素等が開発されている。
これらの色素以外にも、特に光電変換素子および色素増感太陽電池の光電変換効率または耐久性を向上させうる金属錯体色素の開発が進められている。
例えば、特許文献1には、チオフェン環基を導入したターピリジン配位子と、1,3−ジケトン等の配位子とを持つ金属錯体色素が記載されている。また、この金属錯体色素を用いた光電気化学電池が、光電変換効率が高く、耐久性に優れていたことも記載されている。
特許文献2には、特定の置換基で置換された環状の基を持つドナー配位子を有する金属錯体色素に用いうるターピリジン配位子として、末端ピリジン環の金属イオンに配位する環構成窒素原子に対して3位にチオフェン環基が結合したターピリジン配位子が記載されている。また、特許文献2に記載の金属錯体色素を用いた光電気化学電池が、性能のバラツキの低減と、光電変換効率および耐久性の向上とを両立できたことも記載されている。
特許文献3には、末端ピリジン環の金属イオンに配位する環構成窒素原子に対して3位にベンゼン環基またはチオフェン環基を導入したターピリジン配位子と3個の単座の配位子とを有する金属錯体色素が記載されている。また、この金属錯体色素を用いた光電気化学電池が、高光電変換効率を達成し、しかも耐久性に優れていたことも記載されている。
特許文献4には、末端ピリジン環の金属イオンに配位する環構成窒素原子に対して3位にチオフェン環が結合した3座の配位子を有する金属錯体色素が記載されている。
特開2012−36237号公報 特開2013−229285号公報 特開2013−67773号公報 米国特許出願公開第2012/0247561号明細書
しかし、近年、光電変換素子および色素増感太陽電池の研究、開発が盛んに行われ、要求性能がより高くなっている。特に光電変換効率および耐久性のさらなる改善、向上が望まれている。
本発明は、優れた光電変換効率および耐久性を有する光電変換素子および色素増感太陽電池、ならびに、これらに用いられる金属錯体色素および色素溶液を提供することを課題とする。
本発明者らは、光電変換素子および色素増感太陽電池に用いられる金属錯体色素として、特定の芳香族ヘテロ環基または特定の縮合多環芳香族炭化水素環が配位原子に対して4位の環構成原子に結合した含窒素芳香環を端部に持つ3座の配位子と、3つの配位原子のうち、少なくとも1つが環を構成する窒素原子であり、かつ少なくとも2つの原子がアニオンで金属イオンに配位する特定の配位子とを組み合わせて用いると、光電変換効率および耐久性のさらなる向上を実現できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成された。
すなわち、本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
<1>導電性支持体と、電解質を含む感光体層と、電解質を含む電荷移動体層と、対極とを有する光電変換素子であって、感光体層が、下記式(I)で表される金属錯体色素が担持された半導体微粒子を有する光電変換素子。
Figure 0006300332
式中、AncおよびAncは各々独立に酸性基を表す。
Mは金属イオンを表す。
は、−CH=または−N=を表す。
Arは、下記式(X−1)もしくは式(X−2)で表される単環の環基、または、下記式(X−1a)〜式(X−3a)のいずれかの式で表される単環の環基を縮合環として含む多環の環基を表す。
〜Lは配位子を表す。ただし、L〜Lのうちの2つがアニオン性配位子を表し、L〜Lのうちの少なくとも1つが環を構成する窒素原子でMに配位する配位子を表す。L〜Lのうち、LとLとが互いに結合してなる2座配位子であるか、または、LとLとLとが互いに結合してなる3座配位子である。
Figure 0006300332
式中、Aは、各々独立に、−O−、−S−または−NR−を表す。Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
X1〜RX6は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シリル基、シアノ基またはヒドロキシ基を表す。RXaは、各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シリル基、シアノ基またはヒドロキシ基を表す。n1〜n3は、各々独立に、0以上の整数であり、かつ上記各多環の環基が無置換であるときの水素原子数以下の整数を表す。
*は、Xを含む環との結合位置を表す。
<2>上記2座配位子が、下記式(2L−1)〜(2L−4)のいずれかの式で表される<1>に記載の光電変換素子。
Figure 0006300332
式中、環D2Lは芳香族環を表す。A111〜A141は各々独立に窒素原子のアニオンまたは炭素原子のアニオンを表す。R111〜R143は各々独立に水素原子、または、酸性基を有しない置換基を表す。*は金属イオンMへの配位位置を表す。
<3>上記3座配位子が、下記式(3L−1)〜(3L−4)のいずれかの式で表される<1>に記載の光電変換素子。
Figure 0006300332
式中、環D2Lは芳香族環を表す。A211〜A242は各々独立に窒素原子のアニオンまたは炭素原子のアニオンを表す。R211〜R241は各々独立に水素原子、または、酸性基を有しない置換基を表す。*は金属イオンMへの配位位置を表す。
<4>Arが、式(X−1)で表される単環の環基、または、式(X−1a)もしくは式(X−3a)で表される単環の環基を縮合環として含む多環の環基である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<5>Aが、−O−または−S−である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<6>Mが、Ru2+またはOs2+である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<7>酸性基が、カルボキシ基またはその塩である<1>〜<6>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<8>上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載の光電変換素子を備えた色素増感太陽電池。
<9>下記式(I)で表される金属錯体色素。
Figure 0006300332
式中、AncおよびAncは各々独立に酸性基を表す。
Mは金属イオンを表す。
は、−CH=または−N=を表す。
Arは、下記式(X−1)もしくは式(X−2)で表される単環の環基、または、下記式(X−1a)〜式(X−3a)のいずれかの式で表される単環の環基を縮合環として含む多環の環基を表す。
〜Lは配位子を表す。ただし、L〜Lのうちの2つがアニオン性配位子を表し、L〜Lのうちの少なくとも1つが環を構成する窒素原子でMに配位する配位子を表す。L〜Lのうち、LとLとが互いに結合してなる2座配位子であるか、または、LとLとLとが互いに結合してなる3座配位子である。
Figure 0006300332
式中、Aは、各々独立に、−O−、−S−または−NR−を表す。Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
X1〜RX6は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シリル基、シアノ基またはヒドロキシ基を表す。RXaは、各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シリル基、シアノ基またはヒドロキシ基を表す。n1〜n3は、各々独立に、0以上の整数であり、かつ上記各多環の環基が無置換であるときの水素原子数以下の整数を表す。
*は、Xを含む環との結合位置を表す。
<10>上記<9>に記載の金属錯体色素と溶媒とを含有する色素溶液。
本明細書において、特段の断りがない限り、二重結合については、分子内にE型およびZ型が存在する場合、そのいずれであっても、またこれらの混合物であってもよい。
特定の符号で表示された置換基や連結基、配位子等(以下、置換基等という)が複数あるとき、または複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接するとき(特に、隣接するとき)には特段の断りがない限り、それらが互いに連結して環を形成してもよい。
また、本発明において、環とは、特段の断りがない限り、以下の意味を持つ。このことは、環基についても同様である。
本発明において、環の員環数は、特に限定されないが、4〜8員が好ましく、5または6員がより好ましい。また、環は、縮合環であってもよい。すなわち、環は、単環と、複数の環が縮環してなる多環(縮合環)とを包含する。多環を形成する環数(縮環数)は、特に限定されず、例えば、合計で2〜5環であることが好ましい。
本発明において、環は、芳香族環および脂肪族環を包含する。
芳香族環は、芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環を含む。芳香族炭化水素環は、芳香族性を示す炭化水素環をいう。芳香族炭化水素環は、単環の芳香族炭化水素環および多環の芳香族炭化水素環(縮合多環芳香族炭化水素環ともいう)を含む。芳香族ヘテロ環は芳香族性を示すヘテロ環をいい、単環の芳香族ヘテロ環および多環の芳香族ヘテロ環(縮合多環芳香族ヘテロ環ともいう)を含む。芳香族炭化水素環基は価数によりアリール基またはアリーレン基ともいい、同様に芳香族ヘテロ環基はヘテロアリール基またはヘテロアリーレン基ともいう。
脂肪族環は、芳香族環以外の環をいい、脂肪族炭化水素環および脂肪族ヘテロ環を含む。脂肪族炭化水素環としては、飽和炭化水素環、および、芳香族性を示さない不飽和炭化水素環が挙げられる。例えば、単環の飽和炭化水素環(シクロアルカン)、多環の飽和炭化水素環、単環の不飽和炭化水素環(シクロアルケン、シクロアルキン)および多環の不飽和炭化水素環等が挙げられる。
また、芳香族ヘテロ環および脂肪族ヘテロ環を合わせてヘテロ環ということがある。ヘテロ環は、炭素原子とヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、セレン原子またはリン原子)とを環構成原子とする環をいう。
本明細書において、化合物(錯体、色素を含む)の表示については、化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、目的とする効果を損なわない範囲で、構造の一部を変化させたものを含む意味である。さらに、置換または無置換を明記していない化合物については、目的とする効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有するものを含む。このような置換基としては、後述する置換基群から適宜に選ばれる置換基が好ましく挙げられる。このことは、置換基、連結基および配位子についても同様である。
また、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明の光電変換素子および色素増感太陽電池は、上記式(I)で表される金属錯体色素を有する。これにより、優れた光電変換効率と高い耐久性とを発揮する。よって、本発明により、優れた光電変換効率および耐久性を有する光電変換素子および色素増感太陽電池、ならびに、これらに用いられる金属錯体色素および色素溶液を提供できる。
本発明の上記および他の特徴および利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
図1は、本発明の第1態様の光電変換素子を、電池用途に応用したシステムにおいて、層中の円部分の拡大図も含めて、模式的に示した断面図である。 図2は、本発明の第2態様の光電変換素子からなる色素増感太陽電池を模式的に示した断面図である。
[光電変換素子および色素増感太陽電池]
本発明の光電変換素子は、導電性支持体と、電解質を含む感光体層と、電解質を含む電荷移動体層と、対極(対向電極)とを有する。感光体層と電荷移動体層と対極とがこの順で導電性支持体上に設けられている。
本発明の光電変換素子において、その感光体層を形成する半導体微粒子の少なくとも一部は、増感色素として後述する式(I)で表される金属錯体色素を担持している。ここで、金属錯体色素が半導体微粒子の表面に担持される態様は、半導体微粒子の表面に吸着する態様、半導体微粒子の表面に堆積する態様、および、これらが混在した態様等を包含する。吸着は、化学吸着と物理吸着とを含み、化学吸着が好ましい。
半導体微粒子は、後述する式(I)の金属錯体色素と併せて、他の金属錯体色素を担持していてもよい。
半導体微粒子は、上記金属錯体色素とともに後述する共吸着剤を担持していることが好ましい。
また、感光体層は電解質を含む。感光体層に含まれる電解質は、電荷移動体層が有する電解質と同種でも異種であってもよいが、同種であることが好ましい。ここで、「電解質が同種」とは、感光体層の電解質に含まれる成分と電荷移動体層の電解質に含まれる成分が同じであり、且つ、各成分の含有量も同じである態様、および、感光体層の電解質に含まれる成分と電荷移動体層の電解質に含まれる成分が同じであるが、各成分の含有量が異なる態様、の両態様を含む意味である。
本発明の光電変換素子は、本発明で規定する構成以外の構成は特に限定されず、光電変換素子に関する公知の構成を採用できる。本発明の光電変換素子を構成する上記各層は、目的に応じて設計され、例えば、単層に形成されても、複層に形成されてもよい。また、必要により上記各層以外の層を有してもよい。
本発明の色素増感太陽電池は、本発明の光電変換素子を用いてなる。
以下、本発明の光電変換素子および色素増感太陽電池の好ましい実施形態について説明する。
図1に示されるシステム100は、本発明の第1態様の光電変換素子10を、外部回路6で動作手段M(例えば電動モーター)に仕事をさせる電池用途に応用したものである。
光電変換素子10は、導電性支持体1と、色素(金属錯体色素)21が担持されることにより増感された半導体微粒子22、および、半導体微粒子22間に電解質を含む感光体層2と、正孔輸送層である電荷移動体層3と、対極4とからなる。
光電変換素子10において、受光電極5は、導電性支持体1および感光体層2を有し、作用電極として機能する。
光電変換素子10を応用したシステム100において、感光体層2に入射した光は、金属錯体色素21を励起する。励起された金属錯体色素21はエネルギーの高い電子を有しており、この電子が金属錯体色素21から半導体微粒子22の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体1に到達する。このとき金属錯体色素21は酸化体(カチオン)となっている。導電性支持体1に到達した電子が外部回路6で仕事をしながら、対極4、電荷移動体層3を経由して金属錯体色素21の酸化体に到達し、この酸化体を還元することで、システム100が太陽電池として機能する。
図2に示される色素増感太陽電池20は、本発明の第2態様の光電変換素子により構成されている。
色素増感太陽電池20となる光電変換素子は、図1に示す光電変換素子に対して、導電性支持体41および感光体層42の構成、および、スペーサーSを有する点で異なるが、それらの点以外は図1に示す光電変換素子10と同様に構成されている。すなわち、導電性支持体41は、基板44と、基板44の表面に成膜された透明導電膜43とからなる2層構造を有している。また、感光体層42は、半導体層45と、半導体層45に隣接して成膜された光散乱層46とからなる2層構造を有している。導電性支持体41と対極48との間にはスペーサーSが設けられている。色素増感太陽電池20において、40は受光電極であり、47は電荷移動体層である。
色素増感太陽電池20は、光電変換素子10を応用したシステム100と同様に、感光体層42に光が入射することにより、太陽電池として機能する。
本発明の光電変換素子および色素増感太陽電池は、上記の好ましい態様に限定されず、各態様の構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各態様間で適宜組み合わせることができる。
本発明において、光電変換素子または色素増感太陽電池に用いられる材料および各部材は常法により調製することができる。例えば、米国特許第4,927,721号明細書、米国特許第4,684,537号明細書、米国特許第5,084,365号明細書、米国特許第5,350,644号明細書、米国特許第5,463,057号明細書、米国特許第5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2001−185244号公報、特開2001−210390号公報、特開2003−217688号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。
<式(I)で表される金属錯体色素>
本発明の金属錯体色素は、下記式(I)で表される。本発明の金属錯体色素は、光電変換素子および色素増感太陽電池に、高い光電変換効率と優れた熱安定性とを付与できる。したがって、本発明の金属錯体色素は増感色素として色素増感太陽電池に好ましく用いられる。
Figure 0006300332
式(I)において、AncおよびAncは各々独立に酸性基を表す。
Mは金属イオンを表す。
は、−CH=または−N=を表し、−CH=が好ましい。
式(I)において、Arは、下記式(X−1)もしくは式(X−2)で表される単環の環基、または、下記式(X−1a)〜式(X−3a)のいずれかの式で表される単環の環基を縮合環として含む多環の環基を表す。
Figure 0006300332
式(X−1)、式(X−2)、式(X−1a)および式(X−2a)において、Aは、各々独立に、−O−、−S−または−NR−を表す。Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
上記各式において、RX1〜RX6は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シリル基、シアノ基またはヒドロキシ基を表す。RXaは、各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シリル基、シアノ基またはヒドロキシ基を表す。
式(X−1a)〜式(X−3a)において、n1〜n3は、各々独立に、0以上の整数であり、かつ上記各多環の環基が無置換であるときの水素原子数以下の整数を表す。
*は、Xを含む環との結合位置を表す。
式(I)において、L〜Lは配位子を表す。
ただし、L〜Lのうちの2つがアニオン性配位子を表し、L〜Lのうちの少なくとも1つが環を構成する窒素原子でMに配位する配位子を表す。また、L〜Lのうち、LとLとが互いに結合してなる2座配位子であるか、または、LとLとLとが互いに結合してなる3座配位子である。
金属錯体色素は電荷を中和させるために必要な対イオンCIを有していてもよい。
− 金属イオンM −
Mは、金属錯体色素の中心金属であり、長周期律表上6〜12族の各元素のイオンが挙げられる。このような金属イオンとしては、例えば、Ru、Fe、Os、Cu、W、Cr、Mo、Ni、Pd、Pt、Co、Ir、Rh、Re、MnおよびZnの各イオンが挙げられる。金属イオンMは、1種のイオンであっても2種以上のイオンであってもよい。
本発明においては、金属イオンMは、Os2+、Ru2+またはFe2+が好ましく、Os2+またはRu2+がより好ましく、なかでもRu2+が特に好ましい。
光電変換素子中に組み込まれた状態においては、Mの価数は、周囲の材料との酸化還元反応により変化することがある。
− ターピリジン系配位子 −
式(I)で表される金属錯体色素は、式(I)中の3つの含窒素芳香環が互いに結合し、各含窒素芳香環の環構成窒素原子で金属イオンMに配位する3座配位子を有する。この配位子をターピリジン系配位子という。
このターピリジン系配位子は、酸性基(吸着基ともいう)AncおよびAncを、2つのピリジン環それぞれに1つずつ有する。ターピリジン系配位子は、この酸性基AncおよびAncにより、本発明の金属錯体色素を半導体微粒子に担持させる機能を有する。
ターピリジン系配位子は、窒素原子、炭素原子およびXにより形成される環(Xを含む環ともいう)の金属イオンMに配位する環構成窒素原子に対して4位の環構成炭素原子にArを有している。Xを含む環の4位の環構成炭素原子にArが結合したターピリジン系配位子を持つ金属錯体色素を有する光電変換素子および色素増感太陽電池は、光電変換効率および耐久性が向上する。
は、上記した通りであり、Xを含む環としては、ピリジン環、ピリミジン環またはキノリン環が挙げられる。なかでも、ピリジン環またはピリミジン環であることが好ましく、ピリジン環であることが特に好ましい。
2つのピリジン環およびXを含む環は、それぞれ、酸性基AncおよびAnc以外の置換基を有していてもよい。これらの環が有していてもよい置換基としては、後述する置換基群Zから選ばれる置換基が挙げられる。
式(I)において、2つのピリジン環およびXを含む環は、単環および縮合環を包含し、縮合環である場合は互いに隣接する環との縮合環をも含む。例えば、上記置換基を介して隣接する環が互いに結合した縮合環を形成してもよい。このような縮合環としては、例えば、1,10−フェナントロリン環が挙げられる。
2つのピリジン環が有する酸性基AncおよびAncとは、解離性のプロトンを有する置換基であり、pKaが11以下の置換基である。酸性基のpKaは、J.Phys.Chem.A2011,115,p.6641−6645に記載の「SMD/M05−2X/6−31G」方法に従って求めることができる。酸性基としては、例えば、カルボキシ基、ホスホニル基、ホスホリル基、スルホ基、ホウ酸基等の酸性を示す酸基、または、これらの酸基を有する基が挙げられる。酸基を有する基は、酸基と連結基とを有する基が挙げられる。連結基は、特に限定されないが、2価の基が挙げられ、好ましくは、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基等が挙げられる。この連結基は後述する置換基群Zから選ばれる基を置換基として有していてもよい。酸基と連結基とを有する酸性基としては、例えば、カルボキシメチル、カルボキシビニレン、ジカルボキシビニレン、シアノカルボキシビニレン、2−カルボキシ−1−プロペニル、2−カルボキシ−1−ブテニル、カルボキシフェニル等を好ましく挙げることができる。
酸性基としては、好ましくは、カルボキシ基、ホスホニル基、スルホ基、またはカルボキシ基を有する基であり、より好ましくはカルボキシ基である。
酸性基AncおよびAncは、式(I)で表される金属錯体色素に組み込まれたときに、プロトンを放出して解離したアニオンとなっていてもよく、塩となっていてもよい。酸性基が塩となるときの対イオンとしては、特に限定されないが、例えば、下記対イオンCIにおける正のイオンの例が挙げられる。また、酸性基は、後述するようにエステル化されていてもよい。
ターピリジン系配位子において、Arは、下記式(X−1)もしくは式(X−2)で表される単環の環基、または、下記式(X−1a)〜式(X−3a)のいずれかの式で表される単環の環基を縮合環として含む多環の環基を表す。なかでも、式(X−1)で表される単環の環基、式(X−1a)で表される単環の環基を縮合環として含む多環の環基、または、式(X−3a)で表される単環の環基を縮合環として含む多環の環基が好ましい。
各式中、*はXを含む環との結合位置を表す。
Figure 0006300332
式(X−1)または式(X−2)で表される環基(単環)について説明する。
式(X−1)および式(X−2)において、Aは、各々独立に、−O−、−S−または−NR−を表す。好ましくは、−O−または−S−である。ここで、Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、水素原子またはアルキル基が好ましい。
これらの環基は、各式中に*で示された環構成炭素原子がXを含む環と結合する。
X1〜RX6は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シリル基、シアノ基またはヒドロキシ基を表す。なかでも、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基が好ましい。
X1〜RX6のうち隣接する基同士が結合して脂肪族環を形成してもよい。このような脂肪族環を形成しうる基として、2つのアルコキシ基が連結したアルキレンジオキシ基(−O−Rve−O−基)が好ましく挙げられる。ここで、Rveはアルキレン基を表し、例えば、エチレン、プロピレンが挙げられる。
上記各式で表される環基のなかでも、光電変換効率の点で、式(X−1)で表される環基が好ましい。
上記式(X−1a)〜式(X−3a)のいずれかの式で表される単環の環基を縮合環として含む多環の環基について説明する。
このような多環の環基(縮合多環基ということがある)としては、上記各式で表される環基(単環)が縮環してなる環基、および、この単環と別異の環とが縮合してなる環基等が挙げられる。
単環の環基を表す式(X−1a)〜式(X−3a)において、Aは、上記式(X−1)および式(X−2)のAと同義であり、好ましいものも同じである。
Xaは、上記置換基を表し、水素原子を含まないこと以外は上記式(X−1)および式(X−2)のRX1と同義であり、好ましいものも同じである。
n1〜n3は、それぞれ、0以上の整数であり、かつ各式で表される多環の環基を含む縮合多環基が無置換であるときの水素原子数以下の整数を表す。具体的には、n1およびn2は、0〜3の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、0または1であることがさらに好ましい。n3は、0〜5の整数であることが好ましく、0〜3の整数であることがより好ましく、0または1であることがさらに好ましい。
各縮合多環基がRXaを有する場合、置換位置は、特に限定されない。
例えば、上記式で表される単環の環基であってもよく、この単環と別異の環であってもよい。
上記別異の環としては、上記各式で表される単環と異なる種類の環であれば特に限定されず、例えば、ホスホール環、シクロペンタジエン環、シロール環または後述する芳香族ヘテロ環のうち単環のもの等が挙げられる。
縮合多環基としては、芳香族環基であることが好ましい。例えば、縮合多環芳香族炭化水素環または縮合多環芳香族ヘテロ環のうち、上記各式で表される環基を縮合環として含む環基が挙げられる。この縮合多環基は、上記式(X−1a)〜式(X−3a)のいずれかの式で表される単環の環基により、Xを含む環に結合する。このときの結合位置は、上記各式に*で示された環構成炭素原子である。縮合多環基の縮合環として、Xを含む環に結合する環基以外の環が上記式(X−1a)〜式(X−3a)のいずれかの式で表される単環である場合、各式中の結合位置*は考慮しないこととする。縮合多環基を形成する総環数は、特に限定されず、例えば2〜5環であることが好ましい。
縮合多環芳香族炭化水素環基は、縮合環として、式(X−3a)で表される単環の環基(ベンゼン環)を少なくとも含む環基である。例えば、ベンゼン環同士が複数縮環してなる環基、ベンゼン環と別異の環としてのシクロペンタジエン環が縮環してなる環基が挙げられる。好ましくはベンゼン環が複数縮環してなる環基である。
縮合多環芳香族炭化水素環基としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ナフタセン(テトラセン)、クリセン環、ピセン環、ピレン環、フルオレン環、アズレン環、ベンゾフェナントレン環、フルオランテン環の各基が挙げられる。なかでも、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環およびピレン環の各基が好ましい。
縮合多環芳香族ヘテロ環基は、縮合環として芳香族ヘテロ環を少なくとも含む環基が挙げられ、式(X−1a)または式(X−2a)で表される単環の環基を少なくとも含む環基が好ましい。例えば、式(X−1a)もしくは式(X−2a)で表される単環の環基同士が複数縮環してなる環基、または、式(X−1a)もしくは式(X−2a)で表される単環の環基と、式(X−3a)で表される単環の環基もしくは上記別異の環基(ホスホール環またはシロール環等)とが縮環してなる環基が挙げられる。また、式(X−3a)で表される単環の環基と上記別異の環基(ホスホール環またはシロール環等)とが縮環してなる環基も挙げられる。
縮合多環芳香族ヘテロ環基としては、例えば、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイソチオフェン環、インダゾール環、インドール環、イソインドール環、インドリジン環、カルバゾール環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、チエノピリジン環、シラフルオレン環(ジベンゾシロール環)、チエノ[3,2−b]チオフェン環、チエノ[3,4−b]チオフェン環、トリチオフェン環、シクロペンタジチオフェン環、ベンゾジチオフェン環、ジチエノピロール環、ジチエノフラン環、ジチエノシロール環、チオフェン環−シロール環−チオフェン環の3環縮合環の各基が挙げられる。なかでも、ベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環が好ましく、ベンゾフラン環またはベンゾチオフェン環がより好ましい。
上記ターピリジン系配位子は、ターピリジン化合物そのものであるが、本発明においては、ターピリジン系配位子を、後述するようにターピリジン系配位子の前駆体化合物として用いることもできる。したがって、本発明において、ターピリジン系配位子というときは、ターピリジン系配位子そのもの(上記ターピリジン化合物)に加えて、ターピリジン系配位子の前駆体化合物をも包含する。好ましい前駆体化合物としては、ターピリジン系配位子の酸性基AncおよびAncの少なくとも1つがエステル化されたエステル体(ターピリジン化合物のエステル化物ともいう)が挙げられる。
このエステル化物は、上記酸性基が保護された化合物であって、加水分解等により酸性基に再生できるエステルであり、特に限定されない。例えば、上記酸性基のアルキルエステル化物、アリールエステル化物、ヘテロアリールエステル化物等が挙げられる。これらのなかでも、アルキルエステル化物が好ましい。アルキルエステル化物を形成するアルキル基は、特に限定されないが、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がさらに好ましい。アリールエステル化物を形成するアリール基およびヘテロアリールエステル化物を形成するヘテロアリール基は、それぞれ、特に限定されず、後述する置換基群Zで例示したものが挙げられる。これらの基は、後述する置換基群Zより選択される1種以上の置換基を有していてもよい。
エステル化される酸性基は、AncおよびAncの2つが好ましい。この場合、2つのエステルは同じでも異なっていてもよい。
ターピリジン系配位子は、通常の方法によって合成することができる。例えば、式(L1−4)で表されるターピリジン系配位子は、下記スキームに示すように、式(L1−1)で表される化合物と式(L1−2)で表される化合物とをカップリング反応させ、式(L1−3)で表される前駆体化合物のエステル基を加水分解することにより、合成することができる。この合成方法においては、前駆体化合物としてカルボキシ基のエステル化物を示しているが、本発明においては、これに限定されず、上記酸性基のいずれかをエステル化した前駆体化合物であればよい。
このときのカップリング反応は、例えば、日本化学会編、「実験化学講座 第5版」、丸善株式会社、13巻、p92−117に記載の「鈴木カップリング反応」や「Stilleカップリング反応」等またはこれらに準じて、行うことができる。また、加水分解は、例えば、日本化学会編、「実験化学講座 第5版」、丸善株式会社、16巻、p10−15に記載の方法に準じて、行うことができる。例えば、後述する実施例で合成した方法が挙げられる。
本発明においては、前駆体化合物を加水分解して合成したターピリジン系配位子を用いて、本発明の金属錯体色素を合成することができる。また、後述する実施例1のように、前駆体化合物を用いて金属錯体色素化した後に、上記方法に準じてエステル基を加水分解して、本発明の金属錯体色素を合成することもできる。
Figure 0006300332
式中、ArおよびXは、それぞれ、上記(I)のArおよびXと同義である。Yは、トリアルキルスズ基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ハロゲン原子またはパーフルオロアルキルスルホニルオキシ基を表す。
式(L1−2)において、Yは、式(L1−1)のYがトリアルキルスズ基、ボロン酸基またはボロン酸エステル基の場合、ハロゲン原子またはパーフルオロアルキルスルホニルオキシ基を表す。また、式(L1−1)のYがハロゲン原子またはパーフルオロアルキルスルホニルオキシ基の場合、トリアルキルスズ基、ボロン酸基またはボロン酸エステル基を示す。
式(L1−2)および式(L1−3)において、Rはアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を示す。
配位子LAの具体例として、後述する金属錯体色素における配位子LA等が挙げられる。また、後述する金属錯体色素における配位子LAに対して、−COOHの少なくとも1つをカルボキシ基の塩とした化合物も挙げられる。この化合物において、カルボキシ基の塩を形成する対カチオンとしては、下記電荷中和対イオンCIで説明する正のイオンが挙げられる。さらに、ターピリジン化合物のエステル化物の例として、後述する金属錯体色素における配位子LAに対して、酸性基AncおよびAncの少なくとも1つをエステル化した化合物を挙げることができる。本発明はこれら配位子LA、その塩またはエステル化物に限定されない。
− 配位子L、LおよびL
式(I)において、L、LおよびLはそれぞれ配位子を表す。
これらの配位子は、LとLとが互いに結合してなる2座配位子および単座配位子Lの組み合わせ、または、LとLとLとが互いに結合してなる3座配位子である。この3座配位子は上記ターピリジン系配位子とは異なる。
これらの配位子L〜Lは、いずれも、半導体微粒子の表面に吸着する酸性基を有しないことが好ましい。なお、配位子L〜Lに、酸性基に相当する基を含んだとしても、半導体微粒子表面に吸着しないものが好ましい。
配位子L〜Lのうち、少なくとも1つが、環を構成する窒素原子で金属イオンMに配位する配位子である。本発明においては、配位子L〜Lのうち、2つを、環を構成する窒素原子で金属イオンMに配位する配位子とすることもできる。このような窒素原子は、環構成原子であって水素原子を持たない窒素原子が挙げられる。例えば、ピリジン環の窒素原子が挙げられる。
また、配位子L〜Lのうちの2つがアニオン性配位子である。すなわち、配位子L〜Lのうち、2つの配位子が、アニオンで金属イオンMに配位する配位子である。「アニオンである」とは、分子内のいずれかの水素原子または配位原子に結合する水素原子が解離して金属イオンMと結合しうることを意味する。アニオンの具体例は後述する。
ここで、アニオンとなる配位原子は、上記金属イオンMに配位する環構成窒素原子でもよく、他の原子、例えば炭素原子でもよい。本発明においては、金属イオンMに配位する環構成窒素原子と、アニオンとなる配位原子とは、同一でも異なってもよい。
金属錯体色素が、このような配位子L〜Lを上記ターピリジン系配位子とともに有していると、光電変換素子または色素増感太陽電池の熱安定性が改善し、高い光電変換効率に加え、高い耐久性を発揮する。
配位子L〜Lのうち、LとLとの2座配位子、および、LとLとLとの3座配位子は、下記式(DL)で表される配位子が好ましい。
Figure 0006300332
式中、環DDL、環EDLおよび環Fは、各々独立に、5員環もしくは6員環の芳香族環を表す。R、Ra1およびRa4は、各々独立に、置換基を表す。mbは0または1を表す。
ma1およびma4は各々独立に0〜3の整数を表す。maはmbが0のとき、0〜4の整数を表し、mbが1のとき、0〜3の整数を表す。
ここで、ma、ma1およびma4の各々が2以上の整数であるとき、複数のR、複数のRa1および複数のRa4は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。また、RとRa1、RとRa4が連結して環を形成してもよい。
環DDL、環EDLおよび環Fにおける5員環もしくは6員環の芳香族環は、芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環を含み、芳香族ヘテロ環が好ましい。環DDL、環EDLおよび環Fの各環は、芳香族環および脂肪族炭化水素環の少なくとも1つが縮環していてもよい。
環DDL、環EDLおよび環Fが芳香族炭化水素環である場合、特に限定されないが、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。
芳香族ヘテロ環は、特に限定されないが、環構成原子として上記ヘテロ原子を含む芳香環が挙げられる。本発明において、芳香族ヘテロ環は、非縮環の6員環、5員環が縮環した6員環、ベンゼン環が縮環した5員環またはベンゼン環が縮環した6員環が好ましく、非縮環の6員環、5員環が縮環した6員環がより好ましく、非縮環の6員環がさらに好ましい。
芳香族ヘテロ環としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環またはキナゾリン環の各6員環が挙げられる。また、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インドール環、インダゾール環、トリアゾール環等の各5員環が挙げられる。
環DDLおよび環EDLは、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、またはベンゼン環が好ましく、ピラゾール環、トリアゾール環、またはベンゼン環がより好ましい。
環Fは、窒素原子を含む芳香族ヘテロ環が好ましく、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環またはトリアジン環がより好ましく、ピリジン環およびピリミジン環がさらに好ましく、ピリジン環が特に好ましい。
ここで、環DDL、環EDLおよび環Fは、金属イオンMと結合する配位原子を含む。mbが0のとき、環DDLおよび環Fのいずれか1つは、金属イオンMと結合する配位原子がアニオンであり、環DDL中の配位原子がアニオンであることが好ましい。mbが1のとき、環DDL、環EDLおよび環Fのいずれか2つは、金属イオンMと結合する配位原子がアニオンであり、環DDLおよび環EDL中の配位原子がアニオンであることが好ましい。この配位原子としては、特に限定されないが、炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子またはこれら原子のアニオンが好ましい。
金属イオンMとアニオンで結合する基としては、特に限定されないが、−CO イオン、−Oイオン、=C−イオン(例えば、芳香環の炭素イオン)、−Sイオン、>Nイオン、−NSO−イオン(1価の基で示せば、−NSOで、Rは置換基を表す)が挙げられる。
このうち、環を構成する原子としては、=C−イオンのような炭素アニオン、>Nイオンのような窒素アニオンが好ましく挙げられる。
環FがRを有する場合、環FにおいてRが結合する位置(置換位置)は特に限定されない。環Fが5員環である場合、金属原子Mに配位する環構成窒素原子に対して3位が好ましい。環Fが6員環である場合、金属原子Mに配位する環構成窒素原子に対して、3位または4位が好ましく、4位がより好ましい。
また、環DDLおよび環EDLがそれぞれRa1またはRa4を有する場合、環DDLおよび環EDLそれぞれにおいてRa1またはRa4が結合する位置は特に限定されない。
、Ra1およびRa4の置換基は、後述する置換基群Zより選ばれる基が挙げられる。
は、なかでも、芳香族ヘテロ環基、芳香族炭化水素環基、エテニル基、エチニル基、ハロゲン原子、アルキル基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基等を含む)、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基が好ましく、芳香族ヘテロ環基、芳香族炭化水素環基、エテニル基、エチニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはアミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基等を含む)がより好ましい。また、上記各基を組み合わせてなる基も好ましい。
a1およびRa4としては、それぞれ、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基(好ましくはエテニル基)、アルキニル基(好ましくはエチニル基)、アリール基、ヘテロ環基(好ましくは芳香族ヘテロ環基)、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基が好ましく、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基がより好ましく、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基がさらに好ましい。また、上記各基を組み合わせてなる基も好ましい。ハロゲン化アルキル基およびハロゲン化アリール基は後述する。
式(DL)において、ma、ma1およびma4は、0〜2の整数が好ましく、1または2がより好ましい。
上記式(DL)で表される配位子は、下記式(DL−1)または(DL−2)で表されることが好ましい。ここで、式(DL−1)で表される配位子はLとLとLとの3座配位子の好ましいものであり、式(DL−2)で表される配位子はLとLとの2座配位子の好ましいものである。
Figure 0006300332
a2およびRa3は各々独立に酸性基を有さない置換基を表す。ma2は0または1を表し、1が好ましい。ma3は0〜2の整数を表し、1または2がより好ましい。
X1およびX2は、各々独立に、CRa5または窒素原子を表す。Ra5は水素原子または置換基を表す。この置換基は式(DL)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同じである。X1およびX2を含む環(環Fともいう)としては、上記式(DL)における環Fと同義であり、好ましい範囲も同じである。
a1、Ra4、ma1およびma4は、上記式(DL)におけるRa1、Ra4、ma1およびma4と同義であり、好ましい範囲も同じである。
a2およびRa3で表される置換基は、上記式(DL)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同じである。
ma1、ma3およびma4の各々が2以上の整数であるとき、複数のRa1、Ra3およびRa4は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
環Dおよび環Eは、各々独立に、5員環または6員環の芳香族環を表す。このような芳香族環としては、上記式(DL)における環DDLおよび環EDLで挙げた環が挙げられ、好ましい芳香族環も環DDLおよび環EDLに挙げた環と同じである。
環Dおよび環E中のDおよびDと、F環に結合する炭素原子との間の結合は、単結合でも二重結合でもよい。
およびDは、各々独立に、炭素原子のアニオンまたは窒素原子のアニオンを表す。
環Dおよび環Eは、ピラゾール環、トリアゾール環またはベンゼン環がより好ましい。
式(DL−2)で表される2座配位子は、下記式(2L−1)〜(2L−4)のいずれかの式で表される2座の配位子が好ましい。
Figure 0006300332
式中、*は金属イオンMとの配位位置(結合位置)を表す。環D2Lは芳香族環を表す。A111〜A141は各々独立に、窒素原子のアニオンまたは炭素原子のアニオンを表す。R111〜R143は各々独立に、水素原子、または、酸性基を有しない置換基を表す。
ここで、A111〜A141は、環D2Lを構成する窒素原子または炭素原子に結合した水素原子が解離した炭素原子のアニオンまたは窒素原子のアニオンである。式(2L−1)〜(2L−4)において、環D2Lは、芳香族炭化水素環、酸素を含む芳香族へテロ環、硫黄を含む芳香族へテロ環、窒素を含む芳香族ヘテロ環が挙げられる。
芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられ、ベンゼン環が好ましく、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、もしくはハロゲン化アリール基で置換されたベンゼン環がより好ましい。ハロゲン化アルキル基は、ハロゲン原子が置換したアルキル基であり、フッ化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)が好ましい。ハロゲン化アリール基としては、1〜5個のハロゲン原子が置換したフェニル基が好ましい。
酸素を含む芳香族へテロ環としてはフラン環が好ましく、硫黄を含む芳香族へテロ環としてはチオフェン環が好ましい。窒素を含む芳香族ヘテロ環としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環が好ましい。
環D2Lは、例えば、ベンゼン環、チオフェン環もしくはフラン環の環構成原子の1つがアニオンとなった各環、または、下記式(a−1)〜(a−5)、(a−1a)、(a−2a)、(a−1b)および(a−4a)で表される各環等が好ましく挙げられる。
Figure 0006300332
式中、Rdは酸性基を有さない置換基を表す。b1は0〜2の整数、b2は0〜3の整数、b3は0または1をそれぞれ表す。b1が2のとき、またはb2が2以上のとき、複数のRdは同一でも異なってもよい。また複数のRd同士が互いに結合して環を形成してもよい。Rdとしては、例えば、後述する置換基群Zより選ばれる基が挙げられる。
Figure 0006300332
式中、Rd、b1〜b3は、上記式(a−1)〜(a−5)中のRd、b1〜b3と同義であり、好ましい範囲も同じである。b4は0〜4、b5は0〜5の各整数を表す。式(a−1a)、(a−1b)において、Rdはベンゼン環だけでなく、ピロール環にも有してもよいことを示すものである。
Rdとしては、好ましくは、直鎖または分岐のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、フルオロアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、シクロアルコキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基およびこれらを組み合わせてなる基である。より好ましくは、直鎖または分岐のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基およびこれらを組み合わせてなる基であり、さらに好ましくは直鎖または分岐のハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基である。
111〜R143で表される置換基としては、上記式(DL)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同じである。
111〜R114の少なくとも1つ、R121〜R123の少なくとも1つ、R131〜R133の少なくとも1つ、R141〜R143の少なくとも1つは置換基であることが好ましく、一つまたは二つが置換基であることがより好ましい。
式(DL−1)で表される3座配位子は、下記式(3L−1)〜(3L−4)のいずれかの式で表される3座の配位子が好ましい。
Figure 0006300332
式中、*は金属イオンMとの配位位置(結合位置)を表す。環D2Lは芳香族環を表す。A211〜A242は、各々独立に、窒素原子のアニオン(窒素アニオンともいう)または炭素原子のアニオン(炭素アニオンともいう)を表す。
211〜R241は各々独立に、水素原子、または、酸性基を有しない置換基を表す。
211〜A242は、それぞれ、上記式(2L−1)〜(2L−4)のA111〜A141と同義である。
式(3L−1)〜(3L−4)における環D2Lは、上記式(2L―1)〜(2L−4)の環D2Lと同義であり、好ましい範囲も同じである。環D2Lは、A211〜A242のいずれか1つと炭素原子または2つの炭素原子を含む芳香族環がより好ましい。このとき、各式において2つの環D2Lは同一でも異なってもよい。
211〜R241で表される置換基としては、それぞれ、上記式(DL)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同じである。
211〜R213の少なくとも1つ、R221およびR222の少なくとも1つ、R231およびR232の少なくとも1つ、ならびに、R241は、置換基であることが好ましい。
本発明では、上記2座配位子または3座配位子のうち、置換基に(ヘテロ)アリールアミノ基もしくはジ(ヘテロ)アリールアミノ基を有するものが、特に吸収が長波長化するために好ましい。
具体的には、上記の好ましい配位子は、金属イオンMに配位する原子が窒素アニオンまたは炭素アニオンであって、かつ下記式(SA)を部分構造に有する配位子である。
Figure 0006300332
式中、RDA1はアリール基またはヘテロアリール基を表し、RDA2はアルキル基またはアリール基またはヘテロアリール基を表す。RDA1とRDA2は互いに結合して環を形成してもよい。LLは、エテニル基、エチニル基、アリーレン基またはヘテロアリーレン基を表す。aは0〜5の整数を表し、aが2以上のとき、複数存在するLLは同一であっても異なっていてもよい。
上記式(SA)で表される基は、金属イオンMに配位する芳香族炭化水素環または窒素を含む芳香族ヘテロ環に置換していることが好ましく、窒素原子を含む芳香族ヘテロ環に置換していることがより好ましい。
上記式(SA)で表される基のうち、RDA1およびRDA2の少なくとも一方がアリール基またはヘテロアリール基であることが好ましく、ともにアリール基であることがさらに好ましい。アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基は置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述する置換基群Zより選ばれる基が挙げられる。
アリール基としては、特に限定されないが、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。ヘテロアリール基としては、特に限定されないが、フラニル基、チエニル基が好ましい。
LLは、配位子の配位原子を含む芳香族炭化水素環または含窒素芳香族ヘテロ環と一緒になって縮環構造を形成してもよい。例えば、LLがエテニル基で、このエテニル基が配位子の配位原子を含む含窒素芳香族ヘテロ環と結合してキノリン環を形成してもよい。
LLにおけるアリーレン基としてはフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、ヘテロアリーレン基としては、2価の5または6員環で、環構成原子として、酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含むものが好ましく、ベンゼン環やヘテロ環で縮環していてもよい。
ヘテロアリーレン基のヘテロ環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環が挙げられ、フラン環、チオフェン環が好ましい。
LLにおけるエテニル基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は置換基を有してもよく、置換基としては後述する置換基群Zより選ばれる基が挙げられる。
上記式(SA)において、aが0であるか、aが1でLLがエテニル基、エチニル基、フェニレン基またはヘテロアリーレン基であることが好ましく、aが0であるか、aが1でフェニレン基またはヘテロアリーレン基であることがより好ましく、aが0であるか、aが1でフェニレン基、2価のフラン環基、2価のチオフェン環基であることがさらに好ましく、aが0であることが特に好ましい。
本発明では、RDA1とRDA2が互いに結合して環を形成したものも好ましい。
形成する環としては、5または6員環が好ましく、RDA1とRDA2がともにアリール基である場合に結合したものが、より好ましい。
DA1とRDA2が互いに結合して形成された環としては、以下の環が好ましい。
Figure 0006300332
ここで、RDA3およびRDA4は各々独立にアルキル基を表す。
上記環は、置換基を有してもよく、このような置換基としては後述する置換基群Zより選ばれる基が挙げられる。
上記式(DL)で表される配位子は、米国特許出願公開第2010/0258175A1明細書、特許第4298799号公報、Angew.Chem.Int.Ed.,2011,50,p.2054−2058に記載の方法、この文献で挙げられている参照文献に記載されている方法、もしくはこれらの方法に準じた方法で合成することができる。
以下に、上記式(DL)で表される配位子の具体例を示す。また、この配位子LDとして後述する金属錯体色素における配位子LDも挙げられる。本発明はこれらの配位子に限定されるものではない。下記具体例において、Meはメチルを表し、*は環同士またはピリジン環と置換基R201が互いに結合する結合位置を表す。
Figure 0006300332
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Figure 0006300332
Figure 0006300332
とLとの2座配位子と併用される配位子Lは、単座配位子であれば、特に限定されない。配位子Lは、好ましくはアニオンである。例えば、アシルオキシ基、アシルチオ基、チオアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオカルボネート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、アシル基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基およびハロゲン原子からなる群より選ばれる基もしくは原子またはこれらのアニオンが好ましい。
配位子Lが、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキレン基等を含む場合、それらは置換基を有していてもいなくてもよい。また、アリール基、ヘテロ環基、シクロアルキル基等を含む場合、それらは置換基を有していてもいなくてもよく、単環でも縮環していてもよい。
なかでも、配位子Lは、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基およびイソチオシアネート基またはこれらのアニオンが好ましく、イソシアネート基(イソシアネートアニオン)またはイソチオシアネート(NCS)基(イソチオシアネートアニオン)がより好ましく、イソチオシアネート基(イソチオシアネートアニオン)が特に好ましい。
− 電荷中和対イオンCI −
金属錯体色素は、その電荷を中和させるために必要な対イオンを有してもよい。一般に、金属錯体色素が陽イオンもしくは陰イオンであるか、または、正味のイオン電荷を有するかどうかは、金属錯体色素中の金属、配位子および置換基に依存する。
置換基が解離性基を有すること等により、金属錯体色素は解離して負電荷を持ってもよい。この場合、金属錯体色素全体の電荷はCIにより電気的に中性とされる。
対イオンCIが正の対イオンの場合、例えば、対イオンCIは、無機もしくは有機のアンモニウムイオン(例えばテトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等)、ホスホニウムイオン(例えばテトラアルキルホスホニウムイオン、アルキルトリフェニルホスホニウムイオン等)、アルカリ金属イオン(Liイオン、Naイオン、Kイオン等)、アルカリ土類金属イオン、金属錯体イオンまたはプロトンである。正の対イオンとしては、無機もしくは有機のアンモニウムイオン(テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラオクチルアンモニウムイオン、テトラデシルアンモニウムイオン等)、アルカリ金属イオン、プロトンが好ましい。
対イオンCIが負の対イオンの場合、例えば、対イオンCIは、無機陰イオンでも有機陰イオンでもよい。例えば、水酸化物イオン、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、置換もしくは無置換のアルキルカルボン酸イオン(酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン等)、置換もしくは無置換のアリールカルボン酸イオン(安息香酸イオン等)、置換もしくは無置換のアルキルスルホン酸イオン(メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等)、置換もしくは無置換のアリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン等)、アリールジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン等)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン等)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ピクリン酸イオンが挙げられる。さらに電荷均衡対イオンとして、イオン性ポリマーあるいは色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよく、金属錯イオン(例えばビスベンゼン−1,2−ジチオラトニッケル(III)等)も使用可能である。負の対イオンとしては、ハロゲン陰イオン、置換もしくは無置換のアルキルカルボン酸イオン、置換もしくは無置換のアルキルスルホン酸イオン、置換もしくは無置換のアリールスルホン酸イオン、アリールジスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオンが好ましく、ハロゲン陰イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオンがより好ましい。
式(I)で表される金属錯体色素は、例えば、特開2013−084594号公報に記載の方法、特許第4298799号公報に記載の方法、米国特許出願公開第2013/0018189A1、米国特許出願公開第2012/0073660A1、米国特許出願公開第2012/0111410A1および米国特許出願公開第2010/0258175A1の各明細書に記載の方法、Angew.Chem.Int.Ed.,2011,50,p.2054−2058に記載の方法、この文献で挙げられている参照文献に記載の方法、太陽電池に関する上記特許文献、公知の方法、または、これらに準じた方法で合成することができる。
式(I)で表される金属錯体色素は、長波長領域の吸収特性が優れる。金属錯体色素は、溶液における極大吸収波長が、好ましくは300〜1000nmの範囲であり、より好ましくは350〜950nmの範囲であり、特に好ましくは370〜900nmの範囲である。
以下の記載(実施例を含む)において、式(I)で表される金属錯体色素の具体例を示す。また、下記具体例および実施例の具体例に対して、−COOHの少なくとも1つをカルボキシ基の塩とした金属錯体色素も挙げられる。この金属錯体色素において、カルボキシ基の塩を形成する対カチオンとしては、上記CIで説明する正のイオンが挙げられる。本発明はこれらの金属錯体色素に限定されない。これらの金属錯体色素は光学異性体、幾何異性体が存在する場合、これらの異性体のいずれであってもよく、またこれらの異性体の混合物であってもよい。
下記具体例は、各具体例におけるターピリジン系配位子および配位子L〜Lの具体的な組み合わせに関わらず、ターピリジン系配位子および配位子L〜Lそれぞれの具体例をも各々独立に示すものである。なお、具体例中のMeはメチルを表し、D−1〜D−10はそれぞれ後述する実施例で合成した金属錯体色素の番号を示す。
Figure 0006300332
Figure 0006300332
Figure 0006300332
Figure 0006300332
Figure 0006300332
<置換基群>
本発明において、好ましい置換基としては、下記置換基群から選ばれる置換基が挙げられる。
本明細書において、アルキル基をシクロアルキル基と区別して記載している場合、アルキル基は、直鎖アルキル基および分岐アルキル基を包含する意味で用いる。一方、アルキル基をシクロアルキル基と区別して記載していない場合(単に、アルキル基と記載されている場合)、および、特段の断りがない場合、アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基およびシクロアルキル基を包含する意味で用いる。このことは、環状構造を採りうる基(アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等)を含む基(アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニルオキシ基等)、環状構造を採りうる基を含む化合物(上記アルキルエステル化物等)についても同様である。下記置換基群の説明においては、例えば、アルキル基とシクロアルキル基のように、直鎖または分岐構造の基と環状構造の基とを明確にするため、これらを分けて記載していることもある。
(置換基群Z
置換基群Zは、上記酸性基を含まない置換基群である。
本明細書において、単に置換基としてしか記載されていない場合は、この置換基群Zを参照するものである。また、各々の基、例えば、アルキル基、が記載されているのみの場合(例えばRX1)は、この置換基群Zの対応する基における好ましい範囲、具体例が適用される。
置換基群Zに含まれる基としては、下記の基、または、下記の基を複数組み合わせてなる基を含む。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、1−エチルペンチル、デシル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチルまたはトリフルオロメチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、ビニル、アリル、ブテニルまたはオレイル)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エチニル、ブチニルまたはフェニルエチニル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたは4−メチルシクロヘキシル)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数5〜20で、例えばシクロペンテニルまたはシクロヘキセニル)、アリール基(芳香族炭化水素環基、好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル、ジフルオロフェニルまたはテトラフルオロフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数2〜20で、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5員環または6員環のヘテロ環基がより好ましい。ヘテロ環には芳香族環および脂肪族環を含む。芳香族ヘテロ環基(例えばヘテロアリール基)として次の基が挙げられる。例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリルまたは2−オキサゾリル)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ヘキシルオキシまたはベンジルオキシ)、アルケニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、ビニルオキシまたはアリルオキシ)、アルキニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、2−プロピニルオキシまたは4−ブチニルオキシ)、シクロアルキルオキシ基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシまたは4−メチルシクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシまたは4−メトキシフェノキシ)、ヘテロ環オキシ基(例えば、イミダゾリルオキシ、ベンゾイミダゾリルオキシ、チアゾリルオキシ、ベンゾチアゾリルオキシ、トリアジニルオキシまたはプリニルオキシ)、
アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エトキシカルボニルまたは2−エチルヘキシルオキシカルボニル)、シクロアルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数4〜20で、例えば、シクロプロピルオキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニルまたはシクロヘキシルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数6〜20で、例えば、フェニルオキシカルボニルまたはナフチルオキシカルボニル)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20で、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、アルキニルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、シクロアルケニルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、N−アリルアミノ、N−(2−プロピニル)アミノ、N−シクロヘキシルアミノ、N−シクロヘキセニルアミノ、アニリノ、ピリジルアミノ、イミダゾリルアミノ、ベンゾイミダゾリルアミノ、チアゾリルアミノ、ベンゾチアゾリルアミノまたはトリアジニルアミノ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのスルファモイル基が好ましく、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−シクロヘキシルスルファモイルまたはN−フェニルスルファモイル)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチル、シクロヘキシルカルボニルまたはベンゾイル)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシまたはベンゾイルオキシ)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのカルバモイル基が好ましく、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイルまたはN−フェニルカルバモイル)、
アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノまたはベンゾイルアミノ)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数0〜20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのスルホンアミド基が好ましく、例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、N−メチルメタンスルホンアミド、N−シクロヘキシルスルホンアミドまたはN−エチルベンゼンスルホンアミド)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ヘキシルチオ、ペンチルチオまたはベンジルチオ)、シクロアルキルチオ基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオまたは4−メチルシクロヘキシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオまたは4−メトキシフェニルチオ)、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニルまたはベンゼンスルホニル)、
シリル基(好ましくは炭素数1〜20で、アルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシが置換したシリル基が好ましく、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリフェニルシリル、ジエチルベンジルシリルまたはジメチルフェニルシリル)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、アルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシが置換したシリルオキシ基が好ましく、例えば、トリエチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシ、ジエチルベンジルシリルオキシまたはジメチルフェニルシリルオキシ)、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)が挙げられる。
置換基群Zから選ばれる基は、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、シクロアルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基またはシアノ基が挙げられる。
化合物ないし置換基等がアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは置換されていても無置換でもよい。また、アリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
次に、光電変換素子および色素増感太陽電池の主たる部材の好ましい態様について、図1および図2を参照して、説明する。
<導電性支持体>
導電性支持体は、導電性を有し、感光体層2等を支持できるものであれば特に限定されない。導電性支持体は、導電性を有する材料、例えば金属で形成された導電性支持体1、または、ガラスもしくはプラスチックの基板44とこの基板44の表面に成膜された透明導電膜43とを有する導電性支持体41が好ましい。
なかでも、基板44の表面に導電性の金属酸化物を塗設して透明導電膜43を成膜した導電性支持体41がさらに好ましい。プラスチックで形成された基板44としては、例えば、特開2001−291534号公報の段落番号0153に記載の透明ポリマーフィルムが挙げられる。また、基板44を形成する材料は、ガラスおよびプラスチックの他にも、セラミック(特開2005−135902号公報)、導電性樹脂(特開2001−160425号公報)を用いることができる。金属酸化物としては、スズ酸化物(TO)が好ましく、インジウム−スズ酸化物(スズドープ酸化インジウム;ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等のフッ素ドープスズ酸化物が特に好ましい。このときの金属酸化物の塗布量は、基板44の表面積1m当たり0.1〜100gが好ましい。導電性支持体41を用いる場合、光は基板44側から入射させることが好ましい。
導電性支持体1および41は、実質的に透明であることが好ましい。「実質的に透明である」とは、光(波長300〜1200nm)の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
導電性支持体1および41の厚みは、特に限定されないが、0.05μm〜10mmであることが好ましく、0.1μm〜5mmであることがさらに好ましく、0.3μm〜4mmであることが特に好ましい。
透明導電膜43を設ける場合、透明導電膜43の厚みは、0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることがさらに好ましく、0.05〜20μmであることが特に好ましい。
導電性支持体1および41は、表面に光マネージメント機能を有してもよい。例えば、表面に、特開2003−123859号公報に記載の高屈折膜および低屈折率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜を有してもよく、特開2002−260746号公報に記載のライトガイド機能を有してもよい。
<感光体層>
感光体層は、上記色素21が担持された半導体微粒子22および電解質を有していれば、その他の構成は特に限定されない。好ましくは、上記感光体層2および上記感光体層42が挙げられる。
− 半導体微粒子(半導体微粒子が形成する層) −
半導体微粒子22は、好ましくは金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)またはペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の微粒子である。金属のカルコゲニドとしては、好ましくはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブもしくはタンタルの酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物としては、好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち酸化チタン(チタニア)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが特に好ましい。
チタニアの結晶構造としては、アナターゼ型、ブルッカイト型、またはルチル型が挙げられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。チタニアナノチューブ・ナノワイヤー・ナノロッドは、単独で、または、チタニア微粒子に混合して、用いることができる。
半導体微粒子22の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で1次粒子として0.001〜1μm、分散物の平均粒径として0.01〜100μmであることが好ましい。半導体微粒子22を導電性支持体1または41上に塗設する方法として、湿式法、乾式法、その他の方法が挙げられる。
半導体微粒子22は多くの色素21を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。例えば半導体微粒子22を導電性支持体1または41上に塗設した状態で、その表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。一般に、半導体微粒子22が形成する半導体層45(光電変換素子10においては感光体層2と同義)の厚みが大きいほど単位面積当たりに担持できる色素21の量が増えるため光の吸収効率が高くなるが、発生した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。
半導体層45(光電変換素子10においては感光体層2)の好ましい厚みは、光電変換素子の用途によって一義的なものではないが、典型的には0.1〜100μmである。色素増感太陽電池として用いる場合は、1〜50μmがより好ましく、3〜30μmがさらに好ましい。
半導体微粒子22は、導電性支持体1または41に塗布した後に、100〜800℃の温度で10分〜10時間焼成して、粒子同士を密着させることが好ましい。成膜温度は、導電性支持体1または基板44の材料としてガラスを用いる場合、60〜600℃が好ましい。
半導体微粒子22の、導電性支持体1または41の表面積1m当たりの塗布量は0.5〜500g、さらには5〜100gが好ましい。
導電性支持体1または41と感光体層2または42との間には、感光体層2または42が含む電解質と導電性支持体1または41が直接接触することによる逆電流を防止するため、短絡防止層を形成することが好ましい。
また、受光電極5または40と対極4または48の接触を防ぐために、スペーサーS(図2参照)やセパレータを用いることが好ましい。
− 色素 −
光電変換素子10および色素増感太陽電池20においては、増感色素として少なくとも1種の上記式(I)で表される金属錯体色素を使用する。式(I)で表される金属錯体色素は上記の通りである。
本発明において、上記式(I)の金属錯体色素と併用できる色素としては、Ru錯体色素、スクアリリウムシアニン色素、有機色素、ポルフィリン色素、フタロシアニン色素等が挙げられる。
Ru錯体色素としては、例えば、特表平7−500630号公報に記載のRu錯体色素(特に第5頁左下欄5行目〜第7頁右上欄7行目の例1〜例19で合成された色素)、特表2002−512729号公報に記載のRu錯体色素(特に第20頁の下から3行目〜第29頁23行目の例1〜例16で合成された色素)、特開2001−59062号公報に記載のRu錯体色素(特に、段落番号0087〜0104に記載の色素)、特開2001−6760号公報に記載のRu錯体色素(特に、段落番号0093〜0102に記載の色素)、特開2001−253894号公報に記載のRu錯体色素(特に、段落番号0009〜0010に記載の色素)、特開2003−212851号公報に記載のRu錯体色素(特に、段落番号0005に記載の色素)、国際公開第2007/91525号に記載のRu錯体色素(特に、[0067]に記載の色素)、特開2001−291534号公報に記載のRu錯体色素(特に、段落番号0120〜0144に記載の色素)、特開2012−012570号公報に記載のRu錯体色素(特に、段落番号0095〜0103に記載の色素)、特開2013−084594号公報に記載のRu金属錯体色素(特に、段落番号0072〜0081等に記載の色素)、国際公開第2013/088898号に記載のRu錯体色素(特に、[0286]〜[0293]に記載の色素)、または、国際公開第2013/47615号に記載のRu錯体色素(特に、[0078]〜[0082]に記載の色素)が挙げられる。
スクアリリウムシアニン色素としては、例えば、特開平11−214730号公報に記載のスクアリリウムシアニン色素(特に、段落番号0036〜0047に記載の色素)、特開2012−144688号公報に記載のスクアリリウムシアニン色素(特に、段落番号0039〜0046および段落番号0054〜0060に記載の色素)、または、特開2012−84503号公報に記載のスクアリリウムシアニン色素(特に、段落番号0066〜0076等に記載の色素)が挙げられる。
有機色素としては、例えば、特開2004−063274号公報に記載の有機色素(特に、段落番号0017〜0021に記載の色素)、特開2005−123033号公報に記載の有機色素(特に、段落番号0021〜0028に記載の色素)、特開2007−287694号公報に記載の有機色素(特に、段落番号0091〜0096に記載の色素)、特開2008−71648号公報に記載の有機色素(特に、段落番号0030〜0034に記載の色素)、または、国際公開第2007/119525号に記載の有機色素(特に、[0024]に記載の色素)が挙げられる。
ポルフィリン色素としては、例えば、Angew.Chem.Int.Ed.,49,p.1〜5(2010)等に記載のポルフィリン色素が挙げられ、フタロシアニン色素としては、例えば、Angew.Chem.Int.Ed.,46,p.8358(2007)等に記載のフタロシアニン色素が挙げられる。
併用できる色素としては、Ru錯体色素、スクアリリウムシアニン色素、または有機色素が好ましい。
色素の使用量は、全体で、導電性支持体1または41の表面積1m当たり0.01〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜10ミリモルである。また、色素21の半導体微粒子22に対する吸着量は1gの半導体微粒子22に対して0.001〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。このような色素量とすることによって、半導体微粒子22における増感効果が十分に得られる。
式(I)で表される金属錯体色素と他の色素を併用する場合、式(I)で表される金属錯体色素の質量/他の色素の質量の比は、95/5〜10/90が好ましく、95/5〜50/50がより好ましく、95/5〜60/40がさらに好ましく、95/5〜65/35が特に好ましく、95/5〜70/30が最も好ましい。
色素を半導体微粒子22に担持させた後に、アミン化合物を用いて半導体微粒子22の表面を処理してもよい。好ましいアミン化合物としてピリジン化合物(例えば4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン)等が挙げられる。これらは液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
− 共吸着剤 −
本発明においては、式(I)で表される金属錯体色素または必要により併用する色素とともに共吸着剤を使用することが好ましい。このような共吸着剤としては酸性基(好ましくは、カルボキシ基またはその塩)を1つ以上有する共吸着剤が好ましく、脂肪酸やステロイド骨格を有する化合物が挙げられる。
脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、例えば、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ヘキサデカン酸、ドデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
ステロイド骨格を有する化合物として、コール酸、グリココール酸、ケノデオキシコール酸、ヒオコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸等が挙げられる。好ましくはコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸であり、さらに好ましくはデオキシコール酸である。
好ましい共吸着剤は、下記式(CA)で表される化合物である。
Figure 0006300332
式中、RA1は酸性基を有する置換基を表す。RA2は置換基を表す。nAは0以上の整数を表す。
酸性基は、上記式(I)中の酸性基AncおよびAncと同義であり、好ましい範囲も同じである。
A1は、これらのなかでも、カルボキシ基もしくはスルホ基またはこれらの塩が置換したアルキル基が好ましく、−CH(CH)CHCHCOH、−CH(CH)CHCHCONHCHCHSOHがさらに好ましい。
A2としては、上記の置換基群Zから選ばれる基が挙げられる。なかでも、アルキル基、ヒドロキシ基、アシルオキシ基、アルキルアミノカルボニルオキシ基またはアリールアミノカルボニルオキシ基が好ましく、アルキル基、ヒドロキシ基またはアシルオキシ基がより好ましい。
nAは2〜4が好ましい。
上記共吸着剤は、半導体微粒子22に吸着させることにより、金属錯体色素の非効率な会合を抑制する効果および半導体微粒子表面から電解質中のレドックス系への逆電子移動を防止する効果がある。共吸着剤の使用量は、特に限定されないが、上記の作用を効果的に発現させる観点から、上記金属錯体色素1モルに対して、好ましくは1〜200モル、さらに好ましくは10〜150モル、特に好ましくは20〜50モルである。
− 光散乱層 −
本発明において、光散乱層は、入射光を散乱させる機能を有する点で、半導体層と異なる。
色素増感太陽電池20において、光散乱層46は、好ましくは、棒状または板状の金属酸化物粒子を含有する。光散乱層46に用いられる金属酸化物粒子は、例えば、上記金属のカルコゲニド(酸化物)の粒子が挙げられる。光散乱層46を設ける場合、光散乱層の厚みは感光体層42の厚みの10〜50%とすることが好ましい。
光散乱層46は、特開2002−289274号公報に記載されている光散乱層が好ましく、特開2002−289274号公報の記載が、そのまま本明細書に好ましく取り込まれる。
<電荷移動体層>
本発明の光電変換素子に用いられる電荷移動体層3および47は、色素21の酸化体に電子を補充する機能を有する層であり、受光電極5または40と対極4または48との間に設けられる。
電荷移動体層3および47は電解質を含む。ここで、「電荷移動体層が電解質を含む」とは、電荷移動体層が電解質のみからなる態様、および、電解質と電解質以外の物質を含有する態様の、両態様を含む意味である。
電荷移動体層3および47は、固体状、液体状、ゲル状またはこれら混合状態のいずれであってもよい。
− 電解質 −
電解質の例としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体電解質、酸化還元対を含有する溶融塩および酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリクスに含浸したいわゆるゲル電解質等が挙げられる。なかでも、液体電解質が光電変換効率の点で好ましい。
酸化還元対として、例えばヨウ素とヨウ化物(ヨウ化物塩、ヨウ化イオン性液体が好ましく、ヨウ化リチウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化メチルプロピルイミダゾリウムが好ましい)との組み合わせ、アルキルビオローゲン(例えばメチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲンテトラフルオロボレート)とその還元体との組み合わせ、ポリヒドロキシベンゼン(例えばハイドロキノン、ナフトハイドロキノン等)とその酸化体との組み合わせ、2価と3価の鉄錯体の組み合わせ(例えば赤血塩と黄血塩の組み合わせ)、2価と3価のコバルト錯体の組み合わせ等が挙げられる。これらのうち、ヨウ素とヨウ化物との組み合わせ、または2価と3価のコバルト錯体の組み合わせが好ましく、ヨウ素とヨウ化物との組み合わせが特に好ましい。
上記コバルト錯体は、特開2014−82189号公報の段落番号0144〜0156に記載の式(CC)で表される錯体が好ましく、特開2014−82189号公報の段落番号0144〜0156の記載が、そのまま本明細書に好ましく取り込まれる。
電解質として、ヨウ素とヨウ化物との組み合わせを用いる場合、5員環または6員環の含窒素芳香族カチオンのヨウ素塩をさらに併用するのが好ましい。
液体電解質およびゲル電解質に用いる有機溶媒としては、特に限定されないが、非プロトン性の極性溶媒(例えばアセトニトリル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチルイミダゾリノン、3−メチルオキサゾリジノン等)が好ましい。
特に、液体電解質に用いる有機溶媒としては、ニトリル化合物、エーテル化合物、エステル化合物等が好ましく、ニトリル化合物がより好ましく、アセトニトリル、メトキシプロピオニトリルが特に好ましい。
溶融塩としては、イミダゾリウムまたはトリアゾリウム型陽イオンを含むイオン性液体、オキサゾリウム型陽イオンを含むイオン性液体、ピリジニウム型陽イオンを含むイオン性液体、グアニジウム型陽イオンを含むイオン性液体およびこれらの組み合わせが好ましい。また、これら陽イオンに対して特定のアニオンを組み合わせてもよい。これらの溶融塩に対しては添加物を加えてもよい。溶融塩は液晶性の置換基を持っていてもよい。また、溶融塩として、四級アンモニウム塩の溶融塩を用いることもできる。
これら以外の溶融塩としては、例えば、ヨウ化リチウムと他の少なくとも1種類のリチウム塩(例えば酢酸リチウム、過塩素酸リチウム等)にポリエチレンオキシドを混合することにより、室温での流動性を付与したもの等が挙げられる。この場合のポリマーの添加量は1〜50質量%である。また、γ−ブチロラクトンを電解液に含んでいてもよく、これによりヨウ化物イオンの拡散効率が高くなり光電変換効率が向上する。
ゲル電解質のマトリクスに使用されるポリマー(ポリマーマトリクス)としては、例えばポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオリド等が挙げられる。
電解質と溶媒からなる電解液にゲル化剤を添加してゲル化させることにより、電解質を擬固体化してもよい(擬固体化された電解質を、以下、「擬固体電解質」ともいう。)。ゲル化剤としては、分子量1000以下の有機化合物、分子量500〜5000の範囲のSi含有化合物、特定の酸性化合物と塩基性化合物からできる有機塩、ソルビトール誘導体、ポリビニルピリジンが挙げられる。
また、ポリマーマトリクス、架橋型高分子化合物またはモノマー、架橋剤、電解質および溶媒を高分子中に閉じ込める方法を用いてもよい。
ポリマーマトリクスとして好ましくは、含窒素複素環を主鎖または側鎖の繰り返し単位中に持つ高分子およびこれらを求電子性化合物と反応させた架橋体、トリアジン構造を持つ高分子、ウレイド構造を持つ高分子、液晶性化合物を含むもの、エーテル結合を有する高分子、ポリフッ化ビニリデン、メタクリレート、アクリレート、熱硬化性樹脂、架橋ポリシロキサン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアルキレングリコールとデキストリン等の包接化合物、含酸素または含硫黄高分子を添加した系、天然高分子等が挙げられる。これらにアルカリ膨潤型高分子、一つの高分子内にカチオン部位とヨウ素との電荷移動錯体を形成できる化合物を持った高分子等を添加してもよい。
ポリマーマトリクスとして、2官能以上のイソシアネート基と、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基等の官能基とを反応させた架橋ポリマーを含む系を用いてもよい。また、ヒドロシリル基と二重結合性化合物による架橋高分子、ポリスルホン酸またはポリカルボン酸等を2価以上の金属イオン化合物と反応させる架橋方法等を用いてもよい。
上記擬固体電解質との組み合わせで好ましく用いることができる溶媒としては、特定のリン酸エステル、エチレンカーボネートを含む混合溶媒、特定の比誘電率を持つ溶媒等が挙げられる。固体電解質膜あるいは細孔に液体電解質溶液を保持させてもよい。液体電解質溶液を保持させる方法として好ましくは、導電性高分子膜、繊維状固体、フィルタ等の布状固体を使用する方法が挙げられる。
電解質は、添加物として、4−t−ブチルピリジン等のピリジン化合物のほか、アミノピリジン化合物、ベンズイミダゾール化合物、アミノトリアゾール化合物およびアミノチアゾール化合物、イミダゾール化合物、アミノトリアジン化合物、尿素化合物、アミド化合物、ピリミジン化合物または窒素を含まない複素環を含有していてもよい。
また、光電変換効率を向上させるために、電解液の水分を制御する方法をとってもよい。水分を制御する好ましい方法としては、濃度を制御する方法や脱水剤を共存させる方法を挙げることができる。電解液の水分含有量(含有率)を0〜0.1質量%に調整することが好ましい。
ヨウ素は、ヨウ素とシクロデキストリンとの包接化合物として使用することもできる。また環状アミジンを用いてもよく、酸化防止剤、加水分解防止剤、分解防止剤、ヨウ化亜鉛を加えてもよい。
以上の液体電解質および擬固体電解質の代わりに、p型半導体あるいはホール輸送材料等の固体電荷輸送層、例えば、CuI、CuNCS等を用いることができる。また、Nature,vol.486,p.487(2012)等に記載の電解質を用いてもよい。固体電荷輸送層として有機ホール輸送材料を用いてもよい。有機ホール輸送材料としては、好ましくは、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリシラン等の導電性高分子および2個の環がC、Siなど四面体構造をとる中心元素を共有するスピロ化合物、トリアリールアミン等の芳香族アミン誘導体、トリフェニレン誘導体、含窒素複素環誘導体、液晶性シアノ誘導体が挙げられる。
酸化還元対は、電子のキャリアになるので、ある程度の濃度で含有するのが好ましい。好ましい濃度としては合計で0.01モル/L以上であり、より好ましくは0.1モル/L以上であり、特に好ましくは0.3モル/L以上である。この場合の上限は特に制限はないが、通常5モル/L程度である。
<対極>
対極4および48は、色素増感太陽電池の正極として働くものであることが好ましい。対極4および48は、通常、上記導電性支持体1または41と同じ構成とすることもできるが、強度が十分に保たれるような構成では基板44は必ずしも必要でない。対極4および48の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。感光体層2および42に光が到達するためには、上記導電性支持体1または41と対極4または48との少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の色素増感太陽電池においては、導電性支持体1または41が透明であって太陽光を導電性支持体1または41側から入射させるのが好ましい。この場合、対極4および48は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。色素増感太陽電池の対極4および48としては、金属もしくは導電性の酸化物を蒸着したガラスまたはプラスチックが好ましく、白金を蒸着したガラスが特に好ましい。色素増感太陽電池では、構成物の蒸散を防止するために、電池の側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。
本発明は、例えば、特許第4260494号公報、特開2004−146425号公報、特開2000−340269号公報、特開2002−289274号公報、特開2004−152613号公報、特開平9−27352号公報に記載の光電変換素子、色素増感太陽電池に適用することができる。また、特開2004−152613号公報、特開2000−90989号公報、特開2003−217688号公報、特開2002−367686号公報、特開2003−323818号公報、特開2001−43907号公報、特開2000−340269号公報、特開2005−85500号公報、特開2004−273272号公報、特開2000−323190号公報、特開2000−228234号公報、特開2001−266963号公報、特開2001−185244号公報、特表2001−525108号公報、特開2001−203377号公報、特開2000−100483号公報、特開2001−210390号公報、特開2002−280587号公報、特開2001−273937号公報、特開2000−285977号公報、特開2001−320068号公報に記載の光電変換素子、色素増感太陽電池に適用することができる。
[光電変換素子および色素増感太陽電池の製造方法]
本発明の光電変換素子および色素増感太陽電池は、本発明の金属錯体色素および溶媒を含有する色素溶液(本発明の色素溶液)を用いて、製造することが好ましい。
このような色素溶液には、本発明の金属錯体色素が溶媒に溶解されてなり、必要により共吸着剤や他の成分を含んでもよい。
使用する溶媒としては、特開2001−291534号公報に記載の溶媒を挙げることができるが、特にこれに限定されない。本発明においては有機溶媒が好ましく、さらにアルコール溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒、炭化水素溶媒、および、これらの2種以上の混合溶媒がより好ましい。混合溶媒としては、アルコール溶媒と、アミド溶媒、ニトリル溶媒または炭化水素溶媒から選ばれる溶媒との混合溶媒が好ましい。さらに好ましくはアルコール溶媒とアミド溶媒の混合溶媒、アルコール溶媒と炭化水素溶媒の混合溶媒、アルコール溶媒とニトリル溶媒の混合溶媒であり、特に好ましくはアルコール溶媒とアミド溶媒の混合溶媒、アルコール溶媒とニトリル溶媒の混合溶媒である。具体的にはメタノール、エタノール、プロパノールおよびt−ブタノールの少なくとも1種と、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドの少なくとも1種との混合溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールおよびt−ブタノールの少なくとも1種と、アセトニトリルとの混合溶媒が好ましい。
色素溶液は共吸着剤を含有することが好ましく、共吸着剤としては、上記の共吸着剤が好ましく、なかでも上記式(CA)で表される化合物が好ましい。
ここで、本発明の色素溶液は、光電変換素子や色素増感太陽電池を製造する際に、この溶液をこのまま使用できるように、金属錯体色素や共吸着剤の濃度が調整されている色素溶液が好ましい。本発明においては、本発明の色素溶液は、本発明の金属錯体色素を0.001〜0.1質量%含有することが好ましい。共吸着剤の使用量は上記した通りである。
色素溶液は、水分含有量を調整することが好ましく、本発明では水分含有量を0〜0.1質量%に調整することが好ましい。
本発明においては、上記色素溶液を用いて、半導体微粒子表面に式(I)で表される金属錯体色素またはこれを含む色素を担持させることにより、感光体層を作製することが好ましい。すなわち、感光体層は、導電性支持体上に設けた半導体微粒子に上記色素溶液を塗布(ディップ法を含む)し、乾燥または硬化させて、形成することが好ましい。
このようにして作製した感光体層を備えた受光電極に、さらに電荷移動体層や対極等を設ける(組み立てる)ことで、本発明の光電変換素子または色素増感太陽電池を得ることができる。
色素増感太陽電池は、上記のようにして作製した光電変換素子の導電性支持体1および対極4に外部回路6を接続して、製造される。
以下に実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
以下に、本発明の金属錯体色素の合成方法を詳しく説明する。
本明細書において、室温とは25℃を意味する。また、Etはエチルを表し、pinはピナコリル基を表し、TfOHはトリフルオロメタンスルホン酸を表す。
実施例1において合成した金属錯体色素を、MSI−MSにより、同定した。
実施例1(金属錯体色素の合成)
本実施例で、合成した金属錯体色素D−1〜D−10を以下に示す。
Figure 0006300332
(金属錯体色素(D−1)の合成)
以下のスキームに従って、金属錯体色素(D−1)を合成した。
Figure 0006300332
(i)化合物(2)の合成
European Journal of Organic Chemistry, 2011,#28 p.5587−5598に記載の方法に準拠して、化合物(2)を合成した。
(ii)化合物(4)の合成
化合物(2)2g、トルエン20mLを三つ口フラスコに入れ、減圧および窒素ガス置換を施した。そこへ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.356gと、ヘキサメチル二スズ2.0gを加え、混合物を加熱還流することにより、3時間反応させた。得られた反応液を、室温まで放冷し、セライトろ過により不溶物を除去し、さらに濃縮した。
濃縮残渣にトルエン20mLと化合物(3)2.3gを加え、得られた混合液を減圧および窒素ガス置換した。そこへ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.356gを加え、得られた混合物を加熱還流することにより、6時間反応させた。得られた反応液を、放冷し、セライトろ過により不溶物を除去し、濃縮して、粗体を得た。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで化合物(4)を1.3g得た。
(iii)化合物(5)の合成
化合物(4)1.3g、RuCl・xHO 0.65g、エタノール80mLをナスフラスコに入れ、外温95℃にて5時間加熱攪拌した。得られた反応液を室温に戻し、ろ過、乾燥することで化合物(5)を1.3g得た。
(iv)化合物(7)の合成
化合物(5)1.3gと、化合物(6)0.66gと、トリエチルアミン0.97mLと、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)25mLを、ナスフラスコに入れ、外温125℃にて2時間加熱攪拌した。得られた反応液を室温に戻した後、減圧濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物(7)0.9gを得た。
(v)化合物(8)の合成
化合物(7)0.9g、NHSCN 0.65gと、N,N−ジメチルホルムアミド45mLと、蒸留水10mLとを、ナスフラスコに入れ、外温100℃にて6時間加熱攪拌した。得られた反応液を室温に戻して減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物(8)を0.5g得た。
(vi)金属錯体色素(D−1)の合成
化合物(8)0.30g、N,N−ジメチルホルムアミド5mL、1NのNaOH水溶液3mLをナスフラスコに入れ、1.5時間加熱攪拌した。その後、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)のメタノール溶液で酸性に調整した。析出した結晶をろ取し、超純水で洗浄した後に、乾燥して、金属錯体色素(D−1)を0.23g得た。
金属錯体色素(D−1)の合成と同様にして、上記金属錯体色素(D−2)〜(D−10)をそれぞれ合成した。
合成した金属錯体色素(D−1)〜(D−10)は下記表1のデータから確認された。
Figure 0006300332
実施例2(色素増感太陽電池の製造)
実施例1で合成した金属錯体色素(D−1)〜(D−10)または下記比較化合物(C−1)〜(C−3)それぞれを用いて、図2に示す色素増感太陽電池20(5mm×5mmのスケール)を製造した。製造は、以下に示す手順により、行った。製造した色素増感太陽電池20それぞれの下記性能を評価した。その結果を表2に示した。
(受光電極前駆体の作製)
ガラス基板(基板44、厚み4mm)上にフッ素ドープされたSnO導電膜(透明導電膜43、膜厚;500nm)を形成し、導電性支持体41を作製した。そして、このSnO導電膜上に、チタニアペースト「18NR−T」(DyeSol社製)をスクリーン印刷し、120℃で乾燥させた。次いで、チタニアペースト「18NR−T」を再度スクリーン印刷し、120℃で1時間乾燥させた。その後、乾燥させたチタニアペーストを、空気中、500℃で焼成し、半導体層45(層厚;10μm)を成膜した。さらに、この半導体層45上に、チタニアペースト「18NR−AO」(DyeSol社製)をスクリーン印刷し、120℃で1時間乾燥させた。その後、乾燥させたチタニアペーストを500℃で焼成し、半導体層45上に光散乱層46(層厚;5μm)を成膜した。
このようにして、SnO導電膜上に、感光体層42(受光面の面積;5mm×5mm、層厚;15μm、金属錯体色素は未担持)を形成し、金属錯体色素を担持していない受光電極前駆体を作製した。
(色素吸着)
次に、金属錯体色素を担持していない感光体層42に実施例1で合成した各金属錯体色素(D−1)〜(D−10)を以下のようにして担持させた。先ず、t−ブタノールとアセトニトリルとの1:1(体積比)の混合溶媒に、上記金属錯体色素それぞれを濃度が2×10−4モル/Lとなるように溶解し、さらにそこへ共吸着剤としてデオキシコール酸を上記金属錯体色素1モルに対して30モル加え、各色素溶液を調製した。次に、各色素溶液に受光電極前駆体を25℃で45時間浸漬し、色素溶液から引き上げた後に乾燥させた。
このようにして、受光電極前駆体に各金属錯体色素が担持した受光電極40をそれぞれ作製した。
(色素増感太陽電池の組み立て)
対極48として、上記の導電性支持体41と同様の形状と大きさを有する白金電極(Pt薄膜の厚み;100nm)を作製した。また、電解液として、ヨウ素0.1M(モル/L)、ヨウ化リチウム0.1M、4−t−ブチルピリジン0.5Mおよび1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド0.6Mをアセトニトリルに溶解して、液体電解質を調製した。さらに、感光体層42の大きさに合わせた形状を有するスペーサーS「サーリン」(商品名、デュポン社製)を準備した。
上記のようにして作製した受光電極40それぞれと対極48とを、上記スペーサーSを介して、対向させて熱圧着させた後に、感光体層42と対極48との間に電解液注入口から上記液体電解質を充填して電荷移動体層47を形成した。このようにして作製した電池の外周および電解液注入口を、レジンXNR−5516(ナガセケムテック製)を用いて、封止、硬化し、各色素増感太陽電池(試料番号1〜10)を製造した。
比較のため、上記色素増感太陽電池の製造において、実施例1で合成した金属錯体色素に代えて下記金属錯体色素(C−1)〜(C−3)のいずれかを用いた以外は、上記色素増感太陽電池の製造と同様にして、色素増感太陽電池(試料番号c1〜c3)を製造した。
金属錯体色素(C−1)は特許文献1に記載の化合物「A−4」である。金属錯体色素(C−2)は特許文献2に記載の化合物「D−9」である。金属錯体色素(C−3)は特許文献1の段落[0042]に記載の化合物である。
Figure 0006300332
<光電変換効率の評価>
製造した色素増感太陽電池それぞれを用いて電池特性試験を行った。電池特性試験は、ソーラーシミュレーター(WXS−85H、WACOM社製)を用い、AM1.5フィルタを通したキセノンランプから1000W/mの擬似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、光電変換効率を求めた。
製造した色素増感太陽電池(試料番号1〜10およびc1〜c3)それぞれについて、上記のようにして、光電変換効率を測定した。測定した光電変換効率を評価した。評価は、色素増感太陽電池(試料番号c2)の光電変換効率(Sc2)を、基準とした。
光電変換効率の評価基準において、「A」および「B」が本試験の合格レベルであり、好ましくは「A」である。一方、「C」は光電変換効率が不十分であり、本発明の合格レベル(要求レベル)に到達しない。
(光電変換効率の評価基準)
光電変換効率が光電変換効率(Sc2)に対して、
A:1.1倍より大きいもの
B:1.0倍より大きく、1.1倍以下のもの
C:1.0倍以下のもの
<耐久性の評価>
色素増感太陽電池(試料番号1〜10およびc1〜c3)それぞれを、40℃の恒温槽に入れて、耐熱試験を行った。耐熱試験前の色素増感太陽電池および耐熱試験20時間後の色素増感太陽電池それぞれについて、上記のようにして、光電変換効率を測定した。耐熱試験20時間後の光電変換効率の減少分を、耐熱試験前の光電変換効率で割った値を熱劣化比とした。この熱劣化比を指標として耐久性を評価した。評価は、色素増感太陽電池(試料番号c1)の熱劣化比(S c1)を基準とした。
耐久性の評価基準において、「A」および「B」が本試験の合格レベルであり、好ましくは「A」である。一方、「C」は熱劣化比が大きく、本発明の合格レベル(要求レベル)に到達しない。
(耐久性の評価基準)
熱劣化比が熱劣化比(S c1)に対して、
A:0.9倍未満のもの
B:0.9倍以上1.0倍未満のもの
C:1.0倍以上のもの
Figure 0006300332
表2に示す結果から、以下のことが分かる。
試料番号1〜10(本発明)においては、いずれも、配位子として、上記ターピリジン系配位子と、配位子L、LおよびLとを組み合わせた金属錯体色素(D−1〜D−10)を用いた。これらの金属錯体色素(D−1〜D−10)が半導体微粒子に担持された本発明の光電変換素子および色素増感太陽電池(試料番号1〜10)は、いずれも、光電変換効率および耐久性がともに高かった。
さらに、本発明の金属錯体色素は、本発明の光電変換素子および色素増感太陽電池の増感色素として好適に用いることができた。本発明の金属錯体色素と溶媒とを含有する本発明の色素溶液は、本発明の金属錯体色素を(DL)担持した半導体微粒子の調製に好適に用いることができた。
これに対して、試料番号c1においては、配位子L、LおよびLを有しない金属錯体色素を用いた。この光電変換素子および色素増感太陽電池は、光電変換効率および耐久性が合格レベルに到達しなかった。
また、試料番号c2においては、上記ターピリジン系配位子を有しない金属錯体色素を用いた。この光電変換素子および色素増感太陽電池は、光電変換効率が合格レベルに到達しなかった。
さらに、試料番号c3においては、L〜Lのうちアニオン性配位子(NCS)を1つしか有しない金属錯体色素を用いた。この光電変換素子および色素増感太陽電池は、光電変換効率および耐久性がともに合格レベルに到達しなかった。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
本願は、2014年9月29日に日本国で特許出願された特願2014−199253に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
1、41 導電性支持体
2、42 感光体層
21 色素
22 半導体微粒子
3、47 電荷移動体層
4、48 対極
5、40 受光電極
6 外部回路
10 光電変換素子
100 光電変換素子を電池用途に応用したシステム
M 動作手段(例えば電動モーター)
20 色素増感太陽電池
43 透明導電膜
44 基板
45 半導体層
46 光散乱層
S スペーサー

Claims (10)

  1. 導電性支持体と、電解質を含む感光体層と、電解質を含む電荷移動体層と、対極とを有する光電変換素子であって、該感光体層が、下記式(I)で表される金属錯体色素が担持された半導体微粒子を有する光電変換素子。
    Figure 0006300332
    式中、AncおよびAncは各々独立に酸性基を表す。
    Mは金属イオンを表す。
    は、−CH=または−N=を表す。
    Arは、下記式(X−1)もしくは式(X−2)で表される単環の環基、または、下記式(X−1a)〜式(X−3a)のいずれかの式で表される単環の環基を縮合環として含む多環の環基を表す。
    〜Lは配位子を表す。ただし、L〜Lのうちの2つがアニオン性配位子を表し、L〜Lのうちの少なくとも1つが環を構成する窒素原子で前記Mに配位する配位子を表す。L〜Lのうち、LとLとが互いに結合してなる2座配位子であるか、または、LとLとLとが互いに結合してなる3座配位子である。
    Figure 0006300332
    式中、Aは、各々独立に、−O−、−S−または−NR−を表す。Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
    X1〜RX6は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シリル基、シアノ基またはヒドロキシ基を表す。RXaは、各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シリル基、シアノ基またはヒドロキシ基を表す。n1〜n3は、各々独立に、0以上の整数であり、かつ上記各多環の環基が無置換であるときの水素原子数以下の整数を表す。
    *は、Xを含む環との結合位置を表す。
  2. 前記2座配位子が、下記式(2L−1)〜(2L−4)のいずれかの式で表される請求項1に記載の光電変換素子。
    Figure 0006300332
    式中、環D2Lは芳香族環を表す。A111〜A141は各々独立に窒素原子のアニオンまたは炭素原子のアニオンを表す。R111〜R143は各々独立に水素原子、または、前記酸性基を有しない置換基を表す。*は前記金属イオンMへの配位位置を表す。
  3. 前記3座配位子が、下記式(3L−1)〜(3L−4)のいずれかの式で表される請求項1に記載の光電変換素子。
    Figure 0006300332
    式中、環D2Lは芳香族環を表す。A211〜A242は各々独立に窒素原子のアニオンまたは炭素原子のアニオンを表す。R211〜R241は各々独立に水素原子、または、前記酸性基を有しない置換基を表す。*は前記金属イオンMへの配位位置を表す。
  4. 前記Arが、前記式(X−1)で表される単環の環基、または、式(X−1a)もしくは式(X−3a)で表される単環の環基を縮合環として含む多環の環基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  5. 前記Aが、−O−または−S−である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  6. 前記Mが、Ru2+またはOs2+である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  7. 前記酸性基が、カルボキシ基またはその塩である請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子を備えた色素増感太陽電池。
  9. 下記式(I)で表される金属錯体色素。
    Figure 0006300332
    式中、AncおよびAncは各々独立に酸性基を表す。
    Mは金属イオンを表す。
    は、−CH=または−N=を表す。
    Arは、下記式(X−1)もしくは式(X−2)で表される単環の環基、または、下記式(X−1a)〜式(X−3a)のいずれかの式で表される単環の環基を縮合環として含む多環の環基を表す。
    〜Lは配位子を表す。ただし、L〜Lのうちの2つがアニオン性配位子を表し、L〜Lのうちの少なくとも1つが環を構成する窒素原子で前記Mに配位する配位子を表す。L〜Lのうち、LとLとが互いに結合してなる2座配位子であるか、または、LとLとLとが互いに結合してなる3座配位子である。
    Figure 0006300332
    式中、Aは、各々独立に、−O−、−S−または−NR−を表す。Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
    X1〜RX6は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シリル基、シアノ基またはヒドロキシ基を表す。RXaは、各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シリル基、シアノ基またはヒドロキシ基を表す。n1〜n3は、各々独立に、0以上の整数であり、かつ上記各多環の環基が無置換であるときの水素原子数以下の整数を表す。
    *は、Xを含む環との結合位置を表す。
  10. 請求項9に記載の金属錯体色素と溶媒とを含有する色素溶液。
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