JP6024523B2 - 鋳片の温度分布測定方法 - Google Patents
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Description
この方法は、鋳片幅方向の温度分布を計測できることが前提となっているが、実際に、正確な鋳片の幅方向の温度分布を得るには解決すべき課題が存在し、その課題の一つを解決する方法が特許文献2に記されている。
なお、特許文献2には、単に、鋳片の表面温度を計測すると記されているだけで、鋳片の幅方向の温度分布を計測する旨の記載はない。
一般的に、一つの連続鋳造機において、幅の異なる鋳片が連続鋳造されるので、鋳片幅方向の端部の位置は一定ではなく、鋳片幅方向の端部の位置は、鋳片ごとに特定する必要がある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、鋳片の幅方向端部の位置を特定して、鋳片幅方向の温度分布を得る鋳片の温度分布測定方法を提供することを目的とする。
従って、温度測定装置により、鋳片の長辺表面及び短辺表面を捉えた上で、鋳片表面の温度特性から確実に鋳片の幅方向端部を特定でき、その結果、鋳片の長辺表面の幅方向の温度分布を安定的に得ることが可能である。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る鋳片の温度分布測定方法が適用される鋳片10は、断面が矩形であり、本実施の形態では、幅(長辺の長さ)が800〜1700mm、厚み(短辺の長さ)が200〜300mmである。
鋳片10の長辺表面の温度分布を計測するにあたっては、その計測結果が正確であるか否かが温度測定装置11の配置により左右されることが、論理的検証及び実験的検証によって確認されている。なお、ここでいう”正確”とは、計測された鋳片10の長辺表面の温度分布を基にすることで、鋳片10の長辺表面の割れが確認でき、更に、鋳片10の長辺表面の割れを防止する制御が行える範囲で、計測誤差が収められていることを意味する。
鋳片10の厚み方向の異なる位置において、温度計測についての環境が同じであれば、鋳片10と温度測定装置11の距離が長くなることにより温度測定装置11の計測精度が低下し、反対に、その距離が短くなることにより温度測定装置11の計測精度が上がる。従って、単純に鋳片10と温度測定装置11の距離のみに着目すると、温度測定装置11を鋳片10に近づけることで温度測定装置11の計測精度が上がることになる。
なお、鋳片10の厚み方向における温度測定装置11と鋳片10の距離が4mを超えると、温度測定装置11の設置角度の僅かなずれが、温度測定装置11の計測範囲内に鋳片10全体の温度情報を捉えられない事象を招き得ることも確認している。
そして、この水蒸気は、鋳片10に近い位置で多く存在しているので、水蒸気の影響による計測精度の低下を防止する観点からすると、温度測定装置11は、鋳片10から遠ざけるのが好ましいといえ、検証の結果、鋳片10の厚み方向における温度測定装置11と鋳片10の距離は1m以上にすべきことが確認された。
鋳片10の短辺表面は鋳片10の幅方向外側に膨らんでいることから、たとえ、鋳片10の幅方向において、温度測定装置11を鋳片10と同じ位置(鋳片10の短辺と長辺が接するエッジ部)に配置しても、温度測定装置11は、鋳片10の長辺表面に加えて、鋳片10の短辺表面も捉えることが種々の検証によって確認された。そのため、温度測定装置11の計測により得られた温度分布(以下、「温度分布T」ともいう)には、鋳片10の短辺表面の温度も含まれていることを前提にして、温度分布Tの中で鋳片10の長辺表面にあたる部分を特定する必要があり、鋳片10の幅方向において温度測定装置11を鋳片10に近づけ過ぎると、鋳片10の長辺表面を安定的に特定できないことが判明した。
そして、検証の結果、鋳片10の厚み方向の温度測定装置11と鋳片10の距離を1〜4mとする前提では、鋳片10の幅方向の温度測定装置11と鋳片10(の短辺表面)の最短距離は400mmにすべきことが確認された。その詳しい理由については後述する。
検証の結果、鋳片10の厚み方向の温度測定装置11と鋳片10の距離を1〜4mとする条件においては、鋳片10の幅方向における温度測定装置11と鋳片10の距離が1400mmを超えると、必要とする計測精度を確保できないことが確認された。
また、所定の設置位置を決定するにあたっては、温度測定装置11として考えられるCCDカメラや放射温度計等、複数種の温度計を用い、これら全てについて、正確な温度分布が得られることを確認した。
以下、このことを前提にして、鋳片10の長辺表面について鋳片10の幅方向の温度分布を得る鋳片の温度分布測定方法について説明する。
温度測定装置11に走査型放射温度計を用いる場合、温度測定装置11を鋳片10の幅方向に走査することで、温度分布Tを得ることができる。また、温度測定装置11にCCDカメラを用いる場合、温度測定装置11の計測によって得られた平面状の温度分布から、鋳片10の長さ方向の特定の位置の温度を取得することによって、鋳片10の幅方向に沿った温度分布Tを得ることが可能である。
そして、図2に示すように、鋳片10の短辺表面の温度は、鋳片10の厚み方向において、両端部から中央部に向かって温度が高くなり、鋳片10の長辺表面の温度も、鋳片10の幅方向において、両端部から中央部に向かって温度が高くなっている。更に、鋳片10の短辺表面の最高温度は、鋳片10の短辺表面の両端部(鋳片10の長辺表面の端部でもある)に比べ、少なくとも70℃高いことが確認されている。
これらを考慮して、温度分布Tから、鋳片10の短辺と長辺が接する鋳片10の幅方向端部(エッジ部)の位置を特定するロジックを確立した。
温度分布Tを得た後に、いかにして鋳片10の幅方向端部を特定するかを記すことにより、このロジックについての説明も行う。なお、本実施の形態では、このロジックを用いた鋳片10の幅方向端部の特定が、ソフトウェアを搭載したコンピュータによって行われる。
600℃を超えるとしたのは、温度分布Tにおいて一側のバックグランドに対応する部分に山状の温度領域があった場合に、これを温度領域Aと誤認しないためである。また、鋳片10の短辺表面の最高温度が約800℃であることから、800℃より200℃低い600℃を閾値とすることにより、温度領域Aを確実に検索可能にしている。
そして、そのためには、温度測定装置11の計測部12と鋳片10の距離が鋳片10の厚み方向において1〜4mの範囲に保たれていることを前提にすると、鋳片10の幅方向において計測部12を鋳片10から400mm以上離すことが必要であることが確認された。これは、温度測定装置11の計測部12を、鋳片10の幅方向で鋳片10に近づけ過ぎると、鋳片10の短辺表面のバルジングの影響により、鋳片10の短辺表面の鋳片10の厚み方向両端部の一方を温度測定装置11の計測部12が捉えられないことがあるためである。
温度領域Aの最高温度より50℃以上低温とすることにより、温度分布B以外の谷状の温度領域を温度領域Bとして判定するのを回避している。そして、鋳片10の短辺表面が鋳片10の厚み方向において両端部から中央部に向かって高温になることを考慮し、温度領域Aに比べて温度測定装置11から遠く、かつ、温度領域Aに最も近いという条件を入れて、確実に温度領域Bを特定できるようにしている。
なお、鋳片10の幅方向の他側の端部の位置を特定する方法は特に限定されない。例えば、鋳片10の幅方向他側の端部位置の特定は、温度測定装置11が走査型放射温度計であるときは、隣り合う温度計測点の温度差が80℃以上であることを判定基準にしてもよいし、あるいは、温度測定装置11の種類によらず、600℃以上の温度から急激に温度が低下していることを判定基準にすることもできる。
また、温度測定装置11にCCDカメラを用いた場合は、走査型放射温度計に比べて、実際の温度分布との差異が大きく、実際の温度分布に対して±20℃のバラつきがあったことが認められたが、これは、連続鋳造における鋳片10の温度管理において問題のないレベルであった。
図3、図4(A)、(B)はそれぞれ、測定波長が0.5〜2.0μmの走査型放射温度計の計測によって得た温度分布であり、縦軸は温度、横軸は各温度計測点の位置を示している。横軸に記された番号が大きいほど、温度計測点が、鋳片の幅方向において走査型放射温度計から遠いことを意味する。
これに対し、図4(A)、(B)は、所定の設置位置の範囲外に走査型放射温度計の計側部を配置して計測した温度分布である。具体的には、図4(A)は、鋳片の幅方向において計測部と鋳片の距離を100mmとした際の温度分布であり、図4(B)は、同距離を1500mmとした温度分布である。なお、図4(A)、(B)の温度分布は、いずれも鋳片の厚み方向における走査型放射温度計の計測部と鋳片の距離が2mである。
従って、本発明の鋳片の温度分布測定方法を採用することによって、鋳片の幅方向端部の位置が特定可能であることが確認できた。
従って、走査型放射温度計の計測部を、鋳片の幅方向において鋳片に近づけ過ぎると、鋳片の幅方向端部位置を特定できないことが分かる。
例えば、鋳片は、幅が800〜1700mm、厚みが200〜300mmの大きさに限定されない。
Claims (2)
- 連続鋳造中の鋳片表面の幅方向の温度分布を計測する鋳片の温度分布測定方法において、
前記鋳片までの距離が、該鋳片の厚み方向に1〜4m、かつ、該鋳片の幅方向に400〜1400mmとなる位置に、温度測定装置の計測部を配置し、
前記温度測定装置の計測によって得た前記鋳片の幅方向に沿った温度分布Tの中で、最高温度が600℃を超える山状で前記温度測定装置に最も近い温度領域Aを検索し、
前記温度分布Tの中で、前記温度領域Aに比べて前記温度測定装置から遠く、前記温度領域Aに最も近い谷状で、最低温度が前記温度領域Aの最高温度より50℃以上低い温度領域Bを特定し、
前記温度領域Bの最低温度の位置に前記鋳片の幅方向端部が位置していると定めることを特徴とする鋳片の温度分布測定方法。 - 請求項1記載の鋳片の温度分布測定方法において、前記温度測定装置は、測定波長が0.5〜2.0μmの走査型放射温度計であることを特徴とする鋳片の温度分布測定方法。
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