以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を示した図である。
この画像形成装置は、例えば電子写真方式にて各色トナー像を形成する複数(本実施の形態では4つ)の画像形成ユニット10(具体的には10Y、10M、10C、10K)と、画像形成ユニット10で形成された各色トナー像を転写(一次転写)して保持させる中間転写ベルト20と、中間転写ベルト20に一次転写された重ねトナー像を用紙に二次転写する二次転写装置30と、二次転写された画像を用紙上に定着させる定着装置50と、画像形成装置を構成する各部の動作を制御する制御装置100とを有している。
各画像形成ユニット10すなわちイエロー(Y)の画像形成ユニット10Y、マゼンタ(M)の画像形成ユニット10M、シアン(C)の画像形成ユニット10Cおよび黒(K)の画像形成ユニット10Kは、使用されるトナーの色を除き、共通の構成を有している。そこで、イエローの画像形成ユニット10Yを例に説明を行う。
イエローの画像形成ユニット10Yは、矢印A方向に回転可能に設けられた感光体ドラム11を具備している。また、イエローの画像形成ユニット10Yは、この感光体ドラム11の周囲に図中時計回り方向に設けられた、帯電ロール12、露光部13、現像器14、一次転写ロール15およびドラムクリーナ16を有している。
本実施の形態において、像保持体の一例としての感光体ドラム11は、金属製の薄肉の円筒形ドラムの表面に有機感光層(図示せず)を形成してなり、ここでは有機感光層が負極性に帯電する材料で構成されている。また、感光体ドラム11は接地されている。
接触帯電手段の一例としての帯電ロール12は、感光体ドラム11に接触して回転可能に配置されており、感光体ドラム11の回転に従動して回転する。また、帯電ロール12には、感光体ドラム11を負の電位に帯電するための帯電バイアスが印加される。ここで、帯電ロール12の表面は、多くの孔が形成された発泡ポリウレタンからなるスポンジ材で構成されている。
露光手段の一例としての露光部13は、帯電ロール12によって負の電位に帯電された感光体ドラム11に、レーザ光等を用いて選択的に光書き込みを行うことで静電潜像を形成する。ここで、本実施の形態の露光部13は、トナー像(画像)となる部位(画像部)に対して光を照射し、背景となる部位(背景部)に対しては光を照射しない、所謂画像部露光方式にて露光を行う。なお、露光部13における光源としては、レーザ光源以外に、LED(Light Emitting Diode)光源を用いることも可能である。
現像手段の一例としての現像器14は、感光体ドラム11に対向して回転可能に配置される現像ロール14aを備えており、その内部には、対応する色のトナー(イエローの画像形成ユニット10Yではイエローのトナー)を含む現像剤を収容している。ここで、本実施の形態の現像器14では、現像剤として、磁性を有するキャリアと、予め決められた色(イエローの画像形成ユニット10Yの場合はイエロー)に着色されたトナーとを含む、所謂2成分現像剤を用いている。また、この現像剤において、キャリアは正の帯電極性を有しており、トナーは負の帯電極性を有している。現像ロール14aは磁石(図示せず)を内蔵しており、静電気力によってトナーを付着させたキャリアすなわち現像剤を、磁力によって現像ロール14aの表面に保持する。現像器14では、現像ロール14a上に保持させた現像剤(トナー)によって、感光体ドラム11上の静電潜像を現像する。この現像器14は、現像ロール14aを負の電位とするための現像バイアスを供給することで、静電潜像のうち負極性に帯電している画像部に、負極性に帯電したトナーを転移させる、所謂反転現像方式にて現像を行う。
一次転写ロール15は、中間転写ベルト20を挟んで感光体ドラム11に対向するとともに、中間転写ベルト20に接触して配置され、中間転写ベルト20の回転に従動して回転する。そして、一次転写ロール15には、トナーの帯電極性とは逆極性(この例では正極性)の一次転写バイアスが印加される。
ドラムクリーナ16は、一次転写後且つ帯電前の感光体ドラム11上の付着物(トナー等)を除去する。
中間転写ベルト20は、複数(本実施の形態では6つ)の支持ロールに回転可能に掛け渡されている。これら複数の支持ロールのうち、駆動ロール21は、中間転写ベルト20を張架するとともに、中間転写ベルト20を矢印B方向に回転駆動する。また、従動ロール22、23、26は、中間転写ベルト20を張架するとともに、駆動ロール21によって駆動される中間転写ベルト20に従動して回転する。補正ロール24は、中間転写ベルト20を張架するとともに、中間転写ベルト20の搬送方向に交差する幅方向の蛇行を規制するステアリングロール(軸方向一端部を支点として傾動自在に配設される)として機能する。さらに、バックアップロール25は、中間転写ベルト20を張架するとともに、後述する二次転写装置30の構成部材として機能する。そして、中間転写ベルト20を挟んで駆動ロール21と対向する部位には、二次転写後の中間転写ベルト20上の付着物(トナー等)を除去するベルトクリーナ27が配置される。
二次転写装置30は、中間転写ベルト20のトナー像転写面側に接触して配置される二次転写ロール31と、中間転写ベルト20の裏面側に配置されて二次転写ロール31の対向電極をなすバックアップロール25とを備えている。このバックアップロール25には、トナーの帯電極性と同極性(この例では負極性)の二次転写バイアスが印加される。一方、二次転写ロール31は接地されている。
なお、本実施の形態では、各一次転写ロール15および二次転写装置30が転写手段としての機能を有している。また、各一次転写ロール15が一次転写部に、中間転写ベルト20が中間転写体に、二次転写装置30が二次転写部に、それぞれ対応している。
また、画像形成装置は、用紙を搬送する用紙搬送系をさらに備えている。この用紙搬送系は、用紙収容部40、搬送ロール41、レジストレーションロール42、搬送ベルト43、および排出ロール44を備える。用紙搬送系では、用紙収容部40に積載された用紙を搬送ロール41にて搬送した後、レジストレーションロール42で一旦停止させ、その後予め決められたタイミングで二次転写装置30へと送り込む。また、二次転写装置30を通過した用紙を、搬送ベルト43を介して定着装置50へと搬送し、定着装置50から排出された用紙を、排出ロール44によって機外へと送り出す。
定着手段の一例としての定着装置50は、ハロゲンランプ等の加熱源51aを内蔵するとともに、矢印C方向に回転駆動される加熱ロール51と、加熱ロール51に接触して回転可能に配置され、加熱ロール51の回転に従動して回転するとともに、加熱ロール51に圧力を付与する加圧ロール52とを有している。ここで、加熱ロール51は、用紙におけるトナー像転写面と対向する側に配置され、加圧ロール52は、用紙におけるトナー像転写面とは反対となる側に配置される。
図2は、本実施の形態の画像形成装置における制御系の構成を説明するためのブロック図である。
本実施の形態の制御装置100は、プログラムを読み出して実行するCPU(Central Processing Unit)101と、CPU101が実行するプログラムやプログラムを実行する際に使用するデータ等を記憶するROM102(Read Only Memory)と、プログラムを実行する際に一時的に生成されるデータ等を記憶するRAM103(Random Access Memory)と、プログラムを実行する際に使用するデータ等を記憶するとともに、その内容を書き換え可能であって、電源を供給しなくてもその記憶内容を保持することが可能なEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)104とを備えている。
設定手段および調整手段の一例としての制御装置100は、感光体ドラム11を回転駆動するドラム駆動部111、帯電ロール12に帯電バイアスを供給する帯電電源112、露光部13に設けられた光源を駆動する光源駆動部113に、それぞれ制御信号を出力する。また、制御装置100は、現像器14に設けられた現像ロール14aに現像バイアスを供給する現像電源114a、現像ロール14aを回転駆動する現像駆動部114b、そして、現像器14にトナーを補給するトナー補給部114cに、それぞれ制御信号を出力する。さらに、制御装置100は、一次転写ロール15に一次転写バイアスを供給する一次転写電源115、中間転写ベルト20を回転駆動するベルト駆動部120、そして、二次転写装置30のバックアップロール25に二次転写バイアスを供給する二次転写電源130に、それぞれ制御信号を出力する。さらにまた、制御装置100は、搬送ロール41、レジストレーションロール42、搬送ベルト43および排出ロール44を回転駆動する搬送駆動部140、定着装置50の加熱ロール51に加熱用電力を供給する定着電源150a、定着装置50の加熱ロール51を回転駆動する定着駆動部150bに、それぞれ制御信号を出力する。また、制御装置100には、感光体ドラム11における有機感光層の電位を検出する感光体電位検出部160から、感光体電位の検出信号が入力され、二次転写装置30において発生した二次転写電圧を検出する二次転写電圧検出部170から、二次転写電圧の検出信号が入力される。
なお、ドラム駆動部111、帯電電源112、光源駆動部113、現像電源114a、現像駆動部114b、トナー補給部114c、一次転写電源115および感光体電位検出部160は、イエローの画像形成ユニット10Y、マゼンタの画像形成ユニット10M、シアンの画像形成ユニット10C、黒の画像形成ユニット10Kのそれぞれに設けられる。
この例において、各帯電電源112は、負の値に設定された直流成分に交流成分(矩形波)を重畳させた帯電バイアスを、対応する帯電ロール12に供給する。なお、以下の説明においては、帯電バイアスにおける直流成分を直流帯電バイアスと呼び、帯電バイアスにおける交流成分を交流帯電バイアスと呼ぶ。ここで、直流帯電バイアスは、感光体ドラム11に設けられた有機感光層を目標とする電位(帯電電位と呼ぶ)に帯電させるためのものであり、交流帯電バイアスは、直流帯電バイアスによる有機感光層の帯電を補助するためのものである。
また、各現像電源114aは、負の値に設定された直流成分に交流成分(矩形波)を重畳させた現像バイアスを、対応する現像ロール14aに供給する。なお、以下の説明においては、現像バイアスにおける直流成分を直流現像バイアスと呼び、現像バイアスにおける交流成分を交流現像バイアスと呼ぶ。ここで、直流現像バイアスは、現像ロール14aから感光体ドラム11に設けられた有機感光層(より具体的には画像部)に、トナーを転移させるためのものであり、交流現像バイアスは、直流現像バイアスによる現像ロール14aから有機感光層へのトナーの転移を補助するためのものである。
そして、本実施の形態では、制御装置100が、一次転写電源115から一次転写ロール15に供給される一次転写バイアスを定電流制御しており、二次転写電源130から二次転写装置30(より具体的にはバックアップロール25)に供給する二次転写バイアスを定電圧制御している。
次に、図1に示す画像形成装置を用いた画像形成動作について説明する。以下に説明する画像形成動作は、制御装置100による制御の下で実行される。
画像形成動作の開始に伴い、各感光体ドラム11の駆動および駆動ロール21を介した中間転写ベルト20の駆動が開始され、各感光体ドラム11は矢印A方向に、中間転写ベルト20は矢印B方向に、それぞれ回転を開始する。また、各現像器14に設けられた現像ロール14aの駆動が開始され、各現像ロール14aが回転を開始する。さらに、各帯電ロール12に対する帯電バイアスの供給、および、各現像ロール14aに対する現像バイアスの供給が開始される。さらにまた、定着装置50における加熱ロール51の駆動および加熱源51aへの電力供給が開始され、加熱ロール51が矢印C方向に回転を開始し、加熱ロール51に従動して加圧ロール52が回転し始める。なお、加熱ロール51は、予め決められた速度(定着速度)で回転駆動されるとともに、加熱源51aによって予め定められた温度(定着温度)まで加熱され、その後は、定着温度が維持されるように制御される。
例えばイエローの画像形成ユニット10Yでは、矢印A方向に回転する感光体ドラム11が、接触する帯電ロール12に供給される帯電バイアスによって帯電電位に帯電される。次に、露光部13による露光が開始され、帯電電位に帯電された状態で矢印A方向に回転する感光体ドラム11は、露光部13から出射される光によって画像部が選択的に露光される。その結果、帯電および露光が行われた有機感光層には、背景部が帯電電位となり、画像部が露光電位となる、イエロー用の静電潜像が形成される。
続いて、感光体ドラム11に形成されたイエロー用の静電潜像は、感光体ドラム11の矢印A方向への回転に伴って、現像器14に設けられた現像ロール14aとの対向部(以下では現像領域と呼ぶ)に到達する。このとき、現像ロール14aは、表面にキャリアおよびトナーを含む現像剤(2成分現像剤)を保持した状態で回転しており、しかも現像ロール14aには、現像バイアスが供給されている。このため、現像ロール14aから感光体ドラム11に対し、イエロー用の静電潜像のうち露光電位となっている画像部に、選択的にトナーが転移する。その結果、現像領域を通過した感光体ドラム11上には、静電潜像に対応したイエローのトナー像が現像される。
それから、感光体ドラム11上に現像されたイエローのトナー像は、感光体ドラム11の矢印A方向への回転に伴って、中間転写ベルト20を挟んで一次転写ロール15と対向する一次転写位置に到達する。このとき、一次転写ロール15に一次転写バイアスが供給されることにより、矢印A方向に回転する感光体ドラム11上に形成されたイエローのトナー像は、矢印B方向に回転する中間転写ベルト20上に一次転写(静電転写)される。なお、一次転写後に感光体ドラム11上に残存するトナー等の付着物は、感光体ドラム11のさらなるA方向への回転に伴ってドラムクリーナ16との対向部に到達し、ドラムクリーナ16によってクリーニングされる。
また、他のマゼンタの画像形成ユニット10M、シアンの画像形成ユニット10Cおよび黒の画像形成ユニット10Kにおいても、イエローの画像形成ユニット10Yと同じく、帯電、露光、現像、一次転写およびクリーニングが行われる。このとき、それぞれにおける画像形成タイミングをずらすことで、中間転写ベルト20上には、これらイエロー、マゼンタ、シアンおよび黒の各色トナー像を重ね合わせた重ねトナー像が形成される。
このようにして中間転写ベルト20上に一次転写された重ねトナー像は、中間転写ベルト20の矢印B方向への回転に伴って、中間転写ベルト20を挟んで二次転写ロール31とバックアップロール25とが対向する二次転写位置に向かう。
一方、用紙収容部40から取り出された用紙は、搬送ロール41およびレジストレーションロール42により、中間転写ベルト20上の重ねトナー像が二次転写位置に到達するタイミングに合わせて、二次転写位置へと搬送される。
このとき、二次転写位置では、二次転写装置30を構成するバックアップロール25に二次転写バイアスが供給されている。そして、二次転写位置において、二次転写ロール31とバックアップロール25との間に形成される二次転写電界の作用で、中間転写ベルト20上の重ねトナー像が用紙に二次転写(静電転写)される。
その後、重ねトナー像が二次転写された用紙は、搬送ベルト43により定着装置50へと搬送される。そして、用紙上の重ねトナー像は、定着装置50の加熱ロール51より供給された熱と、加熱ロール51および加圧ロール52から受ける圧力とによって加熱・加圧定着され、排出ロール44によって画像形成装置の機外に排出される。なお、二次転写後に中間転写ベルト20上に残存するトナー等の付着物は、中間転写ベルト20のさらなる矢印B方向への回転に伴ってベルトクリーナ27との対向部に到達し、ベルトクリーナ27によってクリーニングされる。
図3は、感光体ドラム11における帯電電位VHおよび露光電位VLと、現像器14(より具体的には現像ロール14a)における現像バイアス電位VBとの関係を説明するための図である。なお、図3における横軸は感光体ドラム11上の位置であり、図3における縦軸は電位(ただし、下方がグランド(GND)であり、上方ほど負の電位が高い)である。ここで、帯電電位VHは、上述した帯電バイアス(直流帯電バイアスおよび交流帯電バイアス)によって決まり、露光電位VLは、帯電バイアスと露光部13による露光エネルギーとによって決まる。また、現像バイアス電位VBは、上述した現像バイアス(直流現像バイアスおよび交流現像バイアス)における直流現像バイアスの大きさによって決まる。
本実施の形態では、帯電電位VHおよび露光電位VLがともに負極性となっているが、露光電位VLの大きさは、絶対値で帯電電位VHよりも小さい値となる(|VL|<|VH|)。そして、本実施の形態における現像バイアス電位VBすなわち直流現像バイアスの値は、負極性であって、その絶対値が帯電電位VHと露光電位VLとの間の大きさに設定される(|VL|<|VB|<|VH|)。
帯電電位VHと露光電位VLと現像バイアス電位VBとが上述した関係を有している場合、感光体ドラム11と現像ロール14aとが対向する現像領域を通過する現像ロール14a上のトナー(負極性に帯電)は、感光体ドラム11上で相対的に正の電位となる露光電位VL(画像部)の領域には転移(飛翔)しやすくなる一方、感光体ドラム11上で相対的に負の電位となる帯電電位VH(背景部)の領域には転移(飛翔)しにくくなる。また、現像領域を通過する現像ロール14a上のキャリア(正極性に帯電)は、トナーとは逆に、感光体ドラム11上で相対的に正の電位となる露光電位VL(画像部)の領域には転移(飛翔)しにくくなる一方、感光体ドラム11上で相対的に負の電位となる帯電電位VH(背景部)の領域には転移(飛翔)しやすくなる。ただし、現像剤におけるキャリアは現像ロール14aに磁気的に保持されていることから、実際には、キャリアの転移は殆ど生じない。なお、以下の説明においては、トナーの飛翔しやすさを基準として考え、露光電位VLを基準とする露光電位VLと現像バイアス電位VBとの差を飛翔電位差Vdeveと呼び、現像バイアス電位VBを基準とする現像バイアス電位VBと帯電電位VHとの差を逆飛翔電位差Vclnと呼ぶ。また、露光電位VLを基準とする露光電位VLと帯電電位VHとの差を、潜像電位差VIと呼ぶことがある。この潜像電位差VIは、飛翔電位差Vdeveと逆飛翔電位差Vclnとの和として表現することもできる。
本実施の形態では、感光体ドラム11を帯電させるために、直流帯電バイアスと交流帯電バイアスとを重畳した帯電バイアスを、帯電ロール12に供給している。このため、実際の帯電電位VHは、図3に示したように、直流成分だけでなく交流成分を含んだものとなる。また、感光体ドラム11は、帯電ロール12によって帯電電位VHに帯電された後、露光部13によって露光電位VLが形成されることになるが、露光電位VLは元となる帯電電位VHの影響を受けることから、実際の露光電位VLも、図3に示したように、直流成分だけでなく交流成分を含んだものとなる。
ここで、本実施の形態では、帯電ロール12の表面に、スポンジ材に設けられた多数の孔に起因する凹凸が存在していることから、感光体ドラム11と帯電ロール12との接触状態が、感光体ドラム11上の位置によって変わる。そして、このような接触状態の差異も、帯電電位VHおよび露光電位VLが交流成分を含む原因の一つとなっている。
なお、以下の説明においては、背景部となる帯電電位VHにおける交流成分を、背景部ノイズNHと呼ぶ。また、以下の説明においては、画像部となる露光電位VLにおける交流成分を、画像部ノイズNLと呼ぶ。これら背景部ノイズNHおよび画像部ノイズNLは、ともに複数の周波数成分を含むものとなっており、背景部ノイズNHのピーク・トゥ・ピーク値および画像部ノイズNLのピーク・トゥ・ピーク値は、ほぼ同じ大きさとなっている。
図3に示したような、目標とする露光電位VL(直流値)に交流成分からなる画像部ノイズNLが重畳された状態の静電潜像(画像部)を、トナーを用いて現像した場合、得られるトナー像には、画像部ノイズNLに起因する濃度のばらつきが生じる。ここで、飛翔電位差Vdeveの大きさに対し画像部ノイズNLの大きさが小さいとき、すなわち、飛翔電位差Vdeve(信号)と画像部ノイズNL(雑音)とのSN比が大きい(良い)場合、画像部ノイズNLに起因する濃度のばらつきは目立ちにくくなる。一方、飛翔電位差Vdeveの大きさに対し画像部ノイズNLが無視できないほどに大きいとき、すなわち、飛翔電位差Vdeve(信号)と画像部ノイズNL(雑音)とのSN比が小さい(悪い)場合は、画像部ノイズNLに起因する濃度のばらつきが目立ちやすくなる。特に、画像部ノイズNLが特定の周波数成分を含んでいる場合には、転写および定着を経て得られる用紙上の画像において、目視においても濃度のばらつき(より具体的には、「ざらつき」や「もやつき」)として認知されやすくなってしまう。
そこで、以下に説明する各実施の形態においては、画像形成動作における特定の画像形成条件を調整することで、接触帯電方式を採用したことに起因して生じる、用紙上での画像(トナー像)の濃度のばらつき(目視における「ざらつき」および/または「もやつき」)を抑制している。
<実施の形態1>
本実施の形態では、飛翔電位差Vdeveの大きさに基づき、帯電条件、より具体的には、帯電ロール12に供給する帯電バイアスにおける交流帯電バイアスを調整することで、用紙上での画像の濃度のばらつきの抑制を図っている。
図4は、実施の形態1における画像形成条件の設定動作の手順を示すフローチャートである。以下に説明する設定動作は、図2に示す制御装置100による制御の下で実行される。
設定動作の開始に伴い、まず、感光体電位検出部160を用いた感光体ドラム11の電位測定が行われる(ステップ101)。ステップ101では、ドラム駆動部111を用いて感光体ドラム11を回転駆動するとともに、帯電電源112を用いて帯電バイアス(直流帯電バイアスおよび交流帯電バイアス)を帯電ロール12に供給することで、感光体ドラム11の有機感光層を帯電電位VHに帯電し、さらに、光源駆動部113および露光部13を用いて露光を行うことで、帯電電位VHに帯電した感光体ドラム11の有機感光層の一部を露光電位VLに設定する。なお、このときに帯電ロール12に供給する帯電バイアス(直流帯電バイアスおよび交流帯電バイアス)の大きさ、および、露光部13による露光エネルギーの大きさは、例えば予め決められた設定値あるいは前の画像形成動作で使用されていた現状の設定値である。感光体電位検出部160は、ステップ101において、帯電電位VHおよび露光電位VLを検出して制御装置100に出力する。
次に、制御装置100は、現像電源114aから、現像バイアス(直流現像バイアスおよび交流現像バイアス)のうちの直流現像バイアスの大きさを取得する(ステップ102)。ここで、取得される直流現像バイアスの大きさは、予め決められた設定値あるいは前の画像形成動作で使用されていた現状の設定値である。なお、この例において、直流現像バイアスの大きさは、現像バイアス電位VBと等しいことから、ステップ102では、実際には現像バイアス電位VBが取得されることになる。
続いて、制御装置100は、ステップ101で取得した帯電電位VHおよび露光電位VLと、ステップ102で取得した現像バイアス電位VBとに基づき、次の画像形成動作において使用する、帯電ロール12による感光体ドラム11の帯電条件を決定する(ステップ103)。なお、ステップ103では、実際には、露光電位VLと現像バイアス電位VBとの差分として得られる飛翔電位差Vdeveに基づいて帯電条件を決定するのであるが、その具体的な処理の内容については後述する。
次いで、制御装置100は、ステップ103で決定された新たな帯電条件が、現状の帯電条件から変更されているか否かを判断する(ステップ104)。
ステップ104において肯定の判断(YES)を行った場合、制御装置100は、ステップ103で決定された新たな帯電条件に基づき、帯電ロール12における帯電条件の調整を実行し(ステップ105)、一連の設定動作を完了する。一方、ステップ104において否定の判断(NO)を行った場合、制御装置100は、帯電条件の調整を実行することなく、一連の設定動作を完了する。
では、上記ステップ103における帯電条件の決定手順について、具体的に説明を行う。
図5は、ステップ103において帯電条件を決定する処理で用いられる、条件判定テーブルの内容を説明するための図である。この条件判定テーブルは、例えば制御装置100に設けられたEEPROM104に記憶されている。ここで、図5は、調整対象となる帯電条件として、帯電バイアスにおける交流帯電バイアスの電流値のピーク・トゥ・ピーク値(以下では交流帯電電流値と呼ぶ)Iacを用いる場合を例示している。
図5に示す条件判定テーブルは、ステップ101で取得された露光電位VLおよびステップ102で取得された現像バイアス電位VBに基づいて得られる飛翔電位差Vdeveに、交流帯電電流値Iacを対応付けたものとなっている。この条件判定テーブルでは、飛翔電位差Vdeveに対して閾値Vthが設定されており、飛翔電位差Vdeveが閾値Vth以上(Vdeve≧Vth)となっている場合には、交流帯電電流値Iacとして第1電流値Iac1が選択され、飛翔電位差Vdeveが閾値Vth未満(Vdeve<Vth)となっている場合は、交流帯電電流値Iacとして第1電流値Iac1よりも大きい第2電流値Iac2(Iac1<Iac2)が選択される。
図6は、実施の形態1における画像形成条件の設定動作の結果を説明するための図である。ここで、図6(a)は飛翔電位差Vdeveが閾値Vth以上(Vdeve≧Vth)であることにより、交流帯電電流値Iacを第1電流値Iac1に設定した場合における、帯電電位VHと露光電位VLと現像バイアス電位VBとの関係を示している。また、図6(b)は飛翔電位差Vdeveが閾値Vth未満(Vdeve<Vth)であることにより、交流帯電電流値Iacを第2電流値Iac2(>Iac1)に設定した場合における、帯電電位VHと露光電位VLと現像バイアス電位VBとの関係を示している。なお、図6(a)および(b)は、帯電電位VHおよび露光電位VLの大きさがそれぞれ同じであり、現像バイアス電位VBの変動に伴って飛翔電位差Vdeveおよび逆飛翔電位差Vclnが変化した場合を例示している。したがって、図6(a)および(b)における潜像電位差VIの大きさも同じである。
図6(a)に示す例では、交流帯電電流値Iacを第2電流値Iac2よりも小さい第1電流値Iac1に設定することにより、帯電電位VHにおける背景部ノイズNHおよび露光電位VLにおける画像部ノイズNLの各ピーク・トゥ・ピーク値が、図6(b)に示す例よりも大きくなっている。一方、図6(b)に示す例では、交流帯電電流値Iacを第1電流値Iac1よりも大きい第2電流値Iac2に設定することにより、帯電電位VHにおける背景部ノイズNHおよび露光電位VLにおける画像部ノイズNLの各ピーク・トゥ・ピーク値が、図6(a)に示す例よりも小さくなっている。
ここで、交流帯電電流値Iacを大きくした場合に、画像部ノイズNLが低減される理由は次の通りである。
帯電ロール12を用いて感光体ドラム11を接触帯電する場合、感光体ドラム11と帯電ロール12とが接触する帯電ニップ部からみて感光体ドラム11および帯電ロール12の回転方向下流側に位置するポストニップ部(感光体ドラム11の外周面と帯電ロール12の外周面とが微小ギャップを挟んで対向する部位)における放電の度合いが、感光体ドラム11の帯電むらに大きな影響を及ぼす。そして、ポストニップ部において放電が発生する領域の長さ(感光体ドラム11および帯電ロール12の回転方向に沿う方向の長さ)は、交流帯電電流値Iacが大きいほど長くなり、この領域が長いほど感光体ドラム11の帯電が安定し、帯電むらに起因する画像部ノイズNLが抑制されることになる。
また、飛翔電位差Vdeveが小さい場合に交流帯電電流値Iacを大きくし、飛翔電位差Vdeveが大きい場合に交流帯電電流値Iacを小さくしている理由は次の通りである。
上述した通り、用紙上の画像の濃度のばらつきは、飛翔電位差Vdeveと画像部ノイズNLとのSN比によって決まる。そして、このような濃度のばらつきは、飛翔電位差Vdeveの大きさにかかわらず、一定のレベルにあることが望ましい。
そこで、本実施の形態では、飛翔電位差Vdeveが小さい場合には、画像部ノイズNLが飛翔電位差Vdeveに合わせて小さくなるように、交流帯電電流値Iacを大きく設定するようにし、飛翔電位差Vdeveが大きい場合には、画像部ノイズNLが飛翔電位差Vdeveに合わせて大きくなるように、交流帯電電流値Iacを小さく設定するようにしている。
より具体的に説明すると、飛翔電位差Vdeveが閾値Vth以上となる場合(図6(a)参照)における飛翔電位差Vdeveおよび画像部ノイズNLのSN比と、飛翔電位差Vdeveが閾値Vth未満となる場合(図6(b)参照)における飛翔電位差Vdeveおよび画像部ノイズNLのSN比は、常に交流帯電電流値Iacの大きさを一定に維持した場合と比較して、その変化量が小さくなる。それゆえ、飛翔電位差Vdeveに基づいて交流帯電電流値Iacを制御することにより、飛翔電位差Vdeveの変化に関わらず、用紙上での画像の濃度のばらつき(濃度むら)を抑制することが可能になる。
なお、上述した例では、調整対象となる帯電条件として交流帯電電流値Iacを用いた場合について説明を行ったが、これに限られるものではない。
図7は、ステップ103において帯電条件を決定する際に用いられる、他の条件判定テーブルの内容を説明するための図である。ここで、図7は、調整対象となる帯電条件として、帯電バイアスにおける交流帯電バイアスの周波数(以下では交流帯電周波数と呼ぶ)facを用いる場合を例示している。
図7に示す条件判定テーブルは、ステップ101で取得された露光電位VLおよびステップ102で取得された現像バイアス電位VBに基づいて得られる飛翔電位差Vdeveに、交流帯電周波数facを対応付けたものとなっている。この場合も、飛翔電位差Vdeveに対して閾値Vthが設定されており、飛翔電位差Vdeveが閾値Vth以上(Vdeve≧Vth)となっている場合には、交流帯電周波数facとして第1周波数fac1が選択され、飛翔電位差Vdeveが閾値Vth未満(Vdeve<Vth)となっている場合は、交流帯電周波数facとして第1周波数fac1よりも高い第2周波数fac2(fac1<fac2)が選択される。
図7に示す判定テーブルに基づく帯電条件の設定を行った場合においても、図6に示すような結果が得られる。すなわち、飛翔電位差Vdeveが閾値Vth以上(Vdeve≧Vth)であることにより、交流帯電周波数facを第1周波数fac1に設定した場合には、帯電電位VHと露光電位VLと現像バイアス電位VBとが、図6(a)に示した関係を有することになる。また、飛翔電位差Vdeveが閾値Vth未満(Vdeve<Vth)であることにより、交流帯電周波数facを第2周波数fac2(>fac1)に設定した場合には、帯電電位VHと露光電位VLと現像バイアス電位VBとが、図6(b)に示した関係を有することになる。
ここで、交流帯電周波数facを大きくした場合に、画像部ノイズNLが低減される理由は次の通りである。
交流帯電周波数facを調整した場合は、交流帯電電流値Iacの大きさを調整した場合とは異なり、感光体ドラム11と帯電ロール12とのポストニップ部において放電が発生する領域の長さが殆ど変化しない。ただし、ポストニップ部において放電が発生する回数は、交流帯電周波数facが大きいほど多くなり、この回数が多いほど感光体ドラム11の帯電が安定し、帯電むらに起因する画像部ノイズNLが抑制されることになる。
また、飛翔電位差Vdeveが小さい場合に交流帯電周波数facを大きくし、飛翔電位差Vdeveが大きい場合に交流帯電周波数facを小さくしている理由は次の通りである。
上述した通り、用紙上の画像における画像の濃度のばらつきは、飛翔電位差Vdeveと画像部ノイズNLとのSN比によって決まる。そして、このような濃度のばらつきは、飛翔電位差Vdeveの大きさにかかわらず、一定のレベルにあることが望ましい。
そこで、本実施の形態では、飛翔電位差Vdeveが小さい場合には、画像部ノイズNLが飛翔電位差Vdeveに合わせて小さくなるように、交流帯電周波数facを大きく設定するようにし、飛翔電位差Vdeveが大きい場合には、画像部ノイズNLが飛翔電位差Vdeveに合わせて大きくなるように、交流帯電周波数facを小さく設定するようにしている。これにより、本実施の形態では、飛翔電位差Vdeveの大きさの違いによるSN比の変化を抑制している。
より具体的に説明すると、飛翔電位差Vdeveが閾値Vth以上となる場合(図6(a)参照)における飛翔電位差Vdeveおよび画像部ノイズNLのSN比と、飛翔電位差Vdeveが閾値Vth未満となる場合(図6(b)参照)における飛翔電位差Vdeveおよび画像部ノイズNLのSN比は、常に交流帯電周波数facの大きさを一定に維持した場合と比較して、その変化量が小さくなる。それゆえ、飛翔電位差Vdeveに基づいて交流帯電周波数facを制御することにより、飛翔電位差Vdeveの変化に関わらず、用紙上での画像のばらつき(画像むら)を抑制することが可能になる。
なお、本実施の形態では、飛翔電位差Vdeveと閾値Vthとの比較結果に基づいて交流帯電バイアス(交流帯電電流値Iacあるいは交流帯電周波数fac)を制御するようにしていたが、これに限られるものではない。例えば、飛翔電位差Vdeveの大きさに応じて、連続的に交流帯電バイアスを変化させるようにしてもかまわない。また、2つ以上の閾値を設け、飛翔電位差Vdeveの大きさに応じて、3段階以上に交流帯電バイアスを変化させるようにしてもかまわない。
また、本実施の形態では、帯電条件として、交流帯電電流値Iacあるいは交流帯電周波数facのいずれかを調整する場合を例として説明を行ったが、これら交流帯電電流値Iacおよび交流帯電周波数facの両者を調整するようにしてもかまわない。
<実施の形態2>
本実施の形態では、飛翔電位差Vdeveの大きさに基づき、定着装置50における定着条件(定着速度および/または定着温度)を調整することで、用紙上での画像の濃度のばらつきの抑制を図っている。
図8は、実施の形態2における画像形成条件の設定動作の手順を示すフローチャートである。以下に説明する設定動作は、図2に示す制御装置100による制御の下で実行される。
設定動作の開始に伴い、まず、感光体電位検出部160を用いた感光体ドラム11の電位測定が行われる(ステップ201)。なお、ステップ201における具体的な手順は、実施の形態1で説明したステップ101(図4参照)と同じである。
次に、制御装置100は、現像電源114aから、現像バイアス(直流現像バイアスおよび交流現像バイアス)のうちの直流現像バイアスの大きさを取得する(ステップ202)。なお、ステップ202における具体的な手順は、実施の形態1で説明したステップ102と同じである。
続いて、制御装置100は、ステップ101で取得した帯電電位VHおよび露光電位VLと、ステップ202で取得した現像バイアス電位VBとに基づき、次の画像形成動作において使用する、定着装置50における定着条件を決定する(ステップ203)。なお、ステップ203では、実際には、露光電位VLと現像バイアス電位VBとの差分として得られる飛翔電位差Vdeveに基づいて定着条件を決定するのであるが、その具体的な処理の内容については後述する。
次いで、制御装置100は、ステップ203で決定された新たな定着条件が、現状の定着条件から変更されているか否かを判断する(ステップ204)。
ステップ204において肯定の判断(YES)を行った場合、制御装置100は、ステップ203で決定された新たな帯電条件に基づき、定着装置50における定着条件の調整を実行し(ステップ205)、一連の設定動作を完了する。一方、ステップ204において否定の判断(NO)を行った場合、制御装置100は、定着条件の調整を実行することなく、一連の設定動作を完了する。
では、上記ステップ203における定着条件の決定手順について、具体的に説明を行う。
図9は、ステップ203において定着条件を決定する処理で用いられる、条件判定テーブルの内容を説明するための図である。ここで、図9(a)は定着条件として定着速度Spを用いる場合に、また、図9(b)は定着条件として定着温度Tempを用いる場合に、それぞれ用いられる条件判定テーブルを示している。
図9(a)に示す条件判定テーブルは、ステップ201で取得された露光電位VLおよびステップ202で取得された現像バイアス電位VBに基づいて得られる飛翔電位差Vdeveに、定着速度Spを対応付けたものとなっている。この条件判定テーブルでは、飛翔電位差Vdeveに対して閾値Vthが設定されており、飛翔電位差Vdeveが閾値Vth以上(Vdeve≧Vth)となっている場合には、定着速度Spとして第1速度Sp1が選択され、飛翔電位差Vdeveが閾値Vth未満(Vdeve<Vth)となっている場合は、定着速度Spとして第1速度Sp1よりも速い第2速度Sp2(Sp1<Sp2)が選択される。
また、図9(b)に示す条件判定テーブルは、ステップ201で取得された露光電位VLおよびステップ202で取得された現像バイアス電位VBに基づいて得られる飛翔電位差Vdeveに、定着温度Temp(加熱温度)を対応付けたものとなっている。この条件判定テーブルでは、飛翔電位差Vdeveに対して閾値Vthが設定されており、飛翔電位差Vdeveが閾値Vth以上(Vdeve≧Vth)となっている場合には、定着温度Tempとして第1温度Temp1が選択され、飛翔電位差Vdeveが閾値Vth未満(Vdeve<Vth)となっている場合は、定着温度Tempとして第1温度Temp1よりも低い第2温度Temp2(Temp1>Temp2)が選択される。
ここで、定着速度Spを速くした場合あるいは定着温度Tempを低くした場合に、画像部ノイズNLに起因する、用紙上での画像の濃度のばらつきが低減される理由は次の通りである。
定着装置50を通過した用紙上の画像の光沢(グロス)は、定着装置50から用紙上の画像(トナー)が受ける熱量によって決まる。より具体的に説明すると、用紙上の画像が受ける熱量が多い場合は、用紙上の画像が受ける熱量が少ない場合と比較して、画像のグロスが高くなる。例えば定着温度Tempを一定とした場合には、定着速度Spが速いときに比べて遅いときの方が、用紙上の画像に与える熱量が増加し、画像のグロスは高くなる。また、例えば定着速度Spを一定とした場合には、定着温度Tempが低いときに比べて高いときの方が、用紙上の画像に与える熱量が増加し、画像のグロスは高くなる。
ここで、用紙上の画像のグロスが高い場合は、用紙上の画像のグロスが低い場合に比べて、画像の濃度むらが目立ちやすくなることが知られている。これは、画像の光沢により、その濃淡が目視で認識されやすくなることによる。
本実施の形態では、実施の形態1とは異なり、交流帯電バイアスの調整を行っていない。このため、飛翔電位差Vdeveが大きい場合における飛翔電位差Vdeveと画像部ノイズNLとのSN比に比べて、飛翔電位差Vdeveが小さい場合における飛翔電位差Vdeveと画像部ノイズNLとのSN比が低下することになる。
そこで、本実施の形態では、飛翔電位差Vdeveが小さい場合には、画像部ノイズNLに起因する用紙上での画像の濃度むらが目立ちにくくなるように、定着装置50において用紙上の画像に与える熱量を低下させる設定(定着速度Spを速くする、あるいは、定着温度Tempを低くする)を行い、飛翔電位差Vdeveが大きい場合には、定着装置50において用紙上の画像に与える熱量を増加させる設定(定着速度Spを遅くする、あるいは、定着温度Tempを高くする)を行っている。これにより、飛翔電位差Vdeveの変化に関わらず、用紙上での画像の濃度のばらつき(濃度むら)を抑制することが可能になる。
なお、本実施の形態では、飛翔電位差Vdeveと閾値Vthとの比較結果に基づいて定着条件(定着速度Spあるいは定着温度Temp)を制御するようにしていたが、これに限られるものではない。例えば、飛翔電位差Vdeveの大きさに応じて、連続的に定着条件を変化させるようにしてもかまわない。また、2つ以上の閾値を設け、飛翔電位差Vdeveの大きさに応じて、3段階以上に定着条件を変化させるようにしてもかまわない。
また、本実施の形態では、定着条件として、定着速度Spあるいは定着温度Tempのいずれかを調整する場合を例として説明を行ったが、これら定着速度Spおよび定着温度Tempの両者を調整するようにしてもかまわない。
<実施の形態3>
本実施の形態では、二次転写装置30における二次転写バイアス(二次転写電圧)の大きさに基づき、飛翔電位差Vdeveを調整することで、用紙上での画像の濃度のばらつきの抑制を図っている。
図10は、実施の形態3における画像形成条件の設定動作の手順を示すフローチャートである。以下に説明する設定動作は、図2に示す制御装置100による制御の下で実行される。
設定動作の開始に伴い、まず、二次転写電圧検出部170を用いた、二次転写装置30で発生する二次転写電圧の測定が行われる(ステップ301)。ステップ301では、ベルト駆動部120を用いて中間転写ベルト20を回転駆動するとともに、二次転写電源130を用いて二次転写バイアスを二次転写装置30(バックアップロール25)に供給することで、バックアップロール25、中間転写ベルト20および二次転写ロール31に発生する二次転写電圧を測定する。なお、このときにバックアップロール25に供給する二次転写バイアスの大きさは、例えば予め決められた基準値(定電流値)である。二次転写電圧検出部170は、ステップ301において、二次転写電圧値を検出して制御装置100に出力する。
次に、制御装置100は、ステップ301で測定された二次転写電圧値に基づき、次の画像形成動作において使用する二次転写バイアス(二次転写電圧)の設定値を決定する(ステップ302)。ここで、ステップ301では、基準値となる定電流値を供給したときの二次転写電圧値が取得されることから、この二次転写電圧値の大きさは、中間転写ベルト20および二次転写装置30のシステム抵抗値(バックアップロール25−中間転写ベルト20−二次転写ロール31の直列抵抗値)に比例するものとなっている。そして、制御装置100は、ステップ301で測定された二次転写電圧値が大きな値である場合(システム抵抗値が大きい場合)には、二次転写電圧の設定値を大きな値に設定し、ステップ301で測定された二次転写電圧値が小さな値である場合(システム抵抗値が小さい場合)には、二次転写電圧の設定値を小さな値に設定する。
続いて、制御装置100は、ステップ302で決定された二次転写電圧の設定値に基づき、次の画像形成動作において使用する、飛翔電位差Vdeveおよび現像器14におけるトナー濃度(キャリアおよびトナーを含む2成分現像剤に占めるトナーの割合)を決定する(ステップ303)。なお、ステップ303における具体的な処理の内容については後述する。
次いで、制御装置100は、ステップ303で決定された新たな設定条件が、現状の設定条件から変更されているか否かを判断する(ステップ304)。
ステップ304において肯定の判断(YES)を行った場合、制御装置100は、ステップ303で決定された新たな設定条件に基づき、飛翔電位差Vdeveの調整を実行し(ステップ305)、さらにトナー濃度の調整を実行し(ステップ306)、一連の処理を完了する。一方、ステップ304において否定の判断(NO)を行った場合、制御装置100は、設定条件の調整を実行することなく、一連の設定動作を完了する。
ここで、ステップ305における飛翔電位差Vdeveの調整手法としては、例えば、帯電電位VHおよび露光電位VLを変えずに現像バイアス電位VBを調整するやり方、帯電電位VHを変えずに露光電位VLおよび現像バイアス電位VBを調整するやり方、さらには、帯電電位VH、露光電位VLおよび現像バイアス電位VBをすべて調整するやり方等が挙げられる。
また、ステップ306におけるトナー濃度の調整手法としては、例えば、トナー濃度を増加させる場合にはトナー補給部114cを用いて現像器14内に新たなトナーを補給するやり方が挙げられ、トナー濃度を低下させる場合には現像器14内の一部のトナーを感光体ドラム11に転移させ、ドラムクリーナ16によって除去するやり方が挙げられる。
では、ステップ303における設定条件の決定手順について、具体的に説明を行う。
図11は、ステップ303において現像条件を決定する処理で用いられる、条件判定テーブルの内容を説明するための図である。この条件判定テーブルは、例えば制御装置100に設けられたEEPROM104に記憶されている。ここで、図11は、調整対象となる現像条件として、飛翔電位差Vdeveおよびトナー濃度Tcを用いる場合を例示している。
図11に示す条件判定テーブルは、ステップ301で取得された二次転写電圧値VTに、飛翔電位差Vdeveおよびトナー濃度Tcを対応付けたものとなっている。この条件判定テーブルでは、二次転写電圧値VTに対して閾値VTSが設定されており、二次転写電圧値VTが閾値VTS未満(VT<VTS)となっている場合には、飛翔電位差Vdeveとして第1電位差Vdeve1が選択されるとともに、トナー濃度Tcとして第1濃度Tc1が選択され、二次転写電圧値VTが閾値VTS以上(VT≧VTS)となっている場合には、飛翔電位差Vdeveとして第1電位差Vdeve1よりも小さい第2電位差Vdeve2(Vdeve1>Vdeve2)が選択されるとともに、トナー濃度Tcとして第1濃度Tc1よりも高い第2濃度Tc2(Tc1<Tc2)が選択される。
図12は、実施の形態3における画像形成条件の設定動作の結果を説明するための図である。ここで、図12(a)は二次転写電圧値VTが閾値VTS未満(VT<VTS)であることにより、飛翔電位差Vdeveを第1電位差Vdeve1に設定した場合における、帯電電位VHと露光電位VLと現像バイアス電位VBとの関係を示している。また、図12(b)は、二次転写電圧値VTが閾値VTS以上(VT≧VTS)であることにより、飛翔電位差Vdeveを第2電位差Vdeve2(<Vdeve1)に設定した場合における、帯電電位VHと露光電位VLと現像バイアス電位VBとの関係を示している。なお、図12(a)および(b)は、飛翔電位差Vdeveの調整に伴い、帯電電位VHおよび露光電位VLの両者がそれぞれ異なっており、現像バイアス電位VBの変更に伴って飛翔電位差Vdeveおよび逆飛翔電位差Vclnが変化した場合を例示している。したがって、図12(a)および(b)における潜像電位差VIの大きさも異なっている。ただし、帯電電位VHにおける背景部ノイズNHおよび露光電位VLにおける画像部ノイズNLのピーク・トゥ・ピーク値の大きさは、図12(a)および(b)において同じである。
ここで、二次転写電圧値VTが小さい場合に飛翔電位差Vdeveを大きくし、二次転写電圧値VTが大きい場合に飛翔電位差Vdeveを小さくしている理由は次の通りである。
一般に、二次転写のシステム抵抗値は、環境変化や各部材(バックアップロール25、中間転写ベルト20、二次転写ロール31)の経時劣化等の影響を受けて変動する。そして、例えばシステム抵抗値が上昇した場合には、二次転写電圧の許容範囲が広がり、且つ、使用できる二次転写電圧の設定値を大きくすることが可能になる。ここで、二次転写電圧の許容範囲の下限は、転写電界を形成するのに必要な大きさ(中間転写ベルト20上のトナー像を用紙に転写できる大きさ)で決まり、許容範囲の上限は、転写電界に起因する放電に伴う画像欠陥が発生しない大きさで決まる。そして、システム抵抗値が大きくなった場合には、二次転写電圧を大きくしても放電が発生しにくくなることから転写後のトナーの乱れが生じにくくなり、二次転写電圧を大きくすると、転写時にトナーが受ける電荷量が増加することから、転写後のトナーの乱れがさらに生じにくくなる。したがって、二次転写電圧の設定値を大きくできる場合には、画像の転写性が向上する一方、二次転写電圧の設定値を小さくせざるを得ない場合には、転写性が低下することになる。
ここで、二次転写における画像の転写性が低い場合は、二次転写における画像の転写性が高い場合に比べて、画像の濃度むらが目立ちやすくなることが知られている。これは、転写性が低下することにより、その濃淡が目視で認識されやすくなることによる。
そこで、本実施の形態では、二次転写電圧の設定値が小さい場合には、画像部ノイズNLが飛翔電位差Vdeveに対して相対的に小さくなるように、飛翔電位差Vdeveを大きく設定するようにし、二次転写電圧の設定値が大きい場合には、画像部ノイズNLが飛翔電位差Vdeveに対して相対的に大きくなるように、飛翔電位差Vdeveを小さく設定するようにしている。これにより、本実施の形態では、二次転写電圧の設定値の変化に関わらず、用紙上での画像の濃度のばらつき(濃度むら)を抑制することが可能になる。
また、二次転写電圧値VTが小さい場合にトナー濃度Tcを低くし、二次転写電圧値VTが大きい場合にトナー濃度Tcを高くしている理由は次の通りである。
本実施の形態では、上述したように、二次転写電圧値VTの大きさ(二次転写電圧の設定値の大きさ)に応じて、飛翔電位差Vdeveの調整を行っている。より具体的に説明すると、二次転写電圧値VTが小さい場合(二次転写電圧の設定値が小さい場合)には飛翔電位差Vdeveを大きくし、二次転写電圧値VTが大きい場合(二次転写電圧の設定値が大きい場合)には飛翔電位差Vdeveを小さくしている。
飛翔電位差Vdeveが大きくなると、露光電位VLに設定された露光部13における静電的な吸引力が増大する。例えばトナーの帯電量が一定であるとすると、飛翔電位差Vdeveが大きい場合は、飛翔電位差Vdeveが小さい場合と比較して、より多くのトナーが転移することになり、結果として、得られる画像の濃度が高くなってしまう。
ここで、現像器14内に収容された2成分現像剤におけるトナーの帯電量は、キャリアとの摩擦によって決まる。例えば、2成分現像剤におけるトナー濃度Tcが高い場合には、トナーがキャリアによって摩擦される回数が少なくなることでトナーの帯電量が減少し、2成分現像剤におけるトナー濃度Tcが低い場合には、トナーがキャリアによって摩擦される回数が増加することでトナーの帯電量が増加する。
そこで、本実施の形態では、飛翔電位差Vdeveが大きい場合は、トナーの帯電量が多くなるように、2成分現像剤中のトナー濃度Tcを低下させる設定を行うようにし、飛翔電位差Vdeveが小さい場合には、トナーの帯電量が少なくなるように、2成分現像剤中のトナー濃度Tcを上昇させる設定を行うようにしている。これにより、本実施の形態では、飛翔電位差Vdeveの変化に関わらず、用紙上での画像の濃度の増減を抑制することが可能になる。
なお、本実施の形態では、二次転写電圧値VTと閾値VTSとの比較結果に基づいて飛翔電位差Vdeveおよびトナー濃度Tcを制御するようにしていたが、これに限られるものではない。例えば、二次転写電圧値VTの大きさに応じて、連続的に飛翔電位差Vdeveおよびトナー濃度Tcを変化させるようにしてもかまわない。また、2つ以上の閾値を設け、二次転写電圧値VTの大きさに応じて、3段階以上に飛翔電位差Vdeveおよびトナー濃度Tcを変化させるようにしてもかまわない。
また、本実施の形態では、どの時点で画像形成条件の設定動作を行うかについて特に説明を行わなかったが、例えば予め決められた設定時間毎に行うようにしてもよいし、二次転写装置30(バックアップロール25および二次転写ロール31)あるいは中間転写ベルト20が交換された際に実行するようにしてもよい。
なお、実施の形態1〜3では、接触帯電手段として帯電ロール12を用いた場合を例として説明したが、接触帯電手段の構成はこれに限られない。接触帯電手段として、例えばブラシ状あるいはフィルム状のものを用いてもかまわない。また、実施の形態1〜3では、接触帯電手段としての帯電ロール12を回転可能に設けていたが、これに限られるものではなく、感光体ドラム11に対し固定して取り付けられるものであってもかまわない。
また、実施の形態1〜3では、所謂画像部露光方式を用いて静電潜像の形成を行っていたが、露光方式についてはこれに限られない。露光方式として、例えば背景部に対して光を照射し且つ画像部に対しては光を照射しない、所謂背景部露光方式を用いて静電潜像を形成する場合に適用してもかまわない。この場合には、帯電電位VHが画像部となり、露光電位VLが背景部となる。
さらに、実施の形態1〜3では、反転現像方式を用いて静電潜像の現像を行っていたが、現像方式についてはこれに限られない。現像方式として、現像対象となる画像部の帯電極性とトナーの帯電極性とを異ならせた、所謂正規現像方式を用いて静電潜像を現像する場合に適用してもかまわない。
さらにまた、本実施の形態では、トナーとキャリアとを含む所謂2成分現像剤用いていたが、これに限られるものではなく、トナーを含む一方でキャリアを含まない所謂1成分現像剤を用いてもよい。