以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、コンバータ制御装置を備えるものとして、回転電機駆動制御システムを述べるが、これは、コンバータの負荷の説明の一例として、インバータ回路とこれに接続される回転電機を取り上げたもので、これ以外の負荷であってもよい。
以下で述べるデューティ比、その下限制限の制限値等は、説明のための例示であって、コンバータ制御の内容に応じて適宜変更が可能である。
以下では、全ての図面において一または対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明に係るコンバータ制御装置40を含み、車両に搭載される回転電機の駆動制御を行う回転電機駆動制御システム10の構成図である。回転電機駆動制御システム10は、電池12と、負荷14と、コンバータ20と、出力コンデンサ36と、コンバータ制御装置40を含んで構成される。
電池12は、充放電可能な蓄電装置である。かかる電池12としては、リチウムイオン組電池、水素ニッケル組電池等を用いることができる。
負荷14は、コンバータ20から電力供給を受けて駆動される電気機器で、ここでは、インバータ回路16とインバータ回路16に接続される回転電機18が用いられる。
出力コンデンサ36は、負荷14とコンバータ20との間に設けられ、コンバータ20を介して電池12の電力が充電され、逆に、その蓄電された電力についてコンバータ20を介して電池12に戻す機能を有するキャパシタである。出力コンデンサ36をコンバータ20の一構成要素としてもよい。
コンバータ20は、電池12と出力コンデンサ36との間に設けられ、リアクトル22と上アーム24と下アーム30を含み、電池12の電圧を昇圧して出力コンデンサ36に供給し、逆に出力コンデンサ36に蓄電された電力を降圧して電池12に戻す回路である。かかるコンバータ20は、電池12の電圧を負荷14に適した電圧に昇圧する機能に着目して、昇圧コンバータと呼ばれることがある。
リアクトル22は、電池12の直流電力を電磁エネルギとして一時的に蓄えるコイルである。リアクトル22の一方側端子は電池12の正極側電極に接続され、他方側端子は、上アーム24と下アーム30の接続点Sに接続される。
上アーム24と下アーム30は、接続点Sで互いに直列に接続されて、出力コンデンサ36の正極側端子と負極側端子の間に配置される回路素子である。上アーム24は、上アームトランジスタ26と上アームダイオード28が並列接続されて構成され、下アーム30は、下アームトランジスタ32と下アームダイオード34が並列接続されて構成される。
上アームトランジスタ26と下アームトランジスタ32は、電力スイッチング素子で、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられる。上アームダイオード28は、カソードが上アームトランジスタ26のコレクタに接続され、アノードが上アームトランジスタ26のエミッタに接続される逆接続ダイオードとして用いられる。同様に、下アームダイオード34も下アームトランジスタ32に対する逆接続ダイオードとして用いられる。
コンバータ制御装置40は、コンバータ20の動作を制御する制御装置で、ここでは特に、上アーム24のデューティ比を予め定めた制御周期ごとに制御し、電池12の電力を最大限利用できるようにする機能を有する。かかるコンバータ制御装置40は、車両搭載に適したコンピュータで構成することができる。
ここで、上アーム24のデューティ比とは、1周期における上アームトランジスタ26のオン時間とオフ時間について、[オン時間/(オン時間+オフ時間)]×100%である。なお、下アーム30のデューティ比は、1周期における下アームトランジスタ32のオン時間とオフ時間について、[オン時間/(オン時間+オフ時間)]×100%である。なお、以下では、図面等において適宜、デューティをdutyとして示す。
コンバータ制御装置40は、電池12の許容出力電力に基づいて設定される上アームデューティ比の下限制限値を取得するデューティ下限取得部42と、各制御周期を前半サブ制御周期と後半サブ制御周期の2つのサブ制御周期に分けたときに、各制御周期の2つのサブ制御周期のそれぞれについてデューティ比を適切に設定するサブ制御周期デューティ設定部44と、上アーム24と下アーム30が同時にオンとならないようにデッドタイムを設ける場合にデッドタイムに応じてサブ制御周期デューティを変更して適切に設定するデッドタイム分デューティ変更部46を含んで構成される。
かかる機能は、コンバータ制御装置40がソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、コンバータ制御プログラムを実行することで実現できる。これらの機能の一部をハードウェアで実現するものとしてもよい。
上記構成において、上アーム24のデューティ比に下限の制限が設けられることについて、図2から図4を用いて説明する。図2から図4は、コンバータ20の動作を説明する図である。図2は、電池12の電力をリアクトル22に蓄積するときの動作を示し、図3は、リアクトル22に蓄積されたエネルギを出力コンデンサ36に供給する昇圧動作を示し、図4は、出力コンデンサ36から電池12に電流を戻す降圧動作を示す。
図2は、電池12の電力をリアクトル22に蓄積するときの各要素の状態を示す図で、上アームトランジスタ26のゲート電圧VUAがオフ電圧、下アームトランジスタ32のゲート電圧VLAがオン電圧に設定される。これによって、電池12の正極側から、リアクトル22と下アームトランジスタ32を通り、電池12の負極側に電流I1が流れ、その電流I1とリアクトル22のインダクタンスLによって(LI1 2/2)の電磁エネルギがリアクトル22に蓄積される。
図3は、図2の上アームトランジスタ26はオフのままの状態から下アームトランジスタ32のゲート電圧VLAがオフ電圧になったときの各要素の状態を示す図である。図2ではリアクトル22に電流I1が流れていた状態から下アームトランジスタ32がオフされることで、リアクトル22には逆起電力が生じる。そこで、上アームトランジスタ26と下アームトランジスタ32とリアクトル22が相互に接続される接続点Sの電圧VSは、VS=(電池電圧VB+逆起電圧VR)となる。
ここで、出力コンデンサ36の両端子間電圧をVCとすると、VS>VCのとき、上アームダイオード28を通して、リアクトル22に蓄積されたエネルギが電流I2となって、出力コンデンサ36に流れ込む。電流I2は、VLAがオフ電圧のままだと、出力コンデンサ36の電圧VCが上昇してVSと同じになるまで流れる。VLAがオン電圧になるとそこで電流I2の流れ込みは止まる。このようにして、上アームトランジスタ26がオフのときに、出力コンデンサ36へ電池12から電力が供給される昇圧動作が行われ、上アームトランジスタ26のオフ時間を制御することで出力コンデンサ36が昇圧する程度を制御できる。
出力コンデンサ36の電圧VCが接続点Sの電圧VSよりも高いときは、上アームトランジスタ26がオフであると、逆接続されている上アームダイオード28に阻止されて、出力コンデンサ36と電池12の間に電流が流れない。
図4は、出力コンデンサ36の電圧VCが接続点Sの電圧VSよりも高いときに、図3における下アームトランジスタ32がオフのままとして、その状態から上アームトランジスタ26のゲート電圧VUAがオン電圧になったときの各要素の状態を示す図である。このときは、上アームトランジスタ26を介して、出力コンデンサ36から接続点Sを通り、電池12に向かって電流I3が流れる。電流I3は、VUAがオン電圧のままだと、出力コンデンサ36の電圧VCが下降してVSと同じになるまで流れる。VUAがオフ電圧になると、電流I3が止まる。このようにして、上アームトランジスタ26がオンのときに、出力コンデンサ36から電池12へ電流が戻される降圧動作が行われ、下アームトランジスタ32のオン時間を制御することで出力コンデンサ36が降圧する程度を制御できる。
このように、上アームトランジスタ26がオンするときは出力コンデンサ36から電池12の側に電流I3が流れ、上アームトランジスタ26がオフのときに電池12から出力コンデンサ36へ電流が引き出される。したがって、上アーム24のデューティ比を小さくして、上アームトランジスタ26がオフの期間を多くすることが、電池12からより多くの電流を引き出せ、電池電力を最大限利用できることになる。
このように、上アーム24のデューティ比である上アームデューティ比を下げるほど電池12から取り出せる電力は増加するが、上アームデューティ比を下げ過ぎると電池抵抗のために電池12における消費電力が大きくなるため、逆に電池12から取り出せる電流が減少する。このことから、上アームデューティ比の下限が制限される。
次に、コンバータ20のデューティ制御を高速化することで、上アームデューティ比の下限制限の制限値が課題となることについて、図5から図9を用いて説明する。図5から図9は、いずれも(a)と(b)の2つの波形図から構成されている。
各図の(a)は、横軸が時間で、縦軸が電圧で、上アームデューティ比を決定するための搬送波波形としての三角波信号50と、上アームデューティ比の下限制限値を示す制限ライン52と、上アームデューティ比設定信号が示される。三角波信号50の1周期が1制御周期である。上アームデューティ比設定信号は、図5から図9においてそれぞれ異なっている。これらにおいて、制限ライン52は、上アームデューティ比の下限制限の制限値=40%である。この値は、説明のための例示であって、これ以外の値であってもよい。
各図の(b)は、横軸は時間で、(a)と時間原点を一致させてある。縦軸は電圧で、上アームトランジスタ26のゲート電圧信号が示される。上アームトランジスタ26のゲート電圧信号は、図5から図8の各図の間で同じ場合も異なっている場合もある。上アームトランジスタ26のゲート電圧信号がオン状態の時間と1制御周期の時間の比が上アームデューティ比で、各図に%の値でそれぞれ示されている。
図5は、1制御周期に渡って上アームデューティ比設定信号54が一定の場合である。ここでは、上アームデューティ比が45%に設定されている。これも説明のための例示であって、これ以外の値であっても構わない。上アームデューティ比が45%に設定されることに対応し、図5(a)において、上アームデューティ比設定信号54の信号レベルが、三角波信号50の下限を基準としてその振幅の45%に当たる高さに設定される。上アームデューティ比設定信号54>三角波信号50となる時間は、上アームトランジスタ26のゲート電圧信号がオン状態となる時間である。したがって、図5(b)において、上アームデューティ比設定信号54>三角波信号50となる時間に対応して、上アームトランジスタ26のゲート電圧信号70がハイレベルとなり、その期間がオン状態となることが示される。オン状態の時間と1制御周期の時間の比である上アームデューティ比は45%となる。
図6から図9は、コンバータ20の制御を高速化するために、1制御周期を2つのサブ制御周期に分け、それぞれについて上アームデューティ比設定信号を異ならせた場合を示す図である。このように、1制御周期を複数のサブ制御周期に細分化して、それぞれのサブ制御周期毎に異なる制御を行うことで、負荷14の変動等に対するコンバータ20の応答性を改善することができる。図6から図9においては、三角波信号50の山から谷の期間を前半サブ制御周期、谷から山の期間を後半サブ制御周期とした。
図6は、前半サブ制御周期における上アームデューティ比を30%、後半サブ制御周期における上アームデューティ比を60%とする場合を示す図である。このときでも、1制御周期に渡っての上アームデューティ比は[(30%+60%)/2]=45%で、図5と同じである。
図6(a)では、30%である前半サブ制御周期における上アームデューティ比に対応して、前半デューティ比設定信号56が示され、60%である後半サブ制御周期における上アームデューティ比に対応して、後半デューティ比設定信号58が示されている。ここで、前半デューティ比設定信号56は制限ライン52を下回っているが、後半デューティ比設定信号58は制限ライン52を上回っている。なお、1制御周期に渡っての上アームデューティ比=45%を示す1制御周期デューティ比ライン60も示されている。1制御周期デューティ比ライン60は、40%の制限ライン52よりも上に位置し、前半デューティ比設定信号56は制限ライン52を下回っているが、1制御周期の全体に渡っては制限ライン52を上回っていることが示される。
前半デューティ比設定信号56>三角波信号50となる時間と、後半デューティ比設定信号58>三角波信号50となる時間を合わせた期間が、上アームトランジスタ26のゲート電圧信号がオン状態となる時間である。したがって、図6(b)において、前半デューティ比設定信号56>三角波信号50となる時間と、後半デューティ比設定信号58>三角波信号50となる時間を合わせた期間に対応して、上アームトランジスタ26のゲート電圧信号72がハイレベルとなり、その期間がオン状態となることが示される。オン状態の時間と1制御周期の時間の比である上アームデューティ比は45%となる。
ここでは、制限ライン52が設定されていることを全く考慮していない。したがって、上アームデューティ比は、図5の場合と同じ45%となるが、上アームトランジスタ26のゲート電圧信号72がハイレベルとなる期間が図5の場合よりも後半制御周期側にずれる。これは、図5においては上アームデューティ比設定信号54が1制御周期について設定されているのに対し、図6では上アームデューティ比設定信号を前半制御周期と後半制御周期とで異なるものとしたためである。このように、1制御周期を2つに分けてそれぞれについて上アームデューティ比設定信号を異なる設定にすることで上アームトランジスタ26のゲート電圧信号72がハイレベルとなる期間を時間上で任意にずらすことができる。これによって、例えば、出力コンデンサ36から電池12に戻す電流量を変えずに電流が流れるタイミングを変えること等ができる。
図7は、図6と同じ前半デューティ比設定信号56と後半デューティ比設定信号58を用いるが、そのそれぞれに対し、制限ライン52を考慮した制御を行う場合を示す図である。ここでは、前半デューティ比設定信号56が制限ライン52を超えているので、これを強制的に制限ライン52まで引き上げられる。図7(a)には、このように強制的に引き上げられた補正設定信号62が示されている。後半デューティ比設定信号58は制限ライン52を超えているのでそのままである。
補正設定信号62>三角波信号50となる時間と、後半デューティ比設定信号58>三角波信号50となる時間を合わせた期間が、上アームトランジスタ26のゲート電圧信号がオン状態となる時間である。したがって、図7(b)において、補正設定信号62>三角波信号50となる時間と、後半デューティ比設定信号58>三角波信号50となる時間を合わせた期間に対応して、上アームトランジスタ26のゲート電圧信号76がハイレベルとなり、その期間がオン状態となることが示される。オン状態の時間と1制御周期の時間の比である上アームデューティ比は50%となる。
このように、1制御周期を前半サブ制御周期と後半サブ制御周期に分けて制御を実行することで、コンバータ20における応答性が向上するが、それぞれに上アームデューティ比の下限制限の制限値を適用すると、1制御周期に渡る上アームデューティ比が大きくなる。これによって、電池12から引き出せる電流が少なくなり、電池電力を最大限に利用できないことになる。
図8は、図7で示された課題である応答性の向上と電池電力の最大限利用の両立を図るために、前半サブ制御周期においては制限ライン52による制限を設けず、後半サブ制御周期において、新しい制限ラインを設定する方法を示す図である。ここでは、後半サブ制御周期において設定される新しい制限ライン64が示されている。
新しい制限ライン64は、後半サブ制御周期の上アームデューティ比について、前半サブ制御周期における上アームデューティ比と後半サブ制御周期の上アームデューティ比と合わせたときに、1制御周期における上アームデューティ比の下限制限の制限値以上となるように設定される。
新しい制限ライン64の上アームデューティ比の下限制限の制限値は、一般式で以下のように示すことができる。1制御周期における上アームデューティ比の下限制限の制限値をA(%)とし、前半サブ制御周期において任意に設定された上アームデューティ比をB(%)とすると、新しい制限ライン64の上アームデューティ比の下限制限の制限値X(%)は、X=(2A−B)である。後半サブ制御周期における上アームデューティ比C(%)は、C≧X=(2A+B)として設定される。
図8の例では、1制御周期における上アームデューティ比の下限制限の制限値Aは40%である。前半サブ制御周期における上アームデューティ比Bは30%であるので、X=(2A−B)={(2×40%)−30%}=80%−30%=50%が新しい制限ライン64の上アームデューティ比Xである。後半サブ制御周期における上アームデューティ比Cは60%であるので、元々の制限ライン52の40%よりは余裕が少なくなっているが、新しい制限ライン64の50%にはまだ10%の余裕があり、C≧Xを守っている。
前半デューティ比設定信号56>三角波信号50となる時間と、後半デューティ比設定信号58>三角波信号50となる時間を合わせた期間が、上アームトランジスタ26のゲート電圧信号がオン状態となる時間である。したがって、図8(b)において、前半デューティ比設定信号56>三角波信号50となる時間と、後半デューティ比設定信号58>三角波信号50となる時間を合わせた期間に対応して、上アームトランジスタ26のゲート電圧信号72がハイレベルとなり、その期間がオン状態となることが示される。オン状態の時間と1制御周期の時間の比である上アームデューティ比は45%となる。
この結果は、図6と同じであるが、図6では、制限ライン52を全く考慮していないが、図8では、後半サブ制御周期において、新しい制限ライン64を守っている点が相違する。また、制限ライン52を守った図7に比較すると、1制御周期における上アームデューティ比が45%で、図7の50%に対し、電池電力をより有効に利用していることになる。
図9は、この一般式X=(2A−B)(%)と、C≧X=(2A−B)の意義を説明する図である。図9(a)は、図5から図8の(a)を一般化し、1制御周期における上アームデューティ比の下限制限の制限値をA(%)、1制御周期の山から谷のサブ制御周期における上アームデューティ比をB(%)、1制御周期の谷から山のサブ制御周期における上アームデューティ比をC(%)として示す図である。図9(a)では、前半サブ制御周期が山から谷、後半サブ制御周期が谷から山としたが、これを逆にして、前半サブ制御周期が谷から山、後半サブ制御周期が山から谷としてもよい。その場合には、後半サブ制御周期における上アームデューティ比がB(%)、前半サブ制御周期における上アームデューティ比がC(%)となる。
図9(b)は、1制御周期で守るべき条件が(B+C)≧2Aであるときに、サブ制御周期で設定される上アームデューティ比の選択できる可能性を並べた図である。
Case1は、2つのサブ制御周期における上アームデューティ比が共に下限制限の制限値以下とする場合である。すなわち、B≦Aで、かつC≦Aである。このときは、(B+C)≦2Aとなって、守るべき条件(B+C)≧2Aを満たせない。このことから、2つのサブ制御周期における上アームデューティ比が共に下限制限の制限値以下とはできないことが分かる。
Case2は、山から谷のサブ制御周期における上アームデューティ比Bのみを下限制限の制限値以下とする場合である。すなわち、B≦Aである。このとき、C≧(2A−B)とすれば、(B+C)≧2Aとすることができる。例えば、C≧(2A−B)をC=(2A−B)+Δとして示すものとすると、このとき、(B+C)=2A+Δとなって、(B+C)≧2Aを満たすことになる。
A=40%、B=30%、C=(2A−B)+Δ=60%=(2×40%−30%)+Δ=50%+Δとして、Δ=10%となる例が、図8である。このように、山から谷のサブ制御周期における上アームデューティ比Bのみを下限制限の制限値以下とし、谷から山のサブ制御周期における上アームデューティ比CをC≧(2A−B)の条件の下で設定すれば、守るべき条件(B+C)≧2Aを必ず満たす。
Case3は、谷から山のサブ制御周期における上アームデューティ比Cのみを下限制限の制限値以下とする場合である。すなわち、C≦Aである。このとき、B≧(2A−C)とすれば、(B+C)≧2Aとすることができる。例えば、B≧(2A−C)をB=(2A−C)+Δとして示すものとすると、このとき、(B+C)=2A+Δとなって、(B+C)≧2Aを満たすことになる。このように、谷から山のサブ制御周期における上アームデューティ比Cのみを下限制限の制限値以下とし、山から谷のサブ制御周期における上アームデューティ比BをB≧(2A−C)の条件の下で設定すれば、守るべき条件(B+C)≧2Aを必ず満たす。
Case2とCase3に示されるように、電池12の許容出力電力に基づいて上アームデューティ比の下限制限の制限値Aを設定し、各制御周期を前半サブ制御周期と後半サブ制御周期の2つのサブ制御周期に分けたときに、各制御周期の2つのサブ制御周期の一方のサブ制御周期の上アームデューティ比については上アームデューティ比の下限制限値の制限を設けず、他方のサブ制御周期の上アームデューティ比については一方のサブ制御周期における上アームデューティ比と合わせたときに1制御周期における上アームデューティ比の下限制限値A以上となるように制限を設けて、各サブ制御周期における上アームデューティ比を設定すればよいことが分かる。
図10は、上記構成に基づいて、上アームデューティ比を設定する手順を示すフローチャートである。最初に、上アームデューティ比の下限制限の制限値Aを取得する(S10)。この処理は、コンバータ制御装置40のデューティ下限取得部42の機能によって実行される。上アームデューティ比の下限制限の制限値Aは、電池12の電池容量、電池抵抗等から求められる許容出力電力に基づいて設定することができる。
次に、1制御周期を2つのサブ制御周期に分けたときに、一方側のサブ制御周期における上アームデューティ比Bの設定であるか否かが判断される(S12)。ここで、一方側のサブ制御周期は山から谷へのサブ制御周期であり、上アームデューティ比Bは、山から谷へのサブ制御周期についての上アームデューティ比である。
S12の判断が肯定されると、上アームデューティ比Bは、上アームデューティ比の下限制限の制限値Aの制限を受けず、任意のデューティ比がそのまま設定される(S14)。S12の判断が否定されるときは、他方側のサブ制御周期における上アームデューティ比Cの設定であるので、C≧(2A−B)の制限の下で、上アームデューティ比Cの設定が行われる(S16)。S14とS16の処理は、コンバータ制御装置40のサブ制御周期デューティ設定部44の機能によって実行される。これにより、1制御周期に渡っての上アームデューティ比が、上アームデューティ比の下限制限の制限値A以上という条件を守ることができる。
上記では、上アームデューティ比の設定の際に、上アーム24と下アーム30が同時にオンとならないようにするために設定するデッドタイムを考慮していない。図11は、図10の手順で設定されるデューティ比Cについて、デッドタイムに対応する変更を行う手順を示すフローチャートである。
図11において、S10,S12,S14は、図10で説明した内容と同じである。すなわち、上アームデューティ比Bは、上アームデューティ比の下限制限の制限値Aの制限を受けず、任意のデューティ比がそのまま設定される。
S12の判断が否定されるときは、他方側のサブ制御周期における上アームデューティ比Cの設定であるが、ここでは、負荷14がコンバータ20側から電力供給を受ける状態か、負荷14がコンバータ20側へ電力を供給する状態かが判断される。例えば、負荷14に回転電機18が含まれる場合には、回転電機18がコンバータ20の側から電力供給を受ける状態のことを回転電機18の力行状態、回転電機18がコンバータ20側へ電力を供給する状態のことを回転電機18の回生状態と呼ぶ。そこで、負荷14がコンバータ20側から電力供給を受ける状態を力行状態、負荷14がコンバータ20側へ電力を供給する状態を回生状態と呼ぶことにすると、S12の判断が否定されると、力行状態か回生状態かが判断される(S20)。
S20で、コンバータ20が力行状態であると判断されると、力行において設定されるデッドタイムに相当するデューティ比DMが取得される(S22)。力行状態は負荷14がコンバータ20側から電力供給を受ける状態であるので、図3の上アームトランジスタ26がオフのときに相当する。そこで、力行状態においてデッドタイムを設ける場合は、上アームデューティ比の指令において、オン状態からオフ状態への遷移タイミングを遅らせることになる。その遅らせるタイミングに相当するデューティ比がDMである。力行状態において設定されるデッドタイムに相当するデューティ比DMは、コンバータ20の仕様等に基づいて予め求めておくことができる。
S22でデッドタイムに相当するデューティ比DMが取得されると、他方側のサブ制御周期における上アームデューティ比Cについて、C≧(2A−B−DM)の制限の下で、デューティ比Cの設定が行われる(S24)。この処理は、コンバータ制御装置40のデッドタイム分デューティ変更部46の機能によって実行される。すなわち、図11におけるC≧(2A−B)がDMの分だけ減算されて変更される。DMが減算されるのは、上アームデューティ比の指令において、オン状態からオフ状態への遷移タイミングが遅れ、実質的に(B+C)が長くなるためである。すなわち、長くなった(B+C+DM)を(B+C)の代わりに用いると、(B+C+DM)≧2Aが守るべき条件となり、C≧(2A−B−DM)となるためである。
S20で、コンバータ20が回生状態であると判断されると、回生において設定されるデッドタイムに相当するデューティ比DRが取得される(S26)。回生状態は、負荷14からコンバータ20側に電力を供給する状態であるので、図4の上アームトランジスタ26がオンのときに相当する。そこで、回生状態においてデッドタイムを設ける場合は、上アームデューティ比の指令において、オフ状態からオン状態への遷移タイミングを遅らせることになる。その遅らせるタイミングに相当するデューティ比がDRである。回生状態において設定されるデッドタイムに相当するデューティ比DRは、コンバータ20の仕様等に基づいて予め求めておくことができる。
S26でデッドタイムに相当するデューティ比DRが取得されると、他方側のサブ制御周期における上アームデューティ比Cについて、C≧(2A−B+DR)の制限の下で、デューティ比Cの設定が行われる(S28)。この処理は、コンバータ制御装置40のデッドタイム分デューティ変更部46の機能によって実行される。すなわち、図11におけるC≧(2A−B)がDRの分だけ加算されて変更される。DRが加算されるのは、上アームデューティ比の指令において、オフ状態からオン状態への遷移タイミングが遅れ、実質的に(B+C)が短くなるためである。すなわち、短くなった(B+C−DR)を(B+C)の代わりに用いると、(B+C−DR)≧2Aが守るべき条件となり、C≧(2A−B+DR)となるためである。
このようにして、デットタイムを考慮して、コンバータ20の応答性を確保しながら、電池電力を最大限利用することができる。