以下、この発明に係るDC/DCコンバータの駆動方法を実施するDC/DCコンバータを備えるDC/DCコンバータ装置が適用された車両等の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、この実施形態は、1相の相アームが配置されたDC/DCコンバータを備えるDC/DCコンバータ装置に限らず、2相以上の複数の相の相アームが配置されたDC/DCコンバータを備えるDC/DCコンバータ装置にも適用可能である。
そこで、以下の説明では、最初に、3相の相アームが配置されたDC/DCコンバータを備えるDC/DCコンバータ装置を説明し、次に、1相の相アームが配置されたDC/DCコンバータを備えるDC/DCコンバータ装置について説明する。
図1に示すこの実施形態に係る燃料電池車両20は、基本的には、燃料電池22とエネルギストレージである蓄電装置(バッテリという。)24とから構成されるハイブリッド型の電源装置と、このハイブリッド型の電源装置から電流(電力)がインバータ34を通じて供給される走行用のモータ26と、バッテリ24が接続される1次側1Sと燃料電池22及びモータ26(インバータ34)が接続される2次側2Sとの間で電圧変換を行うDC/DCコンバータ装置{VCU(Voltage Control Unit)という。}23とから構成される。
VCU23は、DC/DCコンバータ36と、これを駆動制御するコンバータ制御部54とから構成される。
燃料電池22は、例えば、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで両側から挟み込んで形成されたセルを積層したスタック構造にされている。燃料電池22には、水素タンク28とエアコンプレッサ30とが配管により接続されている。燃料電池22内で反応ガスである水素(燃料ガス)と空気(酸化剤ガス)との電気化学反応により生成された発電電流Ifは、電流センサ32及びダイオード(ディスコネクトダイオードともいう。)33を介して、インバータ34及び(又は)DC/DCコンバータ36に供給される。
インバータ34は、直流/交流変換を行い、モータ電流Imをモータ26に供給する一方、回生動作に伴う交流/直流変換後のモータ電流Imを2次側2SからDC/DCコンバータ36を通じて1次側1Sに供給する。
この場合、回生電圧又は発電電圧Vfである2次電圧V2がDC/DCコンバータ36により低電圧に変換された1次電圧V1は、ダウンバータ42により降圧されてさらに低電圧とされ、ランプ等の補機44に補機電流Iauとして供給されると共に、余剰分があればバッテリ電流Ibatとしてバッテリ24を充電する。
1次側1Sに接続されるバッテリ24は、例えば、リチウムイオン2次電池又はキャパシタを利用することができる。この実施形態では、リチウムイオン2次電池を利用している。
バッテリ24は、ダウンバータ42を通じて補機44に補機電流Iauを供給すると共に、DC/DCコンバータ36を通じてインバータ34にモータ電流Imを供給する。
1次側1S及び2次側2Sには、それぞれ平滑用のコンデンサ38、39が設けられている。2次側2Sのコンデンサ39には、並列に、すなわち燃料電池22に対しても並列に抵抗器40が接続されている。
燃料電池22を含むシステムはFC制御部50により、インバータ34とモータ26とを含むシステムはインバータ駆動部を含むモータ制御部52により、DC/DCコンバータ36を含むシステムはコンバータ駆動部を含むコンバータ制御部54により、それぞれ基本的に制御される。
そして、これらFC制御部50、モータ制御部52及びコンバータ制御部54は、上位の制御部であり燃料電池22の総負荷量Lt等を決定する統括制御部56により制御される。
統括制御部56、FC制御部50、モータ制御部52及びコンバータ制御部54は、それぞれCPU、ROM、RAM、タイマの他、A/D変換器、D/A変換器等の入出力インタフェース、並びに、必要に応じてDSP(Digital Signal Processor)等を有している。
統括制御部56、FC制御部50、モータ制御部52及びコンバータ制御部54は、車内LANであるCAN(Controller Area Network)等の通信線70を通じて相互に接続され、各種スイッチ及び各種センサからの入出力情報を共有し、これら各種スイッチ及び各種センサからの入出力情報を入力として各CPUが各ROMに格納されたプログラムを実行することにより各種機能を実現する。
ここで、車両状態を検出する各種スイッチ及び各種センサとしては、発電電流Ifを検出する電流センサ32の他、1次電圧V1(バッテリ電圧Vbatに等しい。)を検出する電圧センサ61、1次電流I1を検出する電流センサ62、2次電圧V2(ディスコネクトダイオード33が導通しているとき、略燃料電池22の発電電圧Vfに等しい。)を検出する電圧センサ63、2次電流I2を検出する電流センサ64、通信線70に接続されるイグニッションスイッチ65、アクセルセンサ66、ブレーキセンサ67及び車速センサ68等がある。
統括制御部56は、燃料電池22の状態、バッテリ24の状態、モータ26の状態及び補機44の状態の他、各種スイッチ及び各種センサからの入力(負荷要求)に基づき決定した燃料電池車両20の総負荷要求量Ltから、燃料電池22が負担すべき燃料電池分担負荷量(要求出力)Lfと、バッテリ24が負担すべきバッテリ分担負荷量(要求出力)Lbと、回生電源が負担すべき回生電源分担負荷量Lrとの配分(分担)を調停しながら決定し、FC制御部50、モータ制御部52及びコンバータ制御部54に指令を送出する。
DC/DCコンバータ36は、バッテリ24(第1電力装置)と第2電力装置{燃料電池22又は回生電源(インバータ34とモータ26)}との間に、それぞれIGBT等のスイッチング素子からなる上アームスイッチング素子81{81u、81v、81w(81u〜81w)}と、下アームスイッチング素子82{82u、82v、82w(82u〜82w)}とからなる3つの相アーム{U相アームUA(81u、82u)、V相アームVA(81v、82v)、W相アームWA(81w、82w)}が並列的に接続された3相アームとして構成されている。
各アームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82wには、それぞれ、逆方向にダイオード83u〜83w、84u〜84wが接続されている。
DC/DCコンバータ36により1次電圧V1と2次電圧V2との間で電圧を変換する際に、エネルギを放出及び蓄積する1個のリアクトル90が、3相アームの各相のアーム(U相アームUA、V相アームVA、W相アームWA)の中点(共通接続された各中点)とバッテリ24との間に挿入されている。
上アームスイッチング素子81(81u〜81w)は、コンバータ制御部54から出力されるゲートの駆動信号(駆動電圧)UH、VH、WH(のハイレベル)によりそれぞれオンにされ、下アームスイッチング素子82(82u〜82w)は、ゲートの駆動信号(駆動電圧)UL、VL、WL(のハイレベル)によりそれぞれオンする。
図2に示すように、コンバータ制御部54は、各駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLを生成するために、基本デューティ決定部100と、駆動デューティ設定部102と、各入力処理部104a〜104cと、出力処理部106とを有する。基本デューティ決定部100は、減算部108、PID処理部110、除算部112及び加算部114から構成され、駆動デューティ設定部102は、相ローテーション処理部116、PWM計算処理部118及びデータ格納部120から構成される。
入力処理部104aは、統括制御部56(図1参照)からの指令である2次電圧V2の目標値(目標電圧)を減算部108に出力し、入力処理部104bは、電圧センサ61にて検出された1次電圧V1をAD変換して、AD変換後の1次電圧V1(のデジタル値)を除算部112に出力し、入力処理部104cは、電圧センサ63にて検出された2次電圧V2をAD変換して、AD変換後の2次電圧V2(のデジタル値)を減算部108に出力する。
減算部108は、前記目標電圧と1次電圧V1との偏差を算出してPID処理部110に出力する。PID処理部110は、前記偏差を用いたPID制御により前記目標電圧に応じたデューティ(基本デューティあるいは目標デューティ)のフィードバック項(F/B項)を算出し、算出した前記F/B項を加算部114に出力する。除算部112は、1次電圧V1を前記目標電圧で除したものを前記基本デューティのフィードフォワード項(F/F項)として加算部114に出力する。加算部114は、前記F/B項と前記F/F項との和を前記基本デューティとしてPWM計算処理部118に出力する。
相ローテーション処理部116は、後述するローテーションスイッチングにおいて、コンバータ制御部54から各アームスイッチング素子81(81u〜81w)、82(82u〜82w)に対する駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLの出力順序を決定し、決定した出力順序をPWM計算処理部118に出力する。PWM計算処理部118は、前記出力順序に基づいて、前記基本デューティから各駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLの各デューティを計算し、さらに、計算したデューティに応じた各アームスイッチング素子81(81u〜81w)、82(82u〜82w)のオン時間(駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLのハイレベルの時間)のデジタルデータを算出してデータ格納部120に出力する。データ格納部120は、前記オン時間のデジタルデータと前記出力順序とを対応付けて記憶するメモリである。
出力処理部106は、データ格納部120に格納されている前記デジタルデータに基づいて駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLを生成し、生成した駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLを所定のタイミングで(例えば、タイマによって所定時間を計時した後に)各アームスイッチング素子81(81u〜81w)、82(82u〜82w)に供給する。
ところで、1次電圧V1、代表的には、負荷が接続されていないときのバッテリ24の開放電圧OCV(Open Circuit Voltage)は、図3の燃料電池出力特性(電流電圧特性)91上に示すように、この燃料電池22の発電電圧Vfの最低電圧Vfminより高い電圧に設定されている。なお、図3において、OCV≒V1としている。
2次電圧V2は、燃料電池22(図1参照)が発電動作しているときには燃料電池22の発電電圧Vfに等しい電圧にされる。
ただし、燃料電池22の発電電圧Vfがバッテリ24の電圧Vbat(=V1)に等しくなったときには、図3に一点鎖線の太線で示す直結状態とされる。
直結状態では、上アームスイッチング素子81(81u〜81w)に供給される駆動信号UH、VH、WHのデューティが100%にされ、2次側2Sから1次側1Sへ電流が流れる場合には、上アームスイッチング素子81(81u〜81w)がオンにされて、該上アームスイッチング素子81(81u〜81w)を通じて電流が流れ、一方で、1次側1Sから2次側2Sへ電流が流れる場合には、ダイオード83u〜83wが導通して該ダイオード83u〜83wを通じて電流が流れる。
高出力時にDC/DCコンバータ36の2次側2Sから2次電流I2をインバータ34側に供給する{ソース(source)するという。}直結状態(高出力時直結状態又は第1直結状態という。)では、2次電圧V2がV2=V1−Vd(Vdは、ダイオード83u、83v、83wの順方向電圧降下)になる。
なお、直結状態は、高出力領域に限らず、制御上、必要な場合に利用される。例えば、燃料電池車両20の停車時(信号待ち等)には、燃費節約のために、エアコンプレッサ30の駆動が停止され、水素タンク28からの燃料ガスの供給も停止される。この場合、燃料電池22の発電電圧Vf(発電電流If)は抵抗器40等によるディスチャージ及びエアコンディショナ等の補機44への供給により燃料電池22内の残留燃料ガスが消尽するとゼロ値となるが、補機44への補機電流Iauの供給はバッテリ24により継続される。
このような燃料電池車両20を停車時、いわゆるアイドル停止時からブレーキペダル操作の解除、アクセルペダル操作等により燃料電池22を発電状態へ復帰させるときに、VCU23による燃料電池22の出力制御を円滑に再開するために、DC/DCコンバータ36の2次側2Sの電圧を直結状態の電圧に保持しておく。この直結状態(アイドル停止直結状態又は第2直結状態という。)においては、負荷が抵抗器40とされ、DC/DCコンバータ36の2次側2Sの電圧V2がV2=V1−Vdに保持される。
ここで、VCU23による燃料電池22の出力制御について説明する。
水素タンク28からの燃料ガス及びエアコンプレッサ30からの圧縮空気が供給されている発電時に、燃料電池22の発電電流Ifは、図3に示した特性91{関数F(Vf)という。}上で2次電圧V2、すなわち発電電圧Vfをコンバータ制御部54によりDC/DCコンバータ36を通じて設定することにより決定される。つまり、発電電流Ifは、発電電圧Vfの関数F(Vf)値として決定される。If=F(Vf)であり、例えば発電電圧VfをVf=Vfa=V2と設定すれば、その発電電圧Vfa(V2)の関数値としての発電電流Ifaが決定される。{Ifa=F(Vfa)=F(V2)}。
このように燃料電池22は、2次電圧V2(発電電圧Vf)を決定することにより発電電流Ifが決定されるので、燃料電池車両20を駆動制御する際には、2次電圧V2(発電電圧Vf)が目標電圧(目標値)に設定される。ただし、ダウンバータ42とバッテリ24間の配線の断線故障等によりバッテリ24が開放状態にされる等、バッテリ24(第1電力装置)が故障とみなされる特殊な場合には、1次電圧V1が目標電圧とされる。なお、図2は、2次電圧V2が目標電圧である場合のコンバータ制御部54の内部構成であるので、1次電圧V1が目標電圧とされる場合には、コンバータ制御部54内の基本デューティ決定部100の構成は適宜変更される。
燃料電池車両20等燃料電池22を含むシステムでは、DC/DCコンバータ36(図1参照)の2次側2Sの2次電圧V2が目標電圧となるようにVCU23が制御され、このVCU23により燃料電池22の出力(発電電流If)が制御される。以上が、VCU23による燃料電池22の出力制御の説明である。
次に、コンバータ制御部54により駆動制御されるDC/DCコンバータ36の基本動作について図4のフローチャートを参照して説明する。
上述したように、統括制御部56は、燃料電池22の状態、バッテリ24の状態、モータ26の状態及び補機44の状態の他、各種スイッチ及び各種センサからの入力(負荷要求)に基づき決定した燃料電池車両20の総負荷要求量Ltから、燃料電池22が負担すべき燃料電池分担負荷量(要求出力)Lfと、バッテリ24が負担すべきバッテリ分担負荷量(要求出力)Lbと、回生電源が負担すべき回生電源分担負荷量Lrとの配分(分担)を調停しながら決定し、FC制御部50、モータ制御部52及びコンバータ制御部54に指令を送出する。
ステップS1において、統括制御部56により、それぞれが負荷要求であるモータ26の電力要求と補機44の電力要求とエアコンプレッサ30の電力要求とから総負荷要求量Ltが決定(算出)されると、ステップS2において、統括制御部56は、決定した総負荷要求量Ltを出力するための燃料電池分担負荷量Lfと、バッテリ分担負荷量Lbと、回生電源分担負荷量Lrとの配分を決定する。ここで、燃料電池分担負荷量Lfを決定する場合、燃料電池22の効率ηが考慮される。
次いで、ステップS3において、コンバータ制御部54により、燃料電池分担負荷量Lfに応じて燃料電池22の発電電圧Vf、ここでは、2次電圧V2が決定される。
2次電圧V2が決定されると、ステップS4において、コンバータ制御部54は、決定した2次電圧V2となるようにDC/DCコンバータ36を駆動制御する。
この場合、コンバータ制御部54は、決定した2次電圧V2に応じて、DC/DCコンバータ36を昇圧動作、降圧動作又は直結動作で駆動する。
ステップS4において、DC/DCコンバータ36の2次側2Sからインバータ34側へ2次電流I2をソースする昇圧動作では、コンバータ制御部54は、下アームスイッチング素子82uオン(リアクタンス90にバッテリ電流Ibatから補機電流Iauを差し引いた1次電流I1によりエネルギを蓄積すると同時に、コンデンサ39から2次電流I2をインバータ34へソースする。以下同様)→ダイオード83u〜83w導通(リアクタンス90からエネルギ放出しコンデンサ39にエネルギを蓄積すると共に、2次電流I2としてインバータ34へソースする。以下同様)→下アームスイッチング素子82vオン→ダイオード83u〜83w導通→下アームスイッチング素子82wオン→ダイオード83u〜83w導通→下アームスイッチング素子82uオン…の順でDC/DCコンバータ36をローテーションスイッチングする。
なお、上アームスイッチング素子81u〜81w及び下アームスイッチング素子82u〜82wのオンデューティは、出力電圧V2が保持されるように決定される。
また、ステップS4において、DC/DCコンバータ36の2次側2Sからインバータ34側へ2次電流I2をソースする高出力直結動作では、ダイオード83u〜83wが導通状態となって、2次電圧V2がV2=V1−Vdとなる。
さらに、ステップS4において、DC/DCコンバータ36の2次側2Sから1次側1Sの補機44やバッテリ24に2次電流I2を供給する(2次側2Sでは、シンク(sink)するという。)降圧動作では、上アームスイッチング素子81uオン(リアクタンス90にコンデンサ39から出力される2次電流I2によりエネルギを蓄積すると共に、コンデンサ38から補機44及び要求に応じてバッテリ24に1次電流I1を供給する。以下同様)→ダイオード84u〜84w導通(ダイオード84u〜84wはフライホイールダイオードとして導通し、リアクタンス90からエネルギ放出され、コンデンサ38にエネルギを蓄積すると共に、補機44及び要求に応じてバッテリ24に1次電流I1を供給する。以下同様)→上アームスイッチング素子81vオン→ダイオード84u〜84w導通→上アームスイッチング素子81wオン→ダイオード84u〜84w導通→上アームスイッチング素子81uオン…の順でDC/DCコンバータ36をローテーションスイッチングする。
回生電圧が存在する場合、この降圧動作時に回生電源分担負荷量Lrがシンクされる2次電流に加算される。この降圧動作における上アームスイッチング素子81u〜81w及び下アームスイッチング素子82u〜82wのオンデューティも、決定された出力電圧V2に応じて制御される。
2次電圧V2及び1次電圧V1は、前述したコンバータ制御部54内の基本デューティ決定部100及び駆動デューティ設定部102により設定された各駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLのデューティ(あるいはオン時間)と、各駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLの供給に基づく各アームスイッチング素子81(81u〜81w)、82(82u〜82w)のスイッチング動作とによって制御される。
以上が、コンバータ制御部54により駆動制御されるDC/DCコンバータ36の基本動作の説明である。
なお、各アームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82wは、図示しない金属製の放熱板(ヒートスプレッダ)上に固定された、いわゆる6in1モジュールとされる。
次に、DC/DCコンバータ36を含むVCU23によるローテーションスイッチングの動作についてより詳しく説明する。
図5にVCU23の降圧動作時(2次電流I2のシンク時)のタイムチャート、図6にVCU23の昇圧動作時(2次電流I2のソース時)のタイムチャートを示す。
図5及び図6において、リアクトル90に流れる1次電流I1の符号は、1次側1Sから2次側2Sへ流れる昇圧時電流(DC/DCコンバータ36の2次側2Sからインバータ34へ流れ出すソース電流)を正(+)、2次側2Sから1次側1Sへ流れる降圧時電流(燃料電池22又はインバータ34から2次側2Sへ流れ込むシンク電流)を負(−)に取っている。
また、コンバータ制御部54から出力される駆動信号UH、UL、VH、VL、WH、WLの波形中、ハッチングを付けた期間は、駆動信号UH、UL、VH、VL、WH、WLが供給されているアームスイッチング素子(例えば、駆動信号UHに対応するアームスイッチング素子は上アームスイッチング素子81u)が実際にオンしている(電流が流れている)期間を示している。つまり、駆動信号UH、UL、VH、VL、WH、WLが供給されていても、該当する並列ダイオード83u〜83w、84u〜84wがOFFになっていなければ該当するアームスイッチング素子に電流が流れないことに留意する。
図5及び図6に示すように、DC/DCコンバータ36の降圧動作及び昇圧動作のいずれの場合にも、コンバータ制御部54から出力される駆動信号UH、UL、VH、VL、WH、WLの波形から理解されるように、3相アームを構成するUVW各相アームUA、VA、WA(UA〜WA)を1スイッチング周期2π毎に、駆動信号UH、UL、VH、VL、WH、WLをU相、V相、W相、U相、…と交替(ローテーション)してオンすると共に、UVW各相アームUA〜WAをオンするとき、駆動信号UH、VH、WHによりUVW各相アームUA〜WAを構成する上アームスイッチング素子81(81u〜81w)をオン(図5参照)又は駆動信号UL、VL、WLによりUVW各相アームUA〜WAを構成する下アームスイッチング素子82(82u〜82w)をオン(図6参照)している。
この場合、図5、図6及び後述する図7から分かるように、上下アームスイッチング素子81、82間が同時にオンして電圧V2が短絡することを防止するために、上アームスイッチング素子81u〜81w又は下アームスイッチング素子82u〜82wを交互にオンするための駆動信号UHと駆動信号UL、駆動信号VHと駆動信号VL、及び駆動信号WHと駆動信号WLとの間でそれぞれデッドタイムdtを挟んでオンし、且つ多相アームを構成する相アームUA〜UWを交替してオンするときに、駆動信号ULと駆動信号VHとの間、駆動信号VLと駆動信号WHとの間、及び駆動信号WLと駆動信号UHとの間にそれぞれデッドタイムdtを挟んでオンするようにしている。すなわち、デッドタイムdtを挟んで、いわゆる同期スイッチングを行っている。
降圧動作を説明する図5において、例えば、時点t1〜t2の間で駆動信号UHにより上アームスイッチング素子81uがオンしている期間には、燃料電池22及び(又は)回生電源による2次電流I2により上アームスイッチング素子81uを通じてリアクトル90にエネルギが蓄積される。時点t2〜t5までのデッドタイムdt、駆動信号ULがオン(但し、下アームスイッチング素子82uに電流は流れない。)及びデッドタイムdtの期間では、リアクトル90に蓄積されたエネルギが、フライホイールダイオードとして機能しオンとなっているダイオード84u〜84wを通じて1次側1Sに1次電流I1として放出される。時点t5以降、順次、上アームスイッチング素子81v、81w、81u、…がオンし、同様の動作を繰り返す。
昇圧動作を説明する図6において、例えば、時点t13〜t14の間で駆動信号ULにより下アームスイッチング素子82uがオンしている期間には、バッテリ24からの1次電流I1によりリアクトル90にエネルギが蓄積される。時点t14〜t17までのデッドタイムdt、駆動信号VHがオン(但し、上アームスイッチング素子81vに電流は流れない。)及びデッドタイムdtの期間では、リアクトル90に蓄積されたエネルギが、整流ダイオードとして機能しオンとなったダイオード83u〜83wを通じて2次側2Sに放出される。時点t17以降、順次、下アームスイッチング素子82v、82w、82u、…がオンし、同様の動作を繰り返す。
なお、昇圧動作と降圧動作の移り変わり(遷移)時の動作を説明する図7において、例えば、時点t20〜t21の間で駆動信号UHにより上アームスイッチング素子81uがオンしている期間(ハッチングで示す期間)には、燃料電池22及び(又は)回生電源による2次電流I2により上アームスイッチング素子81uを通じてリアクトル90にエネルギが蓄積される。
時点t21から電流の流れる向きが反転する(符号が負から正に反転する)時点t22までの期間では、リアクトル90に蓄積されたエネルギが、オンとなったフライホイールダイオードとして機能するダイオード84u〜84wを通じて1次側1Sに放出される。
時点t22〜t23の間で駆動信号ULにより下アームスイッチング素子82uがオンしている期間では、バッテリ24からの1次電流I1によりリアクトル90にエネルギが蓄積される。時点t23から電流の流れる向きが反転する(符号が正から負に反転する)時点t24までの期間では、リアクトル90に蓄積されたエネルギが、オンとなったダイオード83u〜83wを通じて2次側2Sに放出される。以下、同様の動作を繰り返す。このように、この実施形態に係る3相ローテーションスイッチングでは、昇圧動作と降圧動作との間で動作が滑らかに移り変わる。
ところで、上記のローテーションスイッチングの動作において、コンバータ制御部54から互いに同一のデューティを目標デューティとする駆動信号UH、VH、WHをアームスイッチング素子81u〜81wに供給し、一方で、互いに同一のデューティを目標デューティとする駆動信号UL、VL、WLをアームスイッチング素子82u〜82wに供給する際に、前記目標デューティの変化に対して2次電圧V2が連続的(リニア)に変化せず、この結果、デューティに対応した電圧からずれた2次電圧V2がDC/DCコンバータ36から出力される場合がある。
特に、図8に示す降圧動作や、図9に示す昇圧動作においては、このような2次電圧V2の電圧変動が顕著となる。
ここで、図8の降圧動作及び図9の昇圧動作における目標電圧に対する2次電圧の電圧変動について、図8〜図11を参照しながら、具体的に説明する。
図8の昇圧動作において、各アームスイッチング素子81u〜81wの最小オン時間{アームスイッチング素子81u〜81wを確実にオン動作(オフ状態からオン状態に切り替える動作)させることができるオン時間の閾値}を下回るオン時間に応じたデューティの駆動信号UH、VH、WHをアームスイッチング素子81u〜81wに供給し、一方で、図9の昇圧動作において、各アームスイッチング素子82u〜82wの最小オン時間{アームスイッチング素子82u〜82wを確実にオン動作させることができるオン時間の閾値}を下回るオン時間に応じたデューティの駆動信号UL、VL、WLをアームスイッチング素子82u〜82wに供給した場合には、各アームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82wのオン動作を確実に行わせることができない。
図10A〜図10Dは、一例として、昇圧動作において、1次電圧V1を一定とし、駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLのデューティを変化させた場合における2次電圧V2の変化を示したグラフである。
図10A及び図10Cは、昇圧動作での2次電圧V2の変化を示すグラフであり、図10B及び図10Dは、昇圧動作でのデューティの変化を示すグラフである。
図10A及び図10Bは、2次電流I2が比較的低い場合を示し、一方で、図10C及び図10Dは、2次電流I2が比較的高い場合を示している。
なお、図10A〜図10Dでは、駆動信号UH、VH、WHは同じデューティの駆動信号であり、一方で、駆動信号UL、VL、WLは、同じデューティの駆動信号である。
また、図10B及び図10Dにおいて、縦軸のデューティは、駆動信号UH、VH、WHのデューティを基準として示しており、従って、この実施形態におけるスイッチング動作では、駆動信号UH、VH、WHのデューティがDであれば、駆動信号UL、VL、WLのデューティは(100−D)となる。
図10B及び図10Dでは、デューティの特性136、144を時間tの経過に伴ってリニアに変化させた。これに対して、2次電圧V2の特性132、140(実線)は、デューティD0(t=0)からデューティD1、D3(時点t40、t43)まではデューティの変化に伴って略リニアに減少しているが、デューティがD1、D3を上回ると、該デューティの変化に伴って2次電圧V2がリニアに変化しない電圧変動、すなわち、デューティの式{昇圧動作における(1−V1/V2)、降圧動作におけるV1/V2のデューティ}に合致しない電圧変動が発生し、デューティがD2、D4を上回ると、該デューティが100%ではないにも関わらず、V1≒V2の直結状態(直結領域)に至る。
なお、図10A及び図10C中、特性134、142(破線)は、前記電圧変動が発生しない2次電圧V2の理想的な特性を示し、一点鎖線130、138は、1次電圧V1を示している。また、図10A及び図10Cにおける直結状態は、図3の一点鎖線の太線で示す直結状態である。
このような電圧変動が発生する原因としては、図11に示すように、各アームスイッチング素子82u〜82w(図1参照)の最小オン時間を下回るオン時間に応じたデューティ{(100−D1)〜0あるいは(100−D3)〜0のデューティ}の駆動信号UL、VL、WLをコンバータ制御部54からアームスイッチング素子82u〜82wに供給しても、該アームスイッチング素子82u〜82wのオン動作を確実に行わせることができず、この結果、このようなデューティの領域(以下、デューティ領域ともいう。)におけるアームスイッチング素子82u〜82wの不安定なスイッチング動作に起因して、前記デューティの変化に対して2次電圧V2を連続的(リニア)に制御することができなくなって(DC/DCコンバータ36での電圧変換が不安定となって)、デューティに対応する電圧からずれた2次電圧V2がDC/DCコンバータ36から出力されることにある。
なお、図10A〜図10Dにおいて、2次電流I2が異なる場合(図10Aと図10C)には、特性132、140の電圧変動のパターン等が互いに異なっているものの、所定のデューティD1、D3を上回るデューティ領域で電圧変動が発生する点では共通している。
図10A〜図11では、一例として、昇圧動作において、各アームスイッチング素子82u〜82wの最小オン時間を下回るオン時間に応じたデューティの駆動信号UL、VL、WLを各アームスイッチング素子82u〜82wに供給するときの問題点について説明した。
しかしながら、実際上、上記した問題以外にも、降圧動作において、各アームスイッチング素子81u〜81wの最小オン時間を下回るオン時間に応じたデューティの駆動信号UH、VH、WHを各アームスイッチング素子81u〜81wに供給したときにも、同様の問題が発生する。
そこで、この実施形態において、コンバータ制御部54は、DC/DCコンバータ36での電圧変換が不安定となる前記デューティ領域(デューティD1、D3を上回るデューティの領域)において、以下に説明する駆動信号UH、VH、WHのデューティを互いに異なるものとする処理を行い、一方で、駆動信号UL、VL、WLのデューティについても互いに異なるものとする処理を行う。
図12は、前記デューティ領域におけるコンバータ制御部54での駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLのデューティの設定処理を説明するためのフローチャートである。
ステップS10において、基本デューティ決定部100(図2参照)は、統括制御部56から入力処理部104aを介して入力された2次電圧V2の目標値(目標電圧)と、電圧センサ61から入力処理部104bを介して入力された1次電圧V1と、電圧センサ63から入力処理部104cを介して入力された2次電圧V2とに基づいて、基本デューティを計算し、計算した基本デューティをPWM計算処理部118に出力する。なお、基本デューティ決定部100における基本デューティの計算方法については、既に説明したので、その詳細な説明については省略する。
次のステップS11において、PWM計算処理部118は、相ローテーション処理部116からの駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLの出力順序と、基本デューティ決定部100からの前記基本デューティとを用いて、各駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLのデューティを計算(設定)する。
図13A及び図13Bは、前記ステップS11の処理について、降圧動作での3つの駆動信号UH、VH、WHあるいは昇圧動作での3つの駆動信号UL、VL、WLに対するデューティの設定を模式的に示す説明図である。ここでは、駆動信号UH、駆動信号VH、駆動信号WHあるいは駆動信号UL、駆動信号VL、駆動信号WLの順に継時的に(連続的に)コンバータ制御部54からアームスイッチング素子81u〜81wあるいは82u〜82wに駆動信号UH、駆動信号VH、駆動信号WHあるいは駆動信号UL、駆動信号VL、駆動信号WLが供給されるものとする。
ステップS11において、PWM計算処理部118は、基本デューティを駆動信号VH又はVLのデューティ(目標デューティ)として設定し、次に、図13Aに示すように、駆動信号VH又はVLの前の信号である駆動信号UH又はULのデューティを(基本デューティ+α)(α:所定値)に設定すると共に、駆動信号VH又はVLの後の信号である駆動信号WH又はWLのデューティを(基本デューティ−α)に設定するか、あるいは、図13Bに示すように、駆動信号UH又はULのデューティを(基本デューティ−α)に設定すると共に、駆動信号WH又はWLのデューティを(基本デューティ+α)に設定する。なお、図13A及び図13Bにおいて、(基本デューティ+α)に設定されるデューティは、最小オン時間を上回るオン時間に応じたデューティであり、基本デューティ及び(基本デューティ−α)にそれぞれ設定される各デューティは、最小オン時間を下回るオン時間に応じたデューティである。
次に、ステップS12において、PWM計算処理部118は、各駆動信号UH、VH、WHあるいは各駆動信号UL、VL、WLのデューティに応じたオン時間(各駆動信号UH、VH、WHあるいは各駆動信号UL、VL、WLのハイレベルの時間)を計算し、最後に、計算されたオン時間(のデジタルデータ)をデータ格納部120に出力する。ステップS13において、データ格納部120は、前記各オン時間のデジタルデータと前記出力順序(この場合は、駆動信号UH、駆動信号VH、駆動信号WHの出力順、あるいは、駆動信号UL、駆動信号VL、駆動信号WLの出力順)とを対応付けて記憶する。
ステップS14において、出力処理部106は、データ格納部120に格納されている前記各デジタルデータに基づいて駆動信号UH、VH、WHあるいは駆動信号UL、VL、WLを生成し、生成した駆動信号UH、VH、WHあるいは駆動信号UL、VL、WLを所定のタイミングで{例えば、タイマによって、スイッチング周期2πの3倍の処理周期(3×2π)を計時した後に}アームスイッチング素子81u〜81wあるいは82u〜82wに供給する。
このようにしてデューティが設定された駆動信号UH、VH、WHあるいは駆動信号UL、VL、WLをアームスイッチング素子81u〜81wあるいは82u〜82wに繰り返し供給すると、U相アームUA(アームスイッチング素子81u又は82u)、V相アームVA(アームスイッチング素子81v又は82v)及びW相アームWA(アームスイッチング素子81w又は82w)のうち、図13Aの場合については、V相アームVA及びW相アームWAには、最小オン時間を下回るオン時間の駆動信号VH、WH又はVL、WLが供給されるので、オン動作を行わない可能性があるが、一方で、U相アームには、最小オン時間を上回るオン時間の駆動信号UH又はULが供給されるので、確実にオン動作を行わせることができる。一方、図13Bの場合については、U相アームUA及びV相アームVAには、最小オン時間を下回るオン時間の駆動信号UH、VH又はUL、VLが供給されるので、オン動作を行わない可能性があるが、一方で、W相アームには、最小オン時間を上回るオン時間の駆動信号WH又はWLが供給されるので、確実にオン動作を行わせることができる。
図13A及び図13Bでは、降圧動作での3つの駆動信号UH、VH、WHあるいは昇圧動作での3つの駆動信号UL、VL、WLに対して図12のステップS11の処理を行った場合について説明しているが、この実施形態では、前述したように、スイッチング周期2πの期間中に、駆動信号UHと駆動信号UL、駆動信号VHと駆動信号VL、駆動信号WHと駆動信号WLとがそれぞれ生成される。従って、降圧動作での駆動信号UH、VH、WHあるいは昇圧動作での駆動信号UL、VL、WLに対するデューティを(基本デューティ+α)、基本デューティ、(基本デューティ−α)に設定した場合に、PWM計算処理部118は、設定した駆動信号UH、VH、WHあるいは駆動信号UL、VL、WLのデューティに対応して、降圧動作での駆動信号UL、VL、WLあるいは昇圧動作での駆動信号UH、VH、WHのデューティも設定する。
なお、前記降圧動作の場合には、駆動信号UL、VL、WLのデューティは、それぞれ、{100−(基本デューティ+α)}、(100−基本デューティ)、{100−(基本デューティ−α)}となるか、あるいは、{100−(基本デューティ−α)}、(100−基本デューティ)、{100−(基本デューティ+α)}となる。一方、前記昇圧動作の場合には、駆動信号UH、VH、WHのデューティは、それぞれ、{100−(基本デューティ+α)}、(100−基本デューティ)、{100−(基本デューティ−α)}となるか、あるいは、{100−(基本デューティ−α)}、(100−基本デューティ)、{100−(基本デューティ+α)}となる。
すなわち、降圧動作の際に、図14又は図15に示す駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLをアームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82wに繰り返し供給して駆動させ、一方で、昇圧動作の際に、図16又は図17に示す駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLをアームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82wに繰り返し供給して駆動させる。
この場合、図14では、駆動信号UHによって上アームスイッチング素子81uがオンとなり、駆動信号VH、WHによって上アームスイッチング素子81v、81wがオフとなるので、駆動信号UHのデューティが見掛け上低下、すなわち、スイッチング周期2πに対する駆動信号UHのデューティが、上アームスイッチング素子81v、81wのオフによって、スイッチング周期6πに対するデューティとみなされる。これにより、駆動信号UHのデューティは、見掛け上、前記デューティ領域のデューティから外れることになり、DC/DCコンバータ36では、降圧動作を安定に(電圧変換を安定に)行うことができる。
また、図15では、駆動信号WHによって上アームスイッチング素子81wがオンとなり、駆動信号UH、VHによって上アームスイッチング素子81u、81vがオフとなるので、図14の場合と同様に、駆動信号WHのデューティが見掛け上低下して、前記デューティ領域のデューティから外れることになる。
一方、図16においても、駆動信号ULによって下アームスイッチング素子82uがオンとなり、駆動信号VL、WLによって下アームスイッチング素子82v、82wがオフとなるので、駆動信号ULのデューティが見掛け上、スイッチング周期6πに対するデューティとみなされる。これにより、駆動信号ULのデューティも、見掛け上、前記デューティ領域のデューティから外れることになり、DC/DCコンバータ36では、昇圧動作を安定に(電圧変換を安定に)行うことができる。
また、図17では、駆動信号WLによって下アームスイッチング素子82wがオンとなり、駆動信号UL、VLによって下アームスイッチング素子82v、82wがオフとなるので、図16の場合と同様に、駆動信号WLのデューティが見掛け上低下して、前記デューティ領域のデューティから外れることになる。
図18A〜図18Cは、実際に、2次電圧V2の目標電圧を時間変化させて1次電圧V1に近づけたときの該2次電圧V2の変化を示すグラフであり、図19は、図18A〜図18Cのグラフを説明するための模式的なグラフである。
なお、図18A〜図18Cにおいて、左側のグラフは、前記デューティ領域において、図12の処理を適用しない場合(図8のタイムチャートに示す駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLがアームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82wに供給される場合)を示し、右側のグラフは、前記デューティ領域において、図12の処理を適用した場合(図13A〜図17に基づく駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLがアームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82wに供給される場合)を示している。また、図18Aは、2次電流I2(=I2A)が比較的低い場合であり、図18Bは、2次電流I2(=I2B)がI2Aよりも高い場合(I2A<I2B)であり、図18Cは、2次電流I2(=I2C)が比較的高い場合(I2A<I2B<I2C)を示している。さらに、図19は、図18A〜図18Cの左側のグラフを模式的に示すグラフである。
図19で模式的に示すように、前記デューティ領域において、図12の処理を適用せず、互いに同一デューティの駆動信号UH、VH、WHをアームスイッチング素子81u〜81wに繰り返し供給し、一方で、互いに同一デューティの駆動信号UL、VL、WLをアームスイッチング素子82u〜82wに繰り返し供給すれば、2次電圧V2の目標電圧の特性196を時間変化させて1次電圧V1を示す一点鎖線198に近づけた際に、該特性196の変化に対して2次電圧V2の特性194が変動すると共に、2次電圧V2が不連続に変化する。
すなわち、図18A〜図18Cの左側のグラフに示すように、実際に、前記デューティ領域において、図12の処理を適用せず、互いに同一デューティの駆動信号UH、VH、WHをアームスイッチング素子81u〜81wに繰り返し供給し、一方で、互いに同一デューティの駆動信号UL、VL、WLをアームスイッチング素子82u〜82wに繰り返し供給した際に、目標電圧の特性174、182、190を時間変化させて1次電圧V1を示す一点鎖線176、184、192に近づけると、該特性174、182、190の変化に対して2次電圧V2の特性160、164、168が変動する(2次電圧V2がリニアに変化しない)。
これに対して、図18A〜図18Cの右側のグラフに示すように、前記デューティ領域において、図12の処理を適用して、互いに異なるデューティの駆動信号UH、VH、WHをアームスイッチング素子81u〜81wに繰り返し供給し、一方で、互いに異なるデューティの駆動信号UL、VL、WLをアームスイッチング素子82u〜82wに繰り返し供給すれば、目標電圧の特性170、178、186を時間変化させて1次電圧V1を示す一点鎖線172、180、188に近づけた際に、該特性170、178、186の変化に対する2次電圧V2の特性158、162、166での電圧変動は、確実に抑制される(2次電圧V2はリニアに変化する)。
従って、DC/DCコンバータ36での電圧変換が不安定となる前記直結状態近傍の前記デューティ領域において、駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLに対して図12の処理を適用することにより、アームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82wのオン動作を確実に行わせて、前記電圧変換を安定に行うことが可能となる。
以上説明したように上述した実施形態によれば、直結状態近傍のデューティ領域において、最小オン時間を下回る目標オン時間(目標電圧に応じたアームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82wのオン時間)に応じた基本デューティ(目標デューティ)を中心とし、この基本デューティによるアームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82wの駆動の前後のデューティを、前記基本デューティから意図的にαだけずらした(オン時間を意図的にばらつかせた)デューティに設定し、前記基本デューティ及び前記前後のデューティ{(基本デューティ+α)、(基本デューティ−α)}に設定し、前記基本デューティ及び前記前後のデューティ{(基本デューティ+α)、(基本デューティ−α)}によりアームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82wを駆動(オン)するようにしている。
この場合、前記前後のデューティのうち少なくとも一方のデューティ(基本デューティ+α)が前記最小オン時間に応じたデューティを上回るように設定することで、前記目標オン時間及び他方のデューティ(基本デューティ−α)に応じたオン時間が前記最小オン時間を下回り、且つこれらのオン時間によってアームスイッチング素子がオンしないときでも、前記一方のデューティに応じたオン時間によってアームスイッチング素子をオンすることができる。
これにより、前記基本デューティ及び前記他方のデューティによるオフ時間の増加によって、前記一方のデューティが見掛け上低下し{例えば、(基本デューティ+α)のデューティがスイッチング周期2πのデューティからスイッチング周期6πの周期に変化し}、前記目標オン時間が前記最小オン時間を下回るオン時間であるにも関わらず、前記一方のデューティによってアームスイッチング素子を確実にオンすることができる。この結果、前記直結状態の近傍において、デューティの変化に対して出力電圧(例えば、2次電圧V2)を連続的に変化させることが可能となり、デューティに対応する電圧(例えば、2次電圧V2の目標値)からずれた出力電圧がDC/DCコンバータ36から出力されることを確実に防止することが可能となる。従って、この実施形態は、アームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82wのオン時間又はオフ時間が最小オン時間を下回る、前記デューティ領域での2次電圧V2の電圧変動の抑制に対して好適である。
また、アームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82w間で最小オン時間のばらつきがあっても、該ばらつきを考慮してデューティを設定し、前記設定したデューティに基づいて各アームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82wをオンすることで、DC/DCコンバータ36での電圧変換を安定して行うことができる。
従って、この実施形態では、図3に一点鎖線の太線で示す直結状態(V1≒V2)近傍のデューティ領域における2次電圧V2の変動や不連続な変化を確実に抑制することができる。前述したように、直結状態近傍では、DC/DCコンバータ36により変換されたバッテリ24からのバッテリ電流Ibatによる2次電流I2を発電電流Ifに加算させてモータ26にモータ電流Imとして供給するが、この領域では、発電電圧Vfの僅かな変化に対して発電電流Ifが大きく変化するので、駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLのデューティを意図的にばらつかせて2次電圧V2の変動や不連続な変化を確実に抑制させることにより、この実施形態は、DC/DCコンバータ36に対するより安定且つ正確な電圧変換が要求される前記直結状態近傍でのモータ電流Imの供給に好適に適用可能である。
また、燃料電池車両20との関連において、この実施形態の効果についてさらに付言すれば、前記直結状態近傍で、燃料電池22のみから発電電流Ifを供給し続けると、僅かの電圧の変化に対して電流が大きく変動し、この電流変動に対応して燃料電池22に供給する水素の供給量を増減させると、燃料電池車両20の燃費悪化や、燃料電池22の出力低下及び寿命低下の原因となる。また、前記直結状態近傍で、DC/DCコンバータ36に対して同一デューティの駆動信号のみ供給すると、前述したDC/DCコンバータ36の不安定な電圧変換(電圧変動や不連続な電圧変化)が発生する。このような不安定な電圧変換の状況下でも、DC/DCコンバータ36は、前記電圧変動及び前記不連続な電圧変化や前記電流変動(電力変動)に対応して、バッテリ24から電力の入出力を調整する必要がある。この結果、DC/DCコンバータ36における前記調整に起因した損失の発生や、燃料電池車両20のさらなる燃費悪化につながるおそれがある。
これに対して、この実施形態では、前述したように、駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLのデューティを意図的にばらつかせて2次電圧V2の変動や不連続な変化を確実に抑制し、DC/DCコンバータ36での電圧変換をより安定に行わせることができるので、前記直結状態近傍におけるDC/DCコンバータ36での損失の発生や燃料電池車両20の燃費悪化を回避することが可能となる。
また、この実施形態において、コンバータ制御部54は、前のデューティ、基本デューティ及び後のデューティの順に前記各デューティを繰り返し設定する際に、前記前のデューティと前記後のデューティとを互いに異なるデューティ、すなわち、(基本デューティ+α)を前記前のデューティに設定すると共に、(基本デューティ−α)を前記後のデューティに設定するか、あるいは、(基本デューティ−α)を前記前のデューティに設定すると共に、(基本デューティ+α)を前記後のデューティに設定してもよい。これにより、基本デューティに応じた目標オン時間Aに対して前記前後のデューティに応じたオン時間は、前記目標オン時間Aに対してαに相当する時間分だけずれたオン時間B、Cとなり、この結果、アームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82wは、例えば、…、A、B、C、A、B、C、…の順にオンするので、2次電圧V2の電圧変動を効率よく抑制することができる。
さらに、コンバータ制御部54は、前のデューティ、基本デューティ及び後のデューティの順に前記各デューティを繰り返し設定する際に、繰り返される基本デューティについて、それぞれ、(基本デューティ+α)を基本デューティに対する前後のデューティのうち一方のデューティに設定すると共に、(基本デューティα)を他方のデューティに設定してもよい。これにより、目標オン時間Aに対して一方のオン時間をB、他方のオン時間をCとすると、各アームスイッチング素子81u〜81w、82u〜82wは、例えば、…、A、B、A、C、A、B、…の順にオンするので、この場合でも、2次電圧V2の電圧変動を効率よく抑制することができる。
さらに、この実施形態において、コンバータ制御部54は、3相アームからなるDC/DCコンバータ36の相アームUA〜WAをオンする際、図5〜図7を参照して説明したように、3相アームを構成するUVW相アームUA〜WAを交替してオンし、交替してオンする際、ある相アーム、例えば、U相アームUAの上アームスイッチング素子81uをオンした(図5〜図7参照)後、U相アームUAの下アームスイッチング素子82uをオンし(図7参照)、その後、次の相であるV相アームVAの上アームスイッチング素子81vをオンした後(図5〜図7参照)、V相アームVAの下アームスイッチング素子82vの順にオンする(図7参照)というように、スイッチングタイミングをローテーションしている。
すなわち、3相アームをU相オン→V相オン→W相オン→U相オン…とローテーションしてスイッチングするローテーションスイッチングでは、一時に1つの上アームスイッチング素子81又は下アームスイッチング素子82のみをオンするようにしているので、上アームスイッチング素子81及び下アームスイッチング素子82を放熱板上に配置した場合に、放熱経路の重なり部分(前記放熱板の表面積をオーバーラップして使用する部分)が発生しないことから放熱性が向上する。その結果、前記6in1モジュールの小型・軽量化が図れる。
従って、上述した実施形態によれば、上アームスイッチング素子81(81u〜81w)と下アームスイッチング素子82(82u〜82w)とが同時にオンすることがなく、且つ異なる相アームUA〜WAが同時にオンすることもないので、常時、多くても1つのアームスイッチング素子(スイッチング素子)がオン状態とされるのみである。よって、放熱性に優れる(放熱設計が容易である)。
また、この実施形態では、相アームUA〜WAを交替してオンするが、相アームUA〜WAを交替してオンするとき、相アームUA〜WAを構成する上アームスイッチング素子81(81u、81v、81wのいずれか)又は下アームスイッチング素子82(82u、82v、82wのいずれか)のいずれか一方をオンするように制御する。
なお、多相アームを構成する相アームUA〜WAを交替してオンする際、ある相の上アームスイッチング素子81u〜81wと下アームスイッチング素子82u〜82wとを順序を問わずに交互にオンした後、次の相アームの上アームスイッチング素子81u〜81wと下アームスイッチング素子82u〜82wとを順序を問わずに交互にオンすることができる。また相アームUA〜WAを交替でオンする際、1スイッチング周期2π毎に交替してオンするように制御することで制御が容易になる。2スイッチング周期4π以上の周期毎に相アームUA〜WAを交替でオンするように制御してもよい。
さらに、1スイッチング周期2π中に、上アームスイッチング素子81及び(又は)下アームスイッチング素子82u〜82wを複数回オンしてもよい。
さらにまた、コンバータ制御部54は、各相アームUA〜WAのうち所定の相アームを基本デューティで駆動する相アームに固定すると共に、他の相アームを前記ばらつかせたデューティ{前後のデューティとしての(基本デューティ+α)及び(基本デューティ−α)}に対応するオン時間で駆動する相アームに固定することも可能である。これにより、例えば、各相アームUA〜WAが前述した、…、A、B、C、A、B、C、…の順に駆動する際に、A、B、Cでそれぞれ駆動する相をコンバータ制御部54側で簡単に固定することができる。
なお、この実施形態では、3相のDC/DCコンバータ36ではなく、図20に示すように、1相のDC/DCコンバータ36Aとした燃料電池車両20Aにも適用することができる。1相に限らず、2相以上の複数の相であっても、この実施形態を適用することができる。
1相のDC/DCコンバータ36Aの場合には、コンバータ制御部54は、前記デューティ領域において、図21のステップS15に示すように、図12のステップS11の処理に代えて、1相分につき、基本デューティを中心とした前後のデューティに対して、一方のデューティを(基本デューティ+α)に設定すると共に他方のデューティを(基本デューティ−α)に設定するか、あるいは、一方のデューティを(基本デューティ−α)に設定すると共に他方のデューティを(基本デューティ+α)に設定する。
図22Aは、ステップS15の処理を行わない場合(デューティのばらつきがない場合)の駆動信号UH又はULのタイムチャートを示し、図22B及び図22Cは、ステップS15の処理を行った場合(デューティのばらつきがある場合)の駆動信号UH又はULのタイムチャートを示している。
図22Aに示す駆動信号UH又はULのタイムチャートにおいて、駆動信号UH又はULのデューティが前述の直結状態の近傍のデューティ領域の範囲内にある場合に、同一のデューティの駆動信号UH又はULをアームスイッチング素子81u、82uに供給すると、図10A及び図10Cに示す2次電圧V2の電圧変動や不連続な変化が発生する。
これに対して、図22Bに示す駆動信号UH又はULのタイムチャートにおいて、駆動信号UH又はULのデューティについて、あるデューティを基本デューティに設定し、前記基本デューティの前のデューティを(基本デューティ+α)に設定すると共に前記基本デューティの後のデューティを(基本デューティ−α)に設定するか、あるいは、図22Cに示すように、あるデューティを基本デューティに設定し、前記基本デューティの前のデューティを(基本デューティ−α)に設定すると共に前記基本デューティの後のデューティを(基本デューティ+α)に設定することで、3相のDC/DCコンバータ36の場合と同様に、2次電圧V2の電圧変動や不連続な変化を確実に抑制することができる。
また、この実施形態では、燃料電池車両20、20Aではなく、図23に示すように、バッテリ駆動車両(電気自動車)21に適用することもできる。勿論、エンジンとバッテリとモータとを搭載した、いわゆるパラレル方式又はシリーズパラレル方式のハイブリッド自動車にも適用することもできる。
さらに、モータ26は、車両用に限らない。例えば、エレベータ昇降用等のモータにも適用することもできる。
さらにまた、図24に示すように、インバータ34を単相の負荷35に代替する他、モータ制御部52を負荷制御部53に代替し、イグニッションスイッチ65を電源スイッチ65aに代替し、各種センサ66a、67a、68aに代替した燃料電池システム20Bに適用することもできる。統括制御部56は、コンバータ制御部54を通じてVCU23を制御し、結果として負荷電流ILを制御する。
また、図25に示すように、UVW各相アームUA〜UWの中点にそれぞれリアクトル90u、90v、90wを接続した3個のリアクトル90u、90v、90wを利用するDC/DCコンバータ36Bも用いることもできる。
さらに、この実施形態は、DC/DCコンバータ36が上アームスイッチング素子81u及びダイオード84uの直列回路にて構成され、DC/DCコンバータ装置23が前述した降圧動作のみ行う燃料電池車両20や、DC/DCコンバータ36がダイオード83u及び下アームスイッチング素子82uの直列回路にて構成され、DC/DCコンバータ装置23が前述した昇圧動作のみ行う燃料電池車両20にも適用可能である。
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。