JP6024256B2 - 非水電解質二次電池用電極、非水電解質二次電池、およびそれらの製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池用電極、非水電解質二次電池、およびそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、二次電池用電極およびその製造方法、ならびに該二次電池用電極を備える二次電池およびその製造方法に関する。
二次電池は、ノート型パソコンや携帯電話等、弱電の民生機器用途、ハイブリッド車や電気自動車等の蓄電池として用いられている。
一般に、二次電池の電極としては、金属箔等の集電体と、集電体上に設けられた電極合剤層とを備えるものが用いられており、電極合剤層には電極活物質および導電助剤がバインダーによって保持されている。
かかる電極は一般に、電極活物質およびバインダーを含む電極合剤を調製し、これを転写ロール等で集電体の片面又は両面に塗工し、溶剤を乾燥除去して電極合剤層を形成して作製される。集電体上に電極合剤を塗工する工程では、一般に、集電体ロールから巻き出された集電体上に電極合剤が塗布され、乾燥された後に、電極ロールに巻き取られる。その後必要に応じてロールプレス機等で圧縮成形される。
また電池を製造する際には、例えば、正極と負極とをセパレータを介して対向させ、電池形状に応じて渦巻き状に捲回する、折るなどして電池容器に入れ、非水電解質を注入して封口される。
従来、二次電池用電極のバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やスチレン・ブタジエン・ゴム(SBR)が用いられているが、これらは、結着力が低い問題がある。
これに対してアクリロニトリル系樹脂は耐酸化性および密着性には優れるものの、剛直な高分子であるため、電極合剤層の可撓性が劣り、巻き取りや捲回等の変形加工の際などにワレや欠けといった問題を生じる。電極合剤層のワレや欠け等は電極製造の工程通過性や歩留まりを悪化させると共に、電池性能の低下につながる。
かかるアクリロニトリル系樹脂を含む電極合剤層の可撓性の問題に対して、特許文献1では、電極合剤層を二層で構成し、バインダーがアクリロニトリル系樹脂を含む第一層の上に、バインダーがフッ素樹脂を含む第二層を形成する方法が提案されている。
しかしながら、この方法は第二層の電極合剤層を形成するための製造工程が必要であるため、製造時間が長くなり、製造コストも増大する。
リチウムイオン電池内の水分に関しては、特許文献2に電池内の構成部品の水分に起因して水素ガスが発生すると、電池外装体が膨張する場合があることが記載されている。また、これを防止するために、電池内の構成部品の水分量を極力少なくすること、またはマンガン化合物を含有する層を電極表面付近に設け、発生した水素ガスを該マンガン化合物によって吸収させることが記載されている。
特開2011−159407号公報 特開2001−313077号公報
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、バインダー樹脂として、アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体に基づく単位を有する重合体を用いて製造される電極合剤層の可撓性を、簡便な方法で向上できるようにした二次電池用電極およびその製造方法を提供する。
また本発明は、該二次電池用電極を備える二次電池およびその製造方法を提供する。
本発明者等は、バインダー樹脂として、アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体に基づく単位を有する重合体を用いて製造される電極合剤層の、水分量を所定の範囲内で高めることによって、電極合剤層の可撓性が良好になり、電極製造時の工程通過性を向上させると共に、得られる電極の電池特性が向上することを見出して、本発明に至った。
本発明の以下の[1]〜[5]である。
[1] 集電体と、該集電体上に設けられた活物質およびバインダー樹脂を含む電極合剤層を有する非水電解質二次電池用電極であって、前記バインダー樹脂がシアン化ビニル単量体に基づく単位を50モル%以上有する重合体を含有し、前記電極合剤層に含まれる水分量が500〜30,000ppmである、非水電解質二次電池用電極。
[2] 前記重合体が、シアン化ビニル単量体に基づく単位50モル%以上と、リン酸基含有ビニル単量体及びその塩、ならびに酢酸ビニルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に基づく単位0.05〜20モル%とを有する、[1]に記載の非水電解質二次電池用電極。
[3] [1]または[2]に記載の非水電解質二次電池用電極を備える非水電解質二次電池。
[4] [1]または[2]に記載の非水電解質二次電池用電極を製造する方法であって、活物質およびバインダー樹脂を含む電極合剤を、集電体上に塗工した後、電極合剤層に含まれる水分量が500〜30,000ppmとなるように調湿する、非水電解質二次電池用電極の製造方法。
[5] [1]または[2]に記載の非水電解質二次電池用電極を変形加工する工程を有する、非水電解質二次電池の製造方法。

本発明によれば、バインダー樹脂として、アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体に基づく単位を有する重合体を用いて製造される電極合剤層の可撓性を、簡便な方法で向上させることができる。したがって、電極合剤層の耐酸化性および密着性が良好であるとともに、電極合剤層の可撓性が良好で変形加工時のワレや欠けが防止される二次電池用電極が得られる。
本発明によれば、電極合剤層の耐酸化性および密着性が良好であり、電極合剤層にワレや欠けがなく、電極製造時の工程通過性を向上させると共に、得られる電極のサイクル特性に優れた二次電池が得られる。
<二次電池用電極>
本発明の二次電池用電極(以下、単に電極ということもある。)は、集電体上に、活物質およびバインダー樹脂を含む電極合剤層が設けられている。
本発明の電極は、本発明の効果を損なわない範囲で、重合体(A1)を含む電極合剤層、および集電体以外の他の構成部材を備えていてもよいが、電極が重合体(A1)を含む電極合剤層と集電体とからなることが好ましい。電極が正極の場合、使用する正極活物質は、コバルト、ニッケル、マンガン及びバナジウムから選ばれる少なくとも1種類以上の金属と、リチウムとを含有するリチウム含有金属複合酸化物が好ましい。
[バインダー樹脂]
本発明において、電極のバインダー樹脂は、シアン化ビニル単量体単位を有する重合体(A1)を含む。シアン化ビニル単量体単位を有することで電気的安定性に優れる。重合体(A1)は単独重合体でもよく、共重合体でもよい。
シアン化ビニル単量体単位は、シアン化ビニル単量体(以下、単量体(m1)という。)に由来する構成単位を意味する。
単量体(m1)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−シアノアクリレート、ジシアノビニリデン、フマロニトリルが挙げられる。これらの中でも、重合のし易さ、安価に入手できる点で、アクリロニトリルが好ましい。
単量体(m1)は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
重合体(A1)における単量体(m1)単位の含有率は、重合体(A1)を構成する全ての構成単位の合計(100モル%)に対し、50モル%以上が好ましく、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がより好ましい。重合体(A1)が、単量体(m1)単位を50モル%以上の含有率で含有するもの(単独重合体または共重合体)であると、電気化学的安定性に優れる。また、スラリー調製に用いられる有機溶剤に容易に溶解し、集電体に対する密着性等優れた電極合剤層を形成できる。
単量体(m1)単位の含有率の上限は特に限定されず、100モル%であってもよい。
重合体(A1)に、任意に単量体(m1)単位以外の構成単位(任意構成単位)を含有させる場合の含有率は、任意構成単位とのバランスを考慮して適宜設定できる。
重合体(A1)は、必要に応じて、単量体(m1)単位以外の構成単位(任意構成単位)を有してもよい。任意構成単位によって、電極合剤層の集電体に対する密着性や、剛性、曲げ強度等の機械的特性等を調節できる。
任意構成単位の由来源となる単量体(任意単量体)としては、単量体(m1)と共重合可能なものであればよく、電池電極用バインダー樹脂に用いられる単量体として公知の単量体のなかから適宜選択して用いることができる。
重合体(A1)における任意単量体の具体例として、例えば、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート・モノエタノールアミン塩、ジフェニル((メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、3−クロロ−2−アシッド・ホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、KAYAMER PM−21(商品名、日本化薬(株)製)等のリン酸基含有(メタ)アクリレート及びその塩;
アリルアルコールアシッドホスフェート等のリン酸基含有アリル化合物及びその塩;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの三級塩若しくは四級アンモニウム塩;
上記以外の(メタ)アクリレート{例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−n−プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−n−プロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシ−n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、1−エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐状または環状構造を持つ(メタ)アクリレート};
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体;
(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等のカルボキシ基含有単量体及びその塩;スチレン、α−メチルスチレン、ヒドロキシスチレン等の芳香族ビニル単量体;
マレイミド、フェニルマレイミド等のマレイミド類;
(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有ビニル単量体及びその塩;
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;
酢酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。
なお、「ビニル単量体」は、ビニル基、またはビニル基のα位の炭素原子に結合した水素原子がメチル基で置換されたα−メチルビニル基を少なくとも1つ有する化合物である。
「アシッドホスフェート」は、リン酸のリン原子に結合した3つの水酸基のうち、1つまたは2つがエステル化された化合物(リン酸のモノエステルまたはジエステル)である。
任意単量体は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
任意単量体としては、上記のなかでも、リン酸基含有(メタ)アクリレート、リン酸基含有アリル化合物等のリン酸基含有ビニル単量体及びその塩、酢酸ビニルから選ばれる少なくとも1種(以下、単量体(m2)という。)が好ましい。単量体(m2)単位は、シアン化ビニル単量体単位よりも極性が高いため、集電体に対する密着性の向上に寄与する。
単量体(m2)としては、上記のなかでも、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、KAYAMER PM−21(商品名、日本化薬(株)製)、酢酸ビニルが好ましい。
重合体(A1)中の単量体(m2)単位の含有率は、重合体(A1)を構成する全ての構成単位の合計(100モル%)に対し、0〜20モル%が好ましく、0.05〜10モル%がより好ましい。20モル%以下であれば、重合体(A1)がスラリー調製に用いる有機溶剤に充分に溶解する。0.05モル%以上であれば、集電体に対する密着性等が充分に優れたものとなる。
また、任意単量体として、重合性の官能基(ビニル基、α−メチルビニル基、アリル基等)を2以上有する多官能の単量体(以下、単量体(m3)という。)も好ましい。単量体(m3)を用いると、重合体(A1)が架橋構造を有するものとなる。架橋構造を有すると、機械的特性等が向上する。
単量体(m3)としては、たとえばN,N−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
単量体(m3)を用いる場合、重合体(A1)中の単量体(m3)単位の含有率は、重合体(A1)を構成する全ての構成単位の合計(100モル%)に対し、0.01〜10モル%が好ましく、0.01〜5モル%がより好ましい。
重合体(A1)は、公知の重合方法で製造できる。例えば、単量体(m1)、及び必要に応じて任意単量体を溶媒に投入し、重合温度0〜90℃、好ましくは50〜60℃で、重合時間1〜10時間、好ましくは2〜4時間保持することによって製造できる。
重合方法としては、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等が挙げられる。これらの中でも懸濁重合が好ましい。従来、バインダー樹脂の製造方法としては乳化重合が汎用されているが、乳化剤を使用するため、得られるバインダー樹脂に乳化剤が含まれることになる。乳化剤は集電体への密着性や電池特性に悪影響を与えてしまう。そのため乳化重合の場合、回収、精製等の後処理に手間がかかる。懸濁重合によれば、実質的に乳化剤を含まない樹脂が得られるため、後処理が容易である。
懸濁重合は、シアン化ビニル単量体、重合開始剤及び必要に応じて任意単量体を水に分散し、任意の温度に保持する方法である。
懸濁重合に用いられる重合開始剤としては、重合開始効率等に優れることから、水溶性重合開始剤が好ましい。
水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;過酸化水素等の水溶性過酸化物;2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等の水溶性アゾ化合物等が挙げられる。中でも、重合が容易であることから、過硫酸塩が好ましい。
過硫酸塩等の酸化剤は、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト等の還元剤、及び硫酸、硫酸鉄、硫酸銅等の重合促進剤と組み合わせて、レドックス系開始剤として用いることができる。
懸濁重合には、分子量調節等の目的で、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプタン化合物、チオグリコール、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマー、次亜燐酸塩が挙げられ、中でも、メルカプタン化合物が好ましい。
懸濁重合には、得られる電池電極用バインダーの粒子径を調節するため、水以外の溶媒を加えることができる。水以外の溶媒としては、例えば、NMP(N−メチルピロリドン)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;N,N−ジメチルエチレンウレア、N,N−ジメチルプロピレンウレア、テトラメチルウレア等のウレア類;γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン等のラクトン類;プロピレンカーボネート等のカーボネート類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート等のエステル類;ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類;トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;スルホラン等のスルホン類;メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜50,000,000が好ましく、10,000〜5,000,000がより好ましい。Mwが5,000以上であると結着力に優れ、電極合剤層と集電体との密着性等が向上する。50,000,000以下であると、スラリー調製に用いられる有機溶剤への溶解性が良好である。また、得られるスラリー組成物の粘度が高くなりすぎず、塗工性等が良好である。
重合体(A1)の分子量分布(Mw/数平均分子量(Mn))は、1.05〜10.0が好ましく、1.1〜5.0がより好ましい。
Mw、Mnはそれぞれ、溶剤としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、標準ポリマーとしてポリスチレンを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定できる。
バインダー樹脂に含まれる重合体(A1)は1種でも2種以上でもよい。
重合体(A1)は、上記のとおり、集電体への密着性、電池特性等の点から、乳化剤を実質的に含まないものであることが好ましい。
「実質的に含まない」とは、乳化剤が重合体(A1)全体に対して、50mg/kg未満であることを意味する。乳化剤は、重合体(A1)から水などを用いて抽出した抽出液をガスクロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより分離分析することで、定量することができる。
乳化剤を実質的に含まない重合体は、懸濁重合により容易に製造できる。
バインダー樹脂は、重合体(A1)以外の重合体(以下、重合体(A2)という。)を含有してもよい。
ただし、集電体への密着性や電極合剤層の可撓性を考慮すると、バインダー樹脂中、重合体(A1)の含有量は、樹脂固形分(100質量%)に対し、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
バインダー樹脂における重合体(A1)の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。すなわちバインダー樹脂が重合体(A1)からなるものであってもよい。
重合体(A2)は単量体(m1)単位を有さない。非水電解質二次電池電極用のバインダー樹脂として提案されている重合体のなかから適宜選択できる。このような重合体としては、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTEF)、ポリペンタフルオロプロピレン等の含フッ素重合体、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)等が挙げられる。
[活物質]
活物質は、特に限定されず、非水電解質二次電池用の活物質として公知のものを適宜使用することができる。
例えばリチウムイオン二次電池の場合、正極の電極活物質(正極活物質)としては、負極の活物質(負極活物質)より高電位(金属リチウムに対し)であり、充放電時にリチウムイオンを吸脱できる物質が用いられる。
正極活物質の具体例としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン及びバナジウムから選ばれる少なくとも1種類以上の金属と、リチウムとを含有するリチウム含有金属複合酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリチエニレン及びその誘導体、ポリピリジンジイル及びその誘導体、ポリイソチアナフテニレン及びその誘導体等のポリアリーレンビニレン及びそれらの誘導体等の導電性高分子が挙げられる。導電性高分子としては、有機溶媒に可溶なアニリン誘導体の重合体が好ましい。これらの中でも、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン及びバナジウムから選ばれる少なくとも1種類以上の金属と、リチウムとを含有するリチウム含有金属複合酸化物が特に好ましい。正極活物質は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
負極活物質としては、例えば、黒鉛、非晶質炭素、炭素繊維、コークス、活性炭等の炭素材料;前記炭素材料とシリコン、錫、銀等の金属又はこれらの酸化物との複合物等が挙げられる。負極活物質は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
リチウムイオン二次電池においては、正極活物質としてリチウム含有金属複合酸化物を用い、負極活物質として黒鉛を用いることが好ましい。このような組み合わせとすることで、リチウムイオン二次電池の電圧を例えば4V以上に高められる。
[導電助剤]
正極の電極合剤層には導電助剤を含有させることが好ましい。導電助剤を含有することで、活物質同士の電気的接触を向上させることができ、非水電解質二次電池の放電レート特性等の電池性能をより高めることができる。
導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、チャンネルブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン等が挙げられる。これらの導電助剤は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
[集電体]
集電体は、導電性を有する物質であればよく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属が挙げられる。
集電体の形状は、目的とする電池の形態に応じて決定でき、例えば、薄膜状、網状、繊維状が挙げられ、中でも、薄膜状が好ましい。
集電体の厚みは、特に限定されないが、5〜30μmが好ましく、8〜25μmがより好ましい。
集電体が薄膜状または網状である場合、電極合剤層は、集電体の片面に設けられても両面に設けられてもよい。
[電極合剤層に含まれる水分量]
本発明の電極において、電極合剤層に含まれる水分量は500〜30,000ppmの範囲内である。
本発明において、電極合剤層に含まれる水分量は、加熱炉付きカールフィッシャー法により、電極合剤層を150℃に加熱して測定される値である。
電極合剤層の水分量の測定は、電極から電極合剤層以外の他の構成部材を取り除いて電極合剤層のみを取り出し、その水分量を測定してもよい。または、電極において、電極合剤層以外の他の構成部材に含まれる水分量の合計が10ppm以下である場合は、該他の構成部材の水分量をゼロとみなし、電極全体の水分量を測定して得られる値を電極合剤層の水分量としてもよい。
該電極合剤層に含まれる水分量が500ppm以上であると、電極合剤層の良好な可撓性が得られ、電極に折り曲げ等の変形加工が施されたときに電極合剤層にワレや欠けが生じるのを防止することができる。該水分量が30,000ppm以下であると水分による活物質の劣化や膨れを防止できる。
該水分量は、好ましくは1,000〜15,000ppmであり、1,500〜10,000がより好ましい。
[電極の製造方法]
本発明の電極は、活物質およびバインダー樹脂を含む電極合剤を、集電体上に塗工した後、電極合剤層に含まれる水分量が500〜30,000ppmとなるように調湿するこによって得られる。
電極合剤は、活物質およびバインダー樹脂のほかに有機溶剤を含むスラリーであることが、塗工しやすい点で好ましい。電極合剤は、さらに任意の導電助剤を含むことができる。電極合剤中の有機溶剤は、スラリー(電極合剤)を集電体に塗工した後、調湿する際に乾燥させることにより除去される。
有機溶剤としては、バインダー樹脂を溶解し、活物質を均一に分散し得るものであればよく、通常、非水電解質二次電池電極用スラリーに用いられているものが利用できる。このような有機溶剤としては、例えば、NMP(N−メチルピロリドン)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等)、グライム系溶剤(ジグライム、トリグライム、テトラグライム等)等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で用いても2種以上を混合して混合溶剤として用いてもよい。混合溶剤の例として、NMPとエステル系溶媒との混合溶液、NMPとグライム系溶媒との混合溶液等が挙げられる。
電極合剤(スラリー)中の有機溶剤の含有量は、常温でバインダー樹脂が溶解した状態を保てる必要最低限の量であればよいが、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。スラリー中の溶媒の含有量は、該スラリーを用いて電極合剤層を形成する際に、集電体に塗工しやすい粘度を勘案して決定される。
電極合剤中の活物質の含有量は、特に限定されないが、総固形分(有機溶剤を除く全成分)に対し、80〜99.9質量%が好ましく、85〜99質量%がより好ましい。80質量%以上であれば、電極合剤層としての機能が充分に発揮される。99.9質量%以下であれば、電極合剤層と集電体との密着性が良好である。
電極合剤中の導電助剤の含有量は、特に限定されないが、総固形分に対し、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜7質量%がより好ましい。0.01質量%以上であれば、電池性能がより高められる。10質量%以下であれば、電極合剤層と集電体との密着性が良好である。
電極合剤中のバインダー樹脂の含有量は、特に限定されないが、総固形分に対し、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜7質量%がより好ましい。0.01質量%以上であれば、電極合剤層と集電体との良好な密着性が得られやすい。10質量%以下であれば、活物質や任意の導電助剤を充分に含有できるため、電池特性が向上する。
電極合剤は、必要に応じて、バインダー樹脂、活物質、導電助剤および溶剤以外の成分(任意成分)を含有してもよい。任意成分として、例えば酸化防止剤、増粘剤等が挙げられる。
電極合剤(スラリー)は、活物質、バインダー樹脂、有機溶剤等の含有成分を混練することにより製造できる。混練は公知の方法により実施できる。
スラリー調製時、バインダー樹脂は、粉末状のものをそのまま使用してもよく、活物質や任意の導電助剤と混合する前に予め、有機溶剤に溶解して樹脂溶液として用いてもよい。
スラリーの塗工方法は、集電体にスラリーを任意の厚みで塗布できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、刷毛塗り法等の方法が挙げられる。
塗工量は、形成しようとする電極合剤層の厚みに応じて適宜設定できる。
電極合剤層の厚みは、活物質の種類に応じて適宜決定できる。例えば活物質が金属酸リチウムの場合、電極合剤層の厚みは、70〜110μmが好ましく、90〜110μmがより好ましい。例えば活物質が黒鉛の場合、電極合剤層の厚みは、30〜70μmが好ましく、50〜70μmがより好ましい。
集電体上に塗工された、調湿前の電極合剤層の水分量は、通常50ppm以上である。該水分は主に、活物質、バインダー樹脂、有機溶剤等に含まれる水分に由来する。
集電体上に塗工された電極合剤層の水分量を500〜30,000ppmの範囲内の所望の値に調湿する方法として、例えば、電極合剤を集電体上に塗工した後、乾燥後の電極合剤層の水分量が目的の水分量となるように、乾燥させる方法を用いることができる。
または、電極合剤を集電体上に塗工し、乾燥後の電極合剤層の水分量が得ようとする水分量よりも低くなるように乾燥した後、該電極合剤層の水分量が目的の値となるように吸湿させる方法を用いることができる。水分量を制御しやすい点で、乾燥後に吸湿させる方法がより好ましい。
電極合剤が有機溶剤を含む場合の乾燥方法は、特に制限されない。例えば、有機溶剤の沸点以上に加熱する方法、減圧条件下で有機溶剤を蒸発させる方法等が挙げられる。
電極合剤が有機溶剤を含む場合の調湿方法として、例えば、60〜140℃の乾燥温度で10分〜1時間乾燥後、真空中で60〜140℃の乾燥温度で1〜48時間乾燥させた後、15〜40℃、相対湿度60〜100%の雰囲気中で吸湿させる方法を用いることができる。
調湿後、必要に応じて、形成された電極合剤層を圧延してもよい。圧延を行うことで、電極合剤層の面積を広げ、かつ任意の厚みに調節できる。
<二次電池>
[非水電解質二次電池]
本発明の二次電池(以下、単に電池ということもある。)は、本発明の二次電池用電極を用いて製造されたものである。
本発明の二次電池は、好ましくは非水電解質二次電池である。「非水電解質二次電池」は、電解質として、水を含まない非水電解質を用いたものであり、たとえばリチウムイオン二次電池等が挙げられる。非水電解質二次電池は、通常、電極(正極および負極)と、非水電解質と、セパレータとを備える。例えば、正極と負極とをポリエチレン微多孔膜等からなるセパレータを介して重ね合わせ捲回した捲回物が、非水電解質と共に電池容器に収容されたもの、等が挙げられる。
非水電解質としては、有機溶剤に固体の電解質を溶解した電解液が挙げられる。
電解液の有機溶剤としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、NMP等の含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル等のエステル類;ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類;アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;スルホラン等のスルホン類;3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
固体の電解質は、非水電解質二次電池や活物質の種類に応じて公知のものが利用できる。例えばリチウムイオン二次電池の場合、公知のリチウム塩がいずれも使用でき、LiClO、LiBF、LiI、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、LiCHSO、LiCSO、Li(CFSON、Li[(COB等が挙げられる。
リチウムイオン二次電池の電解液としては、カーボネート類にLiPFを溶解したものが好ましい。
本発明の電池は、正極および負極のいずれか一方または両方に、本発明の電極が用いられている。本発明の電池は、少なくとも正極が本発明の電極であることが好ましい。
正極および負極のいずれか一方が本発明の電極である場合、他方の電極としては、公知のものが利用できる。
セパレータとしては、公知のものを使用することができる。例えば多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して使用することができる。この他、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を使用できるが、これらに限定されることはない。
本発明の電池の製造方法は、本発明の電極を変形加工する工程を有する。電極を変形加工する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、正極と負極とをセパレータを介して対向させ、電池形状に応じて渦巻き状に捲回する、または折り曲げるなどして電池容器に入れ、非水電解質を注入して封口する、等の公知の方法が挙げられる。
電池の形状は、コイン型、円筒型、角形、扁平型など何れであってもよい。
本発明によれば、重合体(A1)を含むバインダー樹脂を用いて製造される電極合剤層を、従来は500ppm未満の低水分量に乾燥させていたところ、所定の範囲で水分量を高めることによって、電極合剤層の柔軟性が向上し、良好な可撓性が得られる。したがって、電池の製造工程において、巻き取り、捲回、折り曲げ等の電極の変形加工を伴う工程の少なくとも1以上、好ましくは全部に、電極合剤層の水分量が上記の範囲に高められた電極を適用することが好ましく、これによって、電極合剤層におけるワレや欠け等の発生を抑えることができる。また、バインダー樹脂が重合体(A1)を含むため、電極合剤層における良好な耐酸化性および密着性も得られる。その結果、サイクル特性が良好な電池が得られる。
また変形加工時のワレや欠け等の問題は電極合剤層の厚みが大きくなるほど生じやすいが、本発明によれば電極合剤層の膜厚化を実現することができる。
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。なお以下の記載において、含有割合を示す「%」は「質量%」を表し、「部」は「質量部」を表す。
<重合体の重量平均分子量および分子量分布>
製造例で得られた重合体10mgを10mLのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過して試料溶液を調製した。この試料溶液を東ソー社製ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)HLC−8020を用いて測定した。この測定には、分離カラムとして東ソー社製 TSKgel SuperHZM−H(商品名)(内径4.6mm×長さ15cm)を2本直列にしたものを用い、溶媒として0.01モル/Lの塩化リチウムを含有したDMF、流量0.6mL/min、検出器として示差屈折計、測定温度40℃、注入量0.1mL、標準ポリマーとしてポリスチレンを使用して、重量平均分子量および分子量分布を測定した。
<電極合剤層に含まれる水分量の測定方法>
電極合剤層中の水分の測定は、加熱気化装置付きカールフィッシャー水分計(AQ−2200微量水分測定装置、EV−2010自動加熱気化装置、平沼産業製)を用いて行った。
一辺が1.5cmの正方形に切断した電極を、バイアル瓶中に、合計が約0.5gになるように複数枚サンプリングし、加熱温度150℃、窒素流量50mL/minで電極の水分量を測定し、これを電極合剤層に含まれる水分量とした。
なお、電極の集電体として用いたアルミ箔に含まれる水分量は10ppm以下であるため、これをゼロとみなす。
<電極の可撓性の評価>
電極を幅3cm×長さ5cmに切り出し、試験片とした。JIS K5600−5−1(塗料一般試験方法耐屈曲性(円筒形マンドレル法))に準処する方法で測定した。試験片のアルミ箔面がマンドレル側になるように、設置し、試験片の長さ方向の片端をテープで固定して、マンドレルの外周に沿って折り曲げた後、電極合剤層の状態を目視で観察した。マンドレルの直径を5mm、3mm、2mmと小さくし、下記の基準で評価した。
○:折り曲げ面にて、電極合剤層のワレまたは欠けのいずれも見られない。
×:折り曲げ面にて、電極合剤層のワレまたは欠けが見られた。
<電池の容量維持率>
電池容量の測定は、60℃で充放電レートを0.5Cとし、定電流法(電流密度:0.6mA/g−活物質)で4.2Vに充電し、3Vまで放電する充放電を50回繰り返した。容量維持率は、1サイクル目の電池容量に対する50サイクル目の電池容量の割合を百分率で表した。
(製造例1:AN系重合体の製造)
攪拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入管を装備した2リットルのセパラブルフラスコに、蒸留水870gを仕込み、窒素ガスを通気量100mL/分で15分間バブリングした。攪拌しながら60℃まで昇温し、窒素ガスの通気をフローに切り替えた。
次いで、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.72g、50%亜硫酸アンモニウム水溶液2.16g、0.1%硫酸鉄水溶液0.15gを、蒸留水30gを用いて投入した。
アクリロニトリル93g(95.6モル%)、酢酸ビニル7g(4.4モル%)を均一に混合し、窒素ガスを15分間バブリングした後、セパラブルフラスコに一括投入した。60℃で3時間保持して重合を完了させた。
攪拌を止めて冷却し、反応液を吸引濾過した。60℃の温水で洗浄後、80℃で24時間乾燥させ、AN系重合体(アクリロニトリル単位/酢酸ビニル単位=95/5(モル比)の共重合体)を得た。該AN系重合体の重量平均分子量は320,000であり、分子量分布は3.2であった。
(実施例1:AN系電極1の製造)
活物質としてコバルト酸リチウム(日本化学工業(株) 商品名:セルシードC−5H、以下、LCOという。)100部、導電助剤としてアセチレンブラック5部(電気化学工業(株)製 商品名:デンカブラック、以下、ABという。)、および、製造例1で得られたAN系重合体2部を軟膏容器に計量した。NMPを22部加え、自公転式攪拌機(自転1000rpm、公転2000rpm、Thinky社製 泡とり練太郎、以下、ミキサー)自公転攪拌機で10分攪拌し、LCO及びABを十分に分散化させた。その後、NMPで希釈し、更にミキサーで5分攪拌し、固形分80%の電極合剤を得た。
得られた電極合剤をアルミ箔(19cm×25cm、厚み20μm)上にドクターブレードを用いて塗布し、循環式熱風乾燥機中80℃で1時間乾燥させ、更に、真空乾燥機にて100℃で12時間減圧乾燥することによって、アルミ箔上に電極合剤層形成して電極を得た。乾燥後の電極の厚みは82μmであった。その後、25℃、相対湿度70%の室内で一晩吸湿処理をしてAN系電極1を得た。
電極合剤をアルミ箔上に塗布した直後の、電極合剤層に含まれる水分量は120ppm、乾燥後で吸湿処理前の電極合剤層に含まれる水分量は7800ppmであった。
(実施例2:AN系電極2の製造)
実施例1において、吸湿処理を25℃、相対湿度95%のデシケーター中で行う以外は、実施例1と同様の方法でAN系電極2を得た。
(比較例1:AN系電極3の製造)
実施例1において、吸湿処理を行わず、温度25℃、相対湿度10%のデシケーター内に保管した以外は、実施例1と同様の方法でAN系電極3を得た。
(2016型コイン電池の作製)
実施例または比較例で得られたAN系電極を正極として用いた。該正極と金属リチウム負極電極を、セパレータ(ポリポア社製、商品名:セルガード♯2400)を介して対向させた。非水電解液として、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=1/2(体積比)の混合物を溶媒とした1Mの六フッ化リン酸リチウム溶液を用いて、2016型コイン電池を作製した。
実施例1,2及び比較例1の電極における、水分量の測定結果および可撓性の評価結果、ならびに該電極を用いて構成した電池の容量維持率の測定結果を以下の表1に示す。
Figure 0006024256
表1の結果から明らかなように、電極合剤層の水分量が500ppm以上である実施例1,2において、電極合剤層の良好な可撓性が得られた。また、実施例1,2の電極を用いて構成した電池は、50サイクル後の容量維持率が高い傾向が得られた。
一方、電極に吸湿処理を施さず、電極合剤層の水分量が500ppm未満である比較例1において、電極合剤層は可撓性が低く、硬い電極合剤層となった。また、比較例1の電極を用いて構成した電池は、50サイクル後の容量維持率が低かった。

Claims (5)

  1. 集電体、該集電体上に設けられた活物質およびバインダー樹脂を含む電極合剤層を有する非水電解質二次電池用電極であって、
    前記バインダー樹脂がシアン化ビニル単量体に基づく単位を50モル%以上有する重合体を含有し、
    前記電極合剤層に含まれる水分量が500〜30,000ppmである、非水電解質二次電池用電極。
  2. 前記重合体が、シアン化ビニル単量体に基づく単位50モル%以上と、リン酸基含有ビニル単量体及びその塩、ならびに酢酸ビニルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に基づく単位0.05〜20モル%とを有する、請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
  3. 請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極を備える非水電解質二次電池。
  4. 請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極を製造する方法であって、
    活物質およびバインダー樹脂を含む電極合剤を、集電体上に塗工した後、電極合剤層に含まれる水分量が500〜30,000ppmとなるように調湿する、非水電解質二次電池用電極の製造方法。
  5. 請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極を変形加工する工程を有する、非水電解質二次電池の製造方法。
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