実施の形態の構成を説明する前に概要を説明する。
建物の建築に必要な部材は多種多様であり、これまでの建築費用の見積においてある程度妥当な見積額を算出するためには、ビルダーはこれらの部材を洗い出す必要があった。その結果、見積作業に多大な労力と時間を要していた。また、部材の品番、数量、色柄等の一部でも不足することが無いように、高精度の発注情報管理が必要であり、何百枚に及ぶ資料をFAXでやり取りする等、発注情報管理にも相当な労力を要していた。また、建物に必要な部材を建設工事の進捗にあわせて遅滞なく発注するために、工事の進捗管理のための情報収集も必要であり、大変な手間がかかっていた。
そこで実施の形態の建築支援装置は、ビルダーが作成した2Dもしくは3Dの建築CAD図面データ(以下、「建築CAD図面」と呼ぶ。)を受け付け、また、ビルダーが指定する建物の建築仕様を受け付ける。建築支援装置は、建築CAD図面から見積対象の建物情報を抽出し、その建物情報と建築仕様に基づいて、クラウド上の建築資材・建築工事等、建築に関わる材・工のデータベースから、見積対象建物の建築に関わる材・工全てを検索・マッチングにより拾い出す。また、クラウド上のデータベースに格納された建築資材・建築工事の価格情報・価格算出ロジックを使用して、見積対象の建物を建築するのに必要な全てのコストを自動算出し、建物一棟全体の建築費用の見積書(実施の形態では「概算見積書」)を作成する。ビルダーは、建築CAD図面を建築支援装置にアップロードすることにより、建築支援装置に建築見積書を自動作成させ、その見積書をダウンロードできる。すなわち、少ない負担で、施主へ住宅等の建築提案を行うことができる。
また実施の形態の建築支援装置は、概算見積処理の成果物、および、ビルダーが指定する建築工事の条件に基づいて、クラウド上の建築工事工程データベースを検索して、建物(建築CAD図面が示す建物)を実際に建てるための建築工事工程を作成する。さらにまた、建築工事の進捗管理を支援する。
このように実施の形態の建築支援装置は、建物の見積から竣工までの情報を一貫して管理し、ビルダーや工事業者等、建物の建築に関わる様々な関係者の作業を支援する。例えば、一棟分の概算見積結果を数分で提供することにより、ビルダーの作業負担を大幅に低減することができる。また、作成した見積書をもとに、一棟全体の建築資材をオンラインのウェブサイト上からワンストップで発注でき、発注業務の項数を低減する。また、建築現場毎に合理的な工程管理を実現し、工期短縮、発注ミスの低減、誤配送の抑制を実現し、また無駄なコストの発生を抑制する。
図1は、実施の形態の建築支援システムの構成を示す。建築支援システム10は、ビルダー端末12で総称されるビルダー端末12a、ビルダー端末12bと、工事業者端末14で総称される工事業者端末14a、工事業者端末14bと、建築支援装置16を備える。図1の各装置は、LAN・WAN・インターネット等を含む通信網18を介して接続される。
ビルダー端末12は、ビルダーの担当者が操作する情報処理装置であり、典型的には、ウェブブラウザがインストールされたPCである。ビルダーは、典型的には建物の設計業務を行う業者であり、あわせて工事業務も行う業者であってもよい。ビルダーは、例えば工務店や設計事務所であってもよい。工事業者端末14は、建物の建築工事を請け負う工事業者の担当者が操作する情報処理装置であり、典型的にはウェブブラウザがインストールされたモバイル端末である。例えば、工事現場の担当者が保持するタブレット端末やスマートフォン等であってもよい。
建築支援装置16は、例えば住宅資材メーカが管理する情報処理装置である。建築支援装置16は、ウェブサーバ機能を備え、見積・発注・工事工程管理のサービスをワンストップで提供するウェブサイト(以下、「建築支援サイト」とも呼ぶ。)をインターネット上に公開する。ビルダー端末12および工事業者端末14は、インターネットを介して建築支援サイトへアクセスし、ユーザが所望するウェブページのデータを建築支援装置16から取得する。ビルダー端末12および工事業者端末14は、建築支援装置16から取得したウェブページをディスプレイに表示させ、また適宜ウェブページをプリンタに印刷させる。
図1では、建築支援装置16を1つのブロックで描いているが、建築支援装置16の物理的なハードウェア構成に制限はない。例えば、物理的に筐体(設置場所)が異なる複数のコンピュータにおいてウェブサーバ機能・アプリケーションサーバ機能・データベースサーバ機能が分散実行され、複数のコンピュータが相互にデータを交換することにより連携して、建築支援装置16の機能を実現してもよい。すなわち建築支援装置16は、クラウドシステムとして実装されてもよい。
図2は、図1の建築支援装置16の機能構成を示すブロック図である。建築支援装置16は、通信部20とデータ処理部22と建築DB(データベース)24を備える。本明細書のブロック図に示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
例えば、データ処理部22の各機能ブロックに対応するプログラムモジュールが建築支援装置16のストレージに格納されてよい。そして建築支援装置16のCPUが、それらのプログラムモジュールをメインメモリへ読み出して実行することにより、各機能ブロックの機能が実現されてよい。また建築DB24は、建築支援装置16のストレージやメインメモリにより実現されてよく、またDBMS(DataBase Management System)機能によりデータを管理してもよい。
通信部20は、TCP/IP等、予め定められた通信プロトコルにしたがってビルダー端末12および工事業者端末14とデータを送受する。通信部20は、ビルダー端末12または工事業者端末14から受信したデータをデータ処理部22に渡し、データ処理部22から出力されたデータをビルダー端末12または工事業者端末14へ送信する。
データ処理部22は、建築支援サービスを提供するためのデータ処理を実行する。データ処理部22は、概算見積部26と、正式見積部28と、工程管理部30と、発注管理部32を有する。建築DB24は、データ処理部22によるデータ処理のための各種データを記憶し、またデータ処理部22による処理中のデータを適宜一時的に記憶する記憶領域である。なおウェブサーバの機能そのものは公知であるため、その説明は省略する。
概算見積部26は概算見積処理を実行し、正式見積部28は正式見積処理を実行する。工程管理部30は建築工事の工程管理処理を実行し、発注管理部32は建物の建築に必要な各種部材の発注処理を実行する。これらの機能ブロックの詳細構成は後述する。なお、本明細書における部材は商材とも呼ばれ、建物の建築に必要な材料・部品・機器を含み、言い換えれば、建物に設置される材料・部品・機器を含む。すなわち様々な建築材料(建材)および建具、また、電気設備を含む様々な住宅設備機器を含む。
図3は、図2の建築DB24と概算見積部26の機能構成を詳細に示すブロック図である。建築DB24は、部材情報保持部36と、仕様情報保持部38と、工事情報保持部40と、推定ロジック保持部42と、会員情報保持部44を含む。概算見積部26は、仕様設定部46と、図面受付部48と、部材引当部50と、費用算出部52と、見積提供部54と、修正受付部56と、利益設定受付部58を含む。
部材情報保持部36は、様々な建材メーカや住宅資材メーカ(例えば建築支援装置16を管理するメーカを含む)が販売している複数種類の部材であり、建物の建築に必要となりうる複数種類の部材に関する属性情報を保持する。言い換えれば、建物に設置されうる複数種類の部材情報を保持する。この属性情報は、1つの部材(例えば外壁や玄関ドアの等の建材・建具)について、部材ID、メーカ名、部材カテゴリ、商品名、価格、グレード、サイズ、色等の情報を含む。部材カテゴリは部位とも言え、例えば「外壁」や「玄関ドア」等、建材・建具の種類を示す。価格は、例えば予め定められた所定の単位量当たりの単価であってもよい。グレードは、典型的には価格に応じた部材のランクを示す情報であり、実施の形態では高級・中級・普及の3種類を設けることとする。
仕様情報保持部38は、標準的な建物の仕様を保持する。具体的には、予め定められた基準と、その基準に適合する複数の部材情報(例えば、建物の各部位と、部材情報保持部36が保持する特定の部材IDとの組み合わせ)とを対応づけて保持する。この基準は、典型的には公的機関が定めた建築基準であり、例えば「低炭素建築物認定基準」「トップランナー基準」「次世代省エネ基準」を含む。仕様情報保持部38は、これらの基準のそれぞれと、建物一棟に必要となる複数の部材情報等とを対応づけて保持する。
工事情報保持部40は、建物一棟の建築に必要となる複数種類の工事に関する情報を保持する。複数種類の工事には、仮設工事、基礎工事、木工事、屋根工事、住宅設備、電気設備(材)、電気設備工事等が含まれる。工事情報保持部40は、複数種類の工事のそれぞれについて、典型的な作業費用および作業時間を保持する。なお工事情報保持部40は、作業費用算出ロジックおよび作業時間算出ロジックを保持してもよい。例えば、建築CAD図面に記載された、また、ビルダーが物件情報として別途入力した建物のサイズ(屋根面積、敷地面積や床面積等)、部屋の種類等をパラメータとする作業費用および作業時間の算出式を保持してもよい。
また、工事情報保持部40は、複数種類の工事と、その工事で用いられる(建物に設置される)部材カテゴリとの対応関係も保持する。例えば、外装工事と外壁を対応づけ、また内装工事と壁紙とを対応づけて保持する。
推定ロジック保持部42は、ビルダーがアップロードした建築CAD図面には描かれていないが、建物に設置されることが想定される部材、言い換えれば、建物の建築に必要であることが想定される部材を推定するための規則・基準を示すデータ(以下、「推定ロジック」と呼ぶ。)を保持する。推定ロジックの例は後述する。
会員情報保持部44は、建築支援装置16にログインアカウントを登録済みのビルダー(すなわち建築支援サイトに会員)のそれぞれに関する属性情報を保持する。この属性情報は、アカウント情報、個別仕様情報、物件情報を含む。個別仕様情報は、ビルダーが建築支援装置16に登録したビルダー独自の建築仕様の情報である。例えば、仕様情報保持部38が保持する標準建築仕様をビルダーがカスタマイズした建築仕様である。物件情報は、ビルダーが登録した物件の情報であり、言い換えれば、建築支援装置16において見積・発注・工程管理の対象とする建物の情報である。
以下の説明では、建築支援装置16において見積・発注・工程管理の対象とする特定の建物の情報を「物件情報45」と呼ぶこととする。会員情報保持部44は、物件情報45として、ビルダーが選択した建築仕様と、ビルダーがアップロードした建築CAD図面と、見積処理・発注処理・工程管理処理の結果を示す情報を保持する。
仕様設定部46は、ビルダーの操作に応じて、概算見積にて適用する建築仕様を設定する。この建築仕様は、ビルダーが設計する建物に対して標準的に適用する仕様であると言え、建築CAD図面には明記されない情報(例えば壁紙や下地材の指定)を含む。仕様設定部46は、建築支援サイトのトップページでビルダーが概算見積タブを選択した場合に、建築仕様選択画面の提供要求をビルダー端末12から受け付け、建築仕様選択画面のウェブページをビルダー端末12へ送信する。
図4は、建築仕様選択画面70を示す。仕様設定部46は、仕様情報保持部38に保持された標準建築仕様と、会員情報保持部44に保持された要求元のビルダー用の個別建築仕様を一覧表示する建築仕様選択画面のデータを作成する。その際に、標準建築仕様には区分欄72に「K」を設定し、個別建築仕様には区分欄72に「My」に設定する。ビルダーは、所望の建築仕様の選択ボタン74を選択入力(言わば押下操作)する。また、建築仕様を確認する場合に、確認ボタン76を選択入力する。
仕様設定部46は、建築仕様選択画面70で選択ボタン74が選択入力されると、選択された建築仕様情報を仕様情報保持部38または会員情報保持部44から取得し、物件情報45の中に格納する。また仕様設定部46は、建築仕様選択画面70で確認ボタン76が選択入力されると、仕様確認画面の提供要求をビルダー端末12から受け付け、仕様確認画面のウェブページをビルダー端末12へ送信する。
図5および図6は、仕様確認画面78を示す。仕様確認画面78は、建物の基本仕様を確認・編集するための建物基本仕様画面と、個々の部材の仕様を確認・編集するための建材仕様設定画面を含む。図5は建物基本仕様画面の一例を示し、図6は建材仕様画面の一例を示している。
ビルダーが図6の選択欄80で「おまかせ」を選択すると、グレード欄82の値に応じた部材が自動で選択される。その一方、ビルダーが選択欄80で「こだわり」を選択すると、ビルダーが任意に選択した部材が建築仕様として記録される。この場合、ビルダーがこだわり設定ボタン84に対する選択操作を入力すると、仕様設定部46は、部位に対応する複数の部材情報(メーカ・商品名・色等)を部材情報保持部36から取得し、それらの部材の中から特定の部材を選択する部材選択画面をビルダー端末12へ提供して表示させる。
仕様設定部46は、選択欄80で「おまかせ」が選択されると、部材情報保持部36を検索して、部位に対応する複数の部材の中からグレード欄82の値に対応づけられた部材を特定する。そして、部位と部材との対応関係を含む建築仕様情報を物件情報45に記録する。また仕様設定部46は、選択欄80で「こだわり」が選択されると、ビルダーが部材選択画面で選択した部材と部位との対応関係を含む建築仕様情報を物件情報45に記録する。
図面受付部48は、ビルダー端末12から送信された建築CAD図面のファイルを受信する。実施の形態では、2Dの建築CAD図面として、例えば「jwc」「dwg」等の拡張子の図面ファイルを受け付ける。また、3Dの建築CAD図面として、例えば「ecd」「stp」「igs」等の拡張子の図面ファイルや、CAD図面データを送信し易く変換したファイル、例えば、「kgn」や「dds」等、新たに定義した拡張子の図面ファイルを受け付ける。これらの建築CAD図面は、予め定められた標準形式で描かれてよい。
図7は、建築CAD図面を示す。同図は、見積対象建物の1階を示す2DのCAD図面データを模式的に示している。2Dの建築CAD図面では、建物のサイズ、建物内の各部屋のサイズに加えて、他の階の図面と位置を合わせるための原点86、部屋名88、シンボル90を記載する必要がある。シンボル90は、ドアや窓等の建具の種類および高さ(鉛直)方向のサイズを示す情報である。例えば、図7のシンボル90が示す「2HK 2000」は、引き違いの2枚窓で、高さが2メートルであることを示している。
部材引当部50は、部材抽出部60と部材推定部62を含む。部材抽出部60は、図面受付部48が受け付けた建築CAD図面から、そのデータに記録された部材情報を抽出する。言い換えれば、部材抽出部60は、見積対象の建物に設置されるものとしてビルダーが明記した部材情報を取得する。この部材情報は、部材カテゴリ、サイズ、個数を含む。図7の例では、LDKに設置される引き違いの2枚窓3組、キッチン、床暖房等の部材情報を抽出する。
部材推定部62は、図面受付部48が受け付けた建築CAD図面と、推定ロジック保持部42に保持された推定ロジックにしたがって、建築CAD図面には明示的には記載されていないが、建物に設置されることが想定される部材情報を推定する。言い換えれば、部材推定部62は、見積対象の建物への設置をビルダーが明記していないものの、建物の建築に必要となることが見込まれる部材情報を追加的に特定する。この部材情報も、部材カテゴリ、サイズ、個数を含む。
本実施の形態における推定ロジックは、建築CAD図面に記載され、または、建築仕様選択画面70で選択された建物の各部位のサイズや形状(ここでは「第1データ」と呼ぶ。)と、図面に未記載でありつつも建物に設置されることが想定される部材の種類およびサイズ(ここでは「第2データ」と呼ぶ。)との対応関係を定めたデータであってもよい。第1データは例えば「屋根形状」であり、第2データは例えば「屋根(谷板金)」と長さの算出ロジックであってもよい。また、第1データは例えば「軒」であり、第2データは例えば「樋(軒樋)」と長さの算出ロジックであってもよい。
部材推定部62は、建築CAD図面に記載された建物の各部位のサイズに応じて、図面には未記載でありつつ建物に設置されることが想定される部材の種類とサイズを推定する。
例えば、部材推定部62は、建築CAD図面が2D図面である場合、ビルダーが建築仕様選択画面70で選択した屋根形状に応じて、建物に「屋根(谷板金)」が設置されると設定する。言い換えれば、図面には明記されていない「屋根(谷板金)」を見積もり対象に含めることを決定する。そして、建築CAD図面に描かれた谷の長さを、「屋根(谷板金)」の長さとして推定する。建築CAD図面が3D図面である場合は、部材推定部62は、建築CAD図面に屋根が含まれると判定した場合に、建物に「屋根(谷板金)」が設置されると設定し、建築CAD図面に描かれた谷の長さを、「屋根(谷板金)」の長さとして推定する。
同様に部材推定部62は、建築CAD図面にもとづいて建物に軒が含まれると判定した場合に、建物に「樋(軒樋)」が設置されると設定し、建築CAD図面に描かれた軒先の長さを、「樋(軒樋)」の長さとして推定する。このように、図面には未記載でありつつ建物に設置されることが想定される部材の種類とサイズを推定することで、部材情報保持部36に保持された部材価格(例えば所定の単位量当たりの単価)にもとづいて、精度の高い建築費用の見積もりを実現する。
また、本実施の形態における推定ロジックは、例えば、建築CAD図面に記載された部屋の種類(ここでは「第1データ」と呼ぶ。)と、図面には未記載でありつつ建物に設置されることが想定される部材の種類および個数(ここでは「第2データ」と呼ぶ。)との対応関係を定めたデータであってもよい。第1データは例えば「洗面部屋」(図7の洗面脱衣室も同じ)であり、第2データは例えば「洗濯機パン」と「洗濯機水栓」とその個数算出ロジックであってもよい。また、第1データは例えば「リビング」「洗面脱衣室」であり、第2データは例えば各部屋に設置される電気設備や、各部屋で実施される電気設備工事の種類、個数であってもよい。
部材推定部62は、建築CAD図面に記載された部屋の種類に応じて、図面には未記載でありつつ建物に設置されることが想定される部材の種類と個数を推定する。例えば、部材推定部62は、図面CAD図面に洗面部屋(図7の洗面脱衣室も同じ)が含まれると判定した場合に、建物に「洗濯機パン」と「洗濯機水栓」が洗面部屋の数だけ設置されると推定し、見積対象の建物の部材に「洗濯機パン」と「洗濯機水栓」を追加してもよい。
また例えば、部材推定部62は、建築CAD図面に記載された部屋の種類を特定し、その部屋の種類に対応づけられた電気設備を、予め定められた個数計上する。具体例として、部材推定部62は、建築CAD図面に描かれた建物内に部屋「リビング」が含まれると判定した場合に、一般コンセントを3つ、専用コンセントを1つ、TV用コンセントを1つ、スイッチを2つ、電灯用配線を2つ計上してもよい。同様に、部屋「洗面脱衣室」が含まれると判定した場合に、一般コンセントを1つ、スイッチを2つ、電灯用配線を1つ計上してもよい。さらにまた部材推定部62は、その他の電気設備として電話用CD管工事等を1つずつ計上し、また、部材「24時間換気(排気・給気)」の個数を居室の個数に応じて決定してもよい。
部材引当部50は、部材抽出部60が図面データから抽出した部材情報と、部材推定部62が推定ロジックに基づいて推定した部材情報と、物件情報45に格納された建築仕様にしたがって、見積対象の建物に必要となる具体的な部材を部材カテゴリ単位に引当てる。例えば、建物の外壁、玄関ドア、和室の窓等の部材カテゴリ単位で、部材情報保持部36に保持された複数種類の部材の中から、見積対象建物に対して1つずつ部材を引当てる。
例えば、部材引当部50は、1つの部材情報が定める部材カテゴリ・サイズ・個数と、その部材カテゴリについて建築仕様が定めるグレード・色等を検索キーとして、部材情報保持部36を検索する。そして、部材情報保持部36から、1つの部材情報(ここでは「特定部材」と呼ぶ。)が定める条件と、建築仕様とに適合する部材(以下、「適合部材」と呼ぶ。)の情報取得を試みる。適合部材が存在すれば、見積対象建物に適合部材を引当て、特定部材の部位(すなわち部材カテゴリ)と適合部材を対応づけて物件情報45に記録する。
部材引当部50は、特定部材に対する適合部材を部材情報保持部36が未保持の場合、すなわち部材情報保持部36に対する検索で適合部材がヒットしない場合、適合部材に可及的に近似する代替部材の検索を部材情報保持部36に対して実行する。代替部材が存在すれば、見積対象建物に代替部材を引当て、部位と代替部材を対応づけて物件情報45に記録する。また適合部材も代替部材も存在しない場合は、上記特定部材情報について引当不可のフラグを設定する。
部材引当部50は、工事情報保持部40を参照して、複数の部材カテゴリのそれぞれについて、部材カテゴリが対応づけられた工事の工程を特定する。そして、工事の工程(例えば「電気設備工事、1階−和室」等)と、部材カテゴリと、引当てた部材のIDと、適合部材・代替部材・引当不可のいずれかを示すフラグを対応づけた引当情報を作成する。部材引当部50は、会員情報保持部44に格納された見積対象建物の物件情報45の中に、引当情報を記録する。
ここで代替部材の引当方法について説明する。例えば、特定部材情報が定めるサイズの部材が存在しない場合に、部材引当部50は、特定部材情報が定めるサイズを所定割合(例えば5%等)小さくした範囲で代替部材を検索する。複数の代替部材がヒットした場合は、その中で最もサイズが大きい部材を代替部材として決定する。すなわち部材引当部50は、適合部材の直近下位のサイズの部材を代替部材として検索し、取得する。このように部材引当部50は、適合部材が存在しない場合、建築CAD図面との整合性を維持しつつ、建物に設置可能な代替部材を引当てることを試行する。
このように、部材引当部50は、建築CAD図面および建築仕様にもとづいて、形状・サイズ・色等を基準として適合部材・代替部材を決定する。例えば、キッチンの場合、I型・L型という形状、サイズ、色、メーカの全てに一致する部材があれば、それを適合部材として引当てる。全てに一致するものがなければ、近似のものを代替部材として引当てる。そして、代替部材の場合にはその事実を示すフラグ(例えば、後述の図10における「△」に対応するフラグ)を立てることにより、ビルダーへ代替部材であることを報知する。
なお、代替部材の引当てにおいて、複数種類の基準を設けてもよい。第1基準は、近似の幅(範囲)が狭いものであり、例えば形状およびサイズに適用される。サイズの場合、例えば図面に記載のサイズと3%以上乖離したものは代替部材としては引当てないこととしてもよい。第2基準は、近似の幅が中間のものであり、例えば色に適用される。例えば、仕様設定で指定された色と色相環上でのある程度の乖離は許容して、類似する色の部材を代替部材として引当ててもよい。第3基準は、近似の幅が広いものであり、例えばメーカやグレードに適用される。例えば、第1および第2基準に適合すれば、メーカやグレードは任意に選択して代替部材として引当ててもよい。グレードについて、2つ違い(高級と普及)は引当てない一方で、1つ違い(高級と中級)は許容して代替部材として引当ててもよい。
費用算出部52は、会員情報保持部44に格納された見積対象建物の物件情報45を参照し、物件情報45に格納された引当情報にしたがって、建物の建築費用を算出する。具体的には、工事情報保持部40に格納された建築工事の複数の工程のそれぞれを単位として、各工程に対応づけられた部材カテゴリを特定する。そして、その部材カテゴリに引当てられた部材IDをキーとして部材情報保持部36を検索し、部材価格を取得する。部材情報保持部36に部材価格の算出ロジック(例えば単位量当たりの価格)が格納されている場合、費用算出部52は、引当部材のサイズおよび個数にもとづいて部材価格を算出する。費用算出部52は、1つの工事工程に対応づけられた複数の部材カテゴリについて、各部材カテゴリの部材価格を合算し、1つの工事工程における部材価格を算出する。
費用算出部52は、複数の工事工程のそれぞれについて、部材価格と工事の作業価格とを合算することで各工程の費用を算出する。例えば後述の図8および図9で示すように、工事情報保持部40に保持された各工程の明細レベル(例えば仮設工事工程における仮囲い等設置)で費用を算出し、適宜、各工程に対応づけられた部材価格を合算する。費用算出部52は、一部の費用が未計上の工程(例えば引当不可の部材が対応づけられた工程や、一部の作業価格が未保持の工程)については、その旨を示すフラグを工程の費用に対応づけて記録する。費用算出部52は、各工程の費用を合算して建物一棟全体の概算見積額を算出する。
見積提供部54は、費用算出部52が算出した概算見積金額を含む概算見積画面のウェブページを設定し、ビルダー端末12へ送信する。図8は概算見積画面92を示す。見積提供部54は、一部の費用が未計上を示すフラグが設定された工程については、備考欄94にその旨を示す所定のマークを設定する。概算見積画面92においてビルダーがある工事の明細ボタン96に対する選択操作を入力すると、見積提供部54は、内訳明細画面の提供要求をビルダー端末12から受け付け、内訳明細画面を示すウェブページをビルダー端末12へ送信して表示させる。
図9は内訳明細画面98を示す。見積提供部54は、概算見積画面92で明細の確認が要求された工程について、価格を含む明細情報を内訳明細画面98のデータとして設定する。内訳明細画面98と同様に、一部の明細に関する費用が未計上の場合は備考欄100に所定のマークを設定する。内訳明細画面98においてビルダーが編集ボタン102に対する選択操作を入力すると、見積提供部54は、内訳明細の編集画面の提供要求をビルダー端末12から受け付け、編集画面のウェブページをビルダー端末12へ送信する。ビルダーは、この編集画面にて、明細に未計上の費用を入力し、また明細に未計上の項目を適宜追加する。これにより、自動では引当てられなかった部材や、作業の価格をビルダー自身で設定できる。
また見積提供部54は、部材の引当状況を一覧表示する引当一覧画面のウェブページをビルダー端末12へ送信する。図10は引当一覧画面104を示す。見積提供部54は、見積対象建物の物件情報45に記録された引当情報と、部材情報保持部36とを参照し、各工事に対応する部材カテゴリに引当てられた部材情報(図10におけるメーカ・品名、色、数量等)を並べて引当一覧画面104を設定する。見積提供部54は、引当情報に適合部材のフラグが設定されていた場合、引当結果欄106に「○」を設定し、引当情報に代替部材のフラグが設定されていた場合、引当結果欄106に「△」を設定し、引当情報に引当不可のフラグが設定されていた場合、引当結果欄106に「×」を設定する。
ビルダーがある引当結果の変更ボタン108に対する選択操作を入力すると、見積提供部54は、引当部材の変更画面の提供要求をビルダー端末12から受け付け、変更画面のウェブページをビルダー端末12へ送信する。ビルダーは、この編集画面にて、建築支援装置16が自動で引当てた部材を、ビルダー自身がより適切と考える部材へ変更することができる。
ビルダー端末12は、内訳明細の編集画面での編集結果、および、引当部材の変更画面での変更結果を示すデータを建築支援装置16へ送信し、修正受付部56はこのデータを受け付ける。修正受付部56は、内訳明細の編集結果または引当部材の変更結果を費用算出部52に渡し、費用算出部52はこれらを反映した見積金額を改めて算出する。見積提供部54は、費用算出部52が新たに算出した見積金額を示す再見積画面のウェブページをビルダー端末12へ送信する。
図8で示した概算見積金額は、ビルダーが得るべき利益を考慮しないものであり、言わば建物の建築原価を示すものである。建築支援装置16は、建物の建築にあたりビルダーが得る利益の大きさの指定をビルダーから受け付け、ビルダーの利益を考慮した見積金額、言い換えれば、施主へ提示するための見積金額を算出する。
施主提示用の見積金額を算出するために、利益設定受付部58は、利益設定画面のウェブページをビルダー端末12へ送信して表示させる。図11は利益設定画面110を示す。利益設定画面110の計算方法指定エリア112において、ビルダーは、自身が得る利益の計算方法として、利益率指定と利益金額指定のいずれかを選択する。図11では利益率指定が選択されたこととし、ビルダーは利益率指定エリア114において複数の工事の利益率を一括設定し、もしくは工事個別に設定する。計算方法指定エリア112で利益金額指定が選択された場合、利益率指定エリア114に代えて、各工事の利益金額を指定するための利益金額指定エリアが表示される。
利益設定受付部58は、施主向け見積作成指示の受付部として機能する。すなわち、ビルダーが見積指示ボタン116に対する選択操作を入力すると、利益設定受付部58は、
利益率指定エリア114に入力された利益率、もしくは、利益金額指定エリアに入力された利益金額を含む利益設定情報(施主向け見積作成指示とも言える)をビルダー端末12から受け付ける。
利益設定受付部58は、ビルダー端末12から受け付けた利益設定情報を費用算出部52に渡し、費用算出部52は、ビルダーが指定した利益率もしくは利益金額を反映した施主提示用の見積金額を算出する。典型的には、引当部材および作業費用に基づいて先に算出した見積金額、すなわち建築原価を示す見積金額における各工事費用を、利益率もしくは利益金額に応じて増加させることにより、施主提示用の見積金額を算出する。各工事工程の費用を増加させる際に、図9の内訳明細の各明細項目の定価を、利益率もしくは利益金額(各明細項目に按分する等)に応じて増加させてもよいことはもちろんである。
見積提供部54は、費用算出部52が算出した施主提示用の見積金額を含む概算見積画面のウェブページをビルダー端末12へ送信する。見積提供部54は、PDF(Portable Document Format)ファイルのダウンロード要求を受け付けると、施主提示用の見積もりのPDFファイル、内訳明細のPDFファイル、引当一覧のPDFファイルをビルダー端末12へ送信する。これにより、ビルダーによる施主への提案作業、例えば概算見積金額およびその裏付けの提示を支援できる。
図12は、図2の建築DB24と正式見積部28と工程管理部30と発注管理部32の機能構成を詳細に示すブロック図である。建築DB24の構成は図3と同じである。正式見積部28は、物件情報設定部120と、見積商品選択部122と、見積処理部124を含む。工程管理部30は、仮工程作成部126と、工程情報提供部128と、工程確定部130と、進捗管理部132を含む。発注管理部32は、発注商品選択部134と、発注処理部136を含む。
物件情報設定部120は、ビルダーの操作に応じて、正式見積対象とする物件の情報を設定する。具体的には、建築支援サイトのトップページでビルダーが正式見積タブを選択した場合に、物件情報の入力画面の提供要求をビルダー端末12から受け付け、そのウェブページをビルダー端末12へ送信して表示させる。ビルダーは、概算見積済みの物件について、施主情報や建物住所等の物件情報をウェブページへ入力する。物件情報設定部120は、その物件情報をビルダー端末12から受け付け、物件情報45に記録する。
ここで正式見積は発注が前提となるため、仮工程作成部126は、工事情報保持部40に記憶された工事工程のテンプレート(例えば工事項目、工事工数の雛形)にしたがって、見積対象建物を建築するための仮の工程、言い換えれば、仮スケジュールを決定する。例えば、工事情報保持部40に記憶された工事工程のテンプレートと、物件情報45に記録された物件情報(例えば敷地面積や建物サイズ、各工事工程で使用する部材)に応じて、工事工程を作成する。
ビルダーは、工程作成の基準日として、着工日、上棟日、または竣工日を指定する。仮工程作成部126は、ビルダー端末12から工程作成の基準日を受け付け、その基準日にしたがって工事工程を作成する。また仮工程作成部126は、作成した工事工程の情報を物件情報45へ記録する。図13は工程表140を示す。工程表140は、仮工程作成部126が作成した工事工程を、工事項目と日程の二次元の表で示したものである。作業インジケータ142は、各工程の作業日程を示している。工程情報提供部128は、仮工程作成部126が作成した工程表のデータをビルダー端末12へ送信して表示させる。
図12に戻り、見積商品選択部122は、ビルダーの操作に応じて、正式見積対象とする部材の情報を設定する。具体的にはまず、正式見積対象とする部材を選択するための見積商品選択画面のウェブページをビルダー端末12へ送信して表示させる。図14は、見積商品選択画面144を示す。見積商品選択部122は、概算見積部26による概算見積処理で建物に引当てられた複数の部材情報を物件情報45から取得し、それらの部材情報を、対応する工事工程(工事情報保持部40から取得)とともに並べて見積商品選択画面144を作成する。
ここで部材情報保持部36は、複数の部材のそれぞれについて、建築支援装置16による発注が可能な部材(建材、住宅資材)か否かを示す情報を保持する。見積商品選択部122は、概算見積もり処理において引当てられた複数の部材のうち、建築支援装置16による発注が可能な部材に対して、対象選択欄146にチェックボックスを配置して選択可能な態様で表示させる。その一方、建築支援装置16による発注ができない部材に対してはチェックボックスを配置せず、選択不可の態様で表示させる。すなわち、概算見積の段階では、建物一棟全体の概算費用を提示することを優先し、建築支援装置16が発注を取り扱わない部材、例えば、建築支援装置16を管理する住宅資材メーカ等で取り扱わない部材についても見積対象とした。その一方、発注が前提となる正式見積の段階では、建築支援装置16が発注を取り扱わない部材や工事は、見積の対象外とする。
また部材情報保持部36は、複数の部材のそれぞれについて、在庫確認しなくても、発注すれば建築現場に納品できる日数を示す「ルール納期」を保持する。見積商品選択部122は、概算見積部26による概算見積処理で建物に引当てられた部材のそれぞれについて、現在日時から、対応する工事工程の開始日(すなわち部材の納品日)までの間にルール納期を確保可能か否かを判定する。
ルール納期が確保される場合、すなわち、対応工事(部材が対応づけられた工事であり、言い換えれば、部材が使用される工事)の開始日までに部材を納品可能なことを確約できる場合に、その部材の対象選択欄146にチェックボックスを配置し、ビルダーによる選択を可能にする。その一方、ルール納期を確保できない場合、その部材の対象選択欄146にチェックボックスを配置せず、ビルダーによる選択を不可にする。この場合、部材の発注が必要であれば、ビルダーは別途建材メーカ等へ問い合わせる。このようにルール納期にしたがって正式見積の可否、言い換えれば、発注の可否を判定することで、煩雑な在庫のチェック処理等を回避して、部材の発注可否を迅速に判定できる。
見積商品選択画面144において、ビルダーは正式見積の対象とする部材について、対象選択欄146にチェックを入れて、見積指示ボタン148に対する選択操作を入力する。見積商品選択部122は、正式見積対象の部材の指定を含む見積指示をビルダー端末12から受け付けると、正式見積対象の部材情報を物件情報45へ記録する。
見積処理部124の構成は、既述した概算見積部26の費用算出部52、見積提供部54と同様である。見積処理部124は、物件情報45に記録された正式見積対象の部材について、部材情報保持部36に保持された部材価格にしたがって各部材の価格を集計することにより、正式見積金額を算出する。見積処理部124は、見積処理の結果(例えば正式見積金額)を示す正式見積書のウェブページをビルダー端末12へ送信する。
図12に戻り、発注商品選択部134は、ビルダーの操作に応じて、発注の対象とする部材の情報を設定する。具体的には、建築支援サイトのトップページでビルダーが発注タブを選択した場合に、物件情報45に記録された正式見積対象の部材情報を並べたウェブページであり、発注対象の部材を選択するための発注商品選択画面のウェブページをビルダー端末12へ送信する。発注商品選択部134は、発注対象部材の確定情報をビルダー端末12から受け付け、その情報を物件情報45へ記録する。
工程情報提供部128は、物件情報45に記録された仮の工事工程の情報(図13の工程表140)を含む工程確認画面のウェブページをビルダー端末12へ送信して表示させる。工程確認画面においてビルダーが工程確定を示す操作を入力すると、工程確定部130は、工程確定の旨をビルダー端末12から受け付け、物件情報45に記録された仮の工事工程の情報を、正式な工事工程として確定する。例えば、確定された正式の工事工程であることを示す所定のフラグを設定する。
発注処理部136は、発注商品の選択が完了して、工事工程も確定すると、発注最終確認画面のウェブページをビルダー端末12へ送信して表示させる。発注最終確認画面においてビルダーが発注確定を示す操作を入力すると、発注処理部136は、発注確定の旨をビルダー端末12から受け付け、物件情報45に記録された発注対象部材に対する所定の発注処理を開始する。例えば、発注対象部材に対応する工事工程の開始日までに、発注対象部材を納品することを示す発注指示文書を作成する。
進捗管理部132は、物件情報45に記録された正式の工事工程にしたがって、工事業者の作業を支援する。例えば、進捗管理部132は、建物の建築作業の予実管理処理を実行する。具体的には、物件情報45に記録された予定としての工事工程を工事業者端末14へ提供して表示させ、工事業者端末14から送信された実績としての作業進捗情報を物件情報45へ記録する。また、工程の進捗度合い(遅れ度合い)を判定して、その情報を工事業者端末14へ提供する。
進捗管理部132は、工事業者の作業を支援するための情報として、作業一覧画面のウェブページを工事業者端末14へ送信して表示させる。図15(a)は作業一覧画面150を示す。進捗管理部132は、作業一覧画面150に工事工程の一覧と、各工程の進捗状況を示す情報を設定する。作業一覧画面150において作業152が選択されると、進捗管理部132は、選択された作業の詳細情報提供要求を工事業者端末14から受け付け、作業詳細画面のウェブページを工事業者端末14へ提供する。
図15(b)は作業詳細画面154を示す。工事業者は、作業日程エリア156に作業の開始および完了の実績日を入力する。また、作業項目エリア158に詳細な作業項目の完了状況を入力する。進捗管理部132は、作業詳細画面154へ入力された作業状況を工事業者端末14から取得して、工事の実績情報として物件情報45に記録する。また、工程の進捗度合いを更新する。これにより、物件の建築に関わるメンバーが、タブレット端末やスマートフォン等の機器を用いて、工事の進捗管理を実施できる。
以上の構成による建築支援装置16の動作を以下説明する。
顧客(施主)への住宅の提案を予定するビルダーは、ビルダー端末12を操作して建築支援サイトへログインし、そのトップページで概算見積タブを選択する。建築支援装置16の仕様設定部46は、建築仕様選択画面70をビルダー端末12へ提供し、ビルダーは既存の建築仕様の中から所望の建築仕様を選択し、もしくは既存の建築仕様をカスタマイズする。仕様設定部46は、ビルダーにより指定された建築仕様を物件情報45へ記録する。建築仕様を決定したビルダーは、施主へ提案する住宅の建築CAD図面をビルダー端末12から建築支援装置16へアップロードする。
建築支援装置16の部材引当部50は、建築CAD図面にしたがって住宅に設置されることが明記された部材を抽出する。また、図面には明記されていないものの図面に記載された住宅の属性に基づいて住宅に設置されることが想定される部材であり、言い換えれば、住宅の建築において必要となることが想定される部材や工事を、予め定められた推定ロジックにしたがって自律的に推定する。部材引当部50は、建築CAD図面から抽出した部材および自律的に推定した部材を見積対象の住宅に引当てる。その際に、図面および建築仕様に完全に合致する適合部材が存在しなければ、可及的に近似する代替部材を引当てる。費用算出部52は、部材引当部50による引当部材の価格を工事工程毎に積み上げ、また、工事の標準的な作業費用を加味して各工事工程の費用を算出する。そして各工事工程の費用を合算して住宅一棟の概算見積金額を算出する。
見積提供部54は、費用算出部52が算出した概算見積金額を示す概算見積書と、その内訳明細、部材の引当状況を示すウェブページをビルダー端末12へ提供する。ビルダー端末12において内訳明細および引当部材の変更がなされると、費用算出部52はその変更を反映した見積金額を新たに算出し、見積提供部54は新たな見積金額をビルダー端末12へ提供する。利益設定受付部58が、ビルダーが設定した利益設定情報をビルダー端末12から取得すると、費用算出部52は、ビルダーが得るべき利益を上乗せした施主提示用の見積金額を算出し、見積提供部54は、施主提示用の見積金額をビルダー端末12へ提供する。
以上で得られた概算見積書をもとにビルダーは顧客へ住宅を提案し、住宅建築を受注したこととする。ビルダーが建築支援サイトのトップページで正式見積タブを選択すると、建築支援装置16の物件情報設定部120は、物件情報入力画面をビルダー端末12へ提供する。ビルダーは、概算見積済みの物件について物件情報(施主情報や物件住所等)を物件情報入力画面に入力し、物件情報設定部120は、その物件情報を物件情報45へ記録する。またビルダーは、工事工程作成の基準日を設定する。仮工程作成部126は、ビルダーが設定した基準日と概算見積処理の結果にしたがって、概算見積済みの物件を建築するための仮の工事工程を作成する。そして工程情報提供部128は、仮の工事工程を示す工程表をビルダー端末12へ提供し、ビルダーに確認させる。
工事工程を確認した旨の操作をビルダーが入力すると、見積商品選択部122は、見積商品選択画面144をビルダー端末12へ提供する。ビルダーが正式見積対象部材を選択すると、見積商品選択部122は、ビルダーにより選択された部材情報を物件情報45へ記録する。見積処理部124は、ビルダーにより選択された正式見積対象部材の価格を積み上げて正式見積金額を算出し、正式見積書をビルダー端末12へ提供する。
正式見積書を確認したビルダーは発注処理へ移る。ビルダーが建築支援サイトのトップページで発注タブを選択すると、建築支援装置16の発注商品選択部134は、発注商品選択画面をビルダー端末12へ提供する。ビルダーが発注対象商品を選択すると、工程情報提供部128は、工事工程の最終確認画面をビルダー端末12へ提供する。ビルダーが工事工程を確定すると、発注処理部136は、発注の最終確認画面をビルダー端末12へ提供する。ビルダーが発注確定の旨を入力すると、発注処理部136は、発注対象商品の発注処理を開始する。
建物の建築段階において、建築支援装置16の進捗管理部132は、建築工事の進捗状況を管理する。建物の建築工事現場において、工事業者が、所定のURLを指定して工事業者端末14から建築支援装置16へアクセスすると、建築支援装置16の進捗管理部132は、進捗管理用のウェブページを工事業者端末14へ提供する。また進捗管理部132は、そのウェブページへの入力情報を工事業者端末14から取得して、建築工事の進捗状況を更新し、予実管理処理を実行する。
実施の形態の建築支援装置16によると、見積対象の建物に対して、建築CAD図面に明記された部材を引当てるだけでなく、ノウハウに基づく推定ロジックにしたがって、建築CAD図面に明記されていない部材も推定して引当て、見積金額に計上する。このように、概算見積においてビルダーが明示的に指定しない部材を、推定処理により自律的に補完することで、ビルダーに要求する情報量を低減する。これにより、ビルダーの負担の増大を抑制しつつ、建物の建築費用の見積精度を向上させることができる。
また建築支援装置16によると、仕様情報保持部38は、予め定められた複数の建築基準に対応する複数の建築仕様として、各基準に適合する部材の情報を保持し、部材引当部50は、見積対象の建物に設置される部材として、ビルダーが選択した建築仕様(建築基準)に適合する部材を引当てる。したがって、同じ建築CAD図面であっても、ビルダーが異なる建築仕様を選択すれば、部材引当部50は異なる部材を引当て、その結果、異なる見積金額が算出される。言い換えれば、費用算出部52は、図面受付部48が受け付けた図面が同一であっても、ビルダーが選択した建築仕様に応じて異なる額の建築費用を算出する。これにより、ビルダーは、1つの建築CAD図面から、建築仕様の選択次第で、様々なバリエーションの見積結果を得ることができる。
また建築支援装置16によると、ビルダーがアップロードした建築CAD図面およびビルダーが指定した建築仕様に完全に合致する適合部材が存在しなければ、適合部材に可及的に近似する属性の代替部材を引当てる。これにより、適合部材が存在しない場合も、建築CAD図面との整合性を維持しつつ、建築費用の見積精度を維持することができる。また建築支援装置16によると、建築原価としての見積金額をビルダーへ提供するだけでなく、ビルダーが任意に設定した利益額を反映した施主提示用の見積金額もビルダーへ提供し、ビルダーの見積作業の一層の効率化を支援する。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せによりいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
例えば実施の形態では言及していないが、建築支援システム10には、ビルダーにとっての顧客である施主の情報処理装置(ここでは「施主端末」と呼ぶ。)が含まれてよい。施主端末は、PCやモバイル端末等であってよく、通信網18を介して建築支援装置16と接続される。建築支援装置16は、実施の形態に記載したビルダー向けの建築支援サイトに加えて、施主向けのウェブサイト(ここでは「施主サイト」と呼ぶ。)をインターネット上に公開する。
この変形例において、建築支援装置16は、施主宛情報受付部と、施主宛情報提供部と、ビルダー宛情報受付部と、ビルダー宛情報提供部をさらに備える。ビルダーは、概算見積済み物件の特定の施主を指定して建物に関する種々の情報(ここでは「建物関連情報」と呼ぶ。)を建築支援サイトへアップロードする。施主宛情報受付部は、特定の施主宛の建物関連情報をビルダー端末12から受け付け、物件情報45に記録する。施主宛情報提供部は、施主が施主端末を使用して施主サイトへログインした場合に、その施主宛にビルダーがアップロードした建物関連情報を物件情報45から取得し、その建物関連情報を設定したウェブページを施主端末へ送信して表示させる。
施主は、ビルダーからの建物関連情報を確認して、ビルダーへ連絡すべき情報があれば、ビルダーを指定してその情報(ここでは「連絡情報」と呼ぶ。)を施主サイトへアップロードする。ビルダー宛情報受付部は、特定のビルダー宛の連絡情報を施主端末から受け付け、物件情報45に記録する。ビルダー宛情報提供部は、ビルダーがビルダー端末12を使用して建築支援サイトへログインした場合に、そのビルダー宛に施主がアップロードした連絡情報を物件情報45から取得し、その連絡情報を設定したウェブページをビルダー端末12へ送信して表示させる。
この変形例によると、ビルダーと施主との情報交換を支援でき、両者の意思疎通の促進を支援できる。建物関連情報には、見積書や住宅図面、施主への種々の問い合わせが含まれてよい。例えば、ビルダーは、建築仕様や、個々の部材の選択、物件情報に関する問い合わせを建物関連情報として施主へ提供でき、施主は問い合わせへの回答を連絡情報としてビルダーへ提供できる。ビルダーは、施主からの回答結果をウェブサイトで確認し、施主の意向を反映した内訳明細の変更、引当部材の変更、正式見積対象商品の選定、発注対象商品の選定等を迅速に実施できる。
また実施の形態では、特定部材情報が定めるサイズの部材が存在しない場合に代替部材を選定する例を示した。別の例として、建築仕様が定める色の部材が存在しない場合に、部材引当部50は、公知の色相環上で色相を所定値ずらした範囲で代替部材を検索してもよい。複数の代替部材がヒットした場合は、色相環上で適合部材の色(建築仕様が定める色)に最も近い色の部材を代替部材として決定してもよい。
実施の形態における図9の内訳明細画面98について付言する。内訳明細画面98において数量を「0」としている「仮囲い等設置」は、仮設工事において実施する場合と実施しない場合の両方がありうる項目である。仮囲いは、典型的には狭い現場ではつけるが、広い現場ではつけないこともあり、見積もり項目に計上すべきか否かはビルダーの判断に委ねるべき項目である。そこで推定ロジック保持部42の推定ロジックでは、建築CAD図面における所定の基準、例えば敷地面積や床面積等が所定のサイズ以上であることと、工事項目(「仮囲い等設置」等)とを対応づける。部材推定部62は、建築CAD図面にもとづいて、例えば敷地面積や床面積等が所定のサイズ以上の場合に、「仮囲い等設置」等の工事項目を、見積対象建物の建築に必要な工事として推定する。部材引当部50は、部材推定部62が推定した「仮囲い等設置」等の工事項目の数量を「0」として見積対象建物に引当て、費用算出部52は当該工事項目の数量が「0」のため費用も「0」とする。これにより、見積項目の拾い漏れを防止しつつ、内訳明細画面98を確認するビルダーに数量および価格を適宜設定し、または項目を削除することを促すことができる。
また内訳明細画面98において数量を「1」(1以上)、費用を「0」としている項目(例えば図9の外部足場二度架け)は、部材情報保持部36に部材価格が未格納であり(もしくは0円と設定された)、または、工事情報保持部40に工事価格が未格納である(もしくは0円と設定された)項目である。この項目の部材もしくは工事は、建物の建築に必須と考えられる項目であるため、部材情報保持部36および工事情報保持部40では必須を示すフラグとともに記録される。部材引当部50は、部材情報保持部36および工事情報保持部40の必須フラグを確認して見積対象建物に必須フラグが設定された部材・工事を引当てる。費用算出部52は、引当てられた部材・工事について、部材情報保持部36および工事情報保持部40に価格が未格納であれば費用を0円として計上する。これにより、建築に必要な部材・工事については、それらの価格が未設定であっても、例えば価格の幅が大きく、一般的な費用の計上が難しい部材・工事であっても見積もりに計上することで見積項目の拾い漏れを防止する。また、内訳明細画面98を確認するビルダーに数量および価格を適宜設定することを促すことができる。
また、実施の形態では詳細に言及していないが、図1のビルダー端末12は、仕様設定登録機能、図面送信機能、見積情報受信機能、見積情報表示機能、見積情報変更機能、変更情報送信機能を備える。この機能はビルダー端末12にインストールされたウェブブラウザソフトウェアにより実現されてもよい。
仕様設定登録機能は、図5、図6に記載の建築仕様選択画面70を所定のディスプレイに表示させる。また当該画面への入力情報をビルダーから受け付け、建築支援装置16へ送信することにより、建築費用見積のための建築仕様を建築支援装置16に登録する。図面送信機能は、ビルダーの操作に応じて、見積対象建物を描いた建築CAD図面を建築支援装置16へアップロードする。見積情報受信機能は、建築支援装置16が建築CAD図面に基づいて自動作成した概算見積情報を建築支援装置16から受信し、見積情報表示機能は概算見積情報をディスプレイに表示させる。
この概算見積情報は、見積対象建物に設置される部材として、建築CAD図面に記載された部材と、図面には未記載であるが、見積対象建物の建築に使用されることを建築支援装置16が自律的に推定した部材の両方の価格を含む見積金額を示す。また、複数の工事工程や部材の内訳等、複数の見積項目を含む。また図9で示したように、見積情報表示機能は、未計上の費用が存在する見積項目を、その事実を示す情報を付加した態様で表示させる。
見積情報変更機能は、少なくとも未計上の費用が存在する見積項目に対して、ビルダーに費用を入力させるための編集画面をディスプレイに表示させる。この編集画面は、内訳明細に未計上の項目をビルダーに追加させるための画面でもある。変更情報送信機能は、ビルダーが編集画面に入力した情報を建築支援装置16へ送信することにより、ビルダーによる変更を反映した再見積を建築支援装置16に実行させる。このようにビルダー端末12は、建築支援装置16と連携して、ビルダーの作業を支援する。なお、ここでは詳細には言及しないが、ビルダー端末12は、実施の形態で説明したビルダーへのユーザインタフェースに関する種々の機能をさらに実行する。例えば、正式見積情報・工事工程情報・発注情報のそれぞれを建築支援装置16から受信し、表示・編集し、変更内容を建築支援装置16へ登録する機能をさらに備える。
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。