JP6021784B2 - 同期回転機の磁極位置検出方法 - Google Patents

同期回転機の磁極位置検出方法 Download PDF

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Description

この発明は、同期回転機の磁極位置を位置センサを用いることなく得ることが出来る同期回転機の磁極位置検出方法に係り、特に、磁極位置をより正しく検出する方法に関する。
同期電動機や誘導同期電動機などの回転子に永久磁石を埋め込んだ回転機を精度良く制御する場合、回転機の回転子位置と回転機に流れる電流の情報が必要である。回転子位置の情報は、位置センサ等を回転機に取付けることにより得ていたが、コスト削減、省スペース、信頼性の向上という観点から位置センサレス化が進んできている。
回転機の位置センサレス制御法として、例えば、特許文献1のような回転機の誘起電圧を利用した位置センサレス制御法や、例えば、特許文献2のような突極性を利用した位置センサレス制御法などがある。誘起電圧を利用した位置センサレス制御は、速度ゼロでは誘起電圧もゼロであるため、正しく回転子位置を推定することが出来ない。また、突極性を利用した位置センサレス制御は、回転子位置推定に利用する突極性が回転子位置の2倍の周期で変わるため、推定位置も回転子位置の2倍の周期となる。即ち、推定位置は回転機の回転子位置が0〜180度と180〜360度において、同じ値となって回転子位置を確実に検出するという点で十分とは言えない。
上記のことを勘案すると、少なくとも回転機を速度ゼロ付近から起動するときは、突極性を利用した位置センサレス制御法以外に、別途、回転機の回転子位置情報を推定する方法が必要である。
その方法として、回転機の磁気材料の磁気飽和現象を利用することで、回転機に電圧を印加し、当該電圧に基づき回転機に流れる電流から回転機の磁極位置を検出する方法がある。
具体的には、例えば、特許文献3のような回転機の磁気飽和を利用した方法がある。この方法は、互いに振幅が等しくかつ等間隔の位相の2n(nは相数で3以上の自然数)個の電圧ベクトルを回転機に印加したとき、位相が互いに180度異なる各一対の電圧ベクトル印加時に流れる電流検出値を互いに加算した加算電流値から回転子位置を検出するもので、磁気飽和時に正負で流れる電流が異なることを利用して、NS極を含めた360度までの測定が可能であるとしている。
また、特許文献4に記載の発明では、回転機のd軸電流指令に対して、正負対称に交互に切り替わる一定波形のd軸直流バイアス電流を重畳し、このバイアス重畳後のd軸電流指令からdq軸電圧指令を求め、d軸直流バイアス電流の正負切替タイミングにおけるd軸印加電圧とd軸電流変化率とを算定し、算定したd軸印加電圧とd軸電流変化率との関係から永久磁石のN極S極の方向を判別している。
国際公開WO2002/091558号公報 国際公開WO2009/040965号公報 特許第4271397号公報 特開2008−79489号公報
ここで、特許文献3、4の磁極位置検出法を用いる場合、磁気飽和状態における磁極位置の位相の磁気抵抗が正負で異なることを利用している。このため、詳しくは後述するが、回転機の構造によっては、磁気飽和状態であっても正負の磁気抵抗の差に変化が発生し、結果として、検出する磁極位置の極性が反転したりする。
速度ゼロ付近での検出磁極位置に誤差があると、回転始動時に意図しない方向に回転したり、あるいはセンサレス制御に失敗するといった問題が起こる。
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、回転機の構造如何に拘わらず、磁極位置の極性を誤ることなく、従って、磁極位置を正しく検出することができる同期回転機の磁極位置検出方法および磁極位置検出装置を提供するものである。
この発明に係る同期回転機の磁極位置検出方法は、同期回転機に所定の電圧を印加し、当該電圧に基づき同期回転機に流れる電流を検出し、当該検出電流から同期回転機の磁極位置を演算し演算磁極位置として出力する磁極位置演算手段を備え、
この磁極位置演算手段により、回転子が停止している同期回転機の磁極位置を演算し第一演算磁極位置θ1として出力する第一ステップ、第一演算磁極位置θ1から所定の位相θa進んだ磁極位置(θ1+θa)で直流磁束を発生させるよう同期回転機に直流電流を印加することにより回転子の磁極を磁極位置(θ1+θa)まで回動させる第二ステップ、磁極位置演算手段により、回転子の磁極が磁極位置(θ1+θa)で停止している同期回転機の磁極位置を演算し第二演算磁極位置θ2として出力する第三ステップ、および磁極位置(θ1+θα)と第二演算磁極位置θ2との両磁極位置を比較し、この両磁極位置が等しいときは第二演算磁極位置θ2をそのまま最終出力である検出磁極位置θ0として出力し、両磁極位置が等しくないときは第一演算磁極位置θ1および第二演算磁極位置θ2の磁極極性が実際とは反転しているとみなして第二演算磁極位置θ2を修正した値を検出磁極位置θ0として出力する第四ステップを備え
前記所定の位相θaは、電気角で0度より大きく180度より小さい範囲、または、180度より大きく360度より小さい範囲に設定されるものである。
また、この発明に係る同期回転機の磁極位置検出装置は、同期回転機の電流を検出する電流検出手段、この電流検出手段で検出された同期回転機の電流に基づき回転子が停止している同期回転機の磁極位置を演算する磁極位置演算手段、この磁極位置演算手段で演算された磁極位置から所定の位相θa進んだ磁極位置で直流磁束を発生させるよう同期回転機に直流電流を印加する直流電流印加手段、および磁極位置演算手段により回転子が停止している同期回転機に所定の電圧を印加したときの電流から回転子の第一演算磁極位置θ1を求め、更に、直流電流印加手段により直流電流を印加することで回転子の磁極を磁極位置(θ1+θa)まで回動させ、再び、磁極位置演算手段により回転子が回動した位置で停止している同期回転機に所定の電圧を印加したときの電流から回転子の第二演算磁極位置θ2を求め、磁極位置(θ1+θa)と第二演算磁極位置θ2との両磁極位置を比較し、両磁極位置が等しいときは第二演算磁極位置θ2をそのまま最終出力である検出磁極位置θ0として出力し、両磁極位置が等しくないときは第一演算磁極位置θ1および第二演算磁極位置θ2の磁極極性が実際とは反転しているとみなして第二演算磁極位置θ2を修正した値を検出磁極位置θ0として出力する磁極位置検出手段を備え、
前記所定の位相θaは、電気角で0度より大きく180度より小さい範囲、または、180度より大きく360度より小さい範囲に設定されるものである。
この発明に係る同期回転機の磁極位置検出方法は、以上のように、従来からの磁極位置演算手段を用いるが、第一ステップで演算した第一演算磁極位置θ1と、その後、回転子の磁極を磁極位置(θ1+θa)まで回動させた第三ステップで演算した第二演算磁極位置θ2とに基づき、演算時の磁極極性の正否を判定し、その判定結果に基づき検出磁極位置θ0を出力するようにしたので、回転機の構造如何に拘わらず、磁極位置の極性を誤ることなく、従って、磁極位置を正しく検出することが可能となる。
この発明の実施の形態1における同期回転機の磁極位置検出方法を実現する磁極位置検出装置を示すブロック図である。 この発明で課題として取り上げる、磁極極性の誤認の可能性を説明するため、同期回転機の構造と磁束の状況を示す図である。 この発明で課題として取り上げる、磁極極性の誤認の可能性を説明するため、同期回転機の図2とは異なる構造と磁束の状況を示す図である。 図1の直流電流印加手段5の内部構成を示すブロック図である。 この発明の実施の形態1における同期回転機の磁極位置検出方法を説明するフローチャートである。 図5のステップ5Dにおける識別動作を説明するもので、磁極極性を正しく演算する場合の例を示す。 図5のステップ5Dにおける識別動作を説明するもので、磁極極性を誤って演算する場合の例を示す。 この発明の実施の形態2における同期回転機の磁極位置検出方法を説明するフローチャートである。 この発明の実施の形態3における同期回転機の磁極位置検出方法を実現する装置で採用する直流電流印加手段5Aの内部構成を示すブロック図である。 この発明の実施の形態3における同期回転機の磁極位置検出方法を説明するため、直流電流を印加したときの、位相θBと速度ωの時間経過特性を示す図である。 図9の電流ピーク検出器562の動作を説明するため、α軸電流iαとその絶対値|iα|の時間経過特性を示す図である。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1における同期回転機の磁極位置検出方法を実現する磁極位置検出装置の構成を示すブロック図である。
図1において、同期回転機1は、ここでは、その回転子に永久磁石を埋め込んだタイプの同期機である。同期回転機1には、同期回転機1の電流ベクトルを検出する電流検出手段2と、同期回転機1に交流三相電圧を印加するインバータ等の電力変換器が相当する電圧印加手段3が接続されている。
電流検出手段2は、同期回転機1の交流三相電流ベクトル(iu、iv、iw)を検出する。なお、交流三相電流を検出するには、電流を三相とも検出するほか、二相分を検出して三相電流の和がゼロであることを利用して三相電流を求めてもよいし、インバータ母線電流やスイッチング素子に流れる電流とスイッチング素子の状態から三相電流を演算してもよい。
電圧印加手段3は、後述する磁極位置演算手段4および直流電流印加手段5から出力される電圧指令ベクトルに基づいて、同期回転機1に電圧を印加する。
磁極位置演算手段4は、例えば、既述した特許文献3、特許文献4で採用される、従来の検出方法によるものが相当し、広義には、同期回転機1に対して所定の電圧を印加し、当該電圧に基づき同期回転機1に流れる電流を検出し、当該検出電流から同期回転機1の磁極位置を演算する。
もっとも、これら従来の磁極位置演算手段4は、接続される同期回転機1の構造によって、磁極極性の判定を誤った状態での磁極位置を演算出力する可能性がある。以下、その理由を、図2、図3を参照して説明する。
図2、図3は、同期回転機1の回転子の構造を示しており、図2は、正しく磁極位置検出できる回転子構造の一例を示し、図3は、磁極位置を誤って検出する回転子構造の一例を示している。図2、図3の矢印は、同期回転機1の磁石磁束の方向について記述したもので、簡単のため一極対分のみを示している。
図2のように、永久磁石が、回転子の比較的浅い位置に埋め込まれている構造の場合、同期回転機1の制御に利用される永久磁石方向のd軸に相当する磁路は、図2の矢印に示す方向をとり、ほぼ永久磁石の磁束で磁気飽和している。このため、d軸の正方向の磁気抵抗は高い状態である。しかし、d軸の負の方向に磁束を発生させることを考えると、磁石磁束を弱める磁束を発生させるため、いわゆるヒステリシス特性により磁気抵抗が低くなる。極性の判別は、d軸の正負方向で磁気抵抗の差が現れることを利用し、磁気抵抗が高い方向をN極と判別する。前掲の特許文献3、特許文献4は、従って、磁極位置演算手段4は、このような原理によって磁極極性の判別を行っている。
一方、回転子構造が、例えば、図3に示すように、永久磁石が比較的深い位置に埋め込まれている構造の場合、d軸磁路上には永久磁石と鉄心部分が混在することになる。ここで、鉄心部分は磁気抵抗が低くなりd軸の正方向の磁気抵抗が下がる。すると、d軸の負方向の磁気抵抗が相対的に高くなり、d軸の負方向(すなわちS極)をN極と誤って判別し、誤った磁極位置を演算出力する結果となる。
この現象は、回転機構造に起因する検出誤りであるので、検出対象の回転機が同一である限り何度繰り返しても同じ演算結果を出力する。
本実施の形態1では、このように、磁極極性を誤って判別するような回転子構造を持つ同期回転機であっても、極性を誤って検出していることを識別し、当該識別結果に基づき磁極位置を修正し、正確な磁極位置を検出することができる磁極位置検出方法を提供するものである。
先の図1の直流電流印加手段5は、本願発明の要部のひとつであり、磁極位置演算手段4が出力する磁極位置から所定の位相進んだ磁極位置で直流磁束を発生させるよう同期回転機1に直流電流を印加するための電圧指令を生成し、この直流電流の印加により、同期回転機1の回転子を上記位相分だけ回動させるもので、以下、その内部構成を示すブロック図である図4を参照して詳細に説明する。
図4において、加算手段51は、磁極位置演算手段4から出力された磁極位置に所定の位相θaを加算した値θAを出力する。なお、θaとしては、理論的には、電気角で、0度より大きく180度より小さい範囲、または、180度より大きく360度より小さい範囲で設定可能である。しかし、これらの範囲内である、90度または270度に設定すると、印加した時点における直流電流が磁石磁束と直交し発生トルクが最大となり、従って、回動時間が最短となって本願発明による磁極位置検出を速やかに実施できるという利点がある。
第一座標変換器52は、電流検出手段2から出力された交流三相検出電流ベクトル(iu、iv、iw)を磁極位置θAに相当する位相をd軸とする直交dq二軸座標に変換してdq軸検出電流ベクトル(id、iq)を出力する。
これにより、変換後のdq軸電流ベクトルのd軸に電流を印加すれば、位相θAの直流電流を印加することができる。
式(1)は、交流三相検出電流ベクトル(iu、iv、iw)をdq軸検出電流ベクトル(id、iq)に変換する演算式を示す。
Figure 0006021784
加減算手段53は、電流指令ベクトル(idref、iqref)からdq軸検出電流ベクトル(id、iq)をそれぞれ減算する。ここで、d軸電流指令ベクトルidrefは、回転子を回動させるために必要な任意の値に設定すればよい。また、q軸電流は流す必要がないので、q軸電流指令ベクトルiqrefは0に設定する。
電流制御器54では、加減算手段53の出力である電流指令ベクトルと検出電流ベクトルとの偏差が零となるように、例えば、比例積分制御によりdq軸電圧指令ベクトル(vd、vq)を出力する。
なお、電流制御を必要とするのはd軸のみであるので、q軸の電流制御は省略してvq=0としてもよい。
第二座標変換器55では、位相θAを使ってdq軸電圧指令ベクトル(vd、vq)をdq軸から静止座標の交流三相電圧指令ベクトル(vu、vv、vw)に変換し出力する。この変換は、式(1)の逆変換であるので、式の記載は省略する。
図1の磁極位置検出手段6は、以上で説明した磁極位置演算手段4および直流電流印加手段5を操作することにより、最終的に求めるべき正確な検出磁極位置を出力する。
図5は、磁極位置検出手段6の動作、従って、この発明の実施の形態1における同期回転機の磁極位置検出方法を説明するフローチャートである。
図5の説明に入る前に、先ず、図6、図7により、本実施の形態1における磁極位置検出の特徴について説明する。
同期回転機1が最初に磁極位置検出装置に接続された時点では、磁極位置演算手段4の演算する磁極位置が正しい位置か、磁極極性が反転した位置かを知ることはできない。即ち、先の図2の状態に該当するのか、図3の状態に該当するのかの区別ができない。
そこで、先ず、磁極位置演算手段4を操作して第一の磁極位置演算を行い(第一ステップ)、次に、直流電流印加手段5を操作して、第一の磁極位置演算で出力された第一演算磁極位置θ1に位相θa(ここでは90度)を加算した方向に、直流電流を印加して回転子を回動させ(第二ステップ)、再度、磁極位置演算手段4を操作して第二の磁極位置演算を行い第二演算磁極位置θ2を出力する(第三ステップ)。
これにより、例えば、先の図2で示したように、正しい磁極位置を演算する回転機構造であった場合は、図6に示すように、第一ステップにおいて演算される磁極位置θ1は正しくN極の磁極位置を検出し、第二ステップでは、θ1にθaだけ進めた位相に回転子を回動させる。回動した後、第三ステップにおいて再度磁極位置演算を行うと、得られる位相θ2はθ1+θaと等しくなる。ここで、(θ2−θ1)で差分を取ると、回動した位相θaが得られる。
反対に、例えば、先の図3に示したように、反転した磁極位置を判別演算する構造を持つ回転機である場合は、図7に示すように、第一ステップにおいて演算される磁極位置θ1は反転した磁極S極を指し、第二ステップで、θ1にθaだけ進めた位相に回転子を回動させる。
この場合、回動した後では、直流磁束の方向に永久磁石のN極が位置するので、図7に示すように、回動する方向は反時計方向となり、図6の場合の時計方向の回動とは逆となる。
この結果、第三ステップおいて再度磁極位置演算を行い得られる位相θ2はθ1+θa−180°であり、(θ2−θ1)の差分はθa−180度となり、θaとはならない。 本実施の形態1では、(θ2−θ1)の差分を用い、これがθaに等しければ、磁極位置演算手段4の演算する磁極位置が正しいとし、θaに等しくなければ、磁極位置演算手段4の演算する磁極極性が反転しているとみなす。
なお、図6、図7は磁極位置の表示のため回転子を簡易的に記した図であり、簡単のため2極の回転機としている。
以上の説明を踏まえて、本実施の形態1の磁極位置検出手段6の動作、従って、その磁極位置検出方法について図5のフローチャートを用いて説明する。
ステップ5Aにおいて、磁極位置演算手段4を操作して第一の磁極位置演算を実行し、第一演算磁極位置θ1を演算する。
次に、ステップ5Bにおいて、直流電流印加手段5を操作して第一演算磁極位置θ1からθa進んだ位相に直流電流を印加し、回転子のN極を位相(θ1+θa)に回動させる。
なお、既述したように、θaとしては、0度より大きく180度より小さい範囲、または、180度より大きく360度より小さい範囲で任意の値に設定可能であるが、θa=90度または270度と設定することで、回動動作に要する時間を最小にすることが出来る。
ステップ5Bにおける回転子の回動動作が終了した後、ステップ5Cで磁極位置演算手段4を再び操作して第二の磁極位置演算を実行し、第二演算磁極位置θ2を得る。
次に、ステップ5Dにおいて、磁極位置検出手段6は、磁極位置演算の反転識別を行う。前述の通り、磁極位置演算の出力の反転の有無によって、(θ2−θ1)の差分から反転識別を行うことができる。
識別には、(θ2−θ1)の差分がθaと等しいとき磁極位置演算が正しく、そうでない場合に磁極位置を誤判別していると判別してもよいし、図7に示したように、θ2=θ1+θa−180度と定義したときは、(θ2−θ1)の差分が0以上のとき磁極位置演算が正しく、0を下回るとき磁極位置を誤判別しているとすることもできる。
図7の第三ステップで、演算された磁極位置をθ2=θ1+θa+180度と定義することも出来るので、その場合の判定は、(θ2−θ1)の差分が0以下のとき磁極位置演算が正しく、0を上回るとき磁極位置を誤判別しているとすることもできる。
ステップ5Dにおいて、磁極位置演算が正しいと識別した場合はステップ5Eを実行する。ステップ5Eでは、磁極位置検出手段6からの最終出力である検出磁極位置θ0が第二演算磁極位置θ2と等しいから、θ0=θ2として、磁極位置検出結果とする。また、識別値の記憶のため、flg=0として識別結果を記憶しておく。
ステップ5Dにおいて、磁極位置演算が反転していると識別した場合はステップ5Fを実行する。ステップ5Fでは、第二演算磁極位置θ2=θ1+θa−180度(図7の場合)となるから、検出磁極位置θ0=θ2+180°と修正して、磁極位置検出結果とする。また、識別値の記憶のため、記憶手段flgにflg=1として識別結果を記憶しておく。
以上のように、本実施の形態1の磁極位置検出方法にあっては、従来からの磁極位置演算手段4を用いるが、第一ステップで演算した第一演算磁極位置θ1と、その後、回転子の磁極を磁極位置(θ1+θa)まで回動させた第三ステップで演算した第二演算磁極位置θ2とに基づき、演算時の磁極極性の合否を判定し、その判定結果が合のときはθ2をそのまま、否のときはθ2+180度を検出磁極位置θ0として出力するようにしたので、回転機の構造如何に拘わらず、磁極位置の極性を誤ることなく、従って、磁極位置を正しく検出することが可能となる。
実施の形態2.
先の実施の形態1では、図5のフローチャートを用いて正しい磁極位置を検出することができるが、磁極位置演算を2度行うとともに、その間で回転子を回動させる必要があり、毎回の磁極位置検出動作で用いるのは冗長である。
そこで、この実施の形態2における同期回転機の磁極位置検出方法では、接続した同期回転機に対して実施の形態1による磁極位置検出を実施し、そこで識別された磁極極性判別の合否の結果を記憶保存しておき、以降、同一の同期回転機を対象に磁極位置を検出する場合は、その識別結果を用いることにより、磁極位置演算を一度実施するだけで、正しい磁極位置を検出出来るようにしたものである。
本実施の形態2の動作について図8のフローチャートを用いて説明する。
本実施の形態2では、実施の形態1によって少なくとも1度、磁極位置検出を行い、極性を誤る回転子構造かどうかが識別されている。また、その識別結果は記憶手段flgによって記憶保存されている。
先ず、ステップ6Aにおいて、磁極位置演算手段4による磁極位置演算を実行し、第一演算磁極位置θ1を得る。
ステップ6Bでは、実施の形態1において記憶したflgを識別し、flg=0、従って、誤検出がなく磁極極性判別が合のときはステップ6C、flg=1、従って、誤検出があり磁極極性判別が否のときはステップ6Dを実行する。
ステップ6Cでは、磁極位置演算の結果が正しいので、第一演算磁極位置θ1をそのまま検出磁極位置θ0として出力する。
ステップ6Dでは、磁極位置演算において極性を誤っているので、第一演算磁極位置θ1に半周期180度を加えた値に修正し検出磁極位置θ0として出力する。
以上のように、本実施の形態2の磁極位置検出方法にあっては、少なくとも1度、磁極位置検出を行い、磁極極性の判別を誤る回転子構造かどうかが識別された同期回転機に対しては、それ以降の磁極位置検出において、その識別結果を用いることで、磁極位置演算を一度実施するだけで、正しい検出磁極位置を得ることができ、検出動作ステップを簡略化することができる。
実施の形態3.
先の実施の形態1の図5等で説明したように、本願発明の磁極位置検出方法では、2回の磁極位置演算の間で回転子を回動させその後停止させる必要がある。このため、回転子の慣性モーメントが大きく回転子の回転動作が遅い回転機では、一旦回動を始めた回転子を目的の位相で停止させるまでに時間を要することが考えられる。
しかも、この回動動作の過程では、回転子の位置自体の検出は出来ない。従って、仮に、先の図5のフローチャートのステップ5Bにおいて、回転子が停止する前にステップ5Cの第二の磁極位置演算を実行すると、得られる(θ2−θ1)の差分が本来の値と異なり、磁極極性反転有無の判別においてミスが発生する。
そこで、本実施の形態3では、同期回転機1に流れる電流の変化から、回転機の現在の回転状態を監視し、回転機が停止したかどうかの状態を判別する停止検知部を直流電流生成手段の内部に設ける。
図9は、本実施の形態3における直流電流印加手段5Aの内部構成を示すブロック図である。
先の実施の形態1の直流電流印加手段5に、停止検知部56を追加したもので、その他のブロックについては、実施の形態1の図4と同様であるから再度の説明は省略する。
停止検知部56は、磁極位置(第一演算磁極位置)と検出電流ベクトルとから、回転機の回転状態を推定し、回転停止を判別して、磁極位置検出手段6に停止検知信号を返す。磁極位置検出手段6では、図5の動作フローにおいて、この停止検知信号を受けた時点でステップ5Cの第二の磁極位置演算を開始する。
ここで、回転機に流れる電流の変化から回転子の停止を検知する原理について説明する。
先ず、第一の磁極位置演算で演算される第一演算磁極位置θ1に相当する位相をα軸とする直交αβ二軸座標を考え、その位相θ1を原点とする位相をθBと置くと、直交αβ二軸座標上の電圧Vα、Vβは、θBを用いて式(2)で表すことができる。
Figure 0006021784
本実施の形態3において、直流電流印加手段5Aは、θ1に直交する(ここでは、θa=90度としている)Vβの電圧のみ印加すればよいので、Vα=0とすることが出来る。このとき、式(2)の一行目を取り出すと式(3)が得られる。
Figure 0006021784
ここで、iq=idref・cosθBと置くと、θB=ωtと出来るので、式(3)の微分演算子を展開でき、式(4)のα軸電流iαが得られる。
Figure 0006021784
ところで、θaの方向に直流電流を印加した時点を0[s]とした場合の、位相θBと速度ωの変化の例を図10に示す。図10では、θaの方向に直流電流を印加した後、位相θaを中心とする振動を伴いこの振動が減衰する形で停止状態に向かっている様子がわかる。
速度ωに注目すると、ωmaxで示した速度ωのピークは、最初のθaを通過した瞬間である。これは、iq=idref・cosθBであるから、位相θBが0〜90度までは、トルク電流であるiqが正であり、90度を超えたところで負になることから、トルク電流の積分である速度ωはθB=90度でピークとなる。
また、{φf・sinθB+(Ld−Lq)idref・cos2θB}は、一般にLd<Lqが成り立つので、θB=90度で極大値{φf−(Ld−Lq)idref}を取る。
即ち、ωと{φf・sinθB+(Ld−Lq)idref・cos2θB}との積であるα軸電流iαのピークは、速度ωのピークと一致して変化すると言える。
よって、α軸電流iαのピーク値を観測することで、速度ωがどれだけ減衰したかを知ることができ、回転機が停止したかどうかの判別に利用することができる。
図10に示すように、位相θBの移動(振幅)角度が±θcになったときの速度をω1と置くと、速度ω1がほぼ0となるようθcは0に近い値に設定する。
ところで、同期回転機の出力トルクτは、Pmを極対数とすると、式(5)で表される。
Figure 0006021784
また、位相θBが、(θa+θc)からθaまで変化する時間は、速度ωを用いて(θc+θa)/ωとθa/ωとの差分で表される。よって、速度ωを出力トルクの時間積分と捉えたとき、式(6)が得られる。
Figure 0006021784
従って、式(6)を用いれば、iαが以下の式(7)で表される値以下となるときに、回転機が停止したと判定することが出来る。
Figure 0006021784
しかしながら、慣性モーメントは、回転機に接続される負荷に接続されている状態によって異なり、正確な値の算出が困難である。
そこで、図10に示す、速度の最初のピークをωmaxとおき、このωmaxから減衰した割合を基に回転機が停止したかどうかの判別を行う。
このため、式(6)の同様の形で、速度のピークωmaxを算出する。但し、最初のピークに達するまでの時間は、位相θBが0からθa度になるまでの時間であるから式(8)で表すことができる。
Figure 0006021784
Id=idref・sinθB、Iq=idref・cosθBであるから、式(8)から式(9)を得る。
Figure 0006021784
θa=90度とし、積分を展開すると、結局、式(10)を得ることができる。
Figure 0006021784
同様の要領で、式(6)を展開することで、式(11)を得る。
Figure 0006021784
よって、式(10)、(11)より、停止判別に必要な減衰率ξ=ω1/ωmaxを式(12)で得る。
Figure 0006021784
式(12)には、慣性モーメントJmは含まれないことから、この式(12)により、事前に測定可能なφf、Ld、Lqの定数を用いることで停止を判別する速度ωの減衰率を算出することが出来る。
そして、既述したように、速度ωのピークとα軸電流iαのピークとは一致するので、式(12)に示す速度の減衰率はそのままiαの減衰率として適用することができる。
よって、ωmaxに相当するiαの最大ピークiαmaxを測定し、その後現れるiαのピークがiαmaxからξだけ減衰した時に、回転機が停止したと判定することができる。
以上の説明を踏まえて、図9を用いて停止検知部56の動作について説明する。
第三座標変換器561は、電流検出手段2から出力された交流三相検出電流(iu、iv、iw)を、第一の磁極位置演算で演算された第一演算磁極位置θ1に相当する位相をα軸とする直交αβ二軸座標に変換してαβ軸検出電流ベクトル(iα、iβ)を出力する。
式(13)は、交流三相検出電流(iu、iv、iw)をαβ軸検出電流ベクトル(iα、iβ)に変換する演算式を示す。
Figure 0006021784
電流ピーク検出器562は、第三座標変換器561の出力するα軸電流iαの絶対値の極大値を順次検出する。α軸電流iαは、図11の上段に示すように、ゼロを中心として振幅を減衰させながら変化する。よって、その極大値は、iαがゼロ点を交叉する毎に最大値をカウントしなおし、前回の最大値を極大値として出力する。
停止監視器563は、初回に入力される電流極大値iαp(1)をiαmaxとして記憶し、式(12)から算出した減衰率ξをもとに、以降入力される電流ピーク値iαp(n)が、iαmax・ξ以下となったとき、停止検知信号を出力する。
磁極位置検出手段6は、この停止検知信号を受けて第二の磁極位置演算を実行することにより、正確な第二演算磁極位置を得ることが出来る。
以上のように、本実施の形態3の磁極位置検出方法にあっては、同期回転機1に流れる電流の変化から、回転機の現在の回転状態を監視し、回転機が停止したことを判別して停止検知信号を出力する停止検知部56を設けたので、例えば、慣性モーメントが大きく回転子の回転が遅く、回転子が目的の位相で停止するまでに時間がかかる回転機においても、回転子が確実に停止してから第二の磁極位置演算を実施することができ、磁極位置反転検出の検出ミスを防止することができる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
1 同期回転機、2 電流検出手段、3 電圧印加手段、4 磁極位置演算手段、
5 直流電流印加手段、6 磁極位置検出手段、51 加算手段、
52 第一座標変換器、53 加減算手段、54 電流制御器、55 第二座標変換器、56 停止検知部、561 第三座標変換器、562 電流ピーク検知器、
563 停止監視器。

Claims (7)

  1. 同期回転機に所定の電圧を印加し、当該電圧に基づき前記同期回転機に流れる電流を検出し、当該検出電流から前記同期回転機の磁極位置を演算し演算磁極位置として出力する磁極位置演算手段を備え、
    前記磁極位置演算手段により、回転子が停止している前記同期回転機の磁極位置を演算し第一演算磁極位置θ1として出力する第一ステップ、前記第一演算磁極位置θ1から所定の位相θa進んだ磁極位置(θ1+θa)で直流磁束を発生させるよう前記同期回転機に直流電流を印加することにより前記回転子の磁極を前記磁極位置(θ1+θa)まで回動させる第二ステップ、前記磁極位置演算手段により、前記回転子の磁極が前記磁極位置(θ1+θa)で停止している前記同期回転機の磁極位置を演算し第二演算磁極位置θ2として出力する第三ステップ、および前記磁極位置(θ1+θa)と前記第二演算磁極位置θ2との両磁極位置を比較し、前記両磁極位置が等しいときは前記第二演算磁極位置θ2をそのまま最終出力である検出磁極位置θ0として出力し、前記両磁極位置が等しくないときは前記第一演算磁極位置θ1および前記第二演算磁極位置θ2の磁極極性が実際とは反転しているとみなして前記第二演算磁極位置θ2を修正した値を前記検出磁極位置θ0として出力する第四ステップを備え
    前記所定の位相θaは、電気角で0度より大きく180度より小さい範囲、または、180度より大きく360度より小さい範囲に設定される同期回転機の磁極位置検出方法。
  2. 電圧指令に基づき前記同期回転機に交流三相電圧を印加する電圧印加手段、前記同期回転機に流れる交流三相電流を検出する電流検出手段、および前記第二ステップにおける前記直流電流を印加する直流電流印加手段を備え、
    前記直流電流印加手段は、前記磁極位置演算手段からの前記第一演算磁極位置θ1に前記位相θaを加算して前記磁極位置(θ1+θa)を出力する加算手段、前記電流検出手段からの交流三相検出電流を前記磁極位置(θ1+θa)に相当する位相をd軸とする直交dq二軸座標に変換してdq軸検出電流ベクトル(id、iq)を出力する第一座標変換器、前記dq軸検出電流ベクトル(id、iq)と所定の電流指令ベクトル(idref、iqref=0)との偏差が零となるようdq軸電圧指令ベクトル(vd、vq)を出力する電流制御器、および前記dq軸電圧指令ベクトル(vd、vq)を交流三相電圧指令ベクトル(vu、vv、vw)に変換し前記電圧指令として前記電圧印加手段に出力する第二座標変換器を備えたことを特徴とする請求項1記載の同期回転機の磁極位置検出方法。
  3. 前記直流電流印加手段は、前記電流検出手段からの交流三相検出電流を前記第一演算磁極位置θ1に相当する位相をα軸とする直交αβ二軸座標に変換してαβ軸検出電流ベクトル(iα、iβ)を出力する第三座標変換器と、前記α軸検出電流ベクトルiαの絶対値の極大値iαpを順次検出する電流ピーク検出器と、第n番目の極大値iαp(n)の第1番目の極大値iαp(1)に対する比である電流減衰比(iαp(n)/iαp(1))が所定の設定値以下になったとき前記第二ステップにおける前記同期回転機の回動動作が停止したと判断して前記第三ステップの動作開始を指示する停止検知信号を出力する停止監視器とからなる停止検知部を備えたことを特徴とする請求項2記載の同期回転機の磁極位置検出方法。
  4. 前記位相θaを電気角で90度または270度に設定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の同期回転機の磁極位置検出方法。
  5. 前記第四ステップにおける、前記両磁極位置が等しいか否かの合否の判定結果を保存しておき、以降、同一の同期回転機を対象に磁極位置を検出する場合は、
    前記第一ステップで前記第一演算磁極位置θ1を演算した後、前記保存した判定結果が合のときは、前記第一演算磁極位置θ1をそのまま前記検出磁極位置θ0として出力し、前記保存した判定結果が否のときは、前記第一演算磁極位置θ1の磁極極性が実際とは反転しているとみなして前記第一演算磁極位置θ1を修正した値を前記検出磁極位置θ0として出力するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の同期回転機の磁極位置検出方法。
  6. 前記同期回転機の回転子は、永久磁石埋め込み型であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の同期回転機の磁極位置検出方法。
  7. 同期回転機の電流を検出する電流検出手段、この電流検出手段で検出された前記同期回転機の電流に基づき回転子が停止している前記同期回転機の磁極位置を演算する磁極位置演算手段、この磁極位置演算手段で演算された磁極位置から所定の位相θa進んだ磁極位置で直流磁束を発生させるよう前記同期回転機に直流電流を印加する直流電流印加手段、および前記磁極位置演算手段により前記回転子が停止している前記同期回転機に所定の電圧を印加したときの電流から前記回転子の第一演算磁極位置θ1を求め、更に、前記直流電流印加手段により前記直流電流を印加することで前記回転子の磁極を磁極位置(θ1+θa)まで回動させ、再び、前記磁極位置演算手段により前記回転子が前記回動した位置で停止している前記同期回転機に所定の電圧を印加したときの電流から前記回転子の第二演算磁極位置θ2を求め、前記磁極位置(θ1+θa)と前記第二演算磁極位置θ2との両磁極位置を比較し、前記両磁極位置が等しいときは前記第二演算磁極位置θ2をそのまま最終出力である検出磁極位置θ0として出力し、前記両磁極位置が等しくないときは前記第一演算磁極位置θ1および前記第二演算磁極位置θ2の磁極極性が実際とは反転しているとみなして前記第二演算磁極位置θ2を修正した値を前記検出磁極位置θ0として出力する磁極位置検出手段を備え、
    前記所定の位相θaは、電気角で0度より大きく180度より小さい範囲、または、180度より大きく360度より小さい範囲に設定される同期回転機の磁極位置検出装置。
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