JP6021667B2 - 耐火物,耐火物の製造方法,及び連続鋳造用浸漬ノズル - Google Patents

耐火物,耐火物の製造方法,及び連続鋳造用浸漬ノズル Download PDF

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Description

本発明は,鋼の連続鋳造用,特に,アルミニウムを含有する鋼等の連続鋳造における浸漬ノズル内孔への介在物の付着ないし閉塞防止等を図るための,通気用として使用できる耐火物,耐火物の製造方法,及びその通気用耐火物を使用した連続鋳造用浸漬ノズルに関する。
タンディッシュからモールドへ溶鋼を注入する連続鋳造用浸漬ノズルは,注入の際に空気との接触による溶鋼の酸化を防ぐともに,溶鋼の飛散防止を図るために用いられる。さらに,連続鋳造用浸漬ノズルは,注湯を整流化することにより,非金属介在物及びモールドの浮遊物等の鋳片内への巻き込みを防止している。
連続鋳造用浸漬ノズルは,主として黒鉛(約20質量%),酸化アルミニウム(50〜70質量%)からなり,更に,酸化ケイ素(10〜25質量%)及び少量の炭化ケイ素等を含む材質から構成されている。(以下,「シリカ含有アルミナ黒鉛質」ともいう。)
しかしながら,アルミキルド鋼等を鋳造する場合は,鋼中のアルミニウムが酸化し,これにより生成したアルミナ(Al)が浸漬ノズル内壁に付着し,浸漬ノズル閉塞が生じ易い。
生産性向上等の点から鋳造の多連鋳化が進められているが,アルミナ付着による浸漬ノズル閉塞が生じると,溶鋼の流量制御が不可能となり,多連鋳造の継続が困難となる。
また,鋳造途中に閉塞物が溶鋼の流れによって剥離する場合がある。剥離した閉塞物がモールド内の溶鋼中に混入して,鋳片中に取り込まれることが,鋳片の欠陥を生成する要因の1つとなっている。
シリカ含有アルミナ黒鉛質ノズルの閉塞メカニズムは,特許文献1に開示されているように以下の内容が知られている。
シリカ含有アルミナ黒鉛質ノズルの材質中のシリカは,熱衝撃抵抗性を確保するために低熱膨張性骨材である非晶質の溶融シリカ(SiO)として10〜30%添加される。
しかし,シリカは溶鋼と濡れ易くFeO,MnO等の鋼中成分との間で低融点化合物を生成し,カーボンの溶鋼中への溶失と相俟って,骨材部分の溶出を引き起こし溶損を著しく助長する。
また,鋳造中(熱間)での耐火物中での次式1〜3に示す反応により,SiO(g)が揮散消失し,浸漬ノズルの表面に空孔を生じて組織を脆弱化するとともに,面荒れを助長して表面の平滑性が失われ,物理的に付着物が堆積する。
2C(S)+O(g)→ 2CO(g) ……… 式1
SiC(S)+2CO(g)→SiO(S)+3C ……… 式2
SiO(S)+C(S)→ SiO(g)+CO(g) ……… 式3
さらに,生成物SiO(g),CO(g)は,鋼中の次式4〜5の反応により,アルミナの析出・生成の原因ともなり,浸漬ノズル表面へのアルミナ付着が進行する。
3SiO(g)+2Al→Al(S)+3Si ……… 式4
3CO(g)+2Al→ Al(S)+3C ……… 式5
一方,連続鋳造においては浸漬ノズルの内壁から不活性ガスを供給し続けて,内孔壁へのアルミナ等介在物の付着防止を行う方法がある。
このガス吹き込み方法では,前述したメカニズムによるシリカの消失により,耐火物内の空隙が大きくなってその量も多くなり,ガスの通過抵抗が小さくなってガスの圧力(背圧)が低下すると共に,通気用耐火物のごく一部の狭い領域から大きな気泡として溶鋼中に吐出することになる。
このように通気特性が劣化すると,内孔壁への前記付着防止効果等も低下する。
このガス吹き込み方式におけるガス供給及び管理に関する設備では,浸漬ノズルへの吹込みガス圧力を監視しており,一定の圧力以下になると鋳片品質が低下するので,鋳片品質を維持するために,鋳造(操業)を停止することになる。
このように,シリカ成分は高級清浄鋼の鋳造においては,ガスの通気特性及びそれがもたらす鋳片の品質低下の観点から好ましくない機能をも有しており,浸漬ノズルの材料構成としてはシリカ含有量を低減する又はシリカを含有させない方向での改善が多く試みられている。
例えば,特許文献2では,内孔体のSiO含有率を5%以下にし,かつ内孔体通気部下端を吐出孔上部の10〜80mmの位置に相当する溶鋼の淀み部からArガス吹き込み,ノズル閉塞を防止する方法が開示されている。
また,特許文献3には,メソフェーズカーボンが有する粘弾性,亀裂進展防止効果,耐酸化性等の特性を活用した,シリカを含有しない連続鋳造用ノズル用ガス吹き込み用通気用耐火物の組成が開示されている。
これらの非晶質のシリカ含有量を低減する又は非晶質のシリカを含有させない場合は,当該通気用耐火物自体がシリカ含有する系と比較して一般的に高膨張化するため,当該通気材自体の応力緩和能が低下して,鋳造中に当該内孔体自体又は浸漬ノズル本体が破壊したり,溶鋼耐摩耗性の低下により通気材の穴あきトラブル等の事故を招来することがある。
さらには,長時間の鋳造に伴い溶損が進行して残厚が小さくなったパウダーライン付近のZrO−黒鉛質耐火物(以下「ZG」ともいう。)部分に亀裂や折損等が生じやすくなる,という問題をも有することが知られている。(例えば非特許文献1)。
このパウダーライン付近の損傷事故は長時間に亘って連続的に通気用耐火物及び浸漬ノズル本体の耐火物内に応力が発生すること,及びその緩和能が十分でないことが主たる原因である。
前記のような鋳造操業中の事故は,鋳片の生産計画〜生産性及び鋳片品質に著しい損害を生じさせるので,まずはこれら事故を防止することが優先される。しかしながら,非晶質のシリカを含有させないで十分な事故防止対策を採る方法は提案されていない。
このため,やむを得ず低膨張化を目的に非晶質のシリカを或る程度含有させたり,さらには鋼への悪影響をもたらしかねない多量の黒鉛等炭素成分を含有させる等の手段を講じるにとどまっており,シリカを含有させないガス通気用耐火物系で,生産性や鋳片品質低下防止にとって満足できる方法は提供されていない。
特開2000−42696号公報 特開平05−285613号公報 特開平05−097506号公報
鉄と鋼, vol.81(1995),P−535
本発明が解決しようとする課題は,鋳造時間の経過に伴う通気特性の変化(背圧の低下)を抑制して鋳造中の通気特性を安定化すると共に,パウダー部付近の折損等の,浸漬ノズルの鋳造中の損傷事故を防止することのできる通気用として使用できる耐火物,耐火物の製造方法,及びその耐火物を配設した浸漬ノズルを提供することにある。
本発明の耐火物は,通気用耐火物に関し,通気特性の劣化を抑制ないしは防止するために,非晶質のシリカ粒子を含有しないことを基本とする。
さらに本発明の通気用の耐火物は,非晶質のシリカ粒子を含有させないことに伴ってZG部を含む浸漬ノズル本体の損傷事故に対する抵抗性が低下することを防止するために,この耐火物内部で発生応力を緩和することを基本とする。
鋳造途中のガス流量が一定の条件下での背圧変動は,ガスが通過する通気用耐火物中のシリカ粒子が同耐火物中に併存する炭素による還元反応(ガス化)により消失し,そのシリカ粒子が消失した部分が空洞化することにより耐火物内のガスの通過経路が増加することで発生する。
このようなメカニズムによる通気特性の劣化を抑制ないしは防止するために,通気用耐火物内のシリカ粒子の含有量を低減する,又は含有しないこととする方法がある。しかし,通気用耐火物内のシリカ粒子は,低膨張性を目的として非晶質のシリカ粒子として存在している。このような低膨張性のシリカを含まない通気用耐火物では,通気用耐火物からなる内孔体自体又は浸漬ノズル本体を押し割る等の問題点がある。
非晶質のシリカ粒子を含有する以外のこの問題解決策として,黒鉛粒子の多量添加で課題解決を図る方法もある。しかし,黒鉛粒子を多量に添加すると,通気用耐火物自体については通気特性が低下する,耐摩耗性や耐食性,耐酸化性が低下する等の問題を生じ,さらに溶鋼への炭素の多量溶出等の問題も生じる。
本発明の耐火物は,シリカ粒子を含有せず,かつ黒鉛を多量に含有しないアルミナ−黒鉛系の通気用の耐火物であって,通気用耐火物自体からなる内孔体の割れ,内孔体と浸漬ノズル本体の熱膨張差等に起因する浸漬ノズル本体の押し割り,及び,背圧変動の課題を解決するものである。すなわち,内孔体内部に発生する応力を低減させ,かつ操業途中のガス流量一定下での背圧変動を抑制することを可能にするものである。
本発明は,次の1から2に記載の耐火物及び3から4に記載の連続鋳造用浸漬ノズルである。
アスペクト比が5以上50以下の偏平状のアルミナ粒子を一次粒子とし,前記一次粒子複数個を無機質結合材により集合させて形成した,長さが0.05mm超2mm以下の二次粒子を含有する耐火物であって,
前記耐火物は,1500℃非酸化雰囲気中で3時間熱処理した後において,
前記二次粒子が55質量%以上90質量%以下含有され,
前記二次粒子内の炭素を除く成分は,Alが98質量%以上であり,
化学成分として,フリーの炭素を3質量%以上45質量%以下,SiCを1質量%以上10質量%以下含有し,単一化合物のSiO,アルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物,TiO,及び,その他製造上不可避の成分の合計含有量が2質量%以下であることを特徴とする,耐火物。
(1)
アスペクト比が5以上50以下の偏平状のアルミナ粒子を一次粒子とし,前記一次粒子複数個を無機質結合材により集合させて形成した,長さが0.05mm超2mm以下の二次粒子を含有する耐火物であって,
前記耐火物は,1500℃非酸化雰囲気中で3時間熱処理した後において,
前記二次粒子が55質量%以上90質量%以下含有され,
前記二次粒子内の炭素を除く成分は,Alが98質量%以上であり,
化学成分として,フリーの炭素を3質量%以上45質量%以下,SiCを1質量%以上10質量%以下含有し,単一化合物のSiO,アルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物,TiO,及び,その他製造上不可避の成分の合計含有量が2質量%以下であることを特徴とする,耐火物。
(2)
耐火物を非酸化雰囲気1500℃中3時間熱処理した後の見掛け気孔率が30%以上50%以下,耐火物を非酸化雰囲気の拘束条件下で室温から1500℃まで昇温する間の最大発生応力値が18MPa以下であることを特徴とする,前記(1)に記載の耐火物。
(3)
非酸化雰囲気1500℃中で3時間熱処理した後の化学成分として,Alを54質量%以上90質量%以下,フリーの炭素を3質量%以上45質量%以下,SiCを1質量%以上10質量%以下含有し,単一化合物のSiO,アルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物,TiO,及び,その他製造上不可避の成分の合計含有量が2質量%以下である耐火物の製造方法であって,偏平状のアルミナの一次粒子の粉体に無機質結合材を加えて混和する混和工程と,得られた混和物を混練し,一次粒子の集合体である二次粒子の造粒物を形成させる造粒工程と,得られた造粒物を分級して,長さが0.05mm超2mm以下の複数の二次粒子とする分級工程と,得られた複数の二次粒子をAl成分となる配合原料とし,SiC成分となる配合原料,及び,フリーの炭素となる配合原料と共に,結合材を添加して混練し,成形用のはい土を得る成形用はい土の生成工程と,前記はい土をCIP成形するCIP成形工程と,得られた成形物を焼成する焼成工程を有し,前記混和工程では,前記造粒工程で生成される二次粒子の炭素を除く成分が,Al98質量%以上となるように,前記無機質結合材を加え,前記成形用はい土の生成工程では,成形用のはい土中に,前記複数の二次粒子を55質量%以上90質量%以下の割合で存在するように配合することを特徴とする,耐火物の製造方法。
(4)前記(1)又は前記(2)に記載の耐火物を溶鋼と接触する面の少なくとも一部の層として配設した連続鋳造用浸漬ノズルであって,前記耐火物層とその背後の連続鋳造用浸漬ノズル本体耐火物との間には,ガスが通過することのできる空間を配設しており,前記空間は連続鋳造用浸漬ノズル外部のガス供給設備と連通するためのガス導入孔に連通していることを特徴とする,連続鋳造用浸漬ノズル。
(5)前記(1)又は前記(2)に記載の耐火物を配設した領域が,連続鋳造用浸漬ノズルの内孔側の直胴部壁面の一部若しくは全部,又は吐出孔内壁面の一部若しくは全部のいずれか1以上を含む領域である,前記(4)に記載の連続鋳造用浸漬ノズル。
なお,本発明において「フリーの炭素」とは,化合物以外の炭素をいい,具体的には,黒鉛,カーボンブラック,結合機能を担う炭素(例えば,樹脂,ピッチ等から残留した炭素)等をいう。
本発明の耐火物,耐火物の製造方法,及び浸漬ノズルの適用により,鋳造時間の経過に伴う通気特性の変化(背圧の低下)を抑制して鋳造中の通気特性を安定化することができる。また,パウダー部付近の折損等の,浸漬ノズルの鋳造中の損傷事故を防止することができる。
ひいては,連続鋳造操業の意図した鋳造時間を阻害せずに,即ち生産性の低下を抑制すると共に,鋳片の品質低下を抑制することも可能となる。
偏平状(板状)アルミナのイメージ図 偏平状(板状)アルミナのSEM写真 実施例に用いた偏平状(板状)アルミナの粒度分布(日本軽金属(株)社製,「A21」の例) 二次粒子のSEM写真 二次粒子のSEM写真(図4の約5倍の拡大) 本発明の耐火物組織の例示するEPMA写真 発生応力測定装置のイメージ図 本発明の耐火物を配設した浸漬ノズルの例 本発明の耐火物を,吐出孔横の柱部にも配設した浸漬ノズルの例 本発明の耐火物を,吐出孔周囲にも配設した浸漬ノズルの例
以下,本発明の耐火物の実施の形態について,作用等を含めて詳述する。
本発明の耐火物は,Al成分,C成分,SiC成分を含み,揮発ないしは消失する成分としてのSiOを含まず(製造工程で混入する不可避的不純物を除く),かつ,連続鋳造のノズル内にガスを吐出する操業に十分な程度のガスが通過するための空間を備えた組織構造を主とすることに第一の特徴がある。
揮発ないしは消失する成分としてのSiOを含まないとは,例えばAl等他の成分との化合物としての形態以外の,連続鋳造操業に供される浸漬ノズルのように還元雰囲気かつ高温度域中で還元されて揮発する形態の,非晶質シリカ(溶融シリカ粒等)に代表されるような,SiO成分からなる粒子を殆ど含まないことを意味する。SiOがAlとの化合物としての形態の場合は,例えばムライト鉱物粒子として含まれる場合は,このSiO成分が揮発ないしは消失することはない。
このような組織構造自体は,空間が多く存在している等の理由から,一定の応力緩和機能もある。しかし,耐火物全体にこのような組織を一体的又は連続的に存在させる場合には,一般的に低熱膨張化を目的として含有させる低膨張性の溶融シリカ等を含まないこともあって,耐火物の主として耐割れ性が低下する可能性が高くなる。
そこで本発明は,前記組織を長さが0.05mm超2mm以下の単一の構造体として,すなわち二次粒子を形成して,その二次粒子間に応力緩和能を備えた黒鉛,炭素結合組織等を存在させて,耐火物としての耐割れ性を確保し,かつ溶鋼又は溶鋼由来のスラグ成分に対する耐食性や耐浸潤性をも確保するものである。さらにはこの空間を多く備えた組織の構成物すなわち一次粒子は偏平状(板状とほぼ同義)とする。
このような偏平状の単一粒子である一次粒子が複数集合してなす構造は,一定方向に配向せずに不規則な多くの方向に,しかも相互に複雑に絡み合った構造であることが,応力の分散効果を高め,機械的物性の均一性と安定性を得るためには好ましい。
本発明の二次粒子内部においても一次粒子の集合体は前述の構造を有し,一次粒子相互が不規則な多数の点で接合して,又は重なり合った層状を含む複合的な構造をなし,一次粒子相互の間には多くの空間をも形成する(図4,図5)。この多くの空間を含む複合的な構造により,この二次粒子内部に発生する応力を緩和する役割をも果たす。
一般的なアルミナ骨材である単一粒子,言い換えると,外面が多角形であるか曲面〜球形に近い形状であるかにかかわらず,これをアスペクト比で表すと1前後の一体構造のアルミナ粒子の場合は,この単一粒子内部が緻密でほとんど変形能や応力緩和能がない。
これに比較して本発明の二次粒子は,一次粒子相互が外力に対しフレキシブルに変形又は移動することが可能であり,これにより二次粒子内部に発生する応力を緩和する能力が高い。
二次粒子は0.05mm超2mm以下とし,かつできるだけ球状に近いことが応力緩和能,充填性,組織の均一性等の観点から好ましい。
二次粒子のサイズを0.05mm超2mm以下とする理由は,均一で欠陥の少ない耐火物組織を得るためである。本発明の耐火物の応力緩和特性及び通気特性に関しては,二次粒子の組織構造が大きな影響を及ぼす。したがって,耐火物全体に均一性を高めてこの二次粒子を分散させることが重要である。二次粒子のサイズが2mmより大きいとこの均一性が低下して,耐火物の局部的な損傷を来しやすくなる。二次粒子のサイズが0.05mm以下だと,複数個の一次粒子相互が不規則な点で接合して又は重なり合った層状を含む複合的な構造を理想とする二次粒子の構造が得難くなって,空隙の割合が少なく密な組織の通気性に乏しい二次粒子になりやすい。
また他の理由は,耐火物を浸漬ノズルの内孔側の層としてCIP(Cold Isostatic Press)成形する際に,モールド内に充填する際の偏析等を防止して均一な耐火物組織を得るためでもある。二次粒子のサイズが0.05mm未満の場合は前述したように不均一な組織になることから成形体に亀裂が生じやすくなり,2mmを超えると偏析が多くなって組織が不均一な部分が生じやすくなり,層自体の破壊の原因ともなる虞がある。
二次粒子に対する一次粒子である偏平状の単一粒子の形状は,最大長さが二次粒子の大きさの約1/2以下であることが好ましく,約1/4以下であることがより好ましい。この理由は,二次粒子内で一次粒子が多方向にかつ相互にランダムに絡み合って,相互に結合点を多数有している,理想的な構造体とするためには,一次粒子を,二次粒子内部空間を大きく分断しないような小さな最大長さにする必要がある。そのためには,二次粒子を球と見なした場合に,一次粒子の最大長さは幾何学的にその球の直径の約1/2以下である必要がある。その球の直径の約1/2以下である場合でも球体内部での存在位置によっては内部空間の大きな分断が生じ易いので,約1/4以下であることがさらに好ましい。約1/4以下であれば,内部空間を大きく分断する確率が著しく減少する。
このような幾何学的な要素を考慮すると,本発明の耐火物の一次粒子の大きさ,すなわち最大長さは1mm以下が好ましく,0.5mm以下がさらに好ましいことになる。
最小長さは,特定の値である必要性はない。しかし,この偏平状の粒子の大きさは小さくなるにしたがい偏平状であることによる作用が低下して球状に近い挙動となっていくので,使用条件等に応じて設定する二次粒子の気孔率,気孔径,強度等を任意の範囲に調整するために必要最小限の大きさ及び含有量に適宜調整すればよい。
なお,二次粒子内の一次粒子を結合する無機質結合材が形成する一次粒子周囲の被膜厚さは,その無機質結合材の性状,二次粒子の製造方法等によって変動するが,無機質結合材の被膜を含んだ一次粒子のアスペクト比を5以上にするためには,一次粒子の最小長さは無機質結合材の被膜の厚さの10倍以上にすることが必要である。
本発明では,最小の大きさが1μm程度までであれば,無機質結合材の被膜を含んだ一次粒子のアスペクト比を5以上に保ちつつ,本発明の効果が得られることを確認している。
ここで一次粒子,二次粒子の最大長さとは,JIS Z 8815「ふるい分け試験方法通則」,JIS Z 8801−1「試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい」に準拠した方法による。
例えば,一次粒子が1μmを超え1mm以下の場合は,1μmの開き目(篩等。湿式での分級方法等も採り得る。)を通過せず,1mmの開き目(篩等)を通過する大きさに相当する大きさをいう。また例えば,二次粒子が0.05mmを超え2mm以下の場合は,開き目が0.05mmの網(篩等)を通過せず,開き目が2mmの網(篩等)を通過する大きさ,という意味である。
一次粒子の偏平性は,アスペクト比が5以上50以下の板状の形状であることが必要である。
ここでアスペクト比が5以上50以下とは,単一粒子ごとにその長さの最大部(図1のa)と板状の平面とはほぼ垂直方向の長さ(以下,「厚さ」ともいう。)の最小部(図1のb)との比をいう。
すなわち偏平状の粒子の形状は,模式的に平面的部分を「長さ」×「幅」,その平面的部分にほぼ垂直方向の長さを「厚さ」として,この3つの要素で構成されるとみなした場合,アスペクト比は長さ/厚さの比となる。
この最大長さとアスペクト比は,本発明の耐火物の製造においては,予め最大長さが1mm以下,アスペクト比が5以上50以下に製造及び整粒された原料を使用すればよい。
本発明は,この特徴を有する偏平状のアルミナを一次粒子として使用することをまた基本的な特徴とする。
しかもこの一次粒子及びその無機質結合材からなる集合体は,化学成分としてAlが98質量%以上からなる。
本発明の耐火物における上述の二次粒子においては,二次粒子内の炭素を除く成分,すなわち一次粒子とそれらを集合体とするための無機質結合材(炭素を除く)の合計成分が,1500℃非酸化雰囲気中で3時間熱処理した後の耐火物内でAlとして98質量%以上であることで,過度な軟化や溶融等を生じることなく一次粒子の原形をほぼ保持しながら,二次粒子内部の応力緩和能とガスの通過能とを維持することが可能となる。Alが98質量%以上であることはまた,溶鋼中の介在物との反応も起こりにくいので,このような反応に起因する溶損や摩耗も生じにくい。
この理由は,一次粒子としても純度が98質量%以上のアルミナ即ちコランダム(α−Al)を使用することを意味し,コランダム自体の硬度及び強度は極めて大きく,また溶鋼由来の成分がアルミナを主体とすることから,軟化や溶融を生じるような反応が生じる可能性が小さいからである。Al以外の成分の種類によっては溶鋼由来の介在物及び付着物等との反応による溶損等が生じる又は増大する虞があり,また例えば,一次粒子及び無機質結合材が、Alとの化合物ではないSiO成分を多量に含む場合は,使用中(熱間)にムライト化等の鉱物変化を来たし,一次粒子ないしは二次粒子自体が大きく膨張をして応力緩和機能を低下する,又は耐火物自体を破壊する虞がある。
また,この一次粒子及び無機質結合材の成分がコランダムからなるAl純度が98質量%以上であることは,シリカ成分に観られる還元雰囲気での消失ないしは耐火物組織の劣化等を防止することにもつながる。
なお,偏平状ではあるが,低アルミナ純度である,例えばβ−Al,マイカ等のいわゆる粘土鉱物等では,熱間における軟化や溶融が生じて,耐食性,耐摩耗性等が著しく低いので,連続鋳造用ノズル用の耐火物用の構成物としては採用することができない。
前記の一次粒子である偏平状のアルミナ単一粒子は,例えば, バイヤー法によって,製造することができる。
また,前記の一次粒子である偏平状のアルミナ単一粒子は,市販品も使用することができ,例えば,日本軽金属(株)社製の商品名「A11」,「A21」,キンセイマテック社製の商品名「セラフ」等を用いることができる。前者の商品は,長さがほぼ1μm超300μm以下,アスペクト比が5以上50以下,化学成分がAl98質量%以上のコランダム質(α−Al)であり,本発明における偏平状のアルミナ一次粒子の条件を満たす。
一次粒子を結合する無機質結合材としては,約1000℃以上の熱処理後に保形能を与え,また浸漬ノズルとして使用中の熱間での応力及び外力に耐えることができる程度の強度を発現することが可能な,各種の無機系の溶液,エマルジョン,サスペンジョン等,例えばアルミナゾル,等を使用することができる。中でも,アルミナゾルが強度発現能が高いこと,分散性が高いこと,及び一次粒子との間で低融物を生成することがない等の理由から,好適である。
また,例えばシリカゾルや珪酸塩等のSiO系の無機質結合材等も使用することは可能であるが,これらの場合は一次粒子と無機質結合材との合量の成分として,Alが98質量%以上となるように,使用量を調整する必要がある。
なお,本発明の二次粒子においては積極的に炭素成分を含有させるものではない。二次粒子に有機質結合材を被覆して本発明の耐火物を成形する際に,その有機質結合材や微細炭素粒子等が二次粒子内に浸透又は付着することがあり,二次粒子内に存在する炭素成分はこのような炭素に由来する。このような二次粒子内の炭素量及び存在形態は本発明の効果に影響を及ぼす程度ではない。したがって,本発明の二次粒子は炭素を除く成分を特定する。
本発明の耐火物は,通気に伴うガスの流動・排出に伴い発生する応力の影響を受けること,及び特に浸漬ノズル内孔に配設される際には溶鋼流の衝撃等の機械的な外力の影響をも受ける。また本発明の耐火物は,溶鋼又は溶鋼由来の介在物等との反応等による,溶損等の生じ易い環境に晒されることもある。
そこで,このような条件下でも必要かつ十分な耐用性を有する耐火物を得るには,二次粒子は,耐火物中に55質量%以上90質量%以下含有する。55質量%未満の場合,二次粒子以外のマトリクス組織の性状が耐火物全体の性状に対し支配的になって二次粒子が有する応力緩和能や通気特性等が低下する。90質量%を超える場合は,二次粒子以外のマトリクス組織が相対的に過少になり,マトリクス組織における二次粒子間の結合機能が低下し,耐火物としての強度不足ないしは耐摩耗性の低下等を来す虞がある。
二次粒子の含有量を本発明の範囲とするには,本発明の耐火物を製造する際には,予め製造した二次粒子を,約1500℃非酸化雰囲気で熱処理した後の耐火物成分内で,当該二次粒子の質量割合が他の成分に対し55質量%以上90質量%以下になるように配合すればよい。
また、二次粒子の含有量は,耐火物を、600℃且つ酸化雰囲気下で加熱して脱炭処理し(炭素原料およびバインダーに由来するカーボンを除去したものは結合が無くなり粒子の状態に戻る)、それを色彩選別装置でアルミナの二次粒子と炭化珪素を分別して,二次粒子の重量測定し,初期の試料重量から消失したカーボン重量と炭化珪素の重量を引くことで、算出することもできる。
また、二次粒子内の炭素を除く成分中のAl含有量は、上記選別後のアルミナの二次粒子において,耐火物技術協会の標準試料を用いて,JIS R2216「耐火物製品の蛍光X線分析方法」に準じて測定することができる。
本発明の耐火物の化学成分は,当該耐火物を1500℃で3時間還元焼成した後の試料について,JIS R2216「耐火物製品の蛍光X線分析方法」に準拠した方法で測定した値とする。この理由は,約1500℃前後の溶鋼の鋳造に使用される本発明の耐火物は,この鋳造中の状態を基準として評価する必要があるからである。本発明の耐火物を配設した連続鋳造用浸漬ノズル等は,製品として操業に供される段階では約1100℃以下での熱処理を経ている。この熱処理温度では当該耐火物中に含有する成分の変化が完了していない等により,鋳造中の状態である約1500℃の熱処理を経た状態の化学成分とは異なる。
本発明の耐火物中のAl含有量はほぼ二次粒子の含有割合によって決定される。すなわちこれは前述の二次粒子の必要量に対応するものであって,それを二次粒子のAl含有量に換算した値にほぼ一致する。
なお,耐火物全体中のAlが54質量%(二次粒子のAl成分量の下限値98質量%に二次粒子含有量の下限値55質量%を乗じた値を四捨五入した値)未満の場合にはAlに代えて炭素基質材料を増加させることになるが,その場合,耐摩耗性や耐食性等が低下し易くなる等の問題もある。
そのような場合には操業条件又は必要な耐食性や耐摩耗性等の特性に合致させる目的で,二次粒子の外部すなわち耐火物のマトリックス組織中にコランダムとしてのAl成分を含有させてもよい。言い換えると本発明の耐火物中のAl成分量は,後述のSiC,フリーの炭素,及び,製造上不可避の成分の合計値に対する残部とすることができる。
耐火物中には,SiCを1質量%以上10質量%以下含有する。SiCは主として,
1. フリーの炭素としての炭素基質材料の酸化を防止する(以下,単に「酸化防止機能」という。),
2. 溶鋼流に対する耐火物の耐摩耗性を向上させる(以下,単に「耐摩耗性向上機能」という。),
の役割を果たす。
SiCが1質量%未満では炭素基質材料の酸化防止機能及び耐摩耗性向上機能が十分ではなく,すなわち耐火物中の炭素基質材料の部分的な酸化や,耐火物組織の部分的な摩耗等が生じて,本発明の耐火物層の崩壊等を生じる虞がある。
SiCは耐火物組織中の結合炭素の中に,又は炭素基質材料に接して,結合機能や炭素基質材料自体を補強するように分布して存在している。SiCが1質量%未満の場合はこの分布状態の不均一性が増し,炭素基質材料に対してSiCが存在しない部位が生じる虞がある。
耐火物の酸化は主として予熱中の高温度の空気(酸素ガス)や,鋳造中にも溶鋼由来のFeO等の酸化性の介在物により生じ,炭素基質材料の中でも特に結合材としての炭素基質材料が先行する。すると,結合機能が低下して脆弱化した部分から組織崩壊を生じることになる。
また,SiCが10質量%を超えると,SiC自体が酸化してSiO,SiOとなり,そのSiOが耐火物中のAl等と反応して新たな鉱物を生成して耐火物を膨張させ,破壊する虞があり,また耐火物中のAl及び溶鋼由来の酸化物と低融物を生成して,耐火物層の軟化,ないしは耐食性の低下,破壊等を惹き起こす虞がある。さらに二次SiC(原料として存在せず,熱処理中に生成するSiCをいう。)が相対的に多い場合には特に,硬質(高弾性率)の結合部分が増加して,耐熱衝撃性や耐押し割り性が低下する虞がある。
フリーの炭素は3質量%以上45質量%以下含有するが,これは前記のAl及びSiC等の必要成分量,並びに不可避成分(後述)の残部としての含有量である。本発明で炭素基質材料とは,主として二次粒子間の結合を担う結合炭素,主として二次粒子間の結合炭素と混在する状態で存在して応力緩和能を有する最大粒子サイズが約500μm以下程度の黒鉛や,非晶質の微細(最大粒子サイズ0.5μm程度以下)のいわゆるカーボンブラック等をいう。ここで結合機能を担う炭素としては,耐火物の組織を形成ないし維持するために3質量%以上の含有量が必要である。フリーの炭素が45質量%を超えると、耐摩耗性および耐食性が低下する虞がある。この原因として,炭素成分の硬度が小さいことに起因する機械的な摩耗損耗,酸化や溶鋼内への溶出等による化学反応的な消失が進むことが考えられる。
なお,フリーの炭素の測定は,JIS R2011「炭化及び炭化珪素含有耐火物の化学分析方法」に準拠した方法にて行う。
前記の他,本発明の耐火物には、単一化合物のSiO,アルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物,TiO,及び,その他製造上不可避の成分が混入することがある。これらの製造上不可避の成分等の合計含有量は,2質量%以下にする必要がある。2質量%を超えると,特に炭素基質材料が下限に近くの少ない領域で,耐火物の結合強度を低下させたり,二次粒子内のAlすなわち一次粒子との間で反応を生じて,一次粒子の焼結,低融物生成ないしは二次粒子構造の一部の崩壊等を惹き起こす虞がある。
ここで、本発明における単一化合物のSiOとは、非晶質シリカ等の金属元素としてSiしか含まないSiOのことであり、ムライト等のSi以外の金属元素を含むSiO化合物(複合化合物のSiO)と区別される。
また、二次粒子内の炭素を除く成分中における単一化合物のSiO含有量は、以下の方法で評価できる。
先ずは、上述の二次粒子の含有量の算出方法で説明したように、耐火物を、600℃且つ酸化雰囲気下で加熱して脱炭処理し、それを色彩選別装置でアルミナの二次粒子と炭化珪素を分別する。その後、当該分別後の二次粒子において,全SiO量を耐火物技術協会の標準試料を用いて,JIS R2216「耐火物製品の蛍光X線分析方法」に準じて測定する。次いで,リートベルト法による粉末X線回折により,ムライト量を定量し,その数値を基に化学量論比からムライト中のSiO量を測定する。最後に、蛍光X線によって定量した全SiO量から粉末X線回折より算出したムライト中のSiO量を引いた数値が、単一化合物のSiO量として同定される。ムライト以外にも他の複合化合物のSiOが含まれる場合は、それらの複合化合物中のSiO量を測定して、同様に、全SiO量から当該SiO量も引いて同定される。
本発明の耐火物には,単一化合物のSiO、すなわち、非晶質シリカに代表されるような,他の成分との化合物としての形態以外の,還元雰囲気かつ高温度域で揮発するSiO成分を,殆ど含まないことから,鋳造時間の経過に伴う通気特性の変動はほとんど生じない。また、ムライト等の複合化合物中のSiOはそれ以外の成分と結合しているため、少量含有されていても、揮発し難く通気特性の変動は殆ど生じない。
しかし,このような系であっても見掛け気孔率,すなわち開放気孔の体積割合に相当する値が極端に低い場合又は極端に高い場合には,個別の操業上の条件に応じて設定した通気特性を得難い場合がある。通気特性は,個別の操業条件,すなわち,設備の規模,鋳造速度,投入するガス量・速度,ガスの圧力,浸漬ノズルの通気対象部位の面積,等の多くの要素によって決定付けられる。このように個別の条件にしたがって変動させるべきものであり,耐火物の気孔率もこれらの条件に応じて変動させることができる要素である。
このようなことから,耐火物の気孔率が特定範囲でなければ課題が解決できないということはなく,一般的な操業条件を考慮した場合の好ましい範囲を示すことが妥当である。
本発明の耐火物は,非酸化雰囲気1500℃中3時間熱処理した後のJIS R2205の方法に準ずる見掛け気孔率が30%以上50%以下であることが好ましい。
見掛け気孔率が30%未満の場合には背圧が高くなって通気量が低下する傾向にあり,見掛け気孔率が50%を超える場合には背圧が大きく低下して通気量が多過ぎて,また吐出するガスの大きさが大きくなって溶鋼中の吐出状態が不均一なる傾向がある。
本発明の耐火物はさらに,熱間での発生応力を抑制することができることを特徴としうる。
具体的には,当該耐火物を非酸化雰囲気の拘束条件下で室温から1500℃まで昇温する間の最大発生応力値が18MPa以下であることを特徴とする。
この発生応力の測定方法は次の通りである。
当該耐火物を直径30mm×高さ30mmの円柱状に成形又は切り出して測定用の試料とし,その試料上下の平面にカーボン板を置き,そのカーボン板に応力測定装置に連通したカーボンロッドで0.2MPaの荷重を印加する。この状態で,N2ガス雰囲気中5℃/分の昇温速度で室温から1500℃まで昇温する際に発生する最大応力値を測定する。
本発明の耐火物は,この測定方法による最大発生応力値が18MPa以下である。この最大発生応力値が18MPa以下である場合は耐火物の破壊が生じないことを本発明者らは知見している(後記実施例A参照)。
次に,本発明の耐火物を製造する方法及び本発明の耐火物を配設した浸漬ノズルを製造する方法について述べる。
本発明の耐火物は,次の工程を含む,一般的な浸漬ノズルの製造方法に準じて得ることができる。
1. 混和工程:例えば純度98質量%以上である偏平状のアルミナの一次粒子を,適量の無機質結合材と混合し,できるだけ剪断力が加わらない方式の混和装置を使用して,均一に混和する。
この混和においては,計量した一次粒子の粉体に,無機質結合材を徐々に加えて,一次粒子の周囲に無機質結合材が偏析することなく均一に分散させることが好ましい。
無機質結合材としては,アルミナゾル等の約1000℃以上の加熱後にAlを主成分として残留するものが好ましい。
また,本工程では,下記の造粒工程で生成される二次粒子の炭素を除く成分が,Al98質量%以上となるように,無機質結合材の種類と添加量を調整して加える。
2. 造粒工程:前記混和工程で得られた混和物を回転させながら流動させる等の造粒機能を備えた混練装置で混練して,混和物を粒状に造粒する,すなわち一次粒子の集合体である二次粒子を形成させる。
この造粒工程において,二次粒子のJIS R2205の方法に準ずる見掛け気孔率が,40%以上80%以下になるように調整することが好ましい。この理由は,CIP成形等の加圧処理を経ても二次粒子内部の前述の構造が崩壊せずに維持できる範囲にしておくためである。なお,この二次粒子の見掛け気孔率の範囲はCIP成形時の圧力やノズルにおける本発明の耐火物の配設構造等に応じて適正に調整することができる。
この二次粒子の見掛け気孔率の調整は,一次粒子と無機質結合材の比,または無機質結合材を水等の熱処理により消失する溶媒等を加える等により,また混和装置及び混練装置での流動速度や流動形態(撹拌方法)を変化・調整する等によって行うことができる。
3. 分級工程:前記造粒工程で得られた造粒物を分級して,長さが0.05mm超2mm以下の複数の二次粒子(二次粒子群)とする。具体的な手段としては,例えば,篩分けを行えばよく,造粒物を2mmの篩いで篩分けして篩下を回収し,当該回収したものを0.05mmの篩いで篩分けして篩上を回収することで,0.05mm超2mm以下の大きさの二次粒子を得ることができる。
4. 成形用はい土の生成工程:前記分級工程により得た二次粒子群をAl成分の配合原料とし,更に,SiC成分となる配合原料,フリーの炭素となる配合原料(粒子状の炭素基質材料等。例えば黒鉛。)と共に混和する。また,必要に応じて,本発明の課題解決の作用効果を阻害しないその他原料を加えても構わない。
なお,SiCの一部又は全部は,最大粒径約10μm以下のSiO,又は金属Si等をSiC化した際の質量に換算して,1500℃中3時間還元焼成後の耐火物内に1質量%以上10質量%以下の含有量になるように添加してもよい。
最大粒径10μm以下のSiOは,耐火物中において黒鉛等の炭素原料あるいはバインダーに由来するカーボンによって還元され,SiO+3C=SiC+2COの反応が進み,安定な凝縮相である二次SiCを生成することから、このように粒径の小さなSiOを原料に配合する分には、1500℃中3時間還元焼成後の耐火物内に単一化合物のSiOは殆ど残らないことから問題無い。同様に、金属Siも,耐火物中において黒鉛等の炭素原料あるいはバインダーに由来するカーボンと反応して,安定な凝縮相である二次SiCを生成する。
そして,これらの混和物に,熱処理後に炭素結合を形成することのできる,例えばフェノール樹脂,ピッチ等の有機質の結合材を添加して混練し,成形用のはい土を得る。
また,本工程では,成形用のはい土中に,前記二次粒子群を,1500℃非酸化雰囲気中で3時間熱処理した後の耐火物内で55質量%以上90質量%以下の割合で存在するように配合する。
5. CIP成形工程:前記成形用はい土の生成工程により得たはい土を,ガス通過経路たる空間とするための有機質の仕切り板や本体となるはい土と共にCIP成形用のモールド内の空間に充填して,加圧成形する。
この成形圧等の条件は,浸漬ノズルの形状,構造や,設定した耐火物層又は成形体に求める物性等を得るために,それら個別の条件に応じた最適な設定を行うことができる。
6. 焼成工程:前記CIP成形工程により得た成形体を,例えば800℃〜1200℃等の温度での所定の熱処理(焼成処理)を行った後,ガス導入孔及びその接合構造体の設置,表面研削,酸化防止材塗布等の加工を行う。
本発明の耐火物を通気用耐火物層として浸漬ノズルの内孔に配設する場合について,図8〜図10を用いて以下に述べる。
本発明の耐火物である当該通気用耐火物13層と,その背後の浸漬ノズル本体耐火物との間には,ガス供給設備(図示せず)に連通するためのガス導入孔16に連通している,ガスが通過することのできる空間(ガス通過経路14)を配設する。ガスはこの空間から本発明の耐火物13層に供給され,この層を通過して浸漬ノズルの内孔面から溶鋼中に吐出する。また,ガス通過経路14の外側におけるパウダーと接触する部位には,ジルコニア−黒鉛質耐火物15が配設される。
この層としての配設領域を決定するために考慮すべき要素の一つとして,浸漬ノズルの溶鋼と接触する面への溶鋼由来のアルミナ等介在物付着防止がある。
このような前記介在物の付着状況や程度は,個別の操業設備の仕様,鋳造対象の溶鋼種類,操業方法等に依存するので,本発明の通気用耐火物13を浸漬ノズルに配設する領域や方法については,各々の操業等の条件や状況に応じた適正化が必要である。
本発明の耐火物13は,連続鋳造用浸漬ノズルの溶鋼と接触する面の少なくとも一部に層として配設する。さらにこの配設する領域は,連続鋳造用浸漬ノズルの内孔側の直胴部壁面の一部若しくは全部,又は吐出孔23内壁面の一部若しくは全部のいずれか1以上を含む領域とすることができる。
すなわち,介在物が付着し易い領域に本発明の通気用耐火物13を配設することが必要である場合,個別の付着状況に応じて本発明の耐火物13を最適な領域に設定することができる。
なお前記各領域に加え,底部(吐出孔周囲22,等)に配設してもよい。この場合,吐出孔横の柱部21を設けてもよい。
一般的なメニスカスから浸漬ノズルの下方の領域の配設対象部分の縦方向長さが約100mm以上であるので,ほぼ直線であるこの縦方向の長さに対しては,本発明の通気用耐火物の強度等を考慮すると,このような場合には層の厚さが5mm未満になるとこの層自体に亀裂や剥離等を生じ易くなる。
一方,ガス導入孔からのガスの通過経路が長くなるのに伴い,その位置からのガスの流出量が漸減する傾向がある。特に一般的な浸漬ノズル内孔直胴部長さ約400mm以上の場合には,通気用耐火物層の厚さが15mmを超えるとこの傾向が顕著になる。
したがって,本発明の通気用耐火物の配設厚さは5mm以上15mm以下の層として配設することが好ましい(図8〜10参照)。
次に,本発明の耐火物及び連続鋳造用ノズルを,実施例を挙げて説明する。
[実施例A]
実施例Aは,一次粒子及びその無機質結合材の化学成分が本発明の耐火物に及ぼす影響を調査した例である。
偏平状(板状)の一次粒子としては,日本軽金属(株)社製の「A21」を用いた。この一次粒子はAl純度が98質量%以上のコランダムからなり,粒子の大きさはレーザー回折式による測定値でほぼ1μm〜262μmの範囲,平均値が約80μmであり(図3の粒度分布図参照),アスペクト比が5以上50以下である。
偏平状のアルミナ粒子のAl純度自体を調整することは困難なので,ここでは本発明の偏平状のアルミナ粒子にβ−Alを併用することで,耐火物としてのAl含有量を調整した。偏平状のアルミナ粒子は,選別により,相対的に高純度(99質量%)品と通常品(98質量%)とを試験に供した。
この一次粒子をアルミナゾルを無機質結合材として用いて,前記製造方法に準じて作製した。これを110℃で乾燥して水分を除去した後,下記実施例各々に応じた所定の篩いで分級して二次粒子を得た。前記の二次粒子に,下記実施例各々に応じた所定のシリカ粉末,金属シリコン粉末等の原料粒子並びに鱗状黒鉛,カーボンブラック等の炭素質原料を混和し,その混和物に熱処理後に炭素結合を形成するフェノール樹脂を添加しながら混練して成形用のはい土を得た。
このはい土を鋳造用ノズルの成形に一般的に用いられるCIPにより,外径φ150mm内径φ50mm×高さ300mmの円筒状に成形し,乾燥処理及び最高温度約1000℃の窒素雰囲気中にて熱処理(焼成処理)を行って試料を得た。
各例についての本発明の効果は,通気特性変化率,発生応力,耐摩耗性,耐食性について,従来技術による代表的な耐火物との相対的な評価を行った。
具体的には,通気特性変化率は本発明の主たる課題に関する項目であり,背圧の低下現象の程度を示す。本発明の耐火物は,通気特性変化率は従来技術による耐火物と比較して相対的に顕著に優れる必要がある。
通気特性変化率に関し良好な結果を得ても,操業に供することができる条件としては,破壊,摩耗,浸食に対する各抵抗性が,従来技術による耐火物が現に使用されていることから,従来技術による耐火物と比較して相対的に同等又は優れることを基準とした。これらの評価に関しては,従来技術同等程度の特性が認められるものの例を本発明の効果を認める耐火物(合格例)とした。
効果を判断するための基準とする比較例は,いずれも従来技術による耐火物で定常的に操業に供されているものを選択した。通気特性変化率及び破壊,摩耗に対する抵抗性に関しては,非晶質シリカ(溶融シリカ)を10質量%含む表1に示す比較例1とした。浸食に対する抵抗性に関しては非晶質シリカ(溶融シリカ)を19質量%含む表1に示す比較例2とした。
これらの評価方法と基準は次の通りである。
通気特性変化率は,耐火物の熱間でのガス背圧の変化を測定するための特開2010−112945で開示されている試験方法であり,概説すると,次の1〜4のステップを含む方法である。1.上下端が閉じられ,内部に中空部を有する管状の試料体の管壁の一部に実施例又は比較例の耐火物を配置し,2.この耐火物を溶融金属浴に浸漬し,3.溶融金属浴の温度(1500℃)を高周波加熱によって制御しつつ,試料体の中空部にガスを導入し,4.当該試料体の管壁に配置した耐火物の外周面から溶融金属浴中にガスを吹き出させる。
通気特性変化率は,ガス流量を一定にした状態での最大背圧から最小背圧を引いた数値をガス流通(試験)時間(3時間)で除した単位時間当りの背圧変化率の値とする。この変化率が小さい程鋳造時の背圧低下が起こり難く,通気安定性に優れていることを示す。この通気特性変化率は比較例1の通気特性変化率を100とする指数で評価し,これよりも顕著に変化率が低下する例につき,本発明の効果が認められる例とした。
破壊に対する抵抗性に関しては,発生応力の相対的な値,具体的には当該耐火物を非酸化雰囲気の拘束条件下で室温から1500℃まで昇温する間の最大発生応力値を相対的に評価した。
この最大発生応力値の測定方法は次の通りである。
当該耐火物を直径30mm×高さ30mmの円柱状に成形又は切り出して測定用の試料とし,その試料上下の平面にカーボン板を置き,そのカーボン板に応力測定装置に連通したカーボンロッドで0.2MPaの荷重を印加する。この状態で,N2ガス雰囲気中5℃/分の昇温速度で室温から1500℃まで昇温する際に発生する最大応力値を測定する。
この測定方法による比較例1の最大発生応力値が18MPaであって,この最大発生応力値が18MPa以下である例につき,本発明の耐火物の合格範囲とした。
摩耗に対する抵抗性である耐摩耗性は,高周波誘導炉内で溶解した銑鉄(1500℃)内に50×80×25mmのサンプルを浸漬して熱負荷を与えた後BS法による摩耗試験を行い,その損耗量の測定値を相対的に評価した。
比較例1のこの損耗量を指数100とし,<98(98は比較例2の指数):◎(改善効果あり),98〜100:○(従来技術と同等),>100:×(従来技術より劣る)として評価した。
浸食に対する抵抗性である耐食性は,高周波誘導炉内で浸食材としてFeOスラグを添加(溶鋼に対して2%)して1550℃に溶解した状態の溶鋼に,□20mmの角柱状サンプルを1時間浸漬した後の最大溶損寸法を計測した。比較例2のこの最大溶損寸法を100とし,<86(86は比較例1の指数):◎(改善効果あり),86〜100:○(従来技術と同等),>100:×(従来技術より劣る)として評価した。
総合評価として,通気特性変化率の改善効果が顕著であり,最大発生応力値,耐摩耗性,耐食性の全てが前記基準に対し同等以上の特性を示す例を,本発明の効果を認める耐火物(合格例)とした。
なお,偏平状(板状)の一次粒子その他の各原料,試料の作製方法,評価方法等は,以下の実施例B〜Hにおいても同様である。
本実施例Aの詳細を表1に示す。
なお,表1中の「二次粒子」における「Al(質量%)」の表記は,二次粒子の炭素を除く成分中におけるAlの割合を示す。以下,表2〜8まで同様である。
この結果から,偏平状の粒子である一次粒子とその無機質結合材の合計Al純度が98質量%以上であって溶融シリカを含まない実施例1,実施例2ではいずれも,通気特性変化率が溶融シリカを含む従来技術の比較例1,比較例2に対し,顕著に低い値を得ることができ,最大発生応力値,耐摩耗性,耐食性の全てが前記基準に対し改善することがわかる。一次粒子とその無機質結合材の合計Al純度が96質量%の場合である比較例4は,通気特性変化率は比較例1よりも顕著に低くなるものの実施例1,実施例2よりはやや高くなり,耐食性が比較例より低下することがわかる。したがって,偏平状の粒子である一次粒子とその無機質結合材の合計Al純度は98質量%以上であることが必要である。
これらに対し,緻密質の非偏平状単粒子を使用した比較例3はAl純度が98質量%であっても,耐摩耗性が比較例1及び比較例2よりも劣る結果となり,さらには発生応力が増大した。なお比較例3の通気特性変化率は測定しないこととした。
[実施例B]
実施例Bは,偏平状のアルミナ粒子のアスペクト比の効果を調査した例である。
表2に詳細を示す。
この結果から,アスペクト比が5以上50以下の場合である実施例3〜実施例6では通気特性変化率が,比較例1に対し19〜35と顕著に低下していること,及び,発生応力値も比較例1より小さく,他の評価項目も全て「◎」又は「○」であることがわかる。
これに対しアスペクト比が5未満(≦4)の場合の比較例5では,発生応力が比較例1よりも大きくなっており,応力緩和能が十分でないことがわかる。また,アスペクト比が50を超える比較例6の場合は,耐摩耗性や耐食性が低下することがわかる。これは粗な組織になったことが原因と考えられる。また,アスペクト比が50を超える場合は,二次粒子の均一性が得にくくなった虞もある。なお比較例5,比較例6の通気特性変化率は測定しないこととした。
[実施例C]
実施例Cは,二次粒子の含有率の効果を調査した例である。
表3に詳細を示す。
この結果から,二次粒子の含有率が55質量%以上90質量%以下である実施例7〜実施例11では通気特性変化率が,比較例1に対し21〜40と顕著に低下していること,及び,発生応力値も比較例1より小さく,他の評価項目も全て「◎」又は「○」であることがわかる。これに対し二次粒子の含有率が50質量%の比較例7の場合は,発生応力の緩和能が十分でなく,さらに耐摩耗性や耐食性が低下することがわかる。これは炭素成分の硬度が小さいことに起因する機械的な摩耗損耗,酸化や溶鋼内への溶出等による化学反応的な消失によるものと考えられる。
二次粒子の含有率が94質量%の比較例8の場合は,発生応力の緩和能が十分であるものの,耐摩耗性や耐食性が低下することがわかる。これは粗な組織になったことが原因と考えられる。
なお比較例7の通気特性変化率は測定しないこととした。
この二次粒子の最適な含有率55質量%以上90質量%以下であることに伴い,耐火物中での化学成分Alの含有割合は54質量%(55質量%に二次粒子のAlの含有割合(下限の98%)を乗じた値を小数点以下を四捨五入した値)以上90質量%以下(90質量%に二次粒子のAlの含有割合(上限の100%)を乗じた値を小数点以下を四捨五入した値)となる。さらに二次粒子の含有割合が少ない場合に,個別の操業条件等の要求に応じて耐食性や耐摩耗性の向上を図る目的で炭素基質材料,特に結合炭素以外の黒鉛等の粒子状炭素に替えて,非偏平状のアルミナ粒子を耐火物のマトリクス部分に含有させてもよい。実施例12はこの例であって,二次粒子の含有率が最低値55質量%以上の場合に黒鉛に替えて非偏平状のアルミナ粒子を耐火物のマトリクス部分に5質量%含有させた例である。この実施例12も通気特性変化率が比較例1に対し27と顕著に低下していると共に,他の評価項目も全て「◎」であることがわかる。
[実施例D]
実施例Dは,二次粒子の大きさの効果を調査した例である。
表4に詳細を示す。
この結果から,二次粒子の大きさが0.05mm超2.0mm以下である実施例13〜実施例15では通気特性変化率が比較例1に対し21〜44と顕著に低下していること,及び,発生応力値も比較例1より小さく,他の評価項目も全て「◎」であることがわかる。
これに対し二次粒子の大きさが0.05mm以下である比較例9及び2.0mmを超える比較例10の場合は,発生応力の緩和能が十分でないことがわかる。また,二次粒子の大きさが2.0を超える比較例10の場合は,実施例14を100とする通気量のバラツキの程度を示す通気量R(通気量の最大値から最小値を差し引いた値。)の指数が111と拡大しており,成形時のはい土内の二次粒子の偏析による耐火物組織の均一性が低下したことが考えられる。
なお,比較例9,比較例10の通気特性変化率は測定しないこととした。
次に示す[実施例E]から[実施例G]は,耐火物としての化学成分の効果を調査した例である。
これら成分は耐火物を窒素ガス雰囲気中1500℃熱処理した後の試料についての測定値である。
[実施例E]
実施例Eは,化学成分のうち炭素の効果を調査した例である。
表5に詳細を示す。
この結果から,炭素が3質量%以上45質量%以下である実施例16〜実施例18では通気特性変化率が比較例1に対し19〜40と顕著に低下していると共に,他の評価項目も全て「◎」又は「○」であることがわかる。
炭素が3質量%未満(=2質量%)の比較例11は,発生応力が高くなることがわかる。これは相対的にアルミナ比率が高くなり熱膨張率および弾性率が高くなると共に,応力緩和能を担う黒鉛等が過少なために,応力緩和能が十分でないことが原因と考えられる。
また,炭素が45質量%を超える(=47質量%)の比較例12は,通気特性変化率は比較例1に対し47と顕著に低下しているが,耐摩耗性および耐食性が低下することがわかる。これは,炭素成分の硬度が小さいことに起因する機械的な摩耗損耗,酸化や溶鋼内への溶出等による化学反応的な消失によるものと考えられる。
なお,比較例11の通気特性変化率は測定しないこととした。
[実施例F]
実施例Fは,化学成分のうちSiCの効果を調査した例である。
表6に詳細を示す。
この結果から,SiCが1.0質量%以上10.0質量%以下である実施例19〜実施例21のいずれも通気特性変化率については比較例1に対し19〜29と顕著に低下しており,及び,発生応力値も比較例1より小さく,他の評価項目も全て「◎」又は「○」であることがわかる。
これに対しSiCが0.5質量%である比較例13は,比較例1に対し通気特性変化率については18と顕著に低下しているものの,耐摩耗性が劣ることがわかる。またSiCが11.0質量%である比較例14は耐食性が劣ることがわかる。これは,SiCが1.0質量%未満では耐摩耗性向上効果得るのに十分なマトリクス内での分散状態を得られず,10.0質量%を超えるとその酸化や溶鋼等(溶鋼由来の非金属介在物を含む)による反応溶損等が進行するためと考えられる。
[実施例G]
実施例Gは,化学成分のうち前記以外のその他成分,すなわち,アルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物,溶融シリカを除くSiO,TiO及びその他製造上不可避の成分等の合計含有量の効果を調査した例である。
表7に詳細を示す。
この結果から,その他成分の合計含有量が0.5質量%以上2.0質量%以下である実施例22〜実施例25では通気特性変化率が比較例1に対し23〜40と顕著に低下していると共に,発生応力値も比較例1より小さく,他の評価項目も全て「◎」であることがわかる。
しかしその他成分の合計含有量が2.0質量%を超える(=2.5質量%)比較例15は,通気特性変化率,発生応力,耐摩耗性については比較例2に対しては改善又は同等の効果を示すものの,耐食性が大きく劣ることがわかる。これは,その他成分の合計含有量が2.0質量%を超えると,これら成分が耐火物組織内の他の成分と反応して低融物を生成して耐火物組織を軟化させて摩耗し易くする,炭素(特に結合炭素)を酸化させて耐火物組織を脆弱化する,溶鋼等(溶鋼由来の非金属介在物を含む)との反応溶損等を促進する等が原因と考えられる。
[実施例H]
実施例Hは,耐火物の気孔率の効果を調査した例である。この気孔率は,耐火物を窒素ガス雰囲気中1500℃で熱処理した後の試料についてのJISR2205の方法に準じた見掛け気孔率の測定値である。
なお,通気量は内径φ80mm,通気部面積500cmの試料に,圧力0.1MPaの空気を内部空間に負荷した場合の通気量を測定し,見掛け気孔率が40%である実施例 28の通気量を100とする指数で表記した。
表8に詳細を示す。
この結果から,気孔率が30%未満の場合はやや通気量(指数)が低下する傾向があり,気孔率が50%を超える場合は通気量(指数)が大幅に増大することがわかる。
実施例26〜実施例30のいずれも粒子としてのシリカを含有しないことから,通気特性変化率の指数は18〜45と良好である。またこれら実施例のいずれの気孔率でも発生応力値も比較例1より小さく,耐摩耗性,耐食性は全て「◎」又は「○」であることがわかる。
しかし本実施例の場合は,気孔率が小さくなるに伴い通気量が小さくなる傾向が認められる。また気孔率が小さくなるに伴い発生応力が大きくなる傾向が認められ,気孔率が大きくなるに伴い耐摩耗性や耐食性が低下する傾向が認められる。通気量,発生応力値,耐摩耗性,耐食性は気孔率以外の制御手段も採用することができるので気孔率は絶対的な要件とはならないものの,30%以上50%未満を好ましい範囲としてもよい。
a 長さ
a´ 幅
b 厚さ
1 一次粒子(偏平状のアルミナ)
2 二次粒子
3 二次粒子内の空間
4 二次粒子の外部,すなわち炭素質,SiC,その他成分からなる,耐火物のマト リックス部
5 SiC
6 供試体
7 カーボンスペーサー
8 カーボンブロック
9 加圧ロッド
10 発熱体
11 保護壁
12 クロスヘッド
13 本発明の耐火物(通気性耐火物)
14 ガス通過経路(等圧帯)
15 ジルコニア−黒鉛質耐火物(パウダー部用耐火物)
16 ガス導入孔
21 吐出孔横の柱部
22 吐出孔周囲
23 吐出孔

Claims (5)

  1. アスペクト比が5以上50以下の偏平状のアルミナ粒子を一次粒子とし,前記一次粒子複数個を無機質結合材により集合させて形成した,長さが0.05mm超2mm以下の二次粒子を含有する耐火物であって,
    前記耐火物は,1500℃非酸化雰囲気中で3時間熱処理した後において,見掛け気孔率が28%以上であり,
    前記二次粒子が55質量%以上90質量%以下含有され,
    前記二次粒子内の炭素を除く成分は,Alが98質量%以上であり,
    化学成分として,フリーの炭素を3質量%以上45質量%以下,SiCを1質量%以上10質量%以下含有し,単一化合物のSiO,アルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物,TiO,及び,その他製造上不可避の成分の合計含有量が2質量%以下であることを特徴とする,耐火物。
  2. 耐火物を非酸化雰囲気1500℃中3時間熱処理した後の見掛け気孔率が30%以上50%以下,耐火物を非酸化雰囲気の拘束条件下で室温から1500℃まで5℃/分で昇温する間の最大発生応力値が18MPa以下であることを特徴とする,請求項1に記載の耐火物。
  3. 非酸化雰囲気1500℃中で3時間熱処理した後の化学成分として,Alを54質量%以上90質量%以下,フリーの炭素を3質量%以上45質量%以下,SiCを1質量%以上10質量%以下含有し,単一化合物のSiO,アルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物,TiO,及び,その他製造上不可避の成分の合計含有量が2質量%以下である耐火物の製造方法であって,
    偏平状のアルミナの一次粒子の粉体に無機質結合材を加えて混和する混和工程と,
    得られた混和物を混練し,一次粒子の集合体である二次粒子の造粒物を形成させる造粒工程と,
    得られた造粒物を分級して,長さが0.05mm超2mm以下の複数の二次粒子とする分級工程と,
    得られた複数の二次粒子をAl成分となる配合原料とし,SiC成分となる配合原料,及び,フリーの炭素となる配合原料と共に,結合材を添加して混練し,成形用のはい土を得る成形用はい土の生成工程と,
    前記はい土をCIP成形するCIP成形工程と,
    得られた成形物を焼成する焼成工程を有し,
    前記混和工程では,前記造粒工程で生成される二次粒子の炭素を除く成分が,Al98質量%以上となるように,前記無機質結合材を加え,
    前記成形用はい土の生成工程では,成形用のはい土中に,前記複数の二次粒子を55質量%以上90質量%以下の割合で存在するように配合することを特徴とする耐火物の製造方法。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の耐火物を溶鋼と接触する面の少なくとも一部の層として配設した連続鋳造用浸漬ノズルであって,前記耐火物層とその背後の連続鋳造用浸漬ノズル本体耐火物との間には,ガスが通過することのできる空間を配設しており,前記空間は連続鋳造用浸漬ノズル外部のガス供給設備と連通するためのガス導入孔に連通していることを特徴とする,連続鋳造用浸漬ノズル。
  5. 請求項1又は請求項2に記載の耐火物を配設した領域が,連続鋳造用浸漬ノズルの内孔側の直胴部壁面の一部若しくは全部,又は吐出孔内壁面の一部若しくは全部のいずれか1以上を含む領域であることを特徴とする,請求項4に記載の連続鋳造用浸漬ノズル。
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