JP6016059B2 - エキシマランプ - Google Patents

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Description

この発明は、発光管に紫外光反射膜を備えたエキシマランプに関するものであり、特に、当該紫外光反射膜の形状に関するものである。
現在、半導体集積回路の製造或いは液晶ディスプレイの製造などにおける基板の洗浄工程には、波長200nm以下の真空紫外光を放射するエキシマランプが用いられている。またエキシマランプの発光管の内壁面には、被照射体に対して紫外光を効率よく放射するため、光出射側を除く部分にシリカ主体の微粒子からなる紫外光反射膜が設けられている。
上記のように紫外光反射膜を有するエキシマランプの発光管は、点灯時間の経過とともに、紫外光を放射する光出射側の管壁(以下、光出射面と称す)に紫外線歪みが蓄積されて長手方向に収縮してしまう。一方、紫外光反射膜を備えた光反射側の管壁(以下、光反射面と称す)は紫外線歪みの影響がないので長手方向に収縮しない。そのため、発光管の中央部が光反射面側に反ってしまい、全体が光反射面側に向かって凸状に曲がってしまう、という不具合が生じていた。この不具合を示す概念図を図10(a)に示す。図10(a)に示すように、発光管1の形状は光出射面11の収縮52によって、図中上方側に反った形状となる。そのため、光出射面11には応力負荷53がかかり(以下、歪応力と称す)、かつ発光管1が反った形状のため、被照射体への均一な紫外光照射ができない、という問題があった。
上記問題の解決手段として、特開2010−080351公報には、発光管の反りを矯正するための矯正部材を備えた光源装置が開示されている。この光源装置を図9に示す。図示するように、エキシマランプの光出射面11は長手方向の収縮により、図中の点線で示すように発光管1が反ってしまうのに対して、矯正部材6によって発光管の反り5を抑えている。
しかしながら図10(b)に示すように、上記の矯正部材6は図中の矢印で示した力の方向(押込み69)によって発光管1の反り5を力学的に押さえつけるため、光出射面11の収縮部に対して長手方向に引張応力61(以下、反り規制応力と称す)が発生してしまう。ランプの長時間点灯によって発光管1の反り5が大きくなると反り規制応力61も大きくなり、発光管1が破損してしまうおそれがある。より長時間の点灯に耐えるためには、発光管の反りを比較的小さく抑え、矯正部材から付加される反り規制応力の増加を低減させる必要がある。
特開2010−080351号公報
本発明の目的は、上記問題点に鑑みて、発光管の反りを抑えることができ、より長時間の点灯を可能にしたエキシマランプを提供することである。
本発明は、上記課題を解決するため以下の手段を採用した。
すなわち本発明は、光反射面の管壁に紫外線歪みを蓄積させて発光管の反りが抑えられるよう、光反射面に設けられた反射膜に切欠きを設けたことをその要旨とする。
本発明は、長尺の発光管を備え,該発光管には,放電用ガスが充填された放電空間と,その放電用ガスに放電を誘起するための一対の電極がそれぞれ設けられ,それら一対の電極のうち少なくとも一方の電極と放電用ガスとの間に誘電体材料を介在するように構成されたエキシマランプにおいて,該エキシマランプは,紫外光を放射する光出射面と,光出射面と対向し、紫外光を反射する反射膜を該発光管の内壁面に備えた光反射面を有し,該反射膜には,該発光管の長手方向に対して長尺となるよう切欠きが設けられていることを特徴とする。
また、前記反射膜には,複数の切欠きが設けられていることを特徴とする。
また、前記切欠きは,発光管の長手方向に対して細長いスリット形状であることを特徴とする。
また、前記切欠きは,前記光反射面を介して、少なくとも一部が前記電極と対向する位置に延設されていることを特徴とする。
本発明では、紫外光を放射する光出射面と、紫外光を反射する反射膜を備えた光反射面を有するエキシマランプにおいて、該反射膜に切欠きを設けることで、該切欠きを介して光反射面の管壁に紫外線歪みを蓄積させることができる。これにより、光出射面と光反射面の各々の管壁に蓄積される紫外線歪みの蓄積量の差を小さくし、発光管の反りを抑えることができる。
また、前記切欠きを複数設けることで、発光管の反りを抑制する効果が増大される。
また前記光出射面は発光管の長手方向に対して収縮し、これによって発光管に反りが発生する。そこで、前記切欠きも発光管の長手方向に対して長尺となるよう反射膜に設けることで、該光反射面が長手方向に対して収縮されやすくなり、反りの緩和作用がより有効に働く。
また前記切欠きは、発光管の長手方向に対して細長いスリット形状であることによって、上記切欠きの総面積を小さく抑えることができ、ランプの照射光量を著しく低下させることがない。
また、ランプの放電は電極付近に集中することから、前記切欠きを電極と対向する位置に延設することにより、前記光反射面の紫外線歪みの蓄積を増大させ、発光管の反りを抑制する効果を増大することができる。
本発明のエキシマランプの一端の部分上面図 本発明のエキシマランプの管断面図 本発明の効果を示す概念図 本発明の効果を示す管断面図 本発明の他の実施形態を示す管断面図 本発明の他の実施形態を示す外観図 エキシマランプ点灯時間と反り量の変化を示すグラフ エキシマランプ点灯時間と負荷される応力の変化を示すグラフ 従来のエキシマランプ装置の構成を示す概念図 (a)発光管の歪応力の概念図(b)矯正部材による反り規制応力の概念図
本発明の具体的な実施例を図1、図2に基づいて説明する。図1は、本発明の実施例を示す発光管1の一端の部分上面図であり、図2は該発光管の長尺方向に直交する面で切断した管断面図である。発光管1の光反射面12には、紫外光を反射するための反射膜2が管壁の内面に設けられており、該反射膜2によってランプの光を光出射面11に集めることができ、光出射面11から被照射体へ照射される光の照度を高めることができる。光反射面12の一部には切欠き3が設けられており、その領域は反射膜2が除去されている。そのため該切欠きを介して、光反射面12の管壁に紫外光が侵入し、その管壁に紫外線歪みが蓄積されて、管壁が長手方向に収縮する。このように、光反射面12の反射膜2に切欠き3を設けたことで光反射面12に紫外線歪みが蓄積され、光出射面11だけでなく光反射面12の管壁も長手方向に収縮することとなり、その結果、発光管の反りが抑えられる。
発光管の外部には、放電用ガスに放電を誘起させるための電極4(以下、外部電極と称す)が設けられている。この外部電極4には網目形状の電極(以下、網目電極と称す)が用いられている。網目電極は、その周囲に低融点ガラスからなるガラスペースト40が設けられており、ガラスペースト40を介して発光管の外壁に設けられている。尚、発光管内には放電用ガスとしてキセノンガスなどの所定の放電ガスが封入されている。
本発明は、光反射面の反射膜に切欠きを設けることで、光反射面を長手方向に収縮させ、発光管の反りを緩和させることができる。図1に示すように、前記切欠きは一方向に長尺な形状が適しており、例えば、一方向に長尺な長方形又は楕円形状のものが良い。また発光管の長手方向に長尺となるよう、切欠きの位置が調整されることが好ましい。また切欠きを複数設けることで、前記反りの緩和効果が増大する。切欠きが複数形成される場合は、各々の切欠きが一方向に並列するよう設けても、交差するよう設けても良い。
反射膜2に設けられる切欠き3の本数、長さ、幅39、間隔38の数値例を挙げると以下のようになる。
切欠き本数:6本
長さ:ランプ発光管の3/5
切欠き幅(39):3.2mm
間隔(38):7.6mm
本発明の効果を図3に示す。上記のように、本発明は発光管1の反射膜2に切欠き3を設けることで、該切欠き3を介して、光反射面12の管壁に紫外光を侵入させ、光反射面12を長手方向に収縮させることで発光管1の反り5を緩和させることができる。しかしながら反射膜2に切欠き3を過剰に設けると、光反射面からの紫外光の反射量は低下し、ランプの照射光の光量が低下してしまう。そのため、所望の照射光量を考慮して、該切欠き3の総面積を適宜調整する必要がある。例えば、光反射面12の面積と比較して切欠き3の総面積が1/2程度であれば、照射光量の低下を20%程度に抑えることができ、光量の著しい低下を防ぐことができる。なお、ここでいう光反射面の面積は、光出射面に対向する面の面積のことをいい、切欠きも含めた面積を意味する。また、ここでいう切欠きの総面積とは、光反射面上において反射膜がない領域の面積を全て足し合わせた面積を意味する。
光反射面12には、内壁面に反射膜2が設けられ、外壁面に網目状の外部電極4が設けられている。図4に示すように、反射膜2の切欠き部分3と外部電極4の素線41は、その位置が重なるように調整することが望ましい。これは、外部電極4の近辺はエキシマランプの放電プラズマ19の起点となりやすいため、該切欠き部分3と外部電極4の素線41が重なる領域では、光反射面12への紫外線歪み51の蓄積量が比較的大きくなり、光反射面12の長手方向の収縮が促進されるからである。
また切欠き3は、少なくとも一部が、発光管の長手方向に延びる外部電極4の素線41に沿うよう設けられることが望ましい。それは以下の理由による。光出射面11は発光管1の長手方向に対して収縮し、これにより発光管に反りが発生する。ここで、該切欠き3も発光管1の長手方向に対して長尺となるよう反射膜2に設けることで、該光反射面12が長手方向に対して収縮されやすくなり、発光管の反りの緩和作用をより有効に働かせることができる。
反射膜2に切欠き3を設けると、該切欠き3を通過して光反射面12から光が漏れてしまい、照射光の光量が低下してしまう。しかし、漏れた光の一部は、光反射面側12の外部電極4によって光出射面側11に反射される。そのため、外部電極4の素線41と反射膜2の切欠き部分3の位置を重なるように調整することで、漏れた光を再度有効に利用することができる。
更に、図5(a)に示すように、電極42によって漏れ光を光出射面側11に反射する際、紫外光が切欠き3を通って光反射面を往復する。つまり、放電空間で発生した紫外光が切欠き3を通って発光管外部に出て行く時、及び、電極42によって発光管内部に反射される時、の2度に渡って光反射面を形成する発光管に紫外光が侵入、通過し、光反射面12の紫外線歪み51の蓄積が増幅され、光反射面12の長手方向の収縮を促進させることができる。
このほか、光反射面側12の外部電極4の形態を変えることで、前記漏れ光の反射量を増やすことができる。
例えば、図5(a)に示すように、蒸着又はスパッタリングによって金属を直接発光管の外面に付着させて外部電極42を形成することで、光の反射率を上昇させ、光反射面12からの漏れ光の反射率を上昇させることができる。また、図5(b)に示すように、光反射面側12の外部電極4をベタ電極43に変えることで、光反射面12からの漏れ光をほぼ確実に光出射面11に反射させることが可能となり、本発明の実施形態として望ましい。
上記の反射膜2は、ランプ製造時において、シリカ主体の微粒子を含む懸濁液(以下、膜素材と称す)を発光管1に塗布し、該膜素材を焼成させることで形成される。また切欠き3は、膜素材の焼成の工程前後において簡易に設けることができ、反射膜2に切欠き3を作製する方法としては、例えば、以下の方法が考えられる。
〈作製方法1〉
膜素材の塗布前に、切欠きを設けたい領域にマスキングテープを貼り付ける。膜素材を塗布後、焼成させる前にマスキングテープを剥がして該膜素材を除去し、残存物を焼成させる。これによって、反射膜2の任意の場所に切欠き3が作製できる。
〈作製方法2〉
反射膜はシリカを主成分とした微粒子から成り、1650度以上に熱すると反射膜が溶融し透明なガラス体に成る。そこで、切欠きを形成したい領域をバーナーで炙る、又はレーザーを反射膜に集光させて部分加熱することで、反射膜を部分的に溶かすことができ、任意の場所に切欠き3が作製できる。
前記切欠きは、発光管の反りを緩和させるために反射膜に設けられるものである。よって反りの緩和効果を最大限発揮させるためには、発光管の長手方向に対して長尺となるよう切欠きを作製することが望ましい。
切欠き3は、図1に示すように反射膜に複数形成されていても良く、図6(a)に示すように長尺の切欠きが発光管の長手方向に点在して形成されていても良く、いずれも発光管の反りの緩和作用が期待できる。また図6(b)に示すように、切欠きは必ずしも発光管1の長手方向に対して並行に延設させなくとも良く、発光管1の長手方向に対して斜めに傾斜していても全体として長尺方向に長ければ、発光管の反りの緩和作用が期待できる。
反射膜に切欠きを設けることで発光管の反りが緩和されるため、当然、反りに伴う歪応力が緩和され、また矯正部材を発光管に当接させて反りを規制する場合において、反りの矯正に伴う反り規制応力が緩和される。反り規制応力は、図9で示されるように、矯正部材6と発光管が当接することで発生する。通常、図9に示される光源装置にエキシマランプを装着した際に、矯正部材6と発光管の間には間隙がある。よって、矯正部材と発光管は当接しないため、ランプの点灯初期段階であれば発光管に反り規制応力は付加されない。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
〈実施例1〉
図1に示す構成に倣い、下記の条件により作製されるエキシマランプ。
・発光管:扁平形状、縦幅18mm、横幅71mm、長さ2800mm
・切欠き:スリット形状、切欠き幅3.2mm×6、間隔10.8mm、(切欠きの総面積は光反射面の面積の1/3となるよう調整する。)
〈点灯条件〉
・電力:2kW
・点灯時間:〜5000時間
〈実施例2〉
図1に示す構成に倣い、以下に示す切欠き以外の条件は実施例1と同様の構成を備えるエキシマランプ。
・切欠き:スリット形状、切欠き幅3.6mm×8、間隔8.1mm(切欠きの総面積は光反射面の面積の1/2となるよう調整する。)
〈従来例1〉
反射膜に切欠きが設けられていないこと以外は、実施例1と同様の構成を備えるエキシマランプ。
前記実施例1、実施例2、従来例1の各々のランプの点灯時間に対する反り変化量を図7に示す。図7に示されるとおり、従来例1に対して実施例1と実施例2の点灯時間に対する反りの変化量は小さくなっている。これは反射膜に切欠きを設けたことで反りが緩和されたものと考えられる。また、実施例2は実施例1より切欠きの総面積が大きいため、それに伴って発光管の反りの変化量が小さく、発光管の反りがより大きく緩和される。
実施例1、実施例2、従来例1の各ランプを、図9に示すような矯正部材を備えた光源装置に取り付けた場合、該矯正部材によって付加される反り規制応力の変化を各々の発光管の反り変化量から推定したところ、図8のような経時変化を示すことが分かった。
図中の破線は、紫外線歪みに伴う歪応力を示す。実施例1、実施例2、従来例1の各々の発光管には同じ大きさの歪応力が経時的に付加されている。図中の実線は、上記歪応力と反り規制応力を合算した値をランプの発光管全体に加わる応力負荷として表したものである。
図8に示されるとおり、従来例1よりも実施例1や実施例2は点灯時間に対する応力負荷が小さく、その経時変化も緩やかとなり、発光管が破損に至るまでの点灯寿命が長くなることが分かる。例えば、応力負荷が30MPaに達するまでの点灯時間をみると、従来例1はおよそ2500時間であるのに対し、実施例1はおよそ3100時間、実施例2はおよそ3500時間となる。
以上のとおり、本発明にかかる実施例は、反射膜に切欠きを設けることで発光管の反りを緩和することができ、より長時間の点灯を可能にした。
本発明は、反射膜を備えた長尺の発光管であれば、どのような形状の発光管に対しても発光管の反りを解消する効果が発揮される。例えば、管断面の形状が扁平形状のエキシマランプや円筒形状のエキシマランプであっても、紫外線歪みの蓄積によって発光管に反りが発生した際、反射膜に切欠きを設けることにより、発光管の部位によって紫外線歪みが偏重して蓄積されることを防ぎ、発光管の反りを抑えることができる。
1 発光管
11 光出射面
12 光反射面
19 放電柱
2 反射膜
3 切欠き
38 間隔
39 切欠き幅
4 外部電極
40 ガラスペースト
41 素線
42 外部電極
43 ベタ電極
49 素線幅
5 反り
51 紫外線歪み
52 管壁の収縮
53 歪応力
6 矯正部材
61 反り規制応力
69 押込み
7 ベース部材
8 被照射体

Claims (4)

  1. 長尺の発光管を備え,
    該発光管には,放電用ガスが充填された放電空間と,該放電用ガスに放電を誘起するための一対の電極がそれぞれ設けられ,
    それら一対の電極のうち少なくとも一方の電極と放電用ガスとの間に誘電体材料を介在するように構成されたエキシマランプにおいて,
    該エキシマランプは,紫外光を放射する光出射面と,前記光出射面と対向し、紫外光を反射する反射膜を該発光管の内壁面に備えた光反射面を有し,
    該反射膜には,該発光管の長手方向に対して長尺となるよう切欠きが設けられていることを特徴とするエキシマランプ。
  2. 前記反射膜には,複数の切欠きが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
  3. 前記切欠きは,発光管の長手方向に対して細長いスリット形状であることを特徴とする請求項1と請求項2のいずれかに記載のエキシマランプ。
  4. 前記切欠きは,前記誘電体材料を介して、少なくとも一部が前記電極と対向する位置に延設されていることを特徴とする請求項2から請求項3のいずれかに記載のエキシマランプ。
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