JP4868036B2 - 高圧放電ランプ - Google Patents

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Description

この発明は、高圧放電ランプに関するものであり、特に、プロジェクター装置用光源、露光装置用光源に利用される高圧放電ランプに係るものである。
この種の高圧放電ランプにおけるシール構造としては、電極軸の根元が封止部に埋設された金属箔と接合する、いわゆる箔シール構造が採用される。
通常、電極軸はタングステンから構成され、一方で発光管は石英ガラスから構成されているために、かかる箔シール構造においては、封止部での両者の熱膨張係数の違いにより、封止部の損傷、破損という問題がしばしば発生する。特に、プロジェクター装置に使う高圧放電ランプにおいては、発光部に0.15mg/mm以上の多量の水銀が封入されており、点灯時には水銀蒸気圧が100気圧以上の高圧になるため、この問題は一層深刻となっている。
このような問題を解決するために、例えば、特開2008−529252号公報には、電極軸(芯棒)に軸方向に沿って伸びるように溝を形成する技術が紹介されている。
図3(A)は上記従来例にかかるランプの概略構成図であり、図3(B)は、電極の拡大図である。
図3(A)および(B)に示すように、放電ランプ1の電極2の電極軸21には、封止部3に対向する外表面領域において、軸方向に延在する複数の溝5が形成されている。なお、電極軸21は封止部3内で金属箔4に接続されている。
上記従来技術は、電極軸21に複数の溝5を設けることで、円周方向の表面粗さを、長手方向の表面粗さよりも大きくして、電極軸21の材料(タングステン)と封止部3の材料(石英ガラス)との熱膨張率の違いに起因する封止部の破損を解消しようとするものである。
しかしながら、該従来技術においては、電極軸21方向に連続した複数の溝5は、その端部が、軸方向で同じ位置に揃えて形成されている。このように溝5の端部が揃っている箇所には応力が集中しやすい。 そのため、点灯、消灯時の温度変化による熱膨張、収縮にともなう応力がこの電極軸溝5の端部に発生すると、ここを起点として破断するという問題があった。 とりわけ、電極軸21の金属箔4側の端部は、封止作業時に強く加熱されて石英ガラスと密着させるために、この端部が点灯時における電極2の振動の作用点にもなり、応力が集中するので、前記溝5の金属箔側の端部が揃っていると、一層問題が大きい。
特に、プロジェクター装置用の高圧放電ランプの場合、その電極軸21は、直径が0.1〜1.0mmという小さいレベルであり、その強度低下は、当該電極軸が折れ曲がったり、破損するという不具合を導きかねず、より深刻な問題となっている。
特開2008−529252号公報
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、電極軸に軸方向の複数の溝が形成されるとともに、電極軸の金属箔側には溝が形成されていない残存部が存在する高圧放電ランプにおいて、電極軸と石英ガラスの熱膨張率の違いに起因する封止部の損傷、破損を防止するとともに、応力集中による電極軸の折れ曲がりや破断という問題を解消する高圧放電ランプを提供しようとするものである。
上記課題を解決するために、この発明に係る高圧放電ランプは、電極の電極軸に軸方向に形成した複数の溝の、特に金属箔側の端部を互いに不揃いにして応力の集中を避けるようにしたことを特徴とするものである。
本発明によれば、電極軸に形成した複数の溝の金属箔側の端部を一致させずに不揃いとしたことにより、電極軸の溝端部近傍での応力集中が避けられ、この部分を起点とする電極軸の折れ曲がりや破損が生じることがないという効果を奏する。
本発明に係る高圧放電ランプの断面図。 本発明の他の実施例。 従来の高圧放電ランプの断面図。
図1(A)は、本発明の高圧放電ランプの部分断面図、(B)は、電極軸の断面図である。
図1(A)には、一方の電極2や封止部3のみが図示されていて、他方は省略されている。図において、石英ガラスからなる発光部10の中には放電空間Sが形成されており、該空間S内において電極2が対向配置されている。そして発光部10の両端部には封止部3が形成され、この封止部3には、モリブデンよりなる導電用金属箔4が、例えばシュリンクシールにより気密に埋設される。該金属箔4の一端には電極2の電極軸21が溶接等の手段により接合されている。
そして、前記発光部10の放電空間Sには適宜の放電ガスが充填されるが、例えばプロジェクター装置用の超高圧放電ランプでは、水銀と、希ガスと、ハロゲンガスが封入されている。水銀は、例えば0.08〜0.25mg/mm封入されている。この封入量は、温度条件によっても異なるが、点灯時80気圧以上の高い蒸気圧となる。また、前記電極2は例えば、1〜2mmの間隔で対向配置される。
図1(B)に示すように、電極2の電極軸21にはその円周面に複数の溝6、6が形成されている。該溝6は、図1(A)に示すように、電極軸21の金属箔4側に溝が形成されない残存部21aを残して、軸方向に延びて形成されており、その金属箔4側の溝端部7は、軸方向で一致しておらず不揃いにされている。
この例では、放電空間S側の溝端部8は略一致しており、各溝6の長さを異ならせることによって、金属箔側の溝端部7を不揃いにしている。
図2には溝6の異なる形態が示されている。
図2(A)は、両側の溝端部7、8がともに一致しておらず不揃いの例であって、この例では、各溝6、6は長い溝と短い溝とが1本おきに配置されるように形成されている。
また、図(B)では、各溝6、6の長さが何種類かで形成され、これらが軸方向でランダムに配置されていて、溝6の両端部7、8で不揃いとされている。
なお、上記実施例において、電極軸21の金属箔側には溝6が形成されていない残存部21aが残されているが、電極軸21と金属箔4とはこの残存部21aを利用して溶接等により接合されている。
上記溝6は、特に、その金属箔側の端部7において不揃いとして応力集中を緩和するものとしたので、端部が揃った溝6の本数はできるだけ少なくするほど、その効果を期待でき、全体の本数の50%以下とすることが好ましい。
また、溝6は、その軸方向の長さが短すぎる場合には、石英ガラスとの接触面積を減らすという効果が得られなくなる。そのため、電極軸21の金属箔側の端部において、一の溝部の端部と、端部の形成位置が異なる他の溝部の端部の軸方向における位置の差(図2(A)のX)は、溝部が形成される領域全体の軸方向の長さ(同Y)の10%以内であることが好ましい。
なお、溝6の形成はレーザー加工が最適である。具体的に例えば、出力3kWで波長1.06μmのYAGレーザーを、ビーム径20〜30μm程度に絞り、電極軸21の表面に照射して走査することにより溝6を形成する。レーザーはパルスレーザーであり、パルス間隔、強度、走査速度等を調整することにより、溝の深さを調整することができる。
また、レーザー加工以外に、放電加工でも所望の溝形状を得ることができる。この場合、放電電極径を所望の寸法に設定して、軸方向に走査することで溝を形成することが出来る。
以上のように、本発明の高圧放電ランプでは、電極軸に形成した軸方向の多数の溝の金属箔側の端部を、軸方向で一致させず不揃いとしたことにより、当該部分での応力集中を回避でき、電極軸の折れ曲がりや破損といった事故を防止できるものである。
さらには、電極軸には溝を形成しない残存部を残してあるので、この残存部を利用して金属箔との溶接接合が容易かつ確実になされる。
1:高圧放電ランプ、 2:電極、 21:電極軸、 21a:残存部、 3:封止部、 4:金属箔、 6:溝、 7:溝の金属箔側端部、 8:溝の放電空間側端部、 10:発光部、 S:放電空間

Claims (5)

  1. 放電空間内に対向配置された一対の電極と、該電極の電極軸が封止部内において金属箔と接合されてなり、前記電極軸には封止部に対応する個所に軸方向の複数の溝が形成されてなる高圧放電ランプにおいて、 前記電極軸には金属箔側に溝が形成されていない残存部が残されており、前記複数の溝の、少なくとも金属側端部の位置が軸方向で一致することなく不揃いとされていることを特徴とする高圧放電ランプ。
  2. 前記電極軸の残存部において金属箔と接合されていることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ。
  3. 前記溝が軸方向に長い溝と短い溝とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ。
  4. 前記溝の端部の不揃い領域の軸方向の長さが、溝形成領域の10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ。
  5. 前記溝の端部の揃っている溝の本数が、全体の溝の本数の50%以下であることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ。

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