JP5167955B2 - キセノンランプ - Google Patents

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Description

本発明は、例えばDLP(登録商標)(Digital Light Processing:デジタル・ライト・プロセッシング)技術を利用した映写機などにおいて光源として用いられるキセノンランプに関する。
近年、DMD(Digital Micro−mirror Device:デジタル・マイクロミラー・デバイス)や液晶デバイスなどの画像素子を、大出力光源で光照射させて拡大投射することにより、スクリーン上に映像を投写するタイプのデジタルプロジェクターの使用が急速に高まっている。その際の光源として、高輝度キセノンランプが使用されており、さらなる高出力化と共に小型化が要求されている。
図1は、キセノンランプ1を示す概略断面図である。このようなキセノンランプ1は、例えば、特開2004−134104公報に開示される。
キセノンランプ1は、石英ガラス製の、発光部2および側管部3a、3bよりなる放電容器10と、発光部2の内部において、互いに対向するよう設けられた陰極4および陽極5により構成されている。陰極4および陽極5は、タングステン製のリード棒6に支持される。また、内部に軸方向に伸びる貫通孔を有する円筒状の石英ガラスよりなる保持用筒体7が、側管部3a、3b内で固定的に配設される。リード棒6は、保持用筒体7に挿通されて保持されると共に、段継部8によって側管部3a、3bに封着されている。このリード棒6は、放電容器10の外端部から外方に突出して伸びて、陰極4および陽極5の各々に電力を供給する外部リードを兼ねるものである。
キセノンランプ1の高輝度化とは、具体的には、陰極4と陽極5との離間距離と、封入ガスの量を調整することにより実現される。例えば、従来のキセノンランプに比べて陰極4と陽極5との離間距離を短くし、従来のキセノンランプと同じ電気特性が得られるように封入ガス量を増やすと、単位アーク長あたりの電気入力が増え、出力される光エネルギーが大きくなる。
キセノンランプ1から出力される光は、可視光領域のみならず紫外域から赤外域まで及ぶので、光エネルギーが大きくなると紫外光の出力も大きくなる。
キセノンランプ1から出力する光の中の波長200nm以下の紫外光は、石英ガラスよりなる放電容器10に歪を発生させる致命的な欠陥を生むだけでなく、キセノンランプの周囲に存在する大気と反応してオゾンを発生させる。オゾンが発生すると、集光鏡や反射鏡の反射率及びフィルターの透過率を低下させるなど、光学機器にさまざまな損傷を与え、結果として照射面における照度低下を招く。
この波長200nm以下の紫外光は、キセノンランプを構成する放電容器10に酸化チタン(通称チタニア)をドープすることや、あるいは、放電容器10の表面に酸化チタン層を設けることによって、遮光できることが知られている。放電容器10に酸化チタンを含有させることで、紫外光を遮光し、オゾン発生を防止できる。酸化チタンをドープする技術は、例えば特開平8−96751号公報に開示され、酸化チタンをコーティングする技術は、例えば特開平11−96970号公報に開示される。
特開2004−134104公報 特開平8−96751号公報 特開平11−96970号公報
しかしながら、放電容器に酸化チタンを含有させた石英ガラスを用いたキセノンランプを長時間点灯すると、放電容器の発光空間に曝される表面に、白く結晶化したものが析出する。結晶化した箇所では、放電容器の発光空間に曝される表面にクラックが発生しており、紫外光を遮光する酸化チタン層が破壊されている。そのため、発光空間で発生した紫外光がクラックに入射すると、放電容器を形成する石英ガラスに歪を発生させる致命的な欠陥を生み、放電容器を破裂させる原因となる。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、放電容器に酸化チタンを含有させた石英ガラスを用いたキセノンランプにおいて、放電容器の発光空間に曝される表面に結晶化したものが析出することを防止し、放電容器の破裂の原因を生じさせないキセノンランプを提供することを目的とする。
本願第1の発明は、酸化チタンを含有させた石英ガラスよりなり、発光部と前記発光部の両端に連続して伸びる側管部とを有する放電容器を備え、前記発光部の内部において陰極及び陽極が互いに対向して配置され、一端に前記陰極又は前記陽極を備えるリード棒が前記側管部の内部に設けられた段継部によって封着され、前記放電容器の内部にキセノンが封入されているキセノンランプにおいて、陰極側の前記側管部と前記発光部との接続部分は絞込み部となっており、前記絞込み部の外表面と前記絞込み部に続く発光部の外表面の一部とに導電膜が形成され、前記導電膜が陰極に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本願第2の発明は、本願第1の発明において、前記発光部において、前記陰極側の側管部との接続部分から最大膨出部に至るまでの範囲に、排気管残部が形成され、前記排気管残部から陽極側の外表面に、陽極に電気的に接続されたトリガーワイヤが配設されていることを特徴とする。
また、本願第3の発明は、本願第1または2の発明において、前記放電容器の両端に口金が取り付けられ、一方の口金と前記陰極とが導通し、前記一方の口金から導出された同電位ワイヤが前記導電膜に接触していることを特徴とする。
第1の発明に係るキセノンランプによれば、陰極側の側管部と発光部との接続部分の絞込み部の外表面と前記絞込み部に続く発光部の外表面の一部とに導電膜を形成し、導電膜を陰極と電気的に接続して、導電膜を陰極と同電位にすることで、放電容器の発光空間に曝される表面に結晶化の発生を防止できる。
第2の発明に係るキセノンランプによれば、排気管残部から陽極側の外表面に、陽極に電気的に接続されたトリガーワイヤを配設することによって、排気管残部の突出によりトリガーワイヤが陰極側にずれないので、陰極と同電位の導電膜と接しないように保つことができるため、トリガーワイヤによる始動性補助の効果を損なうことがない。
第3の発明に係るキセノンランプによれば、陰極と導通する口金から導出された同電位ワイヤを導電膜に接触させることにより、放電容器の外表面に形成された導電膜を容易に陰極と同電位にさせることができる。
図1は、キセノンランプ1の構成を示す説明用断面図である。
キセノンランプ1は、発光部2と、発光部2の両端に連続して伸びる側管部3a、3bとを有する放電容器10を備え、発光部2の内部において、互いに対向するよう設けられた陰極4および陽極5により構成されている。放電容器10は、酸化チタンを含有させた石英ガラスを用いて形成され、波長200nm以下の紫外光を遮光するようになっている。略球状の発光部2と、その発光部2の両端から伸びる円筒状の側管部3a、3bとにより構成される放電容器10の内部には、放電用ガスとしてキセノン(Xe)が封入される。
放電容器10の両端には、真鍮製で有底筒状の口金9a、9bが取付けられている。放電容器10の端部を覆うように中空円筒状の胴部の開口端から口金9a、9bを挿入し、放電容器10との間に接着剤を注入することにより固定されている。口金9a、9bの内部中央には銅の縒り線よりなる導電線11が伸びており、一端に電極4、5を備えるリード棒6とロウ付け12により電気的に接続されている。
リード棒6は放電容器10の両端から突出するように形成されており、側管部3a、3bの内部に設けられた段継部8と保持用筒体7により保持される、いわゆるロッドシールと呼ばれる構造を採っている。側管部3a、3bの端部に円環状の端壁部13が設けられ、端壁部13の内周端から筒状の段継部8が連接されている。段継部8は、放電容器10を構成する例えば石英ガラスの熱膨張係数と、リード棒6を構成する例えばタングステンの熱膨張係数との中間の熱膨張係数を有する段継ガラス(中間ガラスともいう)を用いて形成される。リード棒6に沿って発光部2側に向かって伸びるように設けられた段継部8の発光部2側の端部がリード棒6の外周に接続し、リード棒6を封着する。
側管部3a、3bにおける発光部2との接続部分には、中心軸に向かって縮径した絞込み部14a、14bが設けられる。絞込み部14a、14bに連接する発光部2においては、側管部3a、3bと同程度の径を有する直管部15a、15bが形成され、続いて略球状の膨出部が連接される。すなわち、側管部3a、3bと発光部2の接続部分は絞込み部14a、14bとなっており、絞込み部14a、14bに続く発光部2側に直管部15a、15bが構成される。
絞込み部14a、14bの内方には、外面に金属箔が巻かれた円筒状の保持用筒体7が設けられ、14a、14bを保持用筒体7と接するように焼き絞って保持用筒体7が移動しないように固定されている。また、保持用筒体7の中央の貫通孔に、外面に金属箔が巻き回されたリード棒6が挿通され、リード棒6の先端に接続された電極4、5の重量が支持される。
このようにしてリード棒6の先端に形成される電極4、5が側管部3a、3bに支持され、発光部2の内部に対向配置される。また、陰極4又は陽極5はリード棒6を介して口金9a、9bと電気的に接続される。
キセノンランプ1の数値例を示すと、発光部2の最大膨出部の外径はφ40〜80mmの範囲で、例えば60mm。略球状の発光部2の内表面積は4800〜20400mm範囲で、例えば10700mm。陽極5と陰極4との離間距離は3〜8mmの範囲で、例えば4.5mm。点灯時における入力は3000〜7000Wの範囲で、例えば4200W。点灯時における発光部2の管壁負荷は0.3〜0.5W/mmで、具体的には0.38W/mmである。
続いて、放電容器の発光空間に曝される表面に析出される結晶化が発生する条件を探るために、仕様の異なる3種のランプについて点灯実験を行った。
ランプ1乃至3の仕様を列記する。
ランプ1 キセノンランプ
放電容器:酸化チタンを含有させた石英ガラス、全長300mm、発光部の最大膨出部の外径φ60mm、発光部の全長80mm
封止構造:ロッドシール
封入ガス:キセノン(Xe)2MPa(静圧)
陽極と陰極との離間距離:4.5mm
入力:4kW
ランプ2 キセノンランプ
ランプ1の仕様において、放電容器の材質に酸化チタンを含まない石英ガラスとしたことのほか、同一の条件で製作されたキセノンランプ。
ランプ3 水銀ランプ
放電容器:酸化チタンを含有させた石英ガラス、全長300mm、発光部の最大膨出部の外径φ80mm、発光部の全長90mm
封止構造:箔シール
封入ガス:キセノン(Xe)0.2MPa(静圧) 水銀30mg/cc
陽極と陰極との離間距離:5.0mm
入力:4kW
なお、ランプ3の水銀ランプの封止構造に採用される箔シールとは、図2に示す構造をいう。
箔シールによる封止構造においては、一端に電極を有する内部リード33の他端部は、封止部32に配設された、石英ガラスよりなる略円柱状のガラス部材34に支持されている。また、放電容器31外部に導出、すなわち封止部32の外端より外方に突出して伸びるよう設けられた外部リード35の一端がガラス部材34に支持されている。
ガラス部材34の外周面には、互いに周方向に離間して、5枚の帯状の金属箔36が水銀ランプの管軸方向に沿って互いに平行に配設されている。各々の金属箔36の一端が内部リード33に電気的に接続され、他端が外部リード35に電気的に接続される。そして、放電容器31における封止部32とガラス部材34とが金属箔36を介して溶着されて気密シール構造が形成されている。保持用筒体37は、内部リード33が挿通された状態でこれを支持し、封止部32に溶着されている。
このように箔シールでは、ガラス部材34によって気密シール構造が形成されるので、点灯時でも温度が低く保たれる封止部32の端部にまで、封入ガスが満たされることがない。封入ガスが冷やされて、水銀が未蒸発となることを抑制するために、水銀ランプでは封止構造を箔シールにする必要がある。
一方、キセノンランプは、封入ガスの圧力が高いため、封止構造に高い耐圧性を必要とする。箔シールを採用すると、金属箔36の隙間から亀裂が入りやすい。また、電力入力を大きくするためには金属箔36の枚数を増やさなければならないため、金属箔36が形成する隙間の数が増えてより一層亀裂が入りやすく、とりわけ高輝度化が求められているデジタルプロジェクターの光源には不向きである。したがって、キセノンランプでは封止構造をロッドシールにする必要がある。ロッドシールでは、段継部8によって封着されるため、亀裂が生じにくい。
ランプ1乃至3をそれぞれ点灯させ、放電容器の発光空間に曝される表面に結晶化が生じるか否か観測した。
点灯条件は、2時間点灯して30分消灯し、再度これを繰り返す。つまり、30分のインターバルを挟んで2時間ずつ点灯した。結晶化の有無の観測は、点灯時間が50時間経過するごとに、消灯時に目視で行った。結晶化が発生するまでこれを繰り返した。
結晶化とは、放電容器の内部の曇りとは異なるものであり、放電容器の微小クラックを伴う。結晶化が発生すると、放電容器を構成する石英ガラスが、発光空間に曝される表面において剥がれ落ち、白っぽい微小なガラス破片が生じる。放電容器にクラックが発生したときと同様の現象が生じるので、当業者において目視によって確認することができる。このような現象が発生したときを結晶化が生じたとし、そのときの積算点灯時間を記録した。
ランプ1は、100時間点灯した時点で結晶化が発生した。
ランプ2は、500時間点灯しても結晶化が発生しなかった。なお、500時間とはキセノンランプの平均寿命である。
ランプ3は、1000時間点灯しても結晶化が発生しなかった。
ランプ1とランプ2の実験結果より、放電容器に酸化チタンを含有させた石英ガラスを用いたときにのみ、結晶化が発生することがわかった。結晶化は、放電容器に含まれる酸化チタンが何らかの作用をしていることがわかった。
また、ランプ1とランプ3の実験結果より、水銀が封入された水銀ランプでは、結晶化が発生しないことがわかった。これは中心波長172nmのキセノンエキシマ発光の強度が水銀ランプよりもキセノンランプのほうが強いためだと考えられる。その理由はキセノンランプのほうがランプ中のキセノンガス量が多いからであり、それはキセノン封入圧力が水銀ランプよりも高いことから明らかである。
発明者らは、オゾンの発生を抑制するために放電容器として酸化チタンを含有させた石英ガラスを用いたキセノンランプにおいて、発光空間に曝される表面に結晶化したものが析出しないようにするために、どのような構成とすればよいか創意工夫を尽くし、図3に示すキセノンランプを採用することを考えついた。
図3は、本発明のキセノンランプの外観を示す説明図である。
陰極側の側管部3bと発光部2との接続部分の外表面には、例えば、金や白金よりなる導電膜16が形成される。導電膜16は、絞込み部14b及び直管部15bの外表面、並びに、絞込み部14bに連接する側管部3bの一部及び直管部15bに連接する発光部2の一部の外表面に形成される。
さらに、陰極側の口金9bから、例えば、ニクロムよりなる直径0.5mmの1本の線状部材よりなる、陰極側の側管部3bに沿って伸びる同電位ワイヤ17が配設される。同電位ワイヤ17の一端は、例えば、口金9bに設けられた小孔に通して捩って固定することにより、陰極側の口金9bに電気的に接続される。陰極側の口金9bから導出された同電位ワイヤ17は、側管部3bの外表面を軸方向に沿って進み、陰極側の絞込み部14bに1重に巻回する環状の伝達部18が形成される。陰極側の絞込み部14bの外表面には導電膜16が形成されているので、伝達部18が導電膜16に接触することにより、導電膜16を陰極4に電気的に接続させて陰極と同電位にすることができる。
また、発光部2には、陰極側の側管部3bとの接続部分から最大膨出部に至るまでの範囲に、排気管残部19が形成される。キセノンランプの製造過程において、排気管が接続された発光部2と、陰極4又は陽極5を備えたリード棒6が支持された側管部3a、3bとよりなる放電容器10を形成した後に、排気管からキセノンガスが封入される。本発明のキセノンランプ1は図1に示すような封止構造をしているので、キセノンガスは保持用筒体7の隙間から側管部3a、3bの内部にまで流入し、リード棒6が段継部8に封着される箇所まで満たされる。そして、排気管を封止して切断し、その残部が排気管残部19となる。
また、図3に示すように、陽極側の側管部3aから発光部2にかけて伸びるトリガーワイヤ20が配設されている。トリガーワイヤ20の一端は、陽極側の口金9aに電気的に接続され、側管部3aの外表面を軸方向に沿って進み、陽極側の直管部15aに1重に巻回され、さらに、発光部2の外表面に沿って進み、発光部2の膨出部に1重に巻回する環状部21が形成される。環状部21は、発光部2の外表面において、発光部2の軸方向に対して、陽極5と陰極4との間、もしくは、陰極4にかかる位置に形成されるが、排気管残部19より陽極5側に形成される。排気管残部19の突出が、環状部21が陰極側の絞込み部14bの方にずれないように機能する。
キセノンランプ1は、発光部2の外表面にトリガーワイヤ20を配設することにより、点灯開始時のブレークダウン電圧を下げることができる。陽極5に高電圧が印加され、発光部2の外表面に形成された環状部21と発光部2内の陰極4との間で絶縁破壊が起こり、キセノンランプ1が点灯する。ブレークダウン電圧が下がることにより、点灯装置の電圧負担を低減し、点灯装置から印加する起動電圧のリーク、また、点灯装置の大型化やコスト上昇という問題を解消できる。
また、排気管残部19の突出によりトリガーワイヤ20が陰極4側にずれないように配設されているので、導電膜16と接しないように保つことができるため、トリガーワイヤ20による始動性補助の効果を損なうことがない。
なお、陰極側の口金9bの側面には、円状孔22が外周上に複数設けられ、また、陽極側の口金9aの側面には、楕円状孔23が外周上に複数設けられている。これらの円状孔22や楕円状孔23はキセノンランプ1の側管部3a、3bを冷却するために設けられている。したがって、円状孔22や楕円状孔23の形状は適宜選択することができる。
続いて、上記構成のキセノンランプについて、放電容器の発光空間に曝される表面に析出される結晶化が発生するか否か確認するために、2つの条件の測定対象を用意して点灯実験を行った。
ランプ4 キセノンランプ
ランプ1と同様の仕様のキセノンランプにおいて、陰極側の側管部と発光部との接続部分の外表面に導電膜が形成されていることのほか、同一の条件で製作されたキセノンランプ。
ランプ5 キセノンランプ
ランプ4と同様の仕様のキセノンランプにおいて、陰極側の側管部に沿って伸びる同電位ワイヤが配設されていることのほか、同一の条件で製作されたキセノンランプ。
ランプ4および5をランプ1乃至3の場合と同様の条件でそれぞれ点灯させ、放電容器の発光空間に曝される表面に結晶化したものが析出するか否か観測した。
ランプ4は、100時間点灯した時点で結晶化が発生した。
ランプ5は、500時間点灯しても結晶化が発生しなかった。
ランプ4とランプ5の実験結果より、陰極側の側管部と発光部との接続部分の外表面に単に導電膜を形成するだけでは足りず、導電膜を陰極と同電位にすることによって、放電容器の発光空間に曝される表面の結晶化発生を防止できることがわかった。結晶化の発生には石英ガラス中のアルカリ金属イオンが関与していると考えており、アルカリ金属イオンはガラスの外面と内面の電位差によって内面に移動すると考えられる。本実験で導電膜を陰極と同電位にして導電膜を接地することで、バルブ外面がプラスに帯電することを抑制でき、その結果バルブ内面と外面の電位差を小さくすることができアルカリ金属イオンがバルブ内表面に移動することを抑制できると考えられる。
続いて、導電膜の形成領域を種々に変更した場合に、放電容器の発光空間に曝される表面に析出される結晶化が発生するか否か確認するために、3つの条件の測定対象を用意して点灯実験を行った。
ランプ6 キセノンランプ
ランプ5と同様の仕様のキセノンランプにおいて、図4(a)に示すように、導電膜16の形成領域を、絞込み部14b及び絞込み部14bに連接する側管部3bの一部の外表面に変更していることのほか、同一の条件で製作されたキセノンランプ。なお、同電位ワイヤ17が配設されており、導電膜16は陰極と同電位としている。
ランプ7 キセノンランプ
ランプ6と同様の仕様のキセノンランプにおいて、図4(b)に示すように、導電膜16の形成領域を、絞込み部14b及び絞込み部14bに連接する側管部3bの一部の外表面に加えて、直管部15bの外表面にも拡張していることのほか、同一の条件で製作されたキセノンランプ。導電膜16の形成領域は、ランプ6の導電膜16の発光部側末端から、軸方向に4mm発光部側に拡張されている。
ランプ8 キセノンランプ
ランプ6と同様の仕様のキセノンランプにおいて、図4(c)に示すように、導電膜16の形成領域を、絞込み部14b及び絞込み部14bに連接する側管部3bの一部の外表面に加えて、直管部15b及び連接する発光部2の一部の外表面にも拡張していることのほか、同一の条件で製作されたキセノンランプ。導電膜16の形成領域は、ランプ6の導電膜16の発光部側末端から、軸方向に10mm発光部側に拡張されている。
ランプ6乃至8をランプ1乃至3の場合と同様の条件でそれぞれ点灯させ、放電容器の発光空間に曝される表面に結晶化したものが析出するか否か観測した。
ランプ6は、100時間点灯した時点で結晶化が発生した。
ランプ7は、500時間点灯しても結晶化が発生しなかった。
ランプ8は、500時間点灯しても結晶化が発生しなかった。
ランプ6乃至8の実験結果より、導電膜の形成領域は、ランプ6のように絞込み部の外表面だけでは結晶化抑制の効果がなく、ランプ7のように絞込み部に続く直管部の外表面、または、ランプ8のようにランプ7に加えて直管部に続く膨出部の外表面にも形成した場合に結晶化抑制の効果が奏されることがわかった。すなわち、陰極側の側管部と発光部との接続部分である絞込み部の外表面だけ導電膜を形成して陰極と同電位としても結晶化抑制の効果はなく、絞込み部に続く発光部の一部の外表面にも導電膜を形成して陰極と同電位にさせた場合に結晶化抑制の効果が奏されることがわかった。
なお、導電膜の形成領域を広げて、発光部の外表面を導電膜が大きく覆うように形成されると、発光空間から光を効率よく取り出すことができなくなる。したがって、導電膜の形成領域は配光角にかからないようにする必要がある。
キセノンランプの構成を示す断面図 箔シール構造を有する水銀ランプの構成を示す断面図 キセノンランプの外観を示す説明図 導電膜の形成領域を示すためのキセノンランプの一部説明図
符号の説明
1 キセノンランプ
2 発光部
3a、3b 側管部
4 陰極
5 陽極
6 リード棒
7 保持用筒体
8 段継部
9a、9b 口金
10 放電容器
14a、14b 絞込み部
15a、15b 直管部
16 導電膜
17 同電位ワイヤ
19 排気管残部
20 トリガーワイヤ

Claims (3)

  1. 酸化チタンを含有させた石英ガラスよりなり、発光部と前記発光部の両端に連続して伸びる側管部とを有する放電容器を備え、前記発光部の内部において陰極及び陽極が互いに対向して配置され、一端に前記陰極又は前記陽極を備えるリード棒が前記側管部の内部に設けられた段継部によって封着され、前記放電容器の内部にキセノンが封入されているキセノンランプにおいて、
    陰極側の前記側管部と前記発光部との接続部分は絞込み部となっており、前記絞込み部の外表面と前記絞込み部に続く発光部の外表面の一部とに導電膜が形成され、前記導電膜が陰極に電気的に接続されていることを特徴とするキセノンランプ。
  2. 前記発光部において、前記陰極側の側管部との接続部分から最大膨出部に至るまでの範囲に、排気管残部が形成され、前記排気管残部から陽極側の外表面に、陽極に電気的に接続されたトリガーワイヤが配設されていることを特徴とする請求項1に記載のキセノンランプ。
  3. 前記放電容器の両端に口金が取り付けられ、一方の口金と前記陰極とが導通し、前記一方の口金から導出された同電位ワイヤが前記導電膜に接触していることを特徴とする請求項1または2に記載のキセノンランプ。
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