以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されるものではない。
尚、本明細書において、「〜」とはその前後の数値または物理量を含む表現として用いるものとする。また、本明細書において「置換基」という表現を用いる場合、当該置換基の種類は特に限定されるものではなく、特に明記しない限りは分子量200までのものを意味するものとする。
〔ポリカーボネート樹脂組成物〕
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂と、平板状無機材料の表面を金属酸化物で表面被覆してなる顔料(以下、「パール顔料」と称することがある。)とを含むことを特徴とする。
[パール顔料]
パール顔料に用いられる平板状無機材料としては、塩基性炭酸鉛箔、オキシ塩化ビスマス、天然マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、ヒドロキシアパタイト、ハイドロカルマイト等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも安全性の観点から、天然マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク等が好ましく、更に平板状無機材料自体の着色が少ない観点から、鉄分の少ない合成マイカ、ガラスフレーク等がより好ましい。合成マイカの一例としては、特開平7−89713号公報に開示される嵩密度0.8〜2.0g/ml、陽イオン交換容量0.2ミリ当量/g以上、BET比表面積2〜8m2/g以上、ハンター白色度90%以上のフッ素マイカが挙げられる。
このような平板状無機材料の表面被覆に用いられる、金属酸化物としては、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニアなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、平板状無機材料を表面被覆する金属酸化物は、平板状無機材料の屈折率より大きい屈折率の金属酸化物が好ましく、そのような金属酸化物としては、チタニア、ジルコニアなどが挙げられる。即ち、パール顔料は、平板状無機材料を相対的に屈折率の高い金属酸化物で被覆した構成とすると、見る角度により干渉色が変化する、所謂フリップフロップ性を呈する。
中でも、金属酸化物自体に着色がない観点からチタニアが好ましく、樹脂組成物の光劣化を抑制する観点からルチル型のチタニアが特に好ましい。例えば、厚さ0.25μm、屈折率1.59のフッ素マイカを屈折率2.4のルチル型のチタニアで20〜40nm単層被覆すると、白色光沢のパール顔料が得られる。
このような白色光沢パール顔料の製造方法としては、例えば、前記平板状無機材料を希塩酸に分散し、加熱攪拌しながら四塩化チタン水溶液及び水酸化カリウム水溶液を添加し、加熱熟成後、冷却、濾過、水洗、乾燥、解砕、焼成、篩分けを経て製造する方法が挙げられる。
パール顔料は、金属酸化物の被覆層の厚さを種々調整することにより、様々な干渉色を発現させることができる。例えば、フッ素マイカをルチル型のチタニアで被覆する場合、厚さ20〜40nmでは銀色、厚さ40〜90nmでは金色、厚さ90〜110nmでは赤色、厚さ110〜120nmでは紫色、厚さ240〜250nmでは青色、厚さ260〜280nmでは緑色を示す。
また、平板状無機材料の表面に、屈折率の低い金属酸化物皮膜と屈折率の高い金属酸化物皮膜を交互に積層することによって、より強い干渉色を呈するものとすることもできる。
金属酸化物の中に、着色金属酸化物を含むことにより、パール顔料を着色することが可能である。例えば、酸化チタンと酸化鉄の混合酸化物で被覆された合成マイカは、金色光沢を示し、酸化鉄で被覆された合成マイカは、赤色、ブロンズ光等の光沢を示す。
ブロンズ光沢パール顔料の製造方法としては、例えば、前記平板状無機材料を希硫酸に分散し、加熱攪拌しながらチタン硫酸塩水溶液及び硫酸鉄水溶液を添加し、加熱熟成後、冷却し、水酸化ナトリウム水溶液を添加して水酸化鉄を析出させた後に、濾過、水洗、乾燥、解砕、焼成、篩分けを経て製造する方法が挙げられる。
また、金属酸化物被覆層の中に、紫外線吸収性金属酸化物を含むことにより、パール顔料に紫外線吸収性を付与することもできる。紫外線吸収性金属酸化物の金属元素としては、亜鉛、ジルコニウム、ランタン、セリウムが挙げられる。
本発明で用いるパール顔料の体積平均粒径は1〜300μmであることが好ましい。パール顔料の体積平均粒径が1μm未満では、反射率が低下しパール光沢が得られない場合がある。また、体積平均粒径が300μmを超えると、ポリカーボネート樹脂組成物の表面に凹凸が生じたり、ウエルドラインが発生したりする場合がある。また、パール顔料の体積平均粒径が小さいと、ポリカーボネート樹脂組成物の反射率が増加し、パール光沢が強くなり、被覆率が上昇するため、不透明度が増す傾向がある。逆に、パール顔料の体積平均粒径が大きいと、ポリカーボネート樹脂組成物の粒状感が強調される傾向がある一方、パール顔料を樹脂組成物に配合する際に、パール顔料が破砕されることがある。よって、求める意匠性に応じて1〜300μmの体積平均粒径の範囲において、用いるパール顔料の体積平均粒径を適宜選択すればよい。例えば、パール光沢を強調する意匠には、体積平均粒径2〜30μmのパール顔料が好ましく、ポリカーボネート樹脂組成物の下地色を生かし粒状感を強調する意匠には、体積平均粒径20〜200μmのパール顔料が好ましい。
また、本発明で用いるパール顔料は平均厚さが0.1〜30μmであることが好ましい。パール顔料の平均厚さが0.1μm未満では、光の波長に対しパール顔料の厚さが薄いため、光が干渉せずパール光沢が得られない可能性がある。パール顔料の平均厚さが30μmを超えると、ウェルドライン発生やこれを境とする左右の明度差等の品質欠点により樹脂組成物の外観が不良になることがある。なお、パール顔料粒子の平均厚さは、射出成形体の任意の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、20個の粒子の厚さを測定し、その平均によって求めることができる。
本発明において、パール顔料は1種を単独で用いてもよく、平板状無機材料の構成材料や大きさ、表面被覆層を形成する金属酸化物やその厚さの異なるものの2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、パール顔料の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.05〜5質量部であることがより好ましく、0.1〜1質量部であることが特に好ましい。パール顔料の含有量が0.01質量部未満では、必要な意匠性が得られず、50質量部を超えると機械的強度が低下する場合がある。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に配合されるパール顔料の添加時期、添加方法は特に限定されない。添加時期としては、例えば、ポリカーボネート樹脂と他の配合剤との混練途中などのポリカーボネート樹脂が溶融した状態;押出機等を用い、ペレット又は粉末などの固体状態のポリカーボネート樹脂とブレンド・混練する際などが挙げられる。添加方法としては、ポリカーボネート樹脂にパール顔料を直接混合又は混練する方法;パール顔料と少量のポリカーボネート樹脂又は他の樹脂等と添加剤を用いて作成した高濃度のマスターバッチとして添加する方法などが挙げられる。
[ポリカーボネート樹脂]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いるポリカーボネート樹脂は、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物(以下、「本発明のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含むものである。
該ポリカーボネート樹脂は例えば、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを、触媒の存在下で重縮合することにより得ることができる。
<ジヒドロキシ化合物>
本発明のジヒドロキシ化合物としては、下記式(1)、(2)及び(3)に代表されるような環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物類が挙げられる。
これらのジヒドロキシ化合物のなかでも、耐熱性を高めるという観点から、下記式(1)に代表される無水糖アルコール構造を有する化合物類、及び下記式(2)、(3)に代表されるスピログリコール構造を有する化合物類が好ましく、特にはこれらのなかでも下記式(1)及び下記式(2)に代表されるような複数の環構造を有するものが好ましい。
これらは得られるポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のジヒドロキシ化合物としては、中でも上記式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物が好ましく、該ジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、特に、植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、成形性、耐熱性、耐衝撃性、表面硬度、難燃性、熱滞留安定性カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、上記本発明のジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含んでいてもよい。
その他のジヒドロキシ化合物としては、構造の一部に下記式(5)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物を用いることができる。
ここで、構造の一部に上記式(5)で表される部位を有するその他のジヒドロキシ化合物としては、環状エーテル構造を有するものは含まない。より具体的には、オキシアルキレングリコール類、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物類が挙げられる。
前記のオキシアルキレングリコール類としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられる。
前記の側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物類としては、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等が挙げられる。
これらのその他のジヒドロキシ化合物のなかでも、入手のし易さ、取扱いの容易さ、重合時の反応性の高さ、得られるポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の色相の観点からは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましい。
更に、その他のジヒドロキシ化合物として炭素数2〜20の脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物も使用することができる。ここで、脂肪族炭化水素のなかには、直鎖脂肪族炭化水素、分岐脂肪族炭化水素、環状脂肪族炭化水素及びその複数を有する炭化水素が挙げられる。好ましくは、炭素数2〜20の直鎖又は環状脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物が用いられ、より好ましくは炭素数2〜12の直鎖又は環状脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物が用いられ、更に好ましくは炭素数2〜8の直鎖又は環状脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物が用いられる。
直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物として具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパン−sジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのなどのジヒドロキシ化合物が挙げられる。
脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物として具体的には、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のシクロヘキサンジメタノール類;トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール等が挙げられる。
更に、その他のジヒドロキシ化合物としては、芳香族ビスフェノール類が挙げられる。芳香族ビスフェノール類として具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。
これらのその他のジヒドロキシ化合物のうち、芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物を用いることが、得られるポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の耐光性の観点から好ましい。特に、その他のジヒドロキシ化合物としては、脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物のなかでも、直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物として、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましく、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物として、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
これらのその他のジヒドロキシ化合物を用いることにより、ポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の柔軟性の改善、耐熱性の向上、成形性の改善などの効果を得ることも可能であるが、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が多過ぎると、機械的物性の低下や、耐熱性の低下を招くことがあるため、本発明のポリカーボネート樹脂に含まれる全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する本発明のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、より更に好ましくは40モル%以上、特に好ましくは55モル%以上であって、好ましくは95モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは80モル%以下、より更に好ましくは70モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。
そして、その他のジヒドロキシ化合物のなかでも脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物を用いる場合は、本発明のポリカーボネート樹脂に含まれる全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合は、10モル%以上であることが好ましく、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、特に好ましくは40モル%以上であって、好ましくは60モル%以下、より好ましくは55モル%以下、特に好ましくは53モル%以下である。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物と他の樹脂との相溶性を高めるという観点、特に他のポリカーボネート樹脂との相溶性を高めるという観点から、本発明のポリカーボネート樹脂のジヒドロキシ化合物に由来する全構造単位が、本発明のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のみからなることが好ましい。この場合、本発明のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位との比率は、モル比率で本発明のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位40〜90モル%に対して、脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位60〜10モル%であることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂に用いるジヒドロキシ化合物は、還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、熱安定剤等の安定剤を含んでいても良く、特に本発明のジヒドロキシ化合物は、酸性下で変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。
塩基性安定剤としては、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における(以下、単に長周期型周期表と略記することがある。)1族又は2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩、脂肪酸塩や、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等アミン系化合物が挙げられる。
その中でも、その効果と後述する蒸留除去のしやすさから、ナトリウム又はカリウムのリン酸塩、亜リン酸塩が好ましく、中でもリン酸水素2ナトリウム、亜リン酸水素2ナトリウムが好ましい。
これら塩基性安定剤の、本発明のジヒドロキシ化合物中の含有量に特に制限はないが、少なすぎると本発明のジヒドロキシ化合物の変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎると本発明のジヒドロキシ化合物の変性を招く場合があるので、本発明のジヒドロキシ化合物に対して、通常0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上であり、通常1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下である。
また、これら塩基性安定剤を含有した本発明のジヒドロキシ化合物をポリカーボネート樹脂の製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度や品質の制御が困難になるだけでなく、初期色相に影響を与え、結果的に得られる成形品の耐光性に影響を及ぼすため、ポリカーボネート樹脂の製造原料として使用する前に塩基性安定剤をイオン交換樹脂や蒸留等で除去することが好ましい。
本発明のジヒドロキシ化合物がイソソルビドなど、環状エーテル構造を有する場合には、酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管や、製造時には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤等を用いたり、窒素雰囲気下で取り扱ったりすることが肝要である。イソソルビドが酸化されると、蟻酸等の分解物が発生する場合がある。例えば、これら分解物を含むイソソルビドをポリカーボネート樹脂の製造原料として使用すると、得られるポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の着色を招く可能性があり、また、物性を著しく劣化させる可能性があるだけではなく、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られない場合もある。
上記酸化分解物を含まない本発明のジヒドロキシ化合物を得るために、また、前述の塩基性安定剤を除去するためには、蒸留精製を行うことが好ましい。この場合の蒸留とは単蒸留であっても、連続蒸留であってもよく、特に限定されない。蒸留の条件としてはアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気において、減圧下で蒸留を実施することが好ましく、熱による変性を抑制するためには、通常250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下の条件で行う。
このような蒸留精製で、本発明のジヒドロキシ化合物中の蟻酸含有量を20質量ppm以下、好ましくは10質量ppm以下、特に好ましくは5質量ppm以下にすることにより、前記本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物をポリカーボネート樹脂の製造原料として使用した際に、重合反応性を損なうことなく色相や熱安定性に優れたポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の製造が可能となる。蟻酸含有量の測定はイオンクロマトグラフィーで行う。
<炭酸ジエステル>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、上述した本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。
用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(4)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(式(4)において、A1及びA2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である。)
A1及びA2の好ましいものは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であり、より好ましいものは無置換の芳香族炭化水素基である。尚、脂肪族炭化水素基の置換基としては、エステル基、エーテル基、カルボン酸、アミド基、ハロゲンが挙げられ、芳香族炭化水素基の置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が挙げられる。
上記式(4)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類が例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。
なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、これらの不純物は、重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の色相に影響を及ぼしたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
<エステル交換反応触媒>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂の製造方法は特に限定されるものではないが、代表例としては、環状エーテル構造を有する本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、上記式(4)で表される炭酸ジエステルとをエステル交換反応させてポリカーボネート樹脂を製造する方法が挙げられる。より詳細には、エステル交換反応触媒の存在下でエステル交換反応により重縮合を行い、エステル交換反応の際に副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去する方法が挙げられる。
用いられる触媒としては、製造されたポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度を満足させ得るものであれば、限定されないが、長周期型周期表における第1族又は第2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
また、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
1族金属化合物とは、例えば、リチウム、カリウム、セシウムのような、1族金属を含有する化合物のことである。より具体的には、1族金属化合物として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられ、中でもリチウム化合物が好ましい。
2族金属化合物とは、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムのような、2族金属を含有する化合物のことである。より具体的には、2族金属化合物として、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられ、中でもマグネシウム化合物、カルシウム化合物、バリウム化合物が好ましく、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の色相の観点から、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が更に好ましく、最も好ましくはカルシウム化合物である。
塩基性ホウ酸化合物としては、例えば、テトラメチルホウ酸、テトラエチルホウ酸、テトラプロピルホウ酸、テトラブチルホウ酸、トリメチルエチルホウ酸、トリメチルベンジルホウ酸、トリメチルフェニルホウ酸、トリエチルメチルホウ酸、トリエチルベンジルホウ酸、トリエチルフェニルホウ酸、トリブチルベンジルホウ酸、トリブチルフェニルホウ酸、テトラフェニルホウ酸、ベンジルトリフェニルホウ酸、メチルトリフェニルホウ酸、ブチルトリフェニルホウ酸等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
上記重合触媒の使用量は、通常、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり通常0.1μmol以上、好ましくは0.5μmol以上であり、通常300μmol以下、好ましくは100μmol以下である。中でも、重合触媒としてリチウム及び長周期型周期表における2族の金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物を用いる場合は、金属換算量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、通常0.1μmol以上、好ましくは0.5μmol以上、特に好ましくは0.7μmol以上とする。また、その上限としては、通常20μmol、好ましくは10μmol、さらに好ましくは3μmol、特に好ましくは1.5μmol、中でも1.0μmolが好適である。
重合触媒の使用量が少なすぎると、重合速度が遅くなるため結果的に所望の分子量のポリカーボネート樹脂を得ようとすると、重合温度を高くせざるを得なくなり、得られたポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の色相や耐光性に影響を与えたり、未反応の原料が重合途中で揮発して本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と前記式(4)で表される炭酸ジエステルのモル比率が崩れたり、所望の分子量に到達しなかったりする可能性がある。一方、重合触媒の使用量が多すぎると、得られるポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の色相に影響を与え、ポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の耐光性に影響を及ぼす可能性がある。
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
以下、本発明のポリカーボネート樹脂を製造する方法について詳述する。
本発明のポリカーボネート樹脂は、例えば、本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と前記式(4)で表される炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合させることによって得られるが、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合することが好ましい。
混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上であり、その上限は通常250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、特に好ましくは120℃以下である。混合の温度が低すぎると溶解速度が遅かったり、溶解度が不足したりする可能性があり、しばしば固化等で運転に影響を及ぼす可能性がある。混合の温度が高すぎるとジヒドロキシ化合物の熱劣化を招く場合があり、結果的に得られるポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の色相が変化し、耐光性に悪影響を及ぼす可能性がある。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂の原料である本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と前記式(4)で表される炭酸ジエステルとを混合する操作は、酸素濃度が通常0.0001体積%以上であり、通常10体積%以下、好ましくは5体積%以下、より好ましくは1体積%以下の雰囲気下で行うことが、色相への影響の観点から好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂を得るためには、前記式(4)で表される炭酸ジエステルは、本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物に対して、通常0.90以上、好ましくは0.95以上のモル比率で用いることが好ましく、通常1.20以下、好ましくは1.10以下のモル比率で用いることが好ましい。
このモル比率が小さくなると、製造されたポリカーボネート樹脂の末端水酸基が増加して、ポリマーの熱安定性に影響を与え、成形時に着色を招いたり、エステル交換反応の速度が低下したり、所望する高分子量体が得られ難い可能性がある。
また、このモル比率が大きくなると、エステル交換反応の速度が低下したり、所望とする分子量のポリカーボネートの製造が困難となる場合がある。エステル交換反応速度の低下は、重合反応時の熱履歴を増大させ、結果的に得られたポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の色相や耐光性に影響を及ぼす可能性がある。
更には、本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物に対して、前記式(4)で表される炭酸ジエステルのモル比率が増大すると、得られるポリカーボネート樹脂中の残存炭酸ジエステル量が増加し、これらが紫外線を吸収してポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の耐光性に影響を及ぼす可能性がある。なお、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に残存する炭酸ジエステルの濃度は、通常200質量ppm以下、好ましくは100質量ppm以下であるが、後述のように、色相の観点から60質量ppm以下であることが好ましく、中でも30質量ppm以下が好適である。現実的にポリカーボネート樹脂組成物は未反応の炭酸ジエステルを含むことがあり、炭酸ジエステル濃度の下限値は通常1質量ppmである。
本発明において、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを重縮合させる方法は、上述の触媒存在下、通常、複数の反応器を用いて多段階で実施される。反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ましいが、各分子量段階でのジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが色相や耐光性の観点から重要である。例えば、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりして、結果的に本発明の目的を達成することができない可能性がある。
更には、留出するモノマーの量を抑制するために、重合反応器に還流冷却器を用いることは有効であり、特に未反応モノマー成分が多い重合初期の反応器でその効果は大きい。還流冷却器に導入される冷媒の温度は使用するモノマーに応じて適宜選択することができるが、通常、還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において通常45℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、通常180℃以下、より好ましくは150℃以下、特に好ましくは130℃以下である。還流冷却器に導入される冷媒の温度が高すぎると還流量が減り、その効果が低下し、低すぎると、本来留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
重合速度を適切に維持し、モノマーの留出を抑制しながら、最終的なポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の色相や熱安定性、耐光性等を損なわないようにするためには、前述の触媒の種類と量の選定が重要である。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、触媒を用いて、複数の反応器を用いて多段階で重合させて製造することが好ましいが、重合を複数の反応器で実施する理由は、重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制してやることが重要であり、重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。
本発明の方法で使用される反応器は、上述の通り、少なくとも2つ以上であればよいが、生産効率などの観点からは、好ましくは3つ以上、より好ましくは3〜5つ、特に好ましくは4つである。
本発明において、反応器が2つ以上であれば、その反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数持たせる、連続的に温度・圧力を変えていく、などしてもよい。
本発明において、重合触媒は原料調製槽、原料貯槽に混合することもできるし、重合槽に直接混合することもできるが、供給の安定性、重合の制御の観点からは、重合槽に供給される前の原料ラインの途中に触媒供給ラインを設置し、好ましくは水溶液で供給する。
重合反応の温度は、低すぎると生産性の低下や製品への熱履歴の増大を招き、高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、ポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の分解や着色を助長する可能性がある。
具体的には、第1段目の反応は、重合反応器の内温の最高温度として、通常140℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上で、通常270℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下であり、通常1kPa以上、好ましくは5kPa以上、より好ましくは10kPa以上で、通常110kPa以下、好ましくは70kPa以下、より好ましくは30kPa以下(絶対圧力)の圧力下、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上で、通常10時間以下、好ましくは3時間以下の時間、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。
第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力(絶対圧力)を200Pa以下にして、内温の最高温度を通常210℃以上、好ましくは220℃以上で、通常270℃以下、好ましくは250℃以下であり、通常0.1時間以上、好ましくは、0.5時間以上、より好ましくは1時間以上で、通常10時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは3時間以下行う。
色相や耐光性の良好なポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物を得るには、全反応段階における内温の最高温度が250℃未満、特に225℃〜245℃であることが好ましい。また、重合反応後半の重合速度の低下を抑止し、熱履歴による劣化を最小限に抑えるためには、重合の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
副生したモノヒドロキシ化合物は、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行った後、炭酸ジフェニルやビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、上述の通り重縮合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。
ペレット化の方法は限定されるものではないが、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終重合反応器から溶融状態で一軸又は二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸又は二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
その際、押出機中で、残存モノマーの減圧脱揮や、通常知られている、熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤等を混合、混練することも出来る。
押出機中の、溶融混練温度は、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度や分子量に依存するが、通常150℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、通常300℃以下、好ましくは270℃以下、より好ましくは260℃以下である。溶融混練温度が150℃より低いと、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。溶融混練温度が300℃より高いと、ポリカーボネートの熱劣化が激しくなり、分子量の低下による機械的強度の低下や着色、ガスの発生を招く。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂を製造する際には、異物の混入を防止するため、フィルターを設置することが望ましい。フィルターの設置位置は押出機の下流側が好ましく、フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、99%除去の濾過精度として通常100μm以下が好ましい。特に、フィルム用途等で微少な異物の混入を嫌う場合は、フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、40μm以下が好ましく、さらには10μm以下が好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂の押出は、押出後の異物混入を防止するために、好ましくはJISB 9920(2002年)に定義されるクラス7、更に好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルーム中で実施することが望ましい。
また、押出されたポリカーボネート樹脂を冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが望ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10μm〜0.45μmであることが好ましい。
<ポリカーボネート樹脂の物性>
上述のポリカーボネート樹脂の製造方法で得られる本発明のポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、本発明で用いるポリカーボネート樹脂の還元粘度は、通常0.30dL/g以上であり、0.35dL/g以上が好ましく、一方、通常1.20dL/g以下であり、1.00dL/g以下が好ましく、0.80dL/g以下がより好ましい。ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると得られる成形品の機械的強度が小さい可能性があり、高すぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。
尚、ポリカーボネート樹脂の還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート樹脂濃度を0.6g/dLに精密に調整し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定する。
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の光反射率を高めるため、ポリカーボネート樹脂そのものの透明性が優れることが好ましく、ポリカーボネート樹脂組成物が耐光性に優れたものとするためには、ポリカーボネート樹脂そのものにおいても耐光性が優れることが好ましい。太陽光線や人工照明などによる着色は、ポリカーボネート樹脂の特定の波長の光に対する吸収によるものと考えられる。
上記の観点から、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、該ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長350nmにおける光線透過率が60%以上であるのが好ましく、より好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上である。該波長における光線透過率が60%を下回ると、吸収が大きくなり、耐光性が悪化する場合がある。
更に、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、該ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長320nmにおける光線透過率が、30%以上であることが好ましく、40%以上が更に好ましく、50%以上が特に好ましい。該波長における光線透過率が30%を下回ると、耐光性が悪化する傾向にある。
また、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、該ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)を、63℃、相対湿度50%の環境下にて、メタルハライドランプを用い、波長300nm〜400nmの放射照度1.5kW/m2で、100時間照射処理した後に、透過光で測定したASTM D1925−70に準拠したイエローインデックス(YI)値が12以下であるのが好ましく、この値はより好ましくは10以下、特に好ましくは8以下である。
尚、本発明におけるメタルハライドランプを用いた照射処理については、後述するが、特定の装置で、特定のフィルターなどを用い、主として300nm〜400nmの波長の光を(この波長範囲以外の波長の光はできるだけ取り除き)、放射照度1.5kW/m2で、試料に100時間照射することをいう。
また、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、該ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)を、前記のようなメタルハライドランプでの照射処理等を行わずに、透過光で測定したイエローインデックス値(以下、初期のイエローインデックス値、「初期のYI値」と言う)が、通常10以下、好ましくは7以下、特に好ましくは5以下であり、前記のメタルハライドランプ照射前後でのイエローインデックス値との差の絶対値が6以下であるのが好ましく、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。ポリカーボネート樹脂の初期のYI値が10を超えると、耐光性が悪化する傾向がある。
更には、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、該ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)を透過光で測定した国際照明委員会(CIE)で規定されたL*値が通常96.3以上、好ましくは96.6以上、好適には96.8以上である。L*値が96.3を下回った場合には、耐光性が悪化する傾向がある。
更に、本発明で用いるポリカーボネート樹脂中の下記式(6)で表される末端基の濃度の下限量は、通常20μeq/g、好ましくは40μeq/g、特に好ましくは50μeq/gであり、上限は通常160μeq/g、好ましくは140μeq/g、特に好ましくは100μeq/gである。下記式(6)で表される末端基の濃度が、高すぎると重合直後や成形時の色相が良好であっても、紫外線曝露後の色相の悪化を招く可能性があり、逆に低すぎると熱安定性が低下する恐れがある。下記式(6)で表される末端基の濃度を制御するには、ポリカーボネート樹脂の製造時において、原料である本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と前記式(4)で表される炭酸ジエステルのモル比率を制御する他、エステル交換反応時の触媒の種類や量、重合圧力や重合温度を制御する方法などが挙げられる。
また、ポリカーボネート樹脂の製造にあたり、前記式(4)で表される炭酸ジエステルとして、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネートなどの置換ジフェニルカーボネートを用いると、反応中にフェノール、置換フェノールが副生し、ポリカーボネート樹脂中に残存することは避けられないが、フェノール、置換フェノールも芳香環を有することから紫外線を吸収し、耐光性の悪化要因になる場合があるだけでなく、成形時の臭気の原因となる場合がある。ポリカーボネート樹脂中には、通常のバッチ反応後は1000質量ppm以上の副生フェノールなどの芳香環を有する芳香族モノヒドロキシ化合物が含まれているが、耐光性や臭気低減の観点からは、脱揮性能に優れた横型反応器や真空ベント付の押出機を用いて、これら芳香族モノヒドロキシ化合物のポリカーボネート樹脂中の含有量は好ましくは700質量ppm以下、更に好ましくは500質量ppm以下、特には300質量ppm以下にすることが好ましい。ただし、芳香族モノヒドロキシ化合物を工業的に完全に除去することは困難であり、ポリカーボネート樹脂中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量の下限は通常1質量ppmである。尚、これら芳香族モノヒドロキシ化合物は、用いる原料により、当然置換基を有していてもよく、例えば、炭素数が5以下であるアルキル基などを有していてもよい。
また、本発明で用いるポリカーボネート樹脂中の芳香環に結合した水素原子のモル数を(X)、芳香環以外に結合した水素原子のモル数を(Y)とした場合、芳香環に結合した水素原子のモル数の全水素原子のモル数に対する比率は、X/(X+Y)で表されるが、耐光性には上述のように、紫外線吸収能を有する芳香族環が影響を及ぼす可能性があるため、X/(X+Y)は0.1以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05以下、特に好ましくは0.02以下、とりわけ好ましくは0.01以下である。X/(X+Y)は、1H−NMRで定量することができる。
また、本発明で用いるポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は75℃以上、105℃以下であることが好ましく、80℃以上、105℃以下であることがより好ましく、85℃以上、105℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移温度がかかる範囲内のポリカーボネート樹脂を用いることで、優れた耐熱性を有する成形品を提供することができる。
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上述のような本発明のポリカーボネート樹脂とパール顔料とを含むものである。
本発明のポリカーボネート樹脂には、種々の成形を行う前に、必要に応じて、着色剤、熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤などの添加剤を、タンブラー、スーパーミキサー、フローター、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、押出機などで添加混合することもできる。
以下に本発明のポリカーボネート樹脂組成物に配合可能な他の成分を挙げる。ただし、以下に挙げる成分は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に配合可能なものの代表例であり、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に以下に挙げるもの以外の成分を配合することを妨げるものではない。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に配合される各種の成分の添加時期、添加方法は特に限定されない。添加時期としては、例えば、エステル交換法でポリカーボネート樹脂を製造した場合は重合反応終了時;さらに、重合法に関わらず、ポリカーボネート樹脂と他の配合剤との混練途中などのポリカーボネート樹脂が溶融した状態;押出機等を用い、ペレット又は粉末などの固体状態のポリカーボネート樹脂とブレンド・混練する際などが挙げられる。添加方法としては、ポリカーボネート樹脂に添加剤を直接混合又は混練する方法;少量のポリカーボネート樹脂又は他の樹脂等と添加剤を用いて作成した高濃度のマスターバッチとして添加する方法などが挙げられる。
<着色剤>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、ベース着色を行う場合、着色剤を配合することができる。
前記着色剤としては、ポリカーボネート樹脂組成物を着色できるものであれば特に制限されないが、成形加工時にポリカーボネート樹脂を劣化させ、分子量低下等の不具合を起こさせない染料及び/又は顔料を好適に使用でき、具体的には、無機顔料、有機顔料、染料などが挙げられる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を黒色に着色する場合は、パール顔料の光輝性を強調する観点から、JIS K7105に準拠してL*値が25以下になるように着色剤を配合することが好ましい。即ち、可視光領域において光学反射率が一定以下に低くなるよう各種着色剤を適宜含有させる。より具体的には、400nm以上800nm以下の波長領域において、最大反射率を低くするように複数の着色剤を選択し、それぞれの使用量を適宜決定して併用する。又、カーボンブラックを使用する方法も好ましい。
黒色以外に着色する場合は、後述の無機顔料、有機顔料、有機染料を適宜選択して用いることができる。
無機顔料として例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、スピネルグリーン、クロム酸鉛系顔料、カドミウム系顔料、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等が挙げられる。
有機顔料として例えば、アゾレーキ顔料、ベンゾイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ系顔料などのアゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
染料として例えば、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン/ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン/インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン/オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料、ピラゾロン染料、ペリノン染料、キノフタロン染料等が挙げられる。
着色剤は、その種類が多すぎたり、着色剤の量が多すぎたりすると、着色剤による光の反射や散乱の影響が大きくなり、ポリカーボネート樹脂組成物の鮮映性が低下する場合がある。したがって、ポリカーボネート樹脂組成物の鮮映性を高めるためには使用する着色剤の種類と量が少ない方が好ましい。本発明のポリカーボネート樹脂組成物が着色剤を含む場合、高い鮮映性を得るために、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれる着色剤の合計量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.00001質量部以上3質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上であり、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
<酸化防止剤>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤を配合することができ、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して酸化防止剤を0.0001質量部以上含有することが好ましく、0.001質量部以上含有することがより好ましく、0.01質量部以上含有することが更にこのましい。一方、3質量部以下含有することが好ましく、2質量部以下含有することがより好ましく、1質量部以下含有することが更に好ましい。
ポリカーボネート樹脂組成物の酸化防止剤の含有量が過度に少ないと、成形時の着色抑制効果が不十分になることがある。また、酸化防止剤の含有量が過度に多いと、射出成形時における金型への付着物が多くなったり、押出成形によりフィルムを成形する際にロールへの付着物が多くなったりすることにより、製品の表面外観に影響が生じる可能性がある
酸化防止剤としては、酸化安定性、熱安定性、鮮鋭性等の観点から、ホスファイト系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、フェノール系酸化防止剤及び/又はホスファイト系酸化防止剤が更に好ましい。また、これらの酸化防止剤の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(ホスファイト系酸化防止剤)
ホスファイト系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
これらの中でも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく使用される。これらの化合物は、1種又は2種以上を併用することができる。
ここで、ホスファイト系酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.0001質量部以上、好ましくは0.0002質量部以上であり、通常1質量部以下、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.01質量部以下である。前記含有量が過度に少ないと、成形時の着色抑制効果が不十分になることがある。また、前記含有量が過度に多いと、射出成形時における金型への付着物が多くなったり、押出成形によりフィルムを成形する際にロールへの付着物が多くなったりすることにより、製品の表面外観に影響が生じる可能性がある。
(フェノール系酸化防止剤)
フェノール系酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の化合物が挙げられる。
これらの化合物の中でも、炭素数5以上のアルキル基によって1つ以上置換された芳香族モノヒドロキシ化合物が好ましく、具体的には、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が好ましく、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが更に好ましい。
ここで、フェノール系酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.0001質量部以上、好ましくは0.0002質量部以上であり、通常1質量部以下、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.01質量部以下である。前記含有量が過度に少ないと、成形時の着色抑制効果が不十分になることがある。また、前記含有量が過度に多いと、射出成形時における金型への付着物が多くなったり、押出成形によりフィルムを成形する際にロールへの付着物が多くなったりすることにより、製品の表面外観に影響が生じる可能性がある。
(イオウ系酸化防止剤)
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)などを挙げることができる。上記のうち、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましい。
ここで、イオウ系酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.0001質量部以上、好ましくは0.0002質量部以上であり、通常1質量部以下、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.01質量部以下である。前記含有量が過度に少ないと、成形時の着色抑制効果が不十分になることがある。また、前記含有量が過度に多いと、射出成形時における金型への付着物が多くなったり、押出成形によりフィルムを成形する際にロールへの付着物が多くなったりすることにより、製品の表面外観が損なわれるおそれがある。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物はホスファイト系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤をそれぞれ単独で含有してもよいが、双方含有することで、成形時の着色抑制に多大な効果を発揮する可能性があるのでより好ましい。
<離型剤>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、離型剤を配合することができる。本発明のポリカーボネート樹脂組成物においては、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して離型剤を0.001質量部以上含有することが好ましく、0.005質量部以上含有することがより好ましく、0.01質量以上含有することが更に好ましい。一方、2質量部以下含有することが好ましく、1質量部位か含有することがより好ましく、0.5質量部以下含有することがさらに好ましい。
離型剤の含有量がこの範囲内にあれば、成形時に成形品が金型から離型しやすくなり、成形品が取得しやすいという利点があるが、離型剤の含有量が少なすぎると成形品が金型から離型しにくくなり作業性に問題を生じる。一方、離型剤の含有量が過度に多いと成形時に金型付着物が増える場合があり、大量に成形を実施した場合には金型の清掃に労力を要する可能性があり、また、成形品は外観不良をきたす可能性がある。
離型剤としては、特に限定されないが、ステアリン酸エステル、高級脂肪酸などが挙げられ、離型性と透明性の観点から、離型剤としてより好ましいのはステアリン酸エステルである。
ステアリン酸エステルとしては、置換又は無置換の炭素数1〜20の一価又は多価アルコールとステアリン酸との部分エステル又は全エステルが好ましい。かかる一価又は多価アルコールとステアリン酸との部分エステル又は全エステルとしては、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、ブチルステアレート、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレートなどがより好ましい。なかでも、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリルステアレートが更に好ましく、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸モノグリセリドが特に好ましい。
高級脂肪酸としては、置換又は無置換の炭素数10〜30の飽和脂肪酸が好ましく、無置換の炭素数10〜30の飽和脂肪酸がより好ましい。このような高級脂肪酸としてミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。また、炭素数16〜18の飽和脂肪酸が更に好ましく、このような飽和脂肪酸としてパルミチン酸、ステアリン酸などが挙げられるが、ステアリン酸が特に好ましい。
これらの離型剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
<耐光安定剤>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、耐光安定剤を配合することができ、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して耐光安定剤を0.0001質量部以上5質量部以下含有することが好ましい。
本発明で用いる耐光安定剤としては、好ましくは紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。これらは単独で用いても良いが、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤とを併用すると耐光性が一層向上するためより好ましい。
(紫外線吸収剤)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、着色剤の光退色を抑制するために、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、紫外線吸収剤を0.005質量部以上5質量部以下含有することが好ましい。紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上が更に好ましい。一方、3質量部以下が好ましく、1質量部以下が更に好ましい。紫外線吸収剤の含有量が少なすぎると紫外線吸収剤を含有することによる耐候性向上の効果が低くなり、多すぎると紫外線吸収剤のブリードアウトによる外観不良が生ずるおそれがある。
好ましい紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、サリチル酸フェニルエステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、マロン酸エステル系化合物、シュウ酸アニリド系化合物などが挙げられる。なかでも、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、マロン酸エステル系化合物が好ましく用いられる。
これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(ヒンダードアミン系光安定剤)
本発明のポリカーボネート樹脂中のヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.005質量部以上3質量部以下であり、好ましくは、0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上で、一方、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
本発明においては、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤とを併用すると耐光性が一層向上するためより好ましい。この場合は、ヒンダードアミン系光安定剤の使用量に応じて、紫外線吸収剤の使用量を減じることができる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
<その他の任意成分>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、前記の各成分以外に、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ、ブルーイング剤、蛍光増白剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤等の添加剤;熱劣化抑制剤としての酸性化合物;及び本発明で使用するポリカーボネート樹脂以外の樹脂成分、耐衝撃改良剤等を適宜含有させることができる。これらは単独で用いても良く、複数を併用して用いても良い。
(ブルーイング剤)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、重合体や紫外線吸収剤に基づくレンズの黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。これらのブルーイング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらブルーイング剤は、通常、ポリカーボネート樹脂組成物全体に対して、1×10−6〜1×10−2質量%の割合で配合される。
ブルーイング剤としては、従来、ポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
(蛍光増白剤)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物においては、良好な色相を得ること及び光反射率や耐光性を高める目的で、本発明の効果を損ねない範囲で従来公知の任意の蛍光増白剤を含有することができる。本発明に使用される蛍光増白剤は、成形品を明るく見せるため、成形品に加えれられる顔料あるいは染料であり、成形品の黄色味を消し、明るさを増加させる添加剤であるが、ブルーイング剤が黄色光を除去するのに対して、蛍光増白剤は紫外線を吸収し、そのエネルギーを可視部青紫色の光線に変えて放射する点で異なっている。
本発明においては、ポリカーボネート樹脂組成物中に前記蛍光増白剤を1〜1000質量ppm含有することが好ましい。上記含有量の上限を越えても、含有量の増加に見合う増白効果の向上が期待できないばかりか、滞留熱安定性や外観が低下する場合がある。
蛍光増白剤としては、クマリン系、ナフトトリアゾリルスチルベン系、ベンズオキサゾール系、ベンズイミダゾール系、及びジアミノスチルベン−ジスルホネート系等 蛍光増白剤としては、ベンゾオキサゾール系、クマリン系、ナフトトリアゾリルスチルベン系、ベンズイミダゾール系、及びジアミノスチルベン−ジスルホネート系の蛍光増白剤が挙げられる。本発明の樹脂組成物において、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(充填剤)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には本発明の目的を損なわない範囲で充填剤を配合することができる。本発明のポリカーボネート樹脂組成物に配合することのできる充填剤としては無機充填剤及び有機充填剤が挙げられる。
充填剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂組成物全体に対し、0質量%以上60質量%以下である。充填剤の配合量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。充填剤を配合することによりポリカーボネート樹脂組成物の補強効果が得られるが、充填剤の配合量が過度に多いと得られる成形品の外観が悪くなる傾向がある。
無機充填剤としては、ガラス、シリカ、アルミナ、石膏等が挙げられるが、ガラス繊維、石膏ウィスカー、各種ウィスカー等の繊維状無機充填剤;ガラスフレーク、タルク、グラファイト等のフレーク状無機充填剤を用いると形状効果を発揮しより好ましい。前記無機充填剤は1種のみで用いることもできるが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これら無機充填剤は、本発明のポリカーボネート樹脂との密着性を向上させるために、アミノシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤等による表面処理、あるいは取扱い性を向上させるために、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等による表面処理を施して使用してもよい。
有機充填剤としては、例えば、木粉、竹粉、ヤシ澱粉、コルク粉、パルプ粉などの粉末状有機充填剤;架橋ポリエステル、ポリスチレン、スチレン・アクリル共重合体、尿素樹脂などのバルン状・球状有機充填剤;合成繊維、天然繊維などの繊維状有機充填剤が挙げられる。これら有機充填剤は、ポリカーボネート樹脂との親和性を増すために、例えばエポキシ処理、ウレタン処理、酸化処理などの表面処理が施されてもよい。
(帯電防止剤)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物においては、本発明の目的を損なわない範囲で帯電防止剤を含有することができる。本発明のポリカーボネート樹脂組成物に帯電防止剤を配合する場合、帯電防止剤の含有量はポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.001〜5質量部が好ましい。帯電防止剤の含有量が上記下限より少ないと帯電防止効果が得られず、上記上限より多いと耐加水分解性や熱安定性が悪化することがあり好ましくない。
帯電防止剤としては、具体的には、アルキル基、アルキルベンゼン基及びポリオキシアルキレン基等を有するスルホン酸塩、リン酸塩等のアニオン系、4級アンモニウム塩及びイミダゾリン等に代表されるカチオン系、ベタイン等の両性系、脂肪酸エステル化合物、スルホン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、ヒドロキシアルキルアミン化合物、アルキルアミン化合物及びポリオキシアルキレン化合物等に代表される非イオン系が挙げられるが、ポリカーボネート樹脂の耐加水分解性維持の観点からは、分子構造中にポリオキシエチレン鎖を有するアニオン系又は非イオン系、中でも分子構造中にポリオキシエチレン鎖を有する非イオン系が好ましく、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類がさらに好ましい。
これらの帯電防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(難燃剤)
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、難燃剤を含有することができる。
この場合、難燃剤の配合量は、難燃剤の種類や要求される難燃性の程度に応じて選択されるが、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、難燃剤が通常0.01質量部以上、好ましくは0.02質量部以上であり、通常30質量部以下、好ましくは25質量部以下の範囲である。難燃剤を配合することにより、難燃性に優れたポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
難燃剤としては、例えば、燐含有化合物系難燃剤、ハロゲン含有化合物系難燃剤、スルホン酸金属塩系難燃剤、珪素含有化合物系難燃剤等が挙げられる。難燃剤としては、これらの群より選ばれた少なくとも1種を使用することができる。これらは2種以上組み合わせて用いてもよい。
(その他の樹脂)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、成形加工性や諸物性のさらなる向上・調整を目的として、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂(以下、単に「その他の樹脂」と称することがある。)を使用することも出来る。
その他の樹脂を用いる場合、その配合量としては、本発明で用いるポリカーボネート樹脂組成物全体に対して、0質量%以上、30質量%以下とすることが好ましい。
その他の樹脂の具体例としては、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレートなどの樹脂やコア−シェル型、グラフト型又は線状のランダム及びブロック共重合体のようなゴム状改質剤などが挙げられる。中でも、高い発色性と鮮映性を維持するために、本発明のポリカーボネート樹脂と完全な相溶性を有する樹脂が好ましく、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含まない各種のポリカーボネート樹脂が好ましい。特に前記各種のポリカーボネート樹脂の中でも、本発明のポリカーボネート樹脂と屈折率が近いものが好ましい。
[ポリカーボネート樹脂組成物の物性]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、このポリカーボネート樹脂組成物についてJIS K7210に準拠して測定したメルトフローレートと、ポリカーボネート樹脂組成物の製造に用いたポリカーボネート樹脂のメルトフローレートとの比(以下、この比を「着色前後のMFR比」と称す場合がある。)が0.90以上1.20以下であることが好ましい。着色前後のMFR比が0.90未満では顔料の添加によりポリカーボネート樹脂組成物の流動性が低下したことを示し、1.20を超えるとポリカーボネート樹脂組成物を構成するポリカーボネート樹脂が劣化したことを示す。特に、この着色前後のMFR比は0.95〜1.10であることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、このポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ3mmの射出成形板に、波長300nm〜400nmの放射照度1.5kw/m2の光を100時間照射する前後において、JIS K7105に従って測定した色差ΔEが10以下であることが好ましい。このΔEが10を超えると、耐光性が十分でなく、ポリカーボネート樹脂組成物の彩度が急激に低下する可能性がある。ΔEの値は、より好ましくは7以下であり、特に好ましくは5以下である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、リチウム及び長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む化合物が含まれる。ポリカーボネート樹脂組成物中のこれらの金属の合計の含有量は、ポリカーボネート樹脂組成物の耐光性や色調を高める観点から、金属換算量として、20質量ppm以下であり、好ましくは15質量ppm以下、より好ましくは12質量ppm以下である。一方、前記金属は本発明のポリカーボネート樹脂の重縮合に用いる触媒に由来してポリカーボネート樹脂に含まれるため、前記金属の含有量は、通常0.1質量ppm以上である。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれる長周期型周期表第2族の金属とは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムを指す。これらの長周期型周期表第2族の金属の中でも、ポリカーボネート樹脂組成物にマグネシウム又はカルシウムが含まれていることが好ましく、カルシウムが含まれていることがより好ましい。
また、長周期型周期表第1族金属、中でもリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、特にはナトリウム、カリウム、セシウムは、ポリカーボネート樹脂組成物中に多く含まれると色相に影響を及ぼす可能性があり、該金属は使用する触媒からのみではなく、原料や反応装置から混入する場合があるため、ポリカーボネート樹脂組成物中のこれらの金属の合計の含有量は、金属換算量として、通常1質量%以下、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下とする。
ポリカーボネート樹脂組成物中の金属量は、湿式灰化などの方法でポリカーボネート樹脂組成物中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、Inductively Coupled Plasma(ICP)等の方法を使用して測定することが出来る。
また、ポリカーボネート樹脂組成物中には、原料あるいは重縮合反応生成物に由来する芳香族モノヒドロキシ化合物が含まれ、該化合物の含有量は、好ましくは700質量ppm以下、更に好ましくは500質量ppm以下、特には300質量ppm以下であることが好ましい。ただし、芳香族モノヒドロキシ化合物を工業的に完全に除去することは困難であり、ポリカーボネート樹脂組成物中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量の下限は通常1質量ppmである。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、色相の観点から前記式(4)で表される炭酸ジエステルの含有量は60質量ppm以下であることが好ましく、中でも30質量ppm以下がより好ましい。前記式(4)で表される炭酸ジエステルは主としてポリカーボネート樹脂の原料に由来するものであり、その含有量の下限値は通常1質量ppmである。
〔ポリカーボネート樹脂成形品〕
本発明のポリカーボネート樹脂成形品は、上述した本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形することにより得られる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物から樹脂成形品を製造する方法は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂について一般に採用されている成形法、すなわち一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシストなどの中空成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法等を採用することができる。また、ホットランナー方式を用いた成形法を選択することもできる。中でも、成形品形状の自由度の観点から射出成形法が好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂成形品の成形方法としては、ポリカーボネート樹脂、金属顔料及び必要に応じてその他の樹脂や添加剤などの原料を直接混合してポリカーボネート樹脂組成物とし、これを押出機或いは射出成形機に投入して成形する方法、又は、該原料を、二軸押出機を用いて溶融混合し、ストランド形状に押出してペレットを作製した後、このペレットを押出機或いは射出成形機に投入して成形する方法を挙げることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
以下において、各種の評価は次の方法により行った。
1)メルトレートフロー(MFR)の測定
JIS K7210に準拠しポリカーボネート樹脂毎に以下の条件で測定した。
<ポリカーボネート樹脂ISB−PCの測定条件>
MFR測定前に、100℃で6時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥を行った後、温度240℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
<ポリカーボネート樹脂7022A−NP2及びS−30000FNの測定条件>
MFR測定前に、120℃で6時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥を行った後、温度300℃、荷重1.2kgの条件で測定した。
<ポリカーボネート樹脂組成物の測定条件>
各々実施例1〜5、比較例1〜6で使用したポリカーボネート樹脂と同条件で測定し、
実施例1〜5、比較例1〜6で使用したポリカーボネート樹脂のMFRを「ベースレジンMFR」とし、実施例1〜5、比較例1〜6の樹脂組成物ペレットのMFRを「着色品MFR」とし、着色品MFRをベースレジンMFRで除した値を「着色前後のMFR比」とした。
2)分光測色方法
JIS K7105に準拠し、分光色差計(日本電色工業社製SE2000)を使用し、C光源反射法、2°視野にて上記で得られた射出成形板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)のL*,a*,b*値を測定した。
3)イエローインデックス(YI)
1cmセルに、得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットを詰め、反射光におけるイエローインデックス(YI)値をカラーテスタ(コニカミノルタ社製CM−3700d)を用いて3回測定し、平均値を算出した。YI値が小さい程、黄色味がなく品質が優れることを示す。
4)耐光性試験
スガ試験機社製メタリングウェザーメーターM6Tを用いて、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%の条件下、光源として水平式メタリングランプを、インナーフィルターとして石英を、またランプの周囲にアウターフィルターとして#500のフィルターを取り付け、波長300nm〜400nmの放射照度1.5kw/m2になるように設定し、上記で得られた射出成形板の正方形の面に対して、100時間連続照射処理を行い、照射処理前後において上記の分光測色方法で測定したL*,a*,b*,YI値を用いて色差を求めた。照射前の値をL0 *,a0 *,b0 *,YI0、照射後の値をL*、a*、b*,YIとし、下記の式で色差ΔE*、YI値差ΔYIを求めた。色差、YI値差の値がそれぞれ小さいほど耐光性に優れることを意味する。
ΔL*=|L*−L0 *|
Δa*=|a*−a0 *|
Δb*=|b*−b0 *|
ΔE*=〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2〕1/2
ΔYI=YI−YI0
また、以下の実施例及び比較例で用いた化合物の略号は次の通りである。
<ポリカーボネート樹脂原料>
ISB:イソソルビド(ロケットフルーレ社製、商品名POLYSORB)
CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール(イーストマン社製)
DPC:ジフェニルカーボネート(三菱化学社製)
<ポリカーボネート樹脂>
7022A−NP2:ポリカーボネート樹脂(三菱化学社製、ノバレックス7022A―NP2)
S−3000FN:ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロンS−3000FN)
<酸化防止剤>
2112:ホスファイト系酸化防止剤(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、ADEKA社製、アデカスタブ2112)
<パール顔料>
下記表1に示すものを用いた。
<着色剤>
CB#20:オイルファーネスカーボンブラック(三菱化学社製、カーボンブラック#20)
[製造例1]
撹拌翼及び100℃に制御された還流冷却器を具備した重合反応装置に、ISBとCHDM、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10質量部ppb以下にしたDPC及び酢酸カルシウム1水和物を、モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.70/0.30/1.00/1.3×10−6になるように仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005体積%〜0.001体積%)。続いて熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温が100℃になるように制御しながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始し、40分で内温を210℃にし、内温が210℃に到達した時点でこの温度を保持するように制御すると同時に、減圧を開始し、210℃に到達してから90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この圧力を保持するようにしながら、さらに60分間保持した。重合反応とともに副生するフェノール蒸気は、還流冷却器への入口温度として100℃に制御された蒸気を冷媒として用いた還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を重合反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の温水を冷媒として用いた凝縮器に導いて回収した。
このようにしてオリゴマー化させた内容物を、一旦大気圧にまで復圧させた後、撹拌翼及び上記同様に制御された還流冷却器を具備した別の重合反応装置に移し、昇温及び減圧を開始して、60分で内温220℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて内温230℃、圧力133Pa以下にして、所定撹拌動力になった時点で復圧し、内容物をストランドの形態で抜出し、回転式カッターでペレットにした。このポリカーボネート樹脂を「ISB−PC」と記す。
[実施例1]
製造例1において得られたペレットと、更に表2に示した組成となるようにパール顔料としてSB−100を2つのベント口を有する日本製鋼所社製2軸押出機(TEX30HSS−32)を用いて、出口の樹脂温が250℃になるようにストランド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化した。この際、ベント口は真空ポンプに連結し、ベント口での圧力が500Paになるように制御した。得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、熱風乾燥機を用いて、90℃で6時間乾燥した。次に、乾燥したポリカーボネート樹脂組成物のペレットを射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度240℃、金型温度60℃、成形サイクル40秒間の条件で、射出成形板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)を成形し、上記方法で評価し、結果を表2に示した。
[実施例2]
実施例1において、パール顔料を、SE−100に変更した以外は、実施例1と同様に評価し、結果を表2に示した。
[実施例3]
実施例1において、パール顔料を、Iriodin123に変更し、黒色着色剤としてCB#20を表2に示す配合で加えた以外は、実施例1と同様に評価し、結果を表2に示した。
[実施例4]
実施例1において、パール顔料を、Iriodin153に変更し、黒色着色剤としてCB#20を表2に示す配合で加えた以外は、実施例1と同様に評価し、結果を表2に示した。
[実施例5]
実施例1において、パール顔料を、Iriodin163に変更し、黒色着色剤としてCB#20を表2に示す配合で加えた以外は、実施例1と同様に評価し、結果を表2に示した。
[比較例1]
ポリカーボネート樹脂7022A−NP2と、更に表3に示した組成となるようにパール顔料としてSB−100を2つのベント口を有する日本製鋼所社製2軸押出機(TEX30HSS−32)を用いて、出口の樹脂温が280℃になるようにストランド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化した。この際、ベント口は真空ポンプに連結し、ベント口での圧力が500Paになるように制御した。得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、熱風乾燥機を用いて、120℃で6時間乾燥した。次に、乾燥したポリカーボネート樹脂組成物のペレットを射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル40秒間の条件で、射出成形板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)を成形し、上記方法において評価し、結果を表3に示した。
[比較例2]
比較例1において、パール顔料を、SE−100に変更した以外は、比較例1と同様に評価し、結果を表3に示した。
[比較例3]
比較例1において、パール顔料を、Iriodin123に変更し、黒色着色剤としてCB#20を表3に示す配合で加えた以外は、比較例1と同様に評価し、結果を表3に示した。
[比較例4]
比較例1において、パール顔料を、Iriodin153に変更し、黒色着色剤としてCB#20を表3に示す配合で加えた以外は、比較例1と同様に評価し、結果を表3に示した。
[比較例5]
比較例1において、パール顔料を、Iriodin163に変更し、黒色着色剤としてCB#20を表3に示す配合で加えた以外は、比較例1と同様に評価し、結果を表3に示した。
[比較例6]
ポリカーボネート樹脂S−3000FNと、更に表3に示した組成となるように酸化防止剤としてアデカスタブ2112と、パール顔料としてSB−100を2つのベント口を有する日本製鋼所社製2軸押出機(TEX30HSS−32)を用いて、出口の樹脂温が280℃になるようにストランド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化した。この際、ベント口は真空ポンプに連結し、ベント口での圧力が500Paになるように制御した。得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、熱風乾燥機を用いて、120℃で6時間乾燥した。次に、乾燥したポリカーボネート樹脂組成物のペレットを射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル40秒間の条件で、射出成形板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)を成形し、上記方法で評価し、結果を表3に示した。
表2,3から分かるように、実施例1〜5のポリカーボネート樹脂組成物は比較例1〜6に比べてΔYI、ΔEとも低く、耐光性に優れる。なお、着色剤としてカーボンブラックを配合しない実施例1及び2は、光照射100hr後の試験片は光照射前の試験片と同様又はわずかに青みを帯びた外観を呈した。一方、比較例1、2、6の光照射100hr後の試験片は黄色に着色しており、劣化は明らかであった。
また、パール顔料の配合に際して、比較例1〜6の着色前後のMFR比は1.20を超え、樹脂の劣化が見られるのに対し、実施例1〜5の着色前後のMFR比は0.98〜1.01であり、樹脂の劣化はほとんど見られない。
なお、実施例1,2で得られた射出成形板は黄色味が少なく、実施例3〜5で得られた射出成形板は深い黒色のベースで光沢も高く、発色性良好であった。また、実施例1〜5で得られた射出成形板はいずれも耐衝撃性、滞留安定性等も良好であることが確認された。