JP6008031B1 - 異方性色素膜用組成物及び異方性色素膜 - Google Patents

異方性色素膜用組成物及び異方性色素膜 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、光学特性が高く、且つ、ディスプレイ製造のプロセスに適合した異方性色素膜形成に用いられる異方性色素膜用組成物及び異方性色素膜を提供することを課題とする。【解決手段】アゾ色素及び溶剤を含む異方性色素膜用組成物であって、前記アゾ色素は、遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が記式(III)で表されるアゾ色素を含むことを特徴とする異方性色素膜用組成物を用いることにより解決する。また、遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素を含むことを特徴とする異方性色素膜を用いることにより解決する。【選択図】なし

Description

本発明は、湿式成膜法により形成される異方性色素膜、特に、調光素子、液晶素子(LCD)及び有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)の表示素子に具備される偏光膜等に有用な高い二色性を示す異方性色素膜用組成物及び異方性色素膜に関するものである。
LCDでは、表示における旋光性や複屈折性を制御するために直線偏光膜及び円偏光膜が用いられている。OLEDにおいても、外光の反射防止のために円偏光膜が使用されている。
従来、これらの偏光膜にはヨウ素が二色性物質として広く使用されてきた。しかしながら、ヨウ素は昇華性が大きいために、偏光膜を用いた偏光素子として使用した場合、その耐熱性や耐光性が十分ではなかった。また、その消光色が深い青色となるため、全可視スペクトル領域に亘って、理想的な無彩色の偏光素子とは言えなかった。
理想的な無彩色の偏光素子を得るために、有機系の色素を二色性物質に使用する異方性色素膜が検討されている。有機系の色素を使用する異方性色素膜としては、従来のポリマーに有機系の色素を含浸させた膜、基板等の上に有機系の色素を塗布することで膜を得る方法(湿式成膜法)を用いて形成させた膜等が挙げられる。
従来のポリマーに有機系の色素を含浸させた異方性色素膜を用いる場合、該異方性色素膜に接着層を設け、接着層の保護フィルムを貼り合わせ、該保護フィルムを貼り合せた偏光膜をディスプレイ製造ラインに移送し、ディスプレイ製造ラインで保護フィルムを剥がし、異方性色素膜を基板等に貼合するというプロセスが取られている。これをガラスや透明フィルム等の基板上に、湿式成膜法を用いて異方性色素膜を形成する方法に置き換えれば、前記の従来のポリマーに有機系の色素を含浸させた異方性色素膜を用いる方法と比較して、製造プロセスを簡略化でき、生産性向上に寄与するものと考えられる。
湿式成膜法を用いて形成する異方性色素膜としては、例えば特許文献1に、ガラスや透明フィルム等の基板上に湿式成膜法を用いて色素を含む膜を形成する、すなわち、分子間相互作用等を利用して色素を配向させることにより異方性色素膜を得る方法が挙げられている。また、特許文献2には、特許文献1では十分ではなかった二色比の高い異方性色素膜を得るための、トリスアゾ色素を含む異方性色素膜用組成物が示されている。
湿式成膜法を用いて形成する異方性色素膜において、複数の色素を用いる方法が示されている。特許文献3には、特定構造の色素を併用することで、分子配向の乱れを抑制しながら、高い二色比及び高い分子配向度を示す膜が得られることが示されている。また、特許文献4には分子サイズの異なる色素を特定の比で組み合わせることで、流延時の配向方向のばらつきが抑制できることが示されている。
特表平8−511109号公報 特開2010−168570号公報 特開2010−26024号公報 国際公開第2011/004759号
近年のディスプレイの高機能化及び高性能化に伴い、偏光膜にも高透過率で高い二色性を示す等の高い性能が求められている。また、ディスプレイの安価化に伴い、低い製造コストや生産性を向上することも求められている。しかしながら、特許文献2で用いられる色素を用いた異方性色素膜は、偏光膜として高い性能を示すものの、この異方性色素膜用組成物は粘度が高く、実際のディスプレイ製造工程に適用するには、塗布する前に行われる異物除去の際のろ過が遅い、塗布装置への組成物の充填に時間を要する、スロットダイコート法の塗布を行うにはカラーフィルター製造工程でカラーレジストをスロットダイコート法で塗布する速度に比べて非常に遅い等、ディスプレイ製造の観点からはプロセス適合性に問題があることを本発明者は見出した。
また、特許文献2及び3においても、高い二色比等が得られることが示されているが、上記のプロセス適合性については検討されていない。
一方、特許文献3は、特定構造のジスアゾ化合物及びモノアゾ化合物の組合せが示されているのみであり、トリスアゾ化合物を含む組成物については検討されていない。
本発明は、光学特性に優れ、且つ、ディスプレイ製造のプロセスに適合した異方性色素膜形成に用いられる異方性色素膜用組成物及び異方性色素膜を提供することを課題とする。
本発明は、特定のアゾ色素及び溶剤を含む異方性色素膜用組成物を用いることにより前記課題を解決することができることを見出した。
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
[1] アゾ色素及び溶剤を含む異方性色素膜用組成物であって、前記アゾ色素は、遊離酸の形が下記式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が下記式(III)で表されるアゾ色素を含むことを特徴とする異方性色素膜用組成物。
Figure 0006008031
[式(I)において、
Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar13は、電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar14は、式(II)を表す。]
Figure 0006008031
[式(II)において、RN11及びRN12は、水素原子を表し、
bは1又は2を表し、dは1を表す。なお、−NRN11N12で表されるアミノ基は、β位に置換する。]
Figure 0006008031
[式(III)において、
Ar21は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar22は、電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar23は、式(IV)を表す。]
Figure 0006008031
[式(IV)において、RN21及びRN22は、水素原子を表し、
eは1又は2を表し、fは1を表す。なお、−NRN21N22で表されるアミノ基は、β位に置換する。]
[2]式(I)のAr14が式(VI)で表されるものである、及び/又は式(III)のAr23が式(VII)で表されるものである、[1]に記載の異方性色素膜用組成物。
Figure 0006008031
[式(VI)において、g及びhはそれぞれ独立に、0又は1を表し、g及びhの和は1又は2である。なお、式(VI)におけるd、RN11及びRN12は、式(II)のd、RN11及びRN12と同義である。]
Figure 0006008031
[式(VII)において、i及びjはそれぞれ独立に、0又は1を表し、i及びjの和は1又は2である。なお、式(VII)におけるf、RN21及びRN22は、式(IV)のf、RN21及びRN22と同義である。]
[3]前記式(I)のAr12が、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基及び、単環又は2環性の置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群より選択されるものである、[1]又は[2]に記載の異方性色素膜用組成物。
[4]前記式(I)のAr11が、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基及び、単環又は2環性の置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群より選択されるものであり、置換基として電子求引基を少なくとも1つ有するものである、[1]〜[3]の何れか1に記載の異方性色素膜用組成物。
[5]前記式(I)のAr11〜Ar14から選択される少なくとも1つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(III)のAr21〜Ar23から選択される少なくとも1つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造と同一である、[1]〜[4]の何れか1に記載の異方性色素膜用組成物。
[6]式(I)のAr11〜Ar13から選択される少なくとも1つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(III)のAr21及び/又はAr22の構造から有していてもよい置換基を除いた構造と同一である、[1]〜[5]の何れか1に記載の異方性色素膜用組成物。
[7]式(I)のAr11〜Ar14から選択される少なくとも1つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(III)のAr21〜Ar23から選択される少なくとも1つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造と同一であり、且つ、前記有していてもよい置換基の群が同一である、[1]〜[6]の何れか1に記載の異方性色素膜用組成物。
[8]遊離酸の形が下記式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が下記式(III)で表されるアゾ色素を含むことを特徴とする異方性色素膜。
Figure 0006008031
[式(I)において、
Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar13は、電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar14は、式(II)を表す。]
Figure 0006008031
[式(II)において、RN11及びRN12は、水素原子を表し、
bは1又は2を表し、dは1を表す。なお、−NRN11N12で表されるアミノ基は、β位に置換する。]
Figure 0006008031
[式(III)において、
Ar21は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar22は、電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar23は、式(IV)を表す。]
Figure 0006008031
[式(IV)において、RN21及びRN22は、水素原子を表し、
eは1又は2を表し、fは1を表す。なお、−NRN21N22で表されるアミノ基は、β位に置換する。]
本発明の異方性色素膜用組成物は、光学特性に優れ、且つ、ディスプレイ製造のプロセスに適合したものである。具体的には、異方性色素膜用組成物を準備する段階での異物除去の際のろ過性がよく、異方性色素膜用組成物の生産性に優れたものである。また、本発明の異方性色素膜用組成物は、塗布装置への給液が容易で、且つ、スロットダイコート法での塗布速度が大きく、生産性の高い異方性色素膜製造プロセスを構築できる。さらに、光学特性に優れた異方性色素膜を提供することができる。このような特性を有する異方性色素膜を用いた偏光素子は、色再現性等を求められる調光素子、液晶素子、有機エレクトロルミネッセンス素子の表示素子等、多方面に利用することができる。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
本発明でいう異方性色素膜とは、異方性色素膜の厚み方向及び任意の直交する面内2方向の立体座標系における合計3方向から選ばれる、任意の2方向における電磁気学的性質に異方性を有する色素膜である。電磁気学的性質としては、吸収、屈折等の光学的性質、抵抗、容量等の電気的性質等が挙げられる。
吸収、屈折等の光学的異方性を有する膜としては、例えば、直線偏光膜、円偏光膜等の偏光膜、位相差膜、導電異方性膜等がある。本発明の異方性色素膜は、偏光膜、位相差膜及び導電異方性膜に用いられることが好ましく、偏光膜に用いられることがより好ましい。
本発明はアゾ色素及び溶剤を含む異方性色素膜用組成物であって、遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素を含むことを特徴とする。
本発明の異方性色素膜用組成物を用いることで、本発明の効果を得られる理由は次のように推察される。本発明の式(I)で表されるアゾ色素は、トリスアゾ色素であり、溶剤、特に誘電率の高い溶剤(例えば水)に溶解すると分子中央の疎水性部分が大きいものである。すなわち分子を構成する芳香族炭化水素環又は芳香族複素環により平面性が高く、色素分子が会合してカラムを形成しやすいものである。式(I)で表されるアゾ色素で形成されたカラム状の分子集合体は、外側にスルホ基等のイオン性基や、アミノ基及び水酸基等の極性の高い基を有しているため、カラム間に電子的な相互作用が生じ、カラム同士が均等な距離に位置するヘキサゴナル相を取りやすい。このヘキサゴナル相は2次元に秩序を有する液晶であり、液晶相の中では比較的秩序が高い。すなわち、分子は流動性を有するものの固体状態に近い配置にある。
式(I)で表されるアゾ色素に、式(III)で表されるアゾ色素を添加することにより、式(III)で表されるアゾ色素が、式(I)で表されるアゾ色素からなるカラムの外側にイオン性基等を介して結合する。また、式(I)で表されるアゾ色素からなるカラムの色素分子の一部が、式(III)で表されるアゾ色素に置き換わり、前記カラムの外側が凸凹となる。このような状態になることで、カラム間の相互作用が小さくなり、カラム間が等間隔である状態が失われ、1次元に秩序を有するネマティック相を取る。
すなわち、色素はヘキサゴナル相の場合よりも液体状態に近い配置にあり、異方性色素膜用組成物の粘度は低くなるものと推察される。このように式(I)で表されるアゾ色素に式(III)で表されるアゾ色素を添加することは、従来の光学特性(二色比)を向上させる添加剤のようにカラムの長さを変化させたり、秩序性を上げたりするものではなく、カラム間相互作用を変化させ、秩序性を下げている点で従来の添加剤の効果と異なるものと推察される。
[異方性色素膜用組成物]
本発明の異方性色素膜用組成物は、遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素、遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素及び溶剤を含めば特に限定されないが、組成物として液晶相の状態であることが、溶剤が蒸発した後に形成される異方性色素膜を高配向度に形成する観点から好ましい。なお、本実施の形態において、液晶相の状態であるとは、具体的には、『液晶の基礎と応用』(松本正一・角田市良著、1991)の1〜16ページに記載されているように、液体と結晶の双方の性質を示す液晶状態であり、ネマティック相、コレステリック相、スメクティック相又はディスコティック相であることをいう。特に、溶液中での秩序性が低く、粘度が低い傾向にあるため、ネマティック相が好ましい。
また、異方性色素膜用組成物には、必要に応じ、バインダー樹脂、モノマー、硬化剤、添加剤等が配合されてもよい。異方性色素膜用組成物の態様としては、溶液状であってもよいし、ゲル状であってもよい。異方性色素膜用組成物は、溶剤中に遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素等が溶解又は分散している状態であってもよい。
本発明において異方性色素膜が高い配向を示すためには、異方性色素膜用組成物中で、アゾ色素が分子積層体を形成していることが好ましく、中でも異方性色素膜用組成物が液晶相を示すことが好ましい。ここで、液晶相を有するとは、溶剤中でリオトロピック液晶性を示すことを意味する。異方性色素膜用組成物が液晶相を発現していてもいなくてもよいが、前記のように液晶相の状態であることが好ましい。
また、本発明で用いられるアゾ色素は、異方性色素膜用組成物が液晶相を発現するため、及び、後記の湿式成膜法に供するために、水や有機溶剤に可溶であることが好ましく、特に水溶性であることが好ましい。さらに好ましいものは、「有機概念図−基礎と応用」(甲田善生著、三共出版、1984年)で定義される無機性値が有機性値よりも小さな化合物である。また、塩型をとらない遊離の状態で、その分子量が200以上であるのが好ましく、300以上であるのがより好ましい。また、1500以下であるのが好ましく、1200以下であるのがより好ましい。なお、水溶性とは、室温で化合物が水に、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上溶解することを言う。
<溶剤>
本発明の異方性色素膜用組成物が含む溶剤は、遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素を、溶解又は分散させるものであれば特に制限はない。特に、遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素が溶剤中でリオトロピック液晶のような会合状態を形成し易いことから、溶剤としては、水、水混和性のある有機溶剤又はこれらの混合物が好ましい。
有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、グリセリン等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類;等の単独又は2種以上の混合有機溶剤が挙げられる。
これらの中でも、遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素が有する芳香族環等の疎水性の高い部分同士での会合を促進することから、水、メタノール又はエタノールが好ましく、水が特に好ましい。
<アゾ色素の濃度>
本発明において、遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素を合わせたアゾ色素の、異方性色素膜組成物中の濃度としては、色素の溶解性やリオトロピック液晶状態等の会合状態の形成濃度にも依存するが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは1質量%以上であり、特に好ましくは5質量%以上である。一方、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。この範囲であることで、異方性色素膜組成物の塗布・乾燥後の膜厚制御がし易く、スロットダイコート法での塗布速度が大きい傾向にある。
本発明の異方性色素膜用組成物は、リオトロピック液晶相の発現有無は問わないが、リオトロピック液晶相を発現していない場合において、異方性色素膜用組成物中の溶剤量のみを変更することでリオトロピック液晶相が発現することが好ましい。リオトロピック液晶相が発現することで、異方性色素膜中で色素が高い配向度を発現し、高い二色性の異方性色素膜が得られる傾向にあるため好ましい。
異方性色素膜用組成物がリオトロピック液晶相を発現していれば、より異方性色素膜中での高い配向が得られる傾向にあるため、さらに好ましい。
本発明の異方性色素膜用組成物は、基板への濡れ性及び塗布性を向上させるため、必要に応じて界面活性剤等の添加剤を加えることができる。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系及びノニオン系のいずれも使用可能である。その添加濃度は、0.05質量%以上、0.5質量%以下が好ましい。
<粘度>
本発明の異方性色素膜用組成物の粘度は、遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素を含む組成物に、遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素を添加することで粘度が低くなり、ろ過性、塗布性の向上等のディスプレイ製造のプロセスに適合し易くなれば特に限定されない。ろ過性や塗布性の向上は、同一の条件で粘度を測定し、その値が小さくなることで判断することができる。
異方性色素膜用組成物の粘度は、測定原理に応じて、細管粘度計、回転粘度計、落体粘度計、振動粘度計、平行板粘度計等により測定することができる。本発明の異方性色素膜用組成物は、チキソトロピー性を示すことがあるため、回転粘度計など、剪断速度を可変可能な粘度計で測定することが好ましい。回転粘度計で測定した場合には、1〜1000s-1 で測定することが好ましい。
一例として、レオメーターで測定したときの測定条件及び好ましい範囲を示す。25℃において、せん断速度1000s-1で5秒間プレシェアを行った後、せん断速度を1000s-1から10s-1まで180秒間で変化させて、せん断速度掃引測定を行ったときのせん断速度400s-1における粘度が、100cP以下であることが好ましく、70cP以下であることがより好ましく、60cP以下であることが更に好ましく、50cP以下であることが特に好ましい。また、下限は特には無く低い方が好ましいが、例えば1cP以上であり、好ましくは10cP以上である。
≪遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素≫
本発明の異方性色素膜用組成物は、遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素を含む。
Figure 0006008031
[式(I)において、
Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar13は、電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar14は、式(II)を表す。]
Figure 0006008031
[式(II)において、RN11及びRN12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、
bは0〜3の整数を表し、dは0又は1を表す。 なお、−NRN11N12で表されるアミノ基は、α位又はβ位に置換する。]
<Ar11
Ar11は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
((芳香族炭化水素基))
芳香族炭化水素基としては、単環及び複数の環由来の基が挙げられる。複数の環由来の基に含まれる環の数は特に限定されないが、通常、2以上、4以下であり、好ましくは3以下である。
例えば1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基としては、通常、アゾ化合物の溶解性を高めるために導入される親水性基、色素としての色調を調節するために導入される電子求引基又は電子供与基が好ましい。
また、前記芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基として、色素同士がカラム状会合体を形成する観点から、色素同士の会合を促進する官能基を導入することが好ましい。 会合を促進する相互作用には、静電的相互作用が挙げられ、特に、水素結合性官能基や、強い双極子を持つ官能基が好ましい。水素結合性の官能基としては、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、リン酸基等が挙げられる。
親水性基とは、水などのプロトン性物質との間に水素結合性による相互作用を示し、水に溶解又は混和しやすい性質を示す官能基で、熱力学的に安定化する官能基を表す。水素結合性官能基は、水素原子より電気陰性度が高いヘテロ原子 (窒素、酸素、硫黄)やフッ素原子等の孤立電子対 (電子対供与体) を有する基を指す。
具体的には、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、リン酸基等が挙げられる。
電子求引基とは、水素原子と比べて結合原子側から電子を引きつけやすい置換基を指し、電子求引基がフェニル基又はナフチル基に置換した場合には、ベンゼン環上の電子密度を減弱させる、つまり、電子不足にさせる効果がある。電子吸引基とは、ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の電気陰性度が高い原子と多重結合をしている原子が芳香環と結合している基;ハロゲン原子と置換している炭素原子が芳香環と結合している基;正電荷を帯びている原子が芳香環と結合している基;等が挙げられる。
置換基が電子求引性であることの指標の例としては、例えば、小西謙三、黒木宣彦著「合成染料の化学」(槇書店、1963年2月25日発行)第23頁〜第25頁に記載されているハメット式における置換基定数が正であることが挙げられる。本発明においては、該置換基定数がメタ位、パラ位のいずれにおいても正である置換基が好ましい。具体的には、カルバモイル基、スルファモイル基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
電子求引基は、非イオン性及びイオン性の電子求引基が挙げられる。ここで、「非イオン性」の電子求引基とは、イオン性基でない電子求引基を指す。
イオン性基とは、鈴木洋著「界面と界面活性物質」(産業図書株式会社、1990年1月23日発行)第33頁〜第35頁に記載されているように、親水性基のうち水の中で基の一部が解離してアニオン(陰イオン)部とカチオン(陽イオン)部に分かれる基を指す。
具体的には、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、トリメチルアンモニオ基、J.N.イスラエルアチヴィリ著、近藤保、大島広行訳「分子間力と表面力」(マグロウヒル出版株式会社、1991年12月25日発行)第105頁〜第106頁に記載されているもの等が挙げられる。
イオン性の電子求引基としては、スルホ基、カルボキシ基等が挙げられる。
非イオン性の電子求引基は、該芳香族炭化水素基の芳香環の電子密度を減弱させるとともに、水で電荷分離しない。従って、式(I)で表されるアゾ色素を、例えば溶剤を水とする異方性色素膜用組成物に用いた場合に、溶剤との相互作用が小さくなり、Ar11及び電子過剰なナフチル基であるAr14は分子間で強く引き合い、分子同士が会合状態を作りやすい性質が生じる。なお、電子過剰であるとは、ベンゼン環上の電子密度が増強された状態を意味する。
非イオン性の電子求引基としては、ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の電気陰性度が高い原子と多重結合をしている原子が芳香環と結合している基;ハロゲン原子と置換している炭素原子が芳香環と結合している基;正電荷を帯びている原子が芳香環と結合している基;等が挙げられる。
具体的には、カルバモイル基、スルファモイル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
本発明において電子供与基とは、水素原子と比べて結合原子側から電子を押し出しやすい置換基を指し、電子供与基がフェニル基に置換した場合には、ベンゼン環上の電子密度を増大させる、つまり、電子過剰にさせる効果がある。置換基が電子供与性であることの指標の例としては、例えば、小西謙三、黒木宣彦著「合成染料の化学」(槇書店、1963年2月25日発行)第23頁〜第25頁に記載されているハメット式における置換基定数が負であることが挙げられる。本発明においては、該置換基定数がメタ位、パラ位のいずれにおいても負である置換基が好ましい。具体的には、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、アシルアミノ基等が挙げられる。
前記の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基で挙げた各基について具体的に説明する。
(アルキル基)
前記アルキル基は、通常、炭素数が1以上、6以下であり、好ましくは4以下である。アルキル基は、置換基を有していてもよく、その置換基は、例えば、炭素数が1以上、6以下のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基、カルボキシ基等が挙げられる。
前記アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、ヒドロキシエチル基、1,2−ジヒドロキシプロピル基等の低級アルキル基が挙げられる。
(アルコキシ基)
前記アルコキシ基は、通常、炭素数が1以上、6以下であり、好ましくは3以下である。前記アルコキシ基は置換基を有していてもよく、その置換基は、例えば、炭素数が1以上、6以下のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基、カルボキシ基等が挙げられる。
前記アルコキシ基の具体例として、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、1,2−ジヒドロキシプロポキシ基等の低級アルコキシ基が挙げられる。
(アシルアミノ基)
前記アシルアミノ基は、−NH−C(=O)R11で表される。R11は、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基を表す。
前記アシルアミノ基の具体例としては、アセチルアミノ基、アクリルアミノ基、メタクリルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
11のアルキル基は、通常、炭素数が1以上、4以下であり、好ましくは2以下である。また、R11のアルケニル基は、通常、炭素数が2以上、4以下であり、好ましくは3以下である。R11のフェニル基は、通常、炭素数が6以上、10以下であり、好ましくは8以下である。
前記R11のアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基としては、炭素数1以上、4以下のアルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
(アミノ基)
前記アミノ基は、通常、−NH2、−NHR22又は−NR2324で表される。R22〜R24はそれぞれ独立に、アルキル基又はフェニル基を表す。
前記アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基等が挙げられる。
22〜R24のアルキル基は、通常、炭素数が1以上、4以下であり、好ましくは2以下である。また、R22〜R24のフェニル基は、通常、炭素数が6以上、10以下であり、好ましくは8以下である。
22〜R24のアルキル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基としては、炭素数1以上、4以下のアルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
(カルバモイル基)
前記カルバモイル基は、無置換のカルバモイル基、炭素数1以上、6以下のアルキルカルバモイル基、炭素数6以上、10以下のフェニルカルバモイル基又は炭素数10以上、14以下のナフチルカルバモイル基を表す。カルバモイル基の具体例としては、カルバモイル基、フェニルカルバモイル基、ナフチルカルバモイル基等が挙げられる。
前記アルキルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基及びナフチルカルバモイル基は置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基としては、炭素数1以上、4以下のアルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
(スルファモイル基)
前記スルファモイル基は、無置換のスルファモイル基、炭素数1以上、6以下のアルキルスルファモイル基、炭素数6以上、10以下のフェニルスルファモイル基及び炭素数10以上、14以下のナフチルスルファモイル基を表す。スルファイル基の具体例としては、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ジエチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基、ナフチルスルファモイル基等が挙げられる。
前記アルキルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基及びナフチルスルファモイル基は置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基としては、炭素数1以上、4以下のアルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
((芳香族複素環基))
Ar11の芳香族複素環基としては、特に限定されないが、単環又は二環性の複素環由来の基であることが、式(I)で表されるアゾ色素同士の重なりを大きくしてカラムを形成できる点で好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。特に、式(I)で表されるアゾ色素同士がカラムを形成し易い傾向となるため、窒素原子が好ましい。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。好ましい例として、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環等が挙げられる。
前記芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基としては、親水性基、電子供与基、電子求引基、水素結合性官能基等が挙げられる。具体的には、アルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。これら置換基の群及び置換基は、前述のAr11の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げたものとそれぞれ同義であり、好ましい範囲及び有していてもよい置換基もそれぞれ同義である。
この中でもスルホ基を置換基として有することが、色素に水溶性を付与する点で好ましい。また、無置換である場合、複素環に含まれる炭素以外の原子、特に窒素原子の分子間での相互作用を妨げない点で好ましい。該芳香族複素環基は、無置換又は上述の置換基を1〜5個有していてもよく、好ましくは無置換又は置換基を1〜2個有していることである。
((Ar11の好ましい例))
Ar11は、前記の中でも置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であることが好ましく、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいナフチル基であることが特に好ましい。
式(I)で表されるアゾ色素は芳香族環とアゾ基の連結からなり、広いπ平面を有し、分子同士π平面を積層するように会合することによってリオトロピック液晶のような、溶液中での高い会合状態を形成することができる。Ar11が、芳香族炭化水素基であると、平面性が高く電荷の偏りが少ないため、分子が積層するときにずれが生じにくく長いカラムを形成することができ、高い配向度の異方性色素膜を得やすい。特に、Ar11が、フェニル基又はナフチル基であることが、他の環との大きさ、特に、アゾ色素1分子の逆の末端に配置されたAr14のナフタレン環とほぼ同じ大きさとなるため、分子が積層し易くなり、より好ましい。
また、Ar11の芳香族炭化水素基は無置換でも置換基を有していても良い。置換基を有する場合、水素結合性の官能基又は電子求引基を少なくとも1つ有することが好ましく、電子求引基を有することが更に好ましい。電子求引基は、該芳香族炭化水素基の芳香環の電子密度を減弱させる傾向にある。これにより、式(I)で表されるアゾ色素において、電子不足なAr11及び電子過剰なナフチル基であるAr14は分子間で強く引き合い、分子同士が会合状態を作りやすい性質が生じる。なお、電子過剰であるとは、ベンゼン環上の電子密度が増強された状態を意味する。
電子求引基は、非イオン性及びイオン性のどちらでもよい。イオン性の電子求引基である場合は、アゾ色素の分子間で、酸・塩基の結合や水素結合により、分子間で強く引き合い、分子同士が会合状態を作りやすい性質が生じる。
一方で、非イオン性の電子求引基である場合は、水で電荷分離しない傾向にある。従って、式(I)で表されるアゾ色素を、例えば溶剤を水とする異方性色素膜用組成物に用いた場合に、イオン性の場合に比べて、式 (1) の色素と溶剤との相互作用が小さい、即ち、疎水性相互作用が強く、分子間でより強く引き合い、分子同士が積層状態を作りやすい性質が生じる。
電子求引基は、非イオン性又はイオン性のどちらでもよいが、非イオン性であることが芳香環同士の相互作用がより強い点で積層が強く起こる傾向にあるため好ましい。
この中でも、分子の平面性を保持し、分子同士の積層を乱さない点で、カルバモイル基、スルファモイル基、ニトロ基及びシアノ基が特に好ましい。
前記カルバモイル基及びスルファモイル基は、Ar11の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基で挙げたカルバモイル基及びスルファモイル基とそれぞれ同義であり、有していてもよい置換基及び好ましい範囲もそれぞれ同義である。
<Ar12
Ar12は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
((芳香族炭化水素基))
Ar12の芳香族炭化水素基としては、単環及び複数の環由来の基が挙げられる。複数の環由来の基に含まれる環の数は特に限定されないが、通常、2以上、4以下であり、好ましくは3以下である。芳香族炭化水素基としては、例えば、2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等が挙げられる。
Ar12の芳香族炭化水素基としては、置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいナフチレン基が好ましく、該フェニレン基としては置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基が、また該ナフチレン基としては置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基が分子の直線性が高く、分子短軸方向にπ平面が広がり、分子間のπ−π相互作用を示しやすい傾向にあることから、アゾ色素の会合性向上の点で好ましい。
前記芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基としては、通常、アゾ化合物の溶解性を高めるために導入される親水性基、色素としての色調を調節するために導入される電子供与基又は電子求引基が好ましい。
具体的には、前記Ar11の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基で挙げたものとそれぞれ同義である。
Ar12の芳香族炭化水素基は、無置換でも、前記置換基を1〜5個有していてもよく、好ましくは置換基を1〜2個有する。前記の有していてもよい置換基の中でも、アルキル基、アルコキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、水酸基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、ハロゲン原子等の極性の小さい基又は水素結合性官能基を有することが、リオトロピック液晶を形成する上での相互作用による会合性向上の点で好ましく、特にスルホ基を有することが好ましい。スルホ基を有することで、アゾ色素に水溶性を付与するとともに、スルホ基の塩がアゾ色素の分子間で形成され、アゾ色素分子同士の積層(会合)を促進する効果があり、分子が積み重なって形成されるカラム状の会合体に関与する分子数が多くなる。つまり、高い分子配向度の異方性色素膜を得ることができる傾向にある。
Ar12の芳香族炭化水素基が有していてもよい、アルキル基、アルコキシ基、カルバモイル基及びスルファモイル基の炭素数は1〜8が好ましく、1〜4がさらに好ましい。また、前記アルキル基、アルコキシ基、カルバモイル基及びスルファモイル基は、Ar12の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げたものとそれぞれ同義であり、有していてもよい置換基等も同義である。
((芳香族複素環基))
Ar12の芳香族複素環基としては、特に限定されないが、単環又は二環性の複素環由来の基であることが、式(I)で表されるアゾ色素同士の重なりを大きくしてカラムを形成できる点で好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられるが、式(I)で表されるアゾ色素同士がカラムを形成し易い傾向となるため、窒素原子が特に好ましい。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
Ar12の芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基としては、親水性基、電子供与基、電子求引基、水素結合性官能基等が挙げられる。具体的には、アルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
前記、アルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、カルバモイル基及びスルファモイル基は、それぞれ置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基としては、前記Ar11の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基で挙げたものとそれぞれ同義であり、有していてもよい置換基及び好ましい範囲もそれぞれ同義である。
Ar12の芳香族複素環基は、前記置換基を1〜5個有していてもよく、好ましくは、無置換であるか、又はこれらの置換基を1〜2個有する。前記の中でも、Ar12の芳香族複素環基の置換基としては、水溶化の観点から、水酸基、スルホ基又はカルボキシ基が好ましい。
Ar12の芳香族複素環基としては、下記式(I−a)又は(I−b)で表される2価の芳香族複素環基であることがさらに好ましい。すなわち、(I−a)で表される含窒素芳香族6員環の2,5位又は3,6位で結合する2価の連結基であるか、又は、(I−b)で表される芳香族複素環のy1及びy4の置換位置で結合する2価の連結基であることが好ましい。このような芳香族複素環基であることにより、前記式(I)で表されるアゾ色素同士がカラムを形成しやすくなる傾向にある。
Figure 0006008031
[式(I−a)中、Q1〜Q4はそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、Q1〜Q4の内、1個又は2個が窒素原子を表す。Q1〜Q4は置換基を有していてもよい。]
Figure 0006008031
[式(I−b)中、Xは5〜7員環を形成する2価の連結基を表し、前記環に窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む。y2及び/又はy3は置換基を有していてもよい。]
式(I−b)において、連結基Xにより形成される環上に、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む。また、y1〜 y4は置換位置を表す。
式(I−a)又は(I−b)で表される2価の芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、Ar12及びAr13の芳香族複素環基の置換基として列記のものとそれぞれ同義であり、好ましい範囲もそれぞれ同義である。
式(I−b)におけるXで表される連結基としては、例えば、−N=CH−CH=C−、−CO−NH−CO−、=N−S−N=、−CH=N−CH=CH−等が挙げられる。但し、CH及びNHにおけるC及びNには、Hの代わりに有機基等の置換基、例えばAr12及びAr13の芳香族複素環基の置換基として列記したもの等が置換していてもよい。
式(I−a)で表される芳香族複素環基としては、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン又はピラジンから誘導され、且つ、アゾ基との連結位置が2,5位又は3,6位にある基が挙げられる。
式(I−b)で表される芳香族複素環基としては、キノリン、イソキノリン、ベンゾチアジアゾール、フタルイミド等から誘導され、且つ、アゾ基との連結位置が式(I−b)で示したy1及びy4の位置にある基が挙げられる。具体的には、ピリジンジイル基、キノリンジイル基、イソキノリンジイル基、ベンゾチアジアゾールジイル基、フタルイミドジイル基等が挙げられる。中でも、キノリンジイル基及びイソキノリンジイル基が好ましい。
これらの中でも、化合物全体の平面性の点から、Ar12及びAr13の芳香族複素環基は式(I−b)で表されるものであるのが好ましく、特に、5,8−キノリンジイル基又は5,8−イソキノリンジイル基が好ましい。
<Ar13
Ar13は、電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフタレン基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。これらの基であることで、アゾ色素の会合性が向上する。
1,4−フェニレン基が有していてもよい電子供与基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、アセチルアミノ基等が挙げられる。これらの基の具体例、好ましい範囲及び有していてもよい置換基は、前記Ar11の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基で挙げたものとそれぞれ同義である。1,4−フェニレン基が有していてもよい電子供与基の中でも、置換基の大きさが小さく、アゾ色素全体の平面性が高く、且つ、会合しやすい点で、メチル基、メトキシ基、アセチルアミノ基又はアミノ基が好ましい。
1,4−ナフチレン基は置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基は、親水性基、電子供与基、電子求引基、水素結合性官能基等が挙げられる。具体的には、水酸基、メチル基、メトキシ基、アセチルアミノ基、アミノ基、スルホ基、カルボキシ基等が挙げられ、これらの中でもメトキシ基、スルホ基又はアセチルアミノ基が分子全体の平面性を損なわず、高い会合性を示す点で好ましい。
芳香族複素環基としては、前記Ar12の芳香族複素環基と同義であり、具体例、好ましい範囲、有していてもよい置換基等も同義である。
<Ar14
Ar14は、式(II)で表される。
Figure 0006008031
[式(II)において、RN11及びRN12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、
bは0〜3の整数を表し、dは0又は1を表す。 なお、−NRN11N12で表されるアミノ基は、α位又はβ位に置換する。]
<RN11及びRN12
N11及びRN12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいアシル基を表す。
(アルキル基)
N11及びRN12のアルキル基は、それぞれ独立に、式(I)のAr11の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げたアルキル基と同義であり、有していてもよい置換基及び好ましい範囲も同義である。
(フェニル基)
N11及びRN12のフェニル基は、それぞれ独立に、炭素数が6以上、12以下でありることが好ましく、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは8以下である。該フェニル基は置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基としては、メチル基、メトキシ基、水酸基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。
(アシル基)
N11及びRN12のアシル基は、−C(=O)R31で表され、R31はアルキル基又はフェニル基を表す。該アルキル基は、通常、炭素数が1以上、4以下、好ましくは2以下である。該フェニル基は、置換基の炭素数が通常、6以上、通常10以下、好ましくは8以下である。該アルキル基及び該フェニル基は置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基としては、炭素数が1〜4のアルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基等が挙げられる。アシル基の具体例としては、アセチル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
特に、分子が積層するときに立体障害になりにくく、リオトロピック液晶性を発現し易いという観点から、RN11又はRN12が、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、アセチル基又はベンゾイル基であることが好ましい。
N11及びRN12の組み合わせは特に限定されないが、RN11及びRN12のいずれか一方が水素原子であることが、リオトロピック液晶性を発現しやすい点で好ましい。
特に、異方性色素膜用組成物が、比較的低濃度でリオトロピック液晶性を発現し易く、プロセス適性に優れているという観点から、RN11及びRN12が水素原子であることが好ましい。
<b及びd>
bは0〜3の整数を表す。これらの中でも1又は2であることが、式(I)で表されるアゾ色素が水溶性を示しやすく、分子間での塩を介した相互作用により、会合体を形成しやすい傾向にあるため好ましい。
dは0又は1を表す。これらの中でも1であることが、式(I)で表されるアゾ色素が可視域(380nm〜780nm)の長波長まで吸収を有する色素となり、得られた異方性色素膜が黒色に近くなる傾向にあるため好ましい。
式(II)において、−NRN11N12で表されるアミノ基は、α位又はβ位に置換する。この位置に置換することで分子間相互作用に寄与しやすい傾向にある。
また、特に限定されないが、−SO3H及び−NRN11N12が分子間相互作用に寄与しやすい点で、水酸基が置換した位置を1位、アゾ基が置換した位置を2位とすると、5,6,7,8位のいずれかに−SO3H又は−NRN11N12が少なくとも一つ置換していることが好ましく、6,7位のいずれかに少なくとも1つ置換していることがさらに好ましい。
前記の中でも、Ar14は式(VI)で表されるものであることが分子間相互作用に寄与しやすく、得られた異方性色素膜が黒色に近くなる傾向にあるため特に好ましい。
Figure 0006008031
[式(VI)において、g及びhはそれぞれ独立に、0又は1を表す。なお、式(VI)におけるd、RN11及びRN12は、式(II)のd、RN11及びRN12とそれぞれ同義である。]
(g及びh)
g及びhはそれぞれ独立に、0又は1を表す。好ましくはg及びhの和が、1又は2である。
<Ar11、Ar12、Ar13及びAr14の好ましい組み合わせ>
Ar11、Ar12、Ar13及びAr14の組み合わせは特に限定されないが、Ar11が置換基として電子求引基を少なくとも1つ有する、フェニル基又はナフチル基であり、Ar12及び/又はAr13が、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基及び、単環又は2環性の置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群より選択されるものであり、Ar14が式(VI)で表されるものであることが好ましい。特に、 カラム形成 (πスタッキング)の観点から、Ar12及び/又はAr13が、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基又は2環性の置換基を有していてもよい芳香族複素環基が好ましく、Ar13が置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基又は2環性の置換基を有していてもよい芳香族複素環基であることがさらに好ましい。
Ar11のフェニル基又はナフチル基が有する電子求引基は、非イオン性又はイオン性のどちらでもよい。イオン性の電子求引基である場合は、アゾ色素の分子間で、酸・塩基の結合や水素結合により、分子間で強く引き合い、分子同士が会合状態を作りやすい性質が生じる。
一方で、非イオン性の電子求引基である場合は、水で電荷分離しない傾向にある。従って、式(I)で表されるアゾ色素を、例えば溶剤を水とする異方性色素膜用組成物に用いた場合に、イオン性の場合に比べて、式 (1) の色素と溶剤との相互作用が小さい、即ち、疎水性相互作用が強く、分子間でより強く引き合い、分子同士が積層状態を作りやすい性質が生じる。
電子求引基は、非イオン性又はイオン性のどちらでもよいが、非イオン性であることが芳香環同士の相互作用がより強い点で積層が強く起こる点で好ましい。
これらの組み合わせが好ましい理由は、下記であると推測される。前記のような好ましいAr11、Ar12、Ar13及びAr14の組み合わせを有する式(I)で表されるアゾ色素は、アゾ色素分子末端(Ar11)の、フェニル基又はナフチル基が、置換基として電子求引基を有することにより電子不足な(芳香環上の電子密度が減弱された)状態になっている。一方、これと逆の末端に配置された水酸基が置換したナフチル基(Ar14)は、電子過剰な(ベンゼン環上の電子密度が増強された)状態になっている。このため式(I)で表されるアゾ色素が積層して会合するときは、Ar11の電子不足芳香環とAr14の電子過剰芳香環が分子間で強く引き合い、Ar11の上にAr14が積層するように互い違いに配置されてカラムを形成しやすいものと考えられる。
さらに、分子中央に配置されたAr12及びAr13の環同士が、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基及び、単環又は2環性の芳香族複素環基からなる群より選択されるものであることにより、分子間でπ-π相互作用を取りやすく、分子同士が会合状態を作りやすい性質を有している。特に、Ar12及び/又はAr13が、1,4−ナフチレン基又は2環性の芳香族複素環基であることで、π平面性が高く、会合性が増すので好ましい。さらに、Ar13が1,4−ナフチレン基または2環性の芳香族複素環基であることで、Ar14のナフタレン環と隣合わせになることから、分子内に大きいπ平面が形成され会合性が増すのでさらに好ましい。
そのため、式(I)で表されるアゾ色素は、該アゾ色素を含有した組成物中において、リオトロピック液晶のような溶液中での高い会合状態を形成することができる。そして、このアゾ色素を含有した組成物に湿式成膜法特有のプロセス、すなわち、基材表面に塗布等の積層プロセスを適用して得られる異方性色素膜中においても、本発明のアゾ化合物は高い秩序で配列し、高い二色性を示す異方性色素膜を提供することができるものと考えられる。
また、式(I)で表されるアゾ色素は、前記のようなAr11、Ar12、Ar13及びAr14の組み合わせを取ることにより、可視光波長領域全体に吸収を有し、式(I)で表されるアゾ色素を用いた異方性色素膜は無彩色となる傾向にある。従って、本発明のアゾ色素は高い異方性を有する無彩色の異方性色素膜を形成することが可能である。
なお、上記の1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基及び、単環又は2環性の芳香族複素環基はそれぞれ置換基を有していてもよく、有していてもよい置換基は前記の通りある。
<式(I)で表されるアゾ色素の具体例>
遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素の具体例としては、例えば、以下に記載の色素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 0006008031
Figure 0006008031
Figure 0006008031
Figure 0006008031
Figure 0006008031
Figure 0006008031
Figure 0006008031
<<遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素>>
Figure 0006008031
[式(III)において、
Ar21は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar22は、電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar23は、式(IV)を表す。]
Figure 0006008031
[式(IV)において、RN21及びRN22は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、
eは0〜3の整数を表し、fは0又は1を表す。なお、−NRN21N22で表されるアミノ基は、α位又はβ位に置換する。]
<Ar21
Ar21は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar21は、式(I)のAr11と同義であり、好ましい範囲及び有していてもよい置換基も同義である。
<Ar22
Ar22は、電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフタレン基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar22の電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフタレン基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基は、式(I)のAr12で挙げた電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフタレン基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基とそれぞれ同義であり、好ましい範囲及び有していてもよい置換基もそれぞれ同義である。
<Ar23
Ar23は、前記式(IV)で表される。
<RN21及びRN22
N21及びRN22は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいアシル基を表す。RN21及びRN22は、式(I)のRN11及びRN12とそれぞれ同義であり、有していてもよい置換基及び好ましい範囲もそれぞれ同義である。また、RN21及びRN22の好ましい組み合わせも式(I)のRN11及びRN12と同義である。
<e及びf>
eは0〜3の整数を表す。eは式(II)のbと同義であり、好ましい範囲も同義である。
fは0又は1を表す。fは式(II)のdと同義であり、好ましい範囲も同義である。
式(IV)において、−NRN21N22で表されるアミノ基は、α位又はβ位に置換する。この位置に置換することで分子間相互作用に寄与しやすい傾向にある。
また、特に限定されないが、−SO3H及び−NRN21N22が分子間相互作用に寄与しやすい点で、水酸基が置換した位置を1位、アゾ基が置換した位置を2位とすると、5,6,7,8位のいずれかに−SO3H又は−NRN21N22が少なくとも1つ置換していることが好ましく、6,7位のいずれかに少なくとも1つ置換していることがさらに好ましい。
前記の中でも、Ar23は式(VII)で表されることが分子間相互作用に寄与しやすく、得られた異方性色素膜が黒色に近くなる傾向にあるため特に好ましい。
Figure 0006008031
[式(VII)において、i及びjはそれぞれ独立に、0又は1を表す。なお、式(VII)におけるf、RN21及びRN22は、式(IV)のf、RN21及びRN22とそれぞれ同義である。]
(i及びj)
i及びjはそれぞれ独立に、0又は1を表す。好ましくはi及びjの和が、1又は2である。
<Ar21、Ar22及びAr23の好ましい組み合わせ>
Ar21、Ar22及びAr23の好ましい組み合わせは特に限定されない。Ar21、Ar22及びAr23の組み合わせは、Ar21が置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいナフチル基であり、Ar22が電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基及び、単環又は2環性の置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群より選択されるものであり、Ar23が式(VII)で表されるものであることが好ましい。
特に、Ar22はカラム形成 (πスタッキング)の観点から、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基又は2環性の置換基を有していてもよい芳香族複素環基が好ましい。さらに、Ar21が置換基として電子求引基を少なくとも1つ有する、フェニル基又はナフチル基であることが好ましい。
Ar21のフェニル基又はナフチル基が有する電子求引基は、非イオン性又はイオン性のどちらでもよい。イオン性の電子求引基である場合は、アゾ色素の分子間で、酸・塩基の結合や水素結合により、分子間で強く引き合い、分子同士が会合状態を作りやすい性質が生じる。
一方で、非イオン性の電子求引基である場合は、水で電荷分離しない傾向にある。従って、式(III)で表されるアゾ色素を、例えば溶剤を水とする異方性色素膜用組成物に用いた場合に、イオン性の場合に比べて、式 (III) の色素と溶剤との相互作用が小さい、即ち、疎水性相互作用が強く、分子間でより強く引き合い、分子同士が積層状態を作りやすい性質が生じる。
電子求引基は、非イオン性又はイオン性のどちらでもよいが、非イオン性であることが芳香環同士の相互作用がより強い点で積層が強く起こる点で好ましい。
前記のような好ましいAr21、Ar22及びAr23の組み合わせを有する式(III)で表されるアゾ色素のAr21の環が、式(I)のAr14に配置された水酸基およびアミノ基が置換した電子過剰なナフチル基との間で、分子間で強く引き合い、分子同士が会合状態を作ることが期待される。さらに、Ar22が、電子供与基を有していてもよい、1,4−フェニレン基又は1,4−ナフチレン基であることにより、式(I)の分子中央に配置されたAr12及び/又はAr13の環とも、分子間でπ-π相互作用を取りやすく、分子同士が会合状態を作りやすい性質を有している。また、Ar23が式(VII)で表されるものであることで、式(I)のAr11との相互作用も期待され、前記のような粘度低下効果を得ることができる。
なお、フェニル基、ナフチル基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基及び、単環又は2環性の芳香族複素環は、それぞれ置換基を有していてもよく、有していてもよい置換基は前記の通りある。
<遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素の具体例>
遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素の具体例としては、以下に記載の色素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 0006008031
Figure 0006008031
Figure 0006008031
Figure 0006008031
Figure 0006008031
Figure 0006008031
<<遊離酸の形が式(I)及び式(III)で表されるアゾ色素の組み合わせ>>
本発明において、遊離酸の形が式(I)及び式(III)で表されるアゾ色素の組合せは特に限定されない。
式(I)のAr11〜Ar14から選択される少なくとも1つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(III)のAr21〜Ar23から選択される少なくとも1つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造と同一であることが好ましい。例えば、Ar11がシアノ基を有するナフタレン環である場合、式(I)のAr11の構造から有していてもよい置換基を除いた構造はナフタレン環となる。また、Ar22がスルホ基を有するナフタレン環である場合、式(III)のAr22の構造から有していてもよい置換基を除いた構造はナフタレン環となる。この場合、式(I)のAr11〜Ar14から選択される少なくとも1つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(III)のAr21〜Ar23から選択される少なくとも1つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造と同一となる。
さらに、Ar11〜Ar14から選択される少なくとも2つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(III)のAr21〜Ar23から選択される少なくとも2つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造とそれぞれ同一であることが好ましく、Ar11〜Ar14から選択される少なくとも3つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(III)のAr21〜Ar23の構造から有していてもよい置換基を除いた構造とそれぞれ同一であることが好ましい。なお、Ar11〜Ar14から選択される、有していてもよい置換基を除いた構造は、同一でも異なっていてもよい。同様に、Ar21〜Ar23から選択される、有していてもよい置換基を除いた構造は、同一でも異なっていてもよい。
また、式(I)のAr11〜Ar13から選択される少なくとも1つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(III)のAr21及び/又はAr22の構造から有していてもよい置換基を除いた構造と同一であることが好ましい。さらに、式(I)のAr11〜Ar13から選択される少なくとも2つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(III)のAr21及び/又はAr22の構造から有していてもよい置換基を除いた構造と同一であることが好ましく、式(I)のAr11〜Ar13の構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(III)のAr21及び/又はAr22の構造から有していてもよい置換基を除いた構造と同一であることが好ましい。
上記構造の組合せは、有していてもよい置換基の群も同一であることが好ましく、有していてもよい置換基が同一であることが更に好ましい。また、有していてもよい置換基の群及び/又は有していてもよい置換基の置換位置が同一であることが好ましい。
また、アゾ結合との結合位置も同一であることが好ましい。
なお、置換基の群とは、前記の親水性基、電子供与基、電子求引基、イオン性、非イオン性、水素結合性官能基、強い双極子を持つ官能基等の置換基の性質で分類した群を表す。
上記のように、有していてもよい置換基を除く構造、有していてもよい置換基の群、有していてもよい置換基、有していてもよい置換基の群及び/又は有していてもよい置換基の置換位置が同一であることで、式(I)の化合物と式(III)の化合物のπ−πスタッキングや置換基同士の水素結合等の分子間相互作用が起こりやすく、式(I)が形成するカラム状の会合体や、カラム集合体の構造を大きく変更しないで、カラム間相互作用を変化させる効果が得られる傾向にある。
一方、Ar11及びAr21の組合せ、Ar12及びAr22の組合せ、並びにAr12及びAr23の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの組合せが、有していてもよい置換基を除いた構造が同一であることが好ましい。それにより、式(I)の化合物と式(III)の化合物のπ−πスタッキングや置換基同士の水素結合等の分子間相互作用が起こりやすく、式(I)が形成するカラム状の会合体や、カラム集合体の構造を大きく変更しないで、カラム間相互作用を変化させる効果がある。さらに、上記の組合せは、有していてもよい置換基の群も同一であることが好ましく、有していてもよい置換基が同一であることが更に好ましい。
遊離酸の形が式(I)及び式(III)で表されるアゾ色素の組み合わせが、上記であることで、式(I)と式(III)で表されるアゾ色素の分子間相互作用し易くなる。つまり、式(I)で表される色素のカラム間相互作用を変化させ、秩序性を下げることができ、異方性色素膜用組成物の粘度を低くできる傾向にある。
<遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素の質量分率>
本発明の異方性色素膜用組成物中の遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素の質量比は、特に限定されない。式(I)で表されるアゾ色素に対する式(III)で表されるアゾ色素の質量が、0.0001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがさらに好ましく、0.01質量%以上であることが特に好ましく、0.1質量%以上であることが最も好ましい。また、25質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3.25質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、2.75質量%以下であることがさらに好ましく、2.5質量%以下であることが特に好ましく、2.0質量%以下であることが最も好ましい。遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素の質量比が適当な範囲にあることで、プロセス適性を向上させつつも(I)の色素自体の会合性を阻害せず、色素が良好に配向した異方性色素膜を得ることができる傾向にある。
<<その他の色素>>
本発明の異方性色素膜用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素以外の色素を有していてもよい。例えば、特開2007−126628号公報に配合用の色素として例示の色素、特開2007−199333号公報に記載のアントラキノン化合物、下記に示す遊離酸の形が式(V)で表されるアゾ色素等が挙げられる。
<<遊離酸の形が式(V)で表されるアゾ色素>>
Figure 0006008031
[式(V) において、
Ar31、Ar32及びAr33は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
34は、水素原子、水酸基、アミノ基又はアシルアミノ基を表す。
<Ar31
Ar31は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar31は、式(I)のAr11で挙げた、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基と同義であり、好ましい範囲及び有していてもよい置換基も同義である。
<Ar32及びAr33
Ar32及びAr33は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar32及びAr33は、式(I)のAr12で挙げた、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基と同義であり、好ましい範囲及び有していてもよい置換基もそれぞれ同義である。
<Ar31、Ar32及びAr33の好ましい組み合わせ>
Ar31、Ar32及びAr33の好ましい組み合わせは特に限定されない。Ar31が置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいナフチル基であり、Ar32及びAr33が、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基であることが好ましい。
また、Ar31が置換基として電子求引基を少なくとも1つ有する、フェニル基又はナフチル基であること好ましい。また、以下1)〜3)を少なくとも1つ満たすことが好ましい。
1)Ar31の構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(I)のAr11の構造から有していてもよい置換基を除いた構造と同一。
2)Ar32の構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(I)のAr12の構造から有していてもよい置換基を除いた構造と同一。
3)Ar33の構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(I)のAr13の構造から有していてもよい置換基を除いた構造と同一。
上記1)〜3)に示した構造の組合せは、有していてもよい置換基の群も同一であることが好ましく、有していてもよい置換基が同一であることが更に好ましい。また、有していてもよい置換基の群及び/又は有していてもよい置換基の置換位置が同一であることが好ましい。
また、アゾ結合との結合位置も同一であることが好ましい。
Ar31のフェニル基又はナフチル基が有する電子求引基は、非イオン性又はイオン性のどちらでもよい。イオン性の電子求引基である場合は、アゾ色素の分子間で、酸・塩基の結合や水素結合により、分子間で強く引き合い、分子同士が会合状態を作りやすい性質が生じる。
一方で、非イオン性の電子求引基である場合は、水で電荷分離しない傾向にある。従って、式(V)で表されるアゾ色素を、例えば溶剤を水とする異方性色素膜用組成物に用いた場合に、イオン性の場合に比べて、式 (V) の色素と溶剤との相互作用が小さい、即ち、疎水性相互作用が強く、分子間でより強く引き合い、分子同士が積層状態を作りやすい性質が生じる。
電子求引基は、非イオン性又はイオン性のどちらでもよいが、非イオン性であることが芳香環同士の相互作用がより強い点で積層が強く起こる点で好ましい。
前記のような好ましいAr31、Ar32及びAr33の組み合わせを有する式(V)で表されるアゾ色素のAr31の環が、式(I)のAr14に配置された水酸基およびアミノ基が置換した電子過剰なナフチル基との間で、分子間で強く引き合い、分子同士が会合状態を作ることが期待される。さらに、Ar32及びAr33が置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基であることにより、式(I)の分子中央に配置されたAr12及び/又はAr13の環とも、分子間でπ-π相互作用を取りやすく、分子同士が会合状態を作りやすい性質となる傾向にある。さらに、上記1)〜3)の少なくとも1つをみたす場合、式(I)及び(V)で表されるアゾ色素の分子間相互作用が大きく、式(V)で表されるアゾ色素が、式(I)で表されるアゾ色素が形成する分子会合体に取り込まれたり、会合体間に水素結合をもって結合しても会合体の秩序を大きく乱したりしない傾向になる。従って、式(I)で表されるアゾ色素のみで形成される秩序を低次にし、粘度を下げる効果を得ることができると推測される。
なお、上記フェニル基、ナフチル基、1,4−フェニレン基及び1,4−ナフチレン基は、それぞれ置換基を有していてもよく、有していてもよい置換基は前記の通りである。
<R34
34は、水素原子、水酸基、アミノ基又はアシルアミノを表す。前記、アミノ基及びアシルアミノ基は、それぞれ置換基を有していてもよい。
34のアミノ基及びアシルアミノ基は、式(I)のAr11の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げた、アミノ基及びアシルアミノ基とそれぞれ同義であり、有していてもよい置換基及び好ましい範囲もそれぞれ同義である。
<遊離酸の形が式(V)で表されるアゾ色素の具体例>
遊離酸の形が式(V)で表されるアゾ色素の具体例としては、例えば、以下に記載の色素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 0006008031
Figure 0006008031
Figure 0006008031
本発明の異方性色素膜用組成物に、遊離酸の形が式(V)で表されるアゾ色素を含む場合、その質量比は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。式(I)で表されるアゾ色素の質量と、式(III)と式(V)で表されるアゾ色素の質量の和の比は、0.0001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがさらに好ましく、0.01質量%以上であることが特に好ましく、0.1質量%以上であることが最も好ましい。また、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましく、6.0質量%以下であることが最も好ましい。遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素の質量と、遊離酸の形が式(III)と式(V)で表されるアゾ色素の質量の和の比が適当な範囲にあることで、プロセス適性を向上させつつも(I)の色素自体の会合性を阻害せず、色素が良好に配向した異方性色素膜を得ることができる傾向にある。
<<遊離酸の形が、式(I)、式(III)及び式(V)で表されるアゾ色素の合成>>
遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素、遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が式(V)で表されるアゾ色素は、それ自体周知の方法に準じて製造することができる。例えば、特開2008−81700号公報、特開2007−126628号公報に記載の方法等で製造できる。
例えば、下記式(I−1)で表されるアゾ化合物は、下記(A)〜(C)の工程に従い製造することができる。
(A)4−アミノベンゾニトリルと8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1,7−Cleves 酸)とから常法[例えば、細田豊著「新染料化学」(昭和48年12月21日、技報堂発行)第396頁第409頁参照]に従って、ジアゾ化、カップリング工程を経てモノアゾ化合物を製造する。
(B)得られたモノアゾ化合物を同様に、常法によりジアゾ化し、8−アミノ−2−ナフ タレンスルホン酸(1,7−Cleves 酸)とカップリング反応を行い、ジスアゾ化合物を製造する。
(C)得られたジスアゾ化合物を同様に、常法によりジアゾ化し、7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸(RR酸)とカップリング反応を行い、目的の下記式(I−1)で表されるアゾ化合物がナトリウム塩として得られる。
なお、必要に応じて、各工程において、良溶媒に溶解または懸濁して塩化ナトリウム等の塩を加えて塩析、良溶媒に溶解または懸濁して貧溶媒を加えて晶析、貧溶媒で懸洗、カラムクロマトグラフィーによる分離等によって精製してもよい。
本発明の遊離酸の形が、式(I)、式(III)及び式(V)で表されるアゾ色素は、遊離酸型のまま使用してもよく、酸基の一部が塩型を取っているものであってもよい。また、塩型の色素と遊離酸型の色素が混在していてもよい。また、製造時に塩型で得られた場合はそのまま使用してもよいし、所望の塩型に変換してもよい。塩型の交換方法としては、公知の方法を任意に用いることができ、例えば以下4)〜7)の方法が挙げられる。
4) 塩型で得られた色素の水溶液に塩酸等の強酸を添加し、色素を遊離酸型で酸析せしめたのち、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
5) 塩型で得られた色素の水溶液に、所望の対イオンを有する大過剰の中性塩(例えば、塩化リチウム)を添加し、塩析ケーキの形で塩交換を行う方法。
6) 塩型で得られた色素の水溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂で処理し、色素を遊離酸型で酸析せしめたのち、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
7) 予め所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で処理した強酸性陽イオン交換樹脂に、塩型で得られた色素の水溶液を作用させ、塩交換を行う方法。
また、本発明の式(I)、式(III)及び式(V)で表されるアゾ色素が、酸性基が遊離酸型をとるか、塩型を取るかは、色素のpKaと色素水溶液のpHに依存する。
前記の塩型の例としては、Na、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。
有機アミンの例として、炭素数1〜6の低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン、カルボキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
<<異方性色素膜用組成物の製造方法>>
本発明の異方性色素膜用組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、遊離酸の形が式(I)で表されるアゾ色素、遊離酸の形が式(III)で表されるアゾ色素、その他の添加剤及び溶剤等を混合し、0〜100℃で撹拌、振盪して色素を溶解する。難溶性の場合は、ホモジナイザー、ビーズミル分散機等を用いてもよい。
本発明の異方性色素膜用組成物の製造方法として、組成物中の異物等を除去する目的でろ過工程を有していてもよい。本発明の異方性色素膜用組成物は、粘度が低い傾向にあるため、ろ過工程の時間を短くすることができる傾向にある。ろ過以外の組成物中の異物等を除去する方法としては、特開2012−53388公報に記載の遠心分離を用いる方法もあるが、この場合にも粘度が低いと遠心分離にかかる時間を短くすることが出来る傾向にある。
<<異方性色素膜の形成方法>>
本発明の異方性色素膜は、湿式成膜法により作製することが好ましい。
本発明でいう湿式成膜法とは、異方性色素膜用組成物を基板上に何らかの手法により付与し、溶剤が乾燥する過程を経て色素等を基板上で配向・積層させる方法である。湿式成膜法では、異方性色素膜用組成物を基板上に付与すると、すでに異方性色素膜用組成物中で、又は溶剤が乾燥する過程で、色素自体が自己会合することにより微小面積での配向が起こる。この状態に外場を与えることにより、マクロな領域で一定方向に配向させ、所望の性能を有する異方性色素膜を得ることができる。この点で、いわゆるポリビニルアルコール(PVA)フィルム等を、色素を含む溶液で染色して延伸し、延伸工程だけで色素を配向させることを原理とする方法とは異なる。なお、ここで外場とは、あらかじめ基板上に施された配向処理層の影響、せん断力、磁場等が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
また、異方性色素膜用組成物を基板上に付与し成膜する過程、外場を与えて配向させる過程、溶剤を乾燥させる過程は、逐次行ってもよいし、同時に行ってもよい。
湿式成膜法における異方性色素膜用組成物の基板上への付与する方法としては、例えば、塗布法、ディップコート法、LB膜形成法、公知の印刷法等が挙げられる。またこのようにして得た異方性色素膜を別の基板に転写する方法もある。これらの中でも、本発明は塗布法を用いることが好ましい。
異方性色素膜の配向方向は、通常、塗布方向と一致するが、塗布方向と異なっていてもよい。なお、本実施の形態において異方性色素膜の配向方向とは、例えば、偏光膜であれば、偏光の透過軸又は吸収軸であり、位相差膜であれば、進相軸又は遅相軸のことである。
そして、本実施の形態における異方性色素膜は、光吸収の異方性を利用し直線偏光、円偏光、楕円偏光等を得る偏光膜又は位相差膜として機能する他、膜形成プロセスと基板や有機化合物(色素や透明材料)を含有する組成物の選択により、屈折異方性や伝導異方性等の各種異方性色素膜として機能化が可能である。
異方性色素膜用組成物を塗布し、異方性色素膜を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、原崎勇次著「コーティング工学」(株式会社朝倉書店、1971年3月20日発行)253頁〜277頁に記載の方法、市村國宏監修「分子協調材料の創製と応用」(株式会社シーエムシー出版、1998年3月3日発行)118頁〜149頁に記載の方法、段差構造を有する基板(予め配向処理を施してもよい)上にスロットダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法、カーテンコート法、ファウンテン法、ディップ法等で塗布する方法が挙げられる。中でも、スロットダイコート法を採用すると、均一性の高い異方性色素膜が得られるため好適である。
スロットダイコート法に用いるダイコーターは、一般的に塗布液を吐出する塗布器、いわゆるスリットダイを備えている。該スリットダイは、例えば、特開平2-164480号公報、特開平6-154687号公報、特開平9-131559号公報、「分散・塗布・乾燥の基礎と応用」(2014年、株式会社テクノシステ、ISBN9784924728707 C 305))、「ディスプレイ・光学部材における湿式コーティング技術」(2007年、情報機構、ISBN9784901677752)、「エレクトロニクス分野における精密塗布・乾燥技術」(2007年、技術情報教会、ISBN9784861041389) 等に開示されている。これら公知のスリットダイは、フィルムやテープなどの可撓性を有した部材やガラス基板のような硬い部材であっても塗布が実施できる。
本発明の異方性色素膜用組成物は、組成物の粘度を低くすることができるため、塗布装置への給液が容易であり、スロットダイコート法での塗布を行う場合にも、実用に耐える塗布速度で塗布することができ、生産性の高い異方性色素膜製造プロセスを構築することができる。
本発明の異方性色素膜形成に使用される基板として、ガラスやトリアセテート、アクリル、ポリエステル、ポリイミド、トリアセチルセルロース又はウレタン系のフィルム等が挙げられる。また、この基板表面には、色素の配向方向を制御するために、「液晶便覧」丸善株式会社、平成12年10月30日発行、226頁から239頁等に記載の公知の方法により、配向処理層(配向膜)を施していてもよい。配向処理層を設けた場合、配向処理層の配向処理の影響と塗布時に異方性色素膜用組成物にかかるせん断力によって色素が配向すると考えられる。
異方性色素膜用組成物を塗布する際の、異方性色素膜用組成物の供給方法、供給間隔は特に限定されない。塗布液の供給操作が繁雑になったり、塗布液の開始時と停止時に塗布膜厚の変動を生じてしまったりする場合があるため、異方性色素膜の膜厚が薄い時には、連続的に異方性色素膜用組成物を供給しながら塗布することが望ましい。
異方性色素膜用組成物を塗布する速度としては、通常1mm/秒以上であり、好ましくは5mm/秒以上である。また、通常1000mm/秒以下であり、好ましくは200mm/秒以下である。塗布速度が適当な範囲であることで、異方性色素膜の異方性が得られ、均一に塗布できる傾向にある。
なお、異方性色素膜用組成物の塗布温度としては、通常0℃以上80℃以下、好ましくは40℃以下である。また、異方性色素膜用組成物の塗布時の湿度は、好ましくは10%RH以上、さらに好ましくは30%RH以上であり、好ましくは80RH%以下である。
異方性色素膜の膜厚は、乾燥膜厚として、好ましくは10nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。一方、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。異方性色素膜の膜厚が適当な範囲にあることで、膜内で色素の均一な配向及び均一な膜厚を得られる傾向にある。
異方性色素膜には、不溶化処理を行ってもよい。不溶化とは、異方性色素膜中の化合物の溶解性を低下させることにより、該化合物の異方性色素膜からの溶出を制御し、膜の安定性を高める処理工程を意味する。
具体的には、例えば少ない価数のイオンを、それより大きい価数のイオンに置き換える(例えば、1価のイオンを多価のイオンに置き換える)処理や、イオン基を複数有する有機分子やポリマーに置き換える処理が挙げられる。このような処理方法としては、例えば、細田豊著「理論製造 染色化学」(技報堂、1957年)435〜437頁等に記載されている処理工程等の公知の方法を用いることができる。
これらの中でも、得られた異方性色素膜を特開2007−241267号公報等に記載の方法で処理し、水に対して不溶性の異方性色素膜とすることが、後工程の容易さ、耐久性等の点から好ましい。
[異方性色素膜]
本発明の異方性色素膜は、遊離酸の形が下記式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が下記式(III)で表されるアゾ色素を含む。
Figure 0006008031
[式(I)において、
Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar13は、電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar14は、式(II)を表す。]
Figure 0006008031
[式(II)において、RN11及びRN12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、
bは0〜3の整数を表し、dは0又は1を表す。 なお、−NRN11N12で表されるアミノ基は、α位又はβ位に置換する。]
Figure 0006008031
[式(III)において、
Ar21は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar22は、電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar23は、式(IV)を表す。]
Figure 0006008031
[式(IV)において、RN21及びRN22は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、
eは0〜3の整数を表し、fは0又は1を表す。なお、−NRN21N22で表されるアミノ基は、α位又はβ位に置換する。]
上記式(I)〜(IV)の各基は、上記の異方性色素膜用組成物で挙げたものと同義であり、好ましい範囲、有していてもよい置換基等も同義である。
本発明の異方性色素膜を液晶ディスプレイ用の偏光素子として使う場合は、異方性色素膜の配向特性は二色比を用いて表すことができる。二色比は8以上あれば偏光素子として機能するが、15以上が好ましく、20以上がさらに好ましく、25以上がさらに好ましく、30以上が特に好ましい。また、二色比は高いほど好ましく、上限はない。二色比が特定値以上であることで、後述する光学素子、特に偏光素子として有用である。
本発明で言う二色比(D)とは、異方性色素が一様に配向している場合、以下の式で表される。
D=Az/Ay
ここで、Azは異方性色素膜に入射した光の偏光方向が異方性色素の配向方向に平行な場合に観測される吸光度であり、Ayはその偏光方向が垂直な場合に観測される吸光度である。それぞれの吸光度は同じ波長のものを用いれば特に制限なく、目的によっていずれの波長を選択してもよいが、異方性色素膜の配向の度合を表す場合は、異方性色素膜の極大吸収波長における値を用いることが好ましい。
また、本発明の異方性色素膜の可視光波長域における透過率は、好ましくは25%以上である。35%以上が更に好ましく、40%以上が特に好ましい。また、透過率は用途に応じた上限であればよい。
例えば、偏光度を高くする場合には、50%以下であることが好ましい。透過率が特定範囲であることで、下記の光学素子として有用であり、特にカラー表示に用いる液晶ディスプレイ用の光学素子として有用である。
[光学素子]
本発明において、光学素子は、光吸収の異方性を利用し直線偏光、円偏光、楕円偏光等を得る偏光素子、位相差素子、屈折異方性や伝導異方性等の機能を有する素子を表す。これらの機能は、異方性色素膜形成プロセスと基板や有機化合物(色素や透明材料)を含有する組成物の選択により、適宜調整することができる。本発明では、偏光素子として用いることが最も好ましい。
[偏光素子]
本発明において、偏光素子は、異方性色素膜を有するものであれば他の如何なる膜(層)を有するものであってもよい。例えば、基板上に配向膜を設け、該配向膜の表面に、異方性色素膜を形成することにより製造することができる。
また、偏光素子は異方性色素膜だけに限らず、偏光性能を向上させる、機械的強度を向上させる等の機能を有するオーバーコート層;粘着層又は反射防止層;配向膜;位相差フィルムとしての機能、輝度向上フィルムとしての機能、反射フィルムとしての機能、半透過反射フィルムとしての機能、拡散フィルムとしての機能などの光学機能を有する層;等、を基板として使用してもよいし、様々な機能を有する層を塗布や貼合等により積層形成し、積層体として使用してもよい。
これらの層は、製造プロセス、特性及び機能に合わせ適宜設けることができ、その積層の位置、順番等は特に限定されない。例えば、上記各層を形成する位置は、異方性色素膜の上に形成してもよく、また、異方性色素膜を設けた基板の反対面に形成してもよい。一方、上記各層を形成する順番は、異方性色素膜を形成する前でも形成した後でもよい。
これら光学機能を有する層は、以下の様な方法により形成することができる。
位相差フィルムとしての機能を有する層は、以下のような方法で得られた位相差フィルムを、偏光素子を構成する他の層に貼合等を行うことにより、形成することができる。
位相差フィルムは、例えば、特開平2−59703号公報、特開平4−230704号公報等に記載の延伸処理を施したり、特開平7−230007号公報等に記載された処理を施したりすることにより形成することができる。
輝度向上フィルムとしての機能を有する層は、以下のような方法で得られた輝度向上フィルムを、偏光素子を構成する他の層に貼合等を行うことにより、形成することができる。
輝度向上フィルムは、例えば、特開2002−169025号公報及び特開2003−29030号公報に記載されるような方法で微細孔を形成すること、又は、選択反射の中心波長が異なる2層以上のコレステリック液晶層を重畳することにより形成することができる。
反射フィルムまたは半透過反射フィルムとしての機能を有する層は、例えば、蒸着やスパッタリングなどで得られた金属薄膜を、偏光素子を構成する他の層に貼合等を行うことにより、形成することができる。
拡散フィルムとしての機能を有する層は、例えば、偏光素子を構成する他の層に微粒子を含む樹脂溶液をコーティングすることにより、形成することができる。
また、位相差フィルムや光学補償フィルムとしての機能を有する層は、ディスコティック液晶性化合物、ネマティック液晶性化合物等の液晶性化合物を、偏光素子を構成する他の層に塗布して配向させることにより形成することができる。
本実施の形態における異方性色素膜をLCDやOLED等の各種の表示素子に異方性色素膜等として用いる場合には、これらの表示素子を構成する電極基板等の表面に直接異方性色素膜を形成したり、異方性色素膜を形成した基板をこれら表示素子の構成部材として用いたりすることができる。
本発明の光学素子は、基板上に塗布などにより異方性色素膜を形成することで偏光素子を得ることができるという点から、フレキシブルディスプレイ等の用途にも好適に使用することができる。
実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。 なお、以下の記載において、「部」は「質量部」を示す。
[アゾ色素の合成例]
本発明で合成した色素は、下記の合成例に従い合成し、必要に応じて精製し用いた。
<合成例1>
4−アミノベンゾニトリル11.8重量部、および水250重量部に塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム7.25重量部を加えてジアゾ化し、水500重量部に溶解した8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1,7−クレーブ酸)22.3重量部とカップリングを行った後、中和、塩析して析出固体を濾過分離し、モノアゾ化合物のウエットケーキを得た。
このモノアゾ化合物のウエットケーキをN−メチルピロリドン640重量部、および水400重量部に溶解し、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム8.97重量部を加えてジアゾ化し、水200重量部に溶解した8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1,7−クレーブ酸)21.2重量部とpH=3〜4でカップリングを行った後、塩析して析出物を取り出した。水に溶解して水酸化ナトリウムで中和し、イソプロピルアルコールを加えて析出固体を濾過分離し、得られたウエットケーキを乾燥して、下記式(V−1)で表されるアゾ色素のナトリウム塩47.6重量部を得た。
下記式(V−1)で表されるアゾ色素のナトリウム塩25.6重量部をN−メチルピロリドン600重量部、および水800重量部に溶解し、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム3.04重量部を加えてジアゾ化し、水600重量部に溶解した7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸(RR酸)(純度:96.7%)14.1重量部とpH=9〜10でカップリングを行った。反応後、析出固体を濾過分離し、下記式(I−1)で表されるトリスアゾ色素のナトリウム塩を得た。
式(I−1)で表されるトリスアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、水酸化リチウム水溶液で中和、濃縮乾燥することにより、式(I−1)で表されるトリスアゾ色素のリチウム塩を得た。この色素の10ppm水溶液での極大吸収波長(λmax)は628nmであった。
また、式(I−1)で表されるトリスアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、遊離酸の水溶液を重量比で80%の分画と20%の分画とに分け、80%の分画を水酸化リチウム水溶液で中和し、残りの20%の分画の遊離酸の水溶液の混合した後、濃縮乾固することにより、式(I−1)で表されるトリスアゾ色素の80モル%リチウム中和塩を得た。
<合成例2>
4−アミノベンズアミド5.45重量部、および水200重量部に塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム3.00重量部を加えてジアゾ化し、水240重量部に溶解した8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1,7−クレーブ酸)8.93重量部とpH=2〜3でカップリングを行った後、中和、塩析して析出固体を濾過分離し、モノアゾ化合物のウエットケーキを得た。
このモノアゾ化合物のウエットケーキをN−メチルピロリドン220重量部、および水110重量部に溶解し、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム3.00重量部を加えてジアゾ化し、水200重量部に溶解した8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1,7−クレーブ酸)8.93重量部とpH=2〜3でカップリングを行った後、塩析して析出物を取り出した。水に溶解して水酸化ナトリウムで中和し、イソプロピルアルコールを加えて析出固体を濾過分離し、得られたウエットケーキを乾燥することにより、下記式(V−2)で表されるアゾ色素のナトリウム塩31.1重量部を得た。
下記式(V−2)で表されるアゾ色素のナトリウム塩31.3重量部をN−メチルピロリドン200重量部、および水260重量部に溶解し、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム3.04重量部を加えてジアゾ化し、水400重量部に溶解した7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸(RR酸)(純度:65.5%)19.5重量部とpH=9〜10でカップリングを行った。反応後、析出固体を濾過分離し下記式(I−2)で表されるトリスアゾ色素のナトリウム塩を得た。
下記式(I−2)で表されるトリスアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、水酸化リチウム水溶液で中和、濃縮乾燥することにより、下記式(I−2)で表されるトリスアゾ色素のリチウム塩を得た。この色素の10ppm水溶液での極大吸収波長(λmax)は627nmであった。
また、式(I−2)で表されるトリスアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、遊離酸の水溶液を重量比で80%の分画と20%の分画とに分け、80%の分画を水酸化リチウム水溶液で中和し、残りの20%の分画の遊離酸の水溶液と混合した後、濃縮乾固することにより、下記式(I−2)で表されるトリスアゾ色素の80モル%リチウム中和塩を得た。
<合成例3>
4−アミノベンズアミド13.61重量部、および水272重量部に塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム7.59重量部を加えてジアゾ化し、水446重量部に溶解した8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1,7−クレーブ酸)22.3重量部とpH=2〜3でカップリング反応を行った後、中和・塩析して析出固体を濾過分離し、モノアゾ化合物のウエットケーキを得た。
このモノアゾ化合物のウエットケーキを,N−メチルピロリドン392重量部及び水392重量部に溶解した。その後、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム7.59重量部を加えてジアゾ化し、水975重量部に溶解した7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸(RR酸)(純度65.5%)48.7重量部とpH=9〜10でカップリング反応を行った。反応後、析出固体を濾過分離し、下記式(III−1)で表されるアゾ色素のナトリウム塩を得た。
下記式(III−1)で表されるアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、水酸化リチウムで中和、濃縮乾燥することにより、下記式(III−1)で表されるアゾ色素のリチウム塩を得た。この色素の10ppm水溶液での極大吸収波長(λmax)は589nmであった。
<合成例4>
下記式(V−1)で表されるアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、水酸化リチウム水溶液で中和、濃縮乾燥することにより、下記式(V−1)で表されるアゾ色素のリチウム塩を得た。この色素の10ppm水溶液での吸収極大波長(λmax)は543nmであった。
<合成例5>
4−アミノベンゾニトリル11.8重量部、および水250重量部に塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム7.25重量部を加えてジアゾ化し、水500重量部に溶解した8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1,7−クレーブ酸)22.3重量部とカップリングを行った後、中和、塩析して析出固体を濾過分離し、モノアゾ化合物のウエットケーキを得た。
このモノアゾ化合物のウエットケーキをN−メチルピロリドン640重量部、および水400重量部に溶解し、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム8.97重量部を加えてジアゾ化し、水300に溶解した7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸(RR酸)(純度:66.9%)45.34重量部とpH=8〜10でカップリングを行った。反応後、析出固体を濾過分離し、下記式(III−2)で表されるアゾ色素のナトリウム塩を得た。
下記式(III−2)で表されるアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、水酸化リチウム水溶液で中和、濃縮乾燥することにより、下記式(III−2)で表されるアゾ色素リチウム塩を得た。この色素の10ppm水溶液での極大吸収波長(λmax)は588nmであった。
<合成例6>
下記式(V−2)で表されるアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、水酸化リチウム水溶液で中和、濃縮乾燥することにより、下記式(V−2)で表されるアゾ色素のリチウム塩を得た。この色素の10ppmの水溶液での極大吸収波長(λmax)は541nmであった。
<合成例7>
4−アミノベンズアミドを、水溶媒中、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウムでジアゾ化し、水溶媒中、p-クレシジンとカップリング反応を行い、析出物を濾取してモノアゾ化合物を得た。
モノアゾ化合物を、水とN−メチルピロリドンの混合溶媒中、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウムでジアゾ化し、水溶媒中、8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸とカップリング反応を行った後、中和、塩析して析出物を濾取してジスアゾ化合物を得た。
ジスアゾ化合物を、水とN−メチルピロリドンの混合溶媒中、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウムでジアゾ化し、水溶媒中、7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸とpH8〜10でカップリング反応を行った。塩析して析出物を濾取し、下記式(I−3)で表されるアゾ色素のナトリウム塩を得た。下記式(I−3)で表されるアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、水酸化リチウム水溶液で中和、濃縮乾固することにより、下記式(I−3)で表されるアゾ色素のリチウム塩を得た。この色素の10ppm水溶液での極大吸収波長(λmax)は619nmであった。
<合成例8>
6−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸を、水溶媒中、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウムでジアゾ化してジアゾ液を得た。別容器にm−トルイジン及びヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムを取り、水溶媒下60〜70℃で反応させた後、冷却してカップリング液とした。ジアゾ液をカップリング液に加えて反応を行った後、アルカリ性で脱保護反応を行い、塩析して析出物を濾取して、モノアゾ化合物を得た。
モノアゾ化合物を、水とN−メチルピロリドンの混合溶媒中、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウムでジアゾ化し、水溶媒中、8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸とカップリング反応を行った後、中和、塩析して析出物を濾取してジスアゾ化合物を得た。
ジスアゾ化合物を、水とN−メチルピロロドンの混合溶媒中、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウムでジアゾ化し、水溶媒中、7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸とpH8〜10でカップリング反応を行った。析出物を濾取し、下記式(I−4)で表されるアゾ色素のナトリウム塩を得た。下記式(I−4)で表されるアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、水酸化リチウム水溶液で中和、濃縮乾固することにより、下記式(I−4)で表される色素のリチウム塩を得た。この色素の10ppm水溶液での極大吸収波長(λmax)は608nmであった。
<合成例9>
6−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸を、水溶媒中、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウムでジアゾ化し、8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸とカップリング反応を行った後、塩析し、析出物を濾取して、モノアゾ化合物を得た。
モノアゾ化合物を水溶媒中、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウムでジアゾ化し、水溶媒中、7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸とpH8〜10でカップリング反応を行った。析出物を濾取し、下記式(III−3)で表されるアゾ色素のナトリウム塩を得た。下記式(III−3)で表されるアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、水酸化リチウム水溶液で中和、濃縮乾固することにより、下記式(III−3)で表される色素のリチウム塩を得た。この色素の10ppm水溶液での極大吸収波長(λmax)は587nmであった。
<合成例10>
3´−アミノアセトアニリド15.0重量部及び水300重量部に、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム7.59重量部を加えてジアゾ化し、水500重量部に溶解した8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1,7−クレーブ酸)22.3重量部とカップリングを行った後、中和、塩析して析出固体を濾過分離し、モノアゾ化合物のウエットケーキを得た。
このモノアゾ化合物のウエットケーキをN−メチルピロリドン640重量部、および水400重量部に溶解し、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム8.97重量部を加えてジアゾ化し、水500重量部に溶解した8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1,7−クレーブ酸)22.3重量部とpH=3〜4でカップリングを行った後、塩析して析出物を濾過分離し、ジスアゾ化合物のウエットケーキを得た。
このジスアゾ化合物のウエットケーキをN−メチルピロリドン600重量部、および水800重量部に溶解し、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム7.59重量部を加えてジアゾ化し、水600重量部に溶解した7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸(RR酸)(純度:96.7%)29.7重量部とpH=9〜10でカップリングを行った。反応後、塩析して析出固体を濾過分離し、下記式(I―5)で表されるトリスアゾ色素のナトリウム塩を得た。
式(I−5)で表されるトリスアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、水酸化リチウム水溶液で中和、濃縮乾燥することにより、式(I−5)で表されるトリスアゾ色素のリチウム塩を得た。この色素の10ppm水溶液での極大吸収波長(λmax)は627nmであった。
また、式(I−5)で表されるトリスアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、遊離酸の水溶液を重量比で80%の分画と20%の分画とに分け、80%の分画を水酸化リチウム水溶液で中和し、残りの20%の分画の遊離酸の水溶液の混合した後、濃縮乾固することにより、式(I−5)で表されるトリスアゾ色素の80モル%リチウム中和塩を得た。
<合成例11>
3−アミノキノリン9.45重量部及び水300重量部に、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム4.99重量部を加えてジアゾ化し、水600重量部に溶解した8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1,7−クレーブ酸)14.6重量部とカップリングを行った後、中和、塩析して析出固体を濾過分離し、モノアゾ化合物のウエットケーキを得た。
このモノアゾ化合物のウエットケーキをN−メチルピロリドン200重量部、および水450重量部に懸濁し、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム6.51重量部を加えてジアゾ化し、水600重量部に溶解した8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1,7−クレーブ酸)14.6重量部とpH=3〜4でカップリングを行った後、中和、塩析して析出固体を濾過分離し、ジスアゾ化合物のウエットケーキを得た。
このジスアゾ化合物のウエットケーキをN−メチルピロリドン300重量部、および水200重量部に懸濁し、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム5.20重量部を加えてジアゾ化し、水400重量部に溶解した7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸(RR酸)(純度:65.5%)31.5重量部とpH=9〜10でカップリングを行った。反応後、塩析して、析出固体を濾過分離し、下記式(I−6)で表されるトリスアゾ色素のナトリウム塩を得た。
式(I−6)で表されるトリスアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、水酸化リチウム水溶液で中和、濃縮乾燥することにより、式(I−6)で表されるトリスアゾ色素のリチウム塩を得た。この色素の10ppm水溶液での極大吸収波長(λmax)は 630 nmであった。
<合成例12>
4−アミノ−N−メチルフタルイミド15.9重量部及び水500重量部に、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム6.83重量部を加えてジアゾ化し、水700重量部に溶解した8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1,7−クレーブ酸)20.1重量部とカップリングを行った後、中和、塩析して析出固体を濾過分離し、モノアゾ化合物のウエットケーキを得た。
このモノアゾ化合物のウエットケーキを、N−メチルピロリドン1000重量部及び水400重量部に溶解し、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム7.48重量部を加えてジアゾ化し、水1100重量部に溶解した7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸(RR酸)(純度:65.5%)29.0重量部とpH=9〜10でカップリングを行った。反応後、析出固体を濾過分離し、下記式(III−4)で表されるジスアゾ色素のナトリウム塩を得た。
式(III−4)で表されるジスアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、水酸化リチウム水溶液で中和、濃縮乾燥することにより、式(III−4)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩を得た。この色素の10ppm水溶液での極大吸収波長(λmax)は594nmであった。
<合成例13>
6−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(純度67.3%)4.78重量部と水60重量部に、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム1.12重量部を加えてジアゾ化し、水80重量部に溶解した3−アミノフタルイミド2.34重量部とカップリングを行った後、中和、塩析して析出固体を濾過分離し、モノアゾ化合物のウエットケーキを得た。
このモノアゾ化合物のウエットケーキを水100重量部に懸濁し、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム1.12重量部を加えてジアゾ化し、水100重量部に溶解した7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸(RR酸)(純度:65.5%)7.02重量部とpH=9〜10でカップリングを行った。反応後、析出固体を濾過分離し、下記式(III−5)で表されるジスアゾ色素のナトリウム塩を得た。
式(III−5)で表されるジスアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、水酸化リチウム水溶液で中和、濃縮乾燥することにより、式(III−5)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩を得た。この色素の10ppm水溶液での極大吸収波長(λmax)は526nmであった。
<合成例14>
3−アミノキノリン2.88重量部、および水100重量部に塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム1.52重量部を加えてジアゾ化し、水100重量部に溶解した5−アミノキノリン2.88重量部とカップリングを行った後、中和、塩析して析出固体を濾過分離し、モノアゾ化合物のウエットケーキを得た。
このモノアゾ化合物のウエットケーキをN−メチルピロリドン100重量部、および水100重量部に懸濁し、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム1.52重量部を加えてジアゾ化し、水200重量部に溶解した7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸(RR酸)(純度:65.5%)9.75重量部とpH=9〜10でカップリングを行った。反応後、塩析して、析出固体を濾過分離し、下記式(III−6)で表されるジスアゾ色素のナトリウム塩を得た。
式(III−6)で表されるジスアゾ色素のナトリウム塩の水溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)に通し、遊離酸の水溶液とした後、水酸化リチウム水溶液で中和、濃縮乾燥することにより、式(III−6)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩を得た。この色素の10ppm水溶液での極大吸収波長(λmax)は 581 nmであった。
[粘度の測定方法]
実施例1〜5及び比較例1〜4の粘度の測定は、レオメーターVAR−50(REOLOGICA社製)を使用し、パラレルプレート(直径40mm、ギャップ0.8mm)にて行った。測定温度を25℃とし、せん断速度1000s-1で5秒間プレシェアを行った後、せん断速度を1000s-1から10s-1まで180秒間で変化させて、せん断速度掃引測定を行った。
一般に液晶性物質の粘度はせん断速度によって変化するので、代表値としてせん断速度400s-1における粘度を各試料の粘度とした。
実施例6〜8及び比較例5〜6の粘度の測定は、B型粘度計DV-I Prime(BROOKFILELD社製)を使用し、コーンプレート(直径24 mm、コーン角度0.8°、ギャップ 0.0005inch = 0.013 mm)にて行った。測定温度を25℃とし、せん断速度90.0s-1で10秒間プレシェアを行った後、せん断速度を90.0s-1から2.25s-1まで720秒間で変化させて、せん断速度掃引測定を行った。
一般に液晶性物質の粘度はせん断速度によって変化する。 本測定装置の限界測定粘度の観点から、代表値としてせん断速度11.3s-1における粘度を各試料の粘度とした。
[異方性色素膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率及び二色比の測定方法]
実施例及び比較例において、異方性色素膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率及び二色比は、グラムトムソン偏光子を備える分光光度計(大塚電子(株)製、製品名「RETS-100」)を用いて測定した。まず、異方性色素膜に直線偏光の測定光を入射し、異方性色素膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率及び偏光軸方向の偏光に対する透過率を測定した後、次式により二色比を計算した。
二色比 (D) = Az/Ay
A y = − l o g ( T y )
T z : 異方性色素膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率
T y : 異方性色素膜の偏光軸方向の偏光に対する透過率
[濾過性の評価方法]
調液した溶液の濾過性は下記の要領で評価した。 調液した溶液を 5 ml 準備し、Millex- LH 0.45・m (Merck Millipore Ltd. 製)を装着した10 mlシリンジにて濾過した。濾過性は以下のように評価した。本発明では、○ 、△が実用可のレベルである。
〇:速やかに濾過できた。
△:ゆっくりであるが濾過できた。
×:シリンジに非常に強い力を加える必要がある又は濾過ができなかった。
[実施例1]
水88.40 部に、下記式(I−1)で表されるアゾ色素のリチウム塩10.64部、下記式(I−1)で表されるアゾ色素の80モル%リチウム中和塩0.40部、下記式(III−1)で表されるアゾ色素のリチウム塩0.12部、下記式(V−1)で表されるアゾ色素のリチウム塩0.04部と塩化リチウム0.4部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物1を得た。
スライドガラス上にこの異方性色素膜用組成物1を一滴垂らし、カバーガラスで覆った試料を偏光顕微鏡にて観察して、液晶相が発現しているか確認することで、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物1の粘度を前記の方法にて測定した。その結果を表1に示す。
一方、基材としてポリイミドの配向膜 (LX1400、日立化成デュポンマイクロシステムズ社製)が形成されたガラス基板(150mm×150mm、厚さ1.1mm、膜厚約800Åのポリイミドにあらかじめ布でラビング処理を施したもの)に前記の異方性色素膜用組成物1をギャップ10μmのアプリケーター (堀田製作所社製) で塗布した後、自然乾燥することにより異方性色素膜1を得た。得られた異方性色素膜1について、640nmでの二色比(D)を測定した。その結果を表1に示す。
[実施例2]
水88.40 部に、下記式(I−1)で表されるアゾ色素のリチウム塩10.64部、下記式(I−1)で表されるアゾ色素の80モル%リチウム中和塩0.40部、下記式(III−2)で表されるアゾ色素のリチウム塩0.12部、下記式(V−1)で表されるアゾ色素のリチウム塩0.04部と塩化リチウム0.4部を加え撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物2を得た。
スライドガラス上にこの異方性色素膜用組成物2を一滴垂らし、カバーガラスで覆った試料を偏光顕微鏡にて観察して、液晶相が発現しているか確認することで、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物2の粘度を前記の方法にて測定した。その結果を表1に示す。
一方、実施例1と同様の基板に異方性色素膜用組成物2をギャップ10μmのアプリケーター (堀田製作所社製) で塗布した後、自然乾燥することにより異方性色素膜2を得た。得られた異方性色素膜2について、640nmでの二色比(D)を測定した。その結果を表1に示す。
[実施例3]
水88.40 部に、下記式(I−2)で表されるアゾ色素のリチウム塩10.64部、下記式(I−2)で表されるアゾ色素の80モル%リチウム中和塩0.40部、下記式(III−1)で表されるアゾ色素のリチウム塩0.12部、下記式(V−2)で表されるアゾ化合物のリチウム塩0.04部と塩化リチウム0.4部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物3を得た。
スライドガラス上にこの異方性色素膜用組成物3を一滴垂らし、カバーガラスで覆った試料を偏光顕微鏡にて観察して、液晶相が発現しているか確認することで、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物3の粘度を前記の方法にて測定した。その結果を表1に示す。
一方、実施例1と同様の基板に前記の異方性色素膜用組成物3をギャップ10μmのアプリケーター (堀田製作所社製)で塗布した後、自然乾燥することにより異方性色素膜3を得た。得られた異方性色素膜について、640nmでの二色比(D)を測定した。その結果を表1に示す。
[実施例4]
水90.68 部に、下記式(I−3)で表されるアゾ色素のリチウム塩8.20部、下記式(I−3)で表されるアゾ色素の80モル%リチウム中和塩0.64部、下記式(III−1)で表されるアゾ色素のリチウム塩0.16部と塩化リチウム0.32部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物4を得た。
スライドガラス上にこの異方性色素膜用組成物4を一滴垂らし、カバーガラスで覆った試料を偏光顕微鏡にて観察して、液晶相が発現しているか確認することで、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物4の粘度を前記の方法にて測定した。その結果を表1に示す。
一方、実施例1と同様の基板に前記の異方性色素膜用組成物4をギャップ10μmのアプリケーター (堀田製作所社製)で塗布した後、自然乾燥することにより異方性色素膜4を得た。得られた異方性色素膜について、640nmでの二色比(D)を測定した。その結果を表1に示す。
[実施例5]
水80.86 部に、下記式(I−4)で表されるアゾ色素のリチウム塩16.82部、下記式(I−4)で表されるアゾ色素の80モル%リチウム中和塩1.32部、下記式(III−3)で表されるアゾ色素のリチウム塩0.34部と塩化リチウム0.66部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物5を得た。
スライドガラス上にこの異方性色素膜用組成物5を一滴垂らし、カバーガラスで覆った試料を偏光顕微鏡にて観察して、液晶相が発現しているか確認することで、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物5の粘度を前記の方法にて測定した。その結果を表1に示す。
一方、実施例1と同様の基板に前記の異方性色素膜用組成物5をギャップ10μmのアプリケーター (堀田製作所社製)で塗布した後、自然乾燥することにより異方性色素膜5を得た。得られた異方性色素膜について、640nmでの二色比(D)を測定した。その結果を表1に示す。
[実施例6]
水 83.78 部に、下記式(I−5)で表されるアゾ色素のリチウム塩 14.35 部、下記式(I−5)で表されるアゾ色素の80モル%リチウム中和塩 1.10 部、下記式(III−4)で表されるアゾ色素のリチウム塩 0.22 部と塩化リチウム 0.55 部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物6を得た。
スライドガラス上にこの異方性色素膜用組成物6を一滴垂らし、カバーガラスで覆った試料を偏光顕微鏡にて観察して、液晶相が発現しているか確認することで、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物6の粘度を前記の方法にて測定した。その結果を表2に示す。
[実施例7]
水 83.78 部に、下記式(I−5)で表されるアゾ色素のリチウム塩 14.35 部、下記式(I−5)で表されるアゾ色素の80モル%リチウム中和塩 1.10 部、下記式(III−5)で表されるアゾ色素のリチウム塩 0.22 部と塩化リチウム 0.55 部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物7を得た。
スライドガラス上にこの異方性色素膜用組成物7を一滴垂らし、カバーガラスで覆った試料を偏光顕微鏡にて観察して、液晶相が発現しているか確認することで、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物7の粘度を前記の方法にて測定した。その結果を表2に示す。
[実施例8]
水 91.245 部に、下記式(I−6)で表されアゾ色素のリチウム塩 8.500 部、下記式(III−6)で表されるアゾ色素のリチウム塩 0.255 部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物8を得た。
スライドガラス上にこの異方性色素膜用組成物8を一滴垂らし、カバーガラスで覆った試料を偏光顕微鏡にて観察して、液晶相が発現しているか確認することで、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物8の粘度を前記の方法にて測定した。その結果を表2に示す。
[比較例1]
水88.4 部に、下記式(I−1)で表されるアゾ色素のリチウム塩10.80部、下記式(I−1)で表されるアゾ色素の80モル%リチウム中和塩0.40部と塩化リチウム0.4部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物31を得た。
スライドガラス上にこの異方性色素膜用組成物31を一滴垂らし、カバーガラスで覆った試料を偏光顕微鏡にて観察して、液晶相が発現しているか確認することで、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物31の粘度を前記の方法にて測定した。その結果を表1に示す。
一方、実施例1と同様の基板に異方性色素膜用組成物31をギャップ10μmのアプリケーター (堀田製作所社製) で塗布した後、自然乾燥することにより異方性色素膜31を得た。得られた異方性色素膜31について、640nmでの二色比(D)を測定した。その結果を表1に示す。
[比較例2]
水88.4 部に、下記式(I−2)で表されるアゾ色素のリチウム塩10.80部、下記式(I−2)で表されるアゾ色素の80モル%リチウム中和塩0.40部と塩化リチウム0.4部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物32を得た。
スライドガラス上にこの異方性色素膜用組成物32を一滴垂らし、カバーガラスで覆った試料を偏光顕微鏡にて観察して、液晶相が発現しているか確認することで、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物32の粘度を前記の方法にて測定した。その結果を表1に示す。
一方、実施例1と同様の基板に異方性色素膜用組成物32をギャップ10μmのアプリケーター (堀田製作所社製) で塗布した後、自然乾燥することにより異方性色素膜32を得た。得られた異方性色素膜32について、640nmでの二色比(D)を測定した。その結果を表1に示す。
[比較例3]
水90.68 部に、下記式(I−3)で表されるアゾ色素のリチウム塩8.36部、下記式(I−3)で表されるアゾ色素の80モル%リチウム中和塩0.64部と塩化リチウム0.32部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物33を得た。
スライドガラス上にこの異方性色素膜用組成物33を一滴垂らし、カバーガラスで覆った試料を偏光顕微鏡にて観察して、液晶相が発現しているか確認することで、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物33の粘度を前記の方法にて測定した。その結果を表1に示す。
一方、実施例1と同様の基板に前記の異方性色素膜用組成物33をギャップ10μmのアプリケーター (堀田製作所社製)で塗布した後、自然乾燥することにより異方性色素膜33を得た。得られた異方性色素膜について、640nmでの二色比(D)を測定した。その結果を表1に示す。
[比較例4]
水80.87 部に、下記式(I−4)で表されるアゾ色素のリチウム塩17.15部、下記式(I−4)で表されるアゾ色素の80モル%リチウム中和塩1.32 部と塩化リチウム0.66部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物34を得た。
スライドガラス上にこの異方性色素膜用組成物34を一滴垂らし、カバーガラスで覆った試料を偏光顕微鏡にて観察して、液晶相が発現しているか確認することで、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物34の粘度を前記の方法にて測定した。その結果を表1に示す。
一方、実施例1と同様の基板に前記の異方性色素膜用組成物34をギャップ10μmのアプリケーター (堀田製作所社製)で塗布した後、自然乾燥することにより異方性色素膜34を得た。得られた異方性色素膜について、640nmでの二色比(D)を測定した。その結果を表1に示す
[比較例5]
水 84.00 部に、下記式(I−5)で表されるアゾ色素のリチウム塩 14.35 部、下記式(I−5)で表されるアゾ色素の80モル%リチウム中和塩 1.10 部と塩化リチウム 0.55 部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物35を得た。
スライドガラス上にこの異方性色素膜用組成物35を一滴垂らし、カバーガラスで覆った試料を偏光顕微鏡にて観察して、液晶相が発現しているか確認することで、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物35の粘度を前記の方法にて測定した。その結果を表2に示す。
[比較例6]
水 91.50 部に、下記式(I−6)で表されるアゾ色素のリチウム塩 8.50 部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物36を得た。
スライドガラス上にこの異方性色素膜用組成物36を一滴垂らし、カバーガラスで覆った試料を偏光顕微鏡にて観察して、液晶相が発現しているか確認することで、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物36の粘度を前記の方法にて測定した。その結果を表2に示す。
[実施例9]
基材としてポリイミドの配向膜 (LX1400、日立化成デュポンマイクロシステムズ社製)が形成されたガラス基板(100mm×100mm、厚さ1.1mm、膜厚約800Åのポリイミドにあらかじめ布でラビング処理を施したもの)に前記の異方性色素膜用組成物1をダイコーターを用いて塗布時の膜厚が4.5μmとなるように塗布した。基材全面に欠陥なく塗布できるような上限の塗布速度を求めたところ、25mm/sで塗布ができた。その後、自然乾燥することにより異方性色素膜6を得た。得られた異方性色素膜6について、640nmでの二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
[比較例7]
異方性色素膜用組成物1を異方性色素膜用組成物31に変更した以外は実施例9と同様に塗布した。基材全面に欠陥なく塗布できるような上限の塗布速度を求めたところ、5mm/sで塗布ができた。その後、自然乾燥することにより異方性色素膜37を得た。得られた異方性色素膜37について、640nmでの二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
Figure 0006008031
Figure 0006008031
Figure 0006008031
Figure 0006008031
Figure 0006008031
Figure 0006008031
本発明の異方性色素膜用組成物1及び2(実施例1及び2)は、該異方性色素膜用組成物の製造段階での異物除去の際のろ過性に優れていた。また、本願発明の構成であることで、異方性色素膜用組成物31(比較例1)に対して、異方性色素膜の二色比を維持しながら、異方性色素膜用組成物1及び2の粘度が低下していることが示された。異方性色素膜用組成物の粘度が低下することにより、塗布速度を向上させることができる。これは、異方性色素膜用組成物1及び異方性色素膜用組成物31をダイコーターで塗布した実施例9及び比較例7に示されている通りである。
同様に、異方性色素膜用組成物3(実施例3)と異方性色素膜用組成物32(比較例2)、異方性色素膜用組成物4(実施例4)と異方性色素膜用組成物33(比較例3)、異方性色素膜用組成物4(実施例4)と異方性色素膜用組成物34(比較例3)、異方性色素膜用組成物5(実施例5)と異方性色素膜用組成物35(比較例4)からも、本願発明の構成であることで、ろ過性に優れ、異方性色素膜の二色比を維持しながら、異方性色素膜用組成物の粘度を低下させることが示された。
また、異方性色素膜用組成物6(実施例6)、異方性色素膜用組成物7(実施例7)と異方性色素膜用組成物35(比較例5)、異方性色素膜用組成物8(実施例8)と異方性色素膜用組成物36(比較例6)からも、本願発明の構成であることで、ろ過性に優れ、異方性色素膜用組成物の粘度を低下させることが示された。

Claims (8)

  1. アゾ色素及び溶剤を含む異方性色素膜用組成物であって、前記アゾ色素は、遊離酸の形が下記式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が下記式(III)で表されるアゾ色素を含むことを特徴とする異方性色素膜用組成物。
    Figure 0006008031
    [式(I)において、
    Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
    Ar13は、電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
    Ar14は、式(II)を表す。]
    Figure 0006008031
    [式(II)において、RN11及びRN12は、水素原子を表し、
    bは1又は2を表し、dは1を表す。なお、−NRN11N12で表されるアミノ基は、β位に置換する。]
    Figure 0006008031
    [式(III)において、
    Ar21は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
    Ar22は、電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していても
    よい1,4−ナフチレン基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
    Ar23は、式(IV)を表す。]
    Figure 0006008031
    [式(IV)において、RN21及びRN22は、水素原子を表し、
    eは1又は2を表し、fは1を表す。なお、−NRN21N22で表されるアミノ基は、β位に置換する。]
  2. 式(I)のAr14が式(VI)で表されるものである、及び/又は式(III)のAr23が式(VII)で表されるものである、請求項1に記載の異方性色素膜用組成物。
    Figure 0006008031
    [式(VI)において、g及びhはそれぞれ独立に、0又は1を表し、g及びhの和は1又は2である。なお、式(VI)におけるd、RN11及びRN12は、式(II)のd、RN11及びRN12と同義である。]
    Figure 0006008031
    [式(VII)において、i及びjはそれぞれ独立に、0又は1を表し、i及びjの和は1又は2である。なお、式(VII)におけるf、RN21及びRN22は、式(IV)のf、RN21及びRN22と同義である。]
  3. 前記式(I)のAr12が、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基及び、単環又は2環性の置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群より選択されるものである、請求項1又は2に記載の異方性色素膜用組成物。
  4. 前記式(I)のAr11が、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基及び、単環又は2環性の置換基を有していてもよい芳香族複素環基からなる群より選択されるものであり、置換基として電子求引基を少なくとも1つ有するものである、請求項1〜3の何れか1項に記載の異方性色素膜用組成物。
  5. 前記式(I)のAr11〜Ar14から選択される少なくとも1つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(III)のAr21〜Ar23から選択される少なくとも1つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造と同一である、請求項1〜4の何れか1項に記載の異方性色素膜用組成物。
  6. 式(I)のAr11〜Ar13から選択される少なくとも1つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(III)のAr21及び/又はAr22の構造から有していてもよい置換基を除いた構造と同一である、請求項1〜5の何れか1項に記載の異方性色素膜用組成物。
  7. 式(I)のAr11〜Ar14から選択される少なくとも1つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造が、式(III)のAr21〜Ar23から選択される少なくとも1つの構造から有していてもよい置換基を除いた構造と同一であり、且つ、前記有していてもよい置換基の群が同一である、請求項1〜6の何れか1項に記載の異方性色素膜用組成物。
  8. 遊離酸の形が下記式(I)で表されるアゾ色素、及び遊離酸の形が下記式(III)で表されるアゾ色素を含むことを特徴とする異方性色素膜。
    Figure 0006008031
    [式(I)において、
    Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
    Ar13は、電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
    Ar14は、式(II)を表す。]
    Figure 0006008031
    [式(II)において、RN11及びRN12は、水素原子を表し、
    bは1又は2を表し、dは1を表す。なお、−NRN11N12で表されるアミノ基は、β位に置換する。]
    Figure 0006008031
    [式(III)において、
    Ar21は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
    Ar22は、電子供与基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
    Ar23は、式(IV)を表す。]
    Figure 0006008031
    [式(IV)において、RN21及びRN22は、水素原子を表し、
    eは1又は2を表し、fは1を表す。なお、−NRN21N22で表されるアミノ基は、β位に置換する。]
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