JP6006430B2 - ビニル芳香族炭化水素重合体組成物及びビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造方法 - Google Patents

ビニル芳香族炭化水素重合体組成物及びビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ビニル芳香族炭化水素重合体組成物及びビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造方法に関する。
スチレン系樹脂は優れた透明性、成形加工性、剛性を有するため、家電、事務機製品、雑貨、住宅設備等の成形材料や食品包装材料に多く利用されている。近年、省資源、省エネルギーの観点から、製品の薄肉化、軽量化、生産性が要求され、樹脂性能としては強度、剛性、成形性の高い材料が求められる。
また、上記した成形材料を成形するにあたって、成形の過程で溶融樹脂がダイや金型等の拘束を受けない自由表面を形成する、例えばブロー成形、真空成形、押出成形、Tダイ成形、インフレーション成形などの成形方法を採用する場合、当該成形材料の伸長粘度が高いことが好ましいということが知られている。伸長粘度が増大すると、成形材料の成形安定性、即ち偏肉しにくさが向上する。その結果、複雑な製品形状への成形が容易となり、成形品強度にも寄与する。
一般に、伸張粘度を増大させる方法としては、超高分子量成分を含有させる方法が知られている。しかしながら、単に超高分子量成分を含有させるのみでは、伸張粘度は上がるものの樹脂の流動性、加工性が悪化する。従って、ブロー成形、真空成形、押出成形、Tダイ成形、インフレーション成形などの成形加工においては伸張粘度と加工性(流動性)、剛性のバランスが優れた材料が要求される。
これに対し、特許文献1には、100万以上の分子量成分を一定範囲に含有する、流動性、耐衝撃性を向上させるスチレン系樹脂組成物、製造方法が提案されている。また、特許文献2には、ラジカル重合で得られたスチレン重合体に、アニオン重合で得られた高分子量成分を混合させるスチレン系樹脂組成物が提案されている。
特開平2−170806号公報 特開平9−316261号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、超高分子量成分を生成させる方法として多官能ビニル化合物、特にジビニルベンゼンを使用しているため、超高分子量成分の生成は達成しうるものの、長期間の生産においては反応機内等でゲル化が進行し、好ましくない。また、特許文献2に記載の技術では、異なる製法により得られる樹脂を事後的に混合させるため、工業的には煩雑で好ましくない。
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑みてなされたものであり、伸張粘度、加工性(流動性)、剛性のバランスに優れたビニル芳香族炭化水素重合体組成物及びその生産に適するビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、従来の線状ビニル芳香族炭化水素重合体に特定構造の共重合体を含有させることにより、伸張粘度、加工性(流動性)バランスに優れたビニル芳香族炭化水素重合体組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
線状ビニル芳香族炭化水素重合体(A)と分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)を含むビニル芳香族炭化水素重合体組成物であって、
前記線状ビニル芳香族炭化水素重合体(A)及び分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)が、1種のビニル芳香族炭化水素の単独重合体又は2種以上のビニル芳香族炭化水素の共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸との共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸のアルキルエステルとの共重合体、及びビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸無水物又はマレイミドとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)が、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体中の共役ジエン化合物単位を起点として分岐しており、
前記ビニル芳香族炭化水素重合体組成物中に含まれる前記ブロック共重合体の含有量が、共役ジエン換算量で0.1質量%以上1.3質量%以下である、ビニル芳香族炭化水素重合体組成物。
[2]
前記ビニル芳香族炭化水素重合体組成物において、四酸化オスミウムを触媒とするターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによる酸化分解を行う場合、当該酸化分解前のZ平均分子量(Mz1)と当該酸化分解後のZ平均分子量(Mz2)の比(Mz2/Mz1)が、0.30以上0.90以下である、[1]に記載のビニル芳香族炭化水素重合体組成物。
[3]
前記分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)が、前記線状ビニル芳香族炭化水素重合体(A)中に分散しており、10万倍に拡大した電子顕微鏡写真4μm2の面積あたり粒子径50nm以下の点粒子が0〜1000個存在する、[1]又は[2]に記載のビニル芳香族炭化水素重合体組成物。
[4]
前記ビニル芳香族炭化水素重合体組成物の重量平均分子量が、15万以上50万以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載のビニル芳香族炭化水素重合体組成物。
[5]
ビニル芳香族炭化水素重合体組成物の分岐度が、0.30以上0.90未満である、[1]〜[4]のいずれかに記載のビニル芳香族炭化水素重合体組成物。
[6]
ビニル芳香族炭化水素重合体組成物中の100万以上の分子量成分が2.0%以上20%以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載のビニル芳香族炭化水素重合体組成物。
[7]
前記ブロック共重合体中の共役ジエン化合物単位由来の構成成分量が5質量%40質量%以下であり、
前記ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素化合物単位由来の構成成分量が60質量%以上95質量%以下であり、
前記ブロック共重合体中におけるビニル結合量が、7%以上70%以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載のビニル芳香族炭化水素重合体組成物。
[8]
[1]〜[7]のいずれかに記載のビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造方法であって、
ラジカル重合可能な単量体に、前記ブロック共重合体を溶解する工程と、
前記溶解後、ラジカル重合を行う工程と、
を含み、
前記ラジカル重合可能な単量体から得られる重合体が、1種のビニル芳香族炭化水素の単独重合体又は2種以上のビニル芳香族炭化水素の共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸との共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸のアルキルエステルとの共重合体、及びビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸無水物又はマレイミドとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、ビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造方法。
本発明のビニル芳香族炭化水素重合体組成物は、剛性、伸張粘度、加工性(流動性)バランスに優れる。そのため、本発明のビニル芳香族炭化水素重合体組成物は、ブロー成形、真空成形、押出成形、Tダイ成形、インフレーション成形等の用途に幅広く応用することができる。
図1は、参考例6で得られたビニル芳香族炭化水素重合体組成物を透過型電子顕微鏡で撮影した写真である。 図2は、比較例1〜5及び比較例8〜9と実施例1〜5,7〜と参考例6の組成物のメルトマスフローレート(MFR)と伸長粘度との関係を、実施例及び参考例と比較例との対比で示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<ビニル芳香族炭化水素重合体組成物>
本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物は、線状ビニル芳香族炭化水素重合体(A)と分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)を含む。なお、本明細書において、線状ビニル芳香族炭化水素重合体を単に「(A)」と、分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体を単に「(B)」と、それぞれ称する場合がある。さらに、本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物は、前記(A)及び(B)が、1種のビニル芳香族炭化水素の単独重合体又は2種以上のビニル芳香族炭化水素の共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸との共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸のアルキルエステルとの共重合体、及びビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸無水物又はマレイミドとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、前記(B)が、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体中の共役ジエン化合物単位を起点として分岐しており、前記ビニル芳香族炭化水素重合体組成物中に含まれる前記ブロック共重合体の含有量が、共役ジエン換算量で0.1質量%以上2.0質量%以下である。上記のように構成されているため、本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物は、剛性、伸張粘度、加工性(流動性)バランスに優れる。
即ち、本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物においては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体が含まれているため、当該ブロック共重合体の共役ジエン部分において起きる水素原子の引き抜きにより、あるいはビニル基にビニル芳香族炭化水素鎖が結合することにより、高分子量成分を成す分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)と線状ビニル芳香族炭化水素重合体(A)とを同時に得ることができる。
上記のとおり、本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物中において、「ブロック共重合体が含まれる」とは、当該ブロック共重合体由来の(B)成分が本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物中に含まれていることを意味する。さらに、「(A)及び(B)が1種のビニル芳香族炭化水素の単独重合体又は2種以上のビニル芳香族炭化水素の共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸との共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸のアルキルエステルとの共重合体、及びビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸無水物又はマレイミドとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む」とは、(A)成分については「1種のビニル芳香族炭化水素の単独重合体又は2種以上のビニル芳香族炭化水素の共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸との共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸のアルキルエステルとの共重合体、及びビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸無水物又はマレイミドとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種」が(A)成分そのものとして本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物中に含まれていることを意味し、(B)成分については「1種のビニル芳香族炭化水素の単独重合体又は2種以上のビニル芳香族炭化水素の共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸との共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸のアルキルエステルとの共重合体、及びビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸無水物又はマレイミドとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種」に由来する成分が上記ブロック共重合体の共役ジエン部分に結合するビニル芳香族炭化水素鎖中に含まれていることを意味する。
本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物中に含まれるブロック共重合体の含有量は、共役ジエン換算量で0.1質量%以上2.0質量%以下である。上記共役ジエン換算量が上記範囲内にあることにより、良好な伸長粘度、流動性、剛性を発現することができる。上記共役ジエン換算量は、伸長粘度と剛性の観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.4質量%以上である。一方、流動性の観点から、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは1.3質量%以下である。上記共役ジエン換算量が0.1質量%未満の場合は、共役ジエン部分へのビニル芳香族炭化水素鎖の結合確率が少なくなり、高分子量化した(B)が得られず、高い伸張粘度の組成物とすることができない。また、共役ジエン換算量が2.0質量%より大きいと、ビニル芳香族炭化水素重合体組成物の加工性(流動性)や剛性が低下する。なお、上記共役ジエン換算量は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
本実施形態における(A)成分は、ラジカル重合可能な単量体を構成単位として含むことができる。上記ラジカル重合可能な単量体としては、以下に限定されないが、例えば、ビニル芳香族炭化水素単量体を挙げることができる。また、上記ビニル芳香族炭化水素単量体と組み合わせて、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、不飽和カルボン酸無水物、マレイミド等を使用することもできる。
上記したラジカル重合可能な単量体を用いて、1種のビニル芳香族炭化水素の単独重合体又は2種以上のビニル芳香族炭化水素の共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸との共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸のアルキルエステルとの共重合体、及びビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸無水物又はマレイミドとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む重合体を得ることが好ましい。換言すると、本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物は、1種のビニル芳香族炭化水素の単独重合体又は2種以上のビニル芳香族炭化水素の共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸との共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸のアルキルエステルとの共重合体、及びビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸無水物又はマレイミドとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む重合体を(A)成分及び(B)成分として含むことが好ましい。なお、上記ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸のアルキルエステルとの共重合体は、二元共重合体とすることもできるし、三元共重合体とすることもできる。
上記ビニル芳香族炭化水素単量体としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−,及びp−メチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン等を用いることができる。中でも、スチレンが好ましい。ビニル芳香族炭化水素単量体は1種類又は2種類以上の併用で使用できる。
本実施形態の目的を損なわない範囲で、ビニル芳香族炭化水素単量体と組み合わせて使用できる(共重合できる)他の不飽和単量体の具体例を次に示す。すなわち、上記不飽和カルボン酸としては、以下に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等を挙げることができる。また、上記不飽和カルボン酸のアルキルエステルとしては、以下に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸のアルキルエステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸のアルキルエステル等を挙げることができる。さらに、上記不飽和カルボン酸無水物としては、以下に限定されないが、例えば、無水マレイン酸等を挙げることができる。さらにまた、上記マレイミドとしては、以下に限定されないが、例えば、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等を挙げることができる。本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物は、上記したビニル芳香族炭化水素単量体と共重合可能な不飽和単量体を50質量%以下で含有することが好ましい。より詳細には、上記不飽和カルボン酸の使用量については、0〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。上記不飽和カルボン酸のアルキルエステルの使用量については、0〜45質量%であることが好ましく、1〜40質量%であることがより好ましい。上記不飽和カルボン酸無水物及び上記マレイミドの使用量については、0〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。上記したビニル芳香族炭化水素単量体と共重合可能な不飽和単量体が50質量%以下である場合、十分に良好な耐熱性と成形加工性を確保できる傾向にある。
本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物は、重量平均分子量が15万以上50万以下であることが好ましい。より好ましくは、20万以上40万以下であり、更に好ましくは25万以上35万以下である。重量平均分子量が15万以上である場合、十分良好な製品強度を確保できる傾向にあり、50万以下である場合、十分良好な成形加工性を確保できる傾向にある。なお、上記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得ることができる。
本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物は、上記のとおり線状ビニル芳香族炭化水素重合体(A)と分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)を含むため、従来のビニル芳香族炭化水素単量体の直鎖状の重合物と比較すると、容易に高分子量重合体を得ることができる。上記「高分子量」については、以下のように評価することができる。すなわち、本実施形態のスチレン系樹脂組成物の100万以上の分子量成分は、2.0%以上20%以下であることが好ましく、より好ましくは3.0%以上18%以下であり、更に好ましくは4.0%以上15%以下である。上記100万以上の分子量成分が2.0%以上である場合、高分子量成分量を十分なものとしつつ、同じ重量平均分子量で比較した場合、従来のスチレン系単量体の直鎖状の重合物よりも良好な伸張粘度を有する組成物とすることができる傾向にある。また、100万以上の分子量成分が20%以下である場合、十分に良好な成形加工性を確保できる傾向にある。
また、本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物中の分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)は、例えば、四酸化オスミウムを溶液とターシャリーブチルハイドロパーオキサイドの混合分解剤によって分子内の共役ジエンブロックを酸化分解することにより、その存在を確認することができる。即ち、分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)が形成されていれば、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体の共役ジエン部分に結合していたビニル芳香族炭化水素鎖が酸化分解によって切断されるため、Z平均分子量が低下する。ここで、本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、酸化分解前のZ平均分子量(Mz1)と当該酸化分解後のZ平均分子量(Mz2)の比(Mz2/Mz1)は、流動性の観点から0.30以上であることが好ましく、より好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.60以上である。一方、伸長粘度の観点から0.90以下であることが好ましく、より好ましくは0.85以下である、更に好ましくは0.80以下である。上記Z平均分子量の比が0.90以下である場合、共役ジエン部分へのビニル芳香族炭化水素鎖の結合の量を十分に確保することができるため、十分な高分子量化を図れる傾向にあり、十分に高い伸張粘度を有する組成物となる傾向にある。また、Z平均分子量の比が0.30以上である場合、十分な流動性を確保でき、伸張粘度と加工性(流動性)のバランスを十分に優れたものとすることができる傾向にある。
本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物の分岐度は、流動性の観点から0.30以上であることが好ましく、より好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.60以上である。一方、伸長粘度の観点から0.90未満であることが好ましく、より好ましくは0.85以下である。分岐度が0.90未満である場合、分子内の分岐数を十分な量確保できるため、十分に高い伸張粘度を有する組成物となる傾向にある。また、分岐度が0.30以上である場合、十分な流動性を確保でき、伸張粘度と加工性(流動性)のバランスを十分に優れたものとすることができる傾向にある。なお、上記分岐度は、絶対分子量測定 マルチ検出器GPC/SECシステム(例えば、スペクトリス(株)製Viscotek TDAmax)を用いて測定される、重量平均分子量=100万における固有粘度の対数比によって表すことができる。
本実施形態においては、分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)が線状ビニル芳香族炭化水素重合体(A)中に分散した点粒子のうち、粒子径50nm以下の分散粒子が10万倍に拡大した電子顕微鏡写真4μmの面積あたり0個以上1000個以下の点状粒子として存在することが好ましい。上記点状粒子の4μmの面積あたりの個数として、より好ましくは0個以上800個以下であり、更に好ましくは0個以上600個以下であり、より更に好ましくは0個以上400個以下であり、特に好ましくは0個以上200個以下である。最も好ましくは0個(点状粒子が存在しないこと)である。上記点状粒子が存在しない場合及び点状粒子の4μmの面積あたりの個数が1000個以内である場合は、十分に良好な剛性を確保できる傾向にある。なお、粒子径50nm以下の分散粒子についての4μmあたりの個数は、本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物から切り出した80nmの超薄切片をオスミウム酸で染色した後、透過型電子顕微鏡で撮影した写真から求めることができる。ここで、点状粒子とは、内部にオクルード構造を持たない、いわゆるコアシェル粒子やサラミ粒子ではない粒子である。また、サラミ粒子とは、内部に小さなポリスチレン粒子が複数詰まったポリブタジエンゴムのことを指し、コアシェル粒子とは内部に1個のポリスチレン粒子を含むポリブタジエンゴムのことを指す。なお、点粒子が凝集した形態のものは、凝集した形態中の点粒子の個数をそれぞれ数える。ビニル芳香族炭化水素重合体組成物中にコアシェル粒子、サラミ粒子が多数存在すると剛性が低下する傾向があるが、本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物では効果を害さない限り、これらコアシェル粒子、サラミ粒子を含んでいてもよい。なお、上記粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
(ブロック共重合体)
本実施形態におけるブロック共重合体は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンから構成され、芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体とも称することができる。上記ブロック共重合体は、少なくとも1種類の共役ジエン系単量体と少なくとも1種類の芳香族ビニル系単量体とを、例えば、リビングアニオン重合体の存在下で溶液重合させる等の方法により、製造することができる。
上記共役ジエン系単量体としては、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等であり、一種又は二種以上用いられる。好ましい単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
また、上記芳香族ビニル系単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等であり、一種又は二種上用いられる。特にスチレンが好ましい。溶液重合で用いる炭化水素溶媒の例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が用いられる。好ましい例としては、ヘキサン、シクロヘキサンが挙げられる。
本実施形態におけるブロック共重合体のより詳細な製造方法を以下に例示する。すなわち、リビングアニオン重合体を調製し、引き続き共役ジエン系単量体を添加し、単量体の重合終了後、芳香族ビニル単量体を添加し重合反応を続ける方法;リビングアニオン重合体を調製し、引き続き共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル単量体を添加し重合反応を続ける方法等によって製造することができる。また、共役ジエン系単量体の存在する炭化水素溶媒中に、リビングアニオン重合体を添加し、単量体の重合終了後、芳香族ビニル単量体を添加し重合反応を続ける方法;共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル単量体の存在する炭化水素溶媒中に、リビングアニオン重合体を添加し、重合反応を続ける方法等によっても製造することができる。
本実施形態に使用される重合体は、以下に限定されないが、例えば、次の一般式(1)〜(8)で表される線状ブロック共重合体やラジアルブロック共重合体、或いはこれらのポリマー構造の任意の混合物とすることができる。
(1) c−(A―B)n
(2) c−(B―A)n
(3) c−(B―A―B)n
(4) c−(A―B―A)n
(5) c−(A―B)n―A
(6) c−(B―A)n―B
(7) c−(B―A―A―B)n
(8) c−(A―B―B―A)n
(一般式(1)〜(8)中のいずれにおいても、Bは共役ジエン系重合体、或いは共役ジエンと芳香族ビニル化合物のランダム共重合体を表し、当該芳香族ビニル化合物の割合が漸増するテーパーブロックを有していてもよい。Aは芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを表す。cはリビングアニオン重合体の残基あるいはカップリング剤の残基を表す。nは1〜10の整数であり、cに複数結合しているポリマー鎖の構造は同一でも、異なっていてもよい。なお、上記の「主体とする」とは、50%超であることを意味する。)
本実施形態において、上記ブロック共重合体の共役ジエン由来の構成成分量が5質量%以上40質量%以下であり、上記ブロック共重合体のビニル芳香族炭化水素由来の構成成分量が60質量%以上95質量%以下であることが好ましい。上記ブロック共重合体の共役ジエン由来の構成成分量として、より好ましくは7質量%以上38質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上35質量%以下である。また、上記ブロック共重合体のビニル芳香族炭化水素由来の構成成分量として、より好ましくは62質量%以上93質量%以下であり、さらに好ましくは65質量%以上90質量%以下である。上記ブロック共重合体の共役ジエン由来の構成成分量が5質量%以上である場合、共役ジエン部分の水素引き抜き、あるいはビニル基へのビニル芳香族炭化水素鎖の結合が十分なものとすることができる傾向にあり、目的とする高分子量成分を得やすくなる傾向にある。また、共役ジエン由来の構成成分量が40質量%以下である場合、上記ブロック共重合体同士の凝集を効果的に防止できる傾向にあり、分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)が線状ビニル芳香族炭化水素重合体(A)中に存在しても、その存在状態は均一で粒子とならないか、粒子になったとしても、点状の形態に維持しやすい傾向にある。また、上記ブロック共重合体におけるビニル結合量は7%以上70%以下であることが好ましい。さらに、上記ビニル結合量として、より好ましくは10%以上65%以下であり、さらに好ましくは13%以上60%以下である。上記ビニル結合量が7%以上である場合、目的とする高分子量成分を十分に確保できる傾向にある。また、上記ビニル結合量が70%以下である場合、高分子量成分の生成量を適切なものに制御しやすい傾向にあり、十分な成形加工性を確保できる傾向にある。なお、上記共役ジエン由来の構成成分量、ビニル芳香族炭化水素由来の構成成分量及びビニル結合量は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。すなわち、上記共役ジエン由来の構成成分量、ビニル芳香族炭化水素由来の構成成分量及びビニル結合量は、本実施形態における分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)を得る前に、原料としてのブロック共重合体を対象として測定されたものである。
本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物は、スチレン系樹脂の分野で慣用されている添加剤、例えば酸化防止剤、滑剤、難燃剤、着色剤等と本実施形態の目的を損なわない範囲で組み合わされることによりスチレン系樹脂組成物として使用されてもかまわない。上記添加剤としては、特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、白色鉱油等の可塑剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の滑剤、ヘキサブロモシクロドデカン等の難燃剤、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤等が挙げられる。また、スチレン系樹脂をペレットとし、当該ペレットの外部潤滑剤として、エチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等をペレットにまぶして使用してもよい。
上記酸化防止剤は、熱成形時又は光暴露により生成したハイドロパーオキシラジカル等の過酸化物ラジカルを安定化するか、又は生成したハイドロパーオキサイド等の過酸化物を分解するための成分である。すなわち、上記酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤又は過酸化物分解剤である。前者は、ラジカル連鎖禁止剤として、後者は、系中に生成した過酸化物をさらに安定なアルコール類に分解して自動酸化を防止することができる。上記酸化防止剤としてのヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、以下に限定されないが、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スタイレネイテドフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、アルキレイテッドビスフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキシスピロ〔5・5〕ウンデカン等である。また、上記酸化防止剤としての過酸化物分解剤の具体例としては、以下に限定されないが、トリスノニルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の有機リン系過酸化物分解剤又はジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾール等の有機イオウ系過酸化物分解剤である。上記酸化防止剤の添加量は、ビニル芳香族炭化水素重合体組成物100質量部に対して、0.01質量部以上1質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下である。
<ビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造方法>
本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造方法は、ラジカル重合可能な単量体に、前記ブロック共重合体を溶解する工程と、前記溶解後、ラジカル重合を行う工程と、を含む。さらに、本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造方法においては、前記ラジカル重合可能な単量体から得られる重合体が、1種のビニル芳香族炭化水素の単独重合体又は2種以上のビニル芳香族炭化水素の共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸との共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸のアルキルエステルとの共重合体、及びビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸無水物又はマレイミドとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む。このように構成されているため、本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造方法によれば、上記した本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物を効率よく生産することができる。また、上記のラジカル重合可能な単量体から得られる重合体については、前述したとおりの重合体を具体例として挙げることができる。
上記したビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造方法の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、ビニル芳香族炭化水素単量体にビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体を溶かした溶液を用いて、一般的な塊状重合、溶液重合、懸濁重合等を用いることにより製造する例を挙げることができる。また、本実施形態においては、線状ビニル芳香族炭化水素重合体(A)の分子量及び分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)の分子量調整のために、重合開始剤、溶媒、連鎖移動剤等を使用することができる。
上記重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、有機過酸化物を用いることができる。上記有機過酸化物としては、特に限定されないが、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジミリスチルパーオキシジカーボネート等のパーオキシエステル類、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、p−メンタハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、2,2−ビス(4,4−ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジターシャリーアミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジクミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等の多官能開始剤類を挙げることができる。上記した中でも、伸張粘度を増加させる観点から、2,2−ビス(4,4−ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンが好ましい。
上記した有機過酸化物はスチレン系単量体重合のいずれかの工程にて重合系(重合原料溶液又は重合途中の溶液)に添加することができる。これらの有機過酸化物は重合原料溶液に加えられても、重合途中の溶液に必要に応じて複数回に分割して添加されてもよい。上記有機過酸化物の添加量は、重合原料溶液100質量部に対して、好ましくは0.0005質量部以上0.2質量部以下であり、より好ましくは0.01質量部以上0.1質量部以下であり、さらに好ましくは0.03質量部以上0.08質量部以下である。上記有機過酸化物の添加量が0.2質量部以下である場合、重合時に発生する反応熱を良好に制御できる傾向にあり、重合反応の制御の観点から好ましい。
上記溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等が使用できる。上記溶媒の使用量としては、特に限定されないが、重合原料溶液100質量%に対して0質量%以上50質量%以下の範囲の使用が好ましい。また、上記連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー等を用いることができる。上記連鎖移動剤の使用量は、重合原料溶液100質量%に対して、0.01質量%以上2質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上1質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは0.2質量%以上0.8質量%以下の範囲である。本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造方法における反応温度としては、80℃以上200℃以下の範囲が好ましく、より好ましくは90℃以上180℃以下の範囲である。上記反応温度が80℃以上である場合、十分に良好な生産性を確保できる傾向にあるため、工業的により適切な条件ということができる。一方、上記反応温度が200℃以下である場合、低分子量重合体の生成量を適切な範囲に制御しやすくなる傾向にあるため好ましい。なお、目標分子量の調整に際しては、上記反応温度(重合温度)だけでなく、開始剤量、溶媒量、連鎖移動剤量等で制御することもできる。また、本実施形態のビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造方法における反応時間としては、一般に0.5時間以上20時間以下とすることができ、好ましくは2時間以上10時間以下である。上記反応時間が0.5時間以上である場合、重合反応の進行のしやすさの観点から好ましく、上記反応時間が20時間以下である場合、生産性の観点から好ましい。
本実施形態において、ビニル芳香族系炭化水素単量体の重合転化率については、特に限定されるものではないが、工業的な見地から、40%以上であることが好ましい。このようにして得られた重合溶液は、未反応単量体や溶媒を除去することにより、目的とするビニル芳香族炭化水素重合体組成物を分離することができ、また懸濁重合の場合には、そのまま次の工程に供することができる。
以下、実施例、比較例及び参考例により本実施形態の具体的な実施態様を示すが、これは本実施形態の趣旨をより具体的に説明するためのものであり、本実施形態を限定するものではない。
各例におけるビニル芳香族炭化水素重合体組成物の各種測定評価は以下の方法に基づいて行った。
[測定、評価方法]
(1)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体におけるビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンの各含有量
1H−NMRを測定し、ビニル芳香族炭化水素由来の芳香環のピーク面積と共役ジエン由来のビニル結合部のピーク面積とを用いて計算により求めた。なお、測定装置としては日本電子(株)社製のJEOL−ECA500を使用した。なお、ビニル芳香族炭化水素重合体組成物中の共役ジエンの含有量も、上記と同様の方法で求めた。
ビニル芳香族炭化水素重合体組成物中の共役ジエンの含有量の決定には、予め作成した共役ジエンの各含有量が0、2.0質量%、4.0質量%の組成物を用いて、上記(1)と同様の方法で計算により求めた共役ジエン含有量から作成した検量線を用いた。
(2)ビニル結合量
測定用の試料0.1gを10mLの二硫化炭素で完全に溶解した後、0.5mmセルを使用して赤外分光光度計〔島津製作所製、「FTIR−8400S」)を使用してスペクトルを測定した。次いで、得られたスペクトルに基づき、Hampton法〔R.,R.:AnaLyt.Chem.,21(1949),p.923〕によりビニル結合量を求めた。
(3)メルトマスフローレート(MFR)
ISO1133に準拠し、各例のペレットを200℃の温度条件にてメルトマスフローレート測定に供した。メルトマスフローレートは流動性の指標とした。
(4)伸張粘度
ツインキャピラリーレオメーターを用いて、せん断速度40〜1000sec−1に対して、せん断粘度、伸長粘度のデータを採取し、せん断粘度と伸長粘度のグラフを作成して、せん断粘度2500Pa・secにおける、ビニル芳香族炭化水素重合体組成物の伸張粘度を算出した。その際の詳細な条件は次のとおりとした。
使用装置:ROSAND PRECISION社製 ツインキャピラリーレオメーター(型式RH7−2)
ロングダイス:1mmφ×16mmL
ショートダイス:1mmφ×0.25mmL
温度:200℃
予熱時間:ピストンを下降後、ロングダイス側圧力5MPaで6分。その後ロングダイス側圧力3MPaで3分予熱。
(5)オスミウム酸分解処理
四酸化オスミウム溶液とターシャリーブチルハイドロパーオキサイドの混合分解剤を用いて、クロロホルム溶液中のポリマーを90℃に加熱して酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)に従い、酸化分解したポリマーをメタノールで沈殿回収し、酸化分解前後のZ平均分子量の比を算出した。さらに詳細に述べると、ビニル芳香族炭化水素重合体組成物試料約0.07gをクロロホルム10mLに溶解し、tert−プチルアルコール溶液とtert−ブチルハイドロパーオキサイドのtert−ブチルアルコール溶液の混台分解剤を20mLと、四酸化オスミウムの0.05%クロロホルム溶液6mLを加え、90℃でバス中にて12分間還流下、分解した。これを冷却した後、該溶液にメタノール200mLを撹拌しながら加えてポリスチレン成分を沈殿させた。これをガラスフィルターにて分離し、分離されたポリスチレン成分をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定用の試料とした。このGPC測定用試料について、後述する(6)の分子量測定法に基づき、次のとおり酸化分解前後のZ平均分子量を測定した。
酸化分解前後のZ平均分子量の比=(酸化分解後のZ平均分子量)/(酸化分解前のZ平均分子量)
(6)分子量測定
以下の条件で、各平均分子量(Mn:数平均分子量、Mw:重量平均分子量、Mz:Z平均分子量)をそれぞれ測定した。すなわち、ビニル芳香族炭化水素重合体組成物約1gに、メチルエチルケトン/メタノール混合溶媒(混合質量比90/10)20mLを加え、振とう機で60分かけて溶解させた。次に、R20A2型ロ−ターを備えた日立製作所製himacCR20型遠心分離機を用い、0℃、20,000rpmで60分遠心分離後、上澄み液をデカンデーションにより可溶分を採取した。その後、メタノールを添加し、残渣を回収した。その後、室温で真空乾燥し、溶媒を除去した。次に、回収サンプルを以下の条件で測定した。なお、100万以上の分子量成分の割合は、上記の測定から得られた横軸ポリスチレン換算の相対分子量値と縦軸紫外吸光光度のピークから、積分により、相対分子量100万以上の成分の含有率を算出することにより得られる値を採用した。
使用装置:東ソー製HLC8020
分別カラム:東ソー製TSK−gel−GMHXL
測定溶媒:テトラヒドロフラン
試料濃度:ビニル芳香族炭化水素重合体組成物5mgを10mLの溶媒に溶解
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
(7)分岐度
まず、以下の条件下で重量平均分子量=100万における固有粘度を測定した。
使用装置:スペクトリス(株)製 絶対分子量測定 マルチ検出器GPC/SECシステム Viscotek TDA305
光散乱検出器波長:670 nm
カラム:東ソー、TSKgel G6000、5000、4000HXL
測定溶媒:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流速:1.0 mL/分
上記のようにして得られた固有粘度に基づき、下式により分岐度を算出した。
分岐度=log(組成物の固有粘度)/log(標準PSの固有粘度)
(標準PS:TOSOH、TSKstandard、POLYSTYRENE、F−80(TS−201)、分子量=7.06×10
(8)粒子径測定
超薄切片法による透過型電子顕微鏡写真をとり、写真中の領域4μm中に観測される分散粒子のうち、次のように特定される分散粒子の粒子径を測定することにより、粒子径を求めた。なお、測定装置としては、(株)日立ハイテクノロジーズ社製の透過電子顕微鏡HT7700を使用した。なお、分散粒子の粒子数は、次のとおりに特定した。すなわち、各例のビニル芳香族炭化水素重合体組成物を80nmの超薄切片に切り出したものを四酸化オスミウムで染色後、透過型電子顕微鏡で撮影し、倍率100000倍の写真(図1参照)にした。図1に示す写真から、4μmの面積中に存在する粒子径が50nm以下の分散粒子の数を求めた。ここで、粒子径は写真中の粒子面積から円相当径とした場合の粒子径とした。なお、点粒子が凝集した形態のものは、凝集した形態中の点粒子の個数をそれぞれ数えることとした。本測定は、写真を1000dpiの解像度でスキャナーに取り込み、粒子解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製の画像解析ソフト、商品名「A像くん」)を用いて測定した。
(9)曲げ弾性率
射出成形機EC60N(東芝機械製)を用いて、各例で得られたペレットをシリンダー温度220℃、金型温度45℃の条件で成形し(ISO294−1に準拠)、ISO178に準拠して曲げ弾性率を測定し、剛性の指標とした。
[ブロック共重合体B−1の製造]
ビニル芳香族炭化水素含有量が90質量%、共役ジエン含有量が10質量%からなるビニル芳香族炭化水素・共役ジエン共重合体(B−1)を、次のようにして製造した。すなわち、予め洗浄乾燥させた容積10Lの撹拌装置及びジャケット付のオートクレーブを窒素ガス雰囲気下とし、スチレン30質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウム0.095質量部を添加し50℃にて重合した。次に、スチレン30質量部と1,3−ブタジエン10質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を加え60分間反応させた。さらに、スチレン30質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を加え30分間反応させた。その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して等倍モル添加し、安定剤として当該重合体100質量部に対して、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを0.3質量部添加した後、溶媒を除去することによって、目的とする線状のビニル芳香族炭化水素・共役ジエン共重合体(B−1)を回収した。このようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量90質量%の、S1−(S/B)−S2構造のブロック共重合体であった。なお、上記のブロック構造を表す式中の、S、B、S/Bは、それぞれ、ブロック共重合体におけるビニル芳香族炭化水素ブロック(S)と、共役ジエン重合体ブロック(B)と、ランダム共重合体を含むブロック共重合体(S/B)と、を表すものとして、以下同様に表記する。
[ブロック共重合体B−2の製造]
ビニル芳香族炭化水素含有量が80質量%、共役ジエン含有量が20質量%からなるビニル芳香族炭化水素・共役ジエン共重合体(B−2)を、次のようにして製造した。すなわち、予め洗浄乾燥させた容積10Lの撹拌装置及びジャケット付のオートクレーブを窒素ガス雰囲気下とし、1,3−ブタジエン10質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.095質量部とテトラヒドロフラン300ppmを添加し50℃にて重合した。次に、スチレン80質量部を加えて5分間反応させた。その後、1,3−ブタジエン10質量部を加えて10分間反応させた。次いで、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して等倍モル添加し、熱安定剤としての2−t−ブチル−6(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.15質量部添加した。その後、溶媒を除去することによってブロック共重合体を回収した。このようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量80質量%の、B−S−B構造の線状のブロック共重合体であった。
[ブロック共重合体B−3〜B−7の製造]
ブロック共重合体B−2と同様に、表1に記載したビニル芳香族炭化水素含有量と共役ジエン含有量とからなるビニル芳香族炭化水素・共役ジエン共重合体(B−3〜B−7)は、表1に規定したビニル結合量となるように、n−ブチルリチウムとテトラヒドロフランの添加量を調整して、それぞれB−S−B構造を有する線状のブロック共重合体B−3〜B−7を得た。
[実施例1]
[ビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造]
スチレン87質量%と、エチルベンゼン8質量%と、ブロック共重合体B−1を5質量%と、の混合液を準備した。この混合液100質量部に対して、0.015質量部の2,2−ビス(4,4−ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(表2中、単に「PTA」と略記。表3中においても同じ。)を添加して得た重合原料液を、4.6Lの完全混合型反応器に0.78L/Hrで連続的に仕込み、103℃に調整した。反応器出口の固形分濃度は39質量%であった。なお、上記固形分濃度は、以下の方法により算出した。すなわち、まずw1(g)の重合液をアルミカップに取り、減圧下、230℃で15分間、重合液の未反応モノマー等の揮発成分を揮発させた。その後、残った固形分(反応生成物)w2(g)に対して、次式を用いて算出した。
(固形分濃度)=w2/w1×100(%)
完全混合型反応器の重合体溶液を引き続き、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5Lの層流型反応器−1及びそれと直列に配された、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5Lの層流型反応器−2に連続的に仕込んだ。層流型反応器−1の温度を129℃/134℃/139℃に、また層流型反応器−2の温度を150℃/155℃/165℃に調整した。
重合反応器より連続して排出される重合体溶液を、未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する、240℃、1.333kPaのベント圧力の三段ベント付き単軸押出機を連結した脱揮装置に連続的に、順次供給し、樹脂を調製した。最終固形分濃度は79%であった。重合条件を表2に示す。また、得られたビニル芳香族炭化水素重合体組成物のGPCによる分子量測定(オスミウム酸分解前後)、分岐度測定、メルトマスフローレート測定、粒子径測定、曲げ弾性率測定及び伸張粘度側定を行った。この結果を表5に示す。
なお、実施例1で得られたビニル芳香族炭化水素重合体組成物の共役ジエン由来の構成成分量(ブタジエン換算ゴム量)は0.6質量%、酸化分解前後のZ平均分子量の比は0.6、分岐度は0.77、100万以上の分子量成分量は8.2質量%、メルトマスフローレートは0.9グラム/10分であった。200℃、2500Pa・secで測定した伸張粘度は49.5万Pa・secであった。点粒子は存在しなかった。
[実施例2〜5,7〜11,13及び参考例6,12
ブロック共重合体の種類、各原料の種類・添加量及び重合温度を表2のとおりに変更したことを除き、実施例1と同様にして、ビニル芳香族炭化水素重合体組成物(実施例2〜5,7〜11,13及び参考例6,12)を製造した。表2で用いた、メチルメタクリレートは旭化成ケミカルズ製、アクリル酸ブチルは東亜合成製、α−メチルスチレンダイマーは和光純薬工業製である。これらの物性等を表5に示す。
[比較例1]
[スチレン系樹脂の製造]
スチレン92質量%とエチルベンゼン8質量%との混合液100質量部に対して、2,2−ビス(4,4−ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンを0.015質量部添加して得た重合原料液を、4.6リットルの完全混合型反応器に0.78リットル/Hrで連続的に仕込み、103℃に調整した。上記以外は実施例1と同様に実施して、比較例1のビニル芳香族炭化水素重合体を製造した。この物性等を表5に示す。
[比較例2〜5、9〜10]
ブロック共重合体の種類、各原料の添加量、重合条件を表3のとおりに変更したことを除き、比較例1と同様に実施して、ビニル芳香族炭化水素重合体組成物(比較例2〜5、9〜10)を製造した。表3で用いた、メチルメタクリレートは旭化成ケミカルズ製、アクリル酸ブチルは東亜合成製、α−メチルスチレンダイマーは和光純薬工業製である。これらの物性等を表5に示す。
[比較例6]
攪拌機を備えた5L−7L−7L層流型反応機3基を直列連結し、その後に二段ベント付き二軸押出機を配置した重合装置を用いてビニル芳香族炭化水素重合体組成物を製造した。スチレン90質量部、表1記載の線状ビニル芳香族炭化水素重合体B−6を5質量部、エチルベンゼン5質量部、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(表4中、「PHC」と略記。表2〜3中においても同じ。)0.04質量部からなる原料溶液を重合機に供給し重合を行う。第1段重合機で120℃、30rpmで攪拌機を回転させ2時間重合し、ゴム粒子を析出させた後、第2段重合機にて135℃で3時間重合を継続しゴム粒子を安定化させた後、更に第3段重合機にて145℃で3時間重合を進め、最終重合固形分69%とし、この重合溶液を220℃、2.666kPaのベント圧力の三段ベント付き単軸押出機により脱揮発後、比較例6のビニル芳香族炭化水素重合体組成物を得た。この物性等を表5に示す。
[比較例7]
各原料の添加量と重合条件を表4のとおり変更した以外は、比較例6と同様に実施して、比較例7のビニル芳香族炭化水素重合体組成物を製造した。この物性等を表5に示す。
[比較例8]
表1記載のブロック共重合体B−1 5質量部と、PSジャパン製 ポリスチレンG9305(メルトマスフローレート=1.5g/10min)95質量部とを、東芝機械(株)製二軸押し出し機(TEM26SS−12−2V)を用いて220℃、150rpmで造粒し、比較例8のビニル芳香族炭化水素重合体組成物を製造した。この物性等を表5に示す。なお、本例のビニル芳香族炭化水素重合体組成物は、ポリスチレンとブロック共重合体を単純ブレンドしたものであったため、当該ブロック共重合体の共役ジエン化合物単位を起点とした高分子量成分が形成されなかった。すなわち、本実施形態所望の分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)が得られなかった。
なお、上記表1中では、スチレンの仕込み量を「St量」と、1,3−ブタジエンの仕込み量を「Bd量」と、それぞれ表記し、含有比率で表示している。
図1の写真中、黒く染色された粒子が分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体の分散粒子である。図1からわかるように、本実施形態所望のビニル芳香族炭化水素重合体組成物の粒子径は50nm弱程度の大きさである。
表5と図2からわかるように、比較例1〜4及び比較例7〜8のビニル芳香族炭化水素重合体組成物は伸張粘度と加工性(流動性:メルトマスフローレート)の値が実施例1〜5,7〜,13及び参考例6,12に対して低い。さらに、比較例5〜7は分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)の凝集が起こるため、剛性(曲げ弾性率)が低下する。実施例1〜5,7〜,13及び参考例6,12のビニル芳香族炭化水素重合体組成物は、いずれも、伸張粘度、加工性(流動性)及び剛性のバランスに優れる。
本出願は、2013年9月20日出願の日本特許出願(特願2013−196190号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明のビニル芳香族炭化水素重合体組成物は、既存スチレン系樹脂の優れた物理的特性を保持し、かつ剛性、伸張粘度、加工性(流動性)バランスに優れる特長を有する。そのため、ブロー成形、真空成形、押出成形、Tダイ成形、インフレーション成形等の用途に幅広く応用することができる。

Claims (8)

  1. 線状ビニル芳香族炭化水素重合体(A)と分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)を含むビニル芳香族炭化水素重合体組成物であって、
    前記線状ビニル芳香族炭化水素重合体(A)及び分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)が、1種のビニル芳香族炭化水素の単独重合体又は2種以上のビニル芳香族炭化水素の共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸との共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸のアルキルエステルとの共重合体、及びビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸無水物又はマレイミドとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
    前記分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)が、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体中の共役ジエン化合物単位を起点として分岐しており、
    前記ビニル芳香族炭化水素重合体組成物中に含まれる前記ブロック共重合体の含有量が、共役ジエン換算量で0.1質量%以上1.3質量%以下である、ビニル芳香族炭化水素重合体組成物。
  2. 前記ビニル芳香族炭化水素重合体組成物において、四酸化オスミウムを触媒とするターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによる酸化分解を行う場合、当該酸化分解前のZ平均分子量(Mz1)と当該酸化分解後のZ平均分子量(Mz2)の比(Mz2/Mz1)が、0.30以上0.90以下である、請求項1に記載のビニル芳香族炭化水素重合体組成物。
  3. 前記分岐状ビニル芳香族炭化水素重合体(B)が、前記線状ビニル芳香族炭化水素重合体(A)中に分散しており、10万倍に拡大した電子顕微鏡写真4μm2の面積あたり粒子径50nm以下の点粒子が0〜1000個存在する、請求項1又は2に記載のビニル芳香族炭化水素重合体組成物。
  4. 前記ビニル芳香族炭化水素重合体組成物の重量平均分子量が、15万以上50万以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のビニル芳香族炭化水素重合体組成物。
  5. ビニル芳香族炭化水素重合体組成物の分岐度が、0.30以上0.90未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のビニル芳香族炭化水素重合体組成物。
  6. ビニル芳香族炭化水素重合体組成物中の100万以上の分子量成分が2.0%以上20%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のビニル芳香族炭化水素重合体組成物。
  7. 前記ブロック共重合体中の共役ジエン化合物単位由来の構成成分量が5質量%40質量%以下であり、
    前記ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素化合物単位由来の構成成分量が60質量%以上95質量%以下であり、
    前記ブロック共重合体中におけるビニル結合量が、7%以上70%以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のビニル芳香族炭化水素重合体組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造方法であって、
    ラジカル重合可能な単量体に、前記ブロック共重合体を溶解する工程と、
    前記溶解後、ラジカル重合を行う工程と、
    を含み、
    前記ラジカル重合可能な単量体から得られる重合体が、1種のビニル芳香族炭化水素の単独重合体又は2種以上のビニル芳香族炭化水素の共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸との共重合体、ビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸のアルキルエステルとの共重合体、及びビニル芳香族炭化水素と不飽和カルボン酸無水物又はマレイミドとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、ビニル芳香族炭化水素重合体組成物の製造方法。
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