JP6005014B2 - 皮膚用針および皮膚用針を製造する方法 - Google Patents
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Description
まず、本発明による第一の実施の形態に係る皮膚用針製造装置10の構成について説明する。この第一の実施の形態に係る皮膚用針製造装置10は、長さが数百μmの皮膚用針を製造できるものであり、皮膚用針の材料をピン部材の先端からベースへ向けて吐出する材料吐出タイプの製造装置である。
まず、針の製造準備段階として、皮膚用針81を立設するベース82をベース設置部材41の上面に設置する。皮膚用針81の製造を指示する信号が外部からコンピュータ50に入力されると、コンピュータ50は、容器加熱手段46およびピン加熱部材49を作動させて、シリンジ45に収納された材料80を溶解する。容器加熱手段46およびピン加熱手段49による加熱温度は、約120℃に設定されている。
次に、コンピュータ50は、ベース加熱手段42を作動させてベース設置部材41を加熱し、これによってベース設置部材41の上面に設置されたベース82を加温する。ベース加熱手段42による加熱温度は、約100℃に設定されている。次いで、コンピュータ50は、駆動機構48を作動させて移動部44を柱部43に沿って下方向(矢印44aで示す方向)に移動させる。これにより、移動部44に固定されたシリンジ45が、ベース設置部材41に設置したベース82へ接近するように下降する。コンピュータ50は、シリンジ45の下端に位置するピン部材47の先端とベース82との隙間が約500μmの位置まで移動部44を下降させるとともに、その位置を保持させる(図3(a)を参照)。この移動部44の位置を保持した状態でコンピュータ50は、圧力制御手段60を作動させ、チューブ61を介してシリンジ45に圧縮空気を送り込む。すると、シリンジ45内の材料80の一部がピン部材47の細穴47aから吐出され、この吐出された材料80がベース82に付着する(図3(b)を参照)。これによって、材料80がピン部材47およびベース82に付着した状態となる。
次に、コンピュータ50は、駆動機構48を作動させ、移動部44を柱部43に沿って上方向(矢印44bで示す方向)に移動させる。この移動に伴って、ピン部材47が上昇することでベース82から引き離され、これら両部材に付着した材料80は、それら両部材に引っ張られるようにして引き伸ばされていく。このときの移動速度は、約100μm/秒である。引き伸ばされた材料80は、ピン部材47に付着した付着部80aとベースに付着した突起部80bとに分かれていく。突起部80bは、ピン部材47側の付着部80aとの間に発生する張力によって、上方に向かうほど細くなるように突起する。それに伴って付着部80aは、下方に向かうほど細くなる。この引き伸ばしをさらに続けると、やがて付着部80aと突起部80bとの接合部分が極めて細くなる。(図3(c)を参照)。
上記成形工程による材料80の引き伸ばしが完了すると、コンピュータ50は、駆動機構48の作動を所定時間(ここでは約10秒間)停止させ、材料80の引き伸ばした状態を維持させる。この停止時間の間に、材料80の付着部80aと突起部80bとの間の接合部が自然放熱により冷やされ、その部分の粘度が高められる。その後、コンピュータ50は、駆動機構48を作動させて、移動部44を上方向(矢印44bで示す方向)に移動させる。すると、ピン部材47がベース設置部材41からさらに引き離され、ピン部材47に付着した付着部80aがその接合部を境にして突起部分80bから切り離される。このときのピン部材47の上昇移動速度は、前記成形工程における移動に比べて速く、約5mm/秒である。これによって、突起部80bが皮膚用針81として形成される(図3(d)を参照)。また、この切離工程において、ピン加熱手段49および/またはベース加熱手段42の発熱手段の作動を停止させることで、材料80の放熱をより妨げないように構成することもできる。
上記成形工程において、材料80を引き伸ばすためにベース設置部材41とピン部材47とを引き離す途中において、コンピュータ50は、駆動機構48の作動を一時的に停止させてピン部材47の位置を維持する(図10(a)を参照)。これと同時に、コンピュータ50は、圧力制御手段60を作動させ、シリンジ45にチューブ61を介して圧縮空気を送り込む。これによって、シリンジ45に設けたピン部材47の先端から材料80が吐出される。すると、ピン部材47に付着した付着部80aの容量が増し、付着部80aの下方部分が押し下げられながら突起部80bに衝突して径方向に膨らむ(図10(b)を参照)。その後、さらに駆動機構48を作動させ、ピン部材47を上方向(矢印44bで示す方向)に移動して材料80を引き伸ばしても、この膨張部80cが残存する(図10(c)を参照)。こうして材料80の中間部部に膨張部80cをもつ皮膚用針81Aが成形される。
本発明による第二の実施の形態である皮膚用針製造装置110について説明する。上記材料吐出タイプの皮膚用針製造装置10が針の材料をピン部材47の先端からベース82へ吐出するのに対し、ここで説明する皮膚用針製造装置110は、ベースを針の材料から形成し、このベースの一部を溶解して針を成形する材料引上げタイプの皮膚用針製造装置である。この材料引上げタイプの皮膚用針製造装置110は、上記材料吐出タイプと比べると、基本的にはピン部材47およびその周辺機器が異なるだけで、各構成要素の多くが同じである。したがって、上記材料吐出しタイプと同じ構成要素については、図面に同じ符号を付してその詳細説明を省略する。
まず、製造準備段階として、皮膚用針181の材料180をベース設置部材41に設置する。皮膚用針181の製造を指示する信号が外部からコンピュータ50に入力されると、コンピュータ50は、ベース加熱手段42によるベース設置部材41の加熱温度を約120℃に設定し、ベース設置部材41に設置された材料180を溶解させる。コンピュータは、材料180の溶解が完了すると、その材料180の溶解状態を維持するようにベース加熱手段42の加熱温度を約100℃に設定する。次の工程以後、このベース加熱手段42の設定温度は100℃が維持される。
次に、コンピュータ50は、ピン加熱手段149を作動させてピン部材147を加熱する。ピン加熱手段149の加熱温度は、約120℃に設定される。このピン加熱手段149による加熱は、次の成形工程が完了するまで維持される。
次いで、コンピュータ50は、駆動機構48によって移動部44を上方向(矢印44bで示す方向)に移動させることで、ピン部材147をベース設置部材41から離れる方向に引き離していく。この引き離しの動きによって、ピン部材147の先端面147aに付着した材料180が引き伸ばされていく(図13(c)を参照)。引き伸ばされた材料180は、ピン部材147に付着した付着部180aと、この付着部180aとの間に発生する張力によって上方に引き上げられるように突起させられた突起部180bとを含む。突起部180bは、同じ材料180からなるベース182に立設するように形成される。この成形工程では、ピン加熱手段149およびベース加熱手段42がともに作動して、材料180を加温して所定温度に調整し続けている。ピン加熱手段149は、ピン部材147を加熱することで、材料180のうちピン部材147に付着した付着部180aを所定温度に調整するように機能する。一方のベース加熱手段42は、ベース設置部材41を加熱することで、ベース182に立設する突起部180bを所定温度に調整するように機能する。これらピン加熱手段149およびベース加熱手段42の二つの発熱手段によって、皮膚用針181の材料180をその引き伸ばしに適した粘度をもつ溶解状態に調整している。
材料180の引き伸ばしが完了すると、コンピュータ50は、図14のタイムチャートに示すように、ピン加熱手段149の作動を停止させるとともに、駆動機構48の作動を所定時間(例えば10秒間)停止させる。この停止時間は、材料180の付着部180aと突起部180bとの間の接合部分(この部分で付着部180aと突起部180bとが切り離される)について、自然放熱により温度が下がることで粘度を高めることができる時間である。その後、駆動機構48によって移動部44を上方向(矢印44bで示す方向)に移動させる。すると、ピン部材147が材料設置部材41からさらに引き離され、ピン部材147に付着した付着部180aが突起部分180bから切り離される。このときのピン部材147の移動速度は、上記成形工程における移動速度よりも速い、約5mm/秒である。これによって、突起部180bが皮膚用針181として成形される。ここで、発熱手段のうちピン加熱手段149のみの作動を停止させているが、このときもう一つの発熱手段であるベース加熱手段42の作動も停止させると、材料180の放熱冷却が発熱手段によってより妨げられないように構成できる。
図21(a)から(c)は、膨張部181cをもつ皮膚用針181Aが成形される過程におけるピン部材147の動きとそれに応じた材料180の状態を示す図である。また、図22は、この過程におけるピン部材147の動きを示すタイムチャートである。上記成形工程において、材料180を引き伸ばすためにベース設置部材41とピン部材147とを引き離す途中で、コンピュータ50は、図22のタイムチャートに示すように、駆動機構48を作動させてピン部材147をベース182に接近するように所定量だけ接近させる。この実施の形態では、コンピュータ50は、駆動機構48を作動させてピン部材147をまず上方に300μm移動させた後、駆動機構48の作動を約3秒間停止させる。さらにコンピュータ50は、それと同じ移動および停止を行い、材料180の段階的な引き伸ばしを行う(図21(a)を参照)。この状態は、材料180の引き伸ばしが充分になされていない状態である。その後、コンピュータ50は、ピン部材147を200μmだけ降下させるように、駆動機構48を作動させる(図21(b)を参照)。このピン部材147の降下は、材料180の引き伸ばしに反する動きである。この動きによって、今まで引き伸ばされていた材料180が圧縮され、引き伸ばし方向と直交する方向(径方向)に膨らんで、膨張部180cを形成する。ピン部材147はその降下した位置で約3秒間だけ停止し、その後にまた改めて400μmだけ上昇し、材料180を再び引き伸ばし始める。この引き伸ばしを行っても、膨張部180cは、径方向に小さく形を変えて、その針の中間部分に残存する。ピン部材147の各移動速度はいずれも約2mm/秒である。こうして、図21(c)に示すように、膨張部180cをもつ皮膚用針181Aが形成される。
この材料引上げタイプの皮膚用針製造装置110によって膨張部180cをもつ針を製造する方法として、上記の他に次に説明する別の方法もある。図23(a)から(c)は、その別の方法によって、膨張部181cをもつ皮膚用針181Bが成形される過程におけるピン部材147の動きとそれに応じた材料180の状態を示す図である。上記成形工程において、材料180を引き伸ばすためにベース設置部材41とピン部材147とを引き離す途中で、コンピュータ50は、駆動機構48の作動を停止させてピン部材147の位置を維持させる(図23(a)を参照)。この停止状態を所定時間(例えば20秒)以上維持させると、図23(b)に示すように、材料180のうち上方に位置する付着部180aの一部が自重により降下し、径方向に膨らんだ膨張部180cを成形する。この付着部180aの降下は、材料180の引き伸ばしに反する動きである。この動きによって、今まで引き伸ばされていた材料180が中弛みを生じ、引き伸ばし方向と直交する方向(径方向)に膨らんで、膨張部180cを形成する。その後、さらに駆動機構48を作動させて材料180を引き伸ばしても、この膨張部180cが形を変えて残存し、膨張部180cをもつ皮膚用針181aを成形することができる。
上記第一および第二の実施の形態である皮膚用針製造装置10,110で製造した皮膚用針81,181の針先部に、第二の材料からなる別の皮膚用針を追加成形することで、軸方向に二段の皮膚用針を製造できる。図26は、この二段の皮膚用針381を成形するための皮膚用針製造装置310を示す図である。図27は、この二段の皮膚用針381を含む針集合体388の一部外観斜視図である。図27に示すように、二段の皮膚用針381は、皮膚用針製造装置10、110で製造した皮膚用針81、181を第一段目の針381fとし、その第一段目の針381fの針先部に第二段目の針381sを成形するものである。この実施の形態では、第二段目の針381sの材料(第二の材料)は、主成分を生分解性物質であるマルトースから構成し、さらに皮膚内に注入すべき機能性物質を含有した材料を用いる。二段の皮膚用針381を皮膚に刺したとき、先端に位置する第二段目の針381sが第一段目の針381fに比べて皮膚内の奥に充分に入り込む。したがって、その機能性物質を無駄なく皮膚内の奥の方に効果的に注入できる。
まず、二段の皮膚用針381の製造準備段階として、材料設置部材320の上面に第二段目の針381の材料となる第二の材料325を設置する。針の製造を指示する信号が外部からコンピュータ321に入力されると、コンピュータ321は、まず発熱手段324を作動させて材料設置部材320を加熱する。このときの加熱温度は約100℃に設定されている。この材料設置部材320の加熱によって、その上面に設置された第二の材料325が溶解される。なお、この発熱手段324による材料設置部材320の加熱は、次工程以後も引き続いて行われる。
次に、コンピュータ321は、駆動機構327を作動させて、移動部326を柱部322に沿って下方向(矢印323aで示す方向)に移動させる。すると、移動部326に固定されたベース保持部材345が材料設置部材320に向かって接近し、ベース保持部材345が保持する第一段目の針381fの先端が、材料設置部材320上で溶解している第二の材料325に接触させられる(図28(a)を参照)。この状態で、第一段目の針381fの先端に第二の材料325が付着する。
次に、コンピュータ321は、駆動機構327を作動させて、移動部326を柱部322に沿って上方向(矢印323bで示す方向)に移動させる。すると、移動部326に固定されたベース保持部材345が材料設置部材320から離れる方向に移動し、第一段目の針381fの先端に付着した第二の材料325が引き伸ばされて、第二段目の針381sを成形することができる(図6(c)を参照)。このとき、第二段目の針381sは、長さが約300μmの略錐型の突起として形成した。図27に示すように、複数本の第一段目の針381fが格子点状に略等間隔で並んでいるので、それに対応して第二段目の針381sもまた複数本が格子点状に略等間隔で並ぶように成形される。また、上記付着工程および成形工程を各々少なくとも二回以上繰り返すことで、三段以上の針を形成することもできる。
41 ベース設置部材
42 ベース加熱手段(発熱手段)
49、149 ピン加熱手段(発熱手段)
47、147 ピン部材
48 駆動機構(移動手段)
50 コンピュータ(制御手段)
321 コンピュータ(第二の制御手段)
80、180 皮膚用針の材料
80a、180a 付着部
80b、180b 突起部分
81、181 皮膚用針
327 駆動機構(第二の移動手段)
324 発熱手段(第二の発熱手段)
381 二段の皮膚用針
381f 第一段目の針
382s 第二段目の針
325 第二の材料
345 ベース保持部材
320 材料設置部材
Claims (13)
- 生分解性物質を含有した材料からなる針と、
機能性物質を含有した材料からなり、前記針の少なくとも一部を被覆して、先端を形成する被覆部と、
前記針が形成されたベースと、
を含み、
前記ベースは凹部を有し、
前記針は、前記凹部内に充填された前記生分解性物質を含有した材料から形成された、皮膚用針。 - 前記針は、円錐状または角錐状である、請求項1に記載の皮膚用針。
- 前記針は、周面が底面から先端まで軸心側に凹むように湾曲している、請求項1又は請求項2に記載の皮膚用針。
- 前記針は、根元から先端の間で軸心と直交する方向に膨らむ膨張部を有する、請求項1又は請求項2に記載の皮膚用針。
- 前記被覆部は、前記針の根元を除き先端を含む少なくとも一部を被覆する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の皮膚用針。 - 前記針は、機能性物質及び前記生分解性物質を含有した材料からなる、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の皮膚用針。
- 皮膚用針を製造する方法であって、
生分解性物質を含有した材料から針を形成すること、および
先端を形成するように、機能性物質を含有した材料で前記針の少なくとも一部を被覆すること、を含み、
前記被覆することは、
前記針の一部に前記機能性物質を含有した材料を付着させること、および
前記針に付着した前記機能性物質を含有した材料を引き伸ばすこと、を含む、方法。 - 前記針を形成することは、前記生分解性物質を含有した材料からなるベースの一部を引き伸ばすことを含む、請求項7に記載の方法。
- 前記針を形成することは、ベースに付着された前記生分解性物質を含有した材料を引き伸ばすことを含む、請求項7に記載の方法。
- 皮膚用針を製造する方法であって、
生分解性物質を含有した材料から針を形成すること、および
先端を形成するように、機能性物質を含有した材料で前記針の少なくとも一部を被覆すること、を含み、
前記針を形成することは、ベースの凹部内に充填された前記生分解性物質を含有した材料を引き伸ばすことを含む、方法。 - 前記被覆することは、
前記針の一部に前記機能性物質を含有した材料を付着させること、および
前記針に付着した前記機能性物質を含有した材料を引き伸ばすこと、を含む、請求項10に記載の方法。 - 前記被覆することは、前記針の根元を除き先端を含む少なくとも一部を被覆することである、請求項7から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
- 前記生分解性物質を含有した材料が機能性物質を更に含有する、請求項7から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
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